(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-31
(45)【発行日】2022-09-08
(54)【発明の名称】作業車両
(51)【国際特許分類】
E02F 9/22 20060101AFI20220901BHJP
F15B 11/08 20060101ALI20220901BHJP
【FI】
E02F9/22 Z
F15B11/08 A
(21)【出願番号】P 2018132681
(22)【出願日】2018-07-12
【審査請求日】2021-06-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】新樹グローバル・アイピー特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】横尾 貴史
(72)【発明者】
【氏名】坂本 昭彦
(72)【発明者】
【氏名】亀倉 寛尚
【審査官】亀谷 英樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-308073(JP,A)
【文献】特開2004-251124(JP,A)
【文献】特開2018-059632(JP,A)
【文献】特開2003-329007(JP,A)
【文献】特開2017-187002(JP,A)
【文献】特開2017-187000(JP,A)
【文献】特開2016-114142(JP,A)
【文献】特開2012-225460(JP,A)
【文献】特開2006-307581(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0145835(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/20-9/22
E02F 3/42-3/43
E02F 3/84-3/85
F15B 11/00-11/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクチュエータに供給される作動油の流れを切り替える方向制御弁にパイロット圧を印加する電磁制御弁と、
前記パイロット圧を生成するための作動油を前記電磁制御弁に供給する油圧ポンプと、
前記電磁制御弁の入力側と前記油圧ポンプの出力側とに接続されるシャットオフ弁と、
入力される操作信号に応じて、前記電磁制御弁を制御するコントローラと、
を備え、
前記コントローラは、所定時間のあいだ前記操作信号が入力されなかった場合、前記シャットオフ弁を閉じる、
作業車両。
【請求項2】
前記アクチュエータは、作業機を駆動させるためのアクチュエータであり、
前記操作信号は、前記作業機を操作するための操作信号である、
請求項1に記載の作業車両。
【請求項3】
作動油クーラをさらに備え、
前記油圧ポンプの出力側は、前記作動油クーラ及び前記シャットオフ弁それぞれの入力側に接続される、
請求項1又は2に記載の作業車両。
【請求項4】
前記油圧ポンプは、固定容量型ポンプである、
請求項1乃至3のいずれかに記載の作業車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、作業機と、作業機を駆動させる作業機アクチュエータと、作業機アクチュエータを制御するコントローラとを備える作業車両が知られている(例えば、特許文献1参照)。コントローラは、作業機アクチュエータに供給される作動油の流れを切り替える方向制御弁にパイロット圧を印加する電磁制御弁を電気的に制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、電磁制御弁には、パイロット圧を生成するための作動油が油圧ポンプから常時供給されており、方向制御弁にパイロット圧を印加しない場合、電磁制御弁は閉じられている。
【0005】
しかしながら、実際には、電磁制御弁が閉じられていても作動油が漏れ出している場合があり、そのため油圧ポンプの利用効率が低下していた。
【0006】
本発明は、油圧ポンプの利用効率を向上可能な作業車両の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る作業車両は、電磁制御弁と、油圧ポンプと、シャットオフ弁と、コントローラとを備える。電磁制御弁は、作業機アクチュエータに供給される作動油の流れを切り替える方向制御弁にパイロット圧を印加する。油圧ポンプは、パイロット圧を生成するための作動油を電磁制御弁に供給する。シャットオフ弁は、電磁制御弁の入力側と油圧ポンプの出力側とに接続される。コントローラは、入力される作業機操作信号に応じて、電磁制御弁を制御する。コントローラは、所定時間のあいだ作業機操作信号が入力されなかった場合、シャットオフ弁を閉じる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、油圧ポンプの利用効率を向上可能な作業車両を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【発明を実施するための形態】
【0010】
(作業車両1)
図1は、実施形態に係る作業車両1の構成を示す模式図である。
図1では、作業車両1の油圧回路及び電気回路が主に示されている。
【0011】
作業車両1は、図示しない作業機を備える。作業車両1としては、例えば、モータグレーダ、ホイールローダ、ローダ式ショベルなどが挙げられるが、これに限られない。
【0012】
作業車両1は、作動油タンク10、エンジン20、走行駆動機構30、及び作業機駆動機構40を備える。
【0013】
作動油タンク10は、作動油を貯留する。作動油タンク10には、走行駆動用の作動油と作業機駆動用の作動油との両方が貯留されている。
【0014】
エンジン20は、走行駆動用の動力と作業機駆動用の動力とを発生させる。エンジン20の動力は、走行駆動機構30と作業機駆動機構40とにおいて利用される。
【0015】
走行駆動機構30は、動力伝達装置31及び走行装置32を有する。動力伝達装置31は、いわゆるHST(Hydro Static Transmission)方式の装置である。動力伝達装置31は、走行用ポンプ33及び走行用モータ34を含む。動力伝達装置31は、走行用ポンプ33及び走行用モータ34によって形成される閉回路である。走行用ポンプ33は、エンジン20によって駆動される。走行用ポンプ33は、可変容量型の油圧ポンプである。走行用ポンプ33は、作動油を走行用モータ34に吐出する。走行用モータ34は、走行用ポンプ33から吐出される作動油によって駆動される。走行用モータ34は、可変容量型の油圧モータである。動力伝達装置31は、さらに、走行用ポンプ33及び走行用モータ34によって形成される閉回路に作動油を補給するためのチャージポンプ35を有している。チャージポンプ35は、作動油を走行用ポンプ33及び走行用モータ34によって形成される閉回路に補給する。走行装置32は、走行用モータ34によって駆動される。走行装置32は、アクスル36及び走行輪37を含む。アクスル36は、動力伝達装置31から伝達される駆動力を走行輪37に伝達する。これにより、走行輪37が回転する。
【0016】
作業機駆動機構40は、作業機ポンプ41、方向制御弁42、作業機アクチュエータ43、電磁制御弁44、ファンポンプ45、分流弁46、作動油クーラ47、ファンモータ48、シャットオフ弁50、及びコントローラ51を有する。
【0017】
作業機ポンプ41は、作動油タンク10から作動油を吸い込み、吸い込んだ作動油を方向制御弁42に吐出する。方向制御弁42は、第1動作位置a1、第2動作位置a2、及び中立位置a3に移動可能である。方向制御弁42は、第1動作位置a1に位置する場合、作業機ポンプ41から吐出される作動油を、作業機アクチュエータ43が伸張する方向に流す。方向制御弁42は、第2動作位置a2に位置する場合、作業機ポンプ41から吐出される作動油を、作業機アクチュエータ43が収縮する方向に流す。方向制御弁42は、中立位置a3に位置する場合、作業機ポンプ41から吐出される作動油を遮断する。このように、方向制御弁42は、作業機アクチュエータ43に供給される作動油の流れを切り替える。これにより、作業機アクチュエータ43が作業機(不図示)を駆動させる。
【0018】
電磁制御弁44は、方向制御弁42にパイロット圧を印加することによって、方向制御弁42の位置を制御する。電磁制御弁44は、コントローラ51から入力される指令信号に応じて、方向制御弁42に印加するパイロット圧を制御する。
【0019】
電磁制御弁44は、第1電磁制御弁44a及び第2電磁制御弁44bを含む。第1電磁制御弁44aは、方向制御弁42を第1動作位置a1に移動させるためのパイロット圧を生成する。第2電磁制御弁44bは、方向制御弁42を第2動作位置a2に移動させるためのパイロット圧を生成する。第1及び第2電磁制御弁44a,44bのそれぞれは、ファンポンプ45から供給される作動油を利用してパイロット圧を生成する。第1及び第2電磁制御弁44a,44bのそれぞれがパイロット圧を生成しない場合、方向制御弁42は中立位置a3に保持される。電磁制御弁44を通過した作動油は、油路L5を通って作動油タンク10に戻される。
【0020】
ファンポンプ45は、作動油タンク10と分流弁46とに繋がる油路L1上に配置される。ファンポンプ45は、作動油タンク10から作動油を吸い込み、吸い込んだ作動油を分流弁46に向けて吐出する。ファンポンプ45の出力側は、分流弁46を介して、作動油クーラ47及びシャットオフ弁50それぞれの入力側に接続される。本実施形態において、ファンポンプ45は、固定容量型ポンプである。
【0021】
分流弁46は、油路L1を介して、ファンポンプ45の出力側に接続される。分流弁46は、油路L2を介して、作動油クーラ47の入力側に接続される。分流弁46は、油路L3を介して、電磁制御弁44の入力側に接続される。分流弁46は、油路L1から流入する作動油を、油路L2及び油路L3のそれぞれに振り分ける。分流弁46から油路L2及び油路L3のそれぞれへ振り分けられる作動油の割合は、適宜設定可能である。
【0022】
作動油クーラ47は、分流弁46を介して、ファンポンプ45の出力側に接続される。作動油クーラ47は、油路L2から流入する作動油を冷却する。作動油クーラ47は、内部を流れる作動油を、ファンモータ48から送られる冷却風によって冷却する。作動油クーラ47を通過した作動油は、油路L4を通って作動油タンク10に戻される。
【0023】
ファンモータ48は、分流弁46と作動油クーラ47とに繋がる油路L2上に配置される。ファンモータ48は、分流弁46を介して、ファンポンプ45の出力側に接続される。ファンモータ48は、作動油クーラ47に送風するための冷却ファン(不図示)を回転させる。
【0024】
シャットオフ弁50は、分流弁46と電磁制御弁44とに繋がる油路L3上に配置される。シャットオフ弁50は、分流弁46を介して、ファンポンプ45の出力側に接続される。シャットオフ弁50は、電磁制御弁44の入力側に接続される。
【0025】
シャットオフ弁50は、開放位置と閉鎖位置とに移動可能である。シャットオフ弁50が開放位置に移動して油路L3が開くと、ファンポンプ45から吐出される作動油は電磁制御弁44に供給される。シャットオフ弁50が閉鎖位置に移動して油路L3が閉じられると、ファンポンプ45から吐出される作動油は遮断されて電磁制御弁44には供給されない。シャットオフ弁50の開閉は、コントローラ51によって電気的に制御される。
【0026】
コントローラ51は、オペレータが操作する作業機レバー52から入力される作業機操作信号に応じて、電磁制御弁44を電気的に制御する。これにより、作業機アクチュエータ43が作業機(不図示)を駆動させる。
【0027】
コントローラ51は、オペレータが操作する作業機ロックスイッチ53から入力される信号に応じて、シャットオフ弁50を電気的に制御する。作業機ロックスイッチ53は、公道走行時などにオペレータが意図せず作業機レバー52に触れたとしても、作業機アクチュエータ43を駆動させないために設けられている。作業機ロックスイッチ53は、オペレータによってON操作されると、ON操作されたことを示す信号をコントローラ51に入力する。作業機ロックスイッチ53は、オペレータによってOFF操作されると、OFF操作されたことを示す信号をコントローラ51に入力する。コントローラ51は、作業機ロックスイッチ53のON操作を示す信号が入力されるとシャットオフ弁50を閉じ、作業機ロックスイッチ53のOFF操作を示す信号が入力されるとシャットオフ弁50を開く。
【0028】
コントローラ51は、作業機操作信号が入力されない時間を計測するためのカウンタを内蔵する。コントローラ51は、所定時間のあいだ作業機操作信号が入力されなかった場合、シャットオフ弁50を閉じる。これにより、作業機を用いた作業が行われていない場合に、ファンポンプ45から電磁制御弁44への作動油の供給が遮断される。所定時間の長さは特に制限されず、オペレータに作業機を用いた作業を行う意志がないと判断できる長さに設定される。例えば、所定時間は、15分程度に設定することができる。
【0029】
なお、上述のとおり本実施形態では、オペレータが作業機ロックスイッチ53をON操作することによって意図的にシャットオフ弁50を閉じることができるため、コントローラ51は、作業機ロックスイッチ53のOFF操作を示す信号が入力されている場合にのみ作業機操作信号が入力されない時間を計測してもよい。
【0030】
(特徴)
コントローラ51は、所定時間のあいだ作業機操作信号が入力されなかった場合、電磁制御弁44の入力側とファンポンプ45(「油圧ポンプ」の一例)の出力側とに接続されるシャットオフ弁50を閉じる。従って、作業機を用いた作業が行われていない場合には、ファンポンプ45から電磁制御弁44への作動油の供給が遮断されるため、中立位置a3に位置する電磁制御弁44にかかる油圧を低下させることができる。その結果、電磁制御弁44から作動油が漏れ出すことを抑制できるため、ファンポンプ45の利用効率を向上させることができる。
【0031】
作業車両1は、ファンポンプ45の出力側と作動油クーラ47及びシャットオフ弁50それぞれの入力側とに接続される分流弁46を備える。従って、シャットオフ弁50を閉じることによって、電磁制御弁44から作動油タンク10に作動油が漏れ出すことを抑制するとともに、より多くの作動油を作動油クーラ47で冷却することができる。その結果、作動油タンク10に貯留される作動油の温度を効率的に低下させることができる。
【0032】
ファンポンプ45は、固定容量型ポンプである。従って、可変容量型ポンプを用いる場合に比べて、シャットオフ弁50を閉じたときにポンプ容量が変動してしまうことを抑制できる。
【0033】
(他の実施形態)
本発明は以上のような実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱することなく種々の変形又は修正が可能である。
【0034】
上記実施形態では、電磁制御弁44がパイロット圧を生成するための作動油は、ファンポンプ45から供給されることとしたが、ファンポンプ45以外の油圧ポンプから供給されてもよい。例えば、電磁制御弁44がパイロット圧を生成するための作動油は、作業機ポンプ41から供給されてもよい。
【0035】
上記実施形態では、オペレータが操作する作業機レバー52からコントローラ51に作業機操作信号が入力されることとしたが、情報化通信技術(ICT:Information and Communication Technology)を利用して作業車両を自動制御する場合、作業機操作信号は、外部に設置された情報制御装置からコントローラ51に入力されてもよい。
【0036】
上記実施形態では、作業車両1が、方向制御弁42、作業機アクチュエータ43及び電磁制御弁44を1セットだけ備えることとしたが、複数セットを備えていてもよい。この場合には、ポンプの利用効率を更に向上させることができる。
【0037】
上記実施形態では、ファンモータ48が、作動油クーラ47に送風するための冷却ファンを回転させることとしたが、冷却ファンは、エンジン20内を循環する冷却水を冷却するためのラジエータにも送風してもよい。
【0038】
上記実施形態では、作業機駆動機構40が、分流弁46を備えることとしたが、分流弁46を備えていなくてもよい。この場合、油路L1は、油路L2及び油路L3それぞれに直接分岐していてもよい。
【符号の説明】
【0039】
1 作業車両
10 作動油タンク
20 エンジン
30 走行駆動機構
31 動力伝達装置
32 走行装置
40 作業機駆動機構
41 作業機ポンプ
42 方向制御弁
43 作業機アクチュエータ
44 電磁制御弁
45 ファンポンプ
46 分流弁
47 作動油クーラ
48 ファンモータ
50 シャットオフ弁
51 コントローラ
L1~L5 油路