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特許7133541光学物品の製造のための非晶質熱可塑性ポリエステル
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-31
(45)【発行日】2022-09-08
(54)【発明の名称】光学物品の製造のための非晶質熱可塑性ポリエステル
(51)【国際特許分類】
   C08G 63/672 20060101AFI20220901BHJP
   C08G 63/183 20060101ALI20220901BHJP
   C08G 63/199 20060101ALI20220901BHJP
   G02B 1/04 20060101ALI20220901BHJP
   B29C 45/00 20060101ALI20220901BHJP
【FI】
C08G63/672
C08G63/183
C08G63/199
G02B1/04
B29C45/00
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2019506146
(86)(22)【出願日】2017-08-03
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-09-12
(86)【国際出願番号】 FR2017052182
(87)【国際公開番号】W WO2018024996
(87)【国際公開日】2018-02-08
【審査請求日】2020-07-22
(31)【優先権主張番号】1657614
(32)【優先日】2016-08-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】591169401
【氏名又は名称】ロケット フレール
【氏名又は名称原語表記】ROQUETTE FRERES
(74)【代理人】
【識別番号】100090398
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 美千栄
(74)【代理人】
【識別番号】100090387
【弁理士】
【氏名又は名称】布施 行夫
(72)【発明者】
【氏名】エレーヌ アムドロ
(72)【発明者】
【氏名】ルネ サン-ルー
【審査官】飛彈 浩一
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-504650(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0177854(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0355100(US,A1)
【文献】特表2013-515634(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0282833(US,A1)
【文献】特表2006-506485(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0092703(US,A1)
【文献】特開2014-019008(JP,A)
【文献】特公昭47-019175(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 63/672
C08G 63/183
C08G 63/199
G02B 1/04
B29C 45/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学物品の製造のための非晶質熱可塑性ポリエステルの使用であって、前記非晶質熱可塑性ポリエステルは、
・少なくとも1種の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール単位(A);
・前記1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール単位(A)以外の少なくとも1種の脂環式ジオール単位(B);
・少なくとも1種のテレフタル酸単位(C)
を含み、
(A)/[(A)+(B)]モル比は、0.40超、0.90未満であり;
前記ポリエステルは、非環式脂肪族ジオール単位を含有せず、前記ポリエステルの溶液(25℃;フェノール(50%m):オルト-ジクロロベンゼン(50%m);ポリエステル5g/L)中の還元粘度は50mL/gより高い、使用。
【請求項2】
前記脂環式ジオール(B)は、1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,2-シクロヘキサンジメタノール、1,3-シクロヘキサンジメタノールまたは前記ジオールの混合物から選択されるジオールであることを特徴とする、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール(A)は、イソソルビドであることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の使用。
【請求項4】
共重合時における(1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール単位(A)+前記1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール単位(A)以外の脂環式ジオール単位(B))/(テレフタル酸単位(C))モル比は、1.05~1.5であることを特徴とする、請求項1~請求項のいずれか一項に記載の使用。
【請求項5】
前記光学物品は、1種以上の追加のポリマーおよび/または1種以上の添加剤を含むことを特徴とする、請求項1~請求項のいずれか一項に記載の使用。
【請求項6】
前記光学物品は、CD(compact discの頭字語)、DVD(digital versatile discの頭字語)、レンズ、フレネルレンズ、ダッシュボードウインドウ、プリズムリフレクター、透明シートもしくはフィルム、LCDスクリーン用フィルム、発光ダイオード部品または他に光ファイバーを含む群から選択されることを特徴とする、請求項1~請求項のいずれか一項に記載の使用。
【請求項7】
非晶質熱可塑性ポリエステルであって、
・少なくとも1種の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール単位(A);
・前記1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール単位(A)以外の少なくとも1種の脂環式ジオール単位(B);
・少なくとも1種のテレフタル酸単位(C)
を含む非晶質熱可塑性ポリエステルを含む光学物品であって、
(A)/[(A)+(B)]モル比は、0.40超、0.90未満であり;
前記ポリエステルは、非環式脂肪族ジオール単位を含有せず、前記ポリエステルの溶液(25℃;フェノール(50%m):オルト-ジクロロベンゼン(50%m);ポリエステル5g/L)中の還元粘度は50mL/gより高い、光学物品。
【請求項8】
前記脂環式ジオール(B)は、1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,2-シクロヘキサンジメタノール、1,3-シクロヘキサンジメタノールまたは前記ジオールの混合物から選択されるジオールであることを特徴とする、請求項に記載の光学物品。
【請求項9】
前記1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール(A)は、イソソルビドであることを特徴とする、請求項または請求項に記載の光学物品。
【請求項10】
共重合時における(1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール単位(A)+前記1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール単位(A)以外の脂環式ジオール単位(B))/(テレフタル酸単位(C))モル比は、1.05~1.5であることを特徴とする、請求項~請求項のいずれか一項に記載の光学物品。
【請求項11】
1種以上の追加のポリマーおよび/または1種以上の添加剤を含むことを特徴とする、請求項~請求項10のいずれか一項に記載の光学物品。
【請求項12】
CD(compact discの頭字語)、DVD(digital versatile discの頭字語)、レンズ、フレネルレンズ、ダッシュボードウインドウ、プリズムリフレクター、透明シートもしくはフィルム、LCDスクリーン用フィルム、発光ダイオード部品または他に光ファイバーを含む群から選択されることを特徴とする、請求項~請求項11のいずれか一項に記載の光学物品。
【請求項13】
光学物品を製造する方法であって、
- 少なくとも1種の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール単位(A)、前記1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール単位(A)以外の少なくとも1種の脂環式ジオール単位(B)、少なくとも1種のテレフタル酸単位(C)を含む非晶質熱可塑性ポリエステルであって、(A)/[(A)+(B)]モル比は、0.40超、0.90未満であり、前記ポリエステルは、非環式脂肪族ジオール単位を含有せず、前記ポリエステルの溶液(25℃;フェノール(50%m):オルト-ジクロロベンゼン(50%m);ポリエステル5g/L)中の還元粘度は50mL/gより高い、非晶質熱可塑性ポリエステルを準備する工程、
- 前記先行する工程で得られた前記非晶質熱可塑性ポリエステルから前記光学物品を調製する工程
を含む方法。
【請求項14】
前記調製する工程は、射出成形によって実施されることを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記脂環式ジオール(B)は、1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,2-シクロヘキサンジメタノール、1,3-シクロヘキサンジメタノールまたは前記ジオールの混合物から選択されるジオールである、請求項13または請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール(A)は、イソソルビドであることを特徴とする、請求項13~請求項15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
共重合時における(1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール単位(A)+前記1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール単位(A)以外の脂環式ジオール単位(B))/(テレフタル酸単位(C))モル比は、1.05~1.5であることを特徴とする、請求項13~請求項16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記光学物品は、1種以上の追加のポリマーおよび/または1種以上の添加剤を含むことを特徴とする、請求項13~請求項17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記光学物品は、CD(compact discの頭字語)、DVD(digital versatile discの頭字語)、レンズ、フレネルレンズ、ダッシュボードウインドウ、プリズムリフレクター、透明シートもしくはフィルム、LCDスクリーン用のフィルム、発光ダイオード部品または他に光ファイバーを含む群から選択されることを特徴とする、請求項13~請求項18のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学物品の製造のための、優れた衝撃強度特性を有する、少なくとも1種の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール単位を含む非晶質熱可塑性ポリエステルの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの利点により、プラスチックは物品の大量生産に欠かせない。実際、その熱可塑性の性質により、この材料をあらゆる種類の物品に高い割合で変換できる。
【0003】
特定の熱可塑性芳香族ポリエステルは、材料の製造のためにそれらを直接使用することを可能にする熱特性を有する。それらは、脂肪族ジオールおよび芳香族二価酸単位を含む。これらの芳香族ポリエステルの中でも、例えば、フィルムの製造のために使用される、エチレングリコールおよびテレフタル酸単位を含むポリエステルであるポリエチレンテレフタレート(PET)が挙げられる。
【0004】
しかしながら、特定の用途または特定の使用条件下では、ある種の性質、特に衝撃強度あるいは耐熱性の改善が必要である。これが、グリコール変性PET(PETg)が開発された理由である。それらは一般に、エチレングリコールとテレフタル酸単位に加えて、シクロヘキサンジメタノール(CHDM)単位を含むポリエステルである。このジオールをPETに導入することにより、特にPETgが非晶質である場合、その性質を意図する用途に適合させること、例えばその衝撃強度またはその光学的性質の改善が可能になる。
【0005】
他の変性PETも、1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール単位、特にイソソルビド(PEIT)をポリエステルに導入することによって開発されている。これらの変性ポリエステルは、未変性PETまたはCHDMを含むPETgよりもガラス転移温度が高い。加えて、1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールは、例えば、デンプン等の再生可能資源から得られるという利点がある。
【0006】
これらのPEITの1つの問題は、衝撃強度がそれでもなお不十分なことである。加えて、ガラス転移温度は、特定のプラスチック性物品の製造には不十分である。
【0007】
従来より、ポリエステルの衝撃強度の改善のために、結晶化度が低いポリエステルの使用が知られている。イソソルビド系ポリエステルに関しては米国特許出願公開第2012/0177854号明細書に記載されており、そこには、テレフタル酸単位と、1~60モル%のイソソルビドと5~99%の1,4-シクロヘキサンジメタノールとを含むジオール単位を含む、衝撃強度が改善されたポリエステルが記載されている。
【0008】
この出願の導入部で示されるように、コモノマーの添加により、この場合には1,4-シクロヘキサンジメタノールの添加により、結晶性が排除されたポリマーを得ることが目的である。実施例において、様々なポリ(エチレン-コ-1,4-シクロヘキサンジメチレン-コ-イソソルビド)テレフタレート(PECIT)の製造と、ポリ(1,4-シクロヘキサンジメチレン-コ-イソソルビド)テレフタレート(PCIT)の例が記載されている。
【0009】
また、PECIT型ポリマーは商業的開発の対象となってきたが、これはPCITの場合には当てはまらないことにも留意されたい。実際、イソソルビドは第二級ジオールとしての反応性が低いため、これまで、その製造は複雑であると考えられていた。したがって
、Yoonら(Synthesis and Characteristics of a Biobased High-Tg Terpolyester of Isosorbide,Ethylene Glycol,and 1,4-Cyclohexane Dimethanol:Effect of Ethylene Glycol as a Chain Linker on Polymerization,Macromolecules,2013,46,7219-7231)は、PCITの合成が、PECITの合成よりも達成が難しいことを示した。この論文は、PECITの生産速度に及ぼすエチレングリコール含有量の影響の研究を記載する。
【0010】
Yoonらの文献において、非晶質PCIT(ジオールの合計に対して約29%のイソソルビドと71%のCHDMを含む)を製造し、その合成と性質をPECIT型ポリマーと比較している。第7222ページの合成の項の第1パラグラフを参照すると、合成時に高温を使用すると成形されたポリマーの熱分解が誘発され、このような分解は特にイソソルビド等の脂肪族環式ジオールの存在に関連している。したがって、Yoonらは、重縮合温度が270℃に制限される方法を使用した。Yoonらは、重合時間を増やしても、この方法で十分な粘度のポリエステルを得ることは不可能なことを観察した。したがって、エチレングリコールを添加しないと、合成時間を長くしてもポリエステルの粘度は制限されたままである。
【0011】
光学物品の製造分野では、使用されるポリマーは光学特性を有していなければならないが、衝撃強度および引掻抵抗性ならびに低い複屈折も有していなければならない。しかしながら、これらの特性は、現在市場に存在するポリマーには最適でなく、適切な機械的特性、ならびに光学物品の製造に使用され、かつ前記物品の良好な加工特性を提供するために十分に高い溶液中の還元粘度を有する新規熱可塑性ポリエステルを見いだす必要が依然としてある。
【0012】
テレフタル酸単位、エチレングリコール単位およびイソソルビド単位、ならびに任意選択的に別のジオール(例えば、1,4-シクロヘキサンジメタノール)を有するポリマーから製造された光学物品は、米国特許第6126992号明細書で公知である。このようにして得られた全てのポリマーは、高いガラス転移温度を得るために必要であることが広く認められているため、エチレングリコール単位を含む。さらに、実施された調製例では、ガラス転移温度が高いポリマーを得ることができない。それどころか、光学物品の製造において完全に満足いくものとするためには、低すぎる(実施例1のポリマーについては106℃、実施例2のポリマーについては116℃)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
したがって、光学物品の製造のための、1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール単位を含有する新規の熱可塑性ポリエステルを見いだす必要が現在も依然としてあり、このポリエステルは改善された光学特性を有し、容易に形成することができ、かつ耐熱性が高く、衝撃強度が高い。
【0014】
したがって、エチレングリコールはイソソルビドの配合に必須であることがこれまで知られていたが、上記の目的が、少なくとも1種の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール単位、1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール単位以外の少なくとも1種の脂環式ジオール単位、および少なくとも1種の芳香族ジカルボン酸単位を含む非晶質熱可塑性ポリエステルによって達成可能であることを発見したことは本出願人の功績である。
【課題を解決するための手段】
【0015】
したがって、本発明の主題は、光学物品の製造のための非晶質熱可塑性ポリエステルの
使用であって、前記非晶質熱可塑性ポリエステルは、
・少なくとも1種の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール単位(A);
・1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール単位(A)以外の少なくとも1種の脂環式ジオール単位(B);
・少なくとも1種のテレフタル酸単位(C)
を含み、
(A)/[(A)+(B)]モル比は、0.32超、0.90未満であり、溶液中の還元粘度は、50mL/gより高く;
前記ポリエステルは、非環式脂肪族ジオール単位を含有しないか、または非環式脂肪族ジオール単位のモル量はポリエステルの全モノマー単位に対して5%未満であり、前記ポリエステルの溶液(25℃;フェノール(50%m):オルト-ジクロロベンゼン(50%m);ポリエステル5g/L)中の還元粘度は50mL/gより高い、使用である。
【0016】
本発明の第2の主題は、上記の非晶質熱可塑性ポリエステルをベースとする光学物品を製造する方法に関する。
【0017】
最後に、本発明の第3の主題は、上記の非晶質熱可塑性ポリエステルを含む光学物品に関する。
【0018】
本発明で使用される非晶質熱可塑性ポリエステルは、ガラス転移温度が116℃超で、溶液中の還元粘度が高く、複屈折が低く、かつ衝撃強度と引掻抵抗特性に優れ、特に光学物品の製造における使用に有利である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1A】本発明による非晶質熱可塑性ポリエステルから製造されたプレートの写真である。
図1B】本発明による非晶質熱可塑性ポリエステルから製造されていないプレートの写真である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の第1の主題は、光学物品の製造のための非晶質熱可塑性ポリエステルの使用であって、前記非晶質熱可塑性ポリエステルは、
・少なくとも1種の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール単位(A);
・1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール単位(A)以外の少なくとも1種の脂環式ジオール単位(B);
・少なくとも1種のテレフタル酸単位(C)
を含み、(A)/[(A)+(B)]モル比は、0.32超、0.90未満であり、および溶液中の還元粘度は50mL/gより高い、使用に関する。
【0021】
(A)/[(A)+(B)]モル比は、1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール単位(A)/1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール単位(A)および1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール単位(A)以外の脂環式ジオール単位(B)の合計のモル比を意味するように意図される。
【0022】
非晶質熱可塑性ポリエステルは、非環式脂肪族ジオール単位を含有しないか、またはその少量を含む。
【0023】
「少量のモル量の非環式脂肪族ジオール単位」は、特に5%未満のモル量の非環式脂肪族ジオール単位を意味するように意図される。本発明によれば、このモル量は、非環式脂肪族ジオール単位の合計の比率を表し、これらの単位はポリエステルの全モノマー単位に
対して同一でも異なっていてもよい。
【0024】
非環式脂肪族ジオールは、直鎖状または分枝鎖状の非環式脂肪族ジオールであってもよい。飽和または不飽和の非環式脂肪族ジオールであってもよい。エチレングリコールの他に、飽和直鎖状非環式脂肪族ジオールは、例えば、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオールおよび/または1,10-デカンジオールであってもよい。飽和分枝鎖状非環式脂肪族ジオールの例としては、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、2-エチル-2-ブチル-1,3-プロパンジオール、プロピレングリコールおよび/またはネオペンチルグリコールが挙げられる。不飽和脂肪族ジオールの例としては、例えば、シス-2-ブテン-1,4-ジオールが挙げられる。
【0025】
非環式脂肪族ジオール単位のこのモル量は、有利には1%未満である。好ましくは、ポリエステルは非環式脂肪族ジオール単位を含まず、より好ましくはエチレングリコールを含まない。
【0026】
驚くべきことに、合成に使用される非環式脂肪族ジオール、つまりエチレングリコールの量が少なくても、溶液中での高い還元粘度と、特にイソソルビドが良好に組み込まれた非晶質熱可塑性ポリエステルが得られる。1つの理論によって縛られることなく、これはエチレングリコールの反応速度が1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールの反応速度よりもはるかに速いという事実によって説明され、これは後者のポリエステルへの組み込みを大きく制限する。したがって、得られるポリエステルは、1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールの低い集積度、つまりガラス転移温度が比較的低い。
【0027】
モノマー(A)は、1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールであり、かつイソソルビド、イソマンニド、イソヨージドまたはその混合物であってもよい。好ましくは、1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール(A)は、イソソルビドである。
【0028】
イソソルビド、イソマンニドおよびイソイジドは、それぞれソルビトール、マンニトールおよびイジトールの脱水によって得られる。イソソルビドに関しては、商品名Polysorb(登録商標)Pの名前で、本出願人によって販売されている。
【0029】
脂環式ジオール(B)は、脂肪族環式ジオールとも呼ばれる。それは、特に1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,2-シクロヘキサンジメタノール、1,3-シクロヘキサンジメタノールまたはこれらのジオールの混合物から選択できるジオールである。好ましくは、脂環式ジオール(B)は、1,4-シクロヘキサンジメタノールである。脂環式ジオール(B)は、シス配置、トランス配置、またはシスおよびトランス配置のジオールの混合物であってもよい。
【0030】
1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール単位(A)/1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール単位(A)および1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール単位(A)以外の脂環式ジオール単位(B)の合計のモル比は、0.32超、0.90未満である。有利には、この比率は、0.35超、0.70未満であり、より特に、この比率は、0.40超、0.65未満である。
【0031】
光学物品の製造のために特に適切である非晶質熱可塑性ポリエステルは、例えば、
・モル量が16~54%の範囲の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール単位(A);
・モル量が5~30%の範囲の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール単位(A)
以外の脂環式ジオール単位(B);
・モル量が45~55%の範囲のテレフタル酸単位(C)
を含み得る。
【0032】
ポリエステル中の異なる単位の量は、1H NMRにより、またはポリエステルの完全加水分解またはメタノリシスから生じるモノマーの混合物のクロマトグラフィー分析により、好ましくは1H NMRにより決定できる。
【0033】
当業者は、ポリエステルの単位のそれぞれの量を決定する分析条件を容易に見つけることができる。例えば、ポリ(1,4-シクロヘキサンジメチレン-コ-イソソルビドテレフタレート)のNMRスペクトルから、1,4-シクロヘキサンジメタノールに関連する化学シフトは0.9~2.4ppmおよび4.0~4.5ppmであり、テレフタレート環に関連する化学シフトは7.8~8.4ppmであり、イソソルビドに関連する化学シフトは4.1~5.8ppmである。それぞれのシグナルの積分により、ポリエステルのそれぞれの単位の量の決定が可能になる。エステルのそれぞれの単位の量を決定することが可能になる。
【0034】
そのようにして調製された非晶質熱可塑性ポリエステルは、ガラス転移温度が116℃超、200℃未満である。好ましくは、ガラス転移温度は、118℃超、非常に好ましくは120℃超、さらにより好ましくは122℃超、190℃未満である。ガラス転移温度は、従来法、特に10℃/分の加熱速度を使用する示差走査型熱量測定(DSC)によって測定される。実験プロトコルは以下の実施例に詳細に記載されている。
【0035】
これらは、特に明度Lが40より高い。有利には、明度Lは、55より高く、好ましくは60より高く、最も好ましくは65より高く、例えば70より高い。パラメーターLは、CIELabモデルにより分光測光器を使用して決定できる。
【0036】
最終的に、溶液中の還元粘度は、50mL/gより高くかつ150mL/g未満であり、この粘度は、導入されたポリマーの濃度が5g/Lである条件において、撹拌しながら130℃でポリマーを溶解した後、フェノールとオルト-ジクロロベンゼンの等質量混合物中、25℃でウベローデ毛管粘度計を使用して測定できる。
【0037】
溶液中の還元粘度を測定するこの試験は、溶媒の選択と使用されるポリマーの濃度により、下記方法に従って調製された粘性ポリマーの粘度の測定に完全に適している。
【0038】
本発明に従って使用される熱可塑性ポリエステルの非晶質特性は、X線回折線の欠如により、また示差走査型熱量測定分析における吸熱溶融ピークの欠如により特徴付けられる。
【0039】
上記の方法に従って調製された非晶質熱可塑性のポリエステルは、光学物品の製造のための優れた特性を有する。
【0040】
実際、特に0.32超、0.90未満の(A)/[(A)+(B)]により、ならびに溶液中の還元粘度が50mL/gより高く、好ましくは150mL/g未満であることにより、非晶質熱可塑性ポリエステルは、ブロー成形された場合、耐熱性がより良好であり、それによって改善される透明性または複屈折等の光学特性が得られる。さらに、良好な引掻抵抗性を有し、金属化可能である。
【0041】
本発明の目的のために、光学物品は、例えば、CD(compact discの頭字語)、DVD(digital versatile discの頭字語)、光学レンズ
、フレネルレンズ、ダッシュボードウインドウ、プリズムリフレクター、透明シートもしくはフィルム、LCDスクリーン用フィルム、発光ダイオード部品または他に光ファイバーである。
【0042】
本発明による使用、上記の非晶質熱可塑性ポリエステルからの光学物品の製造は、例えば、射出成形、圧縮成形、射出圧縮成形およびダイを通した押出成形を含む、一般にプラスチックに使用される1種以上の技術による形成工程を必要とし、前記技術は、特に繊維、フィルム、シート、バー、プレート、顆粒またはロッドを設計するために実施できる。
【0043】
有利には、本発明による非晶質熱可塑性ポリエステルからの光学物品の製造は、射出成形または射出圧縮成形によって実施される。製造は、好ましくは、射出成形によって実施される。
【0044】
一実施形態によれば、非晶質熱可塑性ポリエステルは、光学物品の製造のために使用される前に、ペレットまたは顆粒等の取り扱いが容易な形態で重合後に包装される。好ましくは、非晶質熱可塑性ポリエステルは、顆粒の形態で包装され、前記顆粒は、有利には光学物品の形態に変換される前に乾燥される。乾燥は、残留水分が300ppm未満、例えば約230ppmの顆粒を得るために実施される。
【0045】
特定の一実施形態によれば、光学物品の製造のために使用される方法にかかわらず、上記で定義された非晶質熱可塑性ポリエステルは、1種以上の追加のポリマーと組み合わせて使用できる。
【0046】
追加のポリマーは、ポリアミド、本発明によるポリエステル以外のポリエステル、ポリスチレン、スチレンコポリマー、スチレン-アクリロニトリルコポリマー、スチレン-アクリロニトリル-ブタジエンコポリマー、ポリ(メタクリル酸メチル)、アクリルコポリマー、ポリ(エーテル-イミド)、ポリ(2,6-ジメチルフェニレンオキシド)等のポリ(フェニレンオキシド)、ポリ(フェニレンスルフェート)、ポリ(エステル-カーボネート)、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリスルホンエーテル、ポリエーテルケトンおよびこれらのポリマーのブレンド物から選択できる。
【0047】
追加のポリマーは、ポリマーの衝撃特性を改善することを可能にするポリマー、特に官能性ポリオレフィン、例えば官能化エチレンまたはプロピレンポリマーおよびコポリマー、コア-シェルコポリマーまたはブロックコポリマー等であってもよい。
【0048】
非晶質熱可塑性のポリエステルから光学物品を製造する間に、最終製品に特定の特性を与えるために1種以上の添加剤を添加することもできる。
【0049】
したがって、添加剤は、例えば、Croda社からのIncromold(商標)等の離型剤、例えばベンゾフェノンまたはベンゾトリアゾール型の分子、例えばBASFからのTinuvin(商標)の範囲:tinuvin 326、tinuvin Pもしくはtinuvin234等、またはヒンダードアミン、例えばBASFからのChimassorb(商標)の範囲:Chimassorb 2020、Chimasorb 81もしくはChimassorb 944等のUV抵抗剤であってもよい。
【0050】
添加剤は、乳白剤、染料および顔料から選択されてもよい。それらは、酢酸コバルトならびに次の化合物:HS-325 Sandoplast(登録商標)Red BB(Solvent Red 195の名称でも知られる、アゾ官能性を有する化合物)、アントラキノンであるHS-510 Sandoplast(登録商標)Blue 2B、Polysynthren(登録商標)Blue RおよびClariant(登録商標)
RSB Violetから選択されてもよい。
【0051】
本発明の第2の主題は、光学物品を製造する方法であって、
- 上記で定義される非晶質熱可塑性ポリエステルを準備する工程、
- 先行する工程で得られた非晶質熱可塑性ポリエステルから前記光学物品を調製する工程
を含む方法に関する。
【0052】
調製工程は、当業者に公知の技術、例えば射出成形または射出圧縮成形によって実施される。調製は、好ましくは、射出成形によって実施される。
【0053】
本発明の第3の主題は、上記の非晶質熱可塑性ポリエステルを含む光学物品に関する。光学物品は、上記で定義された1種以上の追加のポリマーおよび/または1種以上の添加剤も含む。
【0054】
光学物品の製造のための上記非晶質熱可塑性ポリエステルは、
・少なくとも1種の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール単位(A)、1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール単位(A)以外の少なくとも1種の脂環式ジオール単位(B)、および少なくとも1種のテレフタル酸単位(C)を含むモノマーを反応器中に導入する工程であって、モル比((A)+(B))/(C)は、1.05~1.5の範囲であり、前記モノマーは、非環式脂肪族ジオールを含有しないか、または導入された全モノマーに対して非環式脂肪族ジオール単位のモル量が5%未満である、工程;
・反応器中に触媒系を導入する工程;
・前記モノマーを重合してポリエステルを形成する工程であって、
・オリゴマー化の第1段階であって、その間に、反応媒体が265~280℃、有利には270~280℃の範囲の温度、例えば275℃で不活性雰囲気下において撹拌される、オリゴマー化の第1段階;
・オリゴマーの縮合の第2段階であって、その間に、形成されたオリゴマーが、ポリエステルを形成するように278~300℃、有利には280~290℃の範囲の温度、例えば285℃で減圧下において撹拌される、オリゴマーの縮合の第2段階
からなる工程;
・非晶質熱可塑性ポリエステルを回収する工程
を含み、モル比((A)+(B))/(C)は、1.05~1.50の範囲である、製造方法によって調製され得る。
【0055】
そのようにして得られたポリマーは、溶液中の還元粘度が50mL/gより高い。
【0056】
方法のこの第1の段階は、不活性雰囲気、すなわち少なくとも1種の不活性気体の雰囲気下で実施される。この不活性気体は、特に二窒素であってもよい。この第1の段階は、気体流下で実施することができ、それは、圧力下、例えば1.05~8バールの圧力において実施できる。
【0057】
好ましくは、圧力は、3~8バール、最も好ましくは5~7.5バールの範囲、例えば6.6バールである。これらの好ましい圧力条件下において、全てのモノマーの互いとの反応は、この段階中のモノマーの損失の制限によって促進される。
【0058】
オリゴマー化の第1の段階前にモノマーの脱酸素化の工程が好ましくは実施される。それは、例えば、モノマーが反応器中に導入されると、減圧を生じることにより、次いでそれに窒素等の不活性気体を導入することにより実施することができる。この減圧-不活性気体導入サイクルは、数回、例えば3~5回にわたって繰り返すことができる。好ましく
は、試薬および特にジオールが完全に溶解するように、この減圧-窒素サイクルは、60~80℃の温度で実施される。この脱酸素化工程は、方法の終了時に得られるポリエステルの着色特性を改善する利点を有する。
【0059】
オリゴマーの縮合の第2の段階は、減圧下で実施される。圧力は、段階的にランプを使用して減少させるか、あるいはランプとステップの組合せを使用した圧力減少により、この第2段階の間に連続的に減少できる。好ましくは、この第2段階の終了時に、圧力は10ミリバール未満、最も好ましくは1ミリバール未満である。
【0060】
重合工程の第1の段階は、継続時間が20分~5時間であることが好ましい。有利には、第2段階は継続時間が30分~6時間であり、この段階は、反応器が真圧下、すなわち1バール未満の圧力に置かれた瞬間から始まる。
【0061】
この方法はまた、反応器に触媒系を導入する工程を含む。この工程は、前もって、または上記の重合工程の間に実施できる。
【0062】
触媒系は、場合により不活性担体上に分散または固定された触媒または触媒の混合物を意味するように意図される。
【0063】
触媒は、本発明による使用による高粘度ポリマーを得るために適切な量で使用される。
【0064】
エステル化触媒は、オリゴマー化段階で有利に使用される。このエステル化触媒は、スズ、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、亜鉛、マンガン、カルシウムおよびストロンチウムの誘導体、パラ-トルエンスルホン酸(PTSA)もしくはメタンスルホン酸(MSA)等の有機触媒、またはこれらの触媒の混合物から選択することができる。このような化合物の例として、出願米国特許出願公開第2011282020A1号明細書のパラグラフ[0026]~[0029]および出願国際公開第2013/062408A1号パンフレットの第5ページに記載されるものが挙げられる。
【0065】
好ましくは、亜鉛誘導体またはマンガン、スズもしくはゲルマニウム誘導体がエステル交換の第1の段階中に使用される。
【0066】
重量による量の例として、導入されたモノマーの量に対して、オリゴマー化の段階で触媒系に含有される10~500ppmの金属が使用できる。
【0067】
エステル交換の終了時において、第1の工程からの触媒は、亜リン酸またはリン酸を添加することにより、任意選択的にブロックされるか、またはスズ(IV)の場合、トリフェニルホスファイトもしくはトリス(ノニルフェニル)ホスファイト、あるいは米国特許出願公開第2011/282020A1号明細書の段落番号[0034]に記載のもの等の亜リン酸塩によって還元できる。
【0068】
オリゴマーの縮合の第2の段階は、任意選択的に、触媒を添加して実施できる。この触媒は、有利には、スズ誘導体、好ましくはスズ、チタン、ジルコニウム、ゲルマニウム、アンチモン、ビスマス、ハフニウム、マグネシウム、セリウム、亜鉛、コバルト、鉄、マンガン、カルシウム、ストロンチウム、ナトリウム、カリウム、アルミニウムもしくはリチウムの誘導体、またはこれらの触媒の混合物から選択される。このような化合物の例は、例えば、特許欧州特許第1882712B1号明細書の段落番号[0090]~[0094]に記載されるものであってもよい。
【0069】
好ましくは、触媒は、スズ、チタン、ゲルマニウム、アルミニウムまたはアンチモン誘
導体である。
【0070】
重量による量の例として、導入されたモノマーの量に対して、オリゴマーの縮合の段階の触媒系に含有される10~500ppmの金属が使用できる。
【0071】
最も好ましくは、触媒系は、重合の第1の段階および第2の段階中に使用される。前記系は、有利には、スズをベースとする触媒、またはスズ、チタン、ゲルマニウムおよびアルミニウムをベースとする触媒の混合物からなる。
【0072】
例として、重量による量として、導入されたモノマーの量に対して、触媒系に含有される10~500ppmの金属が使用できる。
【0073】
本調製方法によれば、モノマーの重合の工程中、酸化防止剤が有利に使用される。これらの酸化防止剤により、得られるポリエステルの着色を減少できる。酸化防止剤は、一次および/または二次酸化防止剤であってもよい。一次酸化防止剤は、化合物Hostanox(登録商標)03、Hostanox(登録商標)010、Hostanox(登録商標)016、Ultranox(登録商標)210、Ultranox(登録商標)276、Dovernox(登録商標)10、Dovernox(登録商標)76、Dovernox(登録商標)3114、Irganox(登録商標)1010またはIrganox(登録商標)1076等の立体障害フェノール、またはIrgamod(登録商標)195等のホスホネートであってもよい。二次酸化防止剤は、Ultranox(登録商標)626、Doverphos(登録商標)S-9228、Hostanox(登録商標)P-EPQまたはIrgafos 168等の三価リン化合物であってもよい。
【0074】
重合添加剤として、酢酸ナトリウム、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドまたはテトラエチルアンモニウムヒドロキシド等、望ましくないエーテル化反応の制限が可能である少なくとも1種の化合物の反応器への導入も可能である。
【0075】
この方法はまた、重合工程の終了時に非晶質熱可塑性ポリエステルを回収する工程を含む。ポリエステルは、溶融ポリマーロッドの形態での取り出しによって回収できる。このロッドは、従来の造粒技術を用いて顆粒に変換することができる。
【0076】
純粋に例示的なものであり、保護の範囲を制限するものではない次の実施例により明確に理解されるであろう。
【実施例
【0077】
ポリマーの特性を、次の方法によって観察した。
【0078】
溶液中の還元粘度 溶液中の還元粘度は、導入されたポリマーの濃度が5g/Lである条件で、ポリマーを撹拌しながら130℃で溶解した後、フェノールとオルト-ジクロロベンゼンの等質量混合物中、25℃でウベローデ毛細管粘度計を使用して評価した。
【0079】
DSC
ポリエステルの熱特性を、示差走査型熱量測定(DSC)によって測定した。試料を最初に開放るつぼ中、窒素雰囲気下で10℃から320℃まで加熱し(10℃/分)、10℃まで冷却し(10℃/分)、最初の工程と同じ条件下で320℃まで再加熱する。ガラス転移温度は、第2の加熱の中点でとられた。任意の融点は、第1の加熱の吸熱ピーク(開始)で決定される。いずれの融点も、第1の加熱において吸熱ピーク(開始)上で決定される。同様に、融解エンタルピー(曲線下面積)は、第1の加熱において決定される。
【0080】
以下に提示された説明例のために、次の試薬を使用した。
1,4-シクロヘキサンジメタノール(純度99%、シスおよびトランス異性体の混合物)
イソソルビド(純度>99.5%)、Roquette Freres社製、Polysorb(登録商標)P
テレフタル酸(純度99+%)、Acros社製
Irganox(登録商標)1010、BASF AG社製
ジブチルスズオキシド(純度98%)、Sigma-Aldrich社製
【0081】
非晶質熱可塑性ポリエステルの調製と形成
A:重合
2種の熱可塑性ポリエステルP1およびP2を表1に記載の試薬量で以下に記載の手順に従って調製した。P1は本発明に従って使用するために調製された非晶質熱可塑性ポリエステルであり、特に1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール単位(A)/1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール単位(A)および1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール単位(A)以外の脂環式ジオール単位(B)の合計のモル比が0.5であり、一方、P2は比較のポリエステルであり、(A)/[(A)+(B)]モル比は0.1である。
【0082】
1,4-シクロヘキサンジメタノールを859g(6モル)、イソソルビドを871g(6モル)、テレフタル酸を1800g(10.8モル)、Irganox1010(酸化防止剤)を1.5gおよびジブチルスズオキシド(触媒)1.23gを7.5L反応器に加えた。
【0083】
イソソルビド結晶から残留酸素を抽出するために、反応媒体の温度が60℃~80℃になったら4回の減圧-窒素サイクルを実施する。次いで、6.6バールの圧力下で常に撹拌しながら(150rpm)反応混合物を275℃(4℃/分)まで加熱する。エステル化度は、回収された蒸留物の量から推測する。次いで、対数的傾斜に従って圧力を90分で0.7ミリバールに下げ、温度を285℃にする。これらの減圧および温度条件は、初期トルクに対して10Nmのトルクの増加が得られるまで維持された。
【0084】
最後に、反応器の底部バルブを介してポリマーロッドをキャストし、温度を調節した水浴中で15℃まで冷却し、約15mgの顆粒の形態で切断する。
【0085】
【表1】
【0086】
ポリエステルP1およびP2に関して得られた樹脂の特性を以下の表2にまとめる。
【0087】
【表2】
【0088】
熱特性に関しては、第2の加熱において測定された。
【0089】
B:射出
300ppm未満の残留水分を達成するために、ポリエステルP1およびP2の顆粒を110℃で減圧乾燥させる。特に、本実施例において、顆粒の含水量は230ppmである。
【0090】
Engel Victory 80(登録商標)プレスにおいて射出成形を実施する。
【0091】
乾燥雰囲気に保持された顆粒を射出成形機のホッパーに導入する。顆粒は、厚さ2mmのプレートの形に射出成形する。射出成形パラメーターを以下の表3にまとめる。
【0092】
【表3】
【0093】
熱可塑性ポリエステルP1およびP2を用いって得られた2枚のプレートの写真を表す図1Aおよび1Bによって示されるように、これらのパラメーターを用いて得られたプレートは非常に異なる特性を有する。
【0094】
非晶質熱可塑性ポリエステルP1は、有利な光学特性、特に複屈折が低いプレートを得ることを可能にする。逆に、(A)/[(A)+(B)]モル比が0.32超ではないポリエステルP2は、複屈折が非常に高く、光学物品の製造のための使用に不適合である。
図1A
図1B