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特許7133539作業車両の制御システム、作業機の軌跡設定方法、及び作業車両
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-31
(45)【発行日】2022-09-08
(54)【発明の名称】作業車両の制御システム、作業機の軌跡設定方法、及び作業車両
(51)【国際特許分類】
   E02F 3/85 20060101AFI20220901BHJP
   E02F 9/26 20060101ALI20220901BHJP
   E02F 9/20 20060101ALI20220901BHJP
【FI】
E02F3/85 D
E02F9/26 B
E02F9/20 N
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2019502923
(86)(22)【出願日】2018-02-22
(86)【国際出願番号】 JP2018006381
(87)【国際公開番号】W WO2018159434
(87)【国際公開日】2018-09-07
【審査請求日】2021-01-06
(31)【優先権主張番号】P 2017039799
(32)【優先日】2017-03-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】新樹グローバル・アイピー特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】原田 純仁
(72)【発明者】
【氏名】石橋 永至
(72)【発明者】
【氏名】松下 俊範
(72)【発明者】
【氏名】下條 隆宏
【審査官】田中 洋介
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0180444(US,A1)
【文献】国際公開第2016/208276(WO,A1)
【文献】米国特許第05925085(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0258129(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0069042(US,A1)
【文献】特開2014-084683(JP,A)
【文献】国際公開第2016/111148(WO,A1)
【文献】特開2012-172428(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 3/00-3/96
E02F 9/00-9/28
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業機を有する作業車両の制御システムであって、
コントローラと、
オペレータによる操作を示す操作信号を前記コントローラに出力する入力装置と、
を備え、
前記コントローラは、
作業対象の現況面を示す現況地形データを取得し、
前記現況面を設計面に置換することで前記現況面と同じ形状の前記設計面を生成し
前記設計面を含み前記作業機の目標軌跡を示す目標設計面を決定し、
前記入力装置からの操作信号に応じて、前記目標設計面を鉛直方向に変位させる、
ようにプログラムされている、
作業車両の制御システム。
【請求項2】
前記入力装置は、上昇キーを含み、
前記コントローラは、前記上昇キーの操作に応じて、前記目標設計面を上昇させる、
請求項に記載の作業車両の制御システム。
【請求項3】
前記入力装置は、下降キーを含み、
前記コントローラは、前記下降キーの操作に応じて、前記目標設計面を下降させる、
請求項に記載の作業車両の制御システム。
【請求項4】
前記コントローラは、
前記現況地形データの平滑化を行い、
平滑化された前記現況地形データに基づいて前記設計面を決定する、
請求項1に記載の作業車両の制御システム。
【請求項5】
前記コントローラは、
前記現況面を置換した前記設計面を第1設計面として設定し、
第2設計面を示す第2設計面データを取得し、
前記第1設計面と前記第2設計面とから低い方の部分を選択して前記目標設計面を決定する、
請求項に記載の作業車両の制御システム。
【請求項6】
前記コントローラは、前記入力装置からの操作信号に応じて、前記第1設計面を鉛直方向に変位させると共に、前記第2設計面の位置を維持する、
請求項に記載の作業車両の制御システム。
【請求項7】
前記コントローラは、
調整量を取得し、
前記入力装置からの操作信号に応じて、前記第1設計面を鉛直方向に変位させると共に、前記第2設計面を鉛直方向に、前記調整量、変位させた位置に維持する、
請求項に記載の作業車両の制御システム。
【請求項8】
前記コントローラは、前記入力装置からの操作信号に応じて、前記第1設計面と前記第2設計面とを鉛直方向に変位させる、
請求項に記載の作業車両の制御システム。
【請求項9】
ディスプレイをさらに備え、
前記コントローラは、前記目標設計面を示す画像を前記ディスプレイに表示させる信号を出力する、
請求項に記載の作業車両の制御システム。
【請求項10】
ディスプレイをさらに備え、
前記コントローラは、
前記現況面と前記目標設計面と前記作業車両の現在位置とを示す画像を前記ディスプレイに表示させる信号を出力し、
前記画像において、前記現況面のうち前記目標設計面よりも高い部分と前記目標設計面よりも低い部分とを異なる態様で表示させる、
請求項に記載の作業車両の制御システム。
【請求項11】
前記コントローラは、前記目標設計面に従って、前記作業機を制御する、
請求項に記載の作業車両の制御システム。
【請求項12】
作業車両の作業機の目標軌跡設定方法であって、
作業対象の現況面を示す現況地形データを取得することと、
前記現況面を設計面に置換することで前記現況面と同じ形状の前記設計面を生成することと、
前記設計面を含み前記作業機の目標軌跡を示す目標設計面を決定することと、
オペレータによる入力装置の操作に応じて、前記目標設計面を鉛直方向に変位させること、
を備える作業機の目標軌跡設定方法。
【請求項13】
前記目標設計面をディスプレイに表示させることをさらに備える、
請求項12に記載の作業機の目標軌跡設定方法。
【請求項14】
作業機と、
コントローラと、
オペレータによる操作を示す操作信号を前記コントローラに出力する入力装置と、
を備え、
前記コントローラは、
作業対象の現況面を示す現況地形データを取得し、
前記現況面を設計面に置換することで前記現況面と同じ形状の前記設計面を生成し
前記設計面を含み前記作業機の目標軌跡を示す目標設計面を決定し、
前記入力装置からの操作信号に応じて、前記目標設計面を鉛直方向に変位させる、
ようにプログラムされている、
作業車両。
【請求項15】
前記コントローラは、前記目標設計面に従って前記作業機を制御する、
請求項14に記載の作業車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業車両の制御システム、作業機の軌跡設定方法、及び作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ブルドーザ、或いはグレーダ等の作業車両において、作業機の位置を自動的に調整する自動制御が提案されている。例えば、特許文献1では、掘削制御と整地制御とが開示されている。
【0003】
掘削制御では、ブレードに係る負荷を目標負荷に一致させるように、ブレードの位置が自動調整される。整地制御では、掘削対象の目標仕上がり形状を示す最終設計面に沿ってブレードの刃先が移動するように、ブレードの位置が自動調整される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第5247939号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した従来の制御によれば、ブレードへの負荷が過剰に大きくなったときにブレードを上昇させることにより、シュースリップの発生を抑えることができる。これにより、効率良く作業を行うことができる。
【0006】
しかし、従来の制御では、図29に示すように、まず最終設計面100に沿うようにブレードが制御される。その後、ブレードへの負荷が大きくなると、負荷制御によってブレードを上昇させる(図29のブレードの軌跡200参照)。従って、大きな起伏のある地形300を掘削する場合には、ブレードに係る負荷が急速に大きくなることで、ブレードを急速に上昇させてしまうことがあり得る。その場合、凹凸の大きな地形が形成されることになるため、スムーズに掘削作業を行うことは困難である。また、掘削される地形が荒れ易くなり、仕上がりの品質が低下することが懸念される。
【0007】
また、作業車両によって行われる作業には、掘削作業の他にも、盛土作業がある。盛土作業では、作業車両は、作業機によって切土部から土を切り出す。そして、作業車両は、切り出した土を作業機によって所定位置に盛る。盛られた土の上を作業車両が走行することにより、或いは、ローラによって、土が締め固められる。これにより、例えば、窪んだ地形を埋めて、平坦な形状に形成することができる。
【0008】
しかし、上述した自動制御では、良好な盛土作業を行うことも困難である。例えば、図30に示すように、整地制御では、最終設計面100に沿ってブレードの刃先が移動するように、ブレードの位置が自動調整される。そのため、大きな起伏のある地形300に、整地制御によって盛土作業が行われると、図30において破線400で示すように、一度に大量の土が作業車両の手前の位置に盛られることになる。その場合、盛られた土の厚さが大きいため、盛られた土を締め固めることが困難になる。そのため、作業の仕上がりの品質が低下するという問題がある。
【0009】
本発明の課題は、自動制御によって、効率良く、且つ、仕上がりの品質の良い作業を行うことができる作業車両の制御システム、作業機の軌跡設定方法、及び作業車両を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1の態様は、作業機を有する作業車両の制御システムである。制御システムは、コントローラを備える。コントローラは、以下の処理を行うようにプログラムされている。コントローラは、作業対象の現況面を示す現況地形データを取得する。コントローラは、現況面を設計面に置換する。
【0011】
第2の態様は、作業車両の作業機の目標軌跡設定方法である。目標軌跡設定方法は、以下の処理を備える。第1の処理は、作業対象の現況面を示す現況地形データを取得することである。第2の処理は、現況面を設計面に置換することである。
【0012】
第3の態様は、作業車両である。作業車両は、作業機とコントローラとを備える。コントローラは、以下の処理を行うようにプログラムされている。コントローラは、作業対象の現況面を示す現況地形データを取得する。コントローラは、現況面を設計面に置換する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、現況面が設計面に置換される。それにより、現況面に沿って作業機を移動させることができる。例えば、設計面を現況面よりも上方に変位させることで、現況面に沿って土を薄く盛ることができる。また、設計面を現況面よりも下方に変位させることで、作業機への負荷が過剰となることを抑えながら、現況面に沿って掘削を行うことができる。或いは、置換された設計面に沿って作業機を移動させることで、荒れた現況面を平滑化することができる。それにより、作業の仕上がりの品質を向上させることができる。また、自動制御により、作業の効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施形態に係る作業車両を示す側面図である。
図2】作業車両の駆動系と制御システムとの構成を示すブロック図である。
図3】作業車両の構成を示す模式図である。
図4】設計面及び現況面の一例を示す図である。
図5】作業機の自動制御の処理を示すフローチャートである。
図6】現況面オフセット機能の処理を示すフローチャートである。
図7】設計面及び現況面の一例を示す図である。
図8】設計面及び現況面の一例を示す図である。
図9】設計面及び現況面の一例を示す図である。
図10】設計面及び現況面の一例を示す図である。
図11】設計面及び現況面の一例を示す図である。
図12】設計面及び現況面の一例を示す図である。
図13】設計面及び現況面の一例を示す図である。
図14】設計面及び現況面の一例を示す図である。
図15】設計面及び現況面の一例を示す図である。
図16】設計面及び現況面の一例を示す図である。
図17】設計面及び現況面の一例を示す図である。
図18】設計面及び現況面の一例を示す図である。
図19】操作画面の一例を示す図である。
図20】操作画面の一例を示す図である。
図21】操作画面の一例を示す図である。
図22】操作画面の一例を示す図である。
図23】操作画面の一例を示す図である。
図24】操作画面の一例を示す図である。
図25】操作画面の一例を示す図である。
図26】操作画面の一例を示す図である。
図27】他の実施形態に係る作業車両の駆動系と制御システムとの構成を示すブロック図である。
図28】他の実施形態に係る作業車両の駆動系と制御システムとの構成を示すブロック図である。
図29】関連技術の一例を示す図である。
図30】関連技術の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、実施形態に係る作業車両について、図面を参照しながら説明する。図1は、実施形態に係る作業車両1を示す側面図である。本実施形態に係る作業車両1は、ブルドーザである。作業車両1は、車体11と、走行装置12と、作業機13と、を備えている。
【0016】
車体11は、運転室14とエンジン室15とを有する。運転室14には、図示しない運転席が配置されている。エンジン室15は、運転室14の前方に配置されている。走行装置12は、車体11の下部に取り付けられている。走行装置12は、左右一対の履帯16を有している。なお、図1では、左側の履帯16のみが図示されている。履帯16が回転することによって、作業車両1が走行する。作業車両1の走行は、自律走行、セミ自律走行、オペレータの操作による走行のいずれの形式であってもよい。
【0017】
作業機13は、車体11に取り付けられている。作業機13は、リフトフレーム17と、ブレード18と、リフトシリンダ19と、を有する。
【0018】
リフトフレーム17は、車幅方向に延びる軸線Xを中心として上下に動作可能に車体11に取り付けられている。リフトフレーム17は、ブレード18を支持している。ブレード18は、車体11の前方に配置されている。ブレード18は、リフトフレーム17の上下動に伴って上下に移動する。
【0019】
リフトシリンダ19は、車体11とリフトフレーム17とに連結されている。リフトシリンダ19が伸縮することによって、リフトフレーム17は、軸線Xを中心として上下に回転する。
【0020】
図2は、作業車両1の駆動系2と制御システム3との構成を示すブロック図である。図2に示すように、駆動系2は、エンジン22と、油圧ポンプ23と、動力伝達装置24と、を備えている。
【0021】
油圧ポンプ23は、エンジン22によって駆動され、作動油を吐出する。油圧ポンプ23から吐出された作動油は、リフトシリンダ19に供給される。なお、図2では、1つの油圧ポンプ23が図示されているが、複数の油圧ポンプが設けられてもよい。
【0022】
動力伝達装置24は、エンジン22の駆動力を走行装置12に伝達する。動力伝達装置24は、例えば、HST(Hydro Static Transmission)であってもよい。或いは、動力伝達装置24は、例えば、トルクコンバーター、或いは複数の変速ギアを有するトランスミッションであってもよい。
【0023】
制御システム3は、操作装置25aと、入力装置25bと、ディスプレイ25cと、コントローラ26と、制御弁27と、記憶装置28とを備える。操作装置25aは、作業機13及び走行装置12を操作するための装置である。操作装置25aは、運転室14に配置されている。操作装置25aは、作業機13及び走行装置12を駆動するためのオペレータによる操作を受け付け、操作に応じた操作信号を出力する。操作装置25aは、例えば、操作レバー、ペダル、スイッチ等を含む。
【0024】
例えば、走行装置12用の操作装置25aは、前進位置と後進位置と中立位置とに操作可能に設けられる。操作装置25aの位置を示す操作信号は、コントローラ26に出力される。コントローラ26は、操作装置25aの操作位置が前進位置であるときには、作業車両1が前進するように、走行装置12、或いは動力伝達装置24を制御する。操作装置25aの操作位置が後進位置であるときには、コントローラ26は、作業車両1が後進するように、走行装置12、或いは動力伝達装置24を制御する。
【0025】
入力装置25b及びディスプレイ25cは、例えばタッチパネル式の表示入力装置である。ディスプレイ25cは、例えば、LCD、或いはOLEDである。ただし、ディスプレイ25cは、他の種類の表示装置であってもよい。入力装置25b及びディスプレイ25cとは別の装置であってもよい。例えば、入力装置25bは、スイッチ等の他の入力装置であってもよい。入力装置25bは、オペレータによる操作を示す操作信号をコントローラ26に出力する。
【0026】
コントローラ26は、取得したデータに基づいて作業車両1を制御するようにプログラムされている。コントローラ26は、例えばCPU等の処理装置を含む。コントローラ26は、操作装置25aから操作信号を取得する。コントローラ26は、操作信号に基づいて、制御弁27を制御する。コントローラ26は、入力装置25bから操作信号を取得する。コントローラ26は、所定の画面をディスプレイ25cに表示させる信号を出力する。
【0027】
制御弁27は、比例制御弁であり、コントローラ26からの指令信号によって制御される。制御弁27は、リフトシリンダ19などの油圧アクチュエータと、油圧ポンプ23との間に配置される。制御弁27は、油圧ポンプ23からリフトシリンダ19に供給される作動油の流量を制御する。コントローラ26は、上述した操作装置25aの操作に応じてブレード18が動作するように、制御弁27への指令信号を生成する。これにより、リフトシリンダ19が、操作装置25aの操作量に応じて、制御される。なお、制御弁27は、圧力比例制御弁であってもよい。或いは、制御弁27は、電磁比例制御弁であってもよい。
【0028】
制御システム3は、リフトシリンダセンサ29を備える。リフトシリンダセンサ29は、リフトシリンダ19のストローク長さ(以下、「リフトシリンダ長L」という。)を検出する。図3に示すように、コントローラ26は、リフトシリンダ長Lに基づいてブレード18のリフト角θliftを算出する。図3は、作業車両1の構成を示す模式図である。
【0029】
図3では、作業機13の原点位置が二点鎖線で示されている。作業機13の原点位置は、水平な地面上でブレード18の刃先が地面に接触した状態でのブレード18の位置である。リフト角θliftは、作業機13の原点位置からの角度である。
【0030】
図2に示すように、制御システム3は、位置検出装置31を備えている。位置検出装置31は、作業車両1の位置を測定する。位置検出装置31は、GNSS(Global Navigation Satellite System)レシーバ32と、IMU 33と、を備える。GNSSレシーバ32は、例えばGPS(Global Positioning System)用の受信機である。GNSSレシーバ32のアンテナは、運転室14上に配置される。GNSSレシーバ32は、衛星より測位信号を受信し、測位信号によりアンテナの位置を演算して車体位置データを生成する。コントローラ26は、GNSSレシーバ32から車体位置データを取得する。
【0031】
IMU 33は、慣性計測装置(Inertial Measurement Unit)である。IMU 33は、車体傾斜角データと車体加速度データを取得する。車体傾斜角データは、車両前後方向の水平に対する角度(ピッチ角)、および車両横方向の水平に対する角度(ロール角)を含む。車体加速度データは、作業車両1の加速度を含む。コントローラ26は、IMU 33から車体傾斜角データ及び車体加速度データを取得する。
【0032】
コントローラ26は、リフトシリンダ長Lと、車体位置データと、車体傾斜角データとから、刃先位置P0を演算する。図3に示すように、コントローラ26は、車体位置データに基づいて、GNSSレシーバ32のグローバル座標を算出する。コントローラ26は、リフトシリンダ長Lに基づいて、リフト角θliftを算出する。コントローラ26は、リフト角θliftと車体寸法データに基づいて、GNSSレシーバ32に対する刃先位置P0のローカル座標を算出する。
【0033】
コントローラ26は、車体位置データと、車体加速度データとから作業車両1の進行方向と車速とを算出する。車体寸法データは、記憶装置28に記憶されており、GNSSレシーバ32に対する作業機13の位置を示す。コントローラ26は、GNSSレシーバ32のグローバル座標と刃先位置P0のローカル座標と車体傾斜角データとに基づいて、刃先位置P0のグローバル座標を算出する。コントローラ26は、刃先位置P0のグローバル座標を刃先位置データとして取得する。なお、ブレード18にGNSSレシーバが取り付けられることで、刃先位置P0が直接的に算出されてもよい。
【0034】
記憶装置28は、例えばメモリーと補助記憶装置とを含む。記憶装置28は、例えば、RAM、或いはROMなどであってもよい。記憶装置28は、半導体メモリ、或いはハードディスクなどであってもよい。記憶装置28は、非一時的な(non-transitory)コンピュータで読み取り可能な記録媒体の一例である。記憶装置28は、プロセッサによって実行可能であり作業車両1を制御するためのコンピュータ指令を記録している。
【0035】
記憶装置28は、作業現場地形データを記憶している。作業現場地形データは、作業現場の現況の地形を示す。作業現場地形データは、例えば、三次元データ形式の現況面測量図である。作業現場地形データは、例えば、航空レーザ測量で得ることができる。
【0036】
コントローラ26は、現況地形データを取得する。現況地形データは、作業現場の現況面50を示す。現況面50は、作業車両1の進行方向に沿う領域の地形である。現況地形データは、作業現場地形データと上述の位置検出装置31から得られる作業車両1の位置と進行方向とからコントローラ26での演算により取得される。また、後述するように、現況地形データは、作業車両1が走行することにより取得される。
【0037】
図4は現況面50の断面の一例を示す図である。図4に示すように、現況地形データは、複数の参照点での現況面50の高さを含む。詳細には、現況地形データは、作業車両1の進行方向において、複数の参照点での現況面50の高さZ0~Znを含む。複数の参照点は、所定間隔ごとに並んでいる。所定間隔は、例えば1mであるが、他の値であってもよい。
【0038】
なお、図4において、縦軸は、地形の高さを示しており、横軸は、作業車両1の進行方向における現在位置からの距離を示している。現在位置は、作業車両1の現在の刃先位置P0に基づいて定められる位置であってもよい。現在位置は、作業車両1の他の部分の現在位置に基づいて定められてもよい。
【0039】
記憶装置28は、設計面データを記憶している。設計面データは、作業機13の目標軌跡である設計面60,70を示す。記憶装置28には、複数の設計面60,70を示す複数の設計面データが保存されている。
【0040】
図4に示すように、設計面データは、現況地形データと同様に、複数の参照点での設計面60,70の高さを含む。複数の設計面60,70は、最終設計面70を含む。最終設計面70は、作業現場の表面の最終的な目標形状である。最終設計面70は、例えば、三次元データ形式の土木施工図であり、記憶装置28に予め保存されている。なお、図4では、最終設計面70は、水平方向に平行な平坦な形状であるが、これと異なる形状であってもよい。
【0041】
複数の設計面60,70は、最終設計面70以外の中間的な設計面60を含む。設計面60の少なくとも一部は、最終設計面70と現況面50との間に位置する。コントローラ26は、所望の設計面60を生成して、当該設計面60を示す設計面データを生成し、記憶装置28に保存することができる。
【0042】
コントローラ26は、現況地形データと、設計面データと、刃先位置データとに基づいて、作業機13を自動的に制御する。以下、コントローラ26によって実行される、作業機13の自動制御について説明する。図5は、作業機13の自動制御の処理を示すフローチャートである。
【0043】
図5に示すように、ステップS101では、コントローラ26は、現在位置データを取得する。ここでは、コントローラ26は、上述したように、作業機13の現在の刃先位置P0を取得する。ステップS102では、コントローラ26は、設計面データを取得する。コントローラ26は、記憶装置28から設計面データを取得する。
【0044】
ステップS103では、コントローラ26は、現況地形データを取得する。上述したように、コントローラ26は、作業現場地形データと作業車両1の位置と進行方向とから、現況地形データを取得する。また、コントローラ26は、作業車両1が現況面50上を移動することにより、現在の現況面50を示す現況地形データを取得する。
【0045】
例えば、コントローラ26は、刃先位置P0の最新の軌跡を示す位置データを、現況地形データとして取得する。コントローラ26は、取得した現況地形データによって作業現場地形データを更新する。或いは、コントローラ26は、車体位置データと車体寸法データとから履帯16の底面の位置を算出し、履帯16の底面の軌跡を示す位置データを現況地形データとして取得してもよい。
【0046】
或いは、現況地形データは、作業車両1の外部の測量装置によって計測された測量データから生成されてもよい。外部の測量装置として、例えば、航空レーザ測量を用いてよい。或いは、カメラによって現況面50を撮影し、カメラによって得られた画像データから現況地形データが生成されてもよい。例えば、UAV(Unmanned Aerial Vehicle)による空撮測量を用いてよい。
【0047】
ステップS104では、コントローラ26は、目標設計面を決定する。コントローラ26は、オペレータが選択した設計面60,70を目標設計面として決定する。或いは、コントローラ26が自動的に選択、或いは生成した設計面60,70を目標設計面として決定してもよい。
【0048】
ステップS105では、コントローラ26は、作業機13を制御する。コントローラ26は、目標設計面に従って作業機13を自動的に制御する。詳細には、コントローラ26は、目標設計面に向ってブレード18の刃先位置が移動するように、作業機13への指令信号を生成する。生成された指令信号は、制御弁27に入力される。それにより、作業機13の刃先位置P0が目標設計面に沿って移動する。
【0049】
例えば、目標設計面が現況面50よりも上方に位置するときには、作業機13によって現況面50上に土が盛られる。また、目標設計面が現況面50よりも下方に位置するときには、作業機13によって現況面50が掘削される。
【0050】
コントローラ26は、操作装置25aから作業機13を操作する信号が出力されたときに、作業機13の制御を開始してもよい。作業車両1の移動は、オペレータが操作装置25aを操作することによって手動で行われてもよい。或いは、作業車両1の移動は、コントローラ26からの指令信号によって自動的に行われてもよい。
【0051】
上記の処理は、作業車両1が前進しているときに実行される。例えば、走行装置12用の操作装置25aが前進位置であるときに、上記の処理が実行されて作業機13が自動的に制御される。作業車両1が後進すると、コントローラ26は、作業機13の制御を停止する。
【0052】
次に、作業機13の自動制御における現況面オフセット機能について説明する。現況面オフセット機能は、現況面50を設計面60に置換して目標設計面を生成し、目標設計面を任意に鉛直方向に変位させる機能である。
【0053】
図6は、現況面オフセット機能の処理を示すフローチャートである。なお、図7に示すように、作業車両1が現況面50上を走行することで、コントローラ26は、現在の現況面50を示す現況地形データを取得しているものとする。
【0054】
図6に示すように、ステップS201において、コントローラ26は、現況設計面61の生成指示があるかを判定する。現況設計面61は、現況面50から生成される設計面であり、現況面50と同じ形状を有する。後述するように、コントローラ26は、オペレータが入力装置25bを操作することにより、現況設計面61の生成指示を示す信号が入力装置25bから出力されたときに、現況設計面61の生成指示があると決定する。現況設計面61の生成指示があると決定されたときには、ステップS202に進む。
【0055】
ステップS202では、コントローラ26は、現況設計面データを生成する。図8に示すように、コントローラ26は、現況面50を設計面に置換して、現況面50と同じ形状の現況設計面61を示す現況設計面データを生成する。コントローラ26は、生成した現況設計面データを記憶装置28に保存する。
【0056】
ステップS203では、コントローラ26は、現況設計面61を第1設計面62として決定する。ステップS204では、コントローラ26は、第2設計面データを決定する。コントローラ26は、複数の設計面60,70から選択された設計面を第2設計面63として選択する。第2設計面63は、オペレータによって選択されてもよい。第2設計面63は、コントローラ26によって自動的に選択されてもよい。ここでは、例として、図8に示すように、最終設計面70が第2設計面63として決定されたものとする。
【0057】
ステップS205では、コントローラ26は、オフセット設計面64を決定する。図9に示すように、コントローラ26は、第1設計面62と第2設計面63とから低い方の部分を選択して合成することで、オフセット設計面64を決定する。コントローラ26は、決定したオフセット設計面64を示す設計面データを記憶装置28に保存する。
【0058】
ステップS206では、コントローラ26は、オフセット設計面64を目標設計面65に決定する。コントローラ26は、オペレータの選択により、オフセット設計面64を目標設計面65に決定してもよい。或いは、コントローラ26の決定により自動的にオフセット設計面64が目標設計面65に決定されてもよい。
【0059】
ステップS207では、コントローラ26は、オフセット指示が成されたかを判定する。詳細には、後述するように、入力装置25bは、上昇キー41と下降キー42とを含む。コントローラ26は、上昇キー41又は下降キー42が操作されたかを判定する。上昇キー41又は下降キー42が操作されたときには、コントローラ26は、オフセット指示が成されたと決定して、処理はステップS208に進む。
【0060】
ステップS208では、コントローラ26は、オフセット指示を示す入力装置25bからの操作信号に応じて、目標設計面65を、鉛直方向に変位させる。詳細には、コントローラ26は、上昇キー41の操作に応じて、目標設計面65を上昇させる。或いは、コントローラ26は、下降キー42の操作に応じて、目標設計面65を下降させる。
【0061】
詳細には、図10に示すように、コントローラ26は、上昇キー41が一度押されるごとに、一定距離d1、第1設計面62を上昇させる。同様に、図11に示すように、コントローラ26は、下降キー42が一度押されるごとに、一定距離d2、第1設計面62を下降させる。ただし、コントローラ26は、上昇キー41が押されても、第2設計面63を移動させずに、第2設計面63の位置を維持する。コントローラ26は、下降キー42が押されても、第2設計面63を移動させずに、第2設計面63の位置を維持する。
【0062】
なお、一定距離d1と一定距離d2とは異なる値であってもよい。一定距離d1と一定距離d2とは、オペレータによって任意に設定可能であってもよい。
【0063】
そして、上述した図5のステップS105において、コントローラ26は、目標設計面65に沿って、作業機13の刃先位置P0が移動するように、作業機13を制御する。
【0064】
なお、図10に示すように、現況面50の一部が目標設計面65よりも上方にある場合、図12に示すように、作業機13によって掘削される土量が適切な値となるように、目標設計面65の一部651が修正されてもよい。また、目標設計面65の傾斜角が急である場合には、傾斜角が緩やかになるように、目標設計面65の一部652が修正されもよい。
【0065】
以上のように、オフセット設計面64が目標設計面65として決定されることで、図13に示すように、当初の現況面50’の上に土が盛られ、新たな現況面50が形成される。そして、図14に示すように、作業車両1が、所定距離、後退した後、再び作業車両1が前進したときに、上述した処理が再び実行される。上述した図7から図13までの作業を第1パスとすると、図14及び図15は、第2パスの作業を示している。
【0066】
第2パスにおいても、コントローラ26は、変更された現況面50に基づいて現況地形データを更新する。ただし、現況面50が変更されても、ステップS206においてオフセット指示が新たに成されないかぎり、コントローラ26は、目標設計面65を維持する。そのため、図14に示すように、維持された目標設計面65に従って、作業機13が制御される。
【0067】
図16及び図17は、第3パスの作業を示している。第3パスにおいても、上述した処理が繰り返される。なお、作業機13によって切り出せる土がない場合には、図16に示すように、ダンプトラック等によって土500が運搬されてもよい。第2パスと同様に、オフセット指示が新たに成されないかぎり、コントローラ26は、目標設計面65を維持する。そのため、図16及び図17に示すように、維持された目標設計面65に従って、作業機13が制御される。このような作業が繰り返されることで、目標設計面65に沿って土が層状に盛られる。それにより、当初の現況面50’の上に土が盛られ、新たな現況面50が形成される。
【0068】
図18に示すように、1つの層が完成すると、オペレータは、上昇キー41を操作して、目標設計面65を上昇させる。このとき、コントローラ26は、第1設計面62を上昇させるが、第2設計面63の位置を維持する。それにより、新たな目標設計面65が決定される。コントローラ26は、新たに決定された目標設計面65に沿って、作業機13を制御する。それにより、次の層が形成される。このような処理が繰り返されることにより、現況面50が徐々に最終設計面70に近づく。
【0069】
なお、現況面50が変更されても、現況設計面61の更新が指示されない限り、コントローラ26は、当初の現況設計面データを維持する。従って、図18に示す新たな目標設計面65は、当初の現況設計面61を基準として、当初の現況設計面61を上方に、所定距離、変位させた設計面である。従って、実際の現況面50が変更されても、目標設計面65の形状が維持される。
【0070】
次に、ディスプレイ25cに表示される操作画面と、入力装置25bによる操作とについて説明する。図19は、作業状況を示す操作画面80の一例を示す図である。図19に示すように、操作画面80は、作業現場の地形を示す画像801と、作業車両1の現在位置を示すアイコン802とを含む上面図を含む。操作画面80は、現況面50を示す画像と、作業車両1の現在位置を示すアイコン803とを含む側面図を含む。側面図は、最終設計面70を示す画像を含んでもよい。操作画面80は、上面図と側面図とのいずれか一方のみを含んでもよい。
【0071】
操作画面80は、複数の操作キー41-44を含む。例えば、操作画面80は、上述した上昇キー41と下降キー42とを含む。また、操作画面80を切り換えるためのキー43を含む。
【0072】
図20は、設計面データを生成するための操作画面81の例を示す図である。図20に示すように、操作画面80は、生成する設計面60の種類を示す複数のオプションのリスト811を含む。オペレータは、リスト811から所望のオプションを選択して設計面データを生成し、名称を付けて記憶装置28に保存することができる。例えば、傾斜した平面、凹溝又は凸部を含む形状など、様々な形状の設計面60を生成して、その設計面データを、記憶装置28に保存することができる。
【0073】
また、リスト811は、現況設計面61を生成するオプション812を含む。このオプション812が選択されると、図21に示す操作画面82がディスプレイ25cに表示される。オペレータが、操作画面82上の終了ボタン821を押すと、上述したステップS201の現況設計面61の生成指示ありと、コントローラ26は判定する。それにより、コントローラ26は、現在の現況面50を現況設計面61に置換する。コントローラ26は、現況設計面61を示す現況設計面データを生成して、記憶装置28に保存する。
【0074】
図20に示すように、リスト811は、複数の設計面60,70から低い方の部分を選択して設計面60を生成するオプション813を含む。このオプション813により、上述したオフセット設計面64が生成される。このオプション813が選択されると、図22に示す操作画面83がディスプレイ25cに表示される。なお、操作画面81のリストは、複数の設計面60,70から高い方の部分を選択してオフセット設計面64を生成するオプションを含んでもよい。
【0075】
操作画面83は、複数の設計面60,70から第1設計面62を選択する機能と、複数の設計面60,70から第2設計面63を選択する機能と、を含む。詳細には、操作画面83は、第1設計面62の選択欄831と、第2設計面63の選択欄832とを含む。オペレータは、第1設計面62の選択欄831に表示される複数の設計面60,70から所望の設計面60,70を第1設計面62として選択することができる。
【0076】
また、オペレータは、第2設計面63の選択欄832に表示される複数の設計面60,70から所望の設計面60,70を第2設計面63として選択することができる。従って、上述したオフセット設計面64では、第2設計面63として最終設計面70が選択されているが、操作画面83において、オペレータは、最終設計面70以外の設計面60を第2設計面63として選択することができる。
【0077】
オペレータが、操作画面83上の終了ボタン837を押すと、上述した目標設計面データの生成と同様に、第1設計面62と第2設計面63とから低い方の部分を選択してオフセット設計面64が決定され、オフセット設計面64を示す設計面データが記憶装置28に保存される。
【0078】
操作画面83は、第1設計面62と第2設計面63とに対してオフセット機能の使用可否を設定する機能を含む。詳細には、操作画面83は、第1設計面62のオフセット機能設定欄833と、第2設計面63のオフセット機能設定欄834とを含む。オペレータが、第1設計面62のオフセット機能を使用可能に設定すると、上昇キー41と下降キー42との操作に応じて第1設計面62が上下に変位する。オペレータが、第2設計面63のオフセット機能を使用可能に設定すると、上昇キー41と下降キー42との操作に応じて第2設計面63が上下に変位する。
【0079】
上述した図9から図12に示したオフセット設計面64は、第1設計面62のオフセット機能が使用可能に設定され、第2設計面63のオフセット機能が使用不可に設定されたときの設計面である。第1設計面62のオフセット機能と第2設計面63のオフセット機能とが共に使用可能に設定されると、上昇キー41と下降キー42との操作に応じて第1設計面62と第2設計面63とが共に上下に変位する。或いは、第1設計面62のオフセット機能が使用不可に設定され、第2設計面63のオフセット機能が使用可能に設定されると、上昇キー41と下降キー42との操作に応じて第2設計面63が上下に変位すると共に、第1設計面62の位置が維持される。従って、オペレータは、操作画面83において、上昇キー41と下降キー42との操作に応じて変位させる設計面を、第1設計面62と第2設計面63とから任意に選択することができる。
【0080】
操作画面83は、調整量を指定する機能を含む。詳細には、操作画面80は、第1設計面62の調整量の設定欄835と、第2設計面63の調整量の設定欄836とを含む。オフセット機能を使用不可に設定したときに、調整量の設定が可能となる。第1設計面62の調整量の設定欄835にオペレータが数値を設定すると、上昇キー41又は下降キー42とが操作されても、コントローラ26は、第1設計面62を鉛直方向に、調整量、変位させた位置に維持する。第2設計面63の調整量の設定欄836にオペレータが数値を設定すると、上昇キー41又は下降キー42とが操作されても、コントローラ26は、第2設計面63を鉛直方向に、調整量、変位させた位置に維持する。
【0081】
オペレータが操作画面83上の終了ボタン837を押すと、コントローラ26は、操作画面83での設定に基づいて、オフセット設計面64を示す設計面データを生成する。
【0082】
図23は、目標設計面65を決定するための操作画面84の一例を示す図である。操作画面84は、保存されている複数の設計面データのリスト841を含む。オペレータは、リスト841中の複数の設計面データから“アクティブ”にする設計面60,70の設計面データを選択する。コントローラ26は、“アクティブ”にされた設計面60,70を上述した目標設計面65として決定する。
【0083】
オペレータは、リスト841からオフセット設計面64を示す設計面データを選択することで、上述した現況面オフセット機能を利用することができる。以上のように、オペレータは、操作画面81-84を操作することで、上述した現況面オフセット機能を利用することができる。
【0084】
また、図19に示す操作画面80は、現況面オフセット機能をより簡易に利用するためのショートカットキー44を含む。ショートカットキー44が押されると、図24に示す、現況面オフセット機能の操作画面85がディスプレイ25cに表示される。操作画面85は、第2設計面63の選択欄832と、第2設計面63の調整量の設定欄836とを含む。
【0085】
操作画面85では、最新の現況地形データが示す現況面50が第1設計面62として自動的に設定される。また、第1設計面62のオフセット機能は使用可能に、第2設計面63のオフセット機能は使用不可に自動的に設定される。操作画面85は、オフセット設計面64の名称欄851を含む。名称欄851には、自動的に所定の名前が入力される。ただし、オペレータが手動で名称欄851に入力可能であってもよい。
【0086】
オペレータは、操作画面85において第2設計面63として設定する設計面60,70を選択し、第2設計面63の調整量を設定する。ただし、調整量は0であってもよい。オペレータが操作画面85上のOKボタン852を押すと、オフセット設計面64の設計面データが生成されて保存されると共に、生成されたオフセット設計面64が自動的に“アクティブ”とされる。すなわち、オペレータが操作画面80においてOKボタン852を押すと、コントローラ26は、生成されたオフセット設計面64を目標設計面65として決定する。
【0087】
生成されたオフセット設計面64が目標設計面65として決定されると、上述した操作画面80の側面図に目標設計面65を示す画像が表示される。そして、上昇キー41又は下降キー42が押されて目標設計面65が鉛直方向に変位すると、側面図の目標設計面65を示す画像も鉛直方向に変位する。
【0088】
例えば、図25に示す操作画面80の側面図は、上昇キー41が押されることで上昇した目標設計面65を示す画像を含む。上昇キー41が押されるごとに、所定量ずつ目標設計面65が上昇する。それに伴い、側面図の目標設計面65を示す画像も所定量ずつ上昇する。同様に、上昇キー41が押されるごとに、所定量ずつ目標設計面65が下降する。それに伴い、側面図の目標設計面65を示す画像も所定量ずつ下降する。
【0089】
操作画面80の上面図では、現況面50と目標設計面65との間の距離に応じて、作業現場の地形が異なる表示態様で示される。従って、コントローラ26は、作業現場の地形を構成する現況面50のうち、目標設計面65よりも高い部分と目標設計面65よりも低い部分とを異なる態様で上面図に表示させる。
【0090】
例えば、コントローラ26は、現況面50と目標設計面65との間の距離に応じて、現況面50を異なる色で表示する。従って、図26に示すように、現況面50のうち土が盛られた部分501は、まだ土が盛られていない他の部分502と比べて、異なる色で上面図に表示される。従って、オペレータは、現況面50のどの部分にまだ土が盛られていないか、或いは、盛った土が十分でない部分がどこにあるかを、操作画面80を見ることで容易に把握することができる。
【0091】
以上説明した、本実施形態に係る作業車両1の制御システム3によれば、目標設計面65が現況面50よりも上方に位置するときには、目標設計面65に沿って作業機13を制御することで、土を薄く現況面50上に盛ることができる。また、目標設計面65が現況面50よりも下方するときには、目標設計面65に沿って作業機13を制御することで、作業機13への負荷が過剰となることを抑えながら、掘削を行うことができる。それにより、作業の仕上がりの品質を向上させることができる。また、自動制御により、作業の効率を向上させることができる。
【0092】
また、現況面オフセット機能により現況面50を目標設計面65として設定し、上下に容易に変位させることができる。これにより、作業を容易に行うことができる。
【0093】
さらに、実際の現況面50が変更されても、現況設計面61が更新されるまでは、目標設計面データの形状が維持される。従って、例えば、実際の現況面50に凹凸がある場合には、凹凸が緩和されるように土を盛ることができる。
【0094】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0095】
作業車両1は、ブルドーザに限らず、ホイールローダ、モータグレーダ等の他の車両であってもよい。
【0096】
作業車両1は、遠隔操縦可能な車両であってもよい。その場合、制御システム3の一部は、作業車両1の外部に配置されてもよい。例えば、コントローラ26は、作業車両1の外部に配置されてもよい。コントローラ26は、作業現場から離れたコントロールセンタ内に配置されてもよい。
【0097】
コントローラ26は、互いに別体の複数のコントローラを有してもよい。例えば、図27に示すように、コントローラ26は、作業車両1の外部に配置されるリモートコントローラ261と、作業車両1に搭載される車載コントローラ262とを含んでもよい。リモートコントローラ261と車載コントローラ262とは通信装置38,39を介して無線により通信可能であってもよい。そして、上述したコントローラ26の機能の一部がリモートコントローラ261によって実行され、残りの機能が車載コントローラ262によって実行されてもよい。例えば、設計面60,70を決定する処理がリモートコントローラ261によって実行され、作業機13への指令信号を出力する処理が車載コントローラ262によって実行されてもよい。
【0098】
操作装置25aと、入力装置25bと、ディスプレイ25cとは、作業車両1の外部に配置されてもよい。その場合、運転室は、作業車両1から省略されてもよい。或いは、操作装置25aと、入力装置25bと、ディスプレイ25cとが作業車両1から省略されてもよい。操作装置25aと入力装置25bによる操作無しで、コントローラ26による自動制御のみによって作業車両1が操作されてもよい。
【0099】
現況面50は、上述した位置検出装置31に限らず、他の装置によって取得されてもよい。例えば、図28に示すように、外部の装置からのデータを受け付けるインターフェ-ス装置37によって現況面50が取得されてもよい。インターフェ-ス装置37は、外部の計測装置40が計測した現況地形データを無線によって受信してもよい。或いは、インターフェ-ス装置37は、記録媒体の読み取り装置であって、外部の計測装置40が計測した現況地形データを記録媒体を介して受け付けてもよい。
【0100】
コントローラ26は、平滑化された現況面50に基づいて、設計面60を決定してもよい。平滑化とは、現況面50の高さ変化をなだらかにする処理を意味する。例えば、コントローラ26は、以下の数1式によって現況面50の複数の地点での高さZ0~Znを平滑化してもよい。
[数1]
Zn_smは、平滑化された現況面50における各地点の高さを示している。なお、数1式では、5つの地点の高さの平均値により平滑化を行っている。しかし、平滑化に用いる地点の数は5つより少ない、或いは5つより大きくてもよい。平滑化に用いる地点の数が変更可能であり、オペレータは、平滑化に用いる地点の数を変更することで、所望の平滑の度合いに設定可能であってもよい。また、平滑化の対象となる地点、及び、その前後の地点の高さの平均値に限らず、平滑化の対象となる地点、及び、その前方に位置する地点の高さの平均値が算出されてもよい。或いは、平滑化の対象となる地点、及び、その後方に位置する地点の高さの平均値が算出されてもよい。或いは、平均値に限らず、他の平滑化処理が用いられてもよい。
【0101】
平滑化された現況面50から生成されたオフセット設計面64が、鉛直方向に変位されずに目標設計面65として決定されてもよい。この場合、大きな凹凸のある実際の現況面50が平滑化された現況面50と同様の形状になるように、盛土或いは掘削を行うことができる。
【0102】
入力装置25bは、タッチパネル式の装置に限らず、スイッチなどの装置であってもよい。上述した操作キー41-44は、タッチパネルに表示されるソフトウェアキーに限らず、ハードウェアキーであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0103】
本発明によれば、自動制御によって、効率良く、且つ、仕上がりの品質の良い作業を行うことができる作業車両の制御システム、作業機の軌跡設定方法、及び作業車両を提供することができる。
【符号の説明】
【0104】
1 作業車両
3 制御システム
13 作業機
25b 入力装置
25c ディスプレイ
26 コントローラ
50 現況面
62 第1設計面
63 第2設計面
65 目標設計面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30