(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-31
(45)【発行日】2022-09-08
(54)【発明の名称】電力変換装置、鉄道車両電気システム
(51)【国際特許分類】
H02M 1/08 20060101AFI20220901BHJP
H03K 17/12 20060101ALI20220901BHJP
H03K 17/16 20060101ALI20220901BHJP
【FI】
H02M1/08 A
H02M1/08 341B
H03K17/12
H03K17/16 H
(21)【出願番号】P 2019166782
(22)【出願日】2019-09-13
【審査請求日】2021-11-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000233273
【氏名又は名称】株式会社 日立パワーデバイス
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】増田 徹
(72)【発明者】
【氏名】早川 誠一
(72)【発明者】
【氏名】高柳 雄治
【審査官】栗栖 正和
(56)【参考文献】
【文献】実開平04-121395(JP,U)
【文献】特開2004-096829(JP,A)
【文献】特開2019-054665(JP,A)
【文献】特表2018-512838(JP,A)
【文献】特開平10-014215(JP,A)
【文献】特開2017-046385(JP,A)
【文献】特開平01-243721(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 1/08
H03K 17/16
H03K 17/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のパワー半導体モジュールと、
前記複数のパワー半導体モジュールを駆動制御するゲート駆動回路と、
前記複数のパワー半導体モジュールと前記ゲート駆動回路の間に接続され、前記ゲート駆動回路に対して前記複数のパワー半導体モジュールを互いに並列接続させるゲート配線回路により構成されるアーム回路を備えた電力変換装置であって、
前記ゲート配線回路は、前記複数のパワー半導体モジュールの各々に対応する複数のインピーダンス回路を有し、
前記インピーダンス回路は、第1の抵抗の一端とインダクタの一端とが互いに接続され、かつ、前記第1の抵抗の他端と前記インダクタの他端とが互いに接続されて成る並列回路と、前記並列回路に直列接続された第2の抵抗を有し、
前記インピーダンス回路のインピーダンス値は、当該インピーダンス回路に印加される電圧の周波数に依って変化し、低域の周波数ではインピーダンス値が小さく、高域の周波数ではインピーダンス値が大きくなることを特徴とする電力変換装置。
【請求項2】
複数のパワー半導体モジュールと、
前記複数のパワー半導体モジュールを駆動制御するゲート駆動回路と、
前記複数のパワー半導体モジュールと前記ゲート駆動回路の間に接続され、前記ゲート駆動回路に対して前記複数のパワー半導体モジュールを互いに並列接続させるゲート配線回路により構成されるアーム回路を備えた電力変換装置であって、
前記複数のパワー半導体モジュールの各々は、パワー半導体トランジスタと共に当該パワー半導体モジュールに内蔵され、前記パワー半導体トランジスタのゲート端子と前記ゲート駆動回路の間に直列に接続されるインピーダンス回路を有し、
前記インピーダンス回路は、第1の抵抗の一端とインダクタの一端とが互いに接続され、かつ、前記第1の抵抗の他端と前記インダクタの他端とが互いに接続されて成る並列回路と、前記並列回路に直列接続された第2の抵抗を有し、
前記インピーダンス回路のインピーダンス値は、当該インピーダンス回路に印加される電圧の周波数に依って変化し、低域の周波数ではインピーダンス値が小さく、高域の周波数ではインピーダンス値が大きくなることを特徴とする電力変換装置。
【請求項3】
請求項
1または2に記載の電力変換装置であって、
前記第1の抵抗の抵抗値は、前記第2の抵抗の抵抗値より大きいことを特徴とする電力変換装置。
【請求項4】
請求項
3に記載の電力変換装置であって、
前記第1の抵抗の抵抗値は、前記第2の抵抗の抵抗値の3倍以上であることを特徴とする電力変換装置。
【請求項5】
請求項
1または2に記載の電力変換装置であって、
前記インダクタは、磁気コアにコイル配線を巻き付けて構成されることを特徴とする電力変換装置。
【請求項6】
請求項
5に記載の電力変換装置であって、
前記磁気コアは、前記高域の周波数において高インピーダンス透磁率を有することを特徴とする電力変換装置。
【請求項7】
請求項
5に記載の電力変換装置であって、
前記インピーダンス回路を複数個備え、
互いに隣接して配置される2つのインピーダンス回路において、各々のインダクタを構成する磁気コアを1つの磁気コアで共用することを特徴とする電力変換装置。
【請求項8】
請求項1または2に記載の電力変換装置であって、
前記複数のパワー半導体モジュールと前記ゲート駆動回路の間に接続され、前記ゲート駆動回路に対して前記複数のパワー半導体モジュールを互いに並列接続させるソースセンス配線回路またはエミッタセンス配線回路を備え、
前記インピーダンス回路は、前記ゲート配線回路および前記ソースセンス配線回路またはエミッタセンス配線回路の両方にそれぞれ配置されていることを特徴とする電力変換装置。
【請求項9】
パンタグラフと、
前記パンタグラフに接続された遮断器と、
前記遮断器に接続されたリアクトルと、
前記リアクトルに接続された電力変換装置と、
前記電力変換装置に接続された電動機と、を備え、
前記電力変換装置は、請求項1から
8のいずれか1項に記載の電力変換装置であることを特徴とする鉄道車両電気システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のパワー半導体モジュールを互いに並列接続して構成する電力変換装置に係り、特に、ゲート駆動回路とモジュールに搭載したパワー半導体チップのゲート間を接続するゲート配線回路の構成に関する。
【背景技術】
【0002】
産業機器や電気鉄道車両、ハイブリッド自動車や電気自動車などの電力制御やモータ制御には電力変換装置が用いられており、パワー半導体モジュールやコンデンサなどの電気部品と、それらを接続する配線、電気部品の電力損失により生じる発熱を放熱する放熱器によって構成され、モータや系統配線などの負荷へ電力を与える。
【0003】
電力変換装置には、負荷回路に所定の出力電流を出力することが求められ、その応用や顧客仕様によって出力電流の値は異なる。そのため、出力電流によっては単一のパワー半導体モジュールの定格電流では不足する場合が発生し、複数のパワー半導体モジュールを並列接続することで所要出力電流を満足する方法が採られる。
【0004】
しかしながら、複数のパワー半導体モジュールを並列接続し、単一のゲート駆動回路を用いて駆動する場合には、スイッチング時のターンオンやターンオフのタイミングにおいて、電圧もしくは電流の寄生振動が発生し、その減衰が不十分である場合は振幅の大きな発振まで成長する。この場合、パワー半導体モジュールにおいて最も電圧定格が小さいゲート電圧に寄生発振が重畳し、その定格電圧を超過する動作が発生する。その結果、パワー半導体モジュールに搭載された半導体素子のゲート部位が損傷し、モジュールの破壊に至る可能性がある。
【0005】
この問題を回避するため、各パワー半導体モジュールのゲートに比較的抵抗値の大きなゲート抵抗を接続することが行われている。例えば、特許文献1では、ゲート駆動回路の出力側に設けられたダンピング抵抗によって寄生発振が抑制される。しかし、上記のように比較的抵抗値の大きなゲート抵抗を接続すると、ゲート駆動回路が駆動すべきパワー半導体モジュールのゲートを駆動する電流(ゲート電流)値が小さくなってしまう。その結果、ターンオン時間とターンオフ時間が同時に長くなり、スイッチング時の損失、すなわちターンオン損失とターンオフ損失が共に大きくなる副作用がある。
【0006】
上記の問題を解決する一例として、特許文献2では、スイッチング時に発生する寄生発振がターンオンもしくはターンオフのいずれかのタイミングで発生することを前提として、寄生発振が発生しないスイッチング動作時の損失が増大しないように、ゲート抵抗がゲート電流の方向によって異なって見えるようにダイオード素子を導入している。
【0007】
特許文献2の
図1には、互いに並列接続された複数の半導体スイッチング素子(T1a,T1b)と複数のバランス抵抗部(Ra,Rb)とを含み、バランス抵抗部は、例えば抵抗R3aとダイオードD2aとの並列回路によってバランス抵抗部Raを構成する例が示されている。この構成によって、ターンオンする場合とターンオフする場合とでその抵抗値が異なる値に切り替えられるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2003-88098号公報
【文献】国際公開第2017/026367号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記特許文献2で示された手段では、ターンオンとターンオフのうち寄生発振が生じるスイッチング動作では、そのスイッチング時間が長くなり、スイッチング損失の増大を避けることができない。
【0010】
近年、パワー半導体モジュール用の素子としてSiCやGaNなどの新素子の開発が著しく、寄生発振が発生するスイッチング動作(ターンオン、ターンオフ、もしくはリカバリ動作)は一様ではなく、より根本的な解決が必要である。
【0011】
そのため、ターンオンとターンオフの両方のスイッチング動作においてスイッチング時間を短縮しながら、寄生発振を抑制する手段が望まれる。
【0012】
そこで、本発明の目的は、複数のパワー半導体モジュールを互いに並列接続して構成する電力変換装置において、スイッチング動作時に発生する寄生発振を抑制しつつ、スイッチング損失を低減可能な電力変換装置とそれを搭載する鉄道車両電気システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、本発明は、複数のパワー半導体モジュールと、前記複数のパワー半導体モジュールを駆動制御するゲート駆動回路と、前記複数のパワー半導体モジュールと前記ゲート駆動回路の間に接続され、前記ゲート駆動回路に対して前記複数のパワー半導体モジュールを互いに並列接続させるゲート配線回路により構成されるアーム回路を備えた電力変換装置であって、前記ゲート配線回路は、前記複数のパワー半導体モジュールの各々に対応する複数のインピーダンス回路を有し、前記インピーダンス回路は、第1の抵抗の一端とインダクタの一端とが互いに接続され、かつ、前記第1の抵抗の他端と前記インダクタの他端とが互いに接続されて成る並列回路と、前記並列回路に直列接続された第2の抵抗を有し、前記インピーダンス回路のインピーダンス値は、当該インピーダンス回路に印加される電圧の周波数に依って変化し、低域の周波数ではインピーダンス値が小さく、高域の周波数ではインピーダンス値が大きくなることを特徴とする。
【0014】
また、本発明は、複数のパワー半導体モジュールと、前記複数のパワー半導体モジュールを駆動制御するゲート駆動回路と、前記複数のパワー半導体モジュールと前記ゲート駆動回路の間に接続され、前記ゲート駆動回路に対して前記複数のパワー半導体モジュールを互いに並列接続させるゲート配線回路により構成されるアーム回路を備えた電力変換装置であって、前記複数のパワー半導体モジュールの各々は、パワー半導体トランジスタと共に当該パワー半導体モジュールに内蔵され、前記パワー半導体トランジスタのゲート端子と前記ゲート駆動回路の間に直列に接続されるインピーダンス回路を有し、前記インピーダンス回路は、第1の抵抗の一端とインダクタの一端とが互いに接続され、かつ、前記第1の抵抗の他端と前記インダクタの他端とが互いに接続されて成る並列回路と、前記並列回路に直列接続された第2の抵抗を有し、前記インピーダンス回路のインピーダンス値は、当該インピーダンス回路に印加される電圧の周波数に依って変化し、低域の周波数ではインピーダンス値が小さく、高域の周波数ではインピーダンス値が大きくなることを特徴とする。
【0015】
また、本発明は、パンタグラフと、前記パンタグラフに接続された遮断器と、前記遮断器に接続されたリアクトルと、前記リアクトルに接続された電力変換装置と、前記電力変換装置に接続された電動機と、を備え、前記電力変換装置は、上記のいずれかに記載の電力変換装置であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、複数のパワー半導体モジュールを互いに並列接続して構成する電力変換装置において、スイッチング動作時に発生する寄生発振を抑制しつつ、スイッチング損失を低減可能な電力変換装置とそれを搭載する鉄道車両電気システムを実現することができる。
【0017】
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】実施例1の電力変換装置のアーム回路を示す図である。
【
図2A】ゲート電圧に寄生発振が発生しない場合の電圧Vgsの過渡応答波形を示す図である。
【
図2B】ゲート電圧に寄生発振が発生しない場合のゲート電圧波形の周波数毎の振幅の分布を示す図である。
【
図3A】ゲート電圧に寄生発振が重畳した場合の電圧Vgsの過渡応答波形を示す図である。
【
図3B】ゲート電圧に寄生発振が重畳した場合のゲート電圧波形の周波数毎の振幅の分布を示す図である。
【
図4A】実施例1の電力変換装置のインピーダンス回路を示す図である。
【
図5】実施例2の電力変換装置のアーム回路を示す図である。
【
図6】実施例3の鉄道車両電気システムを示す図である。
【
図7】実施例4の電力変換装置のインピーダンス回路を示す図である。
【
図8A】実施例5の電力変換装置のインピーダンス回路を示す図である。
【
図8B】実施例5の電力変換装置のインピーダンス回路を示す図である。
【
図9】実施例6の電力変換装置のインピーダンス回路を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を用いて本発明の実施例を説明する。なお、各図面において同一の構成については同一の符号を付し、重複する部分についてはその詳細な説明は省略する。
【実施例1】
【0020】
図1から
図4Cを参照して、本発明の実施例1の電力変換装置について説明する。本実施例では、先ず、並列接続したパワー半導体モジュールを用いた電力変換装置に寄生発振が発生する例を示し、その場合のゲート電圧波形の挙動について説明する。
【0021】
ここで、ゲート電圧(Vgs)とは、ゲート駆動回路の出力端子であるゲート駆動端子とソースセンス駆動端子間の電圧、もしくは、パワー半導体モジュールのゲート端子とソースセンス端子間の電圧を示す。特定する端子間のゲート電圧については、端子名を以下明示する。
【0022】
図2Aおよび
図2Bは、並列接続したパワー半導体モジュールを含んで構成する電力変換装置において、スイッチング時のゲート電圧に寄生発振が発生しない例を示す。
【0023】
図2Aは、ターンオン動作時のゲート端子とソースセンス端子間の電圧Vgsの過渡応答波形である。オフ電圧であるVGSMからオン電圧であるVGSPに向けてVgsが変化する。その電圧波形の変化率は緩やかであり、図示した時間範囲では、正負両側のゲート電圧定格以内(ゲート電圧定格の上限と下限の範囲内)で動作している。
【0024】
この波形のFFT解析結果(FFT:高速フーリエ変換)を
図2Bに示す。横軸を周波数の対数表示で、縦軸を周波数毎に分析した電圧振幅の値で示す。
図2Bからわかるように、低域周波数では、Vgsの過渡応答に対応して、振幅が大きい分布をしている。また、高域周波数では、低域に比較して更に小さい振幅レベルで分布しており、Vgsが寄生発振の無い正常動作をする限りはその過渡波形に応答する周波数分布は主に低域周波数に発生すると言える。
【0025】
一方、
図3Aおよび
図3Bは、同じVgsのターンオン波形に寄生発振が重畳した場合を示す。
図3Aの過渡応答波形では、Vgsがオン電圧であるVGSPに近づくタイミングで寄生発振が発生している。その発振の振動振幅は大きく、ゲートの最大定格を正側と負側のいずれも超過する波形になっている。この場合、パワー半導体モジュールに搭載したパワー半導体チップのゲート部位が損傷し、破壊する可能性がある。また、
図3Bに示すように、ゲート電圧波形の周波数毎の振幅分布は、発生した振動(ゲート電圧寄生発振振動)の影響から、高域周波数において振幅値が増大していることが明らかである。
図3Aで示した寄生発振振動は特定の周波数で振動している。この波形を周波数毎の振幅分布で見た場合には前記の特定の周波数を中心とする高域周波数にて振幅が大きくなるからである。
【0026】
上記のゲート電圧波形における寄生発振の有無の比較から、次のことがわかる。
【0027】
(1)寄生発振の無い正常動作をするゲート波形の周波数分布は低域周波数に集中している。
【0028】
(2)寄生発振が発生した場合、その周波数分布は高域周波数に重畳する。
【0029】
寄生発振の過渡応答波形が占めるその周波数域、すなわち高域周波数において、共振電圧や共振電流の振幅を低減することができれば、寄生発振まで至ることはなく、ゲート電圧をその定格の範囲内で利用することができる。
【0030】
次に、
図1を用いて、本実施例の電力変換装置の構成について説明する。
図1は、本実施例の電力変換装置を構成するアーム回路90を示す図である。アーム回路90は、ゲート駆動回路1と複数のパワー半導体モジュール10a~10nとゲート配線回路を構成する複数のインピーダンス回路20a~20nで構成されている。
【0031】
インピーダンス回路20a~20nは、ゲート駆動回路1のゲート駆動端子とソースセンス駆動端子とパワー半導体モジュール10a~10nの各々のゲート端子とソースセンス端子とを接続する回路である。
【0032】
パワー半導体モジュール10a~10nの各々に対応するインピーダンス回路20a~20nの一端は、ゲート駆動回路1のゲート駆動端子nGDgとソースセンス駆動端子nGDssにまとめて接続され、インピーダンス回路20a~20nの各々の他端は、対応するパワー半導体モジュール10a~10nのゲート端子とソースセンス端子とにそれぞれ接続される。
【0033】
ゲート駆動回路1は、端子nCNTにて電力変換装置の制御回路からの制御回路信号を入力とし、ゲート駆動端子nGDgとソースセンス駆動端子nGDssを介してパワー半導体モジュール10a~10nの駆動制御を行う。
【0034】
パワー半導体モジュール10a~10nの個数は2つ以上備え、ドレイン端子は端子nDにて、ソース端子は端子nSにてお互いに接続される。ゲート端子とソースセンス端子は、後述するゲート配線回路を構成するインピーダンス回路に接続する。なお、パワー半導体モジュールの並列接続数は2つ以上の自然数n個であって、その上限は限定するものではない。
【0035】
ゲート配線回路は、
図1に示すように、複数のインピーダンス回路20a~20nと電気的な接続を行う配線によって構成される。ゲート駆動端子nGDgとソースセンス駆動端子nGDssをゲート配線回路の入力とし、ゲート駆動端子nGDgとソースセンス駆動端子nGDssからパワー半導体モジュール10a~10nの各々に対応するインピーダンス回路20a~20nに並列分岐される。
【0036】
インピーダンス回路20a~20nは、その出力端子である端子nPMga~nPMgnと端子nPMssa~nPMssnにてパワー半導体モジュール10a~10nのゲート端子とソースセンス端子に接続される。ゲート配線回路の電気的な接続配線の長さは、ゲート駆動端子nGDgおよびソースセンス駆動端子nGDssから、パワー半導体モジュール10a~10nの各々のゲート端子およびソースセンス端子との間に生じる電気長が均一になるよう設計と実装がされるのが好ましい。
【0037】
但し、電気長の均一性が損なわれても、ゲート駆動回路1がパワー半導体モジュール10a~10nに向けて駆動する電圧波形と電流波形の時間遅延誤差(各々のパワー半導体モジュール間のゲート駆動波形の遅延誤差)が、パワー半導体モジュール10a~10nの動作に影響を与えない範囲で許容できることは言うまでもない。
【0038】
インピーダンス回路20a~20nは、互いに並列接続されたパワー半導体モジュール10a~10nのゲート間の共振に起因して発生する寄生発振を抑制しながら、パワー半導体モジュール10a~10nのスイッチング動作、すなわちターンオン動作とターンオフ動作の所要時間を短くしてスイッチング損失を小さくするために用いられる。
【0039】
その構造の一例を
図1のインピーダンス回路20aに示す。インピーダンス回路20aは、ゲート配線経路に、抵抗R1aとインダクタL1aの並列回路に抵抗R2aを直列接続し、ソースセンス配線経路は、電気的配線を配置したものである。
【0040】
インダクタL1aのインピーダンスは、低域周波数では低く、高域周波数では高いため、L1aと並列の抵抗R1aは、低域周波数では低インピーダンス短絡され、高域周波数ではその値である抵抗R1aの値に見える。ここで、
図1中の抵抗R1a~R1nと抵抗R2a~R2nの値をそれぞれ、R1とR2として以降示す。
【0041】
本実施例のインピーダンス回路の動作の一例を、
図4Aから
図4Cを用いて説明する。
図4Aから
図4Cには、
図1からインピーダンス回路20a,20bのみを取り出し、その端子間のインピーダンスについて算出した特性を示す。
【0042】
図4Aは、
図1からインピーダンス回路20a,20bのみを取り出し、その効果を検討した回路である。
図4Bは、ゲート駆動端子nGDgおよびソースセンス駆動端子nGDssから、端子nPMgaおよび端子nPMssaまでのインピーダンス値の周波数依存性を示す。具体的には、端子nGDssから端子nPMssa間は電気的配線で接続されていることから、ゲート駆動端子nGDgから端子nPMgaまでのインピーダンス値を示す。
図4Aの回路構成の場合、そのインピーダンス値は、
図4Bに実線で示すように、低域周波数ではインダクタL1による短絡効果が効いて抵抗値R2のインピーダンスが発生する。
【0043】
一方、高域周波数では、抵抗R1と抵抗R2の直列回路に見えるため、R1+R2で決まるインピーダンスが発生する。低域周波数と高域周波数の間の中域周波数が上記のインピーダンス2値(R1,R1+R2)の切り替わり範囲になっている。インピーダンス回路20a,20bは必ず、低域周波数のインピーダンス値より高域周波数のインピーダンス値が高い構成になっている。
【0044】
図4Cに示すインピーダンスの周波数依存性は、端子nPMgaと端子nPMssaの2端子と、端子nPMgbと端子nPMssbの2端子との間に発生するインピーダンス値を示している。具体的には、端子nPMssaから端子nPMssb間は電気的配線で接続されていることから、端子nPMgaから端子nPMgbまでのインピーダンス値を示す。すなわち、その経路は、インピーダンス回路20aとインピーダンス回路20bの直列回路となる。この経路は、並列接続したパワー半導体モジュール10aと10b(
図1に図示)のゲート端子間の接続経路に相当する。
【0045】
図4Cのインピーダンス特性から、高域周波数ではそのインピーダンスが2・(R1+R2)の値となり、低域周波数の2・R2の値に比較して2・R1分だけ高抵抗化できる。このインピーダンスの周波数領域(低域と高域)による依存性によって、本発明の解決すべき課題である「並列接続したパワー半導体モジュールのゲート間の共振に起因して発生する寄生発振を抑制しながら、パワー半導体モジュールのスイッチング動作を速くする」ことを実現可能とする。
【0046】
図4Bおよび
図4Cにそれぞれ示した破線の特性は、インピーダンス回路20(20a,20b)にL1(L1a,L1b)を導入しない場合(L1無し)の特性を示す。この場合、
図4Bでは、周波数の低域と高域にかかわらず、ゲート駆動端子nGDgおよびソースセンス駆動端子nGDssから、端子nPMgaおよび端子nPMssa端子の間に、ゲート経路のインピーダンスとして抵抗R1+R2が発生する。
【0047】
また、
図4Cに示すように、端子nPMgaと端子nPMgssaの2端子と、端子nPMgbと端子nPMgssbの2端子との間に、抵抗2・(R1+R2)が発生する。インダクタL1(L1a,L1b)を導入しない場合には、高い抵抗値となるインピーダンスが発生することになり、この場合は並列接続したパワー半導体モジュールのゲート間の共振をダンピングする効果は得られるが、スイッチング動作のターンオン時間とターンオフ時間が長くなり、スイッチング損失が増えてしまう。
【0048】
以上説明したように、本実施例の電力変換装置は、複数のパワー半導体モジュール10a~10nと、複数のパワー半導体モジュール10a~10nを駆動制御するゲート駆動回路1と、複数のパワー半導体モジュール10a~10nとゲート駆動回路1の間に接続され、ゲート駆動回路1に対して複数のパワー半導体モジュール10a~10nを互いに並列接続させるゲート配線回路により構成されるアーム回路90を備えており、ゲート配線回路は、複数のパワー半導体モジュール10a~10nの各々に対応する複数のインピーダンス回路20a~20nを有し、インピーダンス回路20a~20nの各々のインピーダンス値は、当該インピーダンス回路に印加される電圧の周波数に依って変化し、低域の周波数ではインピーダンス値が小さく、高域の周波数ではインピーダンス値が大きくなるように構成されている。
【0049】
また、インピーダンス回路20aは、第1の抵抗(抵抗R1a)の一端とインダクタL1aの一端とが互いに接続され、かつ、第1の抵抗(抵抗R1a)の他端とインダクタL1aの他端とが互いに接続されて成る並列回路と、当該並列回路に直列接続された第2の抵抗(抵抗R2a)を有するように構成されている。
【0050】
なお、第1の抵抗(抵抗R1a)とインダクタL1aの並列回路のみで、上記した本実施例の効果が得られる場合は、第2の抵抗(抵抗R2a)を設けない構成もあり得る。
【0051】
これにより、複数のパワー半導体モジュールを互いに並列接続して構成する電力変換装置において、高速スイッチング動作時に発生する寄生発振を抑制しつつ、スイッチング損失を低減することができる。
【0052】
なお、第1の抵抗(抵抗R1a)の抵抗値は、第2の抵抗(抵抗R2a)の抵抗値より大きい(R1>R2)ことが必要である。
図4Bに示すように、本発明のインピーダンス回路を用いることで、R2の抵抗値を低く設定することができるが、低いR2の2倍の(R1+R2)では、高域周波数のインピーダンスとして低く、実用的ではない。そのため、定性的にR1>R2とする必要がある。
【0053】
また、本発明の効果を最大限に享受するためには、第1の抵抗(抵抗R1a)の抵抗値を、第2の抵抗(抵抗R2a)の抵抗値の3倍以上(例えば3倍~4倍程度)とするのがより好適である。
【実施例2】
【0054】
図5を参照して、本発明の実施例2の電力変換装置について説明する。実施例1(
図1)と同様に、電力変換装置を構成するアーム回路90を示す図である。本実施例のアーム回路90は、ゲート駆動回路1と複数のパワー半導体モジュール11a~11nとゲート配線回路で構成されている。
【0055】
ゲート配線回路は、ゲート駆動回路1のゲート駆動端子nGDgとソースセンス駆動端子nGDssとパワー半導体モジュール11a~11nの各々のゲート端子とソースセンス端子とを接続する回路である。本実施例では、ゲート配線回路は電気的な接続を行う配線で構成する。
【0056】
本実施例のパワー半導体モジュール11a~11nは、その内部構成に特徴があり、インピーダンス回路21a~21nをモジュール内部のゲート配線経路に配置している。つまり、インピーダンス回路21a~21nの各々は、パワー半導体モジュール11a~11nにそれぞれ内蔵された形で構成されている。
【0057】
インピーダンス回路21a~21nの構成は、実施例1(
図1)に示したインピーダンス回路20a~20nと同様であり、その接続構成と周波数領域に依存したインピーダンス値の変化についての説明は割愛する。
【0058】
以上説明したように、本実施例の電力変換装置では、複数のパワー半導体モジュール11a~11nと、複数のパワー半導体モジュール11a~11nを駆動制御するゲート駆動回路1と、複数のパワー半導体モジュール11a~11nとゲート駆動回路1の間に接続され、ゲート駆動回路1に対して複数のパワー半導体モジュール11a~11nを互いに並列接続させるゲート配線回路により構成されるアーム回路90を備えており、複数のパワー半導体モジュール11a~11nの各々は、パワー半導体トランジスタと共にパワー半導体モジュール11a~11nに内蔵され、パワー半導体トランジスタのゲート端子とゲート駆動回路1の間に直列に接続されるインピーダンス回路21a~21nを有し、インピーダンス回路21a~21nの各々のインピーダンス値は、当該インピーダンス回路に印加される電圧の周波数に依って変化し、低域の周波数ではインピーダンス値が小さく、高域の周波数ではインピーダンス値が大きくなるように構成されている。
【0059】
本実施例では、インピーダンス回路21a~21nをそれぞれパワー半導体モジュール11a~11nの内部に配置したことにより、以下の利点が発生する。
【0060】
(1)ゲート配線回路の構成が簡単となり、組み立て工数を低減できる。
【0061】
(2)モジュール内蔵のパワー半導体素子の特性を考慮して並列モジュールのゲート間に発生し得る寄生発振を抑制するよう予め周波数依存性を調整したインピーダンス回路21a~21nを内蔵することにより、パワー半導体モジュールの並列接続の設計において、ゲート間の寄生発振に対する設計工数が不要となる。
【実施例3】
【0062】
図6を参照して、本発明の実施例3の鉄道車両電気システムについて説明する。
図6は、実施例1または実施例2で示したアーム回路90を用いて、3相電力変換装置を含む鉄道車両電気システムを構成した一例である。
【0063】
本実施例の鉄道車両電気システムは、パンタグラフ100と、遮断器200と、リアクトル300と、電力変換装置400と、負荷となる電動機500によって構成される。
【0064】
電力変換装置400は、コンデンサ4および制御回路3を備えており、コンデンサ4により主電圧Vccを保持し、制御回路3によりゲート駆動回路の制御信号を生成し、6つのアーム回路90a~90fの各ゲート駆動回路1a~1fにそれぞれ入力する。
【0065】
アーム回路90aと90bは第1相のインバータレグを構成し、同様にアーム回路90cと90dは第2相のインバータレグを構成し、アーム回路90eと90fは第3相のインバータレグを構成する。各インバータレグの出力線を電動機500へと接続する。各アーム回路90a~90fは、それぞれゲート駆動回路1a~1fとパワー半導体モジュールの並列接続回路(並列モジュール回路)2a~2fで構成されている。
【0066】
本実施例の利点は、
(1)本発明のインピーダンス回路を用いたパワー半導体モジュールの並列構成を含むアーム回路を用いることで、モジュール間のゲート寄生発振を抑圧しながら低スイッチング損失の3相電力変換装置を構成することができる。
【0067】
その結果、電動機500に出力する出力電流の仕様値に適うようにパワー半導体モジュールの並列接続を容易に設計でき、鉄道車両電気システムに用いるパワー半導体モジュールの調達性を向上し、その設計工数を減少させることができる。
【0068】
(2)電動機500への必要な電流仕様を満足するために、小型のパワー半導体モジュールを並列接続することで電流仕様を過剰なマージンを設けずに設定できる。
【0069】
その結果、小型のパワー半導体モジュールを必要最小限の並列数で電力変換装置を構成し、かつ、そのスイッチング損失を低く設定できることから、電力変換装置に内包される放熱器の体積も小型化できる。従って、電力変換装置を小型化することが可能になり、鉄道車両電気システムの小型化を実現できる、ことにある。
【実施例4】
【0070】
図7を参照して、本発明の実施例4の電力変換装置について説明する。
図7は、インピーダンス回路22a,22bを用いて構成したゲート配線回路である。本実施例のインピーダンス回路22a,22bは、インダクタL1(L1a,L1b)に磁気コアを用いる。(
図7中のインダクタL1a,L1bをコア付きシンボルで示す。)
磁気コアを用いることによって、本実施例のインピーダンス回路で新たに得られる利点は、
(1)磁気コアによってインダクタを流れる電流が発生する磁束をコア内に閉じ込めることにより、インダクタL1(L1a,L1b)の所定のインダクタンス値を満足するのに必要なコイル配線長を短くすることができる。
【0071】
その結果、インダクタL1(L1a,L1b)の部品体積を減少させることができ、インピーダンス回路22(22a,22b)は、実施例1や実施例2のインピーダンス回路20,21に比較して小型化できる。
【0072】
(2)磁気コアの透磁率の周波数依存性において、高域周波数にてインピーダンスの絶対値が増大する磁気コアを用いることによって、インダクタL1(L1a,L1b)のインダクタンス値が周波数によって増大する効果が得られる。
【0073】
このため、実施例1で説明したインピーダンス回路のインピーダンスの周波数依存性、すなわち
図4Bおよび
図4Cで示したインピーダンス値R2(低域周波数)からR1+R2(高域周波数)、若しくは、2・R2(低域周波数)から2・(R1+R2)(高域周波数)へのインピーダンスの変化率が急峻となる。この結果、低域周波数と高域周波数との弁別性が高まる、ことにある。
【0074】
以上説明したように、本実施例の電力変換装置では、インダクタL1(L1a,L1b)は、磁気コアにコイル配線を巻き付けて構成される。この磁気コアは、高域周波数において高インピーダンス透磁率を有することが望ましい。上記した本実施例の効果をより高めることができる。
【実施例5】
【0075】
図8Aおよび
図8Bを参照して、本発明の実施例5の電力変換装置について説明する。
図8Aは、インピーダンス回路23abを用いて構成したゲート配線回路である。本実施例のインピーダンス回路23abは、抵抗R1aと抵抗R1bのそれぞれにインダクタL1aとインダクタL1bを並列配置し、インダクタL1aとインダクタL1bに共通の磁気コアを用いる。磁気コアを用いる基本的な効果は実施例4にて説明した通りである。
【0076】
本実施例の利点として、
(1)磁気コアを隣接のインピーダンス回路同士で共用することによって、コア内に発生する磁束を2倍化することができ、実効的な誘電率を増大させることが可能になる。
【0077】
その結果、インダクタL1aおよびインダクタL1bの部品体積を一層減少させることができ、インピーダンス回路23abは、実施例1や実施例2のインピーダンス回路20,21に比較して大幅に小型化できる、ことにある。
【0078】
図8Bは、隣接するインピーダンス回路同士で磁気コアを共用する具体的な形態を示す図である。
図8Bに示すように、L1aとL1bで1つの磁気コア30を共用し、そのコイル配線の巻く向きを考慮して実装することにより、上記(1)の利点を得ることができる。
【0079】
以上説明したように、本実施例の電力変換装置では、インピーダンス回路を複数個備えており、互いに隣接して配置される2つのインピーダンス回路において、各々のインダクタL1a,L1bを構成する磁気コアを1つの磁気コアで共用するように構成されている。
【実施例6】
【0080】
図9を参照して、本発明の実施例6の電力変換装置について説明する。
図9は、インピーダンス回路24a,24bを用いて構成したゲート配線回路およびソースセンス配線回路を示す図である。インピーダンス回路24aは、抵抗R1aとインダクタL1aの並列回路に抵抗R2aを直列に接続して構成するゲート配線回路と、抵抗R3aとインダクタL2aの並列回路に抵抗R4aを直列に接続して構成するソースセンス配線回路の両方備えている。インピーダンス回路24bについても、インピーダンス回路24aと同様に構成される。
【0081】
ゲート配線回路に加えてソースセンス配線回路にも周波数依存性のあるインピーダンス回路を用いることにより得られる利点は、
(1)並列接続されたモジュールのゲート間に発生する共振は、成長して寄生発振まで至る。起因となる共振電圧や共振電流は、モジュール間のゲート端子間の配線だけではなく、モジュールのゲート・ソース間容量(例えばMOSFETの場合)を介して、ソース端子やソースセンス端子を経由する。
【0082】
そのため、本発明の周波数依存性のあるインピーダンス回路を、共振の経由路であるソースセンス配線にも配置することによって、寄生発振の抑制効果をより高めることができる。
【0083】
なお、ゲート配線回路とソースセンス配線回路の回路定数(R1,L1,R2とR3,L2,R4)は、必ずしもお互いに等しい値である必要はない。
【0084】
以上の説明を言い換えると、本実施例の電力変換装置では、複数のパワー半導体モジュールとゲート駆動回路1の間に接続され、ゲート駆動回路1に対して複数のパワー半導体モジュールを互いに並列接続させるソースセンス配線回路を備えており、インピーダンス回路(24a,24b)は、ゲート配線回路およびソースセンス配線回路の両方にそれぞれ配置されている。
【0085】
以上説明した本発明の各実施例によれば、複数のパワー半導体モジュールを互いに並列接続して構成する電力変換装置において、スイッチング動作時に発生する寄生発振を抑制しつつ、スイッチング損失を低減可能な電力変換装置とそれを搭載する鉄道車両電気システムを実現することができる。
【0086】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば上記した実施形態は、本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明したすべての構成を備えるものに限定されるものではない。ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることも可能である。
【0087】
例えば、インピーダンス回路における抵抗やインダクタの値について、実現可能な値であれば、その値や実現方法、実装方法については特に限定するものではない。さらに、本発明の説明では、パワー半導体モジュールのパワー半導体チップを本実施例で用いたMOSFET型(MOS型電界効果トランジスタ)に対して、J-FET型(接合型電界効果トランジスタ)のユニポーラデバイス、そしてIGBT型(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)のようなバイポーラデバイスのいずれかのデバイスに置き換え、さらに端子の機能の内、例えば、ドレインをコレクタ、ソースをエミッタに置き換えた場合であっても、本発明の効果は変わるものではない。この場合、各実施例の「ソースセンス配線回路(ソースセンス配線経路)」は「エミッタセンス配線回路(エミッタセンス配線経路)」に置き換えられる。
【0088】
また、実施例3(
図6)で示したように、アーム回路はパワー半導体モジュールの形態が1in1構成に限定するものではなく、2in1構成のパワー半導体を用いて上下アームを構成する場合においても、本発明の効果を得ることができる。
【0089】
また、実施例3(
図6)では、本発明の電力変換装置を鉄道車両電気システムに適用する例を説明したが、太陽光発電のPCS(Power Conditioning System)や電気自動車の電力変換装置等にも適用可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0090】
1,1a~1f:ゲート駆動回路
2,2a~2f:パワー半導体モジュールの並列接続回路
3:制御回路
4:コンデンサ
10,10a~10n,11,11a~11n:パワー半導体モジュール
20a~20n,21a~21n,22a,22b,22ab,23ab,24a,24b:インピーダンス回路
30:磁気コア
90,90a~90f:アーム回路
100:パンタグラフ
200:遮断器
300:リアクトル
400:電力変換装置
500:電動機
L1,L1a~L1n:インダクタ
R1,R1a~R1n,R2,R3,R4:抵抗