(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-31
(45)【発行日】2022-09-08
(54)【発明の名称】ポリエステル衣料移染防止洗浄用組成物及びそれを用いる洗浄方法。
(51)【国際特許分類】
C11D 1/72 20060101AFI20220901BHJP
C11D 3/04 20060101ALI20220901BHJP
D06L 1/12 20060101ALI20220901BHJP
【FI】
C11D1/72
C11D3/04
D06L1/12
(21)【出願番号】P 2018191554
(22)【出願日】2018-10-10
【審査請求日】2021-07-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000226161
【氏名又は名称】日華化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】吾田 圭司
【審査官】田名部 拓也
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-244591(JP,A)
【文献】特表2012-514061(JP,A)
【文献】特開昭57-126896(JP,A)
【文献】特表2017-536451(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C11D 1/00 - 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステル衣料移染防止洗浄用組成物を用いて50~60℃の温度でポリエステル衣料を洗浄することを含む、ポリエステル衣料移染防止洗浄方法
であって、
前記ポリエステル衣料移染防止洗浄用組成物は、スチレン化フェノールアルキレンオキサイド付加物を含む非イオン界面活性剤と、アルカリ金属珪酸塩及びアルカリ金属水酸化物からなる群から選択される少なくとも1種のアルカリ剤と、漂白剤とを含み、洗濯液としたときのpHが11.5以上であり、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属リン酸塩、及びアミノカルボン酸塩の前記洗濯液中の濃度が0.2質量%未満である、前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移染防止効果を有する洗浄用組成物及びそれを用いる洗浄方法に関する。特に、本発明は、非イオン界面活性剤と特定のアルカリ剤とを含む洗浄用組成物であって、ポリエステル衣料を洗浄するにあたり、同浴中に存在する衣料への色移りを防止する効果を有する洗剤に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、看護師等のユニフォーム等はデザイン重視になっており、従来の単色のユニフォームから、部分的に色物を使った混色のユニフォームが増えてきている。また、素材も耐久性の観点から、綿素材ではなくポリエステル繊維を使用したものが増えてきている。ポリエステル繊維は分散染料によって高温高圧で染色されるため、一般的な洗濯条件では比較的色は流れにくいとされているが、染色後のソーピング不足や、加工剤に含まれる界面活性剤等による繊維表面へのブリードにより、強い条件で洗浄した際には移染が発生する場合がある。特に、単色品同士の洗濯では、色流れや移染が外見上問題となることは少ないが、混色品又は染色品と白物とを一緒に洗濯した場合は、白場汚染による色目バラつきが問題となる。
【0003】
しかしながら、移染を抑えるために洗浄条件を弱くすると、十分な洗浄力を与えることができず、また、十分な洗浄力を与えようと洗浄条件を強くすると、色流れが発生し他の色の生地に移ってしまうという問題が生じてきた。
【0004】
従来、移染を防止するための組成物としては、例えば、高級脂肪族アミンのアルキレンオキサイド付加物等を含む洗剤(特許文献1参照)、ビニルピリジン部を有する単量体に由来した構成単位を含む高分子化合物とアルカノールアミンとを含有する洗浄剤組成物であって、非イオン界面活性剤と非石鹸系アニオン界面活性剤との合計の含有量および混合割合を特定のものとした組成物(特許文献2参照)、移染防止剤と特定の化学構造を有するノニオン性化合物等を含む洗浄剤組成物(特許文献3参照)が提案されている。
【0005】
しかしながら、特許文献1~3は、いずれも洗浄用組成物の綿素材への適用を開示するものであり、ポリエステル衣料における移染防止効果は、未だ不十分なものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平8-151596号公報
【文献】特開2008-001770号公報
【文献】特開2006-008951号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、ポリエステル衣料の洗浄において、十分な洗浄力と漂白力とを与えつつ、移染による色目変化が少ない洗浄用組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、このような解題を解決するために鋭意検討した結果、ポリエステル衣料を洗浄するにあたり、非イオン界面活性剤と、アルカリ金属珪酸塩及びアルカリ金属水酸化物からなる群から選択される少なくとも1種のアルカリ剤とを含む洗浄用組成物を使用することにより、十分な洗浄力と漂白力とを保持しつつ、移染が抑制されることを見出し
、本発明の完成に至った。
すなわち本発明は、以下の発明に関する。
【0009】
[1]非イオン界面活性剤と、アルカリ金属珪酸塩及びアルカリ金属水酸化物からなる群から選択される少なくとも1種のアルカリ剤とを含むポリエステル衣料移染防止洗浄用組成物であって、洗濯液としたときのpHが11.5以上であり、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属リン酸塩、及びアミノカルボン酸塩の前記洗濯液中の濃度が0.2質量%未満である、前記組成物。
[2]非イオン界面活性剤が、スチレン化フェノールアルキレンオキサイド付加物、高級アルコールのアルキレンオキサイド付加物、及びアルキルアミンアルキレンオキサイド付加物からなる群より選択される1種以上である、上記[1]記載の組成物。
[3]上記[1]記載の組成物を使用することを含む、ポリエステル衣料移染防止洗浄方法。
[4]非イオン界面活性剤が、スチレン化フェノールアルキレンオキサイド付加物、高級アルコールのアルキレンオキサイド付加物、及びアルキルアミンアルキレンオキサイド付加物からなる群より選択される1種以上である、上記[3]記載の方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明の洗浄用組成物は、ポリエステル衣料の洗浄において、十分な洗浄力と漂白力とを保持しつつ、移染を抑制することができるものである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
1.アルカリ剤
本発明において使用されるアルカリ剤は、アルカリ金属珪酸塩及びアルカリ金属水酸化物からなる群から選択される少なくとも1種である。アルカリ金属珪酸塩としては、安全性の観点から、オルソ珪酸塩やメタ珪酸塩を使用することが好ましく、さらに好ましくは、オルソ珪酸ナトリウムやメタ珪酸ナトリウムを使用することが、特に、メタ珪酸ナトリウムを使用することが望ましい。また、アルカリ金属水酸化物としては、性状や価格の観点から、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムを使用することが好ましく、さらに好ましくは、水酸化ナトリウムを使用することが望ましい。
【0012】
本発明の洗浄用組成物におけるアルカリ剤の濃度は、特に限定されるものではないが、洗濯液とした場合に、総量で、通常、0.01~1.0質量%、好ましくは、0.015~0.5質量%、より好ましくは、0.02~0.3質量%となるような濃度である。アルカリ剤の濃度が高すぎると、すすぎ回数の増加を招き、アルカリ剤の濃度が低すぎると、所望の洗浄力、漂白力を得ることができない。
【0013】
また、本発明の洗浄用組成物における炭酸塩、リン酸塩、アミノカルボン酸塩の合計の濃度は、洗濯液とした場合に、0.2質量%未満、好ましくは、0.1質量%未満、より好ましくは、0.05質量%未満となるような濃度であり、特に、炭酸塩、リン酸塩、アミノカルボン酸塩のいずれも含まないことが望ましい。
【0014】
上記の炭酸塩の具体例としては、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等が挙げられ、リン酸塩の具体例としては、例えば、トリポリリン酸ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム、ピロリン酸カリウム、リン酸水素二ナトリウム等が挙げられ、アミノカルボン酸塩の具体例としては、ニトリロ三酢酸ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム、ジエチレントリアミン五酢酸ナトリウム、トリエチレンテトラミン六酢酸ナトリウム、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸ナトリウム、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸ナトリウム、グルタミン酸二酢酸四ナトリウム、メチルグリシン二酢酸ナトリウム等が挙げられる
。
【0015】
また、本発明の洗浄用組成物のpHは、洗濯液とした場合に、11.5以上であり、好ましくは、11.5~13.0であり、特に、11.5~12.5となるように調整することが望ましい。上記のpHが11.5未満であると、所望の洗浄力、漂白力、移染防止性を得ることができない。
【0016】
2.非イオン界面活性剤
本発明の洗浄用組成物で使用する非イオン界面活性剤としては、高級アルコールアルキレンオキサイド付加物、アルキル又はアルケニルフェノールアルキレンオキサイド付加物、スチレン化フェノールアルキレンオキサイド付加物、スチレン化アルキルフェノールアルキレンオキサイド付加物、高級アルキルアミンアルキレンオキサイド付加物、脂肪酸アルキレンオキサイド付加物、脂肪酸アミドアルキレンオキサイド付加物、ポリプロピレングリコールアルキレンオキサイド付加物、(モノ又はポリ)グリセロール脂肪酸エステル又はそのアルキレンオキサイド付加物、ショ糖脂肪酸エステル又はそのアルキレンオキサイド付加物、ソルビタン脂肪酸エステル又はそのアルキレンオキサイド付加物等が挙げられる。
【0017】
上記において、高級アルコールは、通常、炭素数8~24の直鎖又は分岐の不飽和又は飽和の高級アルコールであり、アルキル又はアルケニルフェノールは、通常、炭素数6~22の直鎖又は分岐の不飽和又は飽和のアルキル又はアルケニルフェノールであり、高級アルキルアミンは、通常、炭素数8~24の直鎖又は分岐の不飽和又は飽和の脂肪酸であり、多価アルコールは、通常、炭素数3~12の多価アルコールである。また、ポリプロピレングリコールの分子量は、900~5000である。
【0018】
また、上記において、アルキレンオキサイド付加物のアルキレンオキシ基としては、例えば、エチレンオキシ基、プロピレンオキシ基、ブチレンオキシ基、スチレンオキシ基等が挙げられ、これらは、単独でも、2種以上組み合わせて使用してもよい。2種以上を使用した場合、アルキレンオキサイドの付加形態に特に制限はなく、例えば、ランダム付加、ブロック付加、ランダム付加とブロック付加を組み合わせた形態等が挙げられる。アルキレンオキサイド付加物の付加モル数は、1~500が好ましく、1~100がより好ましい。
【0019】
本発明においては、上記の非イオン界面活性剤の中でも、洗浄性、漂白性、移染防止性の観点から、高級アルコールアルキレンオキサイド付加物、スチレン化フェノールアルキレンオキサイド付加物、高級アルキルアミンアルキレンオキサイド付加物が好ましく、特に、洗浄性の観点からは、スチレン化フェノールアルキレンオキサイド付加物が好ましい。
【0020】
上記において、スチレン化フェノールアルキレンオキサイド付加物としては、例えば、以下の式(1)
【化1】
(式中、A
1Oは炭素数2~4のアルキレンオキシ基を表し、aは1~4、bは0~3の
整数を表し、aとbは同一であっても異なっていてもよく、分子中の(a+a×b)の総数は1~4であり、dはA
1Oの平均付加モル数であって、5~20の整数を表す。)で表されるものが、好ましく使用される。
上記式(1)において、A
1Oの付加モル数は、分子間で同一であっても異なっていてもよい。
【0021】
本発明の洗浄用組成物における非イオン界面活性剤の濃度は、特に限定されるものではないが、洗濯液とした場合に、通常、0.001~1.0%、好ましくは、0.005~0.5質量%、より好ましくは、0.01~0.2質量%となるような濃度である。非イオン界面活性剤の濃度が高すぎると、すすぎ回数の増加を招き、非イオン界面活性剤の濃度が低すぎると、所望の洗浄力を得ることができない。
【0022】
3.その他の成分
本発明の洗浄用組成物には、上記の必須成分の他に、一般的に洗剤に配合される成分を適量添加することができる。このような任意成分としては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン、過酸化水素水等の漂白剤、硫酸塩等の増量剤、蛍光染料、プロテアーゼ等の酵素、グリコール系又はアルコール系溶剤、アニオン界面活性剤、逆汚染防止剤等が挙げられる。
【0023】
4.本発明の洗浄用組成物を用いる洗浄方法
本発明の洗浄用組成物は、そのままで、又は水等で希釈することにより、洗濯液として使用することができる。
【0024】
本発明の洗浄用組成物を用いて被洗物を洗浄する具体的な方法としては、場合により水等で希釈することにより洗濯液とした前記洗浄用組成物に、被洗物を浸漬させた後、攪拌、回転、落下、振動等の物理的な外力を加えて洗浄する方法が挙げられる。浸漬によって、被洗物に付着した汚れ成分を洗浄液中に溶出させることができ、物理的な外力を加えることによって、被洗物のより細部にまで洗浄液を浸透させ、繊維と汚れ成分との分離を促進させて洗浄効率の向上を図ることができる。
【0025】
洗浄液の温度は、特に制限されるものではないが、通常、常温~80℃、好ましくは、40~60℃、より好ましくは、50~60℃である。また、洗浄時間は、特に制限されるものではないが、通常、1~60分、好ましくは、3~30分、より好ましくは、5~20分である。
【0026】
洗浄後、被洗物と、汚れ成分の溶出した洗浄液とを分離し、被洗物を乾燥させる。分離方法としては、搾りや、遠心力を利用した方法を採用することができる。また、乾燥方法としては、常温によるもの又は加熱によるものの、いずれの方法でも可能である。
【実施例】
【0027】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。これらの実施例は例示のために提供されたものであり、本発明の実施形態を限定するものではない。
なお、以下の実施例及び比較例において使用した剤は、以下のとおりである。
【0028】
(1)アルカリ剤(成分A)
A-1:オルソ珪酸ナトリウム(広栄化学工業社製、商品名:ネオオルソ80粉)
A-2:メタ珪酸ナトリウム(日本化学工業社製、商品名:無水メタ珪酸ソーダ)
A-3:水酸化ナトリウム(東ソー社製、商品名:トーソーパール粒状苛性ソーダ)
【0029】
(2)非イオン界面活性剤(成分B)
B-1:C14~C15アルコールPO3EO8(C14~C15アルコール(シェルジャパン社製 商品名:ネオドール45)にプロピレンオキサイド(以降POと略)を3モル付加した後、エチレンオキサイド(以降EOと略)を8モル付加させたもの)
B-2:ジスチレン化フェノールEO12(ジ-(α-メチルベンジル)-フェノール(三光社製 SP-23)にEOを12モル付加させたもの)
B-3:C12アルコールEO7(日本触媒社製、商品名:ソフタノール70)
B-4:C12アルコールEO9(日本触媒社製、商品名:ソフタノール90)
B-5:C12アルコールEO12(日本触媒社製、商品名:ソフタノール120)
B-6:C12アルコール(EO1/PO2)(EO3/PO1)(C12アルコール(シェルジャパン社製 商品名:ネオドール23)に、EO1モルとPO2モルをランダム付加させた後、EO3モルとPO1モルをランダム付加させたもの)
B-7:C12アルコールEO3(EO1.5/PO2.5)EO1.5(C12アルコール(シェルジャパン社製 商品名:ネオドール23)に、EO3モル付加させた後、EO1.5モルとPO2.5モルをランダム付加させ、さらに、EO1.5モル付加させたもの)
B-8:C12アルコールEO3(EO2.5/PO2.5)EO3(C12アルコール(シェルジャパン社製 商品名:ネオドール23)に、EO3モル付加させた後、EO2.5モルとPO2.5モルをランダム付加させ、さらに、EO3モル付加させたもの)
B-9:C12アルコールEO3(EO3/PO2.5)EO8(C12アルコール(シェルジャパン社製 商品名:ネオドール23)に、EO3モル付加させた後、EO3モルとPO2.5モルをランダム付加させ、さらに、EO8モル付加させたもの)
B-10:C18アミンEO20(C18アミン(日油社製 商品名:アミンABT-R)にEO20モル付加させたもの)
【0030】
(3)その他(成分C)
C-1:35%過酸化水素水(保土ヶ谷化学工業社製、商品名:過酸化水素35%)
C-2:モノエタノールアミン(三井化学社製、商品名:モノエタノールアミン)
C-3:ジエタノールアミン(三井化学社製、商品名:ジエタノールアミン)
C-4:トリエタノールアミン(三井化学社製、商品名:トリエタノールアミン)
C-5:炭酸ナトリウム(トクヤマ社製、商品名:ソーダ灰)
C-6:トリポリリン酸ナトリウム(下関三井化学社製、商品名:トリポリリン酸ソーダ)
C-7:ニトリロ三酢酸三ナトリウム(BASF社製、商品名:トリロンA92R)
【0031】
[実施例1]
実施例1の洗浄用組成物は、試験ポットに、以下の表1に示すとおり、0.025gのA-1(終濃度:0.05質量%)と、0.025gのB-1(終濃度:0.05質量%)と、1gのC-1(有効酸素濃度:約320ppm)を添加し、カルシウム硬度60の水で50mLに調整することにより製造した。上記洗浄用組成物のpHは、以下の表1に示すとおりである。
【0032】
[実施例2~50]
実施例2~50の洗浄用組成物は、以下の表1に示す成分及び組成に変更した他は、実施例1と同じ方法で調製した。上記各洗浄用組成物のpHは、以下の表1に示すとおりである。
【0033】
[比較例1~40]
比較例1~40の洗浄用組成物は、以下の表2に示す成分及び組成に変更した他は、実施例1と同じ方法で調製した。上記各洗浄用組成物のpHは、以下の表2に示すとおりで
ある。
【0034】
【0035】
【0036】
【0037】
【0038】
【0039】
【0040】
【0041】
【0042】
上記実施例1~50、比較例1~40で得られた各種洗浄用組成物について、移染防止性試験、洗浄・漂白試験を行った。
【0043】
1.移染防止性試験
被洗物として、カチオン染料染め(ワイン色)のポリエステル100%品、及び、分散染料染め(ワイン色)のポリエステル100%品、及びポリエステル100%ジャージ白布を使用した。前記染色布及び白布を4×5cmに裁断し、これらの2枚ずつをスチールボール10個と共に実施例1~50、比較例1~40の各種洗浄液で、60℃で30分、ラウンダオメータを用いて同浴で洗浄した。
【0044】
洗浄後、上記染色布及び白布をすすぎ、乾燥し、白布表面の色彩値(L*値、a*値、b*値)を色彩色差計CR-200(コニカミノルタ社製)により測定した。次に、洗浄前後の白布の色差(ΔL*値、Δa*値、Δb*値)から、ΔE=(ΔL2+Δa2+Δb2)1/2を算出し、以下の表3に示す評価基準に従い8段階で評価した。以下の評価基準で○--以上を合格とした。
評価結果を以下の表7に示す。
【0045】
【0046】
2.洗浄・漂白試験
被洗物として、湿式人工汚染布(財団法人洗濯科学協会製)、EMPA114汚染布(スイス連邦材料試験研究所製)を用いた。上記湿式人工汚染布、及び4×5cmに裁断した上記EMPA114汚染布それぞれ4枚を、スチールボール10個と共に実施例1~50、比較例1~40の各種洗浄液で、60℃で15分、ラウンダオメータを用いて同浴で洗浄した。
【0047】
洗浄後、上記湿式人工汚染布及びEMPA114汚染布をすすぎ、乾燥し、前記汚染布の表面の反射率(550nm)を色彩計CM-53D(村上色彩技術研究所社製)により測定した。以下の式を用いて、湿式人工汚染布については、洗浄率を算出し、EMPA114汚染布については、漂白率を算出した。そして、洗浄率については、以下の表4に示す評価基準に従い8段階で評価し、漂白率については、以下の表5に示す評価基準に従い7段階で評価した。以下の評価基準で○--以上を合格とした。評価結果を以下の表7に示す。
【0048】
洗浄率(%)=100×[(洗浄後の反射率-洗浄前の反射率)/(白布の反射率-洗
浄前の反射率)]
漂白率(%)=100×[(洗浄後の反射率-洗浄前の反射率)/(白布の反射率-洗浄前の反射率)]
【0049】
【0050】
【0051】
【0052】
【0053】
【0054】
上記表7から明らかなとおり、pHが11.5未満の洗浄用組成物(比較例1~8、12~20、24~40)、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属リン酸塩、及びアミノカルボン酸塩の合計濃度が0.2質量%以上のもの(比較例6~11、18~23)は、移染防止性、洗浄性、漂白性のいずれかが劣るものであることが確認された。
【0055】
これに対し、実施例1~50の洗浄用組成物は、アルカリ金属珪酸塩又はアルカリ金属水酸化物を用い、pHを11.5以上、かつ、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属リン酸塩及びアミノカルボン酸塩の合計濃度を0.2質量%未満に調整したものであるが、移染防止性、洗浄性、漂白性のいずれもが優れることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明により移染防止性、洗浄性、漂白性のいずれもが優れる洗浄用組成物が提供され
る。本発明の洗浄用組成物は、ポリエステル衣料の洗浄において極めて有用であり、産業上利用可能性を有している。