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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-31
(45)【発行日】2022-09-08
(54)【発明の名称】射出成形機およびその制御方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/77 20060101AFI20220901BHJP
【FI】
B29C45/77
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018147189
(22)【出願日】2018-08-03
(65)【公開番号】P2020019267
(43)【公開日】2020-02-06
【審査請求日】2021-07-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000222587
【氏名又は名称】東洋機械金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002608
【氏名又は名称】弁理士法人オーパス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】樽家 宏治
(72)【発明者】
【氏名】下谷 祥子
【審査官】瀧口 博史
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-341540(JP,A)
【文献】特開2001-054925(JP,A)
【文献】特開2009-248438(JP,A)
【文献】特開2006-272867(JP,A)
【文献】特開2001-347549(JP,A)
【文献】特開2010-721(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/77
B22D 17/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金型のキャビティに通じるノズルが先端に設けられた射出シリンダと、
前記射出シリンダに収容されたスクリューと、
前記スクリューを回転および前後進させるスクリュー駆動部と、
前記キャビティ内の樹脂材料の圧力を検出する金型内圧力検出部と、
前記射出シリンダ内の樹脂材料の圧力を検出する射出シリンダ内圧力検出部と、
前記スクリューによって前記キャビティに樹脂材料を射出する射出動作、および、前記スクリューによって前記キャビティに充填された樹脂材料に圧力を加える保圧動作、を実行するように前記スクリュー駆動部を制御する制御部と、を有し、
前記制御部が、
前記保圧動作において前記金型内圧力検出部によって検出された前記圧力が保圧目標圧力値となるように前記スクリュー駆動部を制御し、
前記保圧動作中でかつ前記金型内圧力検出部によって検出された前記圧力が監視開始圧力値まで低下したあとに、前記射出シリンダ内圧力検出部によって検出された前記圧力が保圧上限圧力値に到達したとき、(1)前記保圧動作を直ちに終了するように前記スクリュー駆動部を制御する、または、(2)前記保圧動作の実行期間が経過するまで前記スクリューの前後進を規制するように前記スクリュー駆動部を制御することを特徴とする射出成形機。
【請求項2】
前記スクリューの位置を検出するスクリュー位置検出部をさらに有し、
前記制御部が、前記射出動作中に前記スクリュー位置検出部によって検出された前記位置および前記金型内圧力検出部によって検出された前記圧力が動作切替条件を満たしたとき、前記射出動作から前記保圧動作に切り替えるように前記スクリュー駆動部を制御する、請求項に記載の射出成形機。
【請求項3】
前記保圧上限圧力値が、前記動作切替条件を満たしたときに前記射出シリンダ内圧力検出部によって検出された前記圧力の±10%の範囲内に設定される、請求項に記載の射出成形機。
【請求項4】
前記射出シリンダ内圧力検出部が、前記スクリューまたは前記スクリュー駆動部に取り付けられたロードセルである、請求項1~請求項のいずれか一項に記載の射出成形機。
【請求項5】
金型のキャビティに通じるノズルが先端に設けられた射出シリンダと、前記射出シリンダに回転及び前後進可能に収容されたスクリューと、を有する射出成形機の制御方法であって、
前記キャビティに樹脂材料を射出するように前記スクリューを前進させる射出工程と、
前記キャビティに充填された樹脂材料に圧力を加えるように前記スクリューを前後進させる保圧工程と、を含み、
前記保圧工程において前記金型内の樹脂材料の圧力(以下、「金型内樹脂圧」という。)が保圧目標圧力値となるように前記スクリューを前後進させ、
前記保圧工程中でかつ前記金型内樹脂圧が監視開始圧力値まで低下したあとに、前記射出シリンダ内の樹脂材料の圧力が保圧上限圧力値に到達したとき、(1)前記保圧工程を直ちに終了する、または、(2)前記保圧工程の実行期間が経過するまで前記スクリューの前後進を規制することを特徴とする射出成形機の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出成形機およびその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の射出成形機の一例が、特許文献1に開示されている。特許文献1の射出成形機は、金型内の樹脂圧の計測値に基づいて金型内の樹脂圧を制御する金型内樹脂圧閉ループ制御手段と、射出シリンダのリザーバ内の樹脂圧の計測値に基づいてリザーバ内の樹脂圧を制御するリザーバ内樹脂圧閉ループ制御手段と、を有する。そして、この射出成形機は、保圧動作において、金型内樹脂圧閉ループ制御手段による操作量からリザーバ内樹脂圧閉ループ制御手段による操作量へ変節点を生じさせることがないように切り換える切り換え区間制御手段をさらに有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平3-83621号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記射出成形機は、金型内の樹脂圧に基づく制御から射出シリンダのリザーバ内の樹脂圧に基づく制御に切り換えるので、制御が複雑であった。
【0005】
そのため、本発明者らは、金型のキャビティに射出充填された樹脂材料の状態と金型内の圧力との関係について鋭意検討を行った。その結果、金型内の樹脂材料の圧力の目標値を適切に設定して制御することにより、射出シリンダ内の樹脂材料の圧力の制御に切り替えることなく良好な成形品を得ることができることを見いだした。しかしながら、金型内の樹脂材料の圧力の目標値の設定によっては、金型内の樹脂材料が固まったあともスクリューによって樹脂材料を押し込んでしまうことがあり、射出シリンダ内の樹脂材料の圧力が必要以上に上昇してしまうおそれがあった。これにより、成形品の品質の低下を招くことがあった。
【0006】
そこで、本発明は、簡易な制御で成形品の品質の低下を効果的に抑制できる射出成形機およびこの射出成形機の制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の一態様に係る射出成形機は、金型のキャビティに通じるノズルが先端に設けられた射出シリンダと、前記射出シリンダに収容されたスクリューと、前記スクリューを回転および前後進させるスクリュー駆動部と、前記キャビティ内の樹脂材料の圧力を検出する金型内圧力検出部と、前記射出シリンダ内の樹脂材料の圧力を検出する射出シリンダ内圧力検出部と、前記スクリューによって前記キャビティに樹脂材料を射出する射出動作、および、前記スクリューによって前記キャビティに充填された樹脂材料に圧力を加える保圧動作、を実行するように前記スクリュー駆動部を制御する制御部と、を有し、前記制御部が、前記保圧動作において前記金型内圧力検出部によって検出された前記圧力が保圧目標圧力値となるように前記スクリュー駆動部を制御し、前記保圧動作中に、前記射出シリンダ内圧力検出部によって検出された前記圧力が保圧上限圧力値に到達したとき、(1)前記保圧動作を直ちに終了するように前記スクリュー駆動部を制御する、または、(2)前記保圧動作の実行期間が経過するまで前記スクリューの前後進を規制するように前記スクリュー駆動部を制御することを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、保圧動作において金型内の樹脂材料の圧力が保圧目標圧力値となるようにスクリュー駆動部を制御する。そして、保圧動作中に、射出シリンダ内の樹脂材料の圧力が保圧上限圧力値に到達したとき、保圧動作を直ちに終了するか、または、保圧動作の実行期間が経過するまでスクリューの前後進を規制する。このようにしたことから、金型内の樹脂材料の圧力に基づいてスクリュー駆動部を制御した場合、保圧動作中に金型内の樹脂材料が固まったあともスクリューによって樹脂材料を押し込んでしまうことがあるが、射出シリンダ内の樹脂材料の圧力が保圧上限圧力値を超えてしまうことを防ぐことができる。そのため、射出シリンダ内の樹脂材料の圧力が必要以上に上昇してしまうことを抑制できる。
【0009】
本発明において、前記制御部が、前記保圧動作中でかつ前記金型内圧力検出部によって検出された前記圧力が監視開始圧力値まで低下したあとに、前記射出シリンダ内圧力検出部によって検出された前記圧力が保圧上限圧力値に到達したとき、(1)前記保圧動作を直ちに終了するように前記スクリュー駆動部を制御する、または、(2)前記保圧動作の実行期間が経過するまで前記スクリューの前後進を規制するように前記スクリュー駆動部を制御する。このようにすることで、射出シリンダ内の樹脂材料の圧力をより適切なタイミングで検出することができ、射出シリンダ内の樹脂材料の圧力の上昇を誤検出してしまうことを抑制できる。
【0010】
本発明において、前記スクリューの位置を検出するスクリュー位置検出部をさらに有し、前記制御部が、前記射出動作中に前記スクリュー位置検出部によって検出された前記位置および前記金型内圧力検出部によって検出された前記圧力が動作切替条件を満たしたとき、前記射出動作から前記保圧動作に切り替えるように前記スクリュー駆動部を制御する、ことが好ましい。このようにすることで、適切なタイミングで射出動作から保圧動作に切り替えることができる。
【0011】
本発明において、前記保圧上限圧力値が、前記動作切替条件を満たしたときに前記射出シリンダ内圧力検出部によって検出された前記圧力の±10%の範囲内に設定される、ことが好ましい。このようにすることで、射出シリンダ内の樹脂材料の圧力が必要以上に上昇してしまうことをより効果的に抑制できる。
【0012】
本発明において、前記射出シリンダ内圧力検出部が、前記スクリューまたは前記スクリュー駆動部に取り付けられたロードセルである、ことが好ましい。このようにすることで、射出シリンダの外に設けたロードセルによって射出シリンダ内の樹脂材料の圧力を検出することができるので、簡易な構成で当該圧力を検出できる。
【0013】
上記目的を達成するために、本発明の他の一態様に係る射出成形機の制御方法は、金型のキャビティに通じるノズルが先端に設けられた射出シリンダと、前記射出シリンダに回転及び前後進可能に収容されたスクリューと、を有する射出成形機の制御方法であって、前記キャビティに樹脂材料を射出するように前記スクリューを前進させる射出工程と、前記キャビティに充填された樹脂材料に圧力を加えるように前記スクリューを前後進させる保圧工程と、を含み、前記保圧工程において前記金型内の樹脂材料の圧力(以下、「金型内樹脂圧」という。)が保圧目標圧力値となるように前記スクリューを前後進させ、前記保圧工程中でかつ前記金型内樹脂圧が監視開始圧力値まで低下したあとに、前記射出シリンダ内の樹脂材料の圧力が保圧上限圧力値に到達したとき、(1)前記保圧工程を直ちに終了する、または、(2)前記保圧工程の実行期間が経過するまで前記スクリューの前後進を規制することを特徴とする。
【0014】
本発明によれば、保圧工程において金型内の樹脂材料の圧力が保圧目標圧力値となるようにスクリューを前後進させる。そして、保圧工程中に、射出シリンダ内の樹脂材料の圧力が保圧上限圧力値に到達したとき、保圧工程を直ちに終了するか、または、保圧工程の実行期間が経過するまで前記スクリューの前後進を規制する。このようにしたことから、金型内の樹脂材料の圧力に基づいてスクリューを前後進(特に前進)した場合、保圧工程中に金型内の樹脂材料が固まったあともスクリューによって樹脂材料を押し込んでしまうことがあるが、射出シリンダ内の樹脂材料の圧力が保圧上限圧力値を超えることがない。そのため、射出シリンダ内の樹脂材料の圧力が必要以上に上昇してしまうことを抑制できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、金型内の樹脂材料の圧力に基づいて当該圧力を制御する際に、射出シリンダ内の樹脂材料の圧力が必要以上に上昇してしまうことがないので、簡易な制御で成形品の品質の低下を効果的に抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態に係る射出成形機の正面図である。
図2図1の射出成形機の要部拡大断面図である。
図3図1の射出成形機の機能ブロックを説明する図である。
図4図1の射出成形機の保圧動作を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態に係る射出成形機について、図1図4を参照して説明する。
【0018】
図1は、本発明の一実施形態に係る射出成形機の正面図である。図2は、図1の射出成形機の要部拡大断面図である。図3は、図1の射出成形機の機能ブロックを説明する図である。図4は、図1の射出成形機の保圧動作を説明する図である。なお、本明細書では、図1図2の下方を前方とし、上方を後方として説明している。
【0019】
図1および図2に示す本実施形態に係る射出成形機1は、上金型2および下金型3を型締することで形成されるキャビティ4に溶融した樹脂材料を射出注入し、冷却固形化することで成形品を得るものである。なお、本実施形態は、射出シリンダが鉛直方向に沿って配置された竪型射出成形機に本発明を適用した構成の一例を示すものであるが、射出シリンダが水平方向に沿って配置された横型の射出成形機に本発明を適用してもよい。
【0020】
射出成形機1は、機台6上に、樹脂材料を射出するための射出ユニット10と、上金型2と下金型3とを当接させ、型締力を発生させて型締を行うための型締ユニット20と、表示操作ユニット30と、を有している。
【0021】
射出ユニット10は、下方を向くノズル11aが先端に設けられた射出シリンダ11と、射出シリンダ11内に回転および前後進可能に収容されたスクリュー12と、を有している。ノズル11aは、ランナーやスプール、ゲートなどを有する樹脂流路5を介してキャビティ4に通じている。また、射出ユニット10は、射出シリンダ11を昇降させる電動モータなどを有するシリンダ駆動部13、および、射出シリンダ11内でスクリュー12を回転および前後進させる電動モータなどを有するスクリュー駆動部14を有している。射出ユニット10が下方に移動して上金型2に近づくことを前進といい、上方に移動して上金型2から離れることを後退という。シリンダ駆動部13およびスクリュー駆動部14は、制御部40に接続されており、制御部40からの制御信号に応じて動作する。
【0022】
射出ユニット10は、スクリュー12とスクリュー駆動部14との間に射出シリンダ内圧力検出部としてのロードセル16を有している。ロードセル16は、射出シリンダ11内でスクリュー12に作用する樹脂材料の圧力を検知するものであり、スクリュー12またはスクリュー駆動部14に取り付けられて、射出シリンダ11の外に設けられている。ロードセル16は、制御部40に接続されており、射出シリンダ11内の樹脂材料の圧力である射出シリンダ内樹脂圧Piを検出して制御部40に射出シリンダ内樹脂圧Piを示す信号を送信する。なお、ロードセル16に代えて、例えば、射出シリンダ11の内壁に圧力センサーを埋め込んだ構成としてもよいが、ロードセル16を採用することで、射出シリンダ11の外に設けることができるため、簡易な構成で射出シリンダ内樹脂圧Piを検出できる。
【0023】
射出ユニット10は、射出シリンダ11内でのスクリュー12の前後方向(図1の上下方向)の位置を検出するスクリュー位置検出部としての位置センサー17を有している。位置センサー17は、制御部40に接続されており、射出シリンダ11内でのスクリュー12の位置であるスクリュー位置Lを検出して制御部40にスクリュー位置Lを示す信号を送信する。
【0024】
型締ユニット20は、上金型2が下面21aに取り付けられる平板状の上部プレートとしての可動プレート21と、上金型2が型締される下金型3が上面22aに取り付けられる下部プレートとしてのロータリーテーブル22と、を有している。上金型2と下金型3とを型締することによりキャビティ4が形成される。ロータリーテーブル22は、複数の下金型3が取り付けられ、回転することにより複数の下金型3を順次上金型2と対向する位置まで搬送する。型締ユニット20は、上金型2および下金型3の開閉ならびに製品取り出しのための図示しないアクチュエータを有している。
【0025】
可動プレート21の上方に射出シリンダ11が配置されている。可動プレート21の中心部には、射出シリンダ11のノズル11aを挿入できる大きさの貫通孔21bが形成されている。貫通孔21bの上部はすり鉢状に形成されている。貫通孔21bにはノズル11aが挿通され、ノズル11aが上金型2にタッチした状態でキャビティ4に溶融した樹脂材料を射出する。
【0026】
型締ユニット20は、可動プレート21の上面21cにノズル11aを囲うように設けられた立方体の箱形のカバー23を有している。
【0027】
型締ユニット20は、上金型2と下金型3とが型締されることにより形成されるキャビティ4内の樹脂材料の圧力を検出する金型内圧力検出部としての金型内圧力センサー26を有している。金型内圧力センサー26は、制御部40に接続されており、キャビティ4内の樹脂材料の圧力である金型内樹脂圧Pcを検出して制御部40に金型内樹脂圧Pcを示す信号を送信する。
【0028】
表示操作ユニット30は、射出成形機1に係る情報を表示する表示部31と、操作を入力するため操作部32と、を有している。表示部31および操作部32は、制御部40に接続されている。表示部31は、制御部40からの制御信号に基づき、表示領域に各種画面を表示する。操作部32は、複数のキーを備えており、各キーに入力された操作に応じた信号を制御部40に送信する。なお、表示操作ユニット30は、操作部32としてタッチパネルを備え、表示部31に表示領域に重ねられたタッチパネルとそこに表示したアイコンとを組み合わせて構成したソフトウェアスイッチを有していてもよい。
【0029】
また、射出成形機1は、全体の動作を司る制御部40を有している。制御部40は、例えば、CPU、ROM、RAM、EEPROM、各種I/Oインタフェースなどを有する組み込み機器用のマイクロコンピュータを有して構成されている。制御部40は、型閉工程、計量工程、射出工程、保圧工程、型開工程および取り出し工程などの各工程において、射出ユニット10のシリンダ駆動部13およびスクリュー駆動部14や型締ユニット20の図示しないアクチュエータなどの各駆動装置の動作を制御する。
【0030】
次に、上述した本実施形態の射出成形機1における本発明に係る動作(制御方法)の一例について、図4を参照して説明する。
【0031】
まず、射出成形機1の制御部40は、シリンダ駆動部13を制御して、射出シリンダ11を前進させて上金型2に近づけ、ノズル11aを上金型2にタッチさせる。この状態において、ノズル11aとキャビティ4とが樹脂流路5を介して連通されており、スクリュー12は初期位置(例えば0mmの位置)にある。また、射出シリンダ11は図示しないヒーターによって加熱されているとともに、射出シリンダ11内の樹脂材料がスクリュー12により混練されており、射出シリンダ11の先端部近傍の樹脂材料は溶融状態となっている。
【0032】
そして、制御部40は、型閉工程において、図示しない型締駆動部を制御して、上金型2および下金型3を重ねて型締めする(型閉動作)。
【0033】
制御部40は、計量工程において、スクリュー駆動部14を制御して、スクリュー12を回転させながら計量位置(例えば50mmの位置)まで後退させ、1回の射出に必要となる量の樹脂材料を射出シリンダ11の先端部に供給する(計量動作)。
【0034】
制御部40は、射出工程において、スクリュー駆動部14を制御して、スクリュー12を前進させることによって、射出シリンダ11の先端部の樹脂材料を樹脂流路5を通じてキャビティ4に射出する(射出動作)。
【0035】
具体的には、制御部40は、射出動作中に位置センサー17から送信される信号に基づいてスクリュー位置Lを取得する。そして、スクリュー位置Lに基づいてスクリュー駆動部14を制御して、スクリュー速度Vが目標速度となるようにスクリュー12を前進させる。
【0036】
また、制御部40は、射出動作中にロードセル16から送信される信号に基づいて射出シリンダ内樹脂圧Piを取得する。そして、ノズル11aの詰まりなどの異常を検知するため、射出シリンダ内樹脂圧Piを監視する。制御部40は、射出シリンダ内樹脂圧Piが上昇して所定の異常検出圧力値Pmに到達すると、異常が生じたものとして成形に係る全ての動作を停止する。すなわち、異常検出圧力値Pmは、射出成形機1の異常検出に用いられる。
【0037】
また、制御部40は、射出動作中に金型内圧力センサー26から送信される信号に基づいてキャビティ4内の樹脂材料の圧力である金型内樹脂圧Pcを取得する。そして、制御部40は、スクリュー位置Lが所定の動作切替位置であるV-P切替位置Lvpから前後にXmm以内(例えば、X=5mm)の動作切替範囲Wにあり、かつ、金型内樹脂圧Pcが所定の動作切替圧力値Pvp以上のとき、スクリュー位置Lおよび金型内樹脂圧Pcが動作切替条件を満たしたものとして、保圧動作に切り替える。このようにすることで、適切なタイミングで射出動作から保圧動作に切り替えることができる。動作切替圧力値Pvpは、保圧目標圧力値Psの初期値であることが好ましい。このようにすることで、スクリュー12を速度制御動作から圧力制御動作にスムーズに切り替えることができる。
【0038】
制御部40は、保圧工程において、スクリュー駆動部14を制御して、スクリュー12を前後進させることによって、キャビティ4に充填された樹脂材料に圧力を加える(保圧動作)。具体的には、制御部40は、金型内圧力センサー26から送信される信号に基づいて金型内樹脂圧Pcを取得するとともに、スクリュー駆動部14をフィードバック制御して金型内樹脂圧Pcが保圧目標圧力値Psとなるようにスクリュー12を前後進させる。制御部40は、保圧動作を所定の実行期間(保圧期間Th、例えば5秒間)にわたって実行する。
【0039】
そして、制御部40は、保圧動作中(保圧工程中)に射出シリンダ内樹脂圧Piが上昇して保圧目標圧力値Psより高い値に設定された所定の保圧上限圧力値Puに到達したとき、保圧期間Thが経過するまでスクリューの前後進(移動)を規制する、すなわち、スクリュー12をその場にとどめるようにスクリュー駆動部14を制御する。または、制御部40は、保圧動作中に射出シリンダ内樹脂圧Piが上昇して所定の保圧上限圧力値Puに到達したとき、保圧動作を直ちに終了して、次の型開工程に進むようにスクリュー駆動部14を制御してもよい。
【0040】
または、制御部40は、保圧動作中に金型内樹脂圧Pcが所定の監視開始圧力値Pdまで低下したのちに射出シリンダ内樹脂圧Piの監視を開始して、射出シリンダ内樹脂圧Piが保圧上限圧力値Puに到達したか否かを判定するようにしてもよい。このようにすることで、射出シリンダ内樹脂圧Piをより適切なタイミングで検出することができ、例えば、射出動作から保圧動作への切替直後などに、射出シリンダ内樹脂圧Piの上昇を誤検出してしまうことを抑制できる。
【0041】
本実施形態において、保圧上限圧力値Puは、上記異常検出圧力値Pmより低い値にあらかじめ設定されている。または、保圧上限圧力値Puとして、例えば、スクリュー位置Lおよび金型内樹脂圧Pcが動作切替条件を満たしたときにロードセル16によって検出された射出シリンダ内樹脂圧Piの±10%の範囲内の値に動的に設定してもよい。例えば、保圧上限圧力値Puを、動作切替条件を満たしたときの射出シリンダ内樹脂圧Piの105%の値に設定する。このようにすることで、射出シリンダ内樹脂圧Piが必要以上に上昇してしまうことをより効果的に抑制できる。
【0042】
次に、制御部40は、型開工程において、型締駆動部を制御して、上金型2および下金型3を上下方向に開く(型開動作)。そして、制御部40は、取り出し工程において、図示しないエジェクトピンによりキャビティ4から成形品を取り出す(取り出し動作)。
【0043】
以降、上記型閉工程~上記取り出し工程を繰り返して成形品の成形を行う。
【0044】
以上より、本実施形態の射出成形機1によれば、制御部40が、保圧動作(保圧工程)においてキャビティ4内の樹脂材料の圧力である金型内樹脂圧Pcが保圧目標圧力値Psとなるようにスクリュー駆動部14を制御する。そして、保圧動作中に、射出シリンダ11内の樹脂材料の圧力である射出シリンダ内樹脂圧Piが保圧上限圧力値Puに到達したとき、保圧動作の実行期間である保圧期間Thが経過するまでスクリュー12の前後進を規制するようにスクリュー駆動部14を制御する。このようにしたことから、金型内樹脂圧Pcに基づいてスクリュー駆動部14を制御した場合、保圧動作中にキャビティ4内の樹脂材料が固まったあともスクリュー12によって樹脂材料を押し込んでしまうことがあるが、当該射出シリンダ内樹脂圧Piが保圧上限圧力値Puを超えてしまうことを防ぐことができる。そのため、射出シリンダ内樹脂圧Piが必要以上に上昇してしまうことを抑制できる。したがって、簡易な制御で成形品の品質の低下を効果的に抑制できる。
【0045】
上記に本発明の実施形態を説明したが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。前述の実施形態に対して、当業者が適宜、構成要素の追加、削除、設計変更を行ったものや、実施形態の特徴を適宜組み合わせたものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0046】
1…射出成形機、2…上金型、3…下金型、4…キャビティ、5…樹脂流路、6…機台、10…射出ユニット、11…射出シリンダ、11a…ノズル、12…スクリュー、13…シリンダ駆動部、14…スクリュー駆動部、16…ロードセル、17…位置センサー、20…型締ユニット、21…可動プレート、21a…下面、21b…貫通孔、21c…上面、22…ロータリーテーブル、22a…上面、23…カバー、26…金型内圧力センサー、30…表示操作ユニット、31…表示部、32…操作部、40…制御部、V…スクリュー速度、L…スクリュー位置、Lvp…V-P切替位置、W…動作切替範囲、Pi…射出シリンダ内樹脂圧、Pc…金型内樹脂圧、Ps…保圧目標圧力値、Pm…異常検出圧力値、Pu…保圧上限圧力値、Pvp…動作切替圧力値、Pd…監視開始圧力値
図1
図2
図3
図4