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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-31
(45)【発行日】2022-09-08
(54)【発明の名称】シート積層体及びシート包装体
(51)【国際特許分類】
   A47K 10/16 20060101AFI20220901BHJP
   A47K 7/00 20060101ALI20220901BHJP
   A47K 10/20 20060101ALI20220901BHJP
【FI】
A47K10/16 C
A47K7/00 F
A47K10/20 A
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018114694
(22)【出願日】2018-06-15
(65)【公開番号】P2019216844
(43)【公開日】2019-12-26
【審査請求日】2021-05-14
(73)【特許権者】
【識別番号】390029148
【氏名又は名称】大王製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】山下 晶子
【審査官】七字 ひろみ
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-245862(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0227039(US,A1)
【文献】米国特許第03119516(US,A)
【文献】特開2012-165897(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47K 7/00
A47K 10/00-10/48
B65D 83/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長方形状に形成された複数枚のシートが積層されたシート積層体であって、
前記シートは、
当該シートの一辺と略平行な第一折り目において当該シートの一面側に折り返され、
前記第一折り目と前記一辺との間に形成された、前記一辺と略平行な第二折り目において当該シートの他面側に折り返され、
前記第二折り目と前記一辺との間に形成された、前記一辺と略平行な第三折り目において、前記第一折り目の外周を回り込むように、当該シートの前記他面側に折り返され
前記第三折り目と前記一辺との間に形成された、前記一辺と略平行な第四折り目において、当該シートの前記一面側又は前記他面側に折り返されており、
複数の前記シートが、
前記第一折り目と、前記一辺と対向する他辺と、の間の部分において、前記他面側が上を向き、
一の前記シートの前記一辺と対向する他辺が、
二の前記シートの前記第一折り目と、前記第二折り目と、の間の部分と、
二の前記シートの前記第一折り目と、前記一辺と対向する他辺と、の間の部分と、
の間に挟まれるようにして、一の前記シートの上に二の前記シートが位置するように積層されていることを特徴とするシート積層体。
【請求項2】
前記シートは、薬液が含浸されたウェットシートであることを特徴とする請求項1に記載のシート積層体。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のシート積層体が、取出口を備えた包装体に収納されたシート包装体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート積層体及びシート包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ウェットティッシュー、トイレクリーナー、キッチンクリーナー等の家庭用のシートを複数積層して積層体とする場合に、これを使用し易くするため、最上部のシートが引き出された際に次のシートが持ち上げられ、連続して使用することを可能とした、所謂ポップアップ式のシート積層体が知られている。
このようなポップアップ式のシート積層体としては、図5に示すような、Z字状に折り畳まれたシートが、一部が重なるように積層されて形成されたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-94768号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ポップアップ式のシート積層体は、これが所定の包装体に収納され、当該包装体に設けられた取出口から、シートを一枚ずつ取り出すようにして使用されるが、特許文献1に記載のような従来の折り方によってシート積層体を形成した場合、一枚のシートを取出口から取り出した際に、次に続くシートが連なって取り出されてしまう場合が多かった。
【0005】
本発明の課題は、包装体の取出口からシートを取り出す際に、シートが連なって取り出されてしまうおそれを低減することができるシート積層体及びシート包装体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、請求項1記載の発明は、
長方形状に形成された複数枚のシートが積層されたシート積層体であって、
前記シートは、
当該シートの一辺と略平行な第一折り目において当該シートの一面側に折り返され、
前記第一折り目と前記一辺との間に形成された、前記一辺と略平行な第二折り目において当該シートの他面側に折り返され、
前記第二折り目と前記一辺との間に形成された、前記一辺と略平行な第三折り目において、前記第一折り目の外周を回り込むように、当該シートの前記他面側に折り返され
前記第三折り目と前記一辺との間に形成された、前記一辺と略平行な第四折り目において、当該シートの前記一面側又は前記他面側に折り返されており、
複数の前記シートが、
前記第一折り目と、前記一辺と対向する他辺と、の間の部分において、前記他面側が上を向き、
一の前記シートの前記一辺と対向する他辺が、
二の前記シートの前記第一折り目と、前記第二折り目と、の間の部分と、
二の前記シートの前記第一折り目と、前記一辺と対向する他辺と、の間の部分と、
の間に挟まれるようにして、一の前記シートの上に二の前記シートが位置するように積層されていることを特徴とする。
本発明によれば、包装体の取出口からシートを取り出す際に、シートが連なって取り出されてしまうおそれを低減することができるシート積層体を提供することができる。
【0008】
請求項に記載の発明は、請求項1に記載のシート積層体であって、
前記シートは、薬液が含浸されたウェットシートであることを特徴とする。
本発明によれば、シートがウェットシートである場合において、包装体の取出口からシートを取り出す際に、シートが連なって取り出されてしまうおそれを低減することができるシート積層体を提供することができる。
【0009】
請求項に記載の発明は、
請求項1又は2に記載のシート積層体が、取出口を備えた包装体に収納されたシート包装体である。
本発明によれば、包装体の取出口からシートを取り出す際に、シートが連なって取り出されてしまうおそれを低減することができるシート包装体を提供することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、包装体の取出口からシートを取り出す際に、シートが連なって取り出されてしまうおそれを低減することができるシート積層体及びシート包装体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態に係るシート積層体におけるシートの折り畳み方を示す概略図である。なお、折り畳まれたシート間の間隔は実際より拡大されている。
図2】実施形態に係るシート積層体におけるシートの積層方法を示す概略図である。なお、折り畳まれたシート間の間隔、積層された各シートの間の間隔は、実際より拡大されている。
図3】(a)は、実施形態に係るシート包装体の斜め上方からの斜視図、(b)は、実施形態に係るシート包装体の斜め下方からの斜視図である。
図4図3(a)の、IV-IV部における断面図である。なお、折り畳まれたシート間の間隔、積層された各シートの間の間隔は、実際より拡大されたものとなっている。また、積層されるシートの枚数も実際より少数となっている。
図5】従来のシート積層体におけるシートの積層方法を示す概略図である。なお、折り畳まれたシート間の間隔、積層された各シートの間の間隔は、実際より拡大されている。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態であるシート積層体110及びシート積層体110が包装体120に収納されたシート包装体100について、図1から図5に基づいて説明する。ただし、本発明の技術的範囲は、図示例に限定されない。
なお、以下においては、図3に示すように、前後方向、左右方向及び上下方向並びにX軸、Y軸及びZ軸を定めて説明する。すなわち、シート包装体100において、袋本体121に取出口121aが形成された側を上、その反対側を下、シート包装体100の平面視における長辺の一方が位置している側を後ろ、その反対側を前、後を向いた際の右手側を右、後を向いた際の左手側を左とし、前後方向に沿った軸をX軸、左右方向に沿った軸をY軸、上下方向に沿った軸をZ軸とする。
【0013】
[実施形態の構成]
実施形態に係るシート包装体100は、シート111が複数積層されて形成されたシート積層体110が、包装体120に収納されたものである。
【0014】
{シート積層体}
シート積層体110は、シート111が所定の折り方で折り畳まれた上で積層され、これらが所謂ポップアップ式に、最上部のシート111が持ち上げられた際に、次のシート111も持ち上げられるようにし、これを連続して使用することを可能としたものである。
【0015】
(シート)
シート111としては、特に限定はなく、一般的な長方形状のウェットティッシュー、トイレクリーナー、キッチンクリーナー等任意のものを用いることができる。
【0016】
具体的には、シート111は、例えば、ウェットティッシューであれば、所定の繊維を繊維素材として、例えば、スパンレース、エアスルー、エアレイド、ポイントボンド、スパンボンド、ニードルパンチ等の周知の技術により製造される不織布であることが好ましい。所定の繊維としては、例えば、レーヨン、リヨセル、テンセル、コットン等のセルロース系繊維、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニルアルコール等のポリオレフィン系繊維、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル繊維、ナイロン等のポリアミド系繊維が挙げられる。これらは単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
また、シート111は、例えば、ウェットティッシューであれば、目付が30~80gsm、大きさが、MD方向(抄紙機上の紙の進行方向)に100mmから200mm、CD方向(抄紙機上の紙の進行方向と直角する方向)に100mmから200mmに形成されたものが好適である。なお、目付は、JIS P 8124:2011に従って測定した坪量をいう。
【0017】
また、シート111は、薬液が含浸されていないドライシートであってもよいが、所定の薬液が含浸されたウェットシートであることが好適である。所定の薬液としては、シート111の用途に応じて任意のものを用いることができるが、例えば、ウェットティッシューであれば、精製水、防腐剤、pH調整剤等を含有するものが好適である。
また、この場合、薬液含浸率は200質量%以上、300質量%以下であることが好ましい。なお、薬液含浸率とは、薬液含浸前のシート111の質量と、含浸させる薬液の質量とを測定し、薬液含浸前のシートの質量に対する含浸させる薬液の質量の割合を算出したものをいう。
なお、シート111がウェットシートである場合の薬液の含浸は、積層前に行い、薬液が含浸されたシート111を後述のように積層してもよいし、薬液含浸前にシート111を後述のように積層した上で、これに薬液を含浸させてもよい。
【0018】
(積層方法)
シート積層体110は、複数の長方形状のシート111のそれぞれが、図1に示すように折り畳まれた状態で積層されている。
すなわち、まず、シート111は、シート111の一辺(当該辺を第一辺部111aといい、第一辺部111aと対向する辺を第二辺部111bという。)と略平行な第一折り目111eにおいて、シート111の一面側(当該面を第一面111cといい、これと反対側の面を第二面111dという。)に折り返されている。
さらに、シート111は、第一折り目111eと、第一辺部111aとの間に形成された、第一辺部111a及び第二辺部111bと略平行な第二折り目111fにおいて、シート111の第二面111d側に折り返されている。
さらに、シート111は、第二折り目111fと、第一辺部111aとの間に形成された、第一辺部111a及び第二辺部111bと略平行な第三折り目111gにおいて、第一折り目111eの外周を回り込むように、第二面111d側に折り返されている。
さらに、シート111は、第三折り目111gと、第一辺部111aとの間に形成された、第一辺部111a及び第二辺部111bと略平行な第四折り目111hにおいて、第一面111c側に折り返されている。
なお、第四折り目111hは、上記のように第一面111c側へと折り返されることが望ましいが、これと反対に第二面111d側へと折り畳まれるようにすることも可能である。
【0019】
上記のように折り畳まれたシート111は、例えば、以下のようにして形成することができる。
まず、シート111につき、第一辺部111a近傍を、第一面111c側へと折り畳んで第四折り目111hを形成したのち、第四折り目111hから第二辺部111b方向へと所定の間隔を空けた位置において、第二面111d側へと折り畳むことで、第二折り目111fを形成する。
さらに、第二折り目111fにおいて折り畳まれてシート111が二重に重なった部分を、重なった状態のままで、第四折り目111hと反対側に折り畳むことによって、第一折り目111e及び第三折り目111gをまとめて形成する。
【0020】
なお、第二辺部111bと第一折り目111eとの間の部分を主部111iといい、第一折り目111eと第二折り目111fとの間の部分を第一折り返し部111jといい、第二折り目111fと第三折り目111gとの間の部分を第二折り返し部111kといい、第三折り目111gと第四折り目111hとの間の部分を第三折り返し部111lといい、第四折り目111hと、第一辺部111aとの間の部分を、第四折り返し部111mいう。
【0021】
この場合、主部111iの幅(第一辺部111a及び第二辺部111bと直交する方向の長さ)が、シート111全体の幅の40%から45%であり、第一折り返し部111jの幅が、シート111全体の幅の14%から20%であり、第二折り返し部111kの幅が、シート111全体の幅の14%から20%であり、第三折り返し部111lの幅が、シート111全体の幅の17%から23%であり、第四折り返し部111mの幅が、シート111全体の幅の1%から5%であることが好ましい。
なお、第三折り目111gを、第一折り目111eの外周を回り込むように形成するため、第二折り返し部111kの幅は、第一折り返し部111jの幅よりも大きいか同一である必要がある。
また、第四折り返し部111mは、上下方向に第一折り返し部111j及び第二折り返し部111kと重なるように形成されている必要がある。
【0022】
シート積層体110は、上記のように折り畳まれたシート111が、主部111iにおいて第二面111dが上を向くようにして複数積層され、形成されている。
具体的には、図2に示すように、第一辺部111a側と、第二辺部111b側と、が反対を向くように配置されたシート111が交互に重ねられることで、シート積層体110が形成されている。
また、それぞれのシート111の主部111iの第二辺部111b近傍は、最上部のシート111を除いて、一つ上部のシート111の第一折り返し部111jと、主部111iとの間に挟まれるように配置されている。
なお、この場合、下方に位置するシート111の主部111iの第二辺部111b近傍が、一つ上部のシート111の第一折り返し部111jと主部111iとの間に挟まれる幅は、下方に位置するシート111の主部111iの幅の5%から35%であることが好ましい。
【0023】
シート111を積層する枚数に特に制限はないが、40枚から80枚であることが好ましい。
【0024】
なお、シート111における第四折り目111h及び第四折り返し部111mは、これらが備えられていることが好ましいが、必須ではなく、これらを備えず、第一辺部111aに至るまで第三折り返し部111lとされていてもよい。
【0025】
また、シート111が矩形状である場合、第一辺部111a及び第二辺部111bが、矩形状のシート111の短辺であり、第一折り目111e、第二折り目111f、第三折り目111g及び第四折り目111hが、シート111の短辺と略平行に形成され、シート111が長手方向に折り返されることで、シート111の長手方向が、シート積層体110の平面視における短手方向となるように、シート積層体110が形成されていることが、シート積層体110をコンパクトに形成する上で望ましい。
ただし、これに限られず、シート積層体110をコンパクトに形成する上で望ましくないものの、第一折り目111e、第二折り目111f、第三折り目111g及び第四折り目111hが、シート111の長辺と略平行に形成され、シート111が短手方向に折り返されるようにすることも可能である。
【0026】
{包装体}
包装体120は、図3に示すように、上面にシート111を1枚ずつ取り出す取出口121aが形成された袋本体121と、取出口121aを開閉自在に覆う蓋材122と、から構成され、図4に示すように、内部にシート積層体110が収納されて使用される。
なお、図3及び図4においては、シート積層体110を形成するシート111の第一辺部111a及び第二辺部111bが、包装体120の平面視における長手方向と略平行となる場合につき図示している。
【0027】
(袋本体)
袋本体121は、シート材により袋状に形成されている。シート材としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエステル、ポリアミド、ポリ塩化ビニル等の合成樹脂シートの単材若しくは複合材、又はこれら合成樹脂シートとアルミフォイル若しくは紙等を貼り合わせた複合シートを使用することができる。
また、シート材の厚みは、40μmから70μmであることが好ましい。
また、袋本体121を構成するシート材は、袋本体121の底面側で袋本体121の長手方向に沿って接合され、センターシール部121bを構成するとともに、袋本体10の長手方向の両端部で接続され、エンドシール部121c、121cを構成している。
【0028】
袋本体121の大きさは、収納されるシート積層体110の大きさに応じて定められるが、包装体120を不必要に大きくすることなく、かつ使用開始時におけるシート111の取り出しが困難とならないように、シート積層体110を若干の余裕をもって収納できる大きさであることが好ましい。
【0029】
(取出口)
袋本体121の上面に形成された取出口121aの形状は、特に限定されないが、図3(a)に示すように、楕円形が好ましく、かつ、引き出されるシート111に適切な抵抗を掛けるため、取出口121aの大きさは、取出口121aの長手方向に30mmから50mm、短手方向に10mmから30mmであることが好ましく、長手方向に35mmから45mm、短手方向に13mmから18mmであることがさらに好ましい。
また、長手方向が、内部に収納されたシート111の各折り目の方向と略平行となるように形成されていることが望ましい。
【0030】
また、図4に示すように、取出口121aは、平面視において、内部のシート積層体110を構成するシート111の、第三折り返し部111l及び第四折り返し部111mと重ならない位置に形成され、平面視において取出口121aから、シート111の主部111iのみが見えるようになっていることが望ましい。
これによって、使用者が、第三折り返し部111l又は第四折り返し部111mを掴んでシート111を引き出してしまうことを防止できる。
【0031】
(蓋材)
蓋材122は、図3(a)に示すように、袋本体121とは別体のシート片により、取出口121aを開閉自在に覆うように構成されている。蓋材122を構成するシート片の材質としては、袋本体121を構成するシート材と同様のものを用いることができる。
蓋材122を構成するシート片の厚みは、袋本体121を構成するシート材よりも厚く、60μmから80μmであることが好ましい。
【0032】
蓋材122の形状は、取出口121aを完全に覆うことができれば特に限定されることはなく、例えば、矩形状、楕円形状など任意の形状とすることができる。
また、蓋材122の裏面には、ポリエステル系、アクリル系、ゴム系等の感圧接着剤が塗布されており、蓋材122は、取出口121aを開閉自在に覆うように袋本体121に接着される。
【0033】
また、蓋材122は、一端部が袋本体121に固定され、他端部には、図3(a)に示すように、当該端部から突出した摘み部122aが設けられ、摘み部122aの下面にのみ前記感圧接着剤が塗布されていない。これによって、摘み部122aを利用して蓋材122を開閉させることが容易となる。
【0034】
[実施形態の効果]
実施形態に係るシート包装体100によれば、図2及び図4に示すように、上下のシート111が重なった部分において、上側のシート111の主部111i、第三折り返し部111l及び第四折り返し部111mと、第一折り返し部111j及び第二折り返し部111kとの間に、下側のシート111の主部111iの第二辺部111b近傍が挟まれる形となり、6層にシートが重なることとなる。
これによって、シート111を、主部111iを掴んで、第二辺部111b付近から包装体120の取出口121aを用いて引き出す際の抵抗が大きくなり、大きな力が掛からない限りシート111が取り出されなくなることから、一枚のシート111を取り出す際に、その直下のシート111が連なって取り出されてしまうおそれを低減できる。
【0035】
なお、この効果は、第四折り目111h及び第四折り返し部111mが形成されていることによって高められているが、これらが設けられずとも、5層のシート材が重なることから、一定の効果を得ることができる。
【0036】
さらに、一枚のシート111を包装体120の取出口121aから引き出す際には、上記の重なった部分に大きな抵抗が掛かり、第一折り目111e及び第三折り目111gが開かれ、主部111iと第一折り返し部111jとの間隔が開くこととなる。これによって、主部111iと第一折り返し部111jとの間に挟まれていた、次のシート111の主部111iの第二辺部111b近傍が開放され、次のシートが外れやすくなる。
したがって、この点からも、一枚のシート111を取り出す際に、その直下のシート111が連なって取り出されしまうおそれを低減できる。
【0037】
特に、シート111が低目付けの不織布やプレーン不織布である場合、薬液含浸率の高いウェットシートである場合等に、シートが連なって取り出されてしまうおそれが高くなるが、本実施形態によれば、このようなシート111が連なって取り出されてしまい易いケースにおいても、そのおそれを低減することができる。勿論、もともとシートが連なって取り出され難い高目付けのシートである場合や、ドライシートである場合においても、さらにシートが連なって取り出されてしまうおそれを低減できる。
【0038】
また、実施形態に係るシート包装体100によれば、シート111を、主部111iを掴んで包装体120の取出口121aから引き出す際に、第二折り目111fが広がり難いことから、第一辺部111a付近が、第二折り目111fにおいて折り畳まれた状態のままで、シート111が取り出されることとなる。
従来のZ字状に折られたものにおいては、シート111全体が伸ばされた状態で取り出されることから、シート111の取り出し時に使用者が掴んだのと反対側の端部付近が、取り出し時の抵抗によって伸びてしまい易いが、本実施形態によれば、当該端部付近が折り畳まれた状態のままで取り出されるため、このようなおそれも低減できる。
【実施例
【0039】
次に、本発明の実施例及び比較例に係るシート包装体につき、シート引き出し時に要する力及びシート同士の張り付く力の測定、並びに取出し時に連なって取出されてしまう確率に関する試験を行った結果について説明する。
【0040】
[実施例及び比較例の構成]
以下の実施例及び比較例に係るシート包装体を用意した。
【0041】
{実施例1}
(シート積層体)
<シートの構成>
大きさ:MD方向135mm、CD方向175mmの矩形状
繊維材料:レーヨン50質量%、PET(ポリエチレンテレフタレート)50質量%
製法:スパンレースを用いて形成された不織布
目付:30gsm
薬液:精製水を99質量%以上、防腐剤を1質量%未満
薬液含浸率:230%。なお、シート積層前(シートを折った後、含浸し、積層する一枚含浸方法)に薬液を含浸した。
<積層方法>
MD方向と平行な折り目によって、第一折り目111e、第二折り目111f、第三折り目111g及び第四折り目111hを形成し、主部111iがCD方向に75mmの幅、第一折り返し部111jがCD方向に30mmの幅、第二折り返し部111kがCD方向に30mmの幅、第三折り返し部111lがCD方向に35mmの幅、第四折り返し部111mがCD方向に5mmの幅となるように、図1に示すように折り畳んだ。
このようなシート111を、下方に位置するシート111の主部111iの第二辺部111b近傍が、一つ上部のシート111の第一折り返し部111jと、主部111iとの間に、CD方向に20mmの幅で挟まれるようにして、図2に示すように、80枚積層した。
(包装体)
<袋本体>
シート材:材料PET/LLDPE、厚み62μm
形状:図3に示すピロー包装型。
大きさ:エンドシール部121c、121cを除いた平面視における長手方向の断面(図3におけるYZ面に沿った断面)において、内面側の周長が360mmとなり、平面視における短手方向の断面(図3におけるXZ面に沿った断面)において、内面側の周長が260mm
取出口:長径35mm、短径15mmの楕円形。袋本体の上面の中央に形成した。なお、蓋材を剥がして、取出口を開放状態としたものを用いた。
【0042】
{実施例2}
シートに含浸させる薬液として、アルコールを含まず、除菌作用を有するもの、具体的には、防腐剤とその溶剤、pH調整剤を10質量%未満、精製水を90質量%以上の割合で含有するものを用いた。その他の構成は、実施例1と同様である。
【0043】
{実施例3}
シートに含浸させる薬液として、アルコールを含み、除菌作用を有するもの、具体的には、エタノールとその他防腐剤を30質量%以上、精製水を70質量%未満の割合で含有するものを用いた。その他の構成は、実施例1と同様である。
【0044】
{比較例1}
(シート積層体)
<シートの構成>
実施例1と同様である。
<積層方法>
図5に示すように、MD方向と平行な2か所の折り目によって、Z字状に折り畳んだ。具体的には、中央部分がCD方向に80mmとなり、両側の折り返し部分が共にCD方向に47.5mmとなるように折り畳んだ。
このようなシート111を、図5に示すように、上方に位置するシート111の下方に折り畳まれた部分と、下方に位置するシート111の上方に折り畳まれた部分とが、CD方向に幅20mm重なるようにして、64枚積層した。
(包装体)
実施例1と同様である。
【0045】
{比較例2}
シートに含浸させる薬液を、実施例2と同様とした。その他の構成は、比較例1と同様である。
【0046】
{比較例3}
シートに含浸させる薬液を、実施例3と同様とした。その他の構成は、比較例1と同様である。
【0047】
[試験方法]
上記実施例及び比較例に係るシート包装体を用いて、以下の試験を行った。
【0048】
{シート引き出し時に要する力の測定}
上記実施例及び比較例のシート包装体について、取出口121aから、シート111を一枚引き出す際に要する力について測定した。
具体的には、デジタルフォースゲージ(IMADA、DS2-200N)を、包装体内のシート111の平面視において取出口121aと重なる部分に接続し、当該状態でシート111を垂直方向に引っ張って引き出す際に掛かった力の最大値を、実施例については1~80枚目まで、比較例については1~64枚目までそれぞれのシート111につき測定し、その平均値を求めた。
【0049】
{シート同士の張り付く力の測定}
上記実施例及び比較例に用いられたシート包装体について、シート111同士が張り付く力について測定した。
具体的には、シート積層体を包装体から取り出した上で、デジタルフォースゲージ(IMADA、DS2-200N)を、シート111の、包装体に包装されていた際に取出口121aと平面視において重なっていた部分に接続し、当該状態でシート111を垂直方向に引っ張って、一つ下のシートから引き剥がす際に掛かった力の最大値を、実施例については1~79枚目まで、比較例についてはい1~63枚目までそれぞれのシート111につき測定し、その平均値を求めた。
【0050】
{取り出し時に連なって取出されてしまう確率に関する試験}
上記実施例及び比較例に用いられたシート包装体について、シートを複数枚連続して取り出し、その際に連なって取り出されてしまう確率を算出した。
具体的には、各シート包装体について、上面を抑えず、平面視における長手方向の一端部近傍を平面視における短手方向の両側から挟み込むようにして片手で押さえた状態(一側面に親指があたり、これと対向する他の側面に中指及び人さし指が当たり、これらで挟み込む状態)で、一枚ずつシート111を引き出した。
具体的には、シート111が実施例については80枚、比較例については64枚収納された状態から、1枚ずつ、実施例については80枚、比較例については64枚引き出した。
なお、1枚取り出したときにその下のシートがつながって出てきて、2枚目のシートが、包装体から完全に取り出されてしまった場合に、連なって取り出されたと判断し、このようなシートの数を数えた。
また、2回の試験を行い、その平均を連なって取り出された枚数とした。したがって、例えば1回目が1枚、2回目が0枚であれば、連なって取り出された枚数は、0.5枚ということとなる。
【0051】
[試験結果]
試験の結果を表Iに示す。
【0052】
【表1】
【0053】
[評価]
実施例と比較例との比較から、薬液が精製水99%のものの場合、アルコールを含まず除菌作用を有するものの場合、アルコールを含み除菌作用を有するものの場合のいずれの場合においても、シート積層体を、図1及び図2に示す折り方で作成することによって、従来のZ折りで作成した場合と比較して、シート引き出し時に要する力が強くなると共に、シート同士の張り付く力は弱くなっている。
したがって、一枚のシートを引き出す際に、引き出すシートによって、その下のシートが張り付いて引っ張られる力は弱くなる一方、下のシートが連なって引き出されるために要する力は強くなることから、シートが連なって引き出され難くなることが分かる。
また、実際の引き出し試験においても、薬液が精製水99%のものの場合、アルコールを含まず除菌作用を有するものの場合、アルコールを含み除菌作用を有するものの場合のいずれの場合においても、シート積層体を、図1及び図2に示す折り方で作成することによって、従来のZ折りで作成した場合と比較して、連なって取り出される確率を大幅に低減できることが分かる。
【符号の説明】
【0054】
100 シート包装体
110 シート積層体
111 シート
111a 第一辺部
111b 第二辺部
111c 第一面
111d 第二面
111e 第一折り目
111f 第二折り目
111g 第三折り目
111h 第四折り目
120 包装体
121a 取出口
図1
図2
図3
図4
図5