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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-31
(45)【発行日】2022-09-08
(54)【発明の名称】装置発熱量算出方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/02 20060101AFI20220901BHJP
【FI】
H01L21/02 Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018153054
(22)【出願日】2018-08-16
(65)【公開番号】P2020027907
(43)【公開日】2020-02-20
【審査請求日】2021-08-03
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (1)一般社団法人日本建築学会が平成30年7月20日に発行した「2018年度日本建築学会大会(東北)学術講演梗概集」において発表
(73)【特許権者】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】小野 浩史
【審査官】今井 聖和
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-204932(JP,A)
【文献】国際公開第2016/121107(WO,A1)
【文献】特開2001-332463(JP,A)
【文献】特開2007-093044(JP,A)
【文献】特開2012-242041(JP,A)
【文献】特開2006-046848(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/02
F24F 11/00
G05B 19/418
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
室内に設置された装置の発熱量を算出する装置発熱量算出方法であって、
前記装置の発熱量最大値及び発熱量最小値を算出する算出ステップと、
温度測定手段により、前記装置の表面温度を測定する測定ステップと、
前記発熱量最大値と表面温度最大値との対応付けを行うと共に、前記発熱量最小値と表面温度最小値との対応付けを行う対応付けステップと、
前記対応付けステップで対応付けが行われた表面温度最大値及び表面温度最小値に基づいて、前記温度測定手段で測定した表面温度を前記装置の発熱強度に変換し、前記発熱量最大値と前記発熱強度との乗算値を前記装置の発熱量として算出する変換ステップと、
を備えることを特徴とする装置発熱量算出方法。
【請求項2】
前記測定ステップで測定した表面温度最大値及び表面温度最小値それぞれの時間変化が予め設定した閾値以下になるまで、前記表面温度最大値及び前記表面温度最小値をそれぞれ更新する更新ステップ、をさらに備え、
前記対応付けステップでは、
前記更新ステップで更新した表面温度最大値と前記発熱量最大値との対応付けを行うと共に、前記更新ステップで更新した表面温度最小値と前記発熱量最小値との対応付けを行うことを特徴とする請求項1に記載の装置発熱量算出方法。
【請求項3】
前記室内は、半導体製造工場のクリーンルームであり、
前記装置は、半導体製造装置であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の装置発熱量算出方法。
【請求項4】
前記変換ステップでは、前記表面温度最大値TMAXと前記表面温度最小値TMINとが含まれる式(A)を用いて、前記表面温度TS2を前記発熱強度Ansに変換する、
【数1】
ことを特徴とする請求項1から請求項3の何れか一項に記載の装置発熱量算出方法。
【請求項5】
前記算出ステップでは、
前記室内の天井吹き出し温度及び床下吸い込み温度の差分と、前記装置周辺の空気体積と、空気の比熱及び密度との関係から前記発熱量最大値を算出し、
前記発熱量最大値に予め設定された割合を乗じて前記発熱量最小値を算出することを特徴とする請求項1から請求項4の何れか一項に記載の装置発熱量算出方法。
【請求項6】
前記算出ステップでは、
前記装置の定格電力に基づいて前記発熱量最大値を算出し、
前記発熱量最大値に予め設定された割合を乗じて前記発熱量最小値を算出することを特徴とする請求項1から請求項4の何れか一項に記載の装置発熱量算出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、装置の発熱量を算出する装置発熱量算出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、様々な状況での温度解析方法が提案されている(特許文献1)。特許文献1には、室内モデルと空調設備モデルの両方を用いることで、室内の温熱気流分布を考慮して空調システムを解析する方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2001-74290号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、半導体製造工場のクリーンルームにおいて、冷房効率を向上させるため、クリーンルームに設置した半導体製造装置の発熱状況を把握したいという強い要望がある。しかし、特許文献1に記載の発明は、空調システムの解析を主眼としており、半導体製造装置自体の発熱状況の把握を目的としたものではない。
【0005】
そこで、本発明は、装置の発熱状況を正確に把握できる装置発熱量算出方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記した課題に鑑みて、本発明に係る装置発熱量算出方法は、室内に設置された装置の発熱量を算出する装置発熱量算出方法であって、装置の発熱量最大値及び発熱量最小値を算出する算出ステップと、温度測定手段により、装置の表面温度を測定する測定ステップと、発熱量最大値と表面温度最大値との対応付けを行うと共に、発熱量最小値と表面温度最小値との対応付けを行う対応付けステップと、対応付けステップで対応付けが行われた表面温度最大値及び表面温度最小値に基づいて、温度測定手段で測定した表面温度を装置の発熱強度に変換し、発熱量最大値と発熱強度との乗算値を装置の発熱量として算出する変換ステップと、を備えることを特徴とする。
かかる装置発熱量算出方法によれば、装置の表面温度を発熱強度に変換するので、装置の発熱状況を正確に把握することができる。
【0007】
本発明に係る装置発熱量算出方法において、測定ステップで測定した表面温度最大値及び表面温度最小値それぞれの時間変化が予め設定した閾値以下になるまで、表面温度最大値及び表面温度最小値をそれぞれ更新する更新ステップ、をさらに備え、対応付けステップでは、更新ステップで更新した表面温度最大値と発熱量最大値との対応付けを行うと共に、更新ステップで更新した表面温度最小値と発熱量最小値との対応付けを行うことが好ましい。
かかる装置発熱量算出方法によれば、装置の表面温度と発熱量とを正確に対応付けることができる。
【0008】
本発明に係る装置発熱量算出方法において、室内は、半導体製造工場のクリーンルームであり、装置は、半導体製造装置であることが好ましい。
かかる装置発熱量算出方法によれば、半導体製造工場のクリーンルームに設置された半導体製造装置の発熱状況を正確に把握することができる。
【0009】
本発明に係る装置発熱量算出方法において、変換ステップでは、表面温度最大値TMAXと表面温度最小値TMINとが含まれる後記の式(3)を用いて、表面温度TS2を発熱強度Ansに変換することが好ましい。
かかる装置発熱量算出方法によれば、簡易な演算により、装置の表面温度を発熱強度に変換することができる。
【0010】
本発明に係る装置発熱量算出方法において、算出ステップでは、室内の天井吹き出し温度及び床下吸い込み温度の差分と、装置周辺の空気体積と、空気の比熱及び密度との関係から発熱量最大値を算出し、発熱量最大値に予め設定された割合を乗じて発熱量最小値を算出することが好ましい。
かかる装置発熱量算出方法によれば、室内の空調環境に応じて、装置の発熱量最大値を算出することができる。
【0011】
本発明に係る装置発熱量算出方法において、算出ステップでは、装置の定格電力に基づいて発熱量最大値を算出し、発熱量最大値に予め設定された割合を乗じて発熱量最小値を算出することが好ましい。
かかる装置発熱量算出方法によれば、装置の定格電力に応じて、装置の発熱量最大値を算出することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、装置の表面温度を発熱強度に変換するので、装置の発熱状況を正確に把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施形態において、半導体製造工場の概略図である。
図2】実施形態において、IoTセンサの構成を説明する説明図である。
図3】実施形態において、半導体製造装置の表面温度の測定方法を説明する説明図である。
図4】実施形態に係る装置発熱量算出方法を示すフローチャートである。
図5】実施例において、図4の装置発熱量算出方法の測定結果の一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(実施形態)
[半導体製造工場の概略]
以下、本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。なお、実施形態において、同一の手段には同一の符号を付し、説明を省略した。
【0015】
図1を参照し、半導体製造工場1の概略について説明する。
図1に示すように、半導体製造工場1は、2室のクリーンルーム10(10a,10b)を備える。例えば、クリーンルーム10は、空調(温度、湿度、空気清浄度)が所定の基準で管理されている一般的な工業用クリーンルームである。各クリーンルーム10には、4台の半導体製造装置20(20a,20b)が設置されている。例えば、半導体製造装置20は、半導体の製造に用いる一般的な電気炉やエッジング装置であり、半導体を製造する際に大量に発熱する。
【0016】
また、半導体製造工場1では、8台のIoT(Internet of Things)センサ30(30a,30b)と、2台のセンサステーション40(40a,40b)を備え、各IoTセンサ30がインターネット上のクラウドサーバ50に接続可能である。
【0017】
IoTセンサ(温度測定手段)30は、各半導体製造装置20の表面温度を測定するものである。本実施形態では、IoTセンサ30は、半導体製造装置20と1対1で備えられている。そして、IoTセンサ30は、センサステーション40を介して、測定した各半導体製造装置20の表面温度をクラウドサーバ50に送信する。
センサステーション40は、各IoTセンサ30からの表面温度をクラウドサーバ50に送信する中継装置である。例えば、センサステーション40は、無線ネットワークにより各IoTセンサ30と接続され、インターネットによりクラウドサーバ50と接続されている。
クラウドサーバ50は、各IoTセンサ30から出力された表面温度を用いて、各半導体製造装置20の発熱量を算出するものである。つまり、クラウドサーバ50は、後記する装置発熱量算出方法を実行するコンピュータである。
【0018】
なお、図1では、半導体製造工場1の一例を説明したものであり、半導体製造工場1のネットワーク構成、クリーンルーム10や半導体製造装置20の個数が、これらに限定されないことは言うまでもない。
また、図1では、図面を見やすくするため、半導体製造装置20及びIoTセンサ30の一部のみ符号を付した。
【0019】
[IoTセンサの構成、表面温度の測定方法]
図2図3を参照し、IoTセンサ30の構成、及び、半導体製造装置20の表面温度の測定方法について説明する。
図2に示すように、IoTセンサ30は、放射温度センサ31と、発電用光パネル33と、ケーブル35とを備える。
【0020】
放射温度センサ31は、半導体製造装置20から離れた場所で、半導体製造装置20の表面温度を測定するものである。また、放射温度センサ31は、無線通信機能を備えており、測定した表面温度をセンサステーション40に送信できる。
図2の例では、放射温度センサ31は、温度センサ本体31Aと、センサ収容ボックス31Bとで構成されている。この温度センサ本体31Aとしては、一般的なMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)非接触温度センサを利用できる。また、センサ収容ボックス31Bは、温度センサ本体31Aを収容する箱状のケースである。
発電用光パネル33は、クリーンルーム10の室内灯(蛍光灯)の光で発電するものである。例えば、発電用光パネル33としては、一般的な色素増感型太陽光パネルを利用できる。従って、発電用光パネル33は、クリーンルーム10の室内灯の近傍に取り付けることが好ましい。
ケーブル35は、発電用光パネル33が発電した電力を放射温度センサ31に供給するケーブルである。
【0021】
図3に示すように、IoTセンサ30は、放射温度センサ31(温度センサ本体31A)が半導体製造装置20の天面と対向するように、クリーンルーム10の天井(図3不図示)に取り付ける。そして、IoTセンサ30は、半導体製造装置20の天面における一定範囲αの温度平均値を求め、求めた温度平均値を半導体製造装置20の表面温度として出力する。
【0022】
このように、IoTセンサ30は、プロセス温度に敏感な半導体製造装置20の天面温度を測定することで、半導体製造装置20の発熱状況をより正確に把握できる。さらに、IoTセンサ30は、半導体製造装置20から離れた場所で表面温度を測定できるので、半導体製造装置20の表面に取り付ける必要がなく、クリーンルーム10への設置が容易である。さらに、IoTセンサ30は、クリーンルーム10の室内灯の光で駆動し、半導体製造装置20の天面温度を無線通信で送信するため、電源工事が不要、かつ、半永久的な測定が可能となる。
【0023】
なお、クラウドサーバ50が各半導体製造装置20を区別するため、IoTセンサ30は、各半導体製造装置20に固有の識別情報を、測定した表面温度に付加してもよい。
また、IoTセンサ30が半導体製造装置20の表面温度を測定することとして説明したが、温度測定手段は、これに限定されない。つまり、温度測定手段は、IoTセンサ30に限定されず、半導体製造装置20の表面温度を測定できるものであればよい。
また、半導体製造装置20の天面温度を測定することとして説明したが、表面温度の測定箇所は、これに限定されない。例えば、IoTセンサ30は、半導体製造装置20の側面温度や底面温度を測定してもよい。
【0024】
[装置発熱量算出方法]
図4を参照し、装置発熱量算出方法について説明する。
図4に示すように、算出ステップS1では、クラウドサーバ50が、半導体製造装置20の発熱量最大値及び発熱量最小値を算出する。以下、算出ステップS1における発熱量最大値の算出方法について、2つの具体例を説明する。
【0025】
<発熱量最大値の算出方法:第1例>
この第1例では、クラウドサーバ50が、下記の式(1)を用いて、半導体製造装置20の発熱量最大値WMAXを算出する。
MAX=0.278×60×空気の比熱×空気の密度×V×(t-t
…式(1)
【0026】
この式(1)では、Vが半導体製造装置20の周辺の空気体積、tがクリーンルーム10のプレナム温度(天井吹き出し温度)、tがクリーンルーム10の床下温度(床下吸い込み温度)を表す。この半導体製造装置20の周辺の空気体積Vは、半導体製造装置20自体の体積を除き、半導体製造装置20の発熱が影響を及ぼす周辺領域の体積である。なお、温度t,tは、図示を省略した温度センサにより予め測定しておく。また、空気の比熱、空気の密度及びVは、パラメータとして事前に設定しておく。
このように、第1例では、クリーンルーム10の空調環境に応じて、半導体製造装置20の発熱量最大値WMAXを算出できる。
【0027】
<発熱量最大値の算出方法:第2例>
この第2例では、クラウドサーバ50が、半導体製造装置20の定格電力に基づいて、発熱量最大値WMAXを算出する。具体的には、クラウドサーバ50は、式(2)に示すように、半導体製造装置20の定格電力に所定の係数を乗じ、発熱量最大値WMAXを算出する。例えば、この係数は、第1例の実測値に基づいて、任意の値(例えば、0.055)で設定できる。
MAX=定格電力×係数
…式(2)
【0028】
このように、第2例では、半導体製造装置20の定格電力に応じて、半導体製造装置20の発熱量最大値WMAXを算出できる。
なお、第1例及び第2例ともに、クラウドサーバ50は、発熱量最大値WMAXに所定の割合を乗じ、発熱量最小値WMINを算出する。この割合は、任意の値(例えば、20%)で設定できる。
【0029】
以下、装置発熱量算出方法について、説明を続ける。
測定ステップS2では、IoTセンサ30が、半導体製造装置20の表面温度TS2を測定する。そして、IoTセンサ30は、センサステーション40を介して、測定した半導体製造装置20の表面温度TS2をクラウドサーバ50に送信する。
【0030】
更新ステップS3(S3A,S3B)では、クラウドサーバ50が、測定ステップS2で測定した表面温度最大値TMAX及び表面温度最小値TMINそれぞれの時間変化が所定の閾値以下になるまで、表面温度最大値TMAX及び表面温度最小値TMINをそれぞれ更新する。つまり、更新ステップS3では、クラウドサーバ50は、表面温度最大値TMAXと表面温度最小値TMINを別々に判定・更新する。
【0031】
ここで、ステップS3Aでは、クラウドサーバ50が、IoTセンサ30から送信された表面温度TS2と、現在の表面温度最大値TMAXとを比較する。そして、クラウドサーバ50は、この表面温度TS2が現在の表面温度最大値TMAXよりも高い場合、この表面温度TS2を新たな表面温度最大値TMAXとして更新する。
また、ステップS3Aでは、クラウドサーバ50が、IoTセンサ30から送信された表面温度TS2と、現在の表面温度最小値TMINとを比較する。そして、クラウドサーバ50は、この表面温度TS2が現在の表面温度最小値TMINよりも低い場合、この表面温度TS2を新たな表面温度最小値TMINとして更新する。
【0032】
続いて、ステップS3Bでは、クラウドサーバ50が、表面温度最大値TMAX及び表面温度最小値TMINそれぞれの時間変化が所定の閾値以下になったか否かを判定する。この閾値は、任意の値(例えば、0.1℃)に設定できる。
表面温度最大値TMAXの時間変化が閾値以下でない場合(ステップS3BでNo)、表面温度最大値TMAXが安定していないと考えられる。そこで、クラウドサーバ50は、ステップS2の処理に戻る。
表面温度最大値TMAXの時間変化が閾値以下の場合(ステップS3BでYes)、表面温度最大値TMAXが安定したと考えられる。そこで、クラウドサーバ50は、ステップS4の処理に進む。
なお、ステップS3Bでは、クラウドサーバ50は、表面温度最大値TMAXと同様、表面温度最小値TMINについても閾値判定を行う。
【0033】
対応付けステップS4では、クラウドサーバ50が、半導体製造装置20の発熱量と表面温度との対応付けを行う。すなわち、対応付けステップS4では、クラウドサーバ50が、発熱量最大値WMAXと表面温度最大値TMAXとの対応付けを行うと共に、発熱量最小値WMINと表面温度最小値TMINとの対応付けを行う。
【0034】
変換ステップS5では、クラウドサーバ50が、対応付けステップS4で対応付けが行われた表面温度最大値TMAX及び表面温度最小値TMINに基づいて、IoTセンサ30で測定した表面温度TS2を発熱強度に変換する。本実施形態では、クラウドサーバ50は、下記の式(3)に示すように、線形補間により表面温度TS2を発熱強度Ansに変換する。
このように、変換ステップS5では、簡易な演算により、半導体製造装置20の表面温度TS2を発熱強度Ansに変換できる。
【0035】
【数1】
【0036】
その後、変換ステップS5では、クラウドサーバ50が、発熱量最大値WMAXと発熱強度Ansとの乗算値を半導体製造装置20の発熱量として算出する。
なお、変換ステップS5では、線形補間により表面温度TS2を発熱強度Ansに変換することとして説明したが、これに限定されない。例えば、半導体製造装置20の稼働状況(プロセス温度)と発熱状況の関係が既知の場合、変換ステップS5では、その関係性を利用し、一次スプライン補間やステップ的な補間により変換を行ってもよい。
【0037】
ステップS6では、クラウドサーバ50が、任意の測定終了条件により、測定を終了するか否かを判定する。例えば、クラウドサーバ50は、半導体製造装置20の稼働計画(レシピ)に基づいて測定終了を判定する。また、クラウドサーバ50は、半導体製造装置20の稼働パターン(稼働周期)が一定の場合、その稼働パターンに従って測定終了を判定してもよい。
測定を終了しない場合、クラウドサーバ50は、ステップS2の処理に戻る。
【0038】
[作用・効果]
以上の装置発熱量算出方法によれば、半導体製造装置20の表面温度TS2を発熱強度Ansに変換するので、半導体製造装置20の発熱状況を正確に把握することができる。すなわち、装置発熱量算出方法によれば、半導体製造装置20の発熱状況を正確にモニタリングすることができる。これにより、クリーンルーム10において、半導体製造装置20の発熱状況に応じた空調制御が可能となり、半導体製造工場1の省エネ化を図ることができる。さらに、装置発熱量算出方法によれば、半導体製造装置20の発熱量を定義できるので、簡易で正確なクリーンルーム10の空調解析(シミュレーション)が可能となる。
【0039】
(変形例)
以上、本発明の実施形態を詳述してきたが、本発明は前記した実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【0040】
前記した実施形態では、半導体製造装置の発熱量を算出することとして説明したが、これに限定されない。例えば、装置発熱量算出方法では、半導体製造装置以外の発熱量も算出可能であり、発熱する装置であることが好ましい。
さらに、その装置の設置場所は、半導体製造工場のクリーンルームに限定されず、空調が管理されている室内であればよい。
【0041】
前記した実施形態では、クラウドサーバが装置発熱量算出方法を実行することとして説明したが、これに限定されない。例えば、中央演算装置(CPU)、メモリ等のハードウェア資源を備える一般的なコンピュータであれば、装置発熱量算出方法を実行できる。
【0042】
前記した実施形態では、センサステーションを介して、IoTセンサがクラウドサーバに表面温度を送信することとして説明したが、これに限定されない。例えば、センサステーションを介さずに、IoTセンサがクラウドサーバに表面温度を直接送信してもよい。
【実施例
【0043】
図4図5を参照し、本発明の実施例として、半導体製造装置の発熱量の算出結果の一例について説明する。
図5(a)は、半導体製造装置のプロセス温度(稼働状況)を表す。図5(b)は、半導体製造装置の表面温度(太線)と、クリーンルームの空気温度(細線)とを表す。図5(c)は、半導体製造装置の表面温度を発熱強度に変換した結果(太線)と、クリーンルームの空気温度を発熱強度に変換した結果(細線)とを表す。
【0044】
ここで、半導体製造装置周辺の空気体積V=58.5m、クリーンルームのプレナム温度t=20℃、クリーンルームの床下温度t=23℃、空気の比熱=1.006J/(kg・K)、空気の密度=1.116kg/mであることとする。
【0045】
まず、図4の算出ステップS1の第1例及び第2例について説明する。
第1例によれば、半導体製造装置の発熱量最大値WMAXは、下記の式(1-2)に示すように、半導体製造装置1台あたり、約3.28kWとなる。この場合、発熱量最小値WMINは、半導体製造装置1台あたり、3.28kW×0.2≒0.66kWとなる。
【0046】
MAX=0.278×60×空気の比熱×空気の密度×V×(t-t
=0.278×60×1.006×1.116×58.5×(23-20)
≒3.28kW
…式(1-2)
【0047】
第2例において、半導体製造装置の定格電力が60kW、式(2)の係数が0.55であることとする。この場合、半導体製造装置の発熱量最大値WMAXは、下記の式(2-2)に示すように、半導体製造装置1台あたり、約3.3kWとなる。なお、発熱量最小値WMINは、前記した第1例と同様のため、省略する。
【0048】
MAX=定格電力×係数
=60×0.055
≒3.3kW
…式(2-2)
【0049】
以下、第1例で発熱量最大値WMAXを求めたこととして、図4の対応付けステップS4を説明する。
図5(b)に示すように、表面温度最大値MAX=52.5℃、表面温度最小値MIN=43.0℃である。この場合、対応付けステップS4では、表面温度最大値TMAX=52.5℃と発熱量最大値WMAX=3.28kWとを対応付ける。また、対応付けステップS4では、表面温度最小値TMIN=43.0℃と発熱量最小値WMIN=0.66kWとを対応付ける。
【0050】
続いて、図4の変換ステップS5について説明する。
ここで、IoTセンサで測定した表面温度TS2=50℃であることとする。この場合、発熱強度Ansは、下記の式(3-2)に示すように、約74%となる。そして、半導体製造装置の発熱量は、発熱量最大値WMAX=3.28kWに発熱強度Ans=0.74を乗じて、約2.43kWとなる。
【0051】
【数2】
【0052】
最後に、図4の装置発熱量算出方法により、半導体製造装置の発熱状況を正確に把握できる点を説明する。
図5(b)に示すように、細線で図示した空気温度に比べて、太線で図示した表面温度の方が、図5(a)のプロセス温度に近いことがわかる。従って、図5(c)に示すように、表面温度を発熱強度に変換すると(太線)、半導体製造装置の発熱状況をより正確に把握することができる。一方、空気温度を発熱強度に変換した場合(細線)、プロセス温度の変化に対して発熱強度の変化が遅れるため、半導体製造装置の発熱状況を正確に把握することが困難である。
【符号の説明】
【0053】
1 半導体製造工場
10,10a,10b クリーンルーム(室内)
20,20a,20b 半導体製造装置(装置)
30,30a,30b IoTセンサ(温度測定手段)
31 放射温度センサ
31A 温度センサ本体
31B センサ収容ボックス
33 発電用光パネル
35 ケーブル
40,40a,40b センサステーション
50 クラウドサーバ
図1
図2
図3
図4
図5