(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-31
(45)【発行日】2022-09-08
(54)【発明の名称】研磨液供給装置
(51)【国際特許分類】
B24B 57/02 20060101AFI20220901BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20220901BHJP
【FI】
B24B57/02
H01L21/304 622E
(21)【出願番号】P 2019122589
(22)【出願日】2019-06-30
【審査請求日】2021-03-12
(73)【特許権者】
【識別番号】518440383
【氏名又は名称】株式会社西村ケミテック
(74)【代理人】
【識別番号】100162536
【氏名又は名称】高橋 豊
(72)【発明者】
【氏名】兼重 卓爾
【審査官】須中 栄治
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-285773(JP,A)
【文献】特開平09-290368(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0259229(US,A1)
【文献】特開2017-013196(JP,A)
【文献】特開2000-326225(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B37/00-37/34
B24B55/02-55/03;55/12
B24B57/00-57/04
H01L21/304;21/463
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スラリー、及び前記スラリーと調合する他の液体を含む複数種類の液体をそれぞれ移送する複数の液体移送流路と、
前記複数の液体移送流路と連通し、前記複数種類の液体、または、それら複数種類の液体と純水とを調合することにより、CMP研磨装置の研磨に用いる研磨液を得る調合流路内のミキシングユニットと、
前記複数種類の液体が貯留される液体の種類毎の一又は複数のドラムと、
前記ドラムに不活性ガスを送出し、前記ドラム内の液体を前記液体移送流路に押し出すガス加圧部と
を具備すること及び前記ドラムの暴発を防ぐ第1の板及び第2の板であって、前記ドラムの天板を上から抑える第1の板と、前記ドラムの底板を下から抑える第2の板とを備えることを特徴とする研磨液供給装置。
【請求項2】
前記液体の種類毎のドラムの個数は複数であり、
前記液体の種類毎の複数のドラムの液体の貯留量を検出するセンサと、
前記複数のドラムから前記液体移送流路への液体の送出を規制する弁と、
制御手段と、
を具備し、
前記制御手段は、
前記センサの検出信号に基づいて、前記液体の種類毎の複数のドラムの液体の貯留量を求め、液体の貯留量が所定値を下回ったとき、液体の貯留量が所定値を下回ったドラムの弁を閉弁すると共に、別のドラムの弁を開弁する制御を実行する
ことを特徴とする請求項1に記載の研磨液供給装置。
【請求項3】
前記センサは、ドラムの重量を検出するロードセルであることを特徴とする請求項2に記載の研磨液供給装置。
【請求項4】
前記制御手段は、
前記液体の種類毎の複数のドラムのうち、内部の圧力が所定値を超えているドラムの弁を開弁し、液体の貯留量が所定量を超えており、内部の圧力が所定値に達していない別のドラムにガス加圧部から不活性ガスを送出させて内部を加圧する制御を実行する
ことを特徴とする請求項2又は3に記載の研磨液供給装置。
【請求項5】
スラリー、及び前記スラリーと調合する他の液体を含む複数種類の液体をそれぞれ移送する複数の液体移送流路と、
前記複数の液体移送流路と連通し、前記複数種類の液体、または、それら複数種類の液体と純水とを調合することにより、CMP研磨装置の研磨に用いる研磨液を得るミキシングユニットと、
前記複数種類の液体が貯留される液体の種類毎の一又は複数のドラムと、
前記ドラムに不活性ガスを送出し、前記ドラム内の液体を前記液体移送流路に押し出すガス加圧部と
を具備すること、及び
前記液体の種類毎のドラムの個数は複数であり、
前記液体の種類毎の複数のドラムの液体の貯留量を検出するセンサと、
前記複数のドラムから前記液体移送流路への液体の送出を規制する弁と、
制御手段と、
を具備し、
前記制御手段は、
前記センサの検出信号に基づいて、前記貯留量を求め、液体の貯留量が所定値を下回ったとき、液体の貯留量が所定値を下回ったドラムの弁を閉弁すると共に、
前記液体の種類毎の複数のドラムのうち、内部の圧力が所定値を超えているドラムの弁を開弁し、液体の貯留量が所定量を超えており、内部の圧力が所定値に達していない別のドラムにガス加圧部から不活性ガスを送出させて内部を加圧する制御を実行すること
を特徴とする研磨液供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CMP(Chemical Mechanical Polishing)の研磨装置に、スラリーを希釈した研磨液を供給する研磨液供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造プロセスでは、ポリッシングと称する、エッチングされたウエーハ88に機械的化学的研磨を施す工程がある。
図9は、この工程で用いられるCMPシステムの概略構成を示す図である。
図9に示すように、CMPシステムは、研磨装置8と研磨液供給装置29とで構成される。研磨対象であるウエーハ88は、研磨装置8のヘッド81の下面の貼り付け盤82に接着される。このヘッド81により、ウエーハ88は、定盤83上の研磨パッド84に押圧される。研磨液供給装置29のタンク91には、スラリーを超純水や薬剤により希釈した研磨液が貯留される。研磨液供給装置29のタンク91内の研磨液をポンプ92により吸い出し、ノズル85の先端から研磨パッド84に研磨液を滴下しつつヘッド81及び定盤83を回転させると、ウエーハ88が研磨パッド84に押し付けられながら研磨パッド84の上を摺動する機械的作用と、ウエーハ88が研磨剤内のスラリーに接触する化学反応的作用とにより、ウエーハ88の表面が研磨される。CMPシステムの構成の詳細については、特許文献1を参照されたい。
【0003】
CMPシステムにおけるウエーハ88の研磨形状は、研磨パッド84の回転速度や研磨液の供給性能に依存することが知られている。ウエーハ88の研磨形状を良好にするには、研磨パッド84の回転速度、及び研磨液の単位時間あたりの供給量を一定に保つことが不可欠である。一般に、研磨除去量は、ウエーハ88と研磨パッド84との相対速度と加工圧力とに比例して増加する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のCMP装置は、スラリー原液、超純水、及びケミカルと称する薬剤が貯留されている複数のドラムを準備し、ドラム内の液体をダイヤフラムポンプにより汲み出して調合タンクに貯め、攪拌装置により攪拌した液を研磨液として研磨装置に供給する、という構成になっていた。しかしながら、このような構成では、複数種類の液体の調合タンクへ供給のときに脈動が発生してしまい、均一な濃度の研磨液の供給がし難い、という問題があった。また、ポンプによりスラリーがダメージ(圧損)を受けてしまい、研磨特性が低下してしまうという問題があった。
【0006】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、CMPの研磨装置に、スラリーの濃度が均一で研磨特性の高い研磨液を供給できる技術的手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明は、スラリー、及び前記スラリーと調合する他の液体を含む複数種類の液体をそれぞれ移送する複数の液体移送流路と、前記複数の液体移送流路と連通し、前記複数種類の液体、または、それら複数種類の液体と純水とを調合することにより、CMP研磨装置の研磨に用いる研磨液を得るミキシングユニットと、前記複数種類の液体が貯留される液体の種類毎の一又は複数のドラムと、前記ドラムに不活性ガスを送出し、前記ドラム内の液体を前記液体移送流路に押し出すガス加圧部とを具備することを特徴とする研磨液供給装置を提供する。
【0008】
この研磨液供給装置において、前記液体の種類毎のドラムの個数は複数であり、前記液体の種類毎の複数のドラムの液体の貯留量を検出するセンサと、前記複数のドラムから前記液体移送流路への液体の送出を規制する弁と、制御手段とを具備し、前記制御手段は、前記センサの検出信号に基づいて、前記液体の種類毎の複数のドラムの液体の貯留量を求め、液体の貯留量が所定値を下回ったとき、液体の貯留量が所定値を下回ったドラムの弁を閉弁すると共に別のドラムの弁を開弁する制御を実行してもよい。
【0009】
また、前記センサは、ドラムの重量を検出するロードセルであってもよい。
【0010】
また、制御手段は、前記液体の種類毎の複数のドラムのうち、内部の圧力が所定値を超えているドラムの弁を開弁し、液体の貯留量が所定量を超えており、内部の圧力が所定値に達していない別のドラムにガス加圧部から不活性ガスを送出させて内部を加圧する制御を実行してもよい。
【0011】
また、前記ドラムの暴発を防ぐ第1の板及び第2の板であって、前記ドラムの天板を上から抑える第1の板と、前記ドラムの底板を下から抑える第2の板とを備えてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、液体が貯留されるドラムに不活性ガスを送出し、ドラム内の液体を液体移送流路に押し出すガス加圧部を備える。よって、本発明によると、ドラム内の液体を、脈動させずに、ミキシングユニットに安定的に供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の第1実施形態である研磨液供給装置2を含むCMPシステム1の全体構成を示す図である。
【
図2】
図1のドラム11の構成の詳細を示す図である。
【
図3】
図1のミキシングユニット50の構成の詳細を示す図である。
【
図4】
図1のミキシングユニット50の構成の詳細を示す図である。
【
図5】
図1のミキシングユニット50のドラム11の制御を示す図である。
【
図6】
図1のミキシングユニット50の攪拌及び調合に関わる作用を説明するための図である。
【
図7】本発明の第2実施形態である研磨液供給装置2を含むCMPシステム1の全体構成を示す図である。
【
図8】本発明の変形例である研磨液供給装置2の加圧タンクの構成の詳細を示す図である。
【
図9】従来のCMPシステムの概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態を説明する。
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態である研磨液供給装置2を含むCMPシステム1の全体構成を示す図である。
図1における要素間を結ぶ実線は配管を示しており、実線上の矢印は、配管内の液の進行方向を示している。CMPシステム1は、半導体製造プロセスのポリッシング工程で使用するものである。CMPシステム1は、CMP研磨装置8と、研磨液供給装置2とを有する。CMP研磨装置8の液体送入口89は、研磨液供給装置2の液体送出口79と接続されている。CMP研磨装置8は、研磨対象であるウエーハ88を研磨する。研磨液供給装置2は、CMP研磨装置8に研磨液を供給する。
【0015】
研磨液は、スラリー、超純水、ケミカル、及び過酸化水素水を所定の割合で調合した液である。ここで、スラリーには、砥粒剤などを含んだスラリー、SiO2を含んだアルカリ性スラリー、CeO2を含んだ中性スラリー、Al2O3を含んだ酸性スラリーなどの種類がある。ケミカルには、シリカ、メロー酸、クエン酸などの種類がある。スラリーやケミカルの有効成分は、研磨対象のウエーハ88や研磨形状などに応じて決定するとよい。
【0016】
CMP研磨装置8の構成は、
図9に示した研磨装置8の構成と概ね同様である。CMP研磨装置8には、研磨液供給装置2のミキシングユニット50
CHM、50
SLR、及び50
H2O2の前後の流量検出点及び濃度検出点における流量及び濃度の目標値を設定する操作子が設けられている。CMP研磨装置8において、流量又は濃度の目標値が設定された場合、CMP研磨装置8は、設定後の流量又は濃度を示す設定信号を研磨液供給装置2に供給する。
【0017】
研磨液供給装置2は、PLC(Programmable Logic Controller)70、外部の超純水供給源と接続された超純水送入口29、ケミカルが貯留されている複数のドラム11CHM、ドラム11CHMの重量を検出するロードセル12CHM、ドラム11CHMの中の圧力を検出する圧力センサ13CHM、スラリーが貯留されている複数のドラム11SLR、ドラム11SLRの重量を検出するロードセル12SLR、ドラム11SLRの中の圧力を検出する圧力センサ13SLR、過酸化水素水が貯留されている複数のドラム11H2O2、ドラム11H2O2の重量を検出するロードセル12H2O2、ドラム11H2O2の中の圧力を検出する圧力センサ13H2O2、超純水が移送される液体移送流路10DIW、ケミカルが移送される液体移送流路10CHM、スラリーが移送される液体移送流路10SLR、過酸化水素水が移送される液体移送流路10H2O2、並びに、超純水、ケミカル、スラリー、及び過酸化水素水の4種類の液体が調合される調合流路40を有する。
【0018】
調合流路40は、CMP研磨装置8に至る液体送出口79の直前に配置されている。調合流路40は、流路10DIW、10CHM、10SLR、及び10H2O2と連通している。調合流路40には、フローコントローラ15CHM、15SLR、及び15H2O2、流量センサ61CHM、63CHM、61SLR、63SLR、61H2O2、及び63H2O2、並びに濃度センサ64CHM、64SLR、及び64H2O2が設けられている。
【0019】
フローコントローラ15CHMは、流量センサ62CHMと流量調整バルブ26CHMが一体になっているユニットである。フローコントローラ15SLRは、流量センサ62SLRと流量調整バルブ26SLRが一体になっているユニットである。フローコントローラ15H2O2は、流量センサ62H2O2と流量調整バルブ26H2O2が一体になっているユニットである。フローコントローラ15CHM、15SLR、15H2O2は、液体移送流路10CHM、10SLR、10H2O2から調合流路40への液体の流量を調整する流量調整手段としての役割を果たす。
【0020】
流路10DIWには、低圧弁21(精密レギュレータ)が設けられている。低圧弁21の働きにより、流路10DIWにおける超純水の流量は、一定(例えば、1リッター/分)に保たれる。
【0021】
流路10CHMには、ガス加圧部14CHMが設けられている。流路10SLRには、ガス加圧部14SLRが設けられている。流路10H2O2には、ガス加圧部14H2O2が設けられている。
【0022】
ガス加圧部14CHM、14SLR、14H2O2は、ドラム11CHM、11SLR、11H2O2に不活性ガスである窒素を送出し、ドラム11CHM、11SLR、11H2O2内の液体を流路10CHM、10SLR、10H2O2に押し出す。
【0023】
図2に示すように、ドラム11
CHM、11
SLR、11
H2O2は、天板31と、底板32と、それらの間に介在する側板33とを有する。ドラム11
CHM、11
SLR、11
H2O2の内部は気密になっている。天板31の上及び底板32の下には、ドラムサポートユニットであるSUS(Steel Use Stainless)板311、PVC(Polyvinyl Chloride)板312、PVC板321、及びSUS板322が設けられている。第1の板であるSUS板311及びPVC板312は、天板31の上に配置されており、第2の板であるPVC板321及びSUS板322は、底板32の下に配置されている。SUN板322の下にはロードセル12
CHM、12
SLR、12
H2O2が配置されている。
【0024】
SUS板312及びPVC板311は、天板31を上から抑え、PVC板321及びSUS板322は、底板32を下から抑え、ドラム11CHM、11SLR、11H2O2内の加圧による暴発を防ぐ役割を果たすものである。ドラム11CHM、11SLR、11H2O2には、エアシリンダー38が設けられている。エアシリンダー38により、SUS板312とPVC板311を上に持ち上げ、天板31から離すことができる。
【0025】
流路10CHM、10SLR、10H2O2からドラム11CHM、11SLR、11H2O2に至る配管の先端には、第1のチューブが接続されている。ガス加圧部14CHM、14SLR、14H2O2からドラム11CHM、11SLR、11H2O2に至る配管の先端には、第2のチューブが接続されている。第1のチューブ及び第2のチューブは、ドラム11CHM、11SLR、11H2O2の天板31の開口部を通り、ドラム11CHM、11SLR、11H2O2内に引き込まれている。ドラム11CHM、11SLR、11H2O2内における第1のチューブの下端は、ドラム11CHM、11SLR、11H2O2の底にあり、第2のチューブの下端は、ドラム11CHM、11SLR、11H2O2内の液体の液面上にある。
【0026】
ドラム11CHM、11SLR、11H2O2の第1のチューブには、ドラム11CHM、11SLR、11H2O2から流路10CHM、10SLR、10H2O2への液体の送出を規制する弁が設けられている。第2のチューブには、ガス加圧部14CHM、14SLR、14H2O2からドラム11CHM、11SLR、11H2O2への窒素の送出を規制する弁が設けられている。
【0027】
ドラム11CHM、11SLR、11H2O2における流路10CHM、10SLR、10H2O2に繋がった第1のチューブの弁を閉弁し、ガス加圧部14CHM、14SLR、14H2O2に繋がった第2のチューブの弁を開弁し、ガス加圧部14CHM、14SLR、14H2O2から窒素を送出させると、窒素がドラム11CHM、11SLR、11H2O2の中に入り、ドラム11CHM、11SLR、11H2O2の中の圧力が高まる。ドラム11CHM、11SLR、11H2O2内の圧力が高まった後、ガス加圧部14CHM、14SLR、14H2O2に繋がった第2のチューブの弁を閉弁し、流路10CHM、10SLR、10H2O2に繋がった第1のチューブの弁を開弁すると、ドラム11CHM、11SLR、11H2O2の中の液体が流路10CHM、10SLR、10H2O2に押し出される。
【0028】
流路10DIWの配管は、ミキシングユニット50CHMの流入口F1と繋がっている。流路10CHMの配管は、ミキシングユニット50CHMの流入口F2と繋がっている。流路10SLRの配管は、ミキシングユニット50SLRの流入口F2と繋がっている。流路10H2O2の配管は、ミキシングユニット50H2O2の流入口F2と繋がっている。ミキシングユニット50CHMの流出口F3は、ミキシングユニット50SLRの流入口F1と繋がっている。ミキシングユニット50SLRの流出口F3は、ミキシングユニット50H2O2の流入口F1と繋がっている。ミキシングユニット50H2O2の流出口F3は、液体の送出口79と繋がっている。
【0029】
流路10DIW内を移送される超純水は、流入口F1からミキシングユニット50CHMに流れ込む。流路10CHM内を移送されるケミカルは、流入口F2からミキシングユニット50CHMに流れ込む。流路10SLR内を移送されるスラリーは、流入口F2からミキシングユニット50SLRに流れ込む。流路10H2O2内を移送される過酸化水素水は、流入口F2からミキシングユニット50H2O2に流れ込む。
【0030】
図3(A)は、ミキシングユニット50
CHM、50
SLR、50
H2O2の正面図である。
図3(B)は、
図3(A)を矢印B方向から見た図である。
図3(C)は、
図3(B)の内部を示す図である。
図4は、
図3(B)の一部断面図である。ミキシングユニット50
CHM、50
SLR、50
H2O2は、2つの流入口F1及びF2と1つの流出口F3とをもったハウジングHZと、ハウジングHZ内に収められた攪拌スクリューSCRとを有する。
【0031】
ハウジングHZの本体は、流路10DIW、10CHM、10SLR、10H2O2の配管と略同じか僅かに太い直径をもった中空な円筒体である。ハウジングHZの本体の延在方向の一端に流入口F1があり、他端に流出口F3がある。ハウジングHZの本体の側面における流入口F1の近傍に、流入口F2がある。流入口F2は、ハウジングHZの本体の中に連通している。
【0032】
流入口F1は、ハウジングHZ内の配管HK1と連通している。配管HK1の先端は攪拌スクリューSCRと繋がっている。流入口F2は、ウジングHZ内の配管HK2と連通している。
図4に示すように、配管HK2の下端における幅方向の2辺は、配管HK1の内周面に当接している。配管HK2内の底と、底よりも僅かに上側の2か所の位置には、2つの液体吐出口HL1、HL2がある。配管HK1内において、2つの液体吐出口HL1、HL2は、攪拌スクリューSCRのほうを向いている。
【0033】
攪拌スクリューSCRは、軸棒AXSに、N(Nは、2以上の自然数、
図3(C)の例では、N=5)個の捩れ羽根VL-k(k=1~N)を間隔をあけて配置したものである。軸棒AXSは、ハウジングHZの流入口F1と流出口F3において支持されている。捩れ羽根VL-kは、軸棒AXSの外周面に沿って半回転(180度)捩った形状をなしている。複数個の捩れ羽根VL-k(k=1~N)は、90度ずつ位相をずらして配置されており、相前後する捩れ羽根VL-kは、90度ずれて直交している。相前後する捩れ羽根VL-kの間隔は等しくなっている。相前後する捩れ羽根VL-kの間隔は、捩れ羽根VL-k自体の寸法(前後方向の幅)より短くなっている。
【0034】
ミキシングユニット50CHMの流入口F1及び流入口F2からミキシングユニット50CHM内に流入した2種類の液(超純水とケミカル)は、ミキシングユニット50CHM内において攪拌されながら混ざり合い、2種類の液を調合した液が、ミキシングユニット50CHMの流出口F3から送出される。
【0035】
ミキシングユニット50SLRの流入口F1及びF2からミキシングユニット50SLR内に流入した2種類の液(超純水とケミカルを含む液とスラリー)は、ミキシングユニット50SLR内の攪拌スクリューSCRを通過することにより、攪拌されながら混ざり合い、2種類の液を調合した液が、ミキシングユニット50SLRの流出口F3から送出される。
【0036】
ミキシングユニット50H2O2の流入口F1及び流入口F2からミキシングユニット50H2O2内に流入した2種類の液(超純水、ケミカル、及びスラリーを含む液と過酸化水素水)は、ミキシングユニット50H2O2内において攪拌されながら混ざり合い、2種類の液を調合した液が、ミキシングユニット50H2O2の流出口F3から送出される。
【0037】
図1において、流量センサ61
CHMは、調合流路40内におけるミキシングユニット50
CHMの流入口F1の直前の位置の液(超純水)の単位時間あたりの流量を検出し、流量の検出信号を出力する。流量センサ62
CHMは、調合流路40内におけるミキシングユニット50
CHMの流入口F2の直前の位置の液(ケミカル)の単位時間あたりの流量を検出し、流量の検出信号を出力する。流量センサ63
CHMは、調合流路40内におけるミキシングユニット50
CHMの流出口F3の直後の位置の液(超純水とケミカルを調合した液)の単位時間あたりの流量を検出し、流量の検出信号を出力する。濃度センサ64
CHMは、調合流路40内におけるミキシングユニット50
CHMの流出口F3の直後の位置の液の濁度を、液体の濃度として検出し、濃度の検出信号を出力する。
【0038】
流量センサ61SLRは、調合流路40内におけるミキシングユニット50SLRの流入口F1の直前の位置の液(超純水とケミカルを含む液)の単位時間あたりの流量を検出し、流量の検出信号を出力する。流量センサ62SLRは、調合流路40内におけるミキシングユニット50SLRの流入口F2の直前の位置の液(スラリー)の単位時間あたりの流量を検出し、流量の検出信号を出力する。流量センサ63SLRは、調合流路40内におけるミキシングユニット50SLRの流出口F3の直後の位置(超純水、ケミカル、スラリーを調合した液)の液の単位時間あたりの流量を検出し、流量の検出信号を出力する。濃度センサ64SLRは、調合流路40内におけるミキシングユニット50SLRの流出口F3の直後の位置の液の濁度を、液体の濃度として検出し、濃度の検出信号を出力する。
【0039】
流量センサ61H2O2は、調合流路40内におけるミキシングユニット50H2O2の流入口F1の直前の位置の液(超純水、ケミカル、及びスラリーを含む液)の単位時間あたりの流量を検出し、流量の検出信号を出力する。流量センサ62H2O2は、調合流路40内におけるミキシングユニット50H2O2の流入口F2の直前の位置の液(過酸化水素水)の単位時間あたりの流量を検出し、流量の検出信号を出力する。流量センサ63H2O2は、調合流路40内におけるミキシングユニット50H2O2の流出口F3の直後の位置の液(超純水、ケミカル、スラリー、及び過酸化水素水を調合した液)の単位時間あたりの流量を検出し、流量の検出信号を出力する。濃度センサ64H2O2は、調合流路40内におけるミキシングユニット50H2O2の流出口F3の直後の位置の液の濁度を、液体の濃度として検出し、濃度の検出信号を出力する。
【0040】
PLC70は、研磨液供給装置2の制御手段としての役割を果たす装置である。PLC70は、調合流路40内の液体の流量及び濃度に応じて、流量調整手段であるフローコントローラ15CHM、15SLR、15H2O2の動作を制御する第1の制御と、液体の種類毎の複数のドラム11CHM、11SLR、11H2O2の貯留量に応じて、ドラム11CHM、11SLR、11H2O2と流路10CHM、10SLR、10H2O2との連通を制御する第2の制御とを実行する。
【0041】
より詳細に説明すると、第1の制御では、PLC70は、フローコントローラ15CHMの流量調整バルブ26CHMの開度を、流量センサ61CHM、62CHM、63CHMの検出信号とCMP研磨装置8から与えられる設定信号が示す流量の目標値との関係、及び濃度センサ64CHMの検出信号とCMP研磨装置8から与えられる設定信号が示す濃度の目標値との関係に基づいて決定した開度にし、以後の流量センサ61CHM、62CHM、63CHMの検出信号、及び濃度センサ64CHMの検出信号に基づいて流量調整バルブ26CHMの開度を補正する。
【0042】
具体的には、PLC70は、流量センサ61CHM、62CHM、63CHMの検出信号が示す流量が流量の目標値よりも大きく、その差が所定値以上である場合、流量調整バルブ26CHMの開度を小さくすることを指示する制御信号をフローコントローラ15CHMに供給する。また、PLC70は、流量センサ61CHM、62CHM、63CHMの検出信号が示す流量が目標値よりも小さく、その差が所定値以上である場合、流量調整バルブ26CHMの開度を大きくすることを指示する制御信号をフローコントローラ15CHMに供給する。
【0043】
また、PLC70は、濃度センサ64CHMの検出信号が示す濃度が濃度の目標値よりも大きく、その差が所定値以上である場合、流量調整バルブ26CHMの開度を小さくすることを指示する制御信号をフローコントローラ15CHMに供給する。また、PLC70は、濃度センサ64CHMの検出信号が示す濃度が目標値よりも小さく、その差が所定値以上である場合、流量調整バルブ26CHMの開度を大きくすることを指示する制御信号を供給する。
【0044】
同様に、PLC70は、フローコントローラ15SLRの流量調整バルブ26SLRの開度を、流量センサ61SLR、62SLR、63SLRの検出信号とCMP研磨装置8から与えられる設定信号が示す流量の目標値との関係、及び濃度センサ64SLRの検出信号とCMP研磨装置8から与えられる設定信号が示す濃度の目標値との関係に基づいて決定した開度にし、以後の流量センサ61SLR、62SLR、63SLRの検出信号、及び濃度センサ64SLRの検出信号に基づいて流量調整バルブ26SLRの開度を補正する。
【0045】
また、PLC70は、フローコントローラ15H2O2の流量調整バルブ26H2O2の開度を、流量センサ61H2O2、62H2O2、63H2O2の検出信号とCMP研磨装置8から与えられる設定信号が示す流量の目標値との関係、及び濃度センサ64H2O2の検出信号とCMP研磨装置8から与えられる設定信号が示す濃度の目標値との関係に基づいて決定した開度にし、以後の流量センサ61H2O2、62H2O2、63H2O2の検出信号、及び濃度センサ64H2O2の検出信号に基づいて流量調整バルブ26H2O2の開度を補正する。
【0046】
第2の制御では、PLC70は、ケミカルが貯留されている複数のドラム11
CHMの圧力センサ13
CHMの検出信号を基に、ドラム11
CHMの圧力を求めると共に、ロードセル12
CHMの検出信号を基に、ドラム11
CHMのケミカルの貯留量を求める。
図5に示すように、PLC70は、複数のドラム11
CHMのうち流路10
CHMに連通しているドラム11
CHM(
図5の例ではドラム1)の液体の貯留量が所定値TH
LQ1を下回ったとき、そのドラム11
CHMの第1のチューブの弁を閉弁して流路10
CHMとの連通を解除すると共に、ドラム11
CHMの第2のチューブの弁を閉弁してドラム11
CHMの加圧を停止する。また、このとき、別のドラム11
CHMのうち、液体の貯留量が所定量を超えており、内部の圧力が所定値TH
PR1を超えているドラム11
CHM(
図5の例ではドラム2)を選択し、選択したドラム11
CHMの第1のチューブの弁を開弁して流路10
CHMと連通させる。また、このとき、別のドラム11
CHMのうち、液体の貯留量が所定量を超えており、内部の圧力が所定値TH
PR1に達していないドラム11
CHM(
図5の例ではドラム3)を選択し、選択したドラム11
CHMの第2のチューブの弁を開弁してそのドラム11
CHMにガス加圧部14
CHMから窒素を送出させ、ドラム11
CHMの加圧を開始する。
【0047】
同様に、PLC70は、圧力センサ13SLR、ロードセル12SLRの検出信号に基づいて、スラリーが貯留されているドラム11SLRと流路10SLRとの連通を制御し、圧力センサ13H2O2、ロードセル12H2O2の検出信号に基づいて、過酸化水素水が貯留されているドラム11H2O2と流路10H2O2との連通を制御する。
【0048】
以上が、本実施形態の構成の詳細である。本実施形態によると、次の効果が得られる。
【0049】
第1に、本実施形態では、超純水、ケミカル、スラリー、及び過酸化水素水が移送される流路10CHM、10SLR、10H2O2と連通する調合流路40があり、この調合流路40において、複数種類の液体が調合され、調合された液体が研磨液としてCMP研磨装置8に供給される構成になっている。このため、本実施形態では、複数種類の液体を調合する調合タンクを設ける必要がない。よって、調合タンクに液体が滞留して凝集沈殿が発生することがなくなり、均一な濃度の研磨液をCMP研磨装置8に安定的に供給できる。
【0050】
第2に、本実施形態では、調合タンクがないため、調合タンク内の乾燥防止機構や固化防止機構の設置も不要となる。これに伴い、乾燥防止機構や固化防止機構の一部の役割を担う消耗品の交換も不要となるため、研磨液供給装置2のメインテナンスの工程数を大幅に削減できる。
【0051】
第3に、本実施形態では、調合流路40が、CMP研磨装置8に至る液体の送出口79の直前に配置されている。このため、複数種類の液を調合して研磨液を得た後、研磨液をフレッシュな状態でCMP研磨装置8のウエーハ88の研磨に使うことができる。よって、ケミカルアタックが起こりにくくなり、スクラッチの要因となる粗大粒子も低減できる。また、調合から使用までの間に研磨液が経時変化することもなくなる。これにより、安定した研磨特性が得られる。
【0052】
第4に、本実施形態では、調合流路40に、2つの流入口F1及びF2と1つの流出口F3とを有する複数のミキシングユニット50を複数段に渡って繋げたものが設けられている。よって、超純水にケミカルを調合→さらにスラリーを調合→さらに過酸化水素水を調合、というような3種類以上の液の段階的な調合を、精度よく行うことができる。
【0053】
第5に、本実施形態では、ミキシングユニット50
CHM、50
SLR、50
H2O2内には、攪拌スクリューSCRが設けられている。流入口F1からミキシングユニット50に流れ込んだ液と、流入口F2からミキシングユニット50
CHM、50
SLR、50
H2O2に流れ込んだ液は、配管HK1内における配管HK2の液体吐出口HL1、HL2において合流する。この合流の後、2種類の液は、捩れ羽根VL-1→捩れ羽根VL-2→捩れ羽根VL-3・・・→捩れ羽根VL-5を順に通過する。
図6(A)に示すように、一つの捩れ羽根VL-kを通過する度に、2種類の液は、捩れ羽根VL-kの一方の捩れ面の側とその裏側の他方の捩れ面の側に略等分される。また、
図6(B)に示すように、2種類の液は、捩れ羽根VL-kの捩れ面上において、軸棒AXSの側から内壁面の側へ、または、内壁面の側から軸棒AXSの側へ、というように還流する。さらに、
図6(C)に示すように、相前後する2つの捩れ羽根VL-kの間において、2種類の液の回転方向が反転する。この、分割作用、還流作用、及び反転作用の3つの作用により、スラリーを均一な濃度で希釈化した液が得られる。よって、従来の、調合タンクに液を貯めて攪拌装置により攪拌する、というものに比べて、攪拌に要する時間を大幅に短縮できる。また、ミキシングユニット50
CHM、50
SLR、50
H2O2は、調合タンクよりも嵩張らないものであり、ミキシングユニット50
CHM、50
SLR、50
H2O2の構成自体は、調合タンクに比べて単純なものである。よって、CMPシステム1の装置設計を簡素化し、システムの納期も短縮化できる。
【0054】
第6に、本実施形態では、調合流路40内の液体の濁度を液体の濃度として検出する濃度センサ64CHM、64SLR、64H2O2と、流路10CHM、10SLR、10H2O2内の液体の流量を調整するフローコントローラ15CHM、15SLR、15H2O2とを具備し、PLC70は、調合流路40内の液体の濃度と目標値との関係に基づいて、フローコントローラ15CHM、15SLR、15H2O2の動作を制御する。よって、CMP研磨装置8により、濃度の目標値を設定することにより、スラリーの濃度の調整を効率よく行うことができる。また、CMP研磨装置8側における、研磨液の希釈比率の変更、ウエーハ88の変更、研磨除去量の変更といった事情変更にも柔軟に対応できる。
【0055】
第7に、本実施形態では、ドラム11CHM、11SLR、11H2O2内への不活性ガスの送出によって液体を流路10CHM、10SLR、10H2O2に押し出すガス加圧部14CHM、14SLR、14H2O2を具備する。よって、ドラム11CHM、11SLR、11H2O2内の液体を、脈動させずに、調合流路40のミキシングユニット50CHM、50SLR、50H2O2に安定的に供給することができる。また、スラリーの研磨特性を高くすることができる。これについてより詳細に説明すると、スラリーの汲み上げに圧縮エアーを駆動源としたダイヤフラムポンプなどを使用した場合、ダイヤフラムの押し引きの動作を繰り返すことにより、スラリーに対してストレスやダメージを与えてしまい、ダメージを受けたスラリーで研磨することにより、研磨特性の低下が起きてしまう。これに対し、ドラム11SLRから流路10SLRへのスラリーの移送がポンプレスになると、ポンプがスラリーにダメージを与えることもなくなる。この結果、研磨液供給装置2に良質なスラリーを供給することができる。
【0056】
第8に、本実施形態では、CMP研磨装置8は、液体の流量又は濃度の目標値を設定する操作子が設けられており、CMP研磨装置8において、流量又は濃度の目標値が設定された場合、CMP研磨装置8から研磨液供給装置2のPLC70に設定信号を供給→PCL70からフローコントローラ15CHM、15SLR、15H2O2に制御信号を供給→制御信号に応じて流量が瞬時に変化→流量センサ61CHM、62CHM、63CHM、61SLR、62SLR、63SLR、61H2O2、62H2O2、63H2O2、濃度センサ64CHM、64SLR、64H2O2により開度の変更後の流量、濃度を検出→検出結果に応じた補正、という手順により、流量又は濃度の設定信号とセンサの検出信号が一致するように、フローコントローラ15CHM、15SLR、15H2O2の流量調整バルブ26CHM、26SLR、26H2O2の開度を自動調整する。よって、CMP研磨装置8の管理の下での液体の流量、濃度の調整を効率よく行うことができる。
【0057】
<第2実施形態>
図7は、本発明の第2実施形態である研磨液供給装置2を含むCMPシステム1の全体構成を示す図である。
図7において、上記第1実施形態の研磨液供給装置2のものと同じ要素には、同じ符号を付してある。上記第1実施形態の研磨液供給装置2のミキシングユニット50
CHM、50
SLR、50
H2O2は、流路10
CHM、10
SLR、10
H2O2と略同じか僅かに太い直径をもった円筒体を有する構造となっており、このミキシングユニット50
CHM、50
SLR、50
H2O2内において、複数の液体がインライン調合された。これに対し、本実施形態の研磨液供給装置2のミキシングユニット50Aは、調合タンク52Aと、攪拌装置59Aとを有し、このタンク52A内において複数の液体が攪拌調合される、という構成になっている。
【0058】
CMPシステム1の研磨液供給装置2は、PLC70、外部の超純水供給源と接続された超純水送入口29、ケミカルが貯留されているドラム11CHM、スラリーが貯留されているドラム11SLR、過酸化水素水が貯留されているドラム11H2O2、超純水が移送される液体移送流路10DIW、ケミカルが移送される液体移送流路10CHM、スラリーが移送される液体移送流路10SLR、過酸化水素水が移送される液体移送流路10H2O2、並びに、これらの流路10CHM、10SLR、10H2O2の配管と接続されたミキシングユニット50A、ミキシングユニット50AからCMP研磨装置8に至る流路40Aを有する。
【0059】
流路40Aは、CMP研磨装置8に向かう分岐点17Aを経由してミキシングユニット50Aの調合タンク52Aに戻る循環流路となっている。
【0060】
ミキシングユニット50Aは、ケミカル、超純水、スラリー、過酸化水素水の4種類の液体を調合することにより、CMP研磨装置8の研磨に用いる研磨液を得るものである。ミキシングユニット50Aは、筐体51A、調合タンク52A、攪拌装置59A、加圧タンク53A、充填量センサ56A、フローコントローラ55A、及びガス加圧部54Aを有する。
【0061】
筐体51Aは、中空な直方体状をなしている。筐体51A内の上部には、調合タンク52Aがあり、筐体51A内の下部には、複数(
図7の例では3つ)の加圧タンク53Aがある。
【0062】
調合タンク52Aは、中空な円筒状をなしている。流路20DIW内を移送される超純水、流路10CHMを移送されるケミカル、流路10SLRを移送されるスラリー、流路10H2O2を移送される過酸化水素水は、調合タンク52Aに流れ込む。攪拌装置59Aは、調合タンク52Aに流れ込んだ4種類の液体を攪拌し、混ぜ合わせる。
【0063】
調合タンク52Aの底には、下方に向かって延伸する配管がある。この配管は、複数に分岐し、分岐した配管が複数の加圧タンク53Aの流入口に接続されている。加圧タンク53Aは、円筒状をなしている。加圧タンク53Aは、流入口を上に向けるとともに、流出口を下に向けるようにして、筐体51A内における調合タンク52Aの真下の位置に配置されている。
【0064】
調合タンク52A内において、4種類の液体を攪拌して得られた研磨液は、その自重により、下方の配管を通って加圧タンク53Aに流入し、加圧タンク53A内に充填される。加圧タンク53Aの液体の流入口には開閉弁VLUが、液体の流出口には開閉弁VLLが、それぞれ設けられている。加圧タンク53Aの開閉弁VLU及びVLLは、開信号が与えられると開弁し、閉信号が与えられると閉弁する。
【0065】
充填量センサ56Aは、加圧タンク53A内の液体の充填量を検出し、検出信号を出力するものである。具体的には、充填量センサ56Aは、加圧タンク53A内の液体の充填量が、所定値が下回った場合に、そのことを示す信号を出力する。
【0066】
ガス加圧部54Aは、フローコントローラ55Aによる制御の下、加圧タンク53Aの上部のガス流入口から加圧タンク53A内に、不活性ガスである窒素を送出する。加圧タンク53A内の液は、窒素の圧力により、加圧タンク53Aの下部の流出口から押し出される。
【0067】
PLC70は、研磨液供給装置2の制御手段としての役割を果たす装置である。PLC70は、加圧タンク53Aのうち調合流路40と連通させるものを切り替える制御を行う。
【0068】
より具体的に説明すると、充填量センサ56Aにおける信号STの出力の有無を監視する。PLC70は、3つの加圧タンク53Aについて、充填量が所定量を下回った加圧タンク53Aの開閉弁VLU及びVLLを閉弁し、別の加圧タンク53Aの開閉弁VLU及びVLLを開弁する制御を再帰的に繰り返す。
【0069】
以上が、本実施形態の構成の詳細である。本実施形態によると、次の効果が得られる。
第1に、本実施形態では、ミキシングユニット50Aの調合タンク52A内の液体の調合により得られた研磨液が、加圧タンク53Aに充填され、ガス加圧部54Aが加圧タンク53A内に不活性ガスを送出して、加圧タンク53A内の研磨液をCMP研磨装置8に至る経路に押し出すようになっている。よって、脈動のない超高精度な研磨液をCMP研磨装置8に安定的に供給することができる。
【0070】
第2に、本実施形態では、液体の調合により得られた研磨液を貯留する調合タンク52Aを具備し、CMP研磨装置8に至る流路が、調合タンク52Aから、CMP研磨装置8に向かう分岐点17Aを経由して調合タンク52Aに戻る循環流路となっている。よって、調合タンク52Aに液体が滞留して凝集沈殿が発生することがなくなり、均一な濃度の研磨液をCMP研磨装置8に安定的に供給できる。
【0071】
第3に、本実施形態では、加圧タンク53Aは、調合タンク52Aの下方に配置されており、調合タンク52A内の液体の自重により、調合タンク52Aから加圧タンク53Aに液体が流入するようになっている。よって、ポンプなどの特別の装置を調合タンク52Aに設ける必要がなくなり、研磨液体の酸化や成分変化などのリスクを伴うことなく、調合タンク52Aから加圧タンク53Aに液体を移すことができる。
【0072】
第4に、本実施形態では、加圧タンク53Aは、筒状をなしており、加圧タンク53Aは、調合タンク52Aから加圧タンク53Aへの液体の流入口が上になり、加圧タンク53AからCMP研磨装置8への液体の流出口が下になるように配置されている。よって、調合タンク52A→加圧タンク53A→CMP研磨装置8という液体の流れをより一層円滑にできる。
【0073】
第5に、本実施形態では、加圧タンク53Aの個数は複数であり、制御手段であるPLC70は、充填量が所定量を下回った加圧タンク53Aの開閉弁VLU及びVLLを閉弁し、別の加圧タンク53Aの開閉弁VLU及びVLLを開弁する制御を再帰的に繰り返す。よって、本実施形態によると、加圧タンク53A内の液が尽きて、CMP研磨装置8への液体の供給が途絶える、という事態の発生を確実に防ぐことができる。
【0074】
<変形例>
以上本発明の第1及び第2実施形態について説明したが、これらの実施形態に以下の変形を加えてもよい。
【0075】
(1)上記第1実施形態の調合流路40内における複数種類の液の調合の順序は上記第1実施形態のものに限定されない。例えば、最初にスラリーとケミカルを調合し、次にこれに過酸化水素水を調合し、最後に超純水を調合して希釈する、という順序にしてもよい。
【0076】
(2)上記第1実施形態では、ドラム11CHM、11SLR、11H2O2に、窒素を送出し、ドラム11CHM、11SLR、11H2O2内の液体が、窒素の圧力により、ドラム11CHM、11SLR、11H2O2から押し出されるようになっていた。しかし、ドラム11CHM、11SLR、11H2O2に、別の不活性ガス(例えば、アルゴン)を送出してもよい。
【0077】
(3)上記第1実施形態では、流路10CHMがミキシングユニット50CHMの流入口F2に繋がり、流路10SLRがミキシングユニット50SLRの流入口F2に繋がり、流路10H2O2がミキシングユニット50H2O2の流入口F2に繋がる、という構成になっていた。しかし、流路10CHMがミキシングユニット50CHMの流入口F1に繋がり、流路10SLRがミキシングユニット50SLRの流入口F1に繋がり、流路10H2O2がミキシングユニット50H2O2の流入口F1に繋がる、という構成にしてもよい。
【0078】
(4)上記第2実施形態では、加圧タンク53Aの上部に液体の流入口があり、加圧タンク53Aの下部に液体の流出口があった。しかし、加圧タンク53Aの下部に液体の流入口と流出口の両方を設けてもよい。例えば、
図8に示すように、加圧タンク53Aの下部(底部)に配管を設け、この配管の下部が、液体の流入側と流出側にT字状に分岐しており、流入側の配管に第1バルブVAL1を設けるとともに、流出側の配管に第2バルブVAL2を設けてもよい。そして、PLC70が、加圧タンク53Aの液の充填量が所定量(例えば、90パーセント)に達するまでは、第1バルブVAL1を開くと共に第2バルブVAL1を閉じて、加圧タンク53A内に液を充填させ、加圧タンク53Aの液の充填量が所定量に達したら、第1バルブVAL1を閉じると共に第2バルブVAL1を開き、加圧タンク53A内の液を窒素の圧力により押し出す、という制御を再起的に繰り返すようしてもよい。
【0079】
(5)上記第1実施形態において、ドラム11CHM、11SLR、11H2O2と、ミキシングユニット50CHM、50SLR、50H2O2は、同じフロアーに設置される必要はない。ドラムを生産工場側に設置し、ハウスラインとして、生産工場側のドラム11CHM、11SLR、11H2O2からミキシングユニット50CHM、50SLR、50H2O2まで液体が供給されるようにしてもよい。
【0080】
(6)上記第1実施形態において、複数のドラム11
CHMのうち流路10
CHMに連通しているドラム11
CHM(
図5の例のドラム1)の液体の貯留量が所定値TH
LQ1を下回る前、つまり、1つのドラム11
CHMから流路10
CHMへの液体の移送がされている間の所定のタイミング(例えば、ドラム1やドラム2の液体の貯留量が所定値TH
LQ1よりも大きな所定値TH
LQ1’を下回ったタイミング、トラム1やドラム2からの液体の移送が開始されたタイミング、又は、ドラム1やドラム2からの液体の移送の開始から所定時間が経過したタイミング)において、別のドラム11
CHMのうち、液体の貯留量が所定値TH
LQ1に達しており、内部の圧力が所定値TH
PR1に達していないドラム11
CHM(
図5の例のドラム3)を選択し、選択したドラム11
CHMの第2のチューブの弁を開弁してそのドラム11
CHMにガス加圧部14
CHMから窒素を送出させ、ドラム11
CHMの加圧を開始するようにしてもよい。
【0081】
(7)上記第1及び第2実施形態において、調合流路40は、CMP研磨装置8に至る液体送出口79の直前に配置される必要はなく、液体送出口79に対応して設けられていればよい。CMP研磨装置8の内部に調合流路40を設けてもよい。また、CMP研磨装置8と研磨液供給装置2を一体化したユニットにしてもよいし、CMP研磨装置8内に研磨液供給装置2を搭載してもよい。また、調合流路40を液体送出口79から所定の距離だけ離れた位置に配置してもよいし、スラリーやケミカルがダメージを受けない位置に配置してもよい。
【0082】
(8)上記第1及び第2実施形態において、ドラム11
CHM
、11
SLR
、11
H2O2
の膨張、暴発を防ぐために、ドラム11
CHM
、11
SLR
、11
H2O2
上部にある上部に2つある入出口、流路10
CHM
、10
SLR
、10
H2O2
とは反対側の入口に脱気の流路(ドレイン)を設けると共に、ドラム11
CHM
、11
SLR
、11
H2O2
に安全弁、圧力センサ、制御機能を追加してもよい。この場合の制御は、ドラム11
CHM
、11
SLR
、11
H2O2
が一定圧を超えると安全弁が開放し、ドラム11
CHM
、11
SLR
、11
H2O2
内の圧力を開放し、ドラム11
CHM
、11
SLR
、11
H2O2
が設定圧力まで下がったら安全弁を閉弁する、という制御を繰り返すようにするとよい。
【符号の説明】
【0083】
1 ドラム
2 研磨液供給装置
3 ドラム
8 研磨装置
11 ドラム
14 ガス加圧部
17A 分岐点
21 低圧弁
26 流量調整バルブ
29 超純水送入口
31 天板
32 底板
33 側板
38 エアシリンダー
40 調合流路
40A 流路
50 ミキシングユニット
50A ミキシングユニット
51A 筐体
52A タンク
52A 調合タンク
53A 加圧タンク
54A ガス加圧部
55A フローコントローラ
56A 充填量センサ
59A 攪拌装置
70 PLC
79 送出口
81 ヘッド
83 定盤
84 研磨パッド
85 ノズル
88 ウエーハ
89 液体送入口
91 タンク
92 ポンプ
311 312 321 322 板