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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-31
(45)【発行日】2022-09-08
(54)【発明の名称】航空機用空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 9/18 20060101AFI20220901BHJP
   B60C 9/20 20060101ALI20220901BHJP
   B60C 9/22 20060101ALI20220901BHJP
【FI】
B60C9/18 H
B60C9/20 C
B60C9/22 B
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018239331
(22)【出願日】2018-12-21
(65)【公開番号】P2020100253
(43)【公開日】2020-07-02
【審査請求日】2021-07-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100169111
【弁理士】
【氏名又は名称】神澤 淳子
(72)【発明者】
【氏名】市原 永司
(72)【発明者】
【氏名】中村 悠亮
【審査官】松岡 美和
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-088590(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0133796(US,A1)
【文献】特開平01-109108(JP,A)
【文献】特開昭62-203803(JP,A)
【文献】特開2007-137119(JP,A)
【文献】特開2008-114841(JP,A)
【文献】特開2002-211208(JP,A)
【文献】特開2018-079712(JP,A)
【文献】特開平04-015106(JP,A)
【文献】実開平03-005503(JP,U)
【文献】特開2012-1206(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 9/18-9/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対のビードコア(6)と、
両前記ビードコア(6)間にトロイダル状に延びるカーカスプライ(7a)を一枚以上具備したラジアルカーカス(7)と、
前記ラジアルカーカス(7)のクラウン域の外周側に配設され、前記ラジアルカーカス(7)を補強するベルト層(10)と、を有した航空機用空気入りタイヤにおいて、
前記ベルト層(10)は、
有機繊維からなる第1のベルトコード(26a)がゴムで被覆されたリボン状の第1のストリップ材(26)が、らせん巻にされた構造であり、規定の複数の層(21,22,23,24,25)が重ねられたらせん巻ベルト層(20)と、
有機繊維からなる第2のベルトコード(36a)がゴムで被覆されたリボン状の第2のストリップ材(36)が、前記らせん巻ベルト層(20)の外周側に幅方向端縁(30a)で折り返されてジグザグ状に屈曲しながら、円周方向に延在して巻かれた構造であり、規定の複数の層(31,32,33,34)が重ねられたジグザグベルト層(30)と、を備え、
前記らせん巻ベルト層(20)の前記第1のベルトコード(26a)は、タイヤ赤道面(CL)に対して5°以下の角度で延在し、
前記ジグザグベルト層(30)の前記第2のベルトコード(36a)は、前記ジグザグベルト層(30)の各幅方向端縁(30a)で折り返される折り返し点(36b)まで、前記タイヤ赤道面(CL)に対して2°~45°の角度で傾斜して延在し、
前記タイヤ赤道面(CL)から、前記ベルト層(10)の最大ベルト幅(Wb)の半分の長さの50%の距離における、前記らせん巻ベルト層(20)のベルト積層数のN50と、
前記タイヤ赤道面(CL)から、前記最大ベルト幅(Wb)の半分の長さの95%の距離における、前記らせん巻ベルト層(20)のベルト積層数のN95と、が、
95>N50
の関係を満たし、
複数の前記らせん巻ベルト層(20)のうち、タイヤ径方向において最も内側に位置する最内側層(21)は、タイヤ幅方向において前記タイヤ赤道面(CL)に対して一方の側に配置され、
前記最内側層(21)のタイヤ幅方向における端部(21a,21b)のうち、タイヤ幅方向において内側の内端部(21a)は、前記タイヤ赤道面(CL)から所定の間隔のWs を存して位置し、
前記最内側層(21)の前記端部(21a,21b)のうち、タイヤ幅方向において外側の外端部(21b)は、前記最内側層(21)の前記内端部(21a)よりもタイヤ幅方向外側に位置し、
複数の前記らせん巻ベルト層(20)のうち、タイヤ径方向において最も外側に位置する最外側層(25)は、タイヤ幅方向において前記タイヤ赤道面(CL)に対して前記一方の側に配置され、
前記最外側層(25)のタイヤ幅方向における端部(25a,25b)のうち、タイヤ幅方向において内側の内端部(25a)は、前記タイヤ赤道面(CL)から所定の間隔のWs を存して位置され、
前記最外側層(25)の前記端部(25a,25b)のうち、タイヤ幅方向における外側の外端部(25b)は、前記最外側層(25)の前記内端部(25a)よりもタイヤ幅方向外側に位置し、
前記らせん巻ベルト層(20)は、前記タイヤ赤道面(CL)に対して他方の側において、前記らせん巻ベルト層(20)の幅方向における端縁(20a)において折り返し、前記タイヤ赤道面(CL)までいかずに折り返し、タイヤ幅方向における端縁(20a)において折り返す部分を有することを特徴とする航空機用空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記N95と、前記N50とが、
95=N50+1
の関係を満たすことを特徴とする請求項1に記載の航空機用空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記ベルト層(10)の前記最大ベルト幅(Wb)と、前記Ws と、前記Ws と、が、
0.7 ≦ Ws /(Wb/2) ≦ 0.9
0.7 ≦ Ws /(Wb/2) ≦ 0.9
の関係を満たすことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の航空機用空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、航空機用空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
近年環境意識の高まりにより、航空機の燃費低減が強く求められており、航空機の燃費低減にはタイヤの軽量化が非常に有効である。航空機用タイヤのトレッド部を補強するためにトレッド部の周方向に設けられるベルト層は、有機繊維からなるベルトが多く積層して作られており、このベルト層の積層数を減らすことがタイヤの軽量化に非常に効果的である。
【0003】
このような軽量化を目的とした従来の航空機用空気入りタイヤとして、タイヤの幅方向におけるタイヤ中央域からタイヤ側部域に向けて、ベルト層の積層数が漸減されているものが知られている(特許文献1参照)。
【0004】
しかしながら、ベルト層の積層数を減らすとベルトの剛性が低下して、ベルトコードに入る引張・圧縮の歪が大きくなる。航空機の離発着を重ねると、ベルトコードに引張・圧縮歪による疲労が蓄積してベルトコードの強度が低下する。特にタイヤ側部域のベルトの幅方向における端部には、大きな圧縮・引張歪が入り、ベルトコードの強度の低下が大きく、タイヤの耐久性に影響を与えていた。
【0005】
タイヤの側部域は、タイヤ中央域と対比するとベルトの周長が短いが、接地される領域においては、タイヤ中央域における径と略同じ径になるようベルトが延ばされ、大きな引張歪が入る。その反動で、接地の前後ではベルトが圧縮される。また、航空機の離発着時におけるタイヤの高速走行時では、サイドウォール部に大きな遠心力が働き、このサイドウォール部の遠心力をベルトのタイヤ側部域で受けるため、ベルトのタイヤ側部域には大きな引張入力が入る。
【0006】
上記したように、タイヤの軽量化と、ベルトコードの耐疲労性能の向上、特にベルトの幅方向端部における耐疲労性能向上によるタイヤの耐久性向上との両立が課題となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特許第5961349号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、航空機用空気入りタイヤの軽量化と、ベルトの耐疲労性能の向上によるタイヤの耐久性向上の両立を図ることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、前記目的を達成するために、一対のビードコアと、
両前記ビードコア間にトロイダル状に延びるカーカスプライを一枚以上具備したラジアルカーカスと、
前記ラジアルカーカスのクラウン域の外周側に配設され、前記ラジアルカーカスを補強するベルト層と、を有した航空機用空気入りタイヤにおいて、
前記ベルト層は、
有機繊維からなる第1のベルトコードがゴムで被覆されたリボン状の第1のストリップ材が、らせん巻にされた構造であり、規定の複数の層が数重ねられたらせん巻ベルト層と、
有機繊維からなる第2のベルトコードがゴムで被覆されたリボン状の第2のストリップ材が、前記らせん巻ベルト層の外周側に幅方向端部で折り返されてジグザグ状に屈曲しながら、円周方向に延在して巻かれた構造であり、規定の複数の層が重ねられたジグザグベルト層と、を備え、
前記らせん巻ベルト層の前記第1のベルトコードは、タイヤ赤道面に対して5°以下の角度で延在し、
前記ジグザグベルト層の前記第2のベルトコードは、前記ジグザグベルト層の各幅方向端縁で折り返される折り返し点まで、前記タイヤ赤道面に対して2°~45°の角度で傾斜して延在し、
前記タイヤ赤道面から、前記ベルト層の最大ベルト幅の半分の長さの50%の距離における、前記らせん巻ベルト層のベルト積層数のN50と、
前記タイヤ赤道面から、前記最大ベルトは幅の半分の長さの95%の距離における、前記らせん巻ベルト層のベルト積層数のN95と、が、
95>N50
の関係を満たし、
複数の前記らせん巻ベルト層のうち、タイヤ径方向において最も内側に位置する最内側層は、タイヤ幅方向において前記タイヤ赤道面に対して一方の側に配置され、
前記最内側層のタイヤ幅方向における端部のうち、タイヤ幅方向において内側の内端部は、前記タイヤ赤道面から所定の間隔のWs を存して位置し、
前記最内側層の前記端部のうち、タイヤ幅方向において外側の外端部は、前記最内側層の前記内端部よりもタイヤ幅方向外側に位置し、
複数の前記らせん巻ベルト層のうち、タイヤ径方向において最も外側に位置する最外側層は、タイヤ幅方向において前記タイヤ赤道面に対して前記一方の側に配置され、
前記最外側層のタイヤ幅方向における端部のうち、タイヤ幅方向において内側の内端部は、前記タイヤ赤道面から所定の間隔のWs を存して位置され、
前記最外側層の前記端部(25a,25b)のうち、タイヤ幅方向における外側の外端部は、前記最外側層の前記内端部よりもタイヤ幅方向外側に位置し、
前記らせん巻ベルト層は、前記タイヤ赤道面に対して他方の側において、前記らせん巻ベルト層の幅方向における端縁において折り返し、前記タイヤ赤道面までいかずに折り返し、タイヤ幅方向における端縁において折り返す部分を有することを特徴とする航空機用空気入りタイヤである。
【0010】
本発明は前記したように構成されており、タイヤ赤道面から、ベルト層の最大ベルト幅の半分の長さの50%の距離におけるらせん巻ベルト層のベルト積層数のN50と、タイヤ赤道面から、最大ベルト幅の半分の長さの95%の距離におけるらせん巻ベルト層のベルト積層数のN95と、が、N95>N50の関係を満たしている。
このようにらせん巻ベルト層は、タイヤ赤道面からベルト層の最大ベルト幅Wbの半分の長さの50%の距離におけるタイヤ赤道面に近いタイヤ中央域よりも、タイヤ赤道面から最大ベルト幅Wbの半分の長さの95%の距離におけるタイヤ赤道面から遠いタイヤ側部域において、ベルト積層数が多くなっているので、タイヤ中央域においてベルト層の積層数を少なくすることでタイヤ全体の軽量化を図るとともに、タイヤ側部域においてベルト層の積層数を多くすることで、ベルトのタイヤ側部域における引張・圧縮歪を抑制し、ベルトコードの疲労を改善してベルトの耐疲労性能を向上させ、タイヤ全体の耐久性の向上を図ることができる。
【0011】
前記構成において、前記N95と、前記N50とが、
95=N50+1
の関係を満たすようにしてもよい。
【0012】
らせん巻ベルト層は、タイヤ赤道面からベルト最大幅の半分の長さの50%の距離におけるタイヤ赤道面に近いタイヤ中央域よりも、タイヤ赤道面からベルト最大幅の半分の長さの95%の距離におけるタイヤ赤道面から遠いタイヤ側部域においてベルト積層数が1層多くなっているので、タイヤ中央域においてベルト層の積層数を少なくすることでタイヤ全体の軽量化を図るとともに、タイヤ側部域においてベルト層の積層数を多くすることで、ベルト層のタイヤ側部域における引張・圧縮歪を抑制し、ベルトコードの疲労を改善して耐疲労性能を向上させ、タイヤ全体の耐久性の向上を図ることができる。さらに、タイヤ中央域よりもタイヤ側部域においてベルト層の積層数が1層多くされているので、第1のストリップ材をらせん状に連続的に巻くことが容易になる。
【0013】
前記構成において、複数のらせん巻ベルト層のうち、タイヤ径方向において最も内側に位置する最内側層を、タイヤ幅方向において前記タイヤ赤道面に対して一方の側に配置し、前記最内側層のタイヤ幅方向における端部のうち、タイヤ幅方向において内側の内端部は、前記タイヤ赤道面から所定の間隔Wsを存して位置させ、前記最内側層の前記端部のうち、タイヤ幅方向において外側の外端部を、前記最内側層の前記内端部よりもタイヤ幅方向外側に位置し、複数の前記らせん巻ベルト層のうち、タイヤ径方向において最も外側に位置する最外側層は、タイヤ幅方向において前記タイヤ赤道面に対して一方または他方の側に配置し、前記最外側層のタイヤ幅方向における端部のうち、タイヤ幅方向において内側の内端部は、前記タイヤ赤道面から所定の間隔Wsを存して位置させ、前記最外側層の前記端部のうち、タイヤ幅方向における外側の外端部は、前記最外側層の前記内端部よりもタイヤ幅方向外側に位置するようにしてもよい。
【0014】
前記構成によって、らせん巻ベルト層のタイヤ中央域におけるベルト層の層数を少なくしてタイヤの軽量化を図るとともに、らせん巻ベルト層のタイヤ側域におけるベルト層の数をタイヤ中央域より多くすることによって、ベルトコードの疲労を改善して、ベルトの耐疲労性能を向上させて、タイヤ全体の耐久性を向上することができる。
【0015】
前記ベルト層の前記最大ベルト幅Wbと、前記Wsと、前記Wsと、が、
0.7 ≦ Ws/(Wb/2) ≦ 0.9
0.7 ≦ Ws/(Wb/2) ≦ 0.9
の関係を満たすようにしてもよい。
【0016】
前記構成したように構成されているので、タイヤ赤道面から、ベルト層の最大ベルト幅Wbの半分の70%~90%までの領域のタイヤ中央域のタイヤ幅方向における広い範囲においてらせん巻ベルト層の積層枚数を少なくして、タイヤをより軽量化することができるとともに、タイヤ赤道面から、ベルト層の最大ベルト幅Wbの半分の70%~90%より外側の領域において、らせん巻ベルト層の積層枚数をタイヤ中央領域より増加することにより、らせん巻ベルト層のタイヤ側部領域の引張・圧縮歪を十分に抑制して、ベルトコードの疲労を改善して、タイヤ全体の耐久性を向上することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の航空機用空気入りは、タイヤの軽量化を図るとともに、ベルトコードの疲労を改善してベルトの耐疲労性能の向上を図り、タイヤ全体の耐久性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の第1の実施の形態の航空機用空気入りタイヤが規定のリムに組み込まれ規定内圧にされた状態における幅方向断面図である。
図2図1の航空機用空気入りタイヤの一側方の要部拡大幅方向断面図である。
図3図1の航空機用空気入りタイヤの他方側の要部拡大幅方向断面図である。
図4】らせん巻ベルト層の形成例を示す部分展開図である。
図5】ジグザグベルト層の形成例を示す部分展開図である。
図6】従来例1の航空機用空気入りタイヤのらせん巻ベルト層の巻き方を示した模式図である。
図7】従来例2の航空機用空気入りタイヤのらせん巻ベルト層の巻き方を示した模式図である。
図8】本実施の形態の航空機用空気入りタイヤのらせん巻ベルト層の巻き方を示した模式図である。
図9】本発明の他の実施形態の航空機用空気入りタイヤのらせん巻ベルト層の巻き方を示した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明に係る航空機用空気入りタイヤ1の第1の実施の形態を図1ないし図5および図8に基づいて説明する。図1には、本発明の第1の実施の形態の航空機用空気入りタイヤ1(以下タイヤ1という)のタイヤ幅方向の断面図を示している。タイヤ1は適用リム40に組付けられている。
【0020】
図中、符号CLはタイヤ幅方向中心に相当し、タイヤ回転軸に垂直な平面であるタイヤ赤道面を示す。タイヤ幅方向とはタイヤ回転軸に平行な方向であり、タイヤ径方向とはタイヤ回転軸に垂直に、タイヤ回転軸に近づく方向または遠ざかる方向をいう。
【0021】
タイヤ1は、左右一対のリング状のビードコア6を埋設したビード部5と、一対のビードコア6間をトロイダル状に延びて架設されるラジアルカーカス7と、該ラジアルカーカス7の径方向外側に周接されるベルト層10と、該ベルト層10の外周面にドレッドゴム38が周接されたトレッド部3と、タイヤ1のサイド部分を覆うサイドウォール部4とを備えている。
【0022】
ラジアルカーカス7は、一枚以上のカーカスプライ7aが重ねられたものであって、例えば4~7枚のカーカスプライ7aが重ねられてその両端部が、ビードコア6の周囲に半径方向内側から外側に巻き上げられて固定されている。本実施の形態のタイヤ1では、ナイロンコードからなるカーカスプライ7aが7層重ねられている。
【0023】
ラジアルカーカス7のクラウン域7bのタイヤ径方向外側には、ベルト層10が設けられている。ベルト層10は、ラジアルカーカス7の外周面に巻き付けられるらせん巻ベルト層20と、らせん巻ベルト層20の外周に重ねられるジグザグベルト層30と、ジグザグベルト層の外周に巻き付けられる保護ベルト層37とを備えている。保護ベルト層37の外周面にトレッドゴム38が貼り付けられてトレッド部3とされる。ベルト層10の幅方向における最大ベルト幅をWbとし、幅方向におけるベルト層10の両縁を幅方向端縁10aと定義する。
【0024】
らせん巻ベルト層20と、ジグザグベルト層30は、図4および図5に示されるように、それぞれリボン状の第1のストリップ材としてのらせん巻用ストリップ26、第2のストリップ材としてのジグザグ巻用ストリップ36が所定の巻き方で巻かれたものである。らせん巻用ストリップ26,ジグザグ巻用ストリップ36は、有機繊維製のベルトコード26a,36aが1本又は複数本引き揃えられたものがゴムによって被覆され、所定幅にリボン状に形成されたものである。
【0025】
らせん巻用ストリップ26,ジグザグ巻用ストリップ36に使用する有機繊維製のベルトコード26a,36aは、本実施の形態では、アラミドのような芳香族ポリアミドによる有機繊維コードが使用されている。または、アラミドのような芳香族ポリアミドと、ナイロンのような脂肪族ポリアミドとの組み合わせで作製されるハイブリッド繊維コードを用いることもできる。
【0026】
脂肪族ポリアミド繊維と芳香族ポリアミド繊維とのハイブリッドコードとしては、脂肪族ポリアミド繊維からなるヤーンと芳香族ポリアミド繊維からなるヤーンとを撚り合わせたものでもよく、予め脂肪族ポリアミド繊維と芳香族ポリアミド繊維を複合化したヤーンに撚りを加えたものでもよい。
【0027】
本実施の形態のタイヤ1のらせん巻ベルト層20は、図1ないし図4および図8に示されるように、生タイヤのラジアルカーカス7のクラウン域7bに、らせん巻用ストリップ26が、タイヤ周方向にヘリカル状に、隣接するらせん巻用ストリップ26との間に隙間を生じないように、タイヤ幅周方向に所定する量ずれて巻かれて形成される。らせん巻用ストリップ26は、そのベルトコード26aの角度が、タイヤの赤道面CLに対して5°以下になるように、巻き付けられている。
【0028】
らせん巻用ストリップ26は、ラジアルカーカス7のクラウン域7bに巻き始める際に、ベルト層10のタイヤ幅方向における幅方向端縁10aの位置から開始せずに、図1に示されるように、タイヤ赤道面CLから所定の間隔のWsを存して開始される。らせん巻ベルト層20はタイヤ幅方向において、予め幅方向端縁20aの位置が定められており、この幅方向端縁20aに向けてらせん状に巻かれていき、タイヤ径方向おける最も内側に位置する最内側層としての第1層21が設けられる。
【0029】
らせん巻用ストリップ26は、図2および図4に示されるように、らせん巻ベルト層20の幅方向端縁20aまで巻かれると折り返されて、第1層21の外周面に巻始められ、他方の幅方向端縁20aに向かって巻き付けられ、順次折り返されて重ねられ、らせん巻ベルト層20の第2層22、第3層23、第4層24、第5層25が積層されていく。らせん巻ベルト層20は、本実施の形態では、タイヤ径方向おける内側から、第1層21、第2層22、第3層23、第4層24、第5層25の5層によって構成されている。本実施の形態では5層構造となっているが、その層数は適宜変更することができる。
【0030】
タイヤ径方向における最も外側に位置する最外側層としての第5層25においては、図1および図4に示されるように、らせん巻用ストリップ26が、タイヤ赤道面CLに対して第1層21が設けられた一方の側とは反対側の他方の側の幅方向端縁20aから、タイヤ赤道面CLに向かって巻き付けられ、タイヤ赤道面CLから所定の間隔Wsを存した位置において巻き終える。
【0031】
Ws1,Wsは、少なくともベルト層10の最大ベルト幅Wbの半分の長さの50%よりも長く設定されている。すなわち図1に示されるように、第1層21および第5層25は、タイヤ赤道面CLからベルト層10の幅方向端縁10aの半分より、幅方向外側に位置するように設けられている。
【0032】
より好適には、Ws,Wsは、最大ベルト幅Wbの半分の長さの、70%以上90%以下であり、
0.7 ≦ Ws/(Wb/2) ≦ 0.9
0.7 ≦ Ws/(Wb/2) ≦ 0.9
を満たす関係である。すなわち第1層21の内端部21aと、第5層25の内端部25aは、タイヤ赤道面CLから、最大ベルト幅Wbの半分の長さの70%以上90%以下の位置になるように、らせん巻用ストリップ26が巻かれて、らせん巻ベルト層20が設けられる。
【0033】
らせん巻ベルト層20は、前記したようにらせん巻用ストリップ26が巻かれて作られているので、図2および図3に示されるように、第1層21の内端部21aより幅方向外側、およぎ第5層25の内端部25aより幅方向外側の、タイヤ側部域において4層になっており、第1層21の内端部21aと第5層25の内端部25aとの間のタイヤ中央域は3層となっている。
【0034】
このように構成されているので、タイヤ赤道面CLから、ベルト層10の最大ベルト幅Wbの半分の長さの50%の距離における、前記らせん巻ベルト層20のベルト積層数のN50と、タイヤ赤道面CLから、最大ベルト幅Wbの半分の長さの95%の距離における、前記らせん巻ベルト層(20)のベルト積層数のN95と、が、
95>N50
を満たす関係となっている。
【0035】
さらに本実施の形態におけるらせん巻ベルト層20は、
95=N50+1
を満たす関係となっている。
【0036】
ジグザグベルト層30は、らせん巻ベルト層20の外側に、図5に示されるように、有機繊維製のベルトコード36aが1本又は複数本引き揃えられてゴム被覆された所定幅のリボン状のジグザグ巻用ストリップ36が所定の方法で巻き付けられて構成される。ベルトコード36aはその材質として、アラミドが用いられている。本実施の形態では、アラミドが用いられているが、ジグザグ巻用ストリップ36は、所定されたジグザグベルト層30の幅方向端縁30aで折り返されて、ジグザグ状に屈曲しながら円周方向に延在して、複数の層が規定数重ねられており、本実施の形態では4層重ねられている。ジグザグ巻用ストリップ36は、隣接するジグザグ巻用ストリップ36との間に隙間を生じないように周方向に所望の量ずれて巻かれている。
【0037】
このようにしてラジアルカーカス7のクラウン域7bの周方向外側に、らせん巻ベルト層20、ジグザグベルト層30、保護ベルト層37が巻き付け、その外周面にトレッドゴム38を巻き付けた状態になるよう生タイヤを作製した後、この生タイヤを加硫成型することで、本実施形態のタイヤ1が得られる。
【0038】
本実施の形態のタイヤ1におけるらせん巻ベルト層20は、前記したように構成されているので、タイヤ中央域においては、らせん巻ベルト層20の積層数を少なくしてタイヤの軽量化を図ることが可能となり、タイヤ側部域では、らせん巻ベルト層20の積層数を多くしてベルトコード26aの耐疲労性能を向上させ、タイヤ1の耐久性を向上させることができる。
【0039】
さらに、N95と、N50と、が、N95=N50+1 の関係を満たすようにされているので、らせん巻用ストリップ26を連続的に巻くことが容易にできる。
【0040】
また、Ws,Wsは、
0.7 ≦ Ws/(Wb/2) ≦ 0.9
0.7 ≦ Ws/(Wb/2) ≦ 0.9
の関係を満たす関係に設定されており、すなわち、Ws,Wsは、最大ベルト幅Wbの半分の長さの、70%以上90%以下の長さの間に設定されているので、第1層21の内端部21aおよび第2層25の内端部25aが、タイヤ赤道面CLから最大ベルト幅Wbの半分の70%の位置から外側にあるので、らせん巻ベルト層20をより軽量化することができ、タイヤ全体の軽量化を十分に図ることができるとともに、タイヤ赤道面CLから最大ベルト幅Wbの半分の90%の位置から内側にあるので、ベルト層10の積層枚数が大きい領域を十分に確保することができて、らせん巻ベルト層20のタイヤ側部領域の引張・圧縮歪を十分に抑制して、ベルトコード26aの疲労を改善して、タイヤ1全体の耐久性を向上することができる。
【実施例
【0041】
以上のような構成を有し、サイズが52×21.OR22のタイヤであって、表1に諸元を示す従来例1、従来例2および実施例1ないし実施例5のタイヤ、ならびに、表3に諸元を示す従来例3、従来例4および実施例6ないし実施例10の各タイヤについて、タイヤ質量、ドラム走行後のベルトコードの強力について求めたところ、表2および表4に指数で示す結果を得た。
【0042】
表1および表3に示すタイヤは、いずれも、ナイロンコードからなる7層のカーカスプライ7aが重ねられたラジアルカーカス7と、らせん巻ベルト層20およびジグザグベルト層30を有するベルト層10と、を備えている。表1に示すタイヤは、らせん巻用ストリップ26およびジグザグ巻用ストリップ36のベルトコード材質としてアラミドが用いられている。表3に示すタイヤは、らせん巻用ストリップ26およびジグザグ巻用ストリップ36のベルトコード材質としてアラミドとナイロンとからなるハイブリットコードが用いられている。
【0043】
【表1】
【0044】
【表2】
【0045】
【表3】
【0046】
【表4】
【0047】
らせん巻ベルト層20の層数は、それぞれ、タイヤ赤道面CLからベルト層10の最大ベルト幅Wbの半分の50%位置、タイヤ赤道面CLからベルト層10の最大ベルト幅Wbの半分の95%位置において計測した。
【0048】
リボン巻き始め位置は、タイヤ赤道面CLかららせん巻ベルト層20の第1層21の内端部21aまでの距離Wsを、タイヤ赤道面CLからベルト層10の最大ベルト幅Wbの半分の長さで除した割合で示した。
【0049】
各種タイヤにおけるらせん巻ベルト層20のらせん巻用ストリップ26の巻き方については、第1、第2、第3、第4のいずれかが選択的に示されている。第1ないし第4の巻き方は、それぞれ第6図ないし第9図に模式的に示されている。これらの巻模式図では、左右方向をタイヤ幅方向とし、上に行くに従いタイヤ径方向外側になるように示されている。
【0050】
第1の巻き方は、図6に示されるように、らせん巻ベルト層20の側部域から中央域にいくに従い、らせん巻ベルト層20の層数が漸増している巻き方である。第2の巻き方は、図7に示されるように、らせん巻ベルト層20の層数は、タイヤ中央域の方がタイヤ側部域よりも多い巻き方である。第3の巻き方は、本発明の実施形態のタイヤ1における巻き方であって、図8に示されるように、らせん巻ベルト層20の層数は、タイヤ側域部の方がタイヤ中央域より多い巻き方である。第4の巻き方は、第9図に示されるように、らせん巻用ストリップ26を、最内側層の第1層として、タイヤの幅方向における一側のタイヤ赤道面CLからWsの距離の位置から巻始め、らせん巻ベルト層20の幅方向端縁20aで折り返し、第2層を重ねていく。さらに、タイヤの幅方向における他側において、らせん巻ベルト層20の幅方向端縁20aまで巻いたのち折り返し、第3層および第4層は他側においてタイヤ赤道面CLまでいかずに折り返して再び幅方向端縁20aまで巻いたのち折り返す。第5層ないし第7層では、幅方向端縁20aまで巻いて折り返し、第8層は、タイヤ赤道面CLからWsの距離で巻き終わる。
【0051】
タイヤ質量については、各種類につきそれぞれタイヤを10本試作し、得られた各タイヤの質量を計測して10本の質量の平均値を求める試験を行った。試験結果は、従来例2および実施例1~実施例5は、従来例1のタイヤの質量を100とした指数で表して比較した。従来例4および実施例6~実施例10は、従来例3のタイヤの質量を100とした指数で表して比較した。この指数が小さい程、タイヤ重量は軽くて、タイヤが高性能であることを示している。数値が大きい程重量が増加し、数値が小さい程、重量が減少してタイヤの軽量化が図れたことを示している。
【0052】
ドラム走行後のベルトコード強力については、以下のように計測した。各タイヤを規定リムに取り付け、規定内圧に充填して、ドラム試験を行った。市場を模擬した荷重、速度で、一定距離だけドラム走行させた後に、タイヤを解剖してらせん巻ベルト層のベルトコードを取り出して強力を測定して評価した。試験結果は、従来例2および実施例1~実施例5は、従来例1のタイヤから取り出したコードの強力を100とした指数で表して比較した。従来例4および実施例6~実施例10は、従来例3のタイヤから取り出したコードの強力を100とした指数で表して比較した。この指数が大きい程、ベルトコードの疲労が小さく耐疲労性能がよく、タイヤの耐久性が高いことを示している。
【0053】
本発明の実施例1ないし実施例5では、らせん巻ベルト層20のらせん巻用ストリップ26の巻き方は、図8に示されるような第3の巻き方で巻かれていたが、本発明の他の実施例としてこのように構成されているので、らせん巻ベルト層10のタイヤ側部域の積層数を多くし、タイヤ中央域の積層数を少なくし、タイヤの軽量化を図りつつ、ベルトコードの耐疲労性を向上させて、タイヤの耐久性が向上する。
【0054】
以上、本発明の実施形態につき説明したが、本発明の態様が上記実施形態に限定されず、本発明の要旨の範囲で、多様な態様で実施されるものを含むことは勿論である。
【符号の説明】
【0055】
1…航空機用空気入りタイヤ、3…トレッド部、4…サイドウォール部、5…ビード部、6…ビードコア、7…ラジアルカーカス、7a…カーカスプライ、7b…クラウン域、
10…ベルト層、10a…幅方向端縁、20…らせん巻ベルト層、21…第1層、21a…内端部、21b…外端部、22…第2層、23…第3層、24…第4層、25…第5層、25a…内端部、25b…外端部、26…らせん巻用ストリップ、26a…ベルトコード
30…ジグザグベルト層、31…第1層、32…第2層、33…第3層、34…第4層、36…ジグザグ巻用ストリップ、36a…ベルトコード、37…保護ベルト層、38…トレッドゴム、40…適用リム。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9