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  • 特許-加飾成形品及びその製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-31
(45)【発行日】2022-09-08
(54)【発明の名称】加飾成形品及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/14 20060101AFI20220901BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20220901BHJP
   B60R 13/02 20060101ALI20220901BHJP
【FI】
B29C45/14
B32B27/00 E
B60R13/02 B
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019000790
(22)【出願日】2019-01-07
(65)【公開番号】P2020108943
(43)【公開日】2020-07-16
【審査請求日】2021-09-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000229955
【氏名又は名称】日本プラスト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092565
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100112449
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100062764
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 襄
(72)【発明者】
【氏名】藤田 直洋
【審査官】関口 貴夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-117939(JP,A)
【文献】特開2016-182780(JP,A)
【文献】特開2015-150951(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/00-45/84
B32B 27/00
B60R 13/02
B32B 5/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
装飾面を構成する装飾層、弾性層、及び、これら装飾層及び弾性層よりも硬質の基材層がこの順で積層されるとともに、前記装飾層から前記基材層に亘り縫製部が形成された加飾成形品であって、
前記装飾層と前記弾性層との間に、少なくとも前記縫製部が配置された範囲に対応して、前記装飾層及び前記弾性層よりも硬質の中間層を備える
ことを特徴とする加飾成形品。
【請求項2】
中間層は、ポリウレア樹脂により形成されている
ことを特徴とする請求項1記載の加飾成形品。
【請求項3】
縫製部は、装飾面に一部が位置する第一縫製糸、及び、基材層に一部が位置する第二縫製糸を備え、
前記第一縫製糸は、前記縫製部の縫製用のミシンの下糸である
ことを特徴とする請求項1または2記載の加飾成形品。
【請求項4】
車両用の内装部材である
ことを特徴とする請求項1ないし3いずれか一記載の加飾成形品。
【請求項5】
装飾面を構成する装飾層、中間層、弾性層、及び、基材層がこの順で積層されるとともに、縫製部が形成され、前記基材層が、前記装飾層及び前記弾性層よりも硬質で、前記中間層が前記装飾層及び前記弾性層よりも硬質である加飾成形品の製造方法であって、
一及び他の成形型を用い、
前記一の成形型に対して、前記装飾層を形成し、
前記一の成形型に対して、前記装飾層に重ねて前記中間層を形成し、
前記他の成形型に対して、前記基材層を配置し、
前記一の成形型と前記他の成形型とを型閉じして、前記弾性層を前記装飾層、前記中間層、及び、前記基材層と一体的に射出成形して中間体を形成し、
前記中間体を前記一の成形型及び前記他の成形型から脱型し、
前記中間体の少なくとも前記中間層が配置された範囲に対応して前記装飾層から前記基材層に亘り前記縫製部を形成する
ことを特徴とする加飾成形品の製造方法。
【請求項6】
縫製部を形成する際、ミシンを用い、中間体の装飾層を下側、基材層を上側として縫製する
ことを特徴とする請求項5記載の加飾成形品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、装飾層から基材層に亘り縫製部を備える加飾成形品及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車などの車両の車室内に用いられる合成樹脂製などの内装材として、美観の向上を目的として、基材の表面に皮革や合成樹脂などからなる表皮体を備えるものがある。この表皮体には、重厚感を強調するために、ステッチ加飾を施すことがある。表皮体は、強度があり、厚みも小さいことから、ミシンを用いて縫製しても、針孔が避けたり糸が沈み込んだりしにくい一方で、クッション感に乏しい。そのため、発泡ウレタンなどにより表皮体と基材との間に発泡層を形成することで、触感を向上したものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-13659号公報 (第6-9頁、図1-3)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、発泡ウレタンは柔らかく、強度が低いため、ミシンによるステッチ縫製の際に糸の沈み込みや針孔の裂け、ピッチのばらつきなどが生じやすく、見栄えを向上し商品性を確保するためのさらなる対策が必要になる。
【0005】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、触感を確保しつつ、縫製部の見栄えを向上できる加飾成形品及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の加飾成形品は、装飾面を構成する装飾層、弾性層、及び、これら装飾層及び弾性層よりも硬質の基材層がこの順で積層されるとともに、前記装飾層から前記基材層に亘り縫製部が形成された加飾成形品であって、前記装飾層と前記弾性層との間に、少なくとも前記縫製部が配置された範囲に対応して、前記装飾層及び前記弾性層よりも硬質の中間層を備えるものである。
【0007】
請求項2記載の加飾成形品は、請求項1記載の加飾成形品において、中間層は、ポリウレア樹脂により形成されているものである。
【0008】
請求項3記載の加飾成形品は、請求項1または2記載の加飾成形品において、縫製部は、装飾面に一部が位置する第一縫製糸、及び、基材層に一部が位置する第二縫製糸を備え、前記第一縫製糸は、前記縫製部の縫製用のミシンの下糸であるものである。
【0009】
請求項4記載の加飾成形品は、請求項1ないし3いずれか一記載の加飾成形品が、車両用の内装部材であるものである。
【0010】
請求項5記載の加飾成形品の製造方法は、装飾面を構成する装飾層、中間層、弾性層、及び、基材層がこの順で積層されるとともに、縫製部が形成され、前記基材層が、前記装飾層及び前記弾性層よりも硬質で、前記中間層が前記装飾層及び前記弾性層よりも硬質である加飾成形品の製造方法であって、一及び他の成形型を用い、前記一の成形型に対して、前記装飾層を形成し、前記一の成形型に対して、前記装飾層に重ねて前記中間層を形成し、前記他の成形型に対して、前記基材層を配置し、前記一の成形型と前記他の成形型とを型閉じして、前記弾性層を前記装飾層、前記中間層、及び、前記基材層と一体的に射出成形して中間体を形成し、前記中間体を前記一の成形型及び前記他の成形型から脱型し、前記中間体の少なくとも前記中間層が配置された範囲に対応して前記装飾層から前記基材層に亘り前記縫製部を形成するものである。
【0011】
請求項6記載の加飾成形品の製造方法は、請求項5記載の加飾成形品の製造方法において、縫製部を形成する際、ミシンを用い、中間体の装飾層を下側、基材層を上側として縫製するものである。
【発明の効果】
【0012】
請求項1記載の加飾成形品によれば、装飾層と弾性層との間に、少なくとも縫製部が配置された範囲に対応して、装飾層及び弾性層よりも硬質の中間層を形成することで、弾性層により触感を確保しつつ、縫製部を形成する際の強度を中間層により確保し、見栄えを向上することが可能となる。
【0013】
請求項2記載の加飾成形品によれば、請求項1記載の加飾成形品の効果に加えて、中間層を、ポリウレア樹脂により形成することで、適切な強度の中間層を安価に製造できる。
【0014】
請求項3記載の加飾成形品によれば、請求項1または2記載の加飾成形品の効果に加えて、縫製部を形成する際、ミシンを用い、ミシンの下糸が第一縫製糸、ミシンの上糸が第二縫製糸となるように、装飾層を下側、基材層を上側として縫製することで、加飾成形品が曲面部分を備える形状であっても縫製部を形成可能となる。
【0015】
請求項4記載の加飾成形品によれば、請求項1ないし3いずれか一記載の加飾成形品の効果に加えて、加飾成形品を車両用の内装部材として用いることで、触感が良好で、縫製部の見栄えに優れた車両の内装を安価に実現可能となる。
【0016】
請求項5記載の加飾成形品の製造方法によれば、一及び他の成形型を用い、装飾層及び中間層を一の成形型に重ねて形成し、他の成形型に基材層を配置して、これら一の成形型と他の成形型とを型閉じして、弾性層を装飾層、中間層、及び、基材層と一体的に射出成形して中間体を形成することで、加工工数を最小限に抑制できるため、見栄えを向上した加飾成形品を工法的に安価に製造可能となる。
【0017】
請求項6記載の加飾成形品の製造方法によれば、請求項5記載の加飾成形品の製造方法の効果に加えて、縫製部を形成する際、ミシンを用い、中間体の装飾層を下側、基材層を上側として縫製することで、加飾成形品が曲面部分を備える形状であっても縫製部を形成可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施の形態の加飾成形品を示す一部の断面図である。
図2】同上加飾成形品の正面図である。
図3】(a)は同上加飾成形品の製造方法の離型剤塗布工程を模式的に示す説明図、(b)は(a)に続く装飾層形成工程を模式的に示す説明図、(c)は(b)に続く中間層形成工程を模式的に示す説明図、(d)は(c)に続く基材層配置工程を模式的に示す説明図、(e)は(d)に続く型閉じ工程を模式的に示す説明図、(f)は(e)に続く射出工程を模式的に示す説明図、(g)は(f)に続く脱型工程を模式的に示す説明図である。
図4】同上加飾成形品の製造方法の縫製工程を模式的に示す説明図である。
図5】(a)は同上加飾成形品の一部を拡大して示す正面図、(b)は加飾成形品の比較例の一部を拡大して示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一実施の形態の構成について、図面を参照して説明する。
【0020】
図1及び図2において、10は加飾成形品を示す。加飾成形品10は、例えば自動車などの車両に用いられるコンソールリッドなどの車両用の内装部材である。加飾成形品10は、基材層14と、弾性層15と、中間層16と、装飾面を構成する装飾層である表皮部17とが順次積層されて形成されている。また、加飾成形品10は、表皮部17から基材層14に亘り縫製部18が形成されている。そして、加飾成形品10は、任意の形状としてよいが、例えば本実施の形態では、互いに交差する方向に沿って面方向を有する一及び他の面部20,21と、これら一及び他の面部20,21を連結する連結部22とが形成されている。
【0021】
基材層14は、表皮部17及び弾性層15よりも硬質に設定されている。基材層14は、例えばオレフィン系エラストマ(TPO)やポリプロピレン(PP)などの、所定の硬質の合成樹脂により所定の厚みに形成されている。なお、基材層14の表面には、弾性層15との密着性を向上するために、フレーム処理などにより形成された処理層25が形成されていてもよい。
【0022】
弾性層15は、弾性を有する合成樹脂により形成されている。本実施の形態において、弾性層15は、例えば軟質の発泡ウレタンにより形成された発泡層である。弾性層15は、例えばショアC硬さで45~60程度の所定の硬さに形成されている。また、弾性層15は、例えば7~10mm程度の所定の厚みに設定されている。発泡ウレタンは、例えば密度が0.1~0.2g/cm程度の所定の密度のものが用いられる。また、発泡ウレタンは、0.4~0.55程度の所定の比重のものが用いられる。
【0023】
中間層16は、表皮部17及び弾性層15よりも硬質に設定されている。また、中間層16は、基材層14よりも軟質に設定されている。中間層16は、例えばポリウレア樹脂により形成された補強層である。本実施の形態では、中間層16は、NUKOTE COATING SYSTEMS社製のNUKOTEポリウレアLP(商品名)が用いられる。中間層16は、表皮部17の背面側に積層されている。つまり、中間層16は、弾性層15と表皮部17との間に積層されている。中間層16は、少なくとも縫製部18が形成される範囲に対応して形成されている。中間層16は、例えば250μm程度の所定の厚みに設定されている。つまり、中間層16は、弾性層15よりも厚みが小さく設定されている。
【0024】
表皮部17は、例えばインモールドコート法などにより形成された所定の厚みのコーティング部である。表皮部17は、例えば大日本塗料株式会社製のエピコートンX100(商品名)が用いられる。また、表皮部17は、例えば20μm程度の所定の厚みに設定されている。つまり、表皮部17は、中間層16よりも厚みが小さく設定されている。
【0025】
縫製部18は、表皮部17から基材層14に亘り穿設された穴部である針孔27に第一縫製糸28と第二縫製糸29とが配置されて形成されている。縫製部18は、本実施の形態において、連結部22の近傍の位置に、この連結部22に沿う所定方向に沿って配置されている。針孔27は、所定方向に沿って所定ピッチで等間隔又は略等間隔で離れて形成されている。針孔27は、表皮部17から基材層14に亘り貫通して形成されている。また、第一縫製糸28は、表皮部17の表面である装飾面において、隣接する針孔27,27間に一部が直線状に架け渡されて位置して所定方向に沿うステッチ部を構成しており、残りの他部が針孔27内に挿入されて位置している。第二縫製糸29は、基材層14において、一部が隣接する針孔27,27間に架け渡されて位置し、残りの他部が針孔27内に挿入され、第一縫製糸28と結ばれている。
【0026】
次に、一実施の形態の加飾成形品10の製造方法を説明する。
【0027】
加飾成形品10を製造する際には、図3(a)ないし図3(g)に示す一の成形型31と他の成形型32とを用いる。
【0028】
一及び他の成形型31,32は、互いに対向して配置された一及び他の半型である。一及び他の成形型31,32は、型閉じ状態で、互いの間に樹脂原料が射出されるキャビティ33を構成している。
【0029】
まず、図3(a)に示すように、一の成形型31に対し、離型剤34を塗布する(離型剤塗布工程)。離型剤34は、例えば塗布装置35により塗布される。離型剤34は、例えば一の成形型31内の全面に塗布する。なお、説明を明確にするために、図面において、離型剤34は厚みを誇張して示している。
【0030】
次いで、離型剤34を塗布した一の成形型31に対し、図3(b)に示すように、表皮部17を構成する塗料を塗布する(装飾層形成工程)。表皮部17は、例えば塗布装置36により塗布される。表皮部17を構成する塗料は、例えば一の成形型31内の全面に塗布する。説明を明確にするために、図面において、表皮部17は厚みを誇張して示している。
【0031】
また、表皮部17を形成した一の成形型31に対し、図3(c)に示すように、中間層16を構成する塗料を重ねて塗布する(中間層形成工程)。中間層16は、例えば塗布装置37により塗布される。中間層16を構成する塗料は、全面に塗布する必要はなく、縫製部18を形成する範囲に対応する部位にのみ狙って塗布してよい。説明を明確にするために、図面において、中間層16は厚みを誇張して示している。
【0032】
一方、他の成形型32に対し、図3(d)に示すように、別途成形された基材層14を配置する(基材層配置工程)。基材層14は、他の成形型32の配置する前に、処理層25を形成していてもよい。
【0033】
続いて、図3(e)に示すように、一及び他の成形型31,32を型閉じし(型閉じ工程)、図3(f)に示すように、これら成形型31,32間のキャビティ33に対し、合成樹脂原料を射出充填した後、冷却することで、弾性層15を表皮部17、中間層16、及び、基材層14と一体的に射出成形して中間体39を形成する(射出工程)。本実施の形態において、弾性層15は、例えばRIM成形により形成される。すなわち、合成樹脂原料は、図示しないミキサ部により攪拌混合されてゲートからキャビティ33に射出され、キャビティ33に射出された合成樹脂原料は、発泡を伴いながら反応してポリウレタンとなりつつキャビティ33内に充填される。
【0034】
この後、図3(g)に示すように、キャビティ33内に形成された中間体39を、一の成形型31と他の成形型32とを型開きして脱型する(脱型工程)。そして、この中間体39から、余剰部分を除去した後、図4に示すように、ミシン40を用いて縫製部18を形成する(縫製工程)ことで、加飾成形品10が完成する。
【0035】
ミシン40は、例えばポストミシンが好適に用いられる。ミシン40は、支持部であるテーブル42が上方に向かって突出している。また、ミシン40は、テーブル42内に配置されたボビン43に下糸が巻き付けられ、テーブル42の上部にてボビン43に対向する位置に、上糸が通されたミシン針44が、針先を下方に向け、上下往復動するようになっている。そして、テーブル42に設置された中間体39が所定方向に送られながら、ミシン針44が下動することにより、表皮部17から基材層14を貫通して針孔27が形成され、ミシン針44が上動する際に上糸のループに通ったボビン43の下糸が上糸とともに針孔27に引き込まれ、所定方向に沿って縫製部18が形成される。ミシン針44は、第一縫製糸28の太さや種類に応じ、縫製部18の外観や見栄えを向上し、糸切れを生じにくく端末処理などが容易な任意のものを選択することができる。例えばミシン針44は、LEタイプの16番が好適に用いられる。また、テーブル42に設置される中間体39は、表皮部17を下側、基材層14を上側として設置することで、連結部22のように屈曲した曲面部分を備える形状でも縫製部18を縫製可能となる。
【0036】
このように、一実施の形態によれば、表皮部17と弾性層15との間に、少なくとも縫製部18が配置された範囲に対応して、表皮部17及び弾性層15よりも硬質の中間層16を形成することで、弾性層15によりソフトな触感を確保しつつ、縫製部18を例えばミシン40などにより形成する際の強度を中間層16により確保し、見栄えを向上することが可能となる。
【0037】
例えば、中間層16を設けない場合、図5(b)に比較例を示すように、針孔27aが裂けたり、縫製部18aの第一縫製糸28aが表皮部17aに沈み込んだり、ピッチがばらついたりするのに対し、本実施の形態によれば、図5(a)に一例を示すように、第一縫製糸28の表皮部17への沈み込みや針孔27の裂け、ピッチのばらつきなどが生じにくく、見栄えが向上する。
【0038】
一及び他の成形型31,32を用い、表皮部17及び中間層16を一の成形型31に重ねて形成し、他の成形型32に基材層14を配置して、これら一の成形型31と他の成形型32とを型閉じして、弾性層15を表皮部17、中間層16、及び、基材層14と一体的に射出成形して中間体39を形成する。特に、本実施の形態では、弾性層15をRIM成形により形成する。そのため、例えば熱可塑性ポリウレタン樹脂(TPU)やポリ塩化ビニル樹脂(PVC)などを用いるスラッシュ成形のように、表皮部の成形、縫製部の縫製、及び、発泡層の成形を行う工法と比較して、成形が一度で済み、加工工数を最小限に抑制できるので、見栄えを向上した加飾成形品10を工法的に安価に製造可能となる。
【0039】
また、中間層16は、縫製部18が配置された範囲に対応する部分にのみ形成することで、縫製部18を形成する範囲のみ弾性層15の表面強度が向上し、縫製部18の見栄えを向上しつつ、中間層16を形成しない部位については弾性層15のソフト感を保持できる。
【0040】
中間層16は、薄膜状に形成することで、縫製部18を形成する範囲にのみ形成したとしても、表皮部17の装飾面に段差を生じることがない。
【0041】
中間層16を、ポリウレア樹脂により形成することで、適切な強度の中間層16を安価に製造できる。
【0042】
縫製部18を形成する際、ミシン40を用い、ミシン40の下糸が第一縫製糸28、ミシン40の上糸が第二縫製糸29となるように、中間体39の表皮部17を下側、基材層14を上側として縫製することで、加飾成形品10が曲面部分を備える形状であっても縫製部18を形成可能となる。
【0043】
そして、加飾成形品10を車両用の内装部材として用いることで、触感が良好で、縫製部18の見栄えに優れた車両の内装を安価に実現可能となる。
【0044】
なお、上記の一実施の形態において、加飾成形品10は、車両用の内装部材に限られず、縫製部18を備えるその他の任意の部材に適用することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は、例えば車両用の内装部材として好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0046】
10 加飾成形品
14 基材層
15 弾性層
16 中間層
17 装飾層である表皮部
18 縫製部
28 第一縫製糸
29 第二縫製糸
31 一の成形型
32 他の成形型
39 中間体
40 ミシン
図1
図2
図3
図4
図5