(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-31
(45)【発行日】2022-09-08
(54)【発明の名称】飲料、飲料の製造方法、ならびに、飲料の不溶性固形物分散性および飲料適正の向上方法
(51)【国際特許分類】
A23L 2/00 20060101AFI20220901BHJP
A23L 2/52 20060101ALI20220901BHJP
A23L 29/256 20160101ALN20220901BHJP
A23L 29/269 20160101ALN20220901BHJP
【FI】
A23L2/00 A
A23L2/00 E
A23L2/52
A23L29/256
A23L29/269
(21)【出願番号】P 2018096585
(22)【出願日】2018-05-18
【審査請求日】2021-05-14
(73)【特許権者】
【識別番号】312017444
【氏名又は名称】ポッカサッポロフード&ビバレッジ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】小平 将太
【審査官】安田 周史
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-055890(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 2/00
A23L 2/52
A23L 29/256
A23L 29/269
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
不溶性固形物と寒天とキサンタンガム
(但し、改質キサンタンガムは除く)とを含有し、
25℃における粘度が9.0mPa・s以上30.0mPa・s以下であり、
Xを前記寒天の含有量(g/L)とし、Yを前記キサンタンガムの含有量(g/L)としたときに、下記式(1)
Y≦-0.2X+0.75 (0.1≦X、0.1<Y) ・・・ (1)
を満たす飲料。
【請求項2】
前記式(1)において、X<1.0である請求項1に記載の飲料。
【請求項3】
不溶性固形物と寒天とキサンタンガム
(但し、改質キサンタンガムは除く)とを添加し、
25℃における粘度を9.0mPa・s以上30.0mPa・s以下とし、
Xを前記寒天の含有量(g/L)とし、Yを前記キサンタンガムの含有量(g/L)としたときに、下記式(1)
Y≦-0.2X+0.75 (0.1≦X、0.1<Y) ・・・ (1)
を満たすようにする工程を含む飲料の製造方法。
【請求項4】
不溶性固形物の分散状態を保ちつつ、飲料適正を高める、飲料の不溶性固形物分散性および飲料適正の向上方法であって、
前記不溶性固形物と寒天とキサンタンガム
(但し、改質キサンタンガムは除く)とを添加し、
25℃における粘度を9.0mPa・s以上30.0mPa・s以下とし、
Xを前記寒天の含有量(g/L)とし、Yを前記キサンタンガムの含有量(g/L)としたときに、下記式(1)
Y≦-0.2X+0.75 (0.1≦X、0.1<Y) ・・・ (1)
を満たすようにする飲料の不溶性固形物分散性および飲料適正の向上方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飲料、飲料の製造方法、ならびに、飲料の不溶性固形物分散性および飲料適正の向上方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、ダイス状にカットした果肉等の不溶性固形物を液に分散させた飲料がある。このような飲料では、飲用時に不溶性固形物を液に同伴させるため、液中での不溶性固形物の分散性が求められる。例えば特許文献1には、寒天と糊料を用いて、不溶性固形物を分散させる方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
不溶性固形物の分散性が求められる一方で、飲料として飲みやすい程度の飲料適正(滑らかで口当たりがよく、後切れのよい様)を有していることが訴求されている。特許文献1には、寒天と糊料を用いた不溶性固形物を分散させる方法が記載されているが、不溶性固形物を含む飲料の飲料適正も考慮した上での検討はされていない。
【0005】
そこで、本発明は、不溶性固形物の分散状態を保ちつつ、飲料適正の高い飲料、飲料の製造方法、ならびに、飲料の不溶性固形物分散性および飲料適正の向上方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題は、以下の手段により解決することができる。
(1)不溶性固形物と寒天とキサンタンガム(但し、改質キサンタンガムは除く)とを含有し、25℃における粘度が9.0mPa・s以上30.0mPa・s以下であり、Xを前記寒天の含有量(g/L)とし、Yを前記キサンタンガムの含有量(g/L)としたときに、下記式(1)
Y≦-0.2X+0.75 (0.1≦X、0.1<Y) ・・・ (1)
を満たす飲料。
(2)前記式(1)において、X<1.0である前記1に記載の飲料。
(3)不溶性固形物と寒天とキサンタンガム(但し、改質キサンタンガムは除く)とを添加し、25℃における粘度を9.0mPa・s以上30.0mPa・s以下とし、Xを前記寒天の含有量(g/L)とし、Yを前記キサンタンガムの含有量(g/L)としたときに、下記式(1)
Y≦-0.2X+0.75 (0.1≦X、0.1<Y) ・・・ (1)
を満たすようにする工程を含む飲料の製造方法。
(4)不溶性固形物の分散状態を保ちつつ、飲料適正を高める、飲料の不溶性固形物分散性および飲料適正の向上方法であって、前記不溶性固形物と寒天とキサンタンガムとを添加し、25℃における粘度を9.0mPa・s以上30.0mPa・s以下とし、Xを前記寒天の含有量(g/L)とし、Yを前記キサンタンガム(但し、改質キサンタンガムは除く)の含有量(g/L)としたときに、下記式(1)
Y≦-0.2X+0.75 (0.1≦X、0.1<Y) ・・・ (1)
を満たすようにする飲料の不溶性固形物分散性および飲料適正の向上方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る飲料によれば、不溶性固形物と寒天とキサンタンガムとを含有し、25℃における粘度が所定範囲に特定されており、寒天とキサンタンガムとの関係が所定の式を満たすことから、不溶性固形物の分散状態が保たれているとともに、飲料適正が高くなっている。
【0008】
本発明に係る飲料の製造方法によれば、不溶性固形物と寒天とキサンタンガムとを添加し、25℃における粘度を所定範囲とし、寒天とキサンタンガムとの関係が所定の式を満たす工程を含んでいることから、不溶性固形物の分散状態が保たれているとともに、飲料適正が高くなった飲料を製造することができる。
【0009】
本発明に係る飲料の不溶性固形物分散性および飲料適正の向上方法によれば、飲料において不溶性固形物と寒天とキサンタンガムとを添加し、25℃における粘度を所定範囲に調整し、寒天とキサンタンガムとの関係が所定の式を満たすように調整することから、不溶性固形物の分散状態を保てるとともに、飲料適正を高めることができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る飲料、飲料の製造方法、ならびに、飲料の不溶性固形物分散性および飲料適正の向上方法を実施するための形態(実施形態)について説明する。
【0011】
[飲料]
本実施形態に係る飲料は、不溶性固形物と寒天とキサンタンガムとを含有し、25℃における粘度が9.0mPa・s以上30.0mPa・s以下であり、寒天とキサンタンガムとの関係が後述する(1)式を満たす。
【0012】
ここで、飲料としては、例えば、果汁含有飲料、ジュース、野菜飲料、フレーバードウォーター、茶飲料、コーヒー飲料、紅茶飲料、ココア飲料、乳飲料等が挙げられる。ただし、飲料としてはこれらに限定されるものではなく、これら以外の飲料であってもよい。
【0013】
(不溶性固形物)
不溶性固形物としては、例えば、果物類の果肉、野菜類、きのこ類、海藻類等を任意の大きさに切断したもの、柑橘類のさのう、寒天、アルギン酸ナトリウム等のゲル化剤を用いた成形物、マンナンゲル、ナタデココ、カプセル等が挙げられ、果物類の果肉を任意の大きさに切断したものであることが好ましい。果物類としては、例えば、林檎、梨、洋梨、パインアップル、マンゴー、キウイフルーツ、パパイヤ、黄桃、白桃、あんず等を挙げることができる。また、不溶性固形物としては、当該不溶性固形物の内部に存在する水分と、当該不溶性固形物の外部に存在する水分とが相互に行き来できる構造を有するものが好ましい。このような、不溶性固形物の内部に存在する水分と、当該不溶性固形物の外部に存在する水分とが相互に行き来できる構造を有する不溶性固形物として特に好ましいものとしては、例えば、果物類の果肉、野菜類、きのこ類、海藻類等を任意の大きさに切断したもの、柑橘類のさのう等が挙げられる。ただし、不溶性固形物としてはこれらに限定されるものではなく、飲料に含有される不溶性固形物であればどのようなものでもよい。
【0014】
不溶性固形物の形状や大きさは特に限定されるものではない。不溶性固形物の形状としては、例えば、立方体、直方体、球体、楕円体、不定形形状等が挙げられる。不溶性固形物の大きさとしては、例えば、立方体の場合、一辺の長さが2mm以上20mm以下、球体の場合、直径の長さが2mm以上20mm以下、その他の形状に場合、最大長さが2mm以上25mm以下である。
不溶性固形物の含有量は特に限定されるものではない。不溶性固形物の含有量は、例えば、3g/L以上であるのが好ましく、5g/L以上であるのがより好ましく、7g/L以上であるのがさらに好ましい。不溶性固形物の含有量が所定値以上であることにより、飲料の飲みごたえを向上させることができる。
また、不溶性固形物の含有量は、例えば、200g/L以下であるのが好ましく、150g/L以下であるのがより好ましく、100g/L以下であるのがさらに好ましい。不溶性固形物の含有量が所定値以下であることにより、不溶性固形物の分散性を向上させることができるとともに、飲料の飲み易さを向上させることができる。また、不溶性固形物の含有量が所定値以下であることにより、飲料の製造時において、製造適正(例えば、製造のし易さ等)が向上する。
【0015】
(寒天)
ここで言う寒天とは、不溶性固形物を構成するものではなく、飲料中の液体に溶解した状態のものである。本実施形態に用いる寒天としては、特に限定されるものではないが、低強度寒天が好ましい。低強度寒天とは、寒天成分の分子が短く切断され、日寒水式のゼリー強度が1.5%寒天濃度で10g/cm2以上250g/cm2以下の範囲にある寒天を意味する。低強度寒天は公知の手法に基づいて製造することが可能であり、すなわち、テングサ属、オゴノリ属、オバクサ属等の海藻原料より抽出される寒天成分を酸処理または熱処理し、寒天成分を低分子化することによって得ることができる。本発明においては市販の低強度寒天を使用することができ、例えば伊那食品工業株式会社のウルトラ寒天イーナ〔登録商標〕、ウルトラ寒天UX-30、ウルトラ寒天AX-30、ウルトラ寒天BX-30、ウルトラ寒天UX-100、ウルトラ寒天AX-100、ウルトラ寒天BX-100、ウルトラ寒天UX-200、ウルトラ寒天AX-200、ウルトラ寒天BX-200等を利用することができる。
【0016】
(キサンタンガム)
ここで言うキサンタンガムとは、不溶性固形物を構成するものではなく、飲料中の液体に溶解した状態のものである。キサンタンガムとは、多糖類の1種であり、飲食品分野においては増粘安定剤(増粘剤、安定剤)として一般的に知られている。本実施形態に用いるキサンタンガムとしては、公知のキサンタンガムでよく、例えば、三栄源エフ・エフ・アイ株式会社のサンエース〔登録商標〕E-S、伊那食品工業株式会社のウルトラキサンタン〔登録商標〕V-T、ウルトラキサンタンV-7T等を使用することができる。
【0017】
(pH)
本実施形態に係る飲料は、pHが酸性域であることが好ましい。具体的には、本実施形態に係る飲料のpHは、2.5以上であることが好ましく、2.7以上であることがより好ましい。また、本実施形態に係る飲料のpHは、5.5以下であることが好ましく、4.5以下であることがより好ましい。
【0018】
(25℃における粘度が9.0mPa・s以上30.0mPa・s以下)
本実施形態に係る飲料は、25℃における粘度が9.0mPa・s以上であり、12.0mPa・s以上であるのが好ましく、14.0mPa・s以上であるのがより好ましく、16.0mPa・s以上であるのがさらに好ましい。25℃における粘度が所定値以上であることにより、不溶性固形物の分散性を向上させることができる。
また、本実施形態に係る飲料は、25℃における粘度が30.0mPa・s以下であり、27.0mPa・s以下であるのが好ましく、25.0mPa・s以下であるのがより好ましい。25℃における粘度が所定値以下であることにより、飲料適正をより向上させることができる。
なお、粘度は、市販の粘度計を用いて計測することができる。例えば、東機産業社製のTVB-10を用い、温度を25℃、回転数を60ppmとして測定することができる。
【0019】
(式(1))
本実施形態に係る飲料は、Xを寒天の含有量(g/L)とし、Yをキサンタンガムの含有量(g/L)としたときに、下記式(1)を満たす。
Y≦-0.2X+0.75 (0.1≦X、0.1<Y) ・・・ (1)
【0020】
本実施形態に係る飲料は、式(1)を満たすことにより、飲料適正を高めることができる。式(1)は、実験結果から導き出したものである。
【0021】
寒天の含有量であるX(g/L)は、「0.1≦X」、すなわち、0.1以上であり、0.3以上であるのが好ましく、0.4以上であるのがより好ましい。寒天の含有量が所定値以上であることにより、飲料適正を高めることができる。
また、寒天の含有量であるX(g/L)は、「X<1.0」、すなわち、1.0未満であるのが好ましく、0.8以下であるのがより好ましく、0.7以下であるのがさらに好ましい。寒天の含有量が所定値以下であることにより、飲料適正を高めることができる。
【0022】
本実施形態に係る寒天の含有量を所定範囲とする手法として、後記するように、混合工程において、所定量の寒天を混合するという手法が挙げられる。
【0023】
キサンタンガムの含有量であるY(g/L)は、「0.1<Y」、すなわち、0.1超であり、0.3以上であるのが好ましく、0.4以上であるのがより好ましい。キサンタンガムの含有量が所定値以上であることにより、飲料適正を高めることができる。
また、キサンタンガムの含有量であるY(g/L)は、「Y≦0.7」、すなわち、0.7以下であるのが好ましく、0.65以下であるのがより好ましく、0.6以下であるのがさらに好ましい。キサンタンガムの含有量が所定値以下であることにより、飲料適正を高めることができる。
【0024】
本実施形態に係るキサンタンガムの含有量を所定範囲とする手法として、後記するように、混合工程において、所定量のキサンタンガムを混合するという手法が挙げられる。
【0025】
(不溶性固形物の比重/液の比重)
本実施形態に係る飲料は、不溶性固形物の比重を飲料を構成する液の比重で割った値である「不溶性固形物の比重/液の比重」が1よりも大きいことが好ましく、1.01以上であるのがより好ましい。「不溶性固形物の比重/液の比重」が所定値以上であることにより、不溶性固形物の分散性を向上させることができる。
また、「不溶性固形物の比重/液の比重」が1.05以下であるのが好ましく、1.03以下であるのがより好ましく、1.02以下であることがさらに好ましい。「不溶性固形物の比重/液の比重」が所定値以下であることにより、不溶性固形物の分散性を向上させることができる。
【0026】
なお、液の比重は、例えば、測定された当該液のBrix(糖度)に基づいて、比重糖度換算表から算出してもよい。比重糖度換算表としては、公知のものを用いることができるが、例えば、最新・ソフトドリンクス(平成15年9月30日発行、編纂:最新・ソフトドリンクス編集委員会、出版:株式会社光琳)の1032~1033頁に掲載されている表を用いることができる。液のBrixの測定は、例えば、屈折糖度計により行うことができる。屈折糖度計としては、例えば、ATAGO社製のデジタル屈折計rx-5000αを挙げることができる。
また、不溶性固形物の比重は、以下の方法により算出することができる。すなわち、まず、水と不溶性固形物とが混合された混合液を1000ml準備する。そして、混合液中の水と不溶性固形物とを分離して、水の重量と、不溶性固形物の重量と、を測定する。この場合、水の比重は1であることから、水の体積が算出される。また、1000mlから水の体積を減じて、不溶性固形物の体積を算出する。そして、得られた不溶性固形物の重量と、不溶性固形物の体積と、から不溶性固形物の比重を算出する。
なお、不溶性固形物が当該不溶性固形物の内部に存在する水分と、当該不溶性固形物の外部に存在する水分とが相互に行き来できる構造を有する場合、不溶性固形物の比重は、液の比重の値と、上述の算出方法により求められた不溶性固形物の比重から水の比重(具体的には、1)を減じた値と、を合算した値とする。
【0027】
本実施形態に係る飲料は、本発明の所期の効果が阻害されない範囲で飲料として通常配合される甘味料、高甘味度甘味料、酸化防止剤、香料、酸味料、塩類、着色料、pH調整剤、強化剤、乳化剤等(以下、適宜「添加剤」という)を添加することができる。
甘味料としては、例えば、果糖ぶどう糖液糖、グルコース、ガラクトース、マンノース、フルクトース、ラクトース、スクロース、マルトース、グリコーゲンやデンプン等を用いることができる。
高甘味度甘味料としては、例えば、ネオテーム、アセスルファムカリウム、スクラロース、サッカリン、サッカリンナトリウム、グリチルリチン酸二ナトリウム、チクロ、ズルチン、ステビア、グリチルリチン、ソーマチン、モネリン、アスパルテーム、アリテーム等を用いることができる。
酸化防止剤としては、例えば、ビタミンC、ビタミンE、ポリフェノール等を用いることができる。
酸味料としては、例えば、アジピン酸、クエン酸、クエン酸三ナトリウム、グルコノデルタラクトン、グルコン酸、グルコン酸カリウム、グルコン酸ナトリウム、コハク酸、コハク酸一ナトリウム、コハク酸二ナトリウム、酢酸ナトリウム、DL-酒石酸、L-酒石酸、DL-酒石酸ナトリウム、L-酒石酸ナトリウム、二酸化炭素、乳酸、乳酸ナトリウム、氷酢酸、フマル酸、フマル酸一ナトリウム、DL-リンゴ酸、DL-リンゴ酸ナトリウム、リン酸等を用いることができる。
塩類としては、例えば、食塩、酸性りん酸カリウム、酸性りん酸カルシウム、りん酸アンモニウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、メタ重亜硫酸カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、硝酸カリウム、硫酸アンモニウム等を用いることができる。
着色料としては、例えば、カラメル色素、アントシアニン、クチナシ色素、果汁色素、野菜色素、合成色素等を用いることができる。
pH調整剤としては、例えば、重曹、フィチン酸、乳酸、クエン酸、アスコルビン酸等を用いることができる。
強化剤としては、例えば、乳酸カルシウム、発酵乳酸カルシウム等を用いることができる。
乳化剤としては、例えば、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、サポニン、レシチン等を用いることができる。
なお、前記した添加剤は、一般に市販されているものを使用することができる。
【0028】
(容器詰め飲料)
本実施形態に係る飲料は、各種容器に入れて提供することができる。各種容器に飲料を詰めることにより、長期間の保管による品質の劣化を好適に防止することができる。
なお、容器は密閉できるものであればよく、金属製(アルミニウム製またはスチール製等)のいわゆる缶容器・樽容器を適用することができる。また、容器は、ガラス容器、ペットボトル容器、紙容器、パウチ容器等を適用することもできる。容器の容量は特に限定されるものではなく、現在流通しているどのようなものも適用することができる。なお、気体、水分および光線を完全に遮断し、長期間常温で安定した品質を保つことが可能な点から、金属製の容器を適用することが好ましい。
【0029】
以上説明したように、本実施形態に係る飲料によれば、不溶性固形物と寒天とキサンタンガムとを含有し、25℃における粘度が所定範囲に特定されており、寒天とキサンタンガムとの関係が所定の式を満たすことから、不溶性固形物の分散状態が保たれているとともに、飲料適正が高くなっている。
【0030】
[飲料の製造方法]
次に、本実施形態に係る飲料の製造方法を説明する。
本実施形態に係る飲料の製造方法は、混合工程と、後処理工程と、を含む。
【0031】
混合工程では、混合タンクに、水、不溶性固形物、寒天、キサンタンガム、添加剤等を適宜投入して混合後液を製造する。
この混合工程において、25℃における粘度が9.0mPa・s以上30.0mPa・s以下となり、且つ、寒天とキサンタンガムとの関係が前記した式(1)を満たすように各原料を混合し、調整すればよい。
【0032】
そして、後処理工程では、例えば、殺菌、容器への充填等の処理を必要に応じて選択的に行う。
なお、後処理工程の殺菌処理は、殺菌装置での不溶性固形物の詰りを防ぐ観点から、シェルアンドチューブ殺菌によって行うのが好ましいが、同様の処理を行うことができるのであればこれに限定されることなく適用可能である。また、後処理工程の充填処理は、飲料品の製造において通常行われる程度にクリーン度を保ったクリーンルームにて充填するのが好ましい。
そして、後処理工程での各処理の順序は特に限定されない。
【0033】
なお、混合工程および後処理工程にて行われる各処理は、RTD飲料等を製造するために一般的に用いられている設備にて行うことができる。
【0034】
以上説明したように、本実施形態に係る飲料の製造方法によれば、不溶性固形物と寒天とキサンタンガムとを添加し、25℃における粘度を所定範囲とし、寒天とキサンタンガムとの関係が所定の式を満たす工程を含んでいることから、不溶性固形物の分散状態が保たれているとともに、飲料適正が高くなった飲料を製造することができる。
【0035】
[飲料の不溶性固形物分散性および飲料適正の向上方法]
次に、本実施形態に係る飲料の不溶性固形物分散性および飲料適正の向上方法について説明する。
本実施形態に係る飲料の不溶性固形物分散性および飲料適正の向上方法は、不溶性固形物と寒天とキサンタンガムとを添加し、25℃における粘度を所定範囲に調整し、寒天とキサンタンガムとの関係が前記した式(1)を満たすように調整する。
なお、各成分の含有量等については、前記した「飲料」において説明した内容と同じである。
【0036】
以上説明したように、本実施形態に係る飲料の不溶性固形物分散性および飲料適正の向上方法によれば、飲料において不溶性固形物と寒天とキサンタンガムとを添加し、25℃における粘度を所定範囲に調整し、寒天とキサンタンガムとの関係が所定の式を満たすように調整することから、不溶性固形物の分散状態を保てるとともに、飲料適正を高めることができる。
【0037】
なお、本実施形態に係る飲料、飲料の製造方法、ならびに、飲料の不溶性固形物分散性および飲料適正の向上方法において、明示していない特性や条件については、従来公知のものであればよく、前記特性や条件によって得られる効果を奏する限りにおいて、限定されないことは言うまでもない。
【実施例】
【0038】
次に、本発明の要件を満たす実施例とそうでない比較例とを例示して、本発明に係る飲料、飲料の製造方法、ならびに、飲料の不溶性固形物分散性および飲料適正の向上方法について説明する。
【0039】
<試験1>
(サンプルの準備)
寒天、キサンタンガム、不溶性固形物、pH調整剤、強化剤、乳化剤、ビタミンC、水を混合してサンプル液を準備した。不溶性固形物は、シロップ漬けにした一辺が3.2mmの立方体の梨を用いた。ただし、一部のサンプルについては、キサンタンガムの代わりに、CMC(カルボキシメチルセルロース)またはペクチンを用いた。また、液のBrixは10となり、pHは2.9となるように調整した。
なお、各サンプルについて、寒天、キサンタンガム、不溶性固形物の含有量は、表1に示すとおりとした。ただし、サンプル15は、キサンタンガムの代わりにCMCを用い、サンプル16は、キサンタンガムの代わりにペクチンを用いた。
また、液の比重は、測定された当該液のBrix(糖度)に基づいて、比重糖度換算表から算出した。詳細は、前述した方法のとおりである。不溶性固形物の比重は、前述した方法により算出した。
【0040】
(試験内容)
各サンプルについて、25℃における粘度を測定するとともに、分散性評価および官能評価を行った。
[粘度の測定]
粘度は、東機産業社製のTVB-10を用い、温度を25℃、回転数を60ppmとして測定した。ロータは、粘度に応じたものを用いた。
【0041】
[分散性評価]
280mlのPET容器にサンプルを詰めた。容器詰めのサンプルを振とう機(装置名:SKH-01(アズワン社製))に横向きにセットし、120rpmで35秒攪拌した。その後、容器を立たせてから40秒後と60秒後の容器内の不溶性固形物の分散の程度を評価した。
分散性の評価に当たっては、液の下端から液の上端までを5等分し、不溶性固形分が下端から2/5までしか存在しない場合を「×」とし、それ以外の場合を「○」と評価した。そして、攪拌から40秒経過後の分散状態が「○」のものを不溶性固形物の分散状態が保たれているものとした。
【0042】
[官能評価]
訓練された識別能力のあるパネル4名が前記の方法により製造した各サンプルを試飲し、下記評価基準に則って滑らかな口当たりで後切れのよい程度を、サンプル4を5点として1~5点の5段階評価で独立点数付けし、その平均値を算出した。そして、3点以上を飲料適正が高いものとし、3.7点以上を飲料適正がより高いものとした。
【0043】
(評価基準)
5点:サンプル4と同等の口当たりの滑らかさおよび後切れのよさがあるもの
4点:サンプル4よりも、口当たりの滑らかさおよび後切れのよさのうちの少なくとも一方がわずかに劣るもの
3点:サンプル4よりも、口当たりの滑らかさおよび後切れのよさのうちの少なくとも一方が少し劣るもの
2点:サンプル4よりも、口当たりの滑らかさおよび後切れのよさのうちの少なくとも一方が劣るもの
1点:サンプル4よりも、口当たりの滑らかさおよび後切れのよさのうちの少なくとも一方が非常に劣るもの
【0044】
表1に、各サンプルの規格を示すとともに、各評価の結果を示す。
【0045】
【0046】
(試験結果の検討)
表1に示すように、サンプル3~5、8、10は、不溶性固形物と寒天とキサンタンガムとを含有し、25℃における粘度が所定範囲に特定されており、寒天とキサンタンガムとの関係が所定の式を満たすことから、不溶性固形物の分散状態が保たれているとともに、飲料適正が高くなっていることが確認できた。
また、サンプル4、5、10は、25℃における粘度が好ましい範囲であるため、攪拌から60秒経過後の分散状態も「○」であり、不溶性固形物の分散状態がより良好なものとなっていることが確認できた。
また、サンプル3、4、5は、寒天の含有量が好ましい範囲であるため、飲料適正がより高くなっていることが確認できた。
【0047】
一方、サンプル1は、25℃における粘度が低いことから、不溶性固形物の分散状態が悪かった。また、サンプル1は、キサンタンガムの含有量が少ないことから、飲料適正が低かった。
サンプル2は、25℃における粘度が低いことから、不溶性固形物の分散状態が悪かった。
サンプル6、7、9、11は、式(1)を満たさないことから、飲料適正が低かった。
サンプル12は、25℃における粘度が低いことから、不溶性固形物の分散状態が悪かった。また、サンプル12は、キサンタンガムの含有量が少ないことから、飲料適正が低かった。
サンプル13は、キサンタンガムの含有量が少なく、また、式(1)を満たさないことから、飲料適正が低かった。
サンプル14は、式(1)を満たさないことから、飲料適正が低かった。
サンプル15は、キサンタンガムの代わりにCMCを用いているため、不溶性固形物の分散状態が悪く、且つ、飲料適正が低かった。
サンプル16は、キサンタンガムの代わりにペクチンを用いているため、不溶性固形物の分散状態が悪く、且つ、飲料適正が低かった。
【0048】
<試験2>
試験2は、試験1のサンプル4について、「不溶性固形物の比重/液の比重」を変化させて「不溶性固形物の比重/液の比重」の値による不溶性固形物の分散状態の影響を確認したものである。
【0049】
(サンプルの準備)
寒天、キサンタンガム、不溶性固形物、pH調整剤、強化剤、乳化剤、ビタミンC、水を混合してサンプル液を準備した。不溶性固形物は、シロップ漬けにした一辺が3.2mmの立方体の梨を用いた。また、液のpHは2.9となるように調整した。また、果糖ぶどう糖液糖を加えて液のBrixを表2に示す値に調整して「不溶性固形物の比重/液の比重」を表2に示す値に調整した。液の比重および不溶性固形物の比重の算出方法は、試験1と同様である。
なお、各サンプルについて、寒天、キサンタンガム、不溶性固形物の含有量は、表2に示すとおりとした。
【0050】
(試験内容)
各サンプルについて、25℃における粘度を測定するとともに、分散性評価を行った。粘度の測定および分散性評価の方法は、試験1と同様である。
【0051】
表2に、各サンプルの規格を示すとともに、評価の結果を示す。
【0052】
【0053】
(試験結果の検討)
表2に示すように、不溶性固形物の比重/液の比重」が表2の範囲であれば、不溶性固形物の分散状態が保たれていることが確認できた。