(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-31
(45)【発行日】2022-09-08
(54)【発明の名称】押ボタン装置および封入体
(51)【国際特許分類】
H01H 13/02 20060101AFI20220901BHJP
H01H 13/14 20060101ALI20220901BHJP
H01H 9/16 20060101ALI20220901BHJP
【FI】
H01H13/02 B
H01H13/14 Z
H01H9/16 G
(21)【出願番号】P 2018097328
(22)【出願日】2018-05-21
【審査請求日】2021-05-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000142595
【氏名又は名称】株式会社栗本鐵工所
(74)【代理人】
【識別番号】100149870
【氏名又は名称】芦北 智晴
(72)【発明者】
【氏名】赤岩 修一
(72)【発明者】
【氏名】須田 裕美
【審査官】高橋 裕一
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-141957(JP,A)
【文献】特開2016-173774(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2009-0122516(KR,A)
【文献】特開2003-157742(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 13/02
H01H 13/14
H01H 9/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
押圧されることで変形する第1膜部と、
前記第1膜部の裏側に設けられた壁部と、
前記第1膜部と前記壁部との間に形成された押圧空間部と、
を備える押ボタン装置であって、
前記壁部に前記押圧空間部と連通する貫通路が形成され、
前記押圧空間部の圧力に応じて前記壁部の裏側で弾性変形する第2膜部が前記貫通路または前記壁部の裏側に設けられ、
前記押圧空間部から前記貫通路を介して前記第2膜部に至るまでの空間部に磁気粘性流体が封入され、
前記貫通路は、前記壁部に形成された孔から、前記壁部の裏面の前記孔の周縁部に形成された筒部の内側に亘って形成されたものであり、
前記貫通路内に磁場を印加することが可能な磁場発生装置が設けられた、
ことを特徴とする押ボタン装置。
【請求項2】
押圧されることで変形する第1膜部と、
前記第1膜部の裏側に設けられた壁部と、
前記第1膜部と前記壁部との間に形成された押圧空間部と、
を備える押ボタン装置であって、
前記壁部に前記押圧空間部と連通する貫通路が形成され、
前記押圧空間部の圧力に応じて前記壁部の裏側で弾性変形する第2膜部が前記貫通路または前記壁部の裏側に設けられ、
前記押圧空間部から前記貫通路を介して前記第2膜部に至るまでの空間部に磁気粘性流体が封入され、
前記貫通路内に磁場を印加することが可能な磁場発生装置が設けられ
、
前記壁部は、非磁性体で構成されている、
ことを特徴とする押ボタン装置。
【請求項3】
押圧されることで変形する第1膜部と、
前記第1膜部の裏側に設けられた壁部と、
前記第1膜部と前記壁部との間に形成された押圧空間部と、
を備える押ボタン装置であって、
前記壁部に前記押圧空間部と連通する貫通路が形成され、
前記押圧空間部の圧力に応じて前記壁部の裏側で弾性変形する第2膜部が前記貫通路または前記壁部の裏側に設けられ、
前記押圧空間部から前記貫通路を介して前記第2膜部に至るまでの空間部に磁気粘性流体が封入され、
前記貫通路内に磁場を印加することが可能な磁場発生装置が設けられ、
前記磁場発生装置は、前記貫通路内に変動磁場を印加可能なものである、
ことを特徴とする押ボタン装置。
【請求項4】
押圧されることで変形する第1膜部と、
前記第1膜部の裏側に設けられた壁部と、
前記第1膜部と前記壁部との間に形成された押圧空間部と、
を備える押ボタン装置であって、
前記壁部に前記押圧空間部と連通する貫通路が形成され、
前記押圧空間部の圧力に応じて前記壁部の裏側で弾性変形する第2膜部が前記貫通路または前記壁部の裏側に設けられ、
前記押圧空間部から前記貫通路を介して前記第2膜部に至るまでの空間部に磁気粘性流体が封入され、
前記貫通路内に磁場を印加することが可能な磁場発生装置が設けられ、
前記貫通路は、前記壁部の裏面に形成された筒部内に形成されており、
前記磁場発生装置は、
前記筒部の外周面に巻かれたコイルと、
前記コイルに電流を供給する給電装置と、
を有する、
ことを特徴とする押ボタン装置。
【請求項5】
押圧されることで変形する第1膜部と、
前記第1膜部の裏側に設けられた壁部と、
前記第1膜部と前記壁部との間に形成された押圧空間部と、
を備える押ボタン装置であって、
前記壁部に前記押圧空間部と連通する貫通路が形成され、
前記押圧空間部の圧力に応じて前記壁部の裏側で弾性変形する第2膜部が前記貫通路または前記壁部の裏側に設けられ、
前記押圧空間部から前記貫通路を介して前記第2膜部に至るまでの空間部に磁気粘性流体が封入され、
前記貫通路内に磁場を印加することが可能な磁場発生装置が設けられ、
前記貫通路内に、磁性体が挿入され、かつ、当該磁性体が、前記貫通路内での磁気粘性流体の流路を確保できる形状および大きさのものである、
ことを特徴とする押ボタン装置。
【請求項6】
請求項5に記載の押ボタン装置において、
前記磁性体は、一端部が第1膜部に固着または当接され、他端部が第2膜部に固着または当接された柱状体である、ことを特徴とする押ボタン装置。
【請求項7】
請求項1
ないし請求項5のいずれか一項に記載の押ボタン装置において、
前記第1膜部が押圧されていないとき、前記第1膜部が最大限に膨らんだ初期状態を形成し、
前記第1膜部が押圧されると、前記押圧空間部内の磁気粘性流体が前記貫通路を通過して前記第2膜部を弾性膨張させ、
前記第1膜部の押圧が解放されると、前記第2膜部の弾性復元力によって、前記押圧空間部内に磁気粘性流体が還流して前記第1膜部が初期状態に復帰するように、
前記第1膜部および前記第2膜部の弾性力が設定されている、
ことを特徴とする押ボタン装置。
【請求項8】
押圧されることで変形する第1膜部と、
前記第1膜部の裏側に設けられた壁部と、
前記第1膜部と前記壁部との間に形成された押圧空間部と、
を備える封入体であって、
前記壁部に前記押圧空間部と連通する貫通路が形成され、
前記押圧空間部の圧力に応じて前記壁部の裏側で弾性変形する第2膜部が前記貫通路または前記壁部の裏側に設けられ、
前記押圧空間部から前記貫通路を介して前記第2膜部に至るまでの空間部に磁気粘性流体が封入され、
前記貫通路は、前記壁部に形成された孔から、前記壁部の裏面の前記孔の周縁部に形成された筒部の内側に亘って形成されたものであり、
前記貫通路内に磁場を印加することで押圧力が変化する封入体。
【請求項9】
押圧されることで変形する第1膜部と、
前記第1膜部の裏側に設けられた壁部と、
前記第1膜部と前記壁部との間に形成された押圧空間部と、
を備える封入体であって、
前記壁部に前記押圧空間部と連通する貫通路が形成され、
前記押圧空間部の圧力に応じて前記壁部の裏側で弾性変形する第2膜部が前記貫通路または前記壁部の裏側に設けられ、
前記押圧空間部から前記貫通路を介して前記第2膜部に至るまでの空間部に磁気粘性流体が封入され、
前記貫通路内に磁場を印加することで押圧力が変化
し、
前記壁部は、非磁性体で構成されている、
封入体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、押圧するときの感触を変化させることが可能な押ボタン装置および封入体に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、剛性の高い板材と、ゴム製の薄膜体との間に粘性流体を封入した押ボタンスイッチ(同文献では「入力装置」)が開示されている。この押ボタンスイッチでは、押下時に粘性流体の圧力変化が感触としてユーザの指に伝わるようになっている。
【0003】
また、特許文献2には、スイッチ入力時のタッチ感触をコントロールできるタッチ感触可変スイッチが開示されている。このタッチ感触可変スイッチは、キートップ内に形成した中空体内に液晶又は電気粘性流体を封入している。中空体の内部は、2極の電極板で上下2室に区画されている。中空体に封入された液晶又は電気粘性流体は、電極によって電場が印加されることで粘性を変化させ、スイッチ入力時のタッチ感触を変化させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2003-157742号公報
【文献】特開平07-141957号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された技術によれば、ボタンを押下している感触をユーザに与えることはできるものの、その感触を変化させることはできない。
【0006】
特許文献2に開示された技術によれば、ボタンを押下しているときの感触を変化させることはできるものの、ボタンの体積が殆ど変化しないため、感触の変化を分かり易くユーザに伝えることが難しい。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みて創案されたものであり、押圧しているときの感触の変化を分かり易くユーザに伝えることができる押ボタン装置および封入体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係る押ボタン装置は、押圧されることで変形する第1膜部と、前記第1膜部の裏側に設けられた壁部と、前記第1膜部と前記壁部との間に形成された押圧空間部と、を備える。前記壁部に前記押圧空間部と連通する貫通路が形成されている。前記押圧空間部の圧力に応じて前記壁部の裏側で弾性変形する第2膜部が前記貫通路または前記壁部の裏側に設けられている。前記押圧空間部から前記貫通路を介して前記第2膜部に至るまでの空間部に磁気粘性流体が封入されている。前記貫通路内に磁場を印加することが可能な磁場発生装置が設けられている。
【0009】
かかる構成を備える押ボタン装置によれば、ボタン(第1膜部)を押圧しているときの感触の変化を分かり易くユーザに伝えることが可能となる。
【0010】
前記構成を備える押ボタン装置において、前記第1膜部が押圧されていないとき、前記第1膜部が最大限に膨らんだ初期状態を形成し、前記第1膜部が押圧されると、前記押圧空間部内の磁気粘性流体が前記貫通路を通過して前記第2膜部を弾性膨張させ、前記第1膜部の押圧が解放されると、前記第2膜部の弾性復元力によって、前記押圧空間部内に磁気粘性流体が還流して前記第1膜部が初期状態に復帰するように、前記第1膜部および前記第2膜部の弾性力が設定されている、ことが望ましい。
【0011】
かかる構成を備える押ボタン装置によれば、第1膜部の押圧が解放されると、初期状態に復帰するため、繰り返し本装置を使用することができる。
【0012】
前記構成を備える押ボタン装置において、前記磁場発生装置は、前記貫通路内に変動磁場を印加可能なものである、ことが望ましい。
【0013】
かかる構成を備える押ボタン装置によれば、磁気粘性流体に変動磁場を印加することで、ユーザに付与する感触を変動させることができる。
【0014】
前記構成を備える押ボタン装置において、例えば、前記貫通路を、前記壁部の裏面に形成された筒部内に形成し、前記磁場発生装置を、前記筒部の外周面に巻かれたコイルと、前記コイルに電流を供給する給電装置と、を有するものとすることができる。
【0015】
かかる構成を備える押ボタン装置によれば、本装置全体をコンパクトな構造にすることができる。
【0016】
前記構成を備える押ボタン装置において、前記貫通路内に、磁性体が挿入され、かつ、当該磁性体が、前記貫通路内で磁気粘性流体の流路を確保できる形状および大きさのものである、ことが望ましい。
【0017】
かかる構成を備える押ボタン装置によれば、貫通路内で磁性体の周囲を流れる磁気粘性流体に強い磁場を付与することができ、ボタンを押圧しているときの感触の変化をより効率良くユーザに伝えることができる。
【0018】
前記構成を備える押ボタン装置において、前記磁性体は、例えば、一端部が第1膜部に固着または当接し、他端部が第2膜部に固着または当接された柱状体とすることができる。
【0019】
本発明の一態様に係る封入体は、押圧されることで変形する第1膜部と、前記第1膜部の裏側に設けられた壁部と、前記第1膜部と前記壁部との間に形成された押圧空間部と、を備える。前記壁部に前記押圧空間部と連通する貫通路が形成されている。前記押圧空間部の圧力に応じて前記壁部の裏側で弾性変形する第2膜部が前記貫通路または前記壁部の裏側に設けられている。前記押圧空間部から前記貫通路を介して前記第2膜部に至るまでの空間部に磁気粘性流体が封入されている。この封入体は、前記貫通路内に磁場を印加することで押圧力が変化する。
【0020】
かかる構成を備える封入体によれば、第1膜部を押圧しているときの感触の変化を分かり易くユーザに伝えることが可能となる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、押圧しているときの感触の変化を分かり易くユーザに伝えることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本実施形態に係る押ボタン装置の一例を示す断面図であって、第1膜部が押圧されていない状態を示す図である。
【
図2】本実施形態に係る押ボタン装置の一例を示す断面図であって、第1膜部が押圧されている状態を示す図である。
【
図4】他の実施形態に係る押ボタン装置の一例を示す断面図である。
【
図6】
図4のB-B断面図であって、他の例に係る断面図である。
【
図7】他の実施形態に係る押ボタン装置の例を示す断面図であって、特に、第2膜部の変形例を示す図である。
【
図8】他の実施形態に係る押ボタン装置の例を示す断面図であって、特に、第2膜部の変形例を示す図である。
【
図9】柱状体を省いた押ボタン装置の例を示す断面図であって、第1膜部が押圧されていない状態を示す図である。
【
図10】柱状体を省いた押ボタン装置の例を示す断面図であって、第1膜部が押圧されている状態を示す図である。
【
図11】ばねを追加した押ボタン装置の例を示す断面図であって、第1膜部が押圧されていない状態を示す図である。
【
図12】ばねを追加した押ボタン装置の例を示す断面図であって、第1膜部が押圧されている状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態に係る押ボタン装置および封入体について図面を参照しながら説明する。
図1に示すように、押ボタン装置1は、第1膜部2、壁部3、第2膜部4、磁気粘性流体5、磁場発生装置6、カバー7、柱状体8等を備えている。封入体9は、押ボタン装置1の一部を構成し、第1膜部2、壁部3、第2膜部4、磁気粘性流体5、柱状体8等を備えている。
【0024】
第1膜部2は、ユーザが指、手等で押圧する部分であり、ユーザに押圧されることで容易に変形する。本実施形態の第1膜部2は、厚さ方向から視て円形に形成されており、押圧されていない状態では、横方向から視て、
図1に示すように、中央部が盛り上がった形となっている。第1膜部2の材料には、弾性変形可能なゴム状弾性体、例えばブチルゴム、エチレンプロピレンゴム、シリコーンゴム等の合成ゴム、熱可塑性エラストマー等が使用される。
【0025】
壁部3は、第1膜部2の裏側に設けられている。壁部3には、第1膜部2の外周部が液密状態を確保して固定されている。
図1に示す例では、第1膜部2の外周部が、壁部3の表面に形成された挟持部11と壁部3とに挟持されている。壁部3の材料には、例えば、ポリプロピレン、ポリアミド樹脂等の熱可塑性樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂等の熱硬化性樹脂などの硬質樹脂を使用することができる。なお、壁部3の材質は非磁性体で構成されていることが望ましい。
【0026】
壁部3と第1膜部2との間には、ユーザの押圧操作によって押し潰される押圧空間部12が形成される。また、壁部3の第1膜部2で覆われた部分には、押圧空間部12と壁部3の裏側とを連通する貫通路13が形成されている。本実施形態では、貫通路13は、壁部3に形成された孔から壁部3の裏面に形成された筒部14内に亘って形成されている。
【0027】
第2膜部4は、貫通路13から下方(押圧空間部12と反対側)に流出する流体を漏れなく受けるように設けられており、押圧空間部12内の圧力上昇又は圧力減少に応じて壁部3の裏側で弾性膨張又は弾性収縮する。
図1に示すように、第2膜部4は、半径方向(横方向)への変形を促すために、第1膜部2が押圧されていないときにも貫通路13から飛び出していることが望ましい。なお、第2膜部4の材料には、例えば、ゴム状弾性体を使用することができる。
【0028】
磁気粘性流体5は、押圧空間部12から貫通路13を介して第2膜部4に至るまでの空間部16(以下「磁気粘性流体封入空間16」ともいう。)に封入されている。磁気粘性流体5は、磁性粒子を分散媒に分散させてなる液体であり、特にその磁性粒子がナノサイズの金属粒子(金属ナノ粒子)からなるものが使用できる。磁性粒子は磁化可能な金属材料からなり、金属材料に特に制限はないが軟磁性材料が好ましい。軟磁性材料としては、例えば鉄、コバルト、ニッケル及びパーマロイ等の合金が挙げられる。分散媒は、特に限定されるものではないが、一例としてパラフィン系オイル、α-オレフィン系オイル等の鉱物油系オイルや、疎水性のシリコーンオイルを挙げることができる。磁気粘性流体における磁性粒子の配合量は、例えば3~40vol%とすればよい。磁気粘性流体にはまた、所望の各種特性を得るために、各種の添加剤を添加することも可能である。
【0029】
磁場発生装置6は、貫通路13内に磁場を印加するために設けられている。本実施形態では、磁場発生装置6は、コイル17、給電装置18等で構成されている。
【0030】
コイル17は、筒部14の外周面に巻かれており、給電線19を介して給電装置18から電流が供給される。コイル17が巻かれている筒部14の壁部3と反対側には、鍔14aが形成され、この鍔14aと壁部3と筒部14とでボビンを形成している。
【0031】
給電装置18は、コイル17に供給する電流値を制御する機能を有する。本実施形態では、給電装置18は、コイル17に対して一定の電流値、または変動する電流値の何れをも供給することができる。変動する電流値としては、電流値の時間変化が矩形波となるものが一例として挙げられる。
【0032】
カバー7は、壁部3の裏側に露出した第2膜部4を覆うように設けられている。カバー7は、万一、磁気粘性流体5が壁部3の裏側に漏出した場合に、その磁気粘性流体5を受け止める役割を果たす。本実施形態では、カバー7は、有底円筒体状のものであり、第2膜部4のほか、コイル17の外周も覆っている。カバー7の材質としては、磁性体を用いることが好ましい。磁性体からなるカバー7を使用することで、コイル17が生じる磁束を好ましい状態に整えることができる。
【0033】
柱状体8は、磁性体を用いて構成されている。柱状体8は、貫通路13内に挿入されているものの、貫通路13を完全に塞いている訳ではない。すなわち、貫通路13内での磁気粘性流体5の流路を十分に確保できるように、当該柱状体8の形状および大きさが設定されている。本実施形態では、柱状体8は、一端部が第1膜部に固着(例えば、融着、接着等)または当接され、他端部が第2膜部に固着(例えば、融着、接着等)または当接されている。また、本実施形態では柱状体8は円柱体であるが、三角柱体、四角柱体等の角柱体を使用してもよい。
【0034】
次に、押ボタン装置1の各部の動作について説明する。
【0035】
図1に示すように、第1膜部2がユーザに押圧されていない初期状態では、第1膜部2は最大限に膨らんだ状態を形成し、第2膜部4は最小限に収縮した状態を形成する。
【0036】
次に、ユーザが第1膜部2を手、指等で押圧すると、第1膜部2の見かけ上の大きさが小さくなる。同時に、押圧空間部12内の磁気粘性流体5が貫通路13を通過して第2膜部4を弾性膨張させる。なお、柱状体8は、第1膜部2および第2膜部4の形状変化に伴ってユーザが押圧する方向に移動する。
【0037】
このとき、磁場発生装置6により、貫通路13内を通過する磁気粘性流体5に印加する磁場を変化させれば、磁場の変化に応じた感触をユーザの指に付与することができる。磁場発生装置6が貫通路内に印加する磁場の大きさ、タイミング等は特に限定されず、押ボタン装置1が適用される製品等の種類に応じて適宜決めることができる。磁場発生装置6が貫通路13内の磁気粘性流体に磁場を印加する形態としては、(1)常時、強さが一定の磁場又は強さが周期的に変動する磁場を連続的又は断続的に印加する、(2)ユーザが第1膜部2を押圧している時に限り、強さが一定の磁場又は強さが周期的に変動する磁場を印加する、等が挙げられる。
【0038】
このように、ユーザが第1膜部2を押圧する際、第1膜部2の裏側にある押圧空間部12が小さくなりながら(第1膜部2が変位しながら)、磁場の状態に応じた感触の変化が第1膜部2を介してユーザに伝わるので、ユーザには、第1膜部を押圧しているときの感触の変化を分かり易く伝えることができる。
【0039】
その後、ユーザが第1膜部2の押圧を解放すると、第2膜部4の弾性復元力によって、押圧空間部12内に磁気粘性流体5が還流し、第1膜部2および第2膜部4は、
図1に示す初期状態に復帰する。すなわち、初期状態に復帰できるように、第1膜部2および第2膜部4の弾性力が設定されている。
【0040】
以上の説明から明らかなように、本実施形態に係る押ボタン装置1によれば、ユーザに対して、第1膜部を押圧しているときの感触の変化を分かり易く伝えることができる。
【0041】
また、本実施形態に係る押ボタン装置1によれば、磁場発生装置6のコイル17が壁部3の裏面の貫通路13の周囲に巻設されているので、装置1全体をコンパクトな構造にすることができる。
【0042】
また、本実施形態に係る押ボタン装置1によれば、磁性体からなる柱状体8が貫通路13内に挿入されているので、給電装置18における消費電力を抑えながら、効率良く、貫通路13内で柱状体8の周囲を流れる磁気粘性流体に強い磁場を付与することができる。
【0043】
<他の実施形態>
既述した実施形態において、コイル17、給電装置18等からなる磁場発生装置を
図4および
図5に示すように、コイル21、給電装置18、ヨーク22等からなる磁場発生装置6Aに置きかえてもよい。この場合、コイル21をヨーク22の中間部に巻設する。ヨーク22は、両端部22a、22bを対向させ、その間に筒部14(貫通路13)を挟むように設置する。給電装置18によりコイル21に電流が供給されると、両端部22a,22bの間の貫通路13内の磁気粘性流体5に磁場が印加される。
【0044】
既述した実施形態においては、貫通路13および筒部14の断面形状は円形であるが、
図4に例示する磁場発生装置6Aを適用する場合は、
図6に示すように、貫通路13A、筒部14Aおよび柱状体8Aの断面形状を矩形状とし、ヨーク22Aの両端部22Aa,22Abは筒部14の側面に沿う形状としてもよい。
【0045】
また、既述した実施形態において、押圧空間部12内の圧力を検知する圧力検知手段を設け、給電装置18が圧力に応じてコイル17,21に給電する電流値を変化させるようにしてもよい。このようにすることで、押圧力に応じて変化する感触をユーザに伝えることができる。また、給電装置18は、押圧空間部12内の圧力値が一定値未満の場合は、コイル17,21に給電せず、圧力値が一定値以上のときに、コイル17,21に給電するようにしてもよい。このようにすることで、押圧力がある程度強くなった時に、硬くなる感触をユーザに伝えることができる。
【0046】
既述した実施形態では、第2膜部4は、壁部3の表面に亘って形成されていたが、第2膜部の形状は、上述の作用効果を奏する限り変更することが可能である。例えば
図7(a)に示すように、端部が筒部14の上部に固着された第2膜部4A、あるいは、
図7(b)に示すように、端部が筒部14の下部に固着された第2膜部4Bとすることもできる。また、例えば
図8に示すように、壁部3の裏側に設けられた第2膜部4Cとすることもできる。なお、
図7および
図8では、給電装置18の図示を省略している。
【0047】
既述した実施形態では、貫通路13内に柱状体8が挿入されていたが、例えば
図1および
図2に示す押ボタン装置1において柱状体8を省いた、
図9および
図10に示すような押ボタン装置としても十分に効果が得られる場合がある。もちろん、
図4~
図8に示す押ボタン装置において柱状体8を省いたものについても同様のことが言える。
【0048】
また、既述した実施形態において、膨張した第2膜部4の収縮を補助するために、第2膜部4を貫通路13側に押圧する収縮補助手段を設けてもよい。例えば
図11および
図12に示す収縮補助手段23は、第2膜部4とカバー7との間に設けられたスプリング24を用いて構成されている。この収縮補助手段23は、第2膜部4が
図12に示すように膨張した後、押圧空間部12の圧力が減少して、第2膜部4が収縮しようとするときに、第2膜部4を貫通路13側に押圧して第2膜部4の収縮を補助する。なお、
図11および
図12に示す例では、スプリング24の一端部は、カバー7に形成されたスプリングリテーナ25に支持されている。スプリング24の他端部には、第2膜部4に当接する部分が平坦面又は湾曲面に形成された当接アダプタ26が取り付けられている。収縮補助手段の適用は、
図1および
図2に示す押ボタン装置に限らず、既述した全ての押ボタン装置(
図4~
図10)に適用することが可能である。
【0049】
なお、以上に説明した押ボタン装置は、例えば、電路を開閉するスイッチを追加することで押ボタンスイッチとして使用することができる。もちろん、押ボタン装置1の用途は押ボタンスイッチに限定されるわけではない。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明は、例えば、押ボタンスイッチに利用することができる。
【符号の説明】
【0051】
1 押ボタン装置
2 第1膜部
3 壁部
4 第2膜部
5 磁気粘性流体
6 磁場発生装置
8 柱状体(磁性体)
9 封入体
12 押圧空間部
13 貫通路
14 筒部
17 コイル
18 給電装置