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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-31
(45)【発行日】2022-09-08
(54)【発明の名称】カソード
(51)【国際特許分類】
   H01J 27/20 20060101AFI20220901BHJP
   H01J 37/08 20060101ALI20220901BHJP
【FI】
H01J27/20
H01J37/08
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018223338
(22)【出願日】2018-11-29
(65)【公開番号】P2020087816
(43)【公開日】2020-06-04
【審査請求日】2021-10-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000000158
【氏名又は名称】イビデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】高木 俊
【審査官】藤本 加代子
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-500709(JP,A)
【文献】特開2005-235604(JP,A)
【文献】特開2001-167707(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 27/20
H01J 37/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスを用いてイオンビームを取り出すイオン源に用いられるカソードであって、
前記イオン源を構成するカソードは、Ta、W又はMoからなるカソードキャップと、前記カソードキャップを囲むカーボンからなるカソードリペラーと、前記カソードキャップと前記カソードリペラーに挟まれ、セラミック繊維で構成された支持材と、からなることを特徴とするカソード。
【請求項2】
前記セラミック繊維は、SiC繊維又は炭素繊維であることを特徴とする請求項1に記載のカソード。
【請求項3】
前記支持材を構成するセラミック繊維は、マット、クロス、フィラメントワインディング体、抄造体及びブレーディング体から選択される形態の1又は2以上の層からなることを特徴とする請求項1又は2に記載のカソード。
【請求項4】
前記カソードキャップは、前記イオン源を構成するチャンバの中心に面する側の周囲に切欠きを有し、前記カソードリペラーは、先端部に前記切欠きに対応する止め部を有することを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載のカソード。
【請求項5】
前記カソードリペラーの中間部に、前記カソードキャップを固定する固定具をさらに有することを特徴する請求項4に記載のカソード。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カソードに関する。
【背景技術】
【0002】
イオン注入機は、シリコンウェハにイオンビームを衝突させることによってシリコンウェハにイオンを注入処理するために使用されている。このようにイオン注入機を用い、シリコンウェハに制御された濃度の不純物を添加することによって半導体を形成し、その半導体は集積回路の製造に使用される。
【0003】
イオン注入装置の一例は、イオン源系(イオン発生部)にガスを導入して元素をイオン化し、高電圧を印加してイオンビームとして引き出し、質量分析系(イオン輸送部)で磁場をかけてイオンビームを曲げ、所定の質量のイオンだけを選別し、ビームライン系(イオン輸送部)でビームを輸送する中で必要な電圧をかけてビームを加速し、ビーム形状を整形、集束、走査(スキャン)し、エンドステーション部(イオン注入部)にターゲット基板をセットし、注入処理をおこなう構成となっている。
【0004】
イオン源に関する特許文献1には、ガスを使用してイオンビ-ムを取り出す傍熱型カソードイオン源において、該カソードの周囲にある熱電子の反射体であるカソードリペラーを炭素系素材で構成したことを特徴とする傍熱型カソードイオン源が記載されている。
【0005】
特許文献1には、カソードリペラーを炭素系素材で構成したため、腐食性の強いフッ素系のガス、特にGeFガスを使用してのGeビ-ム出しにおけるイオン源寿命の増大を図ることができるとともに、GeFガスを使用してのGeビ-ム出し後のメンテナンス作業時の大気開放に伴うHF等のガス発生を削減することが出来ることが記載されている。
【0006】
また、カソードリペラーの材質は炭素材を使用しているので、このカソードリペラーからの剥離物が発生し難く、イオン源とカソードリペラー間の剥離物による絶縁不良も起こし難くすることができることが記載されており、さらに、従来のイオン源のように真空室内の堆積物に起因する、イオン源の寿命短縮、メンテナンス作業時の害のあるガス発生等の問題を解消することができ、安定したイオン源として利用できるすぐれた特徴を有することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2001-167707号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記カソードは、カソードキャップとカソードキャップの周囲にあるカソードリペラーとで構成される組み合わせ構造となっているため、上記カソードは、効率よくイオンを発生するために高温に曝される。
その結果、上記した組み合わせ構造のカソードには、一体型にはない様々な課題が生じる。特に異なる材質を組み合わせるので熱膨張差に起因する熱歪みを解決しつつ耐熱性、耐食性を確保し性能を発揮しなければならず、破損し易く、長寿命とすることが難しい。
【0009】
本発明は、上記課題に鑑み、組合せ構造であって長寿命で、安定して使用可能なカソードを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明のカソードは、
ガスを用いてイオンビームを取り出すイオン源に用いられるカソードであって、
上記イオン源を構成するカソードは、Ta、W又はMoからなるカソードキャップと、上記カソードキャップを囲むカーボンからなるカソードリペラーと、上記カソードキャップと上記カソードリペラーに挟まれ、セラミック繊維で構成された支持材と、からなることを特徴とする。
【0011】
上記カソードによれば、カソードキャップが高耐熱金属であるTa、W又はMoからなるので、熱で溶融しても揮発しにくく、高い耐熱性と耐久性とを有し、長期間使用することができる。特にTaは融点が3017℃、沸点が5458℃と特に沸点が高く、好適に利用できる。
【0012】
また、カソードキャップを囲むカソードリペラーは、カーボンからなるので、フッ化物系のガスを用いることにより化学的エッチングが生じても堆積しやすいフッ化物が生成せず、イオン源の内部に堆積する堆積物の生成を抑制することができる。
【0013】
さらにカソードキャップとカソードリペラーとの間にはセラミック繊維で構成された支持材を有しているので、上記支持材が、カソードキャップとカソードリペラーとの熱膨張差を吸収し、広い温度域で、破損等の不都合を発生させず、安定的にカソードキャップを保持することができる。さらに支持材が断熱材となり、カーボンからなるカソードリペラーの放熱を促し、カソードリペラーの温度を下げ、劣化を防止しつつカソードキャップからの放熱を抑制し、効率よくイオンを発生させることができる。
【0014】
本発明のカソードでは、上記セラミック繊維は、SiC繊維又は炭素繊維であることが望ましい。
本発明のカソードにおいて、上記セラミック繊維がSiC繊維又は炭素繊維であると、上記セラミック繊維は、高い耐熱性と高い弾性とを有し、高温でも劣化が少なく、高い保持力を維持することができる。
【0015】
本発明のカソードでは、上記支持材を構成するセラミック繊維は、マット、クロス、フィラメントワインディング体、抄造体及びブレーディング体から選択される形態の1又は2以上の層からなることが望ましい。
【0016】
本発明のカソードにおいて、上記支持材を構成するセラミック繊維がマット、クロス、フィラメントワインディング体、抄造体及びブレーディング体から選択される形態の1又は2以上の層からなると、上記形態は、適度な空間を有しているので、セラミック繊維が、弾力性を発現することができ、破損等の不都合を発生させず、安定的にカソードキャップを保持することができる。
【0017】
本発明のカソードでは、上記カソードキャップは、上記イオン源を構成するチャンバの中心に面する側の周囲に切欠きを有し、上記カソードリペラーは、先端部に上記切欠きに対応する止め部を有することが望ましい。
【0018】
本発明のカソードにおいて、上記カソードキャップが上記イオン源を構成するチャンバの中心に面する側の周囲に切欠きを有し、上記カソードリペラーが先端部に上記切欠きに対応する止め部を有すると、カソードキャップを正確に位置決めすることができ、カソードの寸法精度を高めることができる。
【0019】
本発明のカソードでは、上記カソードリペラーの中間部に、上記カソードキャップを固定する固定具をさらに有することが望ましい。
【0020】
本発明のカソードにおいて、上記カソードリペラーの中間部に、上記カソードキャップを固定する固定具をさらに有する構造となっていると、止め部と固定具とでカソードキャップが挟まれた構造となる。このため、カソードはカソードキャップが脱落しない構造とすることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明のカソードによれば、カソードキャップがTa、W又はMoからなるので、高い耐熱性と、耐久性を有し、長期間使用することができる。また、カソードキャップを囲むカソードリペラーは、カーボンからなるので、フッ化物系のガスを用いることによる化学的エッチングが生じても、堆積しやすいフッ化物が生成せず、イオン源の内部に堆積物の生成を抑制することができる。さらにカソードキャップとカソードリペラーとの間には、セラミック繊維で構成された支持材を有しているので、支持材が、カソードキャップとカソードリペラーとの熱膨張差を吸収し、破損等の不都合を発生させず、安定的にカソードキャップを保持することができる。さらに、上記支持材が断熱材となり、カソードリペラーの劣化を防止しつつカソードキャップからの放熱を抑制し、効率よくイオンを発生することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は、本発明の一実施形態に係るカソードを備えたイオン源を模式的に示す断面図である。
図2図2は、実施形態1に係る本発明のカソードを模式的に示す断面図である。
図3図3は、実施形態2に係る本発明のカソードを模式的に示す断面図である。
図4図4は、実施形態3に係る本発明のカソードを模式的に示す断面図である。
図5図5は、実施形態4に係る本発明のカソードを模式的に示す断面図である。
【0023】
(発明の詳細な説明)
本発明のカソードは、ガスを用いてイオンビームを取り出すイオン源に用いられるカソードであって、上記イオン源を構成するカソードは、Ta、W又はMoからなるカソードキャップと、上記カソードキャップを囲むカーボンからなるカソードリペラーと、上記カソードキャップと上記カソードリペラーに挟まれ、セラミック繊維で構成された支持材と、からなることを特徴とする。
【0024】
イオン注入装置は、イオン発生部となるイオン源とイオン輸送部とイオン注入部とを備え、イオン源で得られたイオンを、イオン輸送部において、磁場の作用で選別するとともに加速し、イオン注入部に配置されたシリコンウェハ等に所定のイオンを打ち込む装置であり、打ち込むイオンの種類、深さ、量などを適宜調整して所定の性能の半導体を得ることができる。
【0025】
最初のイオン源では、シリコンウェハ等に所定の元素を打ち込むため、所定の元素を含むガスをイオン源に導入し、イオン源の中では電極からの放電と誘導結合プラズマによる作用などでガスをイオン化し、スリットから得られたイオンを放出するまでの役割を担っている。
【0026】
上記イオン源は、放電と誘導結合プラズマの両方の作用により、多くのラジカルが発生し、さらに温度も高いことから非常に腐食しやすい環境にある。
特に誘導結合プラズマとも距離が近い電極は、最も腐食しやすい部品である。金属元素は、沸点の低いフッ素系化合物のガスの形態でイオン源に導入され、効率よく所定のイオンを得ることができる一方、フッ素成分は、イオン源内の部材を腐食させやすい性質があり、消耗を減らす観点と、腐食により発生する生成物の悪影響の観点から腐食を抑えることが必要となる。
また、電極は高温に曝されるので、高温での消耗が速い部品でもあり、長寿命化の観点と、発生するパーティクルを減らす観点から消耗を減らすことが必要となる。
【0027】
本発明のカソードは、ガスを用いてイオンビームを取り出すイオン源に用いるカソードであって、上記イオン源を構成するカソードは、Ta、W又はMoからなるカソードキャップと、上記カソードキャップを囲むカーボンからなるカソードリペラーと、上記カソードキャップと上記カソードリペラーに挟まれセラミック繊維で構成された支持材と、からなる。
【0028】
本発明のカソードによれば、カソードキャップがTa、W又はMoからなるので、熱で溶融しても揮発しにくく、高い耐熱性と耐久性とを有し、長期間使用することができる。特にTaは融点が3017℃、沸点が5458℃と特に沸点が高く、耐熱性金属の中では熱伝導率が50W/mK程度と低いため、熱が拡散しにくいので、高温で好適に使用できる。また、カソードキャップを囲むカソードリペラーは、カーボンからなるので、フッ化物系のガスを用いても化学的エッチングが生じても堆積しやすいフッ化物が生成せず、イオン源の内部に堆積する堆積物の生成を抑制することができる。さらにカソードキャップとカソードリペラーとの間には、セラミック繊維で構成された支持材を有しているので、支持材が、カソードキャップとカソードリペラーとの熱膨張差を吸収し、広い温度域で、破損等の不都合を発生させず、安定的にカソードキャップを保持することができる。さらに支持材が断熱材となり、カーボンからなるカソードリペラーの放熱を促し、温度を下げ劣化を防止しつつカソードキャップからの放熱を抑制し、効率よくイオンを発生させることができる。また、支持材が断熱材となるのでチャンバに熱が伝わりにくい構造を得ることができ、チャンバからの鉄、クロムなどの発生を防止しやすくすることができる。
【0029】
本発明のカソードリペラーのカーボンはどのようなものであってもよく特に限定されず、黒鉛、C/Cコンポジット、ガラス状カーボン、炭素質材、熱分解炭素などが利用することができ、これらを組み合わせた複合材も利用することができる。
【0030】
また、本発明のカソードの上記セラミック繊維は、SiC繊維又は炭素繊維であることが望ましい。
本発明のカソードの支持材に用いられるセラミック繊維がSiC繊維又は炭素繊維であると、高い耐熱性及び弾性を有し、高温でも劣化が少なく高い保持力を有することができる。
特に炭素繊維は、熱による劣化が起こりにくく、安定して使用することができる。さらに炭素繊維の中でも、高温で処理され、結晶化の進んだ黒鉛繊維と呼ばれる高弾性繊維を用いることにより、強い保持力を確保することができる。
【0031】
本発明のカソードでは、上記支持材を構成するセラミック繊維は、マット、クロス、フィラメントワインディング体、抄造体及びブレーディング体から選択される形態の1又は2以上の層からなることが望ましい。
【0032】
上記したマット、クロス、フィラメントワインディング体、抄造体、ブレーディング体の形態は、適度な空間を有しているので、セラミック繊維が、弾力性を発現することができる。
マットとは、例えば1~1000mmの長さのセラミック繊維をランダムに配置し、シート状にしたものである。クロスとは、例えばセラミック繊維を束ねたストランドを用いて織ったものであり、織り方は特に限定されず、平織、綾織、朱子織などが利用できる。フィラメントワインディング体は、例えばセラミック繊維を束ねたストランドをマンドレルに巻いたものであり、カソードキャップに直接巻回してもよい。抄造体は、例えば0.1~10mmの長さのセラミック繊維を抄造し、シート状に形成したものである。ブレーディング体とは、例えばセラミック繊維を束ねたストランドを用いて組み紐となるように管状に編んだものである。
また、上記支持材は、カソードキャップ側では温度が高く、カソードリペラー側では温度が低くなる。このためカソードキャップ側では輻射伝熱の比率が高く、光線を遮るよう緻密なクロス、フィラメントワインディング体又はブレーディング体の形態のセラミック繊維を配置し、一方、カソードリペラー側では、弾力性を確保しやすい抄造体又はマットの形態のセラミック繊維を配置することが望ましく、形態の異なる2層構造としてもよい。このような2層構造を採用することにより、効率よく弾力性を保持しつつ、断熱性を大きくすることができる。
さらに、上記支持材は、セラミック繊維からなる骨材に加え、セラミック繊維の接点を接合するセラミックマトリックスを有していてもよい。セラミックマトリックスは、セラミック繊維を互いに接合し、弾力性を増すとともに、セラミック繊維の毛羽立ちを防止し、パーティクルの発生を防止することができる。セラミックマトリックスは、必ずしもセラミック繊維の充填されていない空隙を完全に充填する必要はなく、セラミック繊維の接点を結合するだけの充填量であっても同様に機能する。
セラミックマトリックスとしては、CVD法で製造した熱分解炭素、CVD-SiCなどが利用できる。
【0033】
本発明のカソードでは、上記カソードキャップは、上記イオン源を構成するチャンバの中心に面する側の周囲に切欠きを有し、上記カソードリペラーは、先端部に上記切欠きに対応する止め部を有することが望ましい。
【0034】
上記構成のカソードでは、カソードキャップの切欠きとカソードリペラーの止め部とで、カソードキャップを正確に位置決めすることができ、カソードの寸法精度を高めることができる。
また、カソードキャップのリペラープレート7(図1参照)と対向する面は、カソードリペラーの止め部よりも突出し、よりチャンバ内部に位置していることが好ましい。この場合、放電はカソードキャップの上記した対向面を中心に起こり、カソードリペラー側での放電を起こりにくくすることができる。
【0035】
上記構成のカソードでは、上記カソードリペラーの中間部に、上記カソードキャップを固定する固定具をさらに有することが望ましい。
上記構成のカソードでは、止め部と固定具とでカソードキャップが挟まれた構造となり、カソードキャップが脱落しない構造とすることができる。固定具は、カソードリペラーにねじ止めで取り付けられていてもよく、炭素系接着剤などで取り付けられていてもよく、取り付け方法は、特に限定されるものではない。炭素系接着剤としては、例えばフェノール樹脂、フラン樹脂などを用いることができ、このような樹脂で固定し、炭素化させることにより炭素系の接着層を形成することができる。
【0036】
図1は、本発明の一実施形態に係るカソードを備えたイオン源を模式的に示す断面図である。
イオン源100を構成するチャンバ4の上部には、リペラープレート7が配置され、下部には、カソード10が配置されている。また、チャンバ4の一側面には、ガス導入口6が設けられ、ガス導入口6が設けられた面に対向する側面には、スリット5が設けられている。
カソード10は、Taからなるカソードキャップ1と、カーボンからなり、その先端部分がカソードキャップ1を取り囲んだ形態のカソードリペラー2と、カソードキャップ1とカソードリペラー2に挟まれ、セラミック繊維で構成された支持材3とから構成されており、カソードキャップ1の直下には、フィラメント8が配置されている。
【0037】
このイオン源100では、ガス導入口6より原料ガスが導入される。一方、フィラメント8には電流が流され、フィラメント8が加熱され、フィラメント8より熱電子が発生する。発生した熱電子は、カソードキャップ1とフィラメント8との間の電圧により加速され、カソードキャップ1に流れ込み、カソードキャップ1を加熱する。そして、カソードキャップ1とリペラープレート7との間の放電を発生させ、誘導結合によってプラズマを形成し、プラズマ中で原料ガスを分解しイオン化させる。形成されたイオンは、スリット5を通ってイオン源100から放出され、イオン輸送部、イオン注入部を通ってシリコンウェハ等に注入される。
【0038】
(実施形態1)
図2は、実施形態1に係る本発明のカソードを模式的に示す断面図であり、図2に示すカソードは、図1に示すイオン源100に設けられたものと同じ構成のものである。
実施形態1のカソード10では、凹凸のないストレート状の端部を有するカソードリペラー2の端部の内側にセラミック繊維からなる支持材3を介してタンタルからなるカソードキャップ1が保持されている。カソード10は、回転対称体であり、カソードリペラー2及び支持材3はリング状、カソードキャップ1は円盤形状であり、カソードリペラー2の先端よりも、カソードキャップ1のリペラープレート7(図1参照)に対向する面が突出する位置関係にある。支持材3には、炭素繊維のマットが用いられているが、SiC繊維のマットが用いられていてもよい。
【0039】
(実施形態2)
図3は、実施形態2に係る本発明のカソードを模式的に示す断面図である。
実施形態2のカソード20では、カソードリペラー12の先端に内向きでリング状の止め部19が形成されている。また、カソードキャップ11は、止め部19に対応するように切欠き11aが形成され、その断面が凸形状となっている。また、カソードキャップ11とカソードリペラー12との間には、支持材13が介装されている。支持材13には、炭素繊維のマットが用いられているが、SiC繊維のマットが用いられていてもよい。
【0040】
(実施形態3)
図4は、実施形態3に係る本発明のカソードを模式的に示す断面図である。
実施形態3のカソード30では、カソードキャップ21のリペラープレート7(図1参照)と対向する面と反対側の面の近傍に、カソードリペラー22に取り付けられた固定具25が配置されている。カソードキャップ21は、止め部29と固定具25に挟まれ、所定の位置に収まっている。また、カソードキャップ21とカソードリペラー22との間には、支持材23が介装されている。
固定具25は、カソードリペラー22にねじ止めで取り付けられていてもよく、炭素系接着剤などで取り付けられていてもよく、取り付け方法は、特に限定されるものではない。支持材23には、炭素繊維のマットが用いられているが、SiC繊維のマットが用いられていてもよい。
【0041】
(実施形態4)
図5は、実施形態4に係る本発明のカソードを模式的に示す断面図である。
実施形態4のカソード40では、カソードキャップ31のリペラープレート7(図1参照)と対向する面と反対側の面が、止め部39を備えたカソードリペラー32の内側に挿入されたスリーブ状の固定具35で保持されている。また、カソードキャップ31とカソードリペラー32との間には、支持材33が介装されている。支持材33には、炭素繊維のマットが用いられているが、SiC繊維のマットが用いられていてもよい。
【符号の説明】
【0042】
10、20、30、40 カソード
1、11、21、31 カソードキャップ
2、12、22、32 カソードリペラー
3、13、23、33 支持材
4 チャンバ
5 スリット
6 ガス導入口
7 リペラープレート
8 フィラメント
11a 切欠き
19、29、39 止め部
25、35 固定具
100 イオン源
図1
図2
図3
図4
図5