(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-31
(45)【発行日】2022-09-08
(54)【発明の名称】ケーブル保護管用継手及びケーブル保護管路
(51)【国際特許分類】
H02G 9/06 20060101AFI20220901BHJP
H02G 3/06 20060101ALI20220901BHJP
H02G 1/06 20060101ALI20220901BHJP
F16L 7/00 20060101ALI20220901BHJP
【FI】
H02G9/06
H02G3/06
H02G1/06
F16L7/00
(21)【出願番号】P 2018112200
(22)【出願日】2018-06-12
【審査請求日】2021-06-02
(31)【優先権主張番号】P 2017116054
(32)【優先日】2017-06-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【氏名又は名称】山口 洋
(72)【発明者】
【氏名】竹村 茂雄
(72)【発明者】
【氏名】澤田 浩幸
【審査官】北嶋 賢二
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-248774(JP,A)
【文献】特開2003-294178(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 9/06
H02G 3/06
H02G 1/06
F16L 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーブル保護管同士を連結可能に構成されたケーブル保護管用継手であって、
所定の内径を有し、軸線方向に沿って延びる短管と、
前記短管の一端から軸線方向に沿って前記短管から離間する方向に第一拡径端まで進むに従って径方向の外側に向けて漸次拡径する第一拡径管と、
前記第一拡径端から軸線方向に沿って前記短管から離間する方向に第一縮径端まで進むに従って径方向の内側に向けて漸次縮径する第一縮径管と、
前記第一縮径端に連接され、且つ径方向の外側に向けて膨出する第一膨出部と、
前記第一膨出部の前記第一縮径端側とは反対側の端から軸線方向に沿って前記短管から離間する方向に第二拡径端まで進むに従って径方向の外側に向けて漸次拡径する第二拡径管と、
前記短管の他端に対して軸線方向に沿って前記短管から離間する方向に第三拡径端まで進むに従って径方向の外側に向けて拡径する第三拡径管と、
前記第三拡径端から軸線方向に沿って前記短管から離間する方向に第二縮径端まで進むに従って径方向の内側に向けて漸次縮径する第二縮径管と、
前記第二縮径端に連接され、且つ径方向の外側に向けて膨出する第二膨出部と、
前記第二膨出部の前記第二縮径端側とは反対側の端から軸線方向に沿って前記短管から離間する方向に第四拡径端まで進むに従って径方向の外側に向けて漸次拡径する第四拡径管と、を備え、
前記短管の内径は前記ケーブル保護管の内径より大きく且つ前記ケーブル保護管の外径より小さく、
前記短管の一端と前記短管の他端から前記第三拡径管の前記第三拡径端までにおいて最も内径が小さい箇所との間隔が0.01m以上1m以下であり、
前記第一膨出部及び前記第二膨出部の内側に弾性部材が設けられていることを特徴とするケーブル保護管用継手。
【請求項2】
前記第三拡径端の近傍において周方向の少なくとも一部に径方向の内側に向けて突出する突出部が設けられている請求項1に記載のケーブル保護管用継手。
【請求項3】
ケーブル保護管同士を連結するケーブル保護管用継手であって、
内径が前記ケーブル保護管の内径より大きく且つ前記ケーブル保護管の外径より小さい短管と、
前記短管の両端のうち、軸線方向に沿う一方側に位置する一端から前記一方側に延びる第一挿入部と、
前記短管の両端のうち、軸線方向に沿う他方側に位置する他端から前記他方側に延びる第二挿入部と、を備え、
前記第一挿入部は、
前記短管の一端から前記一方側に進むに従って漸次拡径する第一拡径管と、
前記第一拡径管から前記一方側に進むに従って漸次縮径する第一縮径管と、
前記第一縮径管における前記一方側の端に連結され、且つ径方向の外側に向けて膨出する第一膨出部と、
前記第一膨出部から前記一方側に進むに従って漸次拡径する第二拡径管と、を備え、
前記第二挿入部は、
前記短管の他端から前記他方側に進むに従って漸次拡径する第三拡径管と、
前記第三拡径管から前記他方側に進むに従って漸次縮径する第二縮径管と、
前記第二縮径管における前記他方側の端に連結され、且つ径方向の外側に向けて膨出する第二膨出部と、
前記第二膨出部から前記他方側に進むに従って漸次拡径する第四拡径管と、を備え、
前記短管の一端と、前記第二挿入部において最も内径が小さい箇所と、の間の軸線方向の間隔が0.01m以上1m以下であり、
前記第一膨出部及び前記第二膨出部の内側に弾性部材が設けられていることを特徴とするケーブル保護管用継手。
【請求項4】
前記第二挿入部における周方向の少なくとも一部に径方向の内側に向けて突出する突出部が設けられ、
前記第二挿入部において最も内径が小さい箇所は、前記突出部によって形成されている請求項3に記載のケーブル保護管用継手。
【請求項5】
前記突出部は湾曲形状を有し、径方向内側から径方向外側に向かって押されることによって径方向の外側に突出するように変形可能とされている請求項2または4に記載のケーブル保護管用継手。
【請求項6】
前記突出部は湾曲形状を有し、前記突出部の径方向外側から径方向内側に向かって押されることによって、前記第三拡径管に挿入された前記ケーブル保護管が変形可能とされている請求項2または4に記載のケーブル保護管用継手。
【請求項7】
前記第一縮径管において前記第一膨出部側の回転中心から軸線方向に連続する一定の範囲、および、前記第二拡径管において前記第一膨出部側の回転中心から軸線方向に連続する一定の範囲では、これらの範囲におけるいずれの位置においても、当該位置における内径dが、下記(1)式で求められる値である請求項1から6のいずれか一項に記載のケーブル保護管用継手。
D・(sinθ・tanθ+cosθ)+2・x・tanθ … (1)
D:前記ケーブル保護管の外径
θ:前記ケーブル保護管と前記ケーブル保護管用継手との最大曲げ角度
x:前記第一膨出部側の回転中心から当該位置までの軸線方向の距離
【請求項8】
請求項1から請求項7の何れか一項に記載のケーブル保護管用継手の前記短管の一方側に一方の前記ケーブル保護管が挿入され、前記短管の他方側に他方の前記ケーブル保護管が挿入されていることを特徴とするケーブル保護管路。
【請求項9】
前記ケーブル保護管の有効長Lと、前記ケーブル保護管用継手の有効長Sと、前記ケーブル保護管と前記ケーブル保護管用継手との最大曲げ角度θと、に基づいて下記(2)式によって算出される曲率半径Rが、5m以上である請求項8に記載のケーブル保護管路。
R=(L・cosθ+S)/(2・sinθ) … (2)
【請求項10】
前記ケーブル保護管または前記ケーブル保護管用継手に配置される分岐継手を更に備え、
前記ケーブル保護管または前記ケーブル保護管用継手のうちの少なくとも一方には、前記分岐継手の長さ以上の直線部分が設けられている請求項8または請求項9に記載のケーブル保護管路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーブル保護管用継手及びケーブル保護管路に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、景観改善や防災等のために、電線等のケーブル及び該ケーブルに関係する設備等を地中に埋設する電線類地中化(無電柱化)が推進されている。電線類地中化を行う場合、ケーブルは、直接またはさや管に挿入された状態で、ケーブル保護管内に複数本収容される。このようなケーブル保護管は、多数連結した状態で地中に埋設されることでケーブル保護管路を構成する。
【0003】
例えば、特許文献1には、ケーブル保護管同士の連結部に適用可能であって、可撓性を有する部材によって管本体(ケーブル保護管)に取り付け可能なサドル部を有する分岐管継手(ケーブル保護管用継手)が開示されている。特許文献1に記載されている分岐管継手を取り付ける際には、先ず管本体に分岐貫通孔を形成する。次に、形成した分岐貫通孔の周縁部と水密状態となるようにサドル部を撓め、サドル部を撓ませた状態で管本体に分岐管継手を固定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、電線類地中化を行う場合には、地上の電柱に電線を架設する場合と比べて5倍から10倍に及ぶ多額の費用がかかるため、電線類地中化を普及させるためには、コストを大幅に削減する必要がある。加えて、ケーブル保護管路は、内部に収容するケーブル等を確実に保護することができるものでなければならない。
【0006】
コスト削減を実現するための一対策としては、曲部を持たないケーブル保護管と、可撓性を有し、且つ自然状態において曲部を持たない継手と、を用いてケーブル保護管路を構成することが挙げられる。このような対策は検討されているものの、内部に収容するケーブル等を確実に保護することができるケーブル保護管路用継手の設計指針等が求められていた。
【0007】
本発明は、上述の事情を鑑みてなされたものであり、内部に収容するケーブル等を確実に保護すると共に、曲げに対応可能なケーブル保護管用継手、及び該ケーブル保護管用継手を用いたケーブル保護管路を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係るケーブル保護管用継手は、ケーブル保護管同士を連結可能に構成されたケーブル保護管用継手であって、所定の内径を有し、軸線方向に沿って延びる短管と、前記短管の一端から軸線方向に沿って前記短管から離間する方向に第一拡径端まで進むに従って径方向の外側に向けて漸次拡径する第一拡径管と、前記第一拡径端から軸線方向に沿って前記短管から離間する方向に第一縮径端まで進むに従って径方向の内側に向けて漸次縮径する第一縮径管と、前記第一縮径端に連接され、且つ径方向の外側に向けて膨出する第一膨出部と、前記第一膨出部の前記第一縮径端側とは反対側の端から軸線方向に沿って前記短管から離間する方向に第二拡径端まで進むに従って径方向の外側に向けて漸次拡径する第二拡径管と、前記短管の他端に対して軸線方向に沿って前記短管から離間する方向に第三拡径端まで進むに従って径方向の外側に向けて拡径する第三拡径管と、前記第三拡径端から軸線方向に沿って前記短管から離間する方向に第二縮径端まで進むに従って径方向の内側に向けて漸次縮径する第二縮径管と、前記第二縮径端に連接され、且つ径方向の外側に向けて膨出する第二膨出部と、前記第二膨出部の前記第二縮径端側とは反対側の端から軸線方向に沿って前記短管から離間する方向に第四拡径端まで進むに従って径方向の外側に向けて漸次拡径する第四拡径管と、を備え、前記短管の内径は前記ケーブル保護管の内径より大きく且つ前記ケーブル保護管の外径より小さく、前記短管の一端と前記短管の他端から前記第三拡径管の前記第三拡径端までにおいて最も内径が小さい箇所との間隔が0.01m以上1m以下であり、前記第一膨出部及び前記第二膨出部の内側に弾性部材が設けられていることを特徴とする。
【0009】
上述の構成では、上述のケーブル保護管用継手の第一拡径管、第一縮径管、第一膨出部及び第二拡径管の内部(即ち、短管の一方側であって、以下、第一挿入部とする)に一方のケーブル保護管が挿入され、第三拡径管、第二縮径管、第二膨出部及び第四拡径管の内部(即ち、短管の他方側であって、以下、第二挿入部とする)に他方のケーブル保護管が挿入されたケーブル保護管路(以下、単に管路ともいう)に対し、振動等により管路を曲げる方向に力がかかると、一方のケーブル保護管及び他方のケーブル保護管が第一縮径管及び第二縮径管の同じ内側面側に寄せられる。このような配置においても、上述の構成によれば、通線開口面積(即ち、一方のケーブル保護管及び他方のケーブル保護管の間に通線可能な断面積)を確保することができる。また、短管の一端と短管の他端から第三拡径管の第三拡径端までにおいて最も内径が小さい箇所との間隔が好適に設定されていることによって、ケーブルが通信用の光ファイバであっても、通信用光ファイバの一般的な曲げ損失(例えば5m)を超えてケーブルを曲げることなく、ケーブル保護管及びケーブル保護管用継手の内部に収容可能となる。
【0010】
上述のケーブル保護管用継手によれば、前記第三拡径端の近傍において周方向の少なくとも一部に径方向の内側に向けて突出する突出部が設けられていてもよい。
【0011】
上述の構成によれば、第二挿入部、即ち短管の他方側に接続された他方のケーブル保護管の端部が突出部に係止されるので、他方のケーブル保護管における短管側の端部の位置が短管から離間する方向に移動し、ケーブル保護管同士の間隔が拡がり、曲げに対して通線開口面積を確保し易くなる。
【0012】
本発明の一態様に係るケーブル保護管用継手は、ケーブル保護管同士を連結するケーブル保護管用継手であって、内径が前記ケーブル保護管の内径より大きく且つ前記ケーブル保護管の外径より小さい短管と、前記短管の両端のうち、軸線方向に沿う一方側に位置する一端から前記一方側に延びる第一挿入部と、前記短管の両端のうち、軸線方向に沿う他方側に位置する他端から前記他方側に延びる第二挿入部と、を備え、前記第一挿入部は、前記短管の一端から前記一方側に進むに従って漸次拡径する第一拡径管と、前記第一拡径管から前記一方側に進むに従って漸次縮径する第一縮径管と、前記第一縮径管における前記一方側の端に連結され、且つ径方向の外側に向けて膨出する第一膨出部と、前記第一膨出部から前記一方側に進むに従って漸次拡径する第二拡径管と、を備え、前記第二挿入部は、前記短管の他端から前記他方側に進むに従って漸次拡径する第三拡径管と、前記第三拡径管から前記他方側に進むに従って漸次縮径する第二縮径管と、前記第二縮径管における前記他方側の端に連結され、且つ径方向の外側に向けて膨出する第二膨出部と、前記第二膨出部から前記他方側に進むに従って漸次拡径する第四拡径管と、を備え、前記短管の一端と、前記第二挿入部において最も内径が小さい箇所と、の間の軸線方向の間隔が0.01m以上1m以下であり、前記第一膨出部及び前記第二膨出部の内側に弾性部材が設けられていることを特徴とする。
【0013】
上述の構成では、上述のケーブル保護管用継手の第一挿入部の内部に一方のケーブル保護管が挿入され、第二挿入部の内部に他方のケーブル保護管が挿入されたケーブル保護管路(以下、単に管路ともいう)に対し、振動等により管路を曲げる方向に力がかかると、一方のケーブル保護管及び他方のケーブル保護管が第一縮径管及び第二縮径管の同じ内側面側に寄せられる。このような配置においても、上述の構成によれば、通線開口面積(即ち、一方のケーブル保護管及び他方のケーブル保護管の間に通線可能な断面積)を確保することができる。また、短管の一端と、第二挿入部において最も内径が小さい箇所と、の間隔が好適に設定されていることによって、ケーブルが通信用の光ファイバであっても、通信用光ファイバの一般的な曲げ損失(例えば5m)を超えてケーブルを曲げることなく、ケーブル保護管及びケーブル保護管用継手の内部に収容可能となる。
【0014】
上述のケーブル保護管用継手によれば、前記第二挿入部における周方向の少なくとも一部に径方向の内側に向けて突出する突出部が設けられ、前記第二挿入部において最も内径が小さい箇所は、前記突出部によって形成されていてもよい。
【0015】
上述の構成によれば、第二挿入部に挿入された他方のケーブル保護管、即ち短管の他方側に接続された他方のケーブル保護管の端部が突出部に係止される。したがって、他方のケーブル保護管における短管側の端部の位置が短管から離間する方向に移動し、ケーブル保護管同士の間隔が拡がり、曲げに対して通線開口面積を確保し易くなる。
【0016】
上述のケーブル保護管用継手において、前記突出部は湾曲形状を有し、径方向内側から径方向外側に向かって押されることによって径方向の外側に突出するように変形可能とされていてもよい。
または、上述のケーブル保護管用継手において、前記突出部は湾曲形状を有し、前記突出部の径方向外側から径方向内側に向かって押されることによって、前記第三拡径管に挿入された前記ケーブル保護管が変形可能とされていてもよい。
【0017】
上述の構成によれば、例えば地震発生時等に管路を曲げる方向に力や衝撃等がかかると、他方のケーブル保護管の挿入方向の先端側の端部が突出部を内側から径方向外側に向かって押し、突出部を元の形状から上述のように径方向外側に突出させる(即ち、径方向外側に反転させる)。このような突出部の変形によって、管路を曲げる方向にかかった力や衝撃等が良好に吸収され、ケーブル保護管及びケーブル保護管内に収容されたケーブルの変形や破損が防止される。また、突出部の元の形状(径方向内側から外側に押される前の形状)が湾曲形状であることで、ケーブル保護管が突出部の内側に衝突した際、突出部が円滑に反転する。
突出部によって第三拡径管に挿入されたケーブル保護管が変形可能とされている場合であっても、突出部によって押されたケーブル保護管が変形可能であれば、上述のように管路を曲げる方向にかかった力や衝撃等が良好に吸収され、ケーブル保護管及びケーブル保護管内に収容されたケーブルの変形や破損が防止される。
【0018】
上述のケーブル保護管用継手において、前記第一縮径管において前記第一膨出部側の回転中心から軸線方向に連続する一定の範囲、および、前記第二拡径管において前記第一膨出部側の回転中心から軸線方向に連続する一定の範囲では、これらの範囲におけるいずれの位置においても、当該位置における内径dが、下記(1)式で求められる値であってもよい。
D・(sinθ・tanθ+cosθ)+2・x・tanθ … (1)
D:前記ケーブル保護管の外径
θ:前記ケーブル保護管と前記ケーブル保護管用継手との最大曲げ角度
x:前記第一膨出部側の回転中心から当該位置までの軸線方向の距離
【0019】
上述の構成によれば、管路を曲げる方向に力や衝撃等が加わった場合でも、内部に収容されているケーブル等の過剰な曲げや破損等が防止される。
【0020】
本発明の一態様に係るケーブル保護管路は、上述のケーブル保護管用継手の前記短管の一方側に一方の前記ケーブル保護管が挿入され、前記短管の他方側に他方の前記ケーブル保護管が挿入されていることを特徴とする。
【0021】
上述の構成によれば、管路を曲げる方向に力や衝撃等が加わった場合でも、通線開口面積が確保され、内部に収容されているケーブル等の過剰な曲げや破損等が防止される。
【0022】
上述のケーブル保護管路において、前記ケーブル保護管の有効長Lと、前記ケーブル保護管用継手の有効長Sと、前記ケーブル保護管と前記ケーブル保護管用継手との最大曲げ角度θと、に基づいて下記(2)式によって算出される曲率半径Rが、5m以上であってもよい。
R=(L・cosθ+S)/(2・sinθ) … (2)
【0023】
上述の構成によれば、管路を曲げる方向に力や衝撃等が加わった場合でも、内部に収容されているケーブル等の過剰な曲げや破損等が防止される。
【0024】
上述のケーブル保護管路において、前記ケーブル保護管または前記ケーブル保護管用継手に配置される分岐継手を更に備え、前記ケーブル保護管または前記ケーブル保護管用継手のうちの少なくとも一方には、前記分岐継手の長さ以上の直線部分が設けられていてもよい。
【0025】
上述の構成によれば、分岐継手を直線部分に安定して固定させることができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明に係るケーブル保護管用継手及びケーブル保護管路によれば、内部に収容するケーブル等を確実に保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明に係るケーブル保護管用継手及びケーブル保護管路の平面図である。
【
図2】
図1に示すX-X線で矢視した場合のケーブル保護管路の断面図である。
【
図3】
図1に示すY-Y線で矢視した場合のケーブル保護管用継手及びケーブル保護管路の一部の断面図であり、ケーブル保護管路を曲げる方向の力が加わっていない状態の図である。
【
図4】
図3に示すケーブル保護管路を曲げる方向の力が加わった場合のケーブル保護管用継手及びケーブル保護管路の一部の断面図である。
【
図5】
図1に示すケーブル保護管用継手の側面図である。
【
図6】
図1に示すケーブル保護管用継手の変形例の側面図である。
【
図7】本発明に係るケーブル保護管路及びケーブル保護管用継手の第1変形例の断面図である。
【
図8】
図7に示すVIII-VIII断面矢視図である。
【
図9】
図7に示すケーブル保護管路に曲げる方向の力が加わった場合のケーブル保護管用継手及びケーブル保護管路の断面図である。
【
図10】
図7に示すケーブル保護管路においてケーブル保護管が突出部を変形させた場合のケーブル保護管用継手及びケーブル保護管路の断面図である。
【
図11】本発明に係るケーブル保護管用継手の第2変形例の断面図であって、
図7に示すVIII-VIII断面矢視図に相当する断面図である。
【
図12】本発明に係るケーブル保護管路及びケーブル保護管用継手の第3変形例の断面図である。
【
図14】本発明に係るケーブル保護管路及びケーブル保護管用継手の第4変形例の断面図である。
【
図16】本発明に係るケーブル保護管路及びケーブル保護管用継手の第5変形例の断面図である。
【
図18】本発明に係るケーブル保護管路の第6変形例の断面図である。
【
図20】
図18に示すケーブル保護管路を構成する構成単位の断面図である。
【
図21】本発明に係るケーブル保護管路の第7変形例の断面図である。
【
図22】
図21に示すケーブル保護管路を構成する構成単位の断面図である。
【
図23】
図18に示すケーブル保護管路における各種長さ、角度などを示す第1の断面図である。
【
図24】
図18に示すケーブル保護管路における各種長さ、角度などを示す第2の断面図である。
【
図25】本発明に係るケーブル保護管用継手の第8変形例を示す断面図である。
【
図26】
図25に示すケーブル保護管用継手の各種長さを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明に係るケーブル保護管用継手及びケーブル保護管路の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下の説明で用いる図面は模式的なものであり、長さ、幅、及び厚みの比率等は実際のものと同一とは限らず、適宜変更することができる。
【0029】
図1及び
図2に示すように、本発明を適用した一実施形態のケーブル保護管路4は、無電柱化による景観保護等のために、ケーブル1を電線等地中化するために用いられるものであって、内部にケーブル1を収容可能に構成された一本以上のケーブル保護管5と、ケーブル保護管5同士を連結可能に構成されたケーブル保護管用継手(以下、単に継手という場合がある)21と、を備えている。ケーブル保護管路4は、例えば、道路等の地中に所要の間隔を有して複数の不図示のマンホール等を埋設した状態で、これらのマンホール間を横方向(即ち、水平方向)に沿ってつなげるように設置されている。
【0030】
ケーブル保護管5は、樹脂製の管材であって、例えばボディ管やフリーアクセス管と呼ばれるものが該当する。ボディ管として使用される場合には、
図2に示すように、ケーブル保護管5の内部(即ち、中空部)には、ケーブル1を収容したさや管2が複数本まとめて収容されている。そのため、ボディ管の呼び径は150(外径約165mm)から250(外径約267mm)と比較的大きな外径とされている。
なお、ケーブル1の種類等に応じて、さや管2は省略される場合がある。また、フリーアクセス管として使用される場合にも、さや管2は省略され、ケーブル保護管5の外面には分岐継手が設けられ、フリーアクセス管の呼び径は100(外径約114mm)から150(外径約165mm)とされている。ケーブル1はケーブル保護管5の内部に収容されることで、地中の土砂等から隔離及び保護されている。
このさや管2は、継手21の内部で連続している。継手21の内部で連続とは、例えば、ケーブル保護管5どうしを連結している継手21の内部において、一本のさや管2が接合部なく連続していること、または、継手21の内部において、さや管2どうしが接着剤または嵌合によって連結されていることである。これらによって、一つのケーブル保護管5から他のケーブル保護管5までさや管2が連続している状態となる。
【0031】
図3に示すように、継手21Aは、短管31と、短管31の端部(一端)31aに連設された第一拡径管41と、第一拡径管41の第一拡径端41aに連設された第一縮径管51と、第一縮径管51の第一縮径端51aに連接された第一膨出部61と、第一膨出部61の端(第一膨出部の第一縮径端側とは反対側の端)61aに連設された第二拡径管42と、短管31の端部(他端)31bに接続された第三拡径管43と、第三拡径管43の第三拡径端43bに連設された第二縮径管52と、第二縮径管52の第二縮径端52bに連接された第二膨出部62と、第二膨出部62の端(第二膨出部の第二縮径端側とは反対側の端)61aに連設された第四拡径管44と、第一膨出部61及び第二膨出部62の内側に設けられた弾性部材71,72と、を備えている。
【0032】
短管31は、所定の内径を有し、継手21Aの軸線J21に沿った方向(軸線方向、以下、J21方向とする)に沿って延びている。短管31のJ21方向に沿った長さは、後述するように継手21Aにおける通線開口面積が良好に確保されるように適宜調整されており、例えば10mm以上1000mm以下であることが好ましい。
【0033】
第一拡径管41は、短管31の端部31aからJ21方向に沿って短管31から離間する方向に第一拡径端41aまで進むに従って径方向の外側に向けて漸次拡径している。端部31aから第一拡径端41aまでの第一拡径管41の拡径率(即ち、拡径角度)は、例えば軸線J21に対して30°以上60°以下であることが好ましい。
【0034】
第一縮径管51は、第一拡径端41aからJ21方向に沿って短管31から離間する方向に第一縮径端51aまで進むに従って径方向の内側に向けて漸次縮径している。
【0035】
第一膨出部61は、J21方向における端61bから端61aに向けて進むに従って径方向外側に膨出しており、具体的には側面視で径方向の外側に凸となる半円状に形成されている。
【0036】
第二拡径管42は、第一膨出部61の端61aからJ21方向に沿って短管31から離間する方向に第二拡径端42aまで進むに従って径方向の外側に向けて漸次拡径している。
【0037】
弾性部材71は、第一膨出部61の内部に嵌合されている。弾性部材71は、例えばゴム輪等の可撓性の止水材で構成され、環状のゴム輪本体の径方向の内側に、軸線J21側に向かって傾斜しつつ突出するリップ部74を有するものである。
【0038】
短管31の内径は、第二拡径管42側から継手21Aに接続されるケーブル保護管(一方のケーブル保護管)5Aの内径より大きく、且つケーブル保護管5Aの外径より小さい。また、第一膨出部61の内部に嵌合された状態の弾性部材71の内径は、短管31の内径と略同一とされている。
【0039】
上述のような構成において、ケーブル保護管5Aが継手21AのJ21方向における中心より短管31の端部31a側(一方側)に接続された際には、ケーブル保護管5Aの端部5bが短管31の端部31aに係止される。即ち、短管31の端部31aは、ケーブル保護管5Aの端部5bのストッパーとして機能する。ケーブル保護管5Aの端部5bにおいて軸線J21に直交する方向に沿う端面5pには、J21方向に沿って短管31から離間する方向に進むに従って径方向の外側に傾斜し、第一拡径管41の内周面に当接可能なテーパー面8が形成されている。
【0040】
また、第一拡径管41、第一縮径管51、第一膨出部61、及び第二拡径管42はケーブル保護管5Aを内嵌可能に構成されており、継手21Aの第一挿入部81を構成している。
【0041】
上述のような拡径管及び縮径管を有する構成により、第一挿入部81に接続されたケーブル保護管5Aは、
図4に示すように、弾性部材71との接触位置を中心として傾動可能とされている。ケーブル保護管5Aの傾動範囲(即ち、傾動角度)は、第一拡径端41aから第一縮径端51aまでの第一縮径管51の縮径率(即ち、縮径角度)と、第一膨出部61の端61aから第二拡径端42aまでの第二拡径管42の拡径率(即ち、拡径角度)のうち、小さい方に制約されている。第一縮径管51の縮径率及び第二拡径管42の拡径率は、例えば軸線J21に対して3°以上12°以下であることが好ましく、5.5°以上6°以下であることがより好ましい。
【0042】
第三拡径管43は、短管31の端部31bに対してJ21方向に沿って短管31から離間する方向に第三拡径端43bまで進むに従って径方向の外側に向けて湾曲しつつ拡径している。端部31bから第三拡径端43bまでの第三拡径管43の拡径率は、例えば軸線J21に対して30°以上60°以下であることが好ましい。
【0043】
第二縮径管52は、第三拡径端43bからJ21方向に沿って短管31から離間する方向に第二縮径端52bまで進むに従って径方向の内側に向けて漸次縮径している。
【0044】
図3及び
図5に示すように、第三拡径端43bの近傍において周方向の一部に径方向の内側に向けて突出する突出部48が設けられている。突出部48は、J21方向において第三拡径管43と第二縮径管52における第三拡径端43b側の端部とに亘って湾曲するように形成されている。また、突出部48は径方向の内側から外側に向かって押されることによって、
図4の破線で図示しているように径方向の外側に突出するように変形可能とされている。前述のように突出部48は湾曲形状を有するため、径方向の内側から外側に向かって押された際に、円滑に変形可能となっている。
【0045】
さらに詳しくは、突出部48の湾曲形状において、突出部48のJ21方向における端部48aから径方向の最も内側に突出する頂部48tまでの湾曲率は略一定であるのに対し、頂部48tから端部48aとは反対側の端部48bまでの湾曲率は、端部48bに近づくに従って低下している。このような湾曲形状によって、突出部48は、径方向の内側から外側に向かって押された際に、例えば湾曲率が一定の場合等に比べてより円滑に変形可能となっている。
【0046】
第二膨出部62は、J21方向における端62aから端62bに向けて進むに従って径方向外側に膨出しており、具体的には第一膨出部61と同様に側面視で径方向の外側に凸となる半円状に形成されている。
【0047】
第四拡径管44は、第二膨出部62の端62bからJ21方向に沿って短管31から離間する方向に第四拡径端44bまで進むに従って径方向の外側に向けて漸次拡径している。
【0048】
弾性部材72は、第二膨出部62の内部に嵌合されている。弾性部材72は、弾性部材71と同様に、例えばゴム輪等で構成され、リップ部74を有するものである。
【0049】
上述のような構成において、ケーブル保護管5Bが継手21AのJ21方向の中心より短管31の端部31b側(他方側)に接続された際には、ケーブル保護管5Bの端部5aが突出部48の頂部48tと端部48bとの間の部分(短管の他端から第三拡径管の第三拡径端までにおいて最も内径が小さい箇所)に係止される。ケーブル保護管5Bの軸線方向がJ21方向に対して略平行である場合、突出部48の頂部48tは、ケーブル保護管5Bの端部5aのストッパーとして機能する。ケーブル保護管5Bの端部5aにおいて軸線J21に直交する方向に沿う端面5pには、J21方向に沿って短管31から離間する方向に進むに従って径方向の外側に傾斜し、突出部48の内周面に当接可能なテーパー面9が形成されている。
【0050】
また、突出部48、第二膨出部62、及び第四拡径管44はケーブル保護管5Bを内嵌可能に構成されており、継手21Aの第二挿入部82を構成している。
【0051】
上述のような突出部や拡径管及び縮径管を有する構成により、第二挿入部82に接続されたケーブル保護管5Bは、
図4に示すように、弾性部材72との接触位置を中心として傾動可能とされている。ケーブル保護管5Aの傾動範囲(即ち、傾動角度)は、突出部48におけるJ21方向の第二縮径管52側の傾斜角度(即ち、湾曲率)、及び、第三拡径端43bから第二縮径端52bまでの第二縮径管52の縮径率(即ち、縮径角度)と、第二膨出部62の端62bから第四拡径端44bまでの第四拡径管44の拡径率(即ち、拡径角度)のうち、小さい方等に制約されている。第二縮径管52の縮径率及び第四拡径管44の拡径率は、例えば軸線J21に対して3°以上12°以下であることが好ましい。
【0052】
振動等によりケーブル保護管路4を曲げる方向に力がかかると、
図4に示すように、ケーブル保護管5A,5Bが軸線J21に対して第一縮径管51及び第二縮径管52の同じ内側面(
図4の紙面では上側)側に寄せられる。通線開口面積を左右する通線開口径(即ち、ケーブル保護管5A,5Bの間に通線可能な径)A5を確保すると共に、ケーブル保護管5A,5Bの内部に収容されているケーブル1(
図4では図示略)の過度な曲げを防止する目的で、短管31の端部31aから突出部48の頂部(短管の他端から第三拡径端までの間において最も内径が小さい箇所)48tまでの長さ(即ち、J21方向における間隔)は、0.01m以上1m以下であることが好ましく、0.01m以上0.2m以下であることがより好ましい。
【0053】
なお、継手21Aの各部分を上述の好適な範囲内に設定することで、ケーブル保護管5Bがケーブル保護管5Aに対して最大11.5°程度曲がるようになっている。即ち、ケーブル保護管5Aの軸線J5Aとケーブル保護管5Bの軸線J5Bとのなす角度(狭角)θ´は、最大11.5°程度である。角度θ´が11.5°より比較的小さくなると、ケーブル保護管路4に設置する継手21Aの数が増大し、ケーブル保護管路4の施工作業が煩雑になる虞がある。一方、角度θ´が11.5°より比較的大きくなると、ケーブル保護管路4に設置する継手21Aの数が少なくて済むが、ケーブル保護管5A,5Bが曲がり過ぎるので、通線開口径A5が小さくなり過ぎたり、さや管2が折れる虞がある。
【0054】
上述の短管31、第一拡径管41、第一縮径管51、第一膨出部61、第二拡径管42、第三拡径管43、突出部48、第二縮径管52、第二膨出部62、及び第四拡径管44は、樹脂製であり、ブロー成形や金型成形等の製造方法によって一体として形成されている。これらの構成要素をなす樹脂は、上述の形状をなし得るものであれば、特に限定されないが、突出部48が径方向の内側から外側に向かって押された際に、径方向の外側に突出するように円滑に変形可能なものとすることが好ましい。突出部48は、例えばブロー成形で成形される場合は断面視半球状に形成されていることが好ましく、射出成形で成形される場合はピンや軸線J21に延びるリブ等であることが好適である。
【0055】
また、上述の短管31、第一拡径管41、第一縮径管51、第一膨出部61、第二拡径管42、第三拡径管43、突出部48、第二縮径管52、第二膨出部62、及び第四拡径管44の厚みは、上述の形状をなし得るものであれば、特に限定されないが、継手21Aの強度等を良好に発揮させる観点から、例えば5mm以上15mm以下であることが好ましく、ケーブル保護管5A,5Bの厚みの70%以上75%以下であることが好ましい。また、突出部48の厚みは、突出部48が径方向の内側から外側に向かって押された際に、径方向の外側に突出するように円滑に変形させる観点から、例えば5mm以上10mm以下であることがより好ましい。
【0056】
以上説明した本実施形態の継手21A及びケーブル保護管路4では、上述の継手21Aの第一挿入部81にケーブル保護管5Aが挿入され、第二挿入部82にケーブル保護管5Bが挿入された際に、振動等によりケーブル保護管路4を曲げる方向に力がかかると、ケーブル保護管5A及びケーブル保護管5Bが軸線J21を中心に周方向において第一縮径管51及び第二縮径管52の同じ内側面側に寄せられる。このような配置においても、上述の好適な条件等を満たす継手21A及びケーブル保護管路4によれば、通線開口径A5を確実に確保すると共に、ケーブル保護管路4に収容されたケーブル1の曲げを適度に抑えることができる。また、ケーブル1が通信用の光ファイバである場合には、通信用光ファイバの曲げ損失(例えば5m)を超えてケーブル1を曲げることなく、ケーブル保護管5A,5B及び継手21Aの内部に収容することができる。従って、継手21A及びケーブル保護管路4によれば、内部に収容するケーブル1等を確実に保護すると共に、曲げに対応することができる。
【0057】
また、本実施形態の継手21A及びケーブル保護管路4では、短管31の内径をケーブル保護管5Aの内径より大きく、且つケーブル保護管5Aの外径より小さく設定している。さらに、本実施形態の継手21A及びケーブル保護管路4では、短管31の端部31aから突出部48の頂部48tまでの長さを0.01m以上1m以下としている。これらの条件を満たすことにより、通線開口径A5をより確実且つ充分に確保し、通信用光ファイバの曲げ損失を超えてケーブル1を曲げないようにすることができる。
【0058】
また、本実施形態の継手21A及びケーブル保護管路4では、突出部48が設けられているので、第二挿入部82に接続されたケーブル保護管5Bの端部5aが突出部48に係止され、突出部48が形成されていない場合に比べてケーブル保護管5Bの端部5aの位置が短管31から離間する方向に移動するので、ケーブル保護管5A,5B同士の間隔を拡げることができる。これにより、通線開口面積を確保すると共に、ケーブル1等を確実に保護すると共に、曲げに対応することができる。
【0059】
また、本実施形態の継手21A及びケーブル保護管路4では、例えば地震発生時等に管路を曲げる方向に力や衝撃等がかかると、ケーブル保護管5Bの端部5aが突出部48を内側から径方向外側に向かって押し、突出部48を元の形状から上述のように径方向外側に突出し、径方向外側に反転する。このような突出部48の変形によって、管路を曲げる方向にかかった力や衝撃等が良好に吸収され、ケーブル保護管5A,5B及びケーブル保護管5A,5Bの内部に収容されたケーブル1の変形や破損を防止することができる。また、突出部48の元の形状(径方向内側から外側に押される前の形状)が湾曲形状であることで、ケーブル保護管5Bの端部5aが突出部48の内側に衝突した際、突出部48を円滑に反転させることができる。
【0060】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【0061】
例えば、
図5及び
図6に示すように、継手21A,21Bの周方向における突出部48の幅は、適宜変更することができる。即ち、
図6に示す継手21Bのように、周方向における突出部48の幅を拡げてもよい。上述のように、突出部48は第二挿入部82に内嵌されたケーブル保護管5Bの端部5aのストッパーとして機能するので、ストッパーの機能を良好に発揮させる観点から、突出部48は第三拡径端43bの近傍の全周のうち5%以上60%以下を占めることが好ましい。また、周方向における突出部48の幅及び数は、前述の第三拡径端43bの近傍の全周のうちの突出部48の占有率や継手21Aの製造のし易さ等を勘案して適宜調整することができる。周方向における突出部48の数は、2つ以上であることが好ましく、3つ以上であることがより好ましい。
【0062】
突出部48の周方向の数について、具体的には、
図7から
図10に示す継手21Cのように、突出部48が周方向に4つ設けられていてもよい。図示の例では、突出部48が周方向に等間隔に設けられている。なお継手21Cでは、第二挿入部82において最も内径が小さい箇所は、突出部48(頂部48t)によって形成されている。また、突出部48の頂部48tは、この頂部48tを通り軸線J21に直交する
図8に示すような断面において、周方向に占める割合が50%未満であることが好ましい。また継手21Cでは、
図7に示すように、突出部48が、短管31の他端31bから離れて設けられている。さらに継手21Cでは、
図10に示すように、突出部48が径方向の内側から外側に向かって押されることによって径方向の外側に変形可能とされている。このとき突出部48は、例えば、ケーブル保護管5Bの外周面に沿って直線状に変形し、径方向の外側に向けて突出しない。更にこのとき、ケーブル保護管5Bの端面5pまたはテーパー面9が短管31の他端31bに突き当たり、ケーブル保護管5BのJ21方向への更なる進入が規制される。即ち、継手21Cは、突出部48だけでなく、短管31の他端31bもストッパーとなる二重のストッパー機能を有している。なお、ケーブル保護管5Bが第二挿入部82の深くに挿入されるとき、突出部48が径方向の外側に変形するのに代えて、ケーブル保護管5Bが径方向の内側に変形してもよい。
また、
図11に示す継手21Dのように、突出部48が周方向に2つ設けられていてもよい。
さらに、
図12および
図13に示す継手21Eのように、突出部48が周方向に3つ設けられていてもよい。
【0063】
突出部48の形状について、具体的には、
図14および
図15に示す継手21Fのように、突出部48が、J21方向に延びるリブ48rによって形成されていてもよい。リブ48rは、径方向の内側に向けて凸となる曲線部48cを有している。曲線部48cのうち、径方向の最も内側に突出する部分は、頂部48tを形成している。頂部48tは、曲線部48cにおけるJ21方向の中央に位置している。
また、
図16および
図17に示す継手21Gのように、突出部48が径方向に延びるピン48pによって形成されていてもよい。ピン48pにおける径方向の内側に位置する端面は、頂部48tを形成している。頂部48tは、径方向の内側に向けて凸となる球面状に形成されている。
【0064】
なお、上述した各継手21A~21Gのように、突出部48が設けられている場合、例えば、ケーブル保護管5Bが突出部48に突き当たるまで、ケーブル保護管5Bを第二挿入部82に単に挿入していくだけで、各継手21A~21Gに対するケーブル保護管5Bの挿入代を安定させることができる。
【0065】
また、上述の実施形態では図示していないが、後述する
図25、
図26に示す継手21Hのように、突出部48は省略されていてもよい。このような構成では、短管31の端部31bから第三拡径管43の第三拡径端43bまでにおいて最も内径が小さい箇所は、端部31bとなる。そのため、第二挿入部82に挿入されたケーブル保護管5Bの端部5aは短管31の端部31bに係止される。従って、短管31の端部31aから端部31bまでの長さ、即ち短管31のJ21方向の長さは、1m以下であることが好ましい。
【0066】
また、図示していないが、振動等によりケーブル保護管路4を曲げる方向に力がかかった際に、突出部48によってケーブル保護管5Bが径方向外側から径方向内側に向かって押され、ケーブル保護管5Bが変形可能とされていてもよい。このような構成では、突出部48によってケーブル保護管5Bが径方向外側から径方向内側に向かって押されて突出部48の内側の面に沿って変形するので、上述の実施形態と略同様の通線開口径A5を確保することができる。
【0067】
また、
図18および
図19に示すケーブル保護管路4Aのように、ケーブル保護管路4Aが、複数のケーブル保護管5と、複数の継手21と、を備えていてもよい。複数のケーブル保護管5および複数の継手21は、交互に配置されている。ケーブル保護管5の両端は、互いに異なる継手21内に挿入されている。継手21の両挿入部81、82内には、互いに異なるケーブル保護管5が挿入されている。
【0068】
このケーブル保護管路4Aは、フリーアクセス管として使用される場合、ケーブル保護管5または継手21に配置される分岐継手91を更に備えている。分岐継手91は、ケーブル保護管5または継手21からケーブル1を分岐する。図示の例では、分岐継手91は、ケーブル保護管5に配置され、ケーブル保護管5からケーブル1を分岐する。分岐継手91は、ケーブル保護管5に取り付けられるサドル部92と、サドル部92の外面から突出する枝管部93と、を備えている。
【0069】
このケーブル保護管5には、分岐継手91の長さ以上の直線部分94が設けられている。
図20に示すように、直線部分94は、ケーブル保護管5のうち、継手21に挿入されていない部分であり、外部に露出している。直線部分94には、分岐継手91を取り付け可能である。直線部分94の長さM(J21方向の長さ)は、分岐継手91のサドル部92の長さ以上である。言い換えると、ケーブル保護管5を間に挟んで位置する一対の継手21間の間隔が、サドル部92の長さ以上である。直線部分94の長さMは、サドル部92の長さの1.1倍以上であることが好ましい。例えば、サドル部92の長さが440mmの場合、直線部分94の長さMを500mmとすることができる。
【0070】
なお、
図18から
図20に示すケーブル保護管路4Aに代えて、
図21および
図22に示すケーブル保護管路4Bのように、分岐継手91が、継手21に配置されてもよい。この場合、サドル部92が短管31に配置される。言い換えると、継手21のうちの短管31が、分岐継手91が配置される直線部分94となり、短管31(直線部分94)の長さが、分岐継手91(サドル部92)の長さ以上となる。
【0071】
ところで、
図18および
図21に示すように、ケーブル保護管路4A、4Bでは、同一の継手21に挿入された一対のケーブル保護管5は、継手21の軸線J21を中心に周方向において第一縮径管51及び第二縮径管52の同じ内側面側に寄せられている。一対のケーブル保護管5は、例えば、相対的に5°以上23°以下曲がるように、具体的には最大11.5°程度曲がるようになっている。言い換えると、ケーブル保護管5Aの軸線J5Aとケーブル保護管5Bの軸線J5Bとのなす角度(狭角)θ´の最大値は11.5°程度である。
【0072】
なお、一対のケーブル保護管5同士が相対的に曲がるとき、各ケーブル保護管5は、継手21に対して、軸線J21上に位置する回転中心Pを中心として回転する(
図9および
図25参照)。回転中心Pは、J21方向に沿って、各継手21における膨出部61、62(弾性部材71、72)と同等の位置に設けられる。回転中心PのJ21方向の位置は、継手21の形状などに応じて変化し得る。例えば、回転中心Pは、第一膨出部61や第二膨出部62のJ21方向の中央であったり、第一膨出部61や第二膨出部62のJ21方向の端であったりしてもよい。
【0073】
図18および
図21に示すように、ケーブル保護管路4A、4Bは、全体として曲線Cを形成している。曲線Cの曲率半径Rは、例えば5mまたは10mとされている。曲率半径Rは、ケーブル保護管5および継手21の各軸線に接する(内接する)仮想円の半径である(
図23および
図24参照)。
図20および
図22に示すように、ケーブル保護管路4A、4Bでは、一組のケーブル保護管5および継手21を、ケーブル保護管路4A、4Bを構成する一単位(以下、構成単位100ともいう)と捉えることができる。この場合において、一組のケーブル保護管5および継手21(構成単位100)の有効長Nを、一組のケーブル保護管5および継手21のうち、ケーブル保護管路4A、4Bの長さに寄与する部分の長さとする。言い換えると、一組のケーブル保護管5および継手21が互いに組み合わされた状態で、構成単位100がJ21方向になす長さを有効長Nとする。有効長Nは、ケーブル保護管5および継手21の各長さの和から、両者が互いに組み合わされた状態で重複する部分の長さを除いた長さである。例えば、有効長Nが1mの場合であって、一対のケーブル保護管5の相対的な曲がり角度θ´が、最大11.5°の場合、曲率半径Rが5mの曲線Cを形成することができる。また、有効長Nが2mの場合であって、一対のケーブル保護管5の相対的な曲がり角度θ´が、最大11.5°の場合、曲率半径Rが10mの曲線Cを形成することができる。なお、従来の曲管の有効長が概ね1mであることから、施工性の観点からは、有効長Nが1m程度であることが好ましい。
【0074】
ここで
図23に示すように、有効長Nのうち、ケーブル保護管5が寄与する長さを有効長Lとし、継手21が寄与する長さを有効長Sとする。
継手21の有効長Sは、弾性部材71、72間の距離である。言い換えると、継手21の有効長Sは、その継手21の一端および他端それぞれにおける回転中心P間の距離である。有効長Sは、製造上の制約から、継手21内に挿入されるケーブル保護管5の外径に依存し得る。そのため、ケーブル保護管5が呼び径の大きなボディ管である場合には、有効長Sは400mm以上1000mm以下とされ、400mm以上600mm以下であることが好ましく、ケーブル保護管5がフリーアクセス管である場合には、200mm以上500mm以下とされ、200mm以上450mm以下であることが好ましい。
ケーブル保護管5の有効長Lは、有効長Nから有効長Sを引いた長さである。言い換えると、ケーブル保護管5の有効長Lは、そのケーブル保護管5を間に挟む一対の継手21それぞれにおける回転中心P間の距離である。
【0075】
この場合、曲率半径Rは、下記(2)式によって算出される。
R=(L・cosθ+S)/(2・sinθ) … (2)
なお上記(2)式において、θは、継手21の軸線J21とケーブル保護管5Bの軸線J5Bとのなす角度(狭角)を指す。言い換えると、θは、継手21とケーブル保護管5Bとの相対的な曲げ角度を指す。具体的には、θ´が11.5°の場合、θはその半分の5.75°となる。
【0076】
ケーブル保護管路4A、4Bでは、上記(2)式によって求められる曲率半径Rが5m以上となる。
有効長Nを1000mm(1m)とした場合であって、ケーブル保護管5がφ100である場合、例えば、有効長Sを388mmし、有効長Lを612mmとすることで、曲率半径Rを5mとすることができる。
また、ケーブル保護管5がφ150である場合、例えば、有効長Sを420mmし、有効長Lを580mmとすることで、曲率半径Rを5mとすることができる。
また、ケーブル保護管5がφ200である場合、例えば、有効長Sを470mmし、有効長Lを530mmとすることで、曲率半径Rを5mとすることができる。
また、ケーブル保護管5がφ250である場合、例えば、有効長Sを498mmし、有効長Lを502mmとすることで、曲率半径Rを5mとすることができる。
【0077】
なお上述のような本発明の実施形態においては(継手21の軸線J21とケーブル保護管5A、5Bの軸線J5A、J5Bとのなす角度(狭角)θの最大値が5.75°となるケーブル保護管路4A、4B)では、以下の条件が満たされている。すなわち、
図24および
図25に示す継手21Hのように、継手21Hのうち、(a)第一縮径管51において第一膨出部61側の回転中心P1からJ21方向に連続する一定の範囲、(b)第二拡径管42において第一膨出部61側の回転中心P1からJ21方向に連続する一定の範囲、(c)第二縮径管52において第二膨出部62側の回転中心P2からJ21方向に連続する一定の範囲、(d)第四拡径管44において第二膨出部62側の回転中心P2からJ21方向に連続する一定の範囲では、これらの範囲におけるいずれの位置においても、当該位置における内径dが、下記(1)式で求められる値である。
D・(sinθ・tanθ+cosθ)+2・x・tanθ … (1)
D:ケーブル保護管5の外径
θ:上記(a)、(b)についてケーブル保護管5Aと継手21との最大曲げ角度、上記(c)、(d)についてケーブル保護管5Bと継手21との最大曲げ角度
x:上記(a)、(b)について第一膨出部61側の回転中心P1から当該位置までのJ21方向の距離、上記(c)、(d)について第二膨出部62側の回転中心P2から当該位置までのJ21方向の距離
【0078】
なお、継手21内部のケーブル1やさや管2は急激な折れ曲がりには追従できないため、角度θは、最大でも11.5°以下とされており、8°以下が好ましく、6°以下がより好ましい。
【0079】
例えば、φ150のケーブル保護管5を採用した場合における具体的な継手21Hを
図26に示す。φ150のケーブル保護管5の外径Dは、製品許容差の最大値を考慮すると例えばD=166となる。また、第一膨出部61から第一縮径管51の端までの距離L1は115mmであり、第一膨出部61から第二拡径管42の端までの距離L0は35mmである。また、第二膨出部62から第二縮径管52の端までの距離L2は165mmであり、第二膨出部62から第四拡径管44の端までの距離L0は35mmである。
上述した継手21Hにおいて、第二拡径管42および第四拡径管44の各端の内径d0、第一縮径管51の端の内径d1、第二縮径管52の端の内径d2は、上記(1)式ではそれぞれ、d0=174mm、d1=190mm、d2=200mmと求められる。例えば、これらの各内径を各位置における上限値として、継手21Hを設計することで、最大曲げ角度θを5.75°以下(最大曲げ角度θ´を11.5°以下)とすることができる。このように、例えば、これらの各内径を各位置における基準値(例えば上限値や下限値)として、継手21を設計することができる。
【符号の説明】
【0080】
4,4A,4B…ケーブル保護管路、5,5A,5B…ケーブル保護管、21,21A,21B,21C,21D,21E,21F,21G,21…継手(ケーブル保護管用継手)、31…短管、41…第一拡径管、42…第二拡径管、43…第三拡径管、44…第四拡径管、48…突出部、51…第一縮径管、52…第二縮径管、61…第一膨出部、62…第二膨出部、81…第一挿入部、82…第二挿入部