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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-31
(45)【発行日】2022-09-08
(54)【発明の名称】ポリアミド酸およびポリイミド
(51)【国際特許分類】
   C08G 73/10 20060101AFI20220901BHJP
【FI】
C08G73/10
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019073231
(22)【出願日】2019-04-08
(65)【公開番号】P2020172558
(43)【公開日】2020-10-22
【審査請求日】2021-07-19
(73)【特許権者】
【識別番号】591067794
【氏名又は名称】JFEケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100168985
【弁理士】
【氏名又は名称】蜂谷 浩久
(72)【発明者】
【氏名】井上 洋平
【審査官】岩田 行剛
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-201656(JP,A)
【文献】特開平06-172526(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 73/10
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2,2′-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジンからなるジアミン成分と、
50.0モル%超70.0モル%以下のビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、および、30.0モル%以上50.0モル%未満の3,3′,4,4′-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物からなる酸成分と、
を重合して得られるポリアミド酸。
【請求項2】
2,2′-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジンからなるジアミン成分と、
50.0モル%超70.0モル%以下のビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、および、30.0モル%以上50.0モル%未満の3,3′,4,4′-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物からなる酸成分と、
を重合し硬化させて得られるポリイミド。
【請求項3】
引張弾性率が3.0GPa以上である、請求項2に記載のポリイミド。
【請求項4】
引張強度が130MPa以上である、請求項2または3に記載のポリイミド。
【請求項5】
N-メチル-2-ピロリドンに対する溶解度が10質量%以上である、請求項2~4のいずれか1項に記載のポリイミド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアミド酸およびポリイミドに関する。
より詳細には、本発明は、特定の芳香族ジアミン化合物と芳香族テトラカルボン酸化合物とを重合させて得られるポリアミド酸、および、このポリアミド酸を硬化させて得られるポリイミドに関する。
【背景技術】
【0002】
芳香族ジアミン化合物と芳香族テトラカルボン酸化合物とを縮重合して得られる芳香族ポリイミドは、機械強度、耐熱性、電気絶縁性、耐薬品性などに優れるため、電子機器用材料、航空宇宙機器用材料などとして広く使用されている。
【0003】
従来、芳香族ポリイミドとしては、例えば、パラフェニレンジアミン(PDA)-ビフェニルテトラカルボン酸(BPDA)系ポリイミド、4,4′-ジアミノジフェニルエーテル(ODA)-ピロメリット酸二無水物(PMDA)系ポリイミドなどの二成分系ポリイミド;上記モノマーを任意の比率で共重合した三成分系、四成分系ポリイミド;等が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第2537179号公報
【文献】米国特許第3847867号明細書
【文献】米国特許第3847869号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
芳香族ポリイミドは、剛直な分子構造と、剛直な分子構造を連結するイミド結合の強い相互作用とによって、高い機械的強度を示す。
その一方で、芳香族ポリイミドは、上述した分子構造および相互作用ゆえに、溶媒溶解性が不十分な場合がある。この場合、例えば、前駆体であるポリアミド酸を溶媒に溶解させた形態(ワニス)でしか成型できない、硬化時に高温加熱が必要となる等の加工面での問題が生じ得る。
【0006】
芳香族ポリイミドに溶媒溶解性を付与するためには、分子構造に屈曲性結合を導入することが有効であり、例えば、アミド結合を導入したポリアミドイミド(特許文献1)、エーテル結合を導入したポリエーテルイミド(特許文献2~3)が知られている。
しかし、これらのポリイミドは、構成するモノマーの分子構造が柔軟すぎる、ポリマーの重合度が低い等の理由から、機械的強度が不十分な傾向がある。
【0007】
本発明は、以上の点を鑑みてなされたものであり、機械的強度および溶媒溶解性が共に優れるポリイミドが得られるポリアミド酸を提供することを目的とする。
また、本発明は、機械的強度および溶媒溶解性が共に優れるポリイミドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討した。その結果、芳香族ジアミン化合物として2,2′-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)と、芳香族テトラカルボン酸化合物として特定量のビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物(ODPA)および3,3′,4,4′-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)とを重合させることにより、得られるポリイミドを、溶媒溶解性を確保しながら、高強度化できることを見出し、本発明を完成させた。
【0009】
すなわち、本発明は、以下の[1]~[5]を提供する。
[1]2,2′-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジンからなるジアミン成分と、50.0モル%超70.0モル%以下のビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、および、30.0モル%以上50.0モル%未満の3,3′,4,4′-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物からなる酸成分と、を重合して得られるポリアミド酸。
[2]2,2′-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジンからなるジアミン成分と、50.0モル%超70.0モル%以下のビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、および、30.0モル%以上50.0モル%未満の3,3′,4,4′-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物からなる酸成分と、を重合し硬化させて得られるポリイミド。
[3]引張弾性率が3.0GPa以上である、上記[2]に記載のポリイミド。
[4]引張強度が130MPa以上である、上記[2]または[3]に記載のポリイミド。
[5]N-メチル-2-ピロリドンに対する溶解度が10質量%以上である、上記[2]~[4]のいずれかに記載のポリイミド。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、機械的強度および溶媒溶解性が共に優れるポリイミドが得られる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[ポリアミド酸]
本発明のポリアミド酸は、2,2′-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)からなるジアミン成分と、50.0モル%超70.0モル%以下のビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物(ODPA)、および、30.0モル%以上50.0モル%未満の3,3′,4,4′-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)からなる酸成分と、を重合して得られるポリアミド酸である。
【0012】
すなわち、本発明のポリアミド酸は、フッ素含有置換基を有する芳香族ジアミン化合物としてTFMBを用い、かつ、エーテル結合およびビフェニル骨格を有する芳香族テトラカルボン酸化合物として特定量のODPAおよびBPDAを用いる。
これにより、本発明のポリアミド酸を用いて得られるポリイミドは、機械的強度および溶媒溶解性が共に優れる。
このため、本発明のポリアミド酸は、機械的強度および溶媒溶解性が共に優れるポリイミドの前駆体として有用である。
【0013】
後述する比較例1および比較例2に示すように、酸成分中のBPDAの量が多すぎる場合、得られるポリイミドの溶媒溶解性が不十分となる。
一方、後述する比較例3に示すように、酸成分中のBPDAの量が少なすぎる場合、得られるポリイミドは機械的強度が不十分となる。これは、BPDAの導入により機械的強度を向上させる効果が少ないためと考えられる。
【0014】
本発明のポリアミド酸を用いて得られるポリイミドは、更に、耐熱性、耐薬品性、吸湿性、絶縁性などの特性にも優れる。
また、本発明のポリアミド酸を用いて得られるポリイミドは、誘電率および誘電正接が低減されたポリイミドであるため、高周波基板材料として有用でもある。
【0015】
本発明のポリアミド酸の分子構造は、特に限定されず、例えば、ランダム共重合体、交互共重合体、ブロック共重合体などが挙げられる。
【0016】
〈ジアミン成分〉
上述したように、ジアミン成分は、TFMBからなる。
【0017】
〈酸成分〉
上述したように、酸成分は、ODPAおよびBPDAからなる。
酸成分中におけるODPAの量は、上述したように、50.0モル%超70.0モル%以下であり、得られるポリイミドの機械的強度および溶媒溶解性がより優れるという理由から、51.0モル%以上70.0モル%以下が好ましい。
酸成分中におけるBPDAの量は、上述したように、30.0モル%以上50.0モル%未満であり、得られるポリイミドの機械的強度および溶媒溶解性がより優れるという理由から、30.0モル%以上49.0モル%以下が好ましい。
【0019】
〈ジアミン成分および酸成分の量〉
ジアミン成分および酸成分の量は、特に限定されないが、ジアミン成分と酸成分とを重合させて得られる重合物の分子量を十分に高めるために、ジアミン成分が有するアミノ基に対する、酸成分が有する酸無水物基の量を、0.9当量以上にすることが好ましい。
【0020】
〈ポリアミド酸の製造方法〉
本発明のポリアミド酸を製造する方法は、例えば、ジアミン成分と酸成分とを重合して、ポリアミド酸を得る方法である。
ジアミン成分と酸成分との重合は、例えば、ジアミン成分と酸成分とを、ジアミン成分の合計と酸成分の合計とがほぼ等モルとなる量で溶媒に添加し、その溶媒中でジアミン成分と酸成分とを重合することによって行なわれる。
溶媒としては、例えば、後述する溶媒が挙げられる。溶媒には、ジアミン成分および酸成分に加えて、さらに後述する添加剤を添加してもよい。
【0021】
ジアミン成分と酸成分とを重合させる条件は、特に限定されない。
例えば、まず、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドンなどの溶媒に、ジアミン成分および酸成分を添加して、混合物を得る。次いで、得られた混合物を、80℃以下の温度条件下で、大気雰囲気下や窒素雰囲気下で撹拌し、反応させる。こうして、ポリアミド酸を含有する溶液(ポリアミド酸組成物)が製造される。ポリアミド酸を含有する溶液(ポリアミド酸組成物)は、溶媒中のポリアミド酸の含有量が10~30質量%となるように調製することが好ましい。
【0022】
[ポリアミド酸組成物]
本発明のポリアミド酸組成物は、上述した本発明のポリアミド酸を含有する。
本発明のポリアミド酸組成物は、1種の本発明のポリアミド酸のみを含有してもよいし、2種以上の本発明のポリアミド酸を含有してもよい。
【0023】
〈ポリアミド酸以外の成分〉
本発明のポリアミド酸組成物は、本発明のポリアミド酸に加えて、更に、本発明のポリアミド酸以外の成分を含むことができる。
本発明のポリアミド酸以外の成分としては、例えば、以下に説明する溶媒(本発明のポリアミド酸を製造するときに用いられた溶媒)、添加剤(脱水剤、触媒など)、反応中間体、未反応物などが挙げられる。
【0024】
《溶媒》
溶媒としては、上述した成分を溶解する溶媒であれば特に限定されず、例えば、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、ジメチルスルホキシド、N,N-ジエチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジエチルホルムアミド、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、ジメチルスルホン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、トリクロロメタン、トルエン、γ-ブチロラクトン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル等が挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0025】
《添加剤》
添加剤としては、例えば、ポリアミド酸を脱水および環化(イミド化)してポリイミドに転化するために使用される、脱水剤および触媒が挙げられる。
脱水剤としては、例えば、無水酢酸などの脂肪族カルボン酸無水物;フタル酸無水物などの芳香族カルボン酸無水物;等が挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
触媒としては、例えば、ピリジン、ピコリン、キノリンなどの複素環式第三級アミン類;トリエチルアミンなどの脂肪族第三級アミン類;N,N-ジメチルアニリンなどの芳香族第三級アミン類;等が挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0026】
《反応中間体》
反応中間体は、ジアミン成分と酸成分との重合反応の際に副生する反応中間体である。
【0027】
《未反応物》
未反応物は、ジアミン成分と酸成分との重合反応の際に反応に使用されない未反応物である。
【0028】
本発明のポリアミド酸組成物は、本発明のポリアミド酸に、必要に応じて、溶媒、酸化安定剤、フィラー、接着促進剤、シランカップリング剤、感光剤、光重合開始剤、増感剤、末端封止剤、架橋剤などの添加物を加えた組成物であってもよい。
【0029】
[ポリイミド]
本発明のポリイミドは、2,2′-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)からなるジアミン成分と、50.0モル%超70.0モル%以下のビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物(ODPA)、および、30.0モル%以上50.0モル%未満の3,3′,4,4′-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)からなる酸成分と、を重合し硬化させて得られるポリイミドである。
【0030】
本発明のポリイミドは、本発明のポリアミド酸を用いて得られるポリイミドと同様に、機械的強度および溶媒溶解性が共に優れる。
具体的には、本発明のポリイミドの引張弾性率は、3.0GPa以上が好ましい。また、本発明のポリイミドの引張強度は、130MPa以上が好ましい。
更に、本発明のポリイミドは、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)に対する溶解度が10質量%以上であることが好ましい。
【0031】
本発明のポリイミドの分子構造は、特に限定されず、例えば、ランダム共重合体、交互共重合体、ブロック共重合体などが挙げられる。
本発明のポリイミドは、重合反応の際に副生する反応中間体等を含み得る。
【0032】
〈ジアミン成分および酸成分〉
ジアミン成分および酸成分は、上述したジアミン成分および酸成分と同様であるため、説明を省略する。ジアミン成分および酸成分の量も同様である。
【0033】
〈ポリイミドの製造方法〉
本発明のポリイミドを製造する方法は、例えば、ジアミン成分と酸成分とを重合してポリアミド酸を得て、得られたポリアミド酸を硬化させることによりポリイミドを得る方法である。ポリアミド酸の硬化は、例えば、ポリアミド酸をイミド化することにより行なわれる。
本発明のポリイミドは、本発明のポリアミド酸(または、本発明のポリアミド酸組成物)をイミド化することにより製造してもよい。
【0034】
《重合》
ジアミン成分と酸成分との重合は、例えば、ジアミン成分と酸成分とを、ジアミン成分の合計と酸成分の合計とがほぼ等モルとなる量で溶媒に添加し、その溶媒中でジアミン成分と酸成分とを重合することによって行なわれる。
溶媒としては、例えば、上述した溶媒が挙げられる。溶媒には、ジアミン成分および酸成分に加えて、さらに上述した添加剤を添加してもよい。
【0035】
《イミド化》
ポリアミド酸のイミド化(ポリイミドへの転化)は、ポリアミド酸を脱水および環化することにより行なわれる。
ポリアミド酸を脱水および環化する方法としては、例えば、脱水剤および触媒を用いて脱水する化学閉環法;熱的に脱水する熱閉環法;等が挙げられ、これらの方法を1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0036】
化学閉環法で使用する脱水剤および触媒としては、例えば、上述した脱水剤および触媒が挙げられる。
【0037】
熱閉環法における加熱温度は、例えば100~400℃の温度範囲から任意に選択できる。熱閉環法における加熱時間は、例えば1分~6時間であり、5分~2時間が好ましく、15分~1時間がより好ましい。熱閉環法における加熱雰囲気は、特に限定されないが、得られるポリイミドの表面の着色を抑える観点から、窒素ガス雰囲気、窒素/水素混合ガス雰囲気などの不活性雰囲気が好ましい。
【0038】
熱閉環法の場合、具体的には、例えば、本発明のポリアミド酸を含む塗膜を高温に加熱することにより、本発明のポリイミドを含むフィルム(ポリイミドフィルム)を製造できる。化学閉環法を併用してもよい。
本発明のポリアミド酸を含む塗膜から本発明のポリイミドを含むフィルムを形成する際の溶媒の除去およびイミド化のための加熱が連続して行なわれてもよく、また、溶媒除去およびイミド化が同時に行なわれてもよい。
【0039】
〈製品形態〉
ポリアミド酸を溶媒に溶解することにより、ポリアミド酸ワニスが得られる。ポリアミド酸ワニスは、ポリアミド酸を含有する溶液である。
ポリアミド酸ワニスを、そのまま、加熱により脱水、または、脱水剤および触媒の添加により脱水してイミド化することにより、ポリイミドワニスが得られる。ポリイミドワニスは、ポリイミドワニスを含有する溶液である。ポリイミドワニスは、ポリイミドを溶媒に溶解することによっても得られる。
ポリイミドワニスを、水やメタノールなどの貧溶媒中に滴下し、ろ過、乾燥することで、ポリイミドの固形物(ポリイミド粉末)が得られる。ポリイミド粉末を、加熱圧縮することにより、ポリイミドの成型体を形成できる。
ポリアミド酸ワニスまたはポリイミドワニスを基板上に流延し乾燥することによっても、ポリイミドフィルムを作製できる。
【実施例
【0040】
以下に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。ただし、本発明は、以下の実施例に限定されない。
【0041】
〈実施例1〉
窒素雰囲気下、NMP800gに、TFMB102.9g、ODPA40.81g、および、BPDA37.15gを添加して、混合物を得た。ジアミン成分(TFMB)および酸成分(ODPAおよびBPDA)のモル比を、下記表1に示す。
得られた混合物を、常温、大気圧中で3時間撹拌することにより、TFMBとODPAおよびBPDAとを反応させて、ポリアミド酸を含有する溶液(ポリアミド酸組成物)を得た。
得られたポリアミド酸を含有する溶液を、バーコーターを用いてガラス板に塗布して、塗膜を形成した。形成した塗膜を、250℃で30分間加熱して乾燥することにより、約25μm厚のポリイミドフィルムを得た。
【0042】
〈実施例2~3および比較例1~3〉
ジアミン成分(TFMB)および酸成分(ODPAおよびBPDA)のモル比を、下記表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様の手順に従って、ポリアミド酸およびポリイミドフィルムを得た。
【0043】
〈引張弾性率および引張強度〉
実施例1~3および比較例1~3のポリイミドフィルムのそれぞれを用いて、下記条件にて、引張試験を行ない、引張弾性率[GPa]および引張強度[MPa]を計測した。結果を下記表1に示す。引張弾性率が3.0GPa以上であり、かつ、引張強度が130MPa以上であれば、機械的強度に優れると評価できる。
【0044】
《引張試験の条件》
・試験方法:JIS K7127:1999
・引張速度:102mm/min
・チャック間距離:30mm
【0045】
〈溶媒溶解性〉
実施例1~3および比較例1~3のポリイミドフィルムのそれぞれを、NMPに入れて溶解させた。溶解度(NMPに入れる前のポリイミドフィルム質量に対する、NMPに溶解した分のポリイミドフィルムの質量の割合)が10質量%以上であった場合は「A」を、10質量%未満であった場合は「B」を下記表1に記載した。「A」であれば、溶解溶解性に優れると評価できる。
【0046】
【表1】
【0047】
〈評価結果のまとめ〉
上記表1に示す結果から明らかなように、実施例1~3のポリイミドフィルムは、それぞれ、機械的強度および溶媒溶解性が優れていた。
これに対して、ジアミン成分としてODPAを用いなかった比較例1のポリイミドフィルムは、溶媒溶解性が不十分であった。
酸成分としてODPA20モル%およびBPDA80モル%を用いた比較例2のポリイミドフィルムは、溶媒溶解性が不十分であった。
酸成分としてBPDAを用いなかった比較例3のポリイミドフィルムは、機械的強度が不十分であった。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明のポリアミド酸を用いて得られるポリイミド、および、本発明のポリイミドは、機械的強度および溶媒溶解性が共に優れるから、例えば、電子基板用材料、高耐熱性シート、高耐熱成形材料などに好適に用いられる。また、比較的低温で成形加工できるため、装置負荷の低減や省エネルギーに貢献すると考えられる。