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  • 特許-エレベータ装置 図1
  • 特許-エレベータ装置 図2
  • 特許-エレベータ装置 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-31
(45)【発行日】2022-09-08
(54)【発明の名称】エレベータ装置
(51)【国際特許分類】
   B66B 3/02 20060101AFI20220901BHJP
【FI】
B66B3/02 V
B66B3/02 Q
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019193403
(22)【出願日】2019-10-24
(65)【公開番号】P2021066567
(43)【公開日】2021-04-30
【審査請求日】2022-02-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000232955
【氏名又は名称】株式会社日立ビルシステム
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】大和田 健夫
(72)【発明者】
【氏名】金山 泰裕
(72)【発明者】
【氏名】高橋 裕智
(72)【発明者】
【氏名】安藤 厚
【審査官】加藤 三慶
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-230936(JP,A)
【文献】特開2007-168950(JP,A)
【文献】特開昭58-216873(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
昇降路内において運転される乗りかごと、
前記昇降路内の位置情報を有するコードテープと、
前記コードテープから取得される位置情報に基づいて、前記乗りかごの運転を制御するエレベータ制御装置と、
を備えるエレベータ装置において、
前記昇降路内において階床ごとに設けられ、前記階床における前記乗りかごの着床位置情報を有する着床位置検出コードと、
前記昇降路内の温度を測定する温度測定装置と、
前記昇降路内の温度と、前記温度に対する前記位置情報と前記着床位置情報との位置ずれ情報を記録するデータベースと、
を備え、
前記エレベータ制御装置は、前記温度測定装置によって取得される温度情報と前記データベースとに基づいて、前記コードテープから取得される前記位置情報を補正し、補正された前記位置情報に基づいて、前記乗りかごの着床を制御することを特徴とするエレベータ装置。
【請求項2】
請求項1に記載のエレベータ装置において、
前記エレベータ制御装置は、前記補正された位置情報と、前記着床位置情報とに基づいて、前記乗りかごの床合わせ運転を実行することを特徴とするエレベータ装置。
【請求項3】
請求項1に記載のエレベータ装置において、
前記データベースは、通常運転中に取得される前記温度情報および前記位置ずれ情報から構築されることを特徴とするエレベータ装置。
【請求項4】
請求項1に記載のエレベータ装置において、
前記着床位置検出コードは、前記コードテープに並設され、
前記着床位置検出コードが有する前記着床位置情報と、前記コードテープが有する前記位置情報とが、前記乗りかごに設けられる読取装置によって、同時に取得されることを特徴とするエレベータ装置。
【請求項5】
請求項1に記載のエレベータ装置において、
前記着床位置検出コードは、乗場ドアポケットの水平方向端部に接続されるブラケットに設けられることを特徴とするエレベータ装置。
【請求項6】
請求項5に記載のエレベータ装置において、
前記ブラケットには、前記コードテープの左右方向の動きを制限するガイド部材が設けられることを特徴とするエレベータ装置。
【請求項7】
請求項1に記載のエレベータ装置において、
前記エレベータ制御装置は、前記データベースの更新時に、前記位置ずれ情報の大きさに基づいて、前記コードテープの異常を検出することを特徴とするエレベータ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、位置検出用コードテープを備えたエレベータ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
コードテープを用いてエレベータの乗りかごの位置を検出する従来技術として、特許文献1に記載の技術が知られている。
【0003】
特許文献1に記載の技術では、長さ方向に沿って、エレベータ乗りかごの位置を決定するためのコードを有する測定テープが、エレベータシャフト内に垂直に配置され、基準マークを有する少なくとも一つのマーキング要素がエレベータシャフトに取り付けられる。測定テープおよび基準マークは、センサ装置によって検出される。そして、評価装置によって、測定テープと基準マークとの位置合わせをする。これにより、エレベータの階開口部に対する測定テープの変位が補正される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-230936号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来技術では、測定テープの設置場所における温度変化により、測定テープの熱膨張に伴う測定テープの変位の大きさが変動する。そのため、温度が変化するたびに、着床時の乗りかご位置補正量が異なり、床合せ運転が必要になる。
【0006】
そこで、本発明は、コードテープにより乗りかご位置を検出しながらも、温度が変化しても床合わせ運転の回数や床合わせ運転時の乗りかご移動量を抑制できるエレベータ装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明によるエレベータ装置は、昇降路内において運転される乗りかごと、昇降路内の位置情報を有するコードテープと、コードテープから取得される位置情報に基づいて、乗りかごの運転を制御するエレベータ制御装置と、を備えるものであって、昇降路内において階床ごとに設けられ、階床における乗りかごの着床位置情報を有する着床位置検出コードと、昇降路内の温度を測定する温度測定装置と、昇降路内の温度と、温度に対する位置情報と着床位置情報との位置ずれ情報を記録するデータベースと、を備え、エレベータ制御装置は、温度測定装置によって取得される温度情報とデータベースとに基づいて、コードテープから取得される位置情報を補正し、補正された位置情報に基づいて、乗りかごの着床を制御する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、温度変化に伴いコードテープの変位量が変化しても、床合わせ運転の回数や床合わせ運転時の乗りかご移動量を抑制できる。
【0009】
上記した以外の課題、構成および効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】一実施例であるエレベータ装置の全体構成を示す正面図である。
図2図1におけるブラケット70付近の構成を示す正面図である。
図3】実施例におけるエレベータ制御システムの構成を示す機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施例について、図面を用いながら説明する。なお、各図において、参照番号が同一のものは同一の構成要件あるいは類似の機能を備えた構成要件を示している。
【0012】
図1は、本発明の一実施例であるエレベータ装置の全体構成を示す正面図である。また、図2は、図1におけるブラケット70付近の構成を示す正面図である。なお、これら図1および図2は、昇降路内から乗り場ドア側を見た場合の正面図である。
【0013】
図1に示す乗りかご10は、機械室21に設置される巻上機(図示せず)を原動力として、乗りかご10に接続される主ロープにより駆動され、昇降路20内を上下方向に移動する。各階の乗場ドア30は、乗りかご10の移動方向に沿って所定の間隔を置いて設置されている。各階において、乗場ドアポケット31が乗場ドア30の上部に設けられる。なお、乗場ドアポケットには、乗場ドア30用のドアレール(図示せず)などが設けられる。エレベータ制御装置90は、機械室21内に設置され、乗りかご10の運転制御を行う。
【0014】
図1に示すように、長尺状の位置検出用コードテープ40は、昇降路20内において、位置検出用コードテープ40の長手方向が、乗りかご10の移動方向に沿うように設置されている。位置検出用コードテープ40の上端部および下端部は、それぞれ、昇降路20の頂部付近に設けられる上部取付部材41、および昇降路20の底部付近に設けられる下部取付部材42により、昇降路内において固定されている。
【0015】
位置検出用コードテープ40は、乗りかご10が移動する範囲の全長よりも長い範囲にわたり設置される。位置検出用コードテープ40は、昇降路20内の高さ方向の位置情報を有する。本実施例において、この位置情報は、バーコードもしくは2次元コードによって、位置検出用コードテープ40の表面に設定される。
【0016】
乗りかご10の上部には、位置検出用コードテープ40の位置情報を読み取るコード読取装置50が設けられる。コード読取装置50は、位置検出用コードテープ40に対向し、乗りかご10の移動中に位置情報を連続的に読み取る。なお、コード読取装置50は、位置検出用コードテープ40の位置情報を光学的に読み取る。例えば、コード読取装置50は、バーコードもしくは2次元コードに光を照射する機能と、バーコードもしくは2次元コードからの反射した光から位置情報を読み取りエレベータ制御装置90に送信する機能とを有する。エレベータ制御装置90は、受信する位置情報に基づいて、昇降路内における乗りかご10の高さ方向の位置を検出する。
【0017】
図1に示すように、ブラケット70が、乗場ドアポケット31の水平方向端部側面にネジなどにより固定される。位置検出用コードテープ40における位置情報が設定される表面の裏面が、ブラケット70の近傍において、昇降路内に向くブラケット70の表面に対向する。
【0018】
なお、ブラケット70と乗場ドアポケット31は、連続する部材により一体成形される一体製缶品としてもよい。
【0019】
図2に示すように、乗場ドアポケット31に固定されるブラケット70は位置検出用コードテープ40を左右方向の動きを制限するガイド部材71を備える。このガイド部材71によって、位置検出用コードテープ40を左右方向の位置決めがなされるとともに、位置検出用コードテープ40の左右方向の位置ずれが防止される。これにより、コード読取装置50によって、確実かつ安定に、位置情報を読み取ることができる。また、ガイド部材71は、位置検出用コードテープ40の左右端部に隣接し、位置検出用コードテープ40の長手方向に平行な壁部を構成する。したがって、位置検出用コードテープ40のバーコードもしくは2次元コードの表面上を覆うような部材が無いので、ブラケット70の近傍でも、コード読取装置50によって位置情報を読み取ることができる。
【0020】
図1および図2に示すように、ブラケット70の昇降路内に向く表面上には、着床位置検出コード60が、位置検出用コードテープ40およびガイド部材71の近傍に並んで設定されている。着床位置検出コード60は、各階における乗りかご10の着床位置情報を有する。本実施例において、この着床位置情報は、バーコードもしくは2次元コードによって、ブラケット70の表面に設定される。コード読取装置50は、ブラケット70に対向すると、ブラケット70に設定される着床位置情報と、前述の位置検出用コードテープ40の位置情報とを同時に読み取る。
【0021】
図1に示すように、本実施例においては、温度測定装置80が、昇降路20内に設けられる。温度測定装置80は、昇降路20内の温度を計測し、計測された温度の情報をエレベータ制御装置90に、有線通信もしくは無線通信により送信する。
【0022】
エレベータ制御装置90は、コード読取装置50から送信される位置検出用コードテープ40の位置情報に基づいて検出される乗りかご10の位置に応じて、乗りかご10の運転を制御する。乗りかご10の着床時には、エレベータ制御装置90は、着床する階床におけるブラケット70の近傍においてコード読取装置5によって読み取られる同階床の着床位置情報と、位置検出用コードテープ40の位置情報とのずれ(差分)を検出し、ずれが所定の閾値以上である場合、着床直後に、ずれの分だけ乗りかご10を動かす再床合わせ運転を実行する。
【0023】
また、エレベータ制御装置90は、各階に着床するたびに、上述のずれと、温度測定装置80から得られる温度情報とを、メモリなどの記憶装置に記録する。これにより、乗りかご10の位置ずれの温度特性を記録するデータベース(後述する図3における「位置ずれ温度特性データベース91」)が構築される。エレベータ制御装置90は、乗りかご10の着床制御時に、このデータベースと温度測定装置80からの温度情報とに基づいて、コード読取装置5によって読み取られる位置検出用コードテープ40の位置情報を補正して、補正された位置情報に基づいて着床制御を実行する。これにより、位置検出用コードテープ40の位置情報の温度変化に伴う再床合わせ運転を抑制できたり、再床合わせ運転における移動量を低減したりすることができる。
【0024】
図3は、本実施例におけるエレベータ制御システムの構成を示す機能ブロック図である。
【0025】
乗りかごの着床時に、昇降路内における乗りかごの位置情報および乗りかごの着床位置情報が、コード読取装置50によって、それぞれ位置検出用コードテープ40および着床位置検出コード60から取得される。着床位置情報と、位置検出用コードテープ40の位置情報とのずれ(差分)、すなわち位置検出用コードテープ40と着床位置検出コード60の位置ずれ情報は、温度測定装置80からの昇降路20内の温度情報とともに、エレベータ制御装置90が備える位置ずれ温度特性データベース91に記録される。なお。エレベータ制御装置90は、位置ずれ温度特性データベース91の記録情報を、階床別に、かつ乗りかごが着床するたびに追加もしくは更新する。
【0026】
なお、エレベータ制御装置90は、位置検出用コードテープ40と着床位置検出コード60の位置ずれ情報を、図3に示すように、コード読取装置50から取得してもよいし、位置検出用コードテープ40の位置情報と着床位置検出コード60の着床位置情報とから演算してもよい。
【0027】
エレベータ制御装置90が、乗りかごの着床制御を実行する時には、温度測定装置80から取得される温度情報と位置ずれ温度特性データベース91とに基づいて、着床制御時点での昇降路内の温度に対する位置検出用コードテープ40と着床位置検出コード60の位置ずれの大きさを推定する。例えば、エレベータ制御装置90は、温度測定装置80から取得される温度情報に最も近い温度における位置ずれ情報を位置ずれ温度特性データベース91から抽出し、抽出された位置ずれ情報を位置ずれの大きさの推定値とする。
【0028】
推定された位置ずれの大きさに基づいて、エレベータ制御装置90における乗りかごの運転制御システム92は、位置検出用コードテープ40の位置情報を補正して、補正された位置情報に基づいて着床制御を実行する。また、運転制御システム92は、補正された位置情報と、乗りかごの着床制御を実行する時に着床位置検出コード60から取得される着床位置情報との差分を算出し、差分の算出値が所定の閾値以上である場合、着床直後に、この差分の分だけ乗りかごを動かす再床合わせ運転を実行する。これにより、温度変化に伴い位置検出用コードテープ40の変位量が変化しても、再床合わせ運転を抑制できたり、再床合わせ運転における移動量を低減したりすることができる。
【0029】
上述のように、本実施例によれば、位置検出用コードテープにより乗りかご位置を検出しながらも、温度が変化しても床合わせ運転の回数や床合わせ運転時の乗りかご移動量を低減できる。
【0030】
また、位置ずれ温度特性データベースが、エレベータの通常運転中に、構築され、情報が追加・更新されるので、季節の変化やエレベータの運転時間帯による位置検出コードテープの伸縮の変化に対して、床合せ運転の回数や移動量を抑制することができる。なお、位置ずれ温度特性データベースに予め既知の情報を記録しておいてもよい。
【0031】
また、位置検出コードテープは、温度変化のほか、経年変化によっても伸縮する。位置検出用コードテープ40と着床位置検出コード60の位置ずれ情報には、経年変化による伸縮による位置ずれも含まれる。したがって、本実施例における位置ずれ温度特性データベースによれば、位置検出コードテープの経年変化に対しても、床合せ運転の回数や移動量を抑制することができる。
【0032】
上述の実施例において、エレベータ制御装置90は、位置ずれ温度特性データベースの更新時に、着床位置検出コード60の着床位置情報と、位置検出用コードテープ40の位置情報とのずれ(差分)、すなわち位置検出用コードテープ40と着床位置検出コード60の位置ずれ情報の大きさに基づいて、位置検出用コードテープ40の異常を検出してもよい。例えば、エレベータ制御装置90は、位置ずれ情報の大きさが所定の閾値以上である場合、位置検出用コードテープ40が異常であると判定する。この場合、エレベータ制御装置90は、位置検出用コードテープ40の交換を要求する信号や、異常検出を報知する信号を、外部へ出力してもよい。
【0033】
なお、本発明は前述した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、前述した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置き換えをすることが可能である。
【0034】
例えば、巻上機および制御装置は、機械室内に限らず、昇降路内に設置されてもよい。
【0035】
コードテープは、磁気記録によって位置情報が設定されていてもよい。この場合、コードテープにおける位置情報は、コード読取装置によって磁気的に読み取られる。
【符号の説明】
【0036】
10 乗りかご
20 昇降路
30 乗場ドア
31 乗場ドアポケット
40 位置検出用コードテープ
41 上部取付部材
42 下部取付部材
50 コード読取装置
60 着床位置検出コード
70 ブラケット
71 ガイド部材
80 温度測定装置
90 エレベータ制御装置
91 位置ずれ温度特性データベース
92 乗りかごの運転制御システム
図1
図2
図3