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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-31
(45)【発行日】2022-09-08
(54)【発明の名称】油圧ショベル
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/26 20060101AFI20220901BHJP
   E02F 9/24 20060101ALI20220901BHJP
【FI】
E02F9/26 A
E02F9/24 B
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018194653
(22)【出願日】2018-10-15
(65)【公開番号】P2020063567
(43)【公開日】2020-04-23
【審査請求日】2021-08-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】弁理士法人開知
(72)【発明者】
【氏名】片山 彩図
(72)【発明者】
【氏名】溝口 和彦
(72)【発明者】
【氏名】束田 英信
(72)【発明者】
【氏名】中村 恵一郎
(72)【発明者】
【氏名】笹▲崎▼ 真一
(72)【発明者】
【氏名】萩原 直樹
【審査官】宇都宮 啓明
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-1071(JP,A)
【文献】特開2013-144906(JP,A)
【文献】特開2001-32332(JP,A)
【文献】特開2010-101068(JP,A)
【文献】国際公開第2017/094627(WO,A1)
【文献】特開2014-134015(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/26,9/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部走行体と,
前記下部走行体の上部に旋回可能に取り付けられた上部旋回体と,
前記上部旋回体に取り付けられたフロント作業装置と,
前記下部走行体,前記上部旋回体及び前記フロント作業装置を含む操作対象を操作するための操作装置と,
前記操作装置による前記操作対象の操作を不能にするロック位置と,前記操作装置による前記操作対象の操作を許可するロック解除位置とのいずれか一方に切り換えられるロックレバーと,
前記上部旋回体に取り付けられ前記上部旋回体の周囲の画像を撮影するカメラと,
前記画像に基づいて前記上部旋回体の周囲に存在する障害物を検出するコントローラと,
前記コントローラによって障害物が検出されたときにその旨を報知する報知装置とを備えた油圧ショベルにおいて,
前記コントローラは,前記ロックレバーがロック解除位置にある場合かつ前記コントローラの起動時から前記操作装置が非操作状態に保持されている場合には前記報知装置による報知を許可し,前記ロックレバーがロック解除位置にある場合かつ前記操作装置が操作状態から非操作状態に変化した場合にはその非操作状態が所定時間継続したときに前記報知装置による報知を許可することを特徴とする油圧ショベル。
【請求項2】
請求項1の油圧ショベルにおいて,
前記所定時間は,前記操作装置が操作状態から非操作状態に変化したときから前記上部旋回体が静止するまでに要する時間に基づいて決定されていることを特徴とする油圧ショベル。
【請求項3】
請求項1の油圧ショベルにおいて,
前記報知装置は,前記コントローラによって検出された障害物の位置を前記画像上に表示するモニタと,前記コントローラによって障害物が検出されたとき警報を出力する警報装置との少なくとも一方であることを特徴とする油圧ショベル。
【請求項4】
請求項1の油圧ショベルにおいて,
前記上部旋回体の旋回速度を検出する速度センサをさらに備え,
前記コントローラは,前記速度センサによって検出された前記上部旋回体の旋回速度に基づいて前記所定時間を決定していることを特徴とする油圧ショベル。
【請求項5】
請求項1の油圧ショベルにおいて,
前記コントローラは,前記ロックレバーがロック解除位置にある場合かつ前記操作装置が操作状態である場合には前記報知装置による報知を禁止することを特徴とする油圧ショベル。
【請求項6】
請求項1の油圧ショベルにおいて,
前記コントローラは,前記操作装置の状態が操作状態と非操作状態のいずれであるかは前記操作装置の操作量を検出する操作量センサの検出信号に基づいて判断し,前記ロックレバーの切り換え位置がロック位置かロック解除位置のいずれであるかは前記ロックレバーの切り換え位置を検出するロックレバーセンサの検出信号に基づいて判断することを特徴とする油圧ショベル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はカメラ画像に基づいて周囲の障害物が検出可能な油圧ショベルに関する。
【背景技術】
【0002】
油圧ショベルには,カメラやミリ波レーダ等で上部旋回体の周囲の障害物を検出し,障害物が検出された場合にはモニタ(表示装置)や警報装置でその旨をオペレータに報知する周囲監視システムを備えるものがある。
【0003】
例えば,特許文献1には,カメラと,表示装置とを備え,カメラ画像を利用して検出された障害物とショベルとの相対位置を算出し,ショベルの姿勢及び動作に基づいてショベルの周囲における危険範囲を算出し,その危険範囲内に存在する障害物に対して接触危険度を設定し,カメラ画像をショベル中心とする俯瞰画像に変換し,最も高い接触危険度が設定された障害物の上方に設定された視点から俯瞰画像を俯瞰した画像であってショベルと危険範囲のすべてを含む画像を作成し,その作成した画像を表示装置に表示する油圧ショベルが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2012/53105号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで,上記のような周囲監視システムを備えた油圧ショベルでは,或る条件下でモニタや警報装置による障害物の報知機能を停止する場合がある。このように一旦停止した報知機能を作業の再開等の目的で復帰させるとき,オペレータ操作により油圧ショベルが動作していたり,非操作状態であっても慣性等で油圧ショベルが動いていたりすると,周囲に障害物が存在しない場合であっても油圧ショベルの動きに起因した不要な報知が発生する可能性があり,オペレータに煩わしさを感じさせるおそれがある。
【0006】
本発明の目的は上記事情に鑑みてなされてものであり,その目的は油圧ショベルの動きに起因した不要な報知を低減できる油圧ショベルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願は上記課題を解決する手段を複数含んでいるが,その一例を挙げるならば,下部走行体と,前記下部走行体の上部に旋回可能に取り付けられた上部旋回体と,前記上部旋回体に取り付けられたフロント作業装置と,前記下部走行体,前記上部旋回体及び前記フロント作業装置を含む操作対象を操作するための操作装置と,前記操作装置による前記操作対象の操作を不能にするロック位置と,前記操作装置による前記操作対象の操作を許可するロック解除位置とのいずれか一方に切り換えられるロックレバーと,前記上部旋回体に取り付けられ前記上部旋回体の周囲の画像を撮影するカメラと,前記画像に基づいて前記上部旋回体の周囲に存在する障害物を検出するコントローラと,前記コントローラによって障害物が検出されたときにその旨を報知する報知装置とを備えた油圧ショベルにおいて,前記コントローラは,前記ロックレバーがロック解除位置にある場合かつ前記コントローラの起動時から前記操作装置が非操作状態に保持されている場合には前記報知装置による報知を許可し,前記ロックレバーがロック解除位置にある場合かつ前記操作装置が操作状態から非操作状態に変化した場合にはその非操作状態が所定時間継続したときに前記報知装置による報知を許可するものとする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば,油圧ショベルの動きに起因した不要な報知を低減できるので,オペレータに煩わしさを感じさせることを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態に係る油圧ショベル1の側面図である。
図2】本発明の実施形態に係る油圧ショベル1の運転室106内の斜視図である。
図3】本発明の実施形態に係る油圧ショベル1の上面図である。
図4】本発明の実施形態に係る油圧ショベル1における油圧駆動システムの概略図である。
図5】本発明の実施形態に係るコントローラ40の機能ブロック図である。
図6A】本特許の実施形態に係るコントローラ40の制御フロー図である。
図6B】本特許の実施形態に係るコントローラ40の制御フロー図である。
図7】本特許の実施形態に係るモニタ301の表示画面の一例を示す図である。
図8】操作レバーへの操作入力の有無,報知フラグのON/OFF,移動障害物の有無のタイミングチャートの一例を示す図である。
図9】本発明の実施形態に係る旋回速度と所定時間T1の関係を規定するテーブルの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下,本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。
なお,以下では,作業機械として,作業装置の先端の作業具(アタッチメント)としてバケットを備える油圧ショベルを例示するが,バケット以外のアタッチメントを備える作業機械に本発明を適用してもよい。また,複数のリンク部材(アタッチメント,ブーム,アーム等)を連結して構成される多関節型の作業装置を有するものであれば,油圧ショベル以外の作業機械への適用も可能である。
【0011】
また,以下の説明では,同一の構成要素が複数存在する場合,符号の末尾にアルファベットの大文字を付すことがあるが,当該アルファベットの大文字を省略して当該複数の構成要素をまとめて表記することがある。例えば,同一の3つのポンプ190a,190b,190cが存在するとき,これらをまとめてポンプ190と表記することがある。
【0012】
図1は本発明の実施形態に係る油圧ショベル1の構成図であり,図2は油圧ショベル1における運転室106の内部構成図,図3は油圧ショベル1に取り付けられたカメラの取付け位置及びその視野角を示す油圧ショベル1の俯瞰図,図4は油圧ショベル1の油圧駆動システムをコントローラ40とともに示した図である。なお,各図において同じ部分には同じ符号を付す。
【0013】
図1において,油圧ショベル1は,多関節型のフロント作業装置1Aと,車体(機械本体)1Bで構成されている。車体(機械本体)1Bは,左右の走行油圧モータ3a,3bが駆動する履帯によって走行する下部走行体11と,下部走行体11の上部に取り付けられ,旋回油圧モータ4(図4参照)に駆動された左右に旋回可能な上部旋回体12とからなる。
【0014】
フロント作業装置1Aは,垂直方向にそれぞれ回動する複数のフロント部材(ブーム8,アーム9及びバケット10)を連結して構成されている。ブーム8の基端は上部旋回体12の前部においてブームピンを介して回動可能に支持されている。ブーム8の先端にはアームピンを介してアーム9の基端が回動可能に連結されており,アーム9の先端にはバケットピンを介してバケット10の基端が回動可能に連結されている。ブーム8はブームシリンダ5によって駆動され,アーム9はアームシリンダ6によって駆動され,バケット10はバケットシリンダ7によって駆動される。
【0015】
上部旋回体12には,上部旋回体12の速度を検出するための速度センサ(旋回速度計測センサ)としてIMU(IMU:Inertial Measurement Unit(慣性計測装置))33が取り付けられている。
【0016】
また,上部旋回体12には,図3の上面図に示すように,油圧ショベル1の周囲の画像(映像)を撮影するカメラとして,左側方カメラ201,右側方カメラ202,後方カメラ203が設置されている。左側方カメラ201は,上部旋回体12の左側方領域S1の画像を撮影するためのもので,上部旋回体12の左側方に設置されている。右側方カメラ202は,上部旋回体12の右側方領域S2の画像を撮影するためのもので,上部旋回体12の右側方に設置されている。後方カメラ203は,上部旋回体12の後方領域S3の画像を撮影するためのもので,上部旋回体12の後方に設置されている。なお,上部旋回体12の前方領域の画像を撮影するカメラとして,上部旋回体12の前方の例えばブーム8の真下に前方カメラを設置しても良い。
【0017】
上部旋回体12には油圧ショベル1の各種制御を司る制御装置としてコントローラ40(図4参照)が搭載されている。詳細は後述するが,本実施形態のコントローラ40は,3台のカメラ201,202,203が撮影した画像(カメラ画像)に基づいて油圧ショベル1の周囲に存在する障害物(移動体)を検出する障害物検出処理を実行可能に構成されている。なお,コントローラ40は,そのハードウェア構成として,演算処理装置(例えばCPU),記憶装置(例えば,ROM,RAM等の半導体メモリや,ハードディスクドライブ等の磁気記憶装置),インターフェース(入出力装置)によって構成されており,記憶装置内に予め保存されているプログラム(ソフトウェア)を演算処理装置で実行して得た演算結果をインターフェースから信号として出力する。
【0018】
上部旋回体12の前方に設けられた運転室106内には,走行右レバー23a(図2)を有し走行右油圧モータ3a(下部走行体11)を操作するための操作装置47a(図4)と,走行左レバー23b(図2)を有し走行左油圧モータ3b(下部走行体11)を操作するための操作装置47b(図4)と,操作右レバー22a(図2)を共有しブームシリンダ5(ブーム8)及びバケットシリンダ7(バケット10)を操作するための操作装置45a,46a(図4)と,操作左レバー22b(図2)を共有しアームシリンダ6(アーム9)及び旋回油圧モータ4(上部旋回体12)を操作するための操作装置45b,46b(図4)が設置されている。以下では,操作右レバー22a,操作左レバー22b,走行右レバー23aおよび走行左レバー23bを操作レバー22,23と総称することがある。
【0019】
運転室106内における運転席の左側には,操作レバー22,23に操作を不能にするロック位置と,操作レバー22,23による操作を許可するロック解除位置とのいずれか一方の切り換え位置(ポジション)に切り換えられるロックレバー401と,ロックレバー401の切り換え位置がロック位置かロック解除位置のいずれであるかを検出するロックレバーセンサ116が設けられている。ロックレバーセンサ116はロックレバー401の切り換え位置情報(ポジション)を示す信号をコントローラ40に出力する。この信号がロック解除位置を示す場合は,オペレータによる下部走行体11,上部旋回体12及びフロント作業装置1Aを含む操作対象の操作が可能な状態であることを示す。反対に,ロック位置を示す場合は,オペレータによる上記の操作対象の操作が不能な状態であることを示す。
【0020】
運転室106内における運転席の右側には,コントローラ40がカメラ画像を基に検出した障害物の位置をカメラ画像上に表示するモニタ301と,コントローラ40から警報出力指令が入力されたとき警報を出力する警報装置としてのスピーカ302が設けられている。モニタ301とスピーカ302はコントローラ40によって障害物が検出されたときにその旨を報知する報知装置として機能し得る。
【0021】
図4において,上部旋回体12に搭載された原動機であるエンジン18は,油圧ポンプ2とパイロットポンプ48を駆動する。油圧ポンプ2はレギュレータ2aによって容量が制御される可変容量型ポンプであり,パイロットポンプ48は固定容量型ポンプである。本実施形態においては,図4に示すように,パイロットライン144a,144b,145a,145b,146a,146b,147a,147b,148a,148b,149a,149bの途中にシャトルブロック162が設けられている。操作装置45,46,47から出力された油圧信号が,シャトルブロック162を介してレギュレータ2aにも入力される。シャトルブロック162の詳細構成の説明は省略するが,油圧信号がシャトルブロック162を介してレギュレータ2aに入力されており,油圧ポンプ2の吐出流量が当該油圧信号に応じて制御される。
【0022】
パイロットポンプ48の吐出配管であるポンプライン150はロック弁39を通った後,複数に分岐して操作装置45,46,47,フロント制御用油圧ユニット160内の各弁に接続している。ロック弁39は本例では電磁切換弁であり,その電磁駆動部は運転室106に配置されたロックレバー401の位置検出器であるロックレバーセンサ116と電気的に接続されている。ロックレバー401のポジションはロックレバーセンサ116で検出され,そのロックレバーセンサ116からロック弁39に対してロックレバー401のポジションに応じた信号が入力される。ロックレバー401のポジションがロック位置にあればロック弁39が閉じてポンプライン150が遮断され,ロック解除位置にあればロック弁39が開いてポンプライン150が開通する。つまり,ポンプライン150が遮断された状態では操作装置45,46,47による操作が無効化され,旋回,掘削等の動作が禁止される。
【0023】
操作装置45,46,47は,油圧パイロット方式であり,パイロットポンプ48から吐出される圧油をもとに,それぞれオペレータにより操作される操作レバー22,23の操作量(例えば,レバーストローク)と操作方向に応じたパイロット圧(操作圧と称することがある)を発生する。このように発生したパイロット圧は,対応する流量制御弁15a~15fの油圧駆動部150a~155bにパイロットライン144a~149bを介して供給され,これら流量制御弁15a~15fを駆動する制御信号として利用される。
【0024】
パイロットライン144a~149bには,それぞれ圧力センサ70a~75bが設けられている。圧力センサ70a~75bは,各パイロットライン144a~149bに発生するパイロット圧を検出してコントローラ40に出力しており,操作装置45,46,47の操作量センサとして機能している。以下では,フロント作業装置1Aを駆動する油圧シリンダ5,6,7のパイロット圧(操作量)を検出する圧力センサ70,71,72をフロント操作計測センサ115と総称し,上部旋回体12を駆動する油圧モータ4のパイロット圧を検出する圧力センサ73を旋回操作計測センサ114と称し,下部走行体11を駆動する油圧モータ3a,3bのパイロット圧を検出する圧力センサ74,75を走行操作計測センサ113と総称することがある。
【0025】
油圧ポンプ2から吐出された圧油(作動油)は,流量制御弁15a,15b,15c,15d,15e,15fを介して走行右油圧モータ3a,走行左油圧モータ3b,旋回油圧モータ4,ブームシリンダ5,アームシリンダ6,バケットシリンダ7に供給される。供給された圧油によってブームシリンダ5,アームシリンダ6,バケットシリンダ7が伸縮駆動することで,ブーム8,アーム9,バケット10がそれぞれ回動し,バケット10の位置及び姿勢が変化する。また,供給された圧油によって旋回油圧モータ4が回転駆動することで,下部走行体11に対して上部旋回体12が旋回する。そして,供給された圧油によって走行右油圧モータ3a,走行左油圧モータ3bが回転駆動することで,下部走行体11が走行する。以下では,走行油圧モータ3,旋回油圧モータ4,ブームシリンダ5,アームシリンダ6,バケットシリンダ7を油圧アクチュエータ3-7と総称することがある。
【0026】
-コントローラ40-
図5はコントローラ40及びそれに関連する入出力装置のシステム構成図であり,図中のコントローラ40の内部にはコントローラ40が実装しているプログラムの機能をブロック図で示している。
【0027】
コントローラ40には,カメラ201,202,203と,走行操作計測センサ113と,旋回操作計測センサ114と,フロント操作計測センサ115と,ロックレバーセンサ116と,旋回速度計測センサ33と,モニタ301と,スピーカ302とが接続されている。
【0028】
また,コントローラ40は,下部走行体11,上部旋回体12及びフロント作業装置1Aを駆動する複数の油圧アクチュエータ3-7に作動油を供給する油圧ポンプ2を駆動するエンジン18のON状態/OFF状態を示す情報(ON/OFF情報)をセンサ(図示せず)から取得可能である。エンジン18のON状態/OFF状態は,エンジン18の点火と停止に利用されるキースイッチ(図示せず)の位置(OFF位置,ON位置,START位置)から判断しても良い。キースイッチをOFF位置からON位置に切り換えるとコントローラ40は起動し,その後,キースイッチの位置は信号としてコントローラ40に出力される。
【0029】
コントローラ40は,車体動作状態判定部5002と,俯瞰映像作成部5005と,移動障害物検出部5007と,時間計測部5009と,所定時間決定部5003と,出力映像作成部5008と,警報出力判定部5004として機能する。
【0030】
車体動作状態判定部5002は,計測センサ113,114,115とロックレバーセンサ116から検出信号(電圧値)を受け取り,操作装置45,46,47(操作レバー22,23)が操作状態と非操作状態のいずれであるかを判定するとともに,ロックレバー401の切り換え位置がロック位置とロック解除位置のいずれであるかを判定している。車体動作状態判定部5002はその判定結果を時間計測部5009及び警報出力判定部5004に出力する。
【0031】
俯瞰映像作成部5005は,カメラ201,202,203で撮影された領域S1,S2,S3の映像(静止画像の時系列データ)を基に油圧ショベル1を中心とする俯瞰映像701(図7参照)を作成し,その俯瞰映像を出力映像作成部5008に出力する処理を実行する部分である。図7にモニタ301の画面の一例を示す。この図に示すように,俯瞰映像701とは,例えば油圧ショベル1の旋回中心に基準点を設定し,作業現場を当該基準点の真上(すなわち油圧ショベルの真上)の位置から見たときに得られる平面図に相当する映像のことを示し,本実施の形態では3つのカメラ201,202,203の映像を変換及び合成することで作成される。図7の俯瞰映像701の中心には油圧ショベル1の上面図を模式的に示したアイコン702が配置されている。
【0032】
移動障害物検出部5007は,カメラ201,202,203で撮影された領域S1,S2,S3の映像(静止画像の時系列データ)を基に,フレーム毎の各画素の輝度変化から移動障害物を検出し,検出された移動障害物の俯瞰映像上の座標を記憶するとともに警報出力判定部5004に出力する処理を実行する部分である。
【0033】
移動障害物検出部5007による移動障害物の検出は例えば次のように行うことができる。すなわち,まず,直前又はnフレーム前におけるカメラ201,202,203からの入力画像の時系列データと,障害物が無い状態を別途撮影した画像等を背景画像として入力する。そして,入力画像の時系列データと背景画像を用いて画素毎の差分画像を作成し,その作成した差分画像において輝度が所定の閾値未満の部分を0とし,それ以上の部分を1以上にする2値化処理を行って障害物の変化領域を抽出する。次に抽出した変化領域に面積が所定の閾値以上の部分が有るか否かを判定する。変化領域に面積が閾値以上の部分がある場合には,障害物領域が存在すると判定し,閾値未満の部分しかない場合には障害物は存在しないと判定する。
【0034】
時間計測部5009は,車体動作状態判定部5002の判定結果に基づいて,操作装置45,46,47(操作レバー22,23)の非操作状態が継続している時間(非操作継続時間)T2を計測する処理を実行し,その結果を警報出力判定部5004に出力する部分である。コントローラ40の起動時(すなわち,キースイッチをOFF位置からON位置に切り換えた時)の非操作継続時間T2の初期値は後述の所定時間(非操作継続必要時間)T1よりも大きな値(例えば∞)に設定されており,エンジン始動時に操作装置22,23が非操作状態のときには後述の図6BのS615で必ずYESの判定がされるように(すなわちS616に進むように)構成されている。操作装置45,46,47が非操作状態から操作状態に変化した場合には時間計測部5009は非操作継続時間T2の計測をリセットする。
【0035】
所定時間決定部5003は,旋回速度計測センサ(IMU)33から上部旋回体12の旋回速度(角速度)を入力し,その旋回速度に基づいて所定時間(非操作継続必要時間)T1を演算する処理を実行し,その結果を警報出力判定部5004に出力する。所定時間(非操作継続必要時間)T1は,ロックレバー401がロック解除位置にある場合かつ操作装置45,46,47が操作状態から非操作状態に変化した場合に,スピーカ302による報知が許可されるために必要な非操作状態の継続時間である。
【0036】
本実施形態の所定時間決定部5003は図9に示したテーブルに基づいて旋回速度から所定時間(非操作継続必要時間)T1を演算している。この図に示すように旋回速度と所定時間T1の関係は,旋回速度の増加に伴って所定時間T1が単調に増加するように設定されている。なお,図9の例では旋回速度と所定時間T1は正比例の関係であるが,旋回速度の増加に伴って所定時間T1が単調に増加する関係であれば曲線や階段グラフなどで他の関係を規定しても良い。
【0037】
また,図9の例では旋回速度が0のとき所定時間T1の値は0になっているが,0より大きい値を設定し,旋回速度の増加とともに所定時間T1が単調増加するように設定しても良い。旋回速度が0のとき所定時間T1の大きさの設定の方針としては,操作レバー22,23で旋回操作以外の操作を入力したときに,フロント作業装置1Aの動作や下部走行体11の動作で上部旋回体12が揺れることがあるが,操作レバー22,23を操作状態から非操作状態(中立位置)に変化させた場合にその揺れが静止するまでに要する最大時間より大きい値に所定時間T1を設定することが好ましい。
【0038】
出力映像作成部5008は,移動障害物検出部5007で検出された移動障害物の俯瞰映像701上における座標と,俯瞰映像作成部5005で作成された俯瞰映像701とに基づいてモニタ23に出力する映像を作成する処理を行う部分である。この出力映像作成部5008により俯瞰映像701上に移動障害物が存在する位置が示される。図7のモニタ301の俯瞰映像701上には移動障害物である人705が撮影されている。この人705が移動障害物検出部5007によって移動障害物として検出された場合には,出力映像作成部5008は移動障害物検出部5007が演算した座標に基づいて人705の位置に移動障害物が存在することを示す図形(図7の例では円)704を表示する。図形704の表示と非表示は設定により変更可能である。
【0039】
警報出力判定部5004は,非操作継続時間T2及び所定時間T1と,ロックレバーセンサ116の検出信号(ロックレバー401の切り換え位置)と,移動障害物検出部5007による移動障害物の検出結果とに基づいて,スピーカ302による警報を出力するか否かを判定し,その判定結果に基づいてスピーカ302による音声出力を制御する部分である。警報出力判定部5004が警報を出力すると判定した場合には,後述するフローチャート(図6A図6B参照)における報知フラグがONに設定され,警報を出力しないと判定した場合には報知フラグはOFFに設定される。
【0040】
-コントローラ40による処理のフローチャート-
図6A及び図6Bは本発明の実施の形態に係るコントローラ40の内部処理のフローチャートである。図6A中の符号A,Bを付してステップは,図6B中で同じ符号A,Bを付したステップと繋がっている。
【0041】
キースイッチがOFF位置からON位置に切り換えられ,コントローラ40が起動するとカメラ201,202,203が映像取得を開始して当フローチャートの順に処理が実行される。
【0042】
S601では,コントローラ40(移動障害物検出部5007及び俯瞰映像作成部5005)は全てのカメラ201,202,203の映像を取得する。
【0043】
S602では,コントローラ40(移動障害物検出部5007)は,S601で取得した映像に基づいて移動障害物の有無を検出し,その検出結果を記憶するとともに,移動障害物が検出された場合には俯瞰映像701上の移動障害物の座標を記憶する。
【0044】
S603では,コントローラ40(俯瞰映像作成部5005)は,S601で取得した映像に基づいて俯瞰映像701を作成する。
【0045】
S604では,コントローラ40(車体動作状態判定部5002)は,ロックレバーセンサ116の信号に基づいてロックレバー401の位置がロック位置にあるか否かを判定する。ここでロックレバー401がロック位置にあると判定された場合にはロック状態フラグをONに設定(S620)してS611に進む。一方,ロックレバー401がロック解除位置にあると判定された場合にはロック状態フラグをOFFに設定(S605)してS607に進む。
【0046】
S607では,コントローラ40(車体動作状態判定部5002)は,走行操作計測センサ113,旋回操作計測センサ114,フロント操作計測センサ115から,走行操作圧TrPi,旋回操作圧SwPi,フロント操作圧FrPiを取得する。S607で取得した各操作圧TrPi,SwPi,FrPiに対して,コントローラ40(車体動作状態判定部5002)は,S608,S609,S610にて各操作判定しきい値Pi1,Pi2,Pi3以下か否かを判定する。いずれかの操作圧TrPi,SwPi,FrPiが比較対象となるしきい値Pi1,Pi2,Pi3を上回った場合はS626(図6B参照)へ進み,いずれの操作圧TrPi,SwPi,FrPiもしきい値Pi1,Pi2,Pi3以下であった場合はS611へと進む。
【0047】
S626(図6B参照)では,コントローラ40(時間計測部5009)は非操作継続時間T2をゼロにリセットしてS623に進む。
【0048】
S611(図6A参照)では,コントローラ40(所定時間決定部5003)は,旋回速度計測センサ33の信号から旋回速度を演算してS612(図6B参照)に進む。
【0049】
S612では,コントローラ40(所定時間決定部5003)は,S611で取得した旋回速度と図9のテーブルを利用して所定時間T1を演算してS613に進む。
【0050】
S613では,コントローラ40(時間計測部5009)は非操作継続時間T2をカウントしてS614に進む。非操作継続時間T2がゼロの状態でS613に到達した場合に,コントローラ40(時間計測部5009)は非操作継続時間T2のカウントを開始するが,非操作継続時間T2がゼロ以外の状態でS613に到達した場合には非操作継続時間T2のカウントを継続する。なお,非操作継続時間T2がゼロ以外の場合,すなわち操作装置45,46,47の非操作状態が継続している場合には,出力映像作成部5008によってモニタ23の画面上にその旨を示すアイコン703(図7参照)を表示しても良い。
【0051】
S614では,コントローラ40(警報出力判定部5004)は,S602の移動体障害物検出部5007の障害物検出処理において,カメラ201,202,203が撮影した映像(カメラ画像の時系列データ)から移動障害物を検出できたか否かを判定する。移動障害物が1つでも検出された場合にはS615に進み,移動障害物が1つも検出されなかった場合にはS623に進む。
【0052】
S615では,コントローラ40(警報出力判定部5004)は,S613でカウントしている非操作継続時間T2がS612で決定した所定時間T1を上回っているか否かを判定する。非操作継続時間T2が所定時間T1を上回っている場合にはS616に進み,非操作継続時間T2が所定時間T1以下の場合にはS623に進む。
【0053】
S616では,コントローラ40(警報出力判定部5004)は,S603,604で設定されたロック状態フラグがOFFに設定されているか否かを判定する。ここでロック状態フラグがOFFの場合にはS617に進み,ONの場合にはS621に進む。
【0054】
S617では,コントローラ40(警報出力判定部5004)は,報知フラグをONに設定し,スピーカ302による警報音の出力を許可する。それによりスピーカ302から警報音が出力され,移動障害物の存在が油圧ショベル1のオペレータ(操縦者)に報知(S618)され,処理をS619に移す。
【0055】
S621では,コントローラ40(警報出力判定部5004)は,報知フラグをOFFに設定し,スピーカ302による警報音の出力を禁止する。それによりスピーカ302からの警報音の出力が停止または出力の停止状態が継続され(S622),処理をS619に移す。
【0056】
S623では,コントローラ40(警報出力判定部5004)は,報知フラグをOFFに設定し,スピーカ302による警報音の出力を禁止する。それによりスピーカ302からの警報音の出力が停止または出力の停止状態が継続され(S624),処理をS625に移す。
【0057】
S619では,コントローラ40(出力映像作成部5008)は,移動障害物の検出結果(図形704)を俯瞰映像701に合成してモニタ23に出力し,最初の処理S601に戻る。
【0058】
S625では,コントローラ40(出力映像作成部5008)は,移動障害物の検出結果(図形704)を俯瞰映像701に合成することなく,俯瞰映像701のみをモニタ23に出力し,最初の処理S601に戻る。
【0059】
-動作・効果-
上記のように構成される油圧ショベル1による動作・効果について図8に示した状況に基づいて説明する。図8の上段の(a)に示したダイアグラムは操作レバー22,23への入力の有無(操作状態/非操作状態)を示したタイミングチャートであり,中段の(b)に示したダイアグラムは警報出力判定部5004による報知フラグのON/OFFの変化を示したタイミングチャートであり,下段の(c)に示したダイアグラムはカメラ201,202,203の撮影範囲内における移動障害物の有無を示したタイミングチャートである。図8の右側に示すように,時刻0でキースイッチがOFF位置からON位置に切り換えられ,時刻t1で操作レバー22,23の操作が開始され,時刻t2で操作レバー22,23の操作が終了され,時刻t4以降にキースイッチがON位置からOFF位置に切り換えられる場面を想定する。このとき,(c)に示すように,移動障害物は時刻0から時刻t1の間にカメラ201,202,203の撮影範囲内に出現し,その後,時刻t4でカメラ201,202,203の撮影範囲から外れている。
【0060】
(1)時刻0
時刻0でオペレータが油圧ショベル1のキースイッチをOFF位置からON位置に切り換えるとコントローラ40が起動する。続いてキースイッチをON位置からSTART位置に切り換えてエンジン18を始動するとキースイッチは速やかにON位置に保持される。そして,その直後,オペレータはロックレバー401をロック位置からロック解除位置に切り換える。このとき移動障害物はカメラ201,202,203の撮影範囲内に存在しないため,コントローラ40による処理は図6A及び図6BのフローチャートのS614からS623に進み,報知フラグはOFFに設定されスピーカ302による報知は行われない。
【0061】
(2)時刻0から時刻t1の間
その後も操作レバー22,23は非操作状態に保持されているが,時刻0から時刻t1の間で移動障害物がカメラ201,202,203の範囲内に出現すると,非操作継続時間T2が初期値(例えば∞)からカウントされており所定時間T1より大きいためコントローラ40の処理はS615からS616に進む。このときロックレバー401はロック解除位置に切り換えられている。すなわちロック状態フラグがOFFに設定されているため更にS617に進んで報知フラグがONに設定される。これによりスピーカ302による報知が行われるとともに(S618),モニタ301の俯瞰映像上に移動障害物の位置を示す図形704が表示される(S619)。その結果,オペレータは,作業開始前の車体の周囲確認が必要なタイミングにおいて,スピーカ302の警報とモニタ301の映像により移動障害物の存在を容易に認識することができる。
【0062】
(3)時刻t1
その後,時刻t1で操作レバー22,23が操作状態に変化すると,コントローラ40の処理はS626(図6B参照)に進んで非操作継続時間T2がゼロにリセットされ,報知フラグがOFFに設定される(S623)。これにより移動障害物はカメラ201,202,203の撮影範囲に存在するものの,スピーカ302による報知が停止するとともに(S624),モニタ301の俯瞰映像から移動障害物の位置を示す図形704が取り除かれる(S625)。この場合,オペレータは時刻t1の前にスピーカ302の警報とモニタ301の映像により移動障害物の存在を既に認識しているため不要な報知が発せられることが防止でき,オペレータに煩わしさを感じさせることもない。また,操作レバー22,23の操作中は,その操作によりカメラ201,202,203が取り付けられている上部旋回体12が旋回したり振動したりする可能性が高い。そのため,本実施形態のように移動障害物の検出に際し,俯瞰映像のフレーム毎の画素の輝度変化から移動障害物を検出する方式を利用する場合には不要な移動障害物の検知が増加するおそれがあり,オペレータに煩わしさを感じさせるおそれがある。しかし,本実施形態のように操作レバー22,23の操作中に報知フラグをOFFに設定すれば,そのような移動障害物の不要な報知がなされることを回避できる。
【0063】
(4)時刻t2
時刻t2で操作レバー22,23が操作状態から非操作状態に変化すると,コントローラ40の処理はS611,612に進み,上部旋回体12の旋回速度に基づいて所定時間T1が算出される。例えば,時刻t1から時刻t2の直前まで操作レバー22bを介して旋回操作が入力されており,時刻t2における上部旋回体12の旋回速度がωa(図9参照)の場合には所定時間T1としてT1a(図9参照)が演算される。このときのコントローラ40の処理はS615まで進むが,非操作継続時間T2はカウントを開始した直後で略ゼロであり所定時間T1aより小さい。そのため,依然として報知フラグがOFFに保持され(S623),スピーカ302とモニタ301による報知に関しては時刻t2の直前の状態が維持される。その後,時間の経過とともに上部旋回体12の旋回速度はωaからゼロに近づいていくため,所定時間T1も同様にゼロに近づいていく。
【0064】
(5)時刻t3
時刻t3では非操作継続時間T2が所定時間T1より大きくなったため(すなわち上部旋回体12が静止したため),コントローラ40の処理はS615からS616を経由して617に進んで報知フラグがONに再度設定される。すなわち操作レバー22,23の操作を開始する時刻t1の直前の状態に復帰するため,スピーカ302による報知が許可されるとともに(S618),モニタ301の俯瞰映像上に移動障害物の位置を示す図形704の表示も許可される(S619)。このとき上部旋回体12は静止しているため,不要な移動障害物の検知がなされることはなく,オペレータに煩わしさを感じさせることはない。また,図8の例のように時刻t3で移動障害物がカメラ201,202,203の撮影範囲内に存在している場合には,オペレータはスピーカ302の警報とモニタ301の映像により移動障害物の存在を容易に認識することができる。
【0065】
(6)その他
上記では触れなかったが,ロックレバー401がロック位置にある場合に,移動障害物の検出がされ,非操作継続時間T2が所定時間T1を超えている場合には,コントローラ40の処理はS616を経由してS621に進んで報知フラグがOFFに設定される。この場合,本実施形態では,スピーカ302による警報は停止されるが(S622),モニタ301での移動障害物の位置の表示は行われる(S619)。オペレータが運転室106内にいながらロックレバー401がロック位置に切り換えられる具体的な場面としては,コントローラ40の起動時(キーON時)を除くと,オペレータが運転室106内で休憩や作業の確認等をする場面が想定される。このような場面にスピーカ302による警報が出力されると,オペレータの休憩や確認作業等の邪魔をする可能性が高く,オペレータにとっては不要な報知となり易い。しかし,本実施の形態のように構成すれば,不要な報知がなされることを防止することができる。
【0066】
・まとめ
以上のように,本実施形態の油圧ショベル1では,コントローラ40は,ロックレバー401がロック解除位置にある場合かつコントローラ40の起動時から操作装置45,46,47(操作レバー22,23)が非操作状態に保持されている場合にはスピーカ(報知装置)302による報知を許可し,ロックレバー401がロック解除位置にある場合かつ操作装置45,46,47(操作レバー22,23)が操作状態から非操作状態に変化した場合にはその非操作状態が所定時間T1継続したときにスピーカ(報知装置)302による報知を許可することとした。これにより,オペレータは,コントローラ40の起動後で作業開始前の車体の周囲確認が必要なタイミングにおいて,スピーカ302の報知により移動障害物の存在を容易に認識することができる。さらに,操作装置45,46,47(操作レバー22,23)を操作状態から非操作状態に戻した場合には,上部旋回体12が静止してからスピーカ302による報知がされることとなるため,オペレータに対して不要な報知をすることが防止でき,オペレータに不快感を与えることが防止できる。
【0067】
<その他>
なお,本発明は,上記の実施の形態に限定されるものではなく,その要旨を逸脱しない範囲内の様々な変形例が含まれる。例えば,本発明は,上記の実施の形態で説明した全ての構成を備えるものに限定されず,その構成の一部を削除したものも含まれる。また,ある実施の形態に係る構成の一部を,他の実施の形態に係る構成に追加又は置換することが可能である。
【0068】
上記では所定時間T1をその時の旋回速度に基づいて演算したが,所定時間T1は旋回速度の大小に関わらず予め設定された値を利用しても良い。この場合,例えば,旋回速度が最大のときに操作レバー22bによる旋回操作を停止した時から上部旋回体12が静止するまでに要する時間を計測し,その時間を所定時間T1と設定することができる。また,或るタイミング(例えば操作レバー22,23が操作状態から非操作状態に変化したとき)における旋回速度から所定時間T1を決定する構成を採用しても良い。
【0069】
また,上記では,旋回速度から所定時間T1を決定したが,操作レバー22,23の操作に起因する上部旋回体12のピッチング(縦揺れ)やローリング(横揺れ)をIMUで検知し,それらが減衰して上部旋回体12が静止するまでに要する時間に基づいて所定時間T1を決定してもよい。
【0070】
また,上記では,報知フラグのON/OFFに基づいてスピーカ302による警報音の出力のON/OFFを制御したが,これに代えてモニタ301における移動障害物の位置表示のON/OFFを制御しても良い。すなわち,スピーカ302に代えてモニタ301を報知装置として利用しても良い。
【0071】
また,上記のコントローラ40に係る各構成や当該各構成の機能及び実行処理等は,それらの一部又は全部をハードウェア(例えば各機能を実行するロジックを集積回路で設計する等)で実現しても良い。また,上記のコントローラ40に係る構成は,演算処理装置(例えばCPU)によって読み出し・実行されることでコントローラ40の構成に係る各機能が実現されるプログラム(ソフトウェア)としてもよい。当該プログラムに係る情報は,例えば,半導体メモリ(フラッシュメモリ,SSD等),磁気記憶装置(ハードディスクドライブ等)及び記録媒体(磁気ディスク,光ディスク等)等に記憶することができる。
【0072】
また,上記の各実施の形態の説明では,制御線や情報線は,当該実施の形態の説明に必要であると解されるものを示したが,必ずしも製品に係る全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えて良い。
【符号の説明】
【0073】
1…油圧ショベル,1A…フロント作業装置,1B…車体(機械本体),2…油圧ポンプ,3-7…油圧アクチュエータ,11…下部走行体,12…上部旋回体,18…エンジン,22…操作レバー,23…操作レバー,23…モニタ,33…旋回速度計測センサ(IMU),40…コントローラ,45-47…操作装置,70-75…圧力センサ,106…運転室,113…走行操作計測センサ,114…旋回操作計測センサ,115…フロント操作計測センサ,116…ロックレバーセンサ,201-203…カメラ,301…モニタ(報知装置),302…スピーカ(報知装置),401…ロックレバー,701…俯瞰映像
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7
図8
図9