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特許7133543末梢神経刺激による心機能不全の治療のためのシステムおよび方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-31
(45)【発行日】2022-09-08
(54)【発明の名称】末梢神経刺激による心機能不全の治療のためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   A61N 1/36 20060101AFI20220901BHJP
【FI】
A61N1/36
【請求項の数】 24
(21)【出願番号】P 2019507946
(86)(22)【出願日】2017-08-24
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-11-07
(86)【国際出願番号】 US2017048424
(87)【国際公開番号】W WO2018039458
(87)【国際公開日】2018-03-01
【審査請求日】2020-08-17
(31)【優先権主張番号】62/423,169
(32)【優先日】2016-11-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/379,253
(32)【優先日】2016-08-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515196735
【氏名又は名称】カラ ヘルス,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】CALA HEALTH,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100124039
【弁理士】
【氏名又は名称】立花 顕治
(74)【代理人】
【識別番号】100179213
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 未知子
(74)【代理人】
【識別番号】100170542
【弁理士】
【氏名又は名称】桝田 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100210251
【弁理士】
【氏名又は名称】大古場 ゆう子
(72)【発明者】
【氏名】ハムナー,サミュエル,リチャード
(72)【発明者】
【氏名】ローゼンブルース,キャスリン,エイチ.
(72)【発明者】
【氏名】ウォング,セレナ,ハンイン
(72)【発明者】
【氏名】ロス,エリカ,クリスティーン
【審査官】野口 絢子
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-527256(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0238049(US,A1)
【文献】特表2004-512104(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0324118(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N 1/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
心不整脈又は高血圧を処置するためのウェアラブルなシステムであって、
制御装置と、
患者の四肢の皮膚上に配置されるように構成された第1の末梢神経エフェクタと、
前記患者の耳珠に配置されるように構成された第2の末梢神経エフェクタと、
フィードバック情報を提供するように構成された、少なくとも1つの生物学的センサ又はデータ入力源と、
を備え、
前記制御装置は、前記第1の末梢神経エフェクタに第1の電気的神経刺激信号を生成して、心不整脈又は高血圧に関係する少なくとも1つの脳又は脊髄の自律神経フィードバックループを修正するために第1の末梢神経を経皮的に刺激するように構成され、
前記制御装置は、前記第2の末梢神経エフェクタに第2の電気的神経刺激信号を生成して、心不整脈又は高血圧に関係する少なくとも1つの脳又は脊髄の自律神経フィードバックループを修正するために前記患者の副交感神経経路を伴う第2の末梢神経を経皮的に刺激するように構成され、
前記制御装置は、前記患者の副交感神経及び交感神経系活動のバランスをとるために、前記フィードバック情報に少なくとも部分的に基づいて前記第1の電気的神経刺激信号及び前記第2の電気的神経刺激信号の少なくとも一方を調整するように構成される、
システム。
【請求項2】
前記制御装置は、前記患者の異常な交感神経活動を識別すると、前記第1の電気的神経刺激信号を調整するように構成されている、
請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記制御装置は、前記患者の異常な副交感神経活動を識別すると、前記第1の電気的神経刺激信号を調整するように構成されている、
請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項4】
前記第1の電気的神経刺激信号は、前記第1の末梢神経のAα、Aβ、Aδ及びC線維のうち1つ又は複数を優先的に刺激する、
請求項1から3のいずれかに記載のシステム。
【請求項5】
前記第1の電気的神経刺激信号は、前記第1の末梢神経のAα、Aβ、Aδ及びC線維のうち1つのみを優先的に刺激する、
請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記制御装置は、前記第1の末梢神経エフェクタ及び前記第2の末梢神経エフェクタが、同時に腕神経叢を刺激するように、前記第1の電気的神経刺激信号及び前記第2の電気的神経刺激信号を生成するように構成される、
請求項1から5のいずれかに記載のシステム。
【請求項7】
前記制御装置は、前記第1の電気的神経刺激信号を前記第1の末梢神経エフェクタに生成すると同時に、前記第2の電気的神経刺激信号を前記第2の末梢神経エフェクタに生成するように構成される、
請求項1から6のいずれかに記載のシステム。
【請求項8】
前記制御装置は、前記第1の電気的神経刺激信号を前記第1の末梢神経エフェクタに生成してから、時間的ずれをもって前記第2の電気的神経刺激信号を前記第2の末梢神経エフェクタに生成するように構成される、
請求項1から6のいずれかに記載のシステム。
【請求項9】
前記制御装置は、前記第1の電気的神経刺激信号の生成から約1ミリ秒から約2.1ミリ秒の間の時間的ずれをもって、前記第2の電気的神経刺激信号を生成するように構成される、
請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記制御装置は、前記第1の電気的神経刺激信号と前記第2の電気的神経刺激信号とを交互のパターンで生成するように構成される、
請求項1から6のいずれかに記載のシステム。
【請求項11】
前記パターンは、約4Hzから約12Hzの交番周波数で生成される、
請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記制御装置は、前記第1の電気的神経刺激信号と前記第2の電気的神経刺激信号とを律動的パターンで生成するように構成される、
請求項1から11のいずれかに記載のシステム。
【請求項13】
前記律動的パターンは、測定された心臓のリズム事象とタイミングを合わせられる又は同期される、
請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
前記制御装置は、前記患者の自律神経バランスに関連して受信された前記フィードバック情報に基づいて、前記第1の電気的神経刺激信号及び前記第2の電気的神経刺激信号のうち少なくとも一方を調整するように構成される、
請求項1から13のいずれかに記載のシステム。
【請求項15】
前記制御装置は、前記第1の末梢神経及び前記第2の末梢神経の神経伝導速度に関する記録された測定値を受信し、前記記録された測定値に基づいて前記第1の電気的神経刺激信号及び前記第2の電気的神経刺激信号を調整するように構成される、
請求項1から14のいずれかに記載のシステム。
【請求項16】
心不整脈又は高血圧を処置するためのウェアラブルなシステムであって、
制御装置と、
患者の四肢の皮膚上に配置されるように構成された第1の末梢神経エフェクタと、
前記患者の耳に配置されるように構成された第2の末梢神経エフェクタと、
フィードバック情報を提供するように構成された、少なくとも1つの生物学的センサ又はデータ入力源と、
を備え、
前記制御装置は、前記第1の末梢神経エフェクタに第1の電気的神経調節信号を生成して、心不整脈又は高血圧に関係する少なくとも1つの脳又は脊髄の自律神経フィードバックループを修正するために第1の末梢神経を経皮的に刺激するように構成され、
前記制御装置は、前記第2の末梢神経エフェクタに第2の電気的神経調節信号を生成して、心不整脈又は高血圧に関係する少なくとも1つの脳又は脊髄の自律神経フィードバックループを修正するために前記患者の副交感神経経路を伴う第2の末梢神経を経皮的に刺激するように構成され、
前記制御装置は、前記患者の副交感神経及び交感神経系活動のバランスをとるために、前記フィードバック情報に少なくとも部分的に基づいて、前記第1の電気的神経調節信号及び前記第2の電気的神経調節信号の少なくとも一方を調整するよう構成される、
システム。
【請求項17】
心不整脈又は高血圧を処置するためのウェアラブルなシステムであって、
制御装置と、
患者の四肢の皮膚上に配置されるように構成された第1の末梢神経エフェクタと、
前記患者の耳に配置されるように構成された第2の末梢神経エフェクタと、
フィードバック情報を提供するように構成された、少なくとも1つの生物学的センサ又はデータ入力源と、
を備え、
前記制御装置は、前記第1の末梢神経エフェクタに第1の電気的神経調節信号を生成して、心不整脈又は高血圧に関係する少なくとも1つの脳又は脊髄の自律神経フィードバックループを修正するために第1の末梢神経を経皮的に刺激するように構成され、
前記制御装置は、前記第2の末梢神経エフェクタに第2の電気的神経調節信号を生成して、心不整脈又は高血圧に関係する少なくとも1つの脳又は脊髄の自律神経フィードバックループを修正するために前記患者の副交感神経経路を伴う第2の末梢神経を経皮的に刺激するように構成され、
前記制御装置は、前記フィードバック情報に少なくとも部分的に基づいて、前記第1の電気的神経調節信号及び前記第2の電気的神経調節信号の少なくとも一方を調整するよう構成される、
システム。
【請求項18】
患者の複数の神経を調整するためのウェアラブルなシステムであって、
制御装置と、
前記患者の四肢の皮膚上に配置されるように構成された第1の末梢神経エフェクタと、
前記患者の耳に配置されるように構成された第2の末梢神経エフェクタと、
フィードバック情報を提供するように構成された、少なくとも1つの生物学的センサ又はデータ入力源と、
を備え、
前記制御装置は、前記第1の末梢神経エフェクタに第1の電気的神経調節信号を生成して、少なくとも1つの脳又は脊髄の自律神経フィードバックループを修正するために第1の末梢神経を経皮的に刺激するように構成され、
前記制御装置は、前記第2の末梢神経エフェクタに第2の電気的神経調節信号を生成して、少なくとも1つの脳又は脊髄の自律神経フィードバックループを修正するために前記患者の副交感神経経路を伴う第2の末梢神経を経皮的に刺激するように構成され、
前記制御装置は、少なくとも部分的に前記フィードバック情報に基づいて、前記第1の電気的神経調節信号及び前記第2の電気的神経調節信号の少なくとも一方を調整するよう構成される、
システム。
【請求項19】
前記制御装置は、前記患者の異常な交感神経活動を識別すると、前記第1の電気的神経調節信号を調整するように構成されている、
請求項16から18のいずれかに記載のシステム。
【請求項20】
前記制御装置は、前記患者の異常な副交感神経活動を識別すると、前記第1の電気的神経調節信号を調整するように構成されている、
請求項16から19のいずれかに記載のシステム。
【請求項21】
前記制御装置は、前記第1の電気的神経調節信号と前記第2の電気的神経調節信号とを交互のパターンで生成するように構成される、
請求項16から20のいずれかに記載のシステム。
【請求項22】
前記制御装置は、前記第1の電気的神経調節信号と前記第2の電気的神経調節信号とを律動的パターンで生成するように構成される、
請求項16から20のいずれかに記載のシステム。
【請求項23】
前記律動的パターンは、測定された心臓のリズム事象とタイミングを合わせられる又は同期される、
請求項22に記載のシステム。
【請求項24】
前記制御装置は、前記患者の自律神経バランスに関連して受信された前記フィードバック情報に基づいて、前記第1の電気的神経調節信号及び前記第2の電気的神経調節信号のうち少なくとも一方を調整するように構成される、
請求項16から23のいずれかに記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、米国特許法第119条(e)の下で、2016年8月25日に出願された米国仮特許出願第62/379,253号、および2016年11月16日に出願された米国仮特許出願第62/423,169号の非仮出願として利益を主張するものであり、それぞれの全体は参照により本出願に組み込まれる。本出願と共に提出された出願データシートにおいて外国または国内の優先権主張が確認されているすべての出願は、37CFR1.57の下で参照により本明細書に組み込まれる。
背景
【0002】
本発明の実施形態は、概して、不整脈および高血圧を含む心機能不全の治療に関し、より具体的には、心房細動を含む心不整脈、ならびに高血圧を非侵襲性末梢神経刺激によって治療するシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0003】
心臓の主な機能は、酸素を含んだ血液を体全体に送り出し、酸素が除去された血液を肺に戻すことである。血液を送り出すことは、定期的かつ継続的に心臓内の4つの小室を協調的に収縮させることによって達成される。内因性伝導システムは、協調的収縮を促進する律動電気信号を心臓内で発生させ伝導する。しかしながら、外的要因に反応するために、心拍数および収縮性は自律神経系および内分泌系によって調節されている。具体的には、自律神経系は、安定性を維持するために、心拍数、血圧、呼吸数、体温、および体内の他の内臓活動を調節することができる。
【0004】
心臓の正常な拍動パターンまたは律動の変動は、心不整脈または不整脈と呼ばれ、以後、これらは同義語として使用される。心不整脈は、心房、心室のレベルで発生するか、または電気的インパルスが始まる接合部から発生する可能性がある。拍動の機能不全の起源に基づくこれらの広いグループ分けは、異常な心拍の正確なパターンに基づいてサブグループにさらに分類される。心房性不整脈は、例えば、心房粗動、心房細動、多源性心房頻脈または心房性期外収縮として現れ得る。心室性不整脈は、例えば、早発性心室収縮、心室頻拍、トルサードドポワント、または心室細動として現れ得る。接合部不整脈は、PSVTなどの上室性頻拍の形で、または早期の接合部収縮として現れ得る。徐脈の状態である、部分的(一次、二次(Mobitz IおよびMobitz II))または三次完全心臓ブロックも不整脈の一種である。
【0005】
心不整脈は米国の人口の5%以上で頻発しており、著しい死亡率および罹患率をもたらしている。心不整脈は、発作、心不全および高血圧の主要な危険因子と関連している。心不整脈が非常に頻発しているので、多くの研究開発は血圧を下げるための新しくて改善された方法を見つけることに焦点を当ててきた。
【0006】
不整脈のタイプに応じて、治療は薬物の投与および/または電気的操作および/または手術であり得る。抗不整脈薬は、抗凝固薬とよく併用される。薬物治療以外に、特定の人々は、内部的にも外部的にも、電極を通して電気刺激を加えることによって積極的に恩恵を受けている。電気除細動による電気刺激および体外式除細動器または自動植込み型除細動器(AICD)による除細動は、心不整脈の致命的な症状である心室細動の治療における第一選択の治療法である。ペースメーカーによる一時的または恒久的な心臓ペーシングは、特定の不整脈に対する別の治療法である。外科的選択肢には、心房細動の治療によく使用されるカテーテルアブレーションが含まれる。しかしながら、多くの患者にとって、これらの治療の有効性は十分ではないか、または時間の経過と共に減少するかのいずれかである。また、抗不整脈薬は、いくつかの短期および長期の副作用および/または薬物間相互作用を有する可能性があるので、心機能不全を治療するための新しいシステムおよび方法が必要とされている。
【0007】
高血圧は、長期間高い血圧を有する状態であり、冠状動脈疾患、発作、心不全、および末梢血管疾患などの多くの心血管疾患、ならびに視力喪失や慢性腎臓病のような他の疾患と関連し、それらの主要な危険因子である。これらの疾患、特に心血管疾患は、米国およびその他の国々における死亡率および罹患率の大きな割合を占める。10億人を超える成人が高血圧症に罹患していると推定され、高血圧症が非常に頻発しているため、多くの研究開発は血圧を低下させる新しくて改善された方法を見出すことに集中している。
【0008】
心室同期不全は、心臓の異なる心室における収縮のタイミングの違い、または同期の欠如である。収縮のタイミングの大きな違いは、心臓の効率を低下させる可能性があり、高血圧が主要な予防可能な原因の1つである心不全と相関している。したがって、同期不全の測定は、高血圧治療の効果的な結果の尺度として使用することができる。
【0009】
治療法には、運動、食事の変更、体重減少などの生活習慣の改善が含まれる。他の治療法は、主として様々なタイプの薬を含む。多くの場合、これらの治療法は組み合わせて使用される。しかしながら、多くの患者にとって、これらの治療の有効性は十分ではないか、または時間の経過と共に減少するかのいずれかである。
【0010】
したがって、他の高血圧および/または不整脈治療の代わりにまたはそれらと組み合わせて使用することができる、高血圧および/または不整脈を含む心機能不全を治療するさらなる方法を提供することが望ましいであろう。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一部の実施形態は、概して、心不整脈および/または高血圧の治療に関し、より具体的には、心房細動を含むがこれに限定されない高血圧および/または心不整脈を非侵襲性末梢神経刺激によって治療するシステムおよび方法に関する。一部の実施形態では、本明細書に開示するのは、患者の心不整脈を治療するためのシステムである。このシステムは、パルス発生器を含む末梢神経刺激装置と、患者の肢部の神経、指圧ポイント、または経絡に電気刺激を与えるように構成された少なくとも2つの電極とを含むことができる。一部の実施形態では、刺激は、血圧、心不整脈の発生率、心不整脈の持続時間、および電気的除細動のうちの1つまたは複数を低減するのに十分であり得る。システムはまた、1つ、2つ、またはそれ以上のセンサを含み得る。刺激装置および/またはセンサは、患者の体内に埋め込むことができ、または装着型とすることができる。一部の実施形態では、刺激装置および/またはセンサは、経皮的であり得る。
【0012】
一部の実施形態では、心機能不全を治療するためのシステムおよび方法は、本明細書に開示されているような任意の数の特徴を含むことができる。
【0013】
一部の実施形態では、選択的活性化を用いて心不整脈および/または高血圧を治療するための経皮的方法を本明細書に開示する。方法は、例えば、患者の四肢の患者の皮膚上に第1の末梢神経エフェクタを配置する工程、心不整脈または高血圧に関する少なくとも1つの脳または脊髄の自律神経フィードバックループを修正するのに十分に第1の末梢神経を刺激するために、第1の末梢神経エフェクタに経皮的に第1の電気神経刺激信号を送達する工程を含むことができる。第1の電気神経刺激信号は、第1の末梢神経のAα線維、Aβ線維、Aδ線維、B線維、またはC線維のうちの1つ以上を優先的にまたは選択的にのみ活性化することができる。第1の末梢神経は、例えば、正中神経、橈骨神経、内側皮神経、外側皮神経、筋皮神経、または尺骨神経などの上肢神経、あるいは、例えば、脛骨神経、伏在神経、総腓骨神経、大腿神経、仙骨神経、坐骨神経、および腓腹神経などの下肢神経であり得る。第1の電気神経刺激信号は、バーストまたは連続刺激、および場合によっては二相方形波形または正弦波であり得る選択された波形の刺激を含み得る。パルス幅は、例えば、約50μsから約100μsの間、約150μsから約200μsの間、約300μsから約400μsの間、または上記の値のうちの任意の2つを含む他の範囲であり得る。一部の実施形態では、電気刺激信号は、約5Hz、約250Hz、または約2,000Hzの周波数を有し得る。一部の実施形態では、第1の末梢神経エフェクタは、少なくとも第1および第2の電極を含むことができる。場合によっては、電極を神経軸索の長さに沿って実質的に整列させることができる。一部の実施形態では、方法は、患者の四肢の患者の皮膚上に第2の末梢神経エフェクタを配置する工程、少なくとも1つの脳または脊髄の自律神経フィードバックループを修正し、そして患者の副交感神経または交感神経系の活動のバランスをとるのに十分に第2の末梢神経を刺激するための第2の末梢神経エフェクタに経皮的に第2の電気神経刺激信号を送達する工程を含むことができる。第2の末梢神経は、第1の末梢神経とは異なるものとすることができ、そして例えば、本明細書の他の箇所に記載される任意の神経から選択され得る。方法はまた、例えば、患者の心拍数変動を測定するセンサからデータを受け取る工程、および/または患者の皮膚電気活動、体温測定、およびECG情報のうちの少なくとも1つを測定するセンサからデータを受け取る工程を含む、患者の自律神経系活動に関する入力を受け取る工程を含むことができる。この方法はまた、C6、C7、C8、T1、T2、T3、T4、T5、T6、T7、T8、T9、T10、T11、T12、L1、L2、L3、L4、L5、S1、S2、S3、および/またはS4皮膚分節のうちの1つ以上に任意の数の末梢神経エフェクタを配置する工程を含み得る。一部の実施形態では、末梢神経エフェクタは、例えば正中神経、橈骨神経、または尺骨神経などの1つ以上の神経からオフセットし、皮神経などの標的神経を標的として患者の四肢に配置することができる。治療される不整脈は、例えば、心房細動、心房粗動、上室性頻拍、または心室性頻拍であり得る。一部の実施形態では、電気神経刺激信号は、第1の末梢神経のAα線維、Aβ線維、Aδ線維、B線維、またはC線維のうちの1つのみを優先的に活性化、または選択的に活性化することができる。
【0014】
一部の実施形態では、選択的活性化を用いて心不整脈または高血圧を治療するための装着型経皮システムもまた本明細書に開示する。このシステムは、任意の数の以下の特徴、または本明細書の他の箇所に開示されている他の特徴を含むことができる。システムは、例えば、制御装置、患者の四肢の患者の皮膚上に配置されるように構成された第1の末梢神経エフェクタ、および/またはフィードバック情報を提供するように構成された少なくとも1つの生物医学的センサまたはデータ入力源を含むことができる。制御装置は、心不整脈または高血圧に関する少なくとも1つの脳または脊髄の自律神経フィードバックループを修正するのに十分に第1の末梢神経を刺激するために、第1の末梢神経エフェクタに経皮的に第1の電気神経刺激信号を生成するように構成され得る。第1の電気神経刺激信号は、第1の末梢神経のAα線維、Aβ線維、Aδ線維、またはC線維のうちの1つ以上を優先的にまたは選択的に活性化することができる。このシステムはまた、患者の四肢の患者の皮膚上に配置されるように構成された第2の末梢神経エフェクタを含むことができる。制御装置は、心不整脈または高血圧に関する少なくとも1つの脳または脊髄の自律神経フィードバックループを修正するのに十分に第2の末梢神経を刺激するために、第2の末梢神経エフェクタに経皮的に第2の電気神経刺激信号を生成するように構成され得る。第2の電気神経刺激信号は、第2の末梢神経のAα線維、Aβ線維、Aδ線維、B線維、またはC線維のうちの1つ以上を優先的に活性化することができる。フィードバック情報は、例えば、心拍数変動および/または電気皮膚反応を含むことができる。第1の末梢神経は、例えば、正中神経、橈骨神経、内側皮神経、外側皮神経、筋皮神経、または尺骨神経などの上肢神経、あるいは、例えば、脛骨神経、伏在神経、総腓骨神経、大腿神経、仙骨神経、坐骨神経、および腓腹神経などの下肢神経であり得る。第1の電気神経刺激信号は、バーストまたは連続刺激、および場合によっては二相方形波形または正弦波であり得る選択された波形の刺激を含み得る。パルス幅は、例えば、約50μsから約100μsの間、約150μsから約200μsの間、約300μsから約400μsの間、または上記の値のうちの任意の2つを含む他の範囲であり得る。一部の実施形態では、電気刺激信号は、約5Hz、約250Hz、または約2,000Hzの周波数を有し得る。一部の実施形態では、第1の末梢神経エフェクタは、少なくとも第1および第2の電極を含むことができる。場合によっては、電極を神経軸索の長さに沿って実質的に整列させることができる。一部の実施形態では、システムは、患者の四肢の患者の皮膚上に配置されるように構成され、かつ少なくとも1つの脳または脊髄の自律神経フィードバックループを修正し、そして患者の副交感神経または交感神経系の活動のバランスをとるのに十分に第2の末梢神経を刺激するための第2の末梢神経エフェクタに経皮的に第2の電気神経刺激信号を送達するように構成された第2の末梢神経エフェクタを含むことができる。第2の末梢神経は、第1の末梢神経とは異なるものとすることができ、そして例えば、本明細書の他の箇所に記載される任意の神経から選択され得る。システムはまた、例えば、患者の心拍数変動を測定するセンサからデータを受け取ること、および/または患者の皮膚電気活動、体温測定、およびECG情報のうちの少なくとも1つを測定するセンサからデータを受け取ることを含む、患者の自律神経系活動に関する入力を受け取るように構成することができる。
【0015】
患者の上肢の患者の皮膚に第1の末梢神経エフェクタを配置して、患者の正中神経、橈骨神経、および尺骨神経のうちの1つからなる群から選択される第1の末梢神経を刺激する工程、第1の末梢神経とは異なる第2の末梢神経を刺激するために、患者の上肢の患者の皮膚に第2の末梢神経エフェクタを配置する工程、心不整脈または高血圧に関する少なくとも1つの脳または脊髄の自律神経フィードバックループを修正するのに十分に第1の末梢神経を刺激するために、第1の末梢神経エフェクタに経皮的に第1の電気神経刺激信号を送達する工程、および/または心不整脈または高血圧に関する少なくとも1つの脳または脊髄の自律神経フィードバックループを修正するのに十分に第2の末梢神経を刺激するために、第2の末梢神経エフェクタに経皮的に第2の電気神経刺激信号を送達する工程、の1つ以上の工程を含み得る、心不整脈または高血圧を治療するための方法も本明細書に開示する。第1の電気神経刺激信号および第2の電気神経刺激信号は、第1の末梢神経エフェクタからの刺激および第2の末梢神経エフェクタからの刺激が同時に腕神経叢を活性化するように調整することができる。第2の電気神経刺激信号は、第1の電気神経刺激信号を送達すると同時にまたは実質的に同時に発生し得る。第2の電気神経刺激信号を送達することは、場合によっては、約1.0ミリ秒~約2.1ミリ秒の間など、第1の電気神経刺激信号の送達から時間的にずらすことができる。方法はまた、第1の末梢神経および第2の末梢神経の神経伝導速度を測定するために神経伝導調査を実施する工程を含み得る。ずれは、第1の末梢神経および第2の末梢神経の測定された神経伝導速度から決定することができる。神経刺激信号は、約4Hzから約12Hzの間の交番周波数のように、交互および/または律動パターンで送達することができる。交番周波数は、心律動事象にタイミングを合わせることができる。神経刺激信号は、擬似ランダムパターンで送達することができ、および/または患者の自律神経バランスに関して受け取ったフィードバックに基づいて調整することができる。フィードバックは、例えば、患者の心拍数変動の絶対低周波数と絶対高周波数との比など、患者の測定された心拍数変動を含むことができる。第1の末梢神経エフェクタおよび第2の末梢神経エフェクタは、本明細書中に記載の任意の皮膚分節のような、患者の複数の皮膚分節にまたがる。皮膚分節は、所定の間隔で刺激することができる。
【0016】
また、一部の実施形態では、心不整脈または高血圧を治療するための装着型システムもまた本明細書に開示する。このシステムは、任意の数の以下の特徴、または本明細書の他の箇所に開示されている他の特徴を含むことができる。システムは任意の数の制御装置、すなわち、患者の四肢の患者の皮膚上に配置されるように構成された第1の末梢神経エフェクタ、患者の四肢の患者の皮膚上に配置されるように構成された第2の末梢神経エフェクタ、およびフィードバック情報を提供するように構成された少なくとも1つの生物医学的センサまたはデータ入力源を含むことができる。制御装置は、心不整脈または高血圧に関する少なくとも1つの脳または脊髄の自律神経フィードバックループを修正するのに十分に第1の末梢神経を刺激するために、第1の末梢神経エフェクタに経皮的に第1の電気神経刺激信号を生成するように構成され得る。制御装置はまた、心不整脈または高血圧に関する少なくとも1つの脳または脊髄の自律神経フィードバックループを修正するのに十分に第2の末梢神経を刺激するために、第2の末梢神経エフェクタに経皮的に第2の電気神経刺激信号を生成するように構成され得る。制御装置はまた、第1の末梢神経エフェクタからの刺激と第2の末梢神経エフェクタからの刺激とが、第1の電気神経刺激信号の送達と同時にまたは実質的に同時にというように、同時に腕神経叢を活性化するように、第1の電気神経刺激信号および第2の電気神経刺激信号を調整するように構成され得る。制御装置は、第2の電気神経刺激信号を、第1の電気神経刺激信号の送達から時間的にずらして、例えば、約1.0~約2.1ミリ秒の間で送達するように構成することができる。制御装置は、電気神経刺激信号を、約4Hzから約12Hzの間の交番周波数など、交番、ランダム、擬似ランダム、および/または律動パターンで送達するように構成することができる。律動パターンは、測定された心臓律動事象とタイミングを合わせるかまたは同期させることができる。制御装置は、患者の自律神経バランスに関して受け取ったフィードバックに基づいて、第1の電気刺激信号および第2の電気神経刺激信号のうちの少なくとも一方を調整するように構成され得る。フィードバックは、例えば、患者の心拍数変動の絶対的な低周波数と絶対的な高周波数との比など、例えば、患者の測定された心拍数変動であり得る。制御装置は、第1の末梢神経および第2の末梢神経の神経伝導速度に関して記録された測定値を受け取り、記録された測定値に基づいて第1の電気神経刺激信号および第2の電気神経刺激信号を調整するように構成され得る。
【0017】
一部の実施形態では、心不整脈または高血圧を治療するための方法を本明細書に開示する。方法は、患者の上肢の患者の皮膚に第1の末梢神経エフェクタを配置して、患者の正中神経、橈骨神経、および尺骨神経のうちの1つからなる群から選択される第1の末梢神経を刺激する工程、患者の副交感神経経路に関連する第2の末梢神経を刺激するために、患者の耳の耳珠上に第2の末梢神経エフェクタを配置する工程、心不整脈または高血圧に関する少なくとも1つの脳または脊髄の自律神経フィードバックループを修正するのに十分に第1の末梢神経を刺激するために、第1の末梢神経エフェクタに経皮的に第1の電気神経刺激信号を送達する工程、および心不整脈または高血圧に関する少なくとも1つの脳または脊髄の自律神経フィードバックループを修正するのに十分に第2の末梢神経を刺激するために、第2の末梢神経エフェクタに経皮的に第2の電気神経刺激信号を送達する工程、のうちの任意の数を含み得る。第1の電気神経刺激信号および第2の電気神経刺激信号は、患者の副交感神経系および交感神経系の活動のバランスをとるように構成することができる。方法はまた、患者における交感神経活動および副交感神経活動をモニタすることを含み得る。方法はまた、患者における異常な交感神経活動を識別したときに第1の電気神経刺激信号を調整することを含み得る。方法はまた、患者における異常な副交感神経活動を識別したときに第2の電気神経刺激信号を調整することを含み得る。
【0018】
一部の実施形態では、心不整脈または高血圧を治療するための装着型システムもまた本明細書に開示する。このシステムは、任意の数の以下の特徴、または本明細書の他の箇所に開示されている他の特徴を含むことができる。システムは、患者の四肢の患者の皮膚上に配置されるように構成された第1の末梢神経エフェクタ、患者の耳の耳珠上に配置されるように構成された第2の末梢神経エフェクタ、および/またはフィードバック情報を提供するように構成された少なくとも1つの生物医学的センサまたはデータ入力源を含むことができる。制御装置は、心不整脈または高血圧に関する少なくとも1つの脳または脊髄の自律神経フィードバックループを修正するのに十分に第1の末梢神経を刺激するために、第1の末梢神経エフェクタに経皮的に第1の電気神経刺激信号を生成するように構成され得る。制御装置はまた、心不整脈または高血圧に関する少なくとも1つの脳または脊髄の自律神経フィードバックループを修正するために患者の副交感神経経路に関連する第2の末梢神経を刺激するための第2の末梢神経エフェクタに経皮的に第2の電気神経刺激信号を生成するように構成され得る。制御装置はまた、第1の電気神経刺激信号および第2の電気神経刺激信号を調整して、患者の副交感神経系および交感神経系の活動のバランスをとるように構成することができる。制御装置は、患者における異常な交感神経活動および/または副交感神経活動を識別したときに第1の電気神経刺激信号を調整するように構成することができる。
【0019】
心不整脈または高血圧を治療するための方法もまた本明細書に開示する。方法は、対象の交感神経活動および副交感神経活動のうちの少なくとも1つを評価し、対象における異常な交感神経または副交感神経活動の存在を判定する工程、異常な交感神経活動が存在する場合に、腕神経叢に作動可能に接続された第1の神経を心不整脈または高血圧に対して治療効果をもたらすのに十分に刺激する工程、および異常な副交感神経活動が存在する場合に、心不整脈または高血圧に対して治療効果をもたらすのに十分に耳の耳珠を刺激する工程のうちの任意の数を含むことができる。ある場合には刺激は電気的経皮的刺激のみとすることができ、第1の神経の神経活動の興奮または阻害を含み得る。刺激は、異常な交感神経活動および異常な副交感神経活動の両方が存在する場合、第1の神経と耳の耳珠との両方を含み得る。対象の交感神経活動および副交感神経活動の少なくとも一方を評価することは、手首装着型装置などを用いて対象のHRVを測定することを含み、心拍数および/または皮膚電気活動を測定することも含む。第1の神経は、例えば、正中、橈骨、尺骨、内側皮、外側皮、または本明細書で論じられるような他の神経であり得る。
【0020】
本明細書ではまた、第1の末梢神経を電気的に刺激する工程、対象の交感神経活動および副交感神経活動の少なくとも一方を評価し、対象における異常な交感神経または副交感神経活動を判定する工程、ならびに交感神経活動および副交感神経活動の少なくとも一方を評価する工程に基づいて電気刺激を調整する工程を含み得る、心不整脈または高血圧を治療する方法も開示する。電気刺激を調整することは、患者における異常な交感神経または副交感神経活動を識別すること、および第1の神経の刺激の頻度を調整すること、および/または第1の神経の電気刺激を中止すること、および第2の神経の電気刺激を開始することを含み得る。
【0021】
一部の実施形態は、薬物療法および経皮的電気刺激との組み合わせを使用して心不整脈および高血圧のうちの少なくとも1つを治療する方法を含み、それは、ある量の強心配糖体を患者に投与する工程、ならびに患者の四肢の患者の皮膚に第1の末梢神経エフェクタを配置する工程、心不整脈または高血圧に関する少なくとも1つの脳または脊髄の自律神経フィードバックループを修正するのに十分に第1の末梢神経を刺激するために、第1の末梢神経エフェクタに第1の電気神経刺激信号を経皮的に送達する工程のうちの任意の数を含む。強心配糖体はジゴキシンであり得る。
【0022】
また、本明細書に開示するのは、心不整脈または高血圧を治療するための薬物療法および電気刺激の組み合わせシステムであり、それは、例えば、本明細書に開示するような任意の数の特徴を含み得る。システムは、例えば、制御装置を含む装着型装置、患者の四肢の患者の皮膚上に配置されるように構成された第1の末梢神経エフェクタ、およびフィードバック情報を提供するように構成された少なくとも1つの生物医学的センサまたはデータ入力源を含むことができる。制御装置は、心不整脈または高血圧に関する少なくとも1つの脳または脊髄の自律神経フィードバックループを修正するのに十分に第1の末梢神経を刺激するために、第1の末梢神経エフェクタに経皮的に第1の電気神経刺激信号を生成するように構成され得る。このシステムはまた、約62.5mcg、31.25mcg、16mcg、8mcg、またはそれ以下のような用量のジゴキシンのような患者に投与するための強心配糖体を含むことができる。
【0023】
いくつかの実施形態では、1つ以上の線維型の末梢神経を選択的に標的とする、および/または活動電位が(例えば腕神経叢内の)同じ標的位置に同時にまたは実質的に同時に到達するように複数の末梢神経の刺激を調整する本明細書に記載の実施形態は、より少ない不快感でより大きな治療上の利益、より少ない電力使用(例えば、より少ない電力使用量および改善されたバッテリ寿命)、これらによる患者のコンプライアンスの可能性の高まり、という利点のうちの1つ以上を有することができる。いくつかの実施形態では、交感神経系を調節する少なくとも1つの末梢神経および副交感神経系を調節する少なくとも1つの末梢神経との交感神経迷走神経バランスを促進するための複数の末梢神経刺激を含む本明細書に記載の実施形態は、検出された交感神経および/または副交感神経の過活動に応答して、自律神経系の交感神経および/または副交感神経群のいずれかを選択的に調節する能力を有利に有し得る。いくつかの実施形態では、末梢神経刺激は、ジゴキシンなどの強心配糖体を含む薬物療法と組み合わせると有利に相乗効果を有することができる。効果は、治療に対する増強された応答、効果を達成するために必要とされるより少ない用量の強心配糖体、したがってより低い副作用などを含み得る。
【図面の簡単な説明】
【0024】
本発明の非限定的な新規の特徴は、添付の特許請求の範囲に詳細に記載されている。本発明の一部の実施形態の特徴および利点のよりよい理解は、本発明の原理が利用される例示的な実施形態を説明する以下の詳細な説明、および添付の図面を参照することによって得られるであろう。
【0025】
図1】選択された末梢神経、脊髄レベル、交感神経鎖、および心臓の間の関係を概略的に示す。
【0026】
図1A】心同期不全および/または血圧を低減するための、個々の神経を標的にして末梢神経刺激を提供する装置およびシステムの実施形態の様々な図を示す。
図1B】心同期不全および/または血圧を低減するための、個々の神経を標的にして末梢神経刺激を提供する装置およびシステムの実施形態の様々な図を示す。
図1C】心同期不全および/または血圧を低減するための、個々の神経を標的にして末梢神経刺激を提供する装置およびシステムの実施形態の様々な図を示す。
図1D】心同期不全および/または血圧を低減するための、個々の神経を標的にして末梢神経刺激を提供する装置およびシステムの実施形態の様々な図を示す。
図1E】心同期不全および/または血圧を低減するための、個々の神経を標的にして末梢神経刺激を提供する装置およびシステムの実施形態の様々な図を示す。
【0027】
図2A】手首の周りに円周方向に分布する電極の配列による励起(図2A)に対して、神経に沿って長手方向に配置された電極によって正中神経が刺激される(図2B)末梢神経刺激の実施形態を示す。
図2B】手首の周りに円周方向に分布する電極の配列による励起(図2A)に対して、神経に沿って長手方向に配置された電極によって正中神経が刺激される(図2B)末梢神経刺激の実施形態を示す。
【0028】
図2C】同様に時限的方法で複数の皮膚分節を刺激するように構成することができるシステムの実施形態を示す。
【0029】
図2D】上肢の様々な神経および/または皮膚分節を標的とするための様々な選択肢を示す。
図2E】上肢の様々な神経および/または皮膚分節を標的とするための様々な選択肢を示す。
図2F】上肢の様々な神経および/または皮膚分節を標的とするための様々な選択肢を示す。
図2G】上肢の様々な神経および/または皮膚分節を標的とするための様々な選択肢を示す。
図2H】上肢の様々な神経および/または皮膚分節を標的とするための様々な選択肢を示す。
図2I】上肢の様々な神経および/または皮膚分節を標的とするための様々な選択肢を示す。
図2J】上肢の様々な神経および/または皮膚分節を標的とするための様々な選択肢を示す。
図2K】上肢の様々な神経および/または皮膚分節を標的とするための様々な選択肢を示す。
図2L】上肢の様々な神経および/または皮膚分節を標的とするための様々な選択肢を示す。
図2M】上肢の様々な神経および/または皮膚分節を標的とするための様々な選択肢を示す。
図2N】上肢の様々な神経および/または皮膚分節を標的とするための様々な選択肢を示す。
図2O】上肢の様々な神経および/または皮膚分節を標的とするための様々な選択肢を示す。
図2P】上肢の様々な神経および/または皮膚分節を標的とするための様々な選択肢を示す。
図2Q】上肢の様々な神経および/または皮膚分節を標的とするための様々な選択肢を示す。
図2R】上肢の様々な神経および/または皮膚分節を標的とするための様々な選択肢を示す。
図2S】上肢の様々な神経および/または皮膚分節を標的とするための様々な選択肢を示す。
【0030】
図2T】本発明の一部の実施形態による、マイクロプロセッサおよびスイッチを有する刺激装置のブロック図を示す。
【0031】
図2U】本発明の一部の実施形態による、装着型バンド上に配置することができる電極を有する刺激装置の実施形態を示す。
【0032】
図2V】1つ、2つ、またはそれ以上の個々の神経を標的として提供することができる末梢神経刺激のシステムおよび方法を示す。
【0033】
図3A】二部構成治療システムを形成するモニタユニットおよび治療ユニットの様々な実施形態を示す。
図3B】二部構成治療システムを形成するモニタユニットおよび治療ユニットの様々な実施形態を示す。
【0034】
図3C】耳珠に関する選択された解剖学的構造を概略的に示す。
【0035】
図3D】耳珠刺激装置の実施形態を示す。
【0036】
図4A】単一のモニタユニットと複数の治療ユニットとを有する二部構成システムの実施形態を示す。
図4B】単一のモニタユニットと複数の治療ユニットとを有する二部構成システムの実施形態を示す。
図4C】単一のモニタユニットと複数の治療ユニットとを有する二部構成システムの実施形態を示す。
図4D】単一のモニタユニットと複数の治療ユニットとを有する二部構成システムの実施形態を示す。
【0037】
図5A】装着型治療システムの他の実施形態を示す。
図5B】装着型治療システムの他の実施形態を示す。
図5C】装着型治療システムの他の実施形態を示す。
図5D】装着型治療システムの他の実施形態を示す。
図5E】装着型治療システムの他の実施形態を示す。
図5F】装着型治療システムの他の実施形態を示す。
図5G】装着型治療システムの他の実施形態を示す。
図5H】装着型治療システムの他の実施形態を示す。
図5I】装着型治療システムの他の実施形態を示す。
【0038】
図6】クラウドを使用して治療システムと医師との間でデータを送受信する装着型治療システムの実施形態を示す。
【0039】
図7図6に示す治療装置、バンド、および基地局の個々の構成要素を示すブロック図である。
【0040】
図8】刺激のための位置として使用することができる人体の経絡を示す。
図9】刺激のための位置として使用することができる人体の経絡を示す。
【0041】
図9A】刺激を調節するために使用することができる様々な血圧閾値と共に患者の血圧プロファイルを示す。
【0042】
図10A】刺激装置およびセンサを装着することができる手首および腕の様々な位置を示す。
図10B】刺激装置およびセンサを装着することができる手首および腕の様々な位置を示す。
図10C】刺激装置およびセンサを装着することができる手首および腕の様々な位置を示す。
図10D】刺激装置およびセンサを装着することができる手首および腕の様々な位置を示す。
【0043】
図11】両腕の神経の両側性刺激の実施形態を示す。
【0044】
図12】これに限定されないが正中神経を含む末梢の求心性神経が視床下部弓状核を神経支配する神経回路を示す図である。理論によって限定されるものではないが、弓状核の調節は、中脳の腹外側中脳水道周囲灰白質および延髄の淡蒼縫線核を介した吻側腹外側延髄(RVLM)への入力の低下によって交感神経流出の上昇を減少させることができる。
【0045】
図12A】正中神経に関連する神経経路を概略的に示す。
【0046】
図12B】橈骨神経に関連する神経経路を概略的に示す。
【0047】
図13A】神経線維の選択的活性化のための刺激パターンの実施形態を示す。
図13B】神経線維の選択的活性化のための刺激パターンの実施形態を示す。
【0048】
図13C】神経線維の選択的活性化のための電極配置の実施形態を示す。
図13D】神経線維の選択的活性化のための電極配置の実施形態を示す。
【0049】
図14A】本発明の一部の実施形態によるバーストパターンを示す。
図14B】本発明の一部の実施形態によるバーストパターンを示す。
図14C】本発明の一部の実施形態によるバーストパターンを示す。
【0050】
図14D】自律神経反射ループを概略的に示す。
【0051】
図14E】本発明の一部の実施形態による、末梢神経を刺激するための電極構成の実施形態を示す。
図14F】本発明の一部の実施形態による、末梢神経を刺激するための電極構成の実施形態を示す。
図14G】本発明の一部の実施形態による、末梢神経を刺激するための電極構成の実施形態を示す。
【0052】
図15】本発明の一部の実施形態によるプライミングシーケンスを概略的に示す。
【0053】
図16A】本発明の一部の実施形態による、可能性のある治療工程を含むフローチャートである。
図16B】本発明の一部の実施形態による、可能性のある治療工程を含むフローチャートである。
図16C】本発明の一部の実施形態による、可能性のある治療工程を含むフローチャートである。
【0054】
図17】本発明の一部の実施形態による、心機能不全を有する対象についての診断、評価、および処方のフローチャートを概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0055】
高血圧や心不整脈などの一部の心疾患は、自律神経活動の不均衡、すなわち自律神経系内の交感神経活動および副交感神経活動の不均衡によって引き起こされることがある。この不均衡は、自律神経系の交感神経肢および/または副交感神経肢の過活動または活動低下から生じ得る。本明細書に開示するようなシステムおよび方法を含む自律神経系に作用する電気刺激は、自律神経系のバランスを回復させ、それによりこれらの心疾患に関連する症状の負担を軽減することによって治療上の利益を提供することができる。
【0056】
自律神経活動は、心不整脈の重要な引き金として示されてきた。ヒトの皮膚は自律神経でよく神経支配されており、本明細書に開示するような神経または経絡の刺激は、潜在的に心不整脈の治療に役立ち得る。例えば、正中神経を含むがこれに限定されない、末梢または遠位肢の求心性神経は、視床下部弓状核に神経回路によって接続されている。理論によって限定されるものではないが、弓状核の調節は、脳下垂体から神経内分泌またはホルモン系への入力の低下、および、中脳の腹外側中脳水道周囲灰白質および延髄の淡蒼縫線核を介した吻側腹外側延髄(RVLM)への入力の低下、という経路のいずれかまたは両方によって交感神経流出の上昇を減少させることができる。この経路は、コリン作動性μ受容体を介してもよい。
【0057】
代替的にまたは追加的に、腕、脚、首、または耳珠の末梢皮膚線維の刺激は、脊髄のC8-T1のレベルで星状神経節の活動を調節して、交感神経流出の増加を減少させ、および/または頸動脈洞神経を介して迷走神経緊張を増加させ得る。理論によって限定されるものではないが、図1は、選択された末梢神経、脊髄レベル、交感神経鎖、および心臓の間の関係を概略的に示す。図の左側に示されているのは、筋皮神経(C5-C7で神経支配)、橈骨神経(C5-T1で神経支配)、正中神経(C5-T1で神経支配)、尺骨神経(C8-T1で神経支配)、および内側皮神経(C8-T1で神経支配)を含む末梢神経である。延髄は、迷走神経に機能的に接続されており、迷走神経は、例えば心臓のSA結節およびAV結節において副交感神経作用を有する。頸部神経節は、交感神経系の傍脊椎神経節である。胸部脊髄からの節前神経は、その節後線維または神経と共に頸神経節およびシナプスに入り込むことがある。頸部神経節には、3つの傍脊椎神経節があり、すなわち、C2およびC3に隣接する上頸神経節であって、節後軸索は、頸動脈に隣接する経路を介して対象(心臓、頭、首)を標的として突出し、そしてC6に隣接し、心臓および首を標的とする中頸神経節(最小)、および下頸神経節である。下頸神経節を第一胸部神経節と融合させて、C7に隣接し、心臓、下頸部、腕、後頭蓋動脈を標的とする単一の構造、星状神経節を形成することができる。頸部交感神経節から出てくる神経は、例えば、心臓神経叢に寄与する。星状神経節(または頸胸神経節)は、下頸部神経節と第一胸部神経節との融合によって形成される交感神経節である。胸部神経節から発生するのは、腹部構造に交感神経支配を提供するのを助ける胸部内臓神経(心肺、大、小、および最小内臓神経)である。図1に示すように、末梢神経刺激は、自律神経系、したがって心臓および心臓血管系に対して実質的な臨床効果を及ぼし得る。
【0058】
代替的にまたは追加的に、そして理論によって限定されないが、電気刺激は、Ht7、Pc6、Gb34、Sp6、Ki6などの上肢および下肢の指圧ポイントの筋筋膜刺激または皮膚刺激による神経ホルモン反応を引き起こすことができる。神経ホルモン反応は、ノルエピネフリン、エピネフリン、アセチルコリン、および/または炎症性サイトカインの産生における変化(増加または減少)を含み得る。炎症性サイトカインは、インターロイキン、高移動度グループボックス1タンパク質、および/または腫瘍壊死因子αを含み得る。神経ホルモン反応はまた、正中、橈骨、尺骨、または迷走神経、皮神経または交感神経の求心性および/または遠心性神経刺激によっても引き起こされ得る。一実施形態では、ノルエピネフリン、エピネフリン、アセチルコリン、および/または炎症性サイトカインのうちの1つ以上は、本明細書に開示する装置による治療後に、治療前と比較して少なくとも約5%、10~20%、20~40%、40~60%またはそれ以上(その中の重複する範囲を含む)減少する。
【0059】
代替的にまたは追加的に、そして理論によって限定されないが、腕、脚、首、または耳珠における自律神経または内臓の遠心性神経線維の逆行性刺激は、交感神経流出および/または迷走神経緊張を調節し得る。具体的には、交感神経遠心部(sympathetic efferents)は、体の末梢部のc線維を標的とすることによって特異的に刺激され得る。
【0060】
代替的にまたは追加的に、そして理論によって限定されないが、体性、自律神経、求心性、および/または遠心性のいずれかの末梢神経の電気刺激は、心不整脈の引き金を引いて維持する肺静脈の散発的な電気活動を減少させ得る。
【0061】
例えば図1A~1Eに示すように、一部の実施形態は、個々の神経を標的にして末梢神経刺激を提供する装置およびシステムに関する。一部の実施形態は、個人に対する電気的治療のカスタマイズおよび最適化を可能にする装置およびシステム10を含む。特に、記載された装置10は、心房細動(慢性または発作性心房細動など)および他の不整脈を含むがこれらに限定されない心不整脈を治療すること、および/または心同期不全および/または高血圧を軽減することのために正中、橈骨、尺骨、腓骨、伏在、脛骨および/または他の神経、または肢にあるアクセス可能な経絡の電気刺激用に構成できる。本明細書に開示するようなシステムおよび方法を用いて治療することができる不整脈の他の非限定的な例としては、例えば、長期QT症候群、トルサードドポワント、心房性期外収縮、遊走性心房ペースメーカー、多源性心房頻脈、心房粗動、上心室頻拍(PSVTを含む)、AV結節性リエントリー頻脈、接合部調律、接合部頻拍、房室結節性期外収縮、心室性期外収縮、頻拍性心室固有調律、単源性心室頻拍、多源性心室頻拍、および心室細動が挙げられる。これらの特定の神経を標的とし、適切にカスタマイズされた刺激を利用することは、より効果的な治療をもたらす(例えば、細動または細動エピソードなどの不整脈エピソードの軽減および/または細動エピソードの持続時間の短縮、不整脈の動悸/感覚の軽減、(不整脈の停止の有無にかかわらず)治療前と比較して約または少なくとも約10%、20%、30%、40%またはそれ以上の心拍数の減少などの不整脈の速度制御の改善、心房細動に関連する発作のような塞栓性事象の発生率の予防または減少、および/または、例えば、収縮期、拡張期、および/または平均血圧の低下といった調節)。一部の実施形態では、薬物的または電気的除細動後の治療は、持続性心房細動(AF)を有する人々における細動の再発率、または、発作性心房細動患者の細動のエピソードの数と期間を予防または低減することができ、切除処置後の不整脈の再発エピソードの数を低減することを含むがこれに限定されない。一部の実施形態では、治療は、患者が彼らの根底にある不整脈のために服用する必要があり得る薬物の数、用量、および/または頻度を低減または排除し、有利には副作用/潜在的毒性を低減することができる。一部の実施形態では、治療は、速度制御剤(例えば、アテノロール、メトプロロール、プロプラノロール、カルベジロールなどのβ遮断薬、例えば、ニフェジピン、アムロジピン、ジルチアゼム、もしくはベラパミルなどのカルシウムチャネル遮断薬、またはジゴキシンなどの強心配糖剤)および/または抗不整脈薬(例えば、キニジン、プロカインアミド、ジソピラミド、リドカイン、メキシレチン、フレカイニド、プロパルフェノン、ソタロール、イブチリド、ドフェチリド、アミオダロンもしくはドロネダロン)などの1つ、2つ、またはそれ以上の医薬品と組み合わせた場合、予想外の相乗効果を有することがある。一部の実施形態では、ジゴキシンなどの強心配糖体は、心不整脈、心同期不全、および/または高血圧の治療における予想外の相乗的に有益な効果のために、本明細書に記載されるような末梢神経刺激プロトコルと共に、経口、静脈、または他の経路で投与することができる。理論によって限定されないが、ジゴキシンまたはデアセチルラナトシドCとも呼ばれるジギタリス配糖体および強心配糖体は、ヒトの動脈圧反射メカニズムを調節することができる。圧受容体(barorecptor)反射の減少は、継続的かつ過剰な交感神経活動を招き、それが次に心拍数や血圧の上昇、ならびに心不整脈の開始および維持を招く可能性がある。異常な圧受容体機能は、ナトリウム-カリウムATPアーゼポンプの活性化上昇に関連し得、ジギタリス配糖体および強心配糖体はこの上昇した活性化を減少させるように作用し、それにより刺激に対する感受性を含む圧受容体の感受性が高まる。したがって、圧受容体を調節する末梢神経、例えば腕の正中、橈骨、尺骨または皮膚の線維の電気刺激は、ジギタリス配糖体および強心配糖体との予期せぬ相乗効果を示し、交感神経活動の上昇を阻害することができ、配糖体は圧受容体反射の感受性を高め、刺激は圧受容体反射を活性化する。ジゴキシンの治療指数は非常に狭く、重篤な毒性作用は治療用血漿濃度域の2倍にすぎない血漿濃度で起き得るため、この相乗効果は高血圧症または心不整脈などの心機能不全を治療するための配糖体の必要投与量を減らすことによって有利であり得る。一部の実施形態では、患者に投与されるジゴキシンなどの強心配糖体の用量は、1日当たり約3、2.8、2.6、2.4、2.2、2.0、1.8、1.6、1.4、1.2、1.0、0.8、0.6、0.4または0.2mcg/kgあるいかそれ未満など、従来の処方よりはるかに少ない場合がある。一部の実施形態では、強心配糖体の用量は、治療より低く、例えば、約1.5、1.4、1.3、1.2、1.1、1.0、0.9、0.8、0.7、0.6、0.5、0.4、0.3、0.2、または0.1ng/mlあるいはそれ未満の血中濃度に用量設定することができる。一部の実施形態では、ジゴキシンは、約250mcg、125mcg、62.5mcg、31.25mcg、16mcg、8mcg、4mcg、2mcg、1mcgあるいはそれ未満の単回投与形態(例えば、錠剤)で提供される。
【0062】
正中神経を含むがこれに限定されない、末梢または遠位肢の求心性神経は、図12Aに概略的に示すように、視床下部弓状核に神経経路によって接続されている。理論によって制限されないが、場合によっては、弓状核の調節は、2つの経路を介して交感神経流出の上昇を減少させることができる。(1)脳下垂体から神経内分泌またはホルモン系への入力の低下、および、(2)中脳の腹外側中脳水道周囲灰白質および延髄の淡蒼縫線核を介した吻側腹外側延髄(RVLM)への入力の低下である。この経路はまた、コリン作動性μ受容体を介してもよい。
【0063】
理論によって制限されないが、橈骨神経刺激は、孤束核および迷走神経核を阻害し、大動脈減圧神経を阻害し、それによって副交感神経の心臓血液拍入量(cardiac input)を阻害することによって不整脈を予防することができ、正中神経刺激は、図12Bに概略的に示すように、弓状核-腹側中脳水道周囲灰白質-縫線核経路を興奮させ、吻側延髄腹外側野(rVLM)を阻害し、それによって交感神経の心臓血液拍入量を阻害することによって不整脈を予防できる。あるいは、正中、橈骨および/または尺骨神経刺激は、星状神経節を含む神経経路を介して交感神経流出を調節することができ、耳珠神経刺激は、迷走神経を介して直接的に迷走神経緊張を調節する。組み合わせて、2つの部位の刺激は自律神経のバランスを回復することができる。
【0064】
図1A~1Eは、心不整脈を治療し、心同期不全を低減させ、そして/または血圧を減少させるための、個々の神経を標的にして経皮的末梢神経刺激を提供する装置およびシステム10の実施形態を示す。一部の実施形態では、装置10は手首または腕に装着するように設計されている。一部の実施形態では、時計様ハウジング12内に配置された電子機器は血圧を測定し、そしてまた電気刺激波形を生成する。バンド14および/またはハウジング12内の電気接点は、使い捨て電極16に刺激波形を伝達する。バンド12内の接点の位置は、正中神経、橈骨神経、および/または尺骨神経など、1つ以上の特定の神経が手首において標的とされるように配置されている。電子機器ハウジング12はまた、刺激および測定された心臓の律動および/または血圧の特徴および履歴についてのフィードバックを装置の装着者に提供するためのデジタル表示画面を有することができる。
【0065】
一部の実施形態では、治療装置10は、例えば、1)手首を取り囲む電極16の配列、2)人への良好な電気的接触を確実にするための皮膚インタフェース、3)刺激装置またはパルス発生器18、センサ20、および命令を実行するための制御装置またはプロセッサ22、命令を格納するためのメモリ24、ディスプレイおよびボタンを含むことができるユーザインタフェース26、通信モジュール28、充電可能なバッテリ30、および任意でバッテリ30を充電するための誘導コイル32などの他の関連電子機器を含む電子機器ボックスまたはハウジング12、および4)すべての構成要素を一緒に保持し、個人の手首の周りに装置をしっかりと固定するためのバンドを含むことができる手首装着装置である。
【0066】
典型的には手首の神経興奮のために、2つの電極200’が図2Bに示すように少なくとも1cmの妥当な間隔で神経に沿って長手方向に配置され、これは典型的には電極が配置される少なくとも1cmのバンド幅をもたらす。この位置決めの目的は、下にある神経204を脱分極させるために電場202’を組織に浸透させることである。2つの隣接する電極200’では、刺激電流は浅くにしか浸透しない。対照的に、図2Aに示すように、手首の周囲に周方向に配置され、手首の両側で励起される電極200を有すると、電場202は手首を通って延び、これは組織のより深い神経204の励起を可能にする。したがって、周方向配列はコンパクトであり、電極幅とほぼ同じサイズのバンド幅を可能にし、したがって装着型装置にとって有利である。一部の実施形態では、配列の構成可能性を有することの利点は、同じ神経に到達することができることであるが、従来の正中神経興奮よりもよりコンパクトなフォームファクタであることである。本明細書に記載の装置は、周方向または長手方向に配置された電極を用いて説明および図示することができるが、どちらの電極構成も装置によって使用できることを理解されたい。さらに、装置は、2つ、3つまたはそれ以上の電極を用いて説明および図示されてもよいが、装置は2つのみの電極を有することができ、または2つを超える電極を有することができることを理解されたい。正中神経などの単一の神経だけを刺激するように設計された装置もあれば、複数の神経を刺激するように設計された装置もある。
【0067】
図2Cは、神経に沿った特定の点が刺激されるように隣接する電極対を規則的な間隔で刺激することによって、スリーブに埋め込まれた電極の配列を用いて腕を横切って同様の時限様式で複数の皮膚分節を刺激するように構成できるシステムを示す。刺激される可能性がある感覚情報を伝える腕の皮膚分節は、例えば、C5(上肢および肘上の外側側面)、C6(前腕および手の橈骨側)、C7(中指)、C8(小指の皮膚および両手の内側の面)、T1(前腕の内側)、およびT2(腕および腋窩領域の内側および上面)を含む。
【0068】
一部の実施形態では、電極は、腕の中の特定の神経または脊髄への神経支配のレベルに関連する特定の皮膚分節を選択的に標的とするように配置することができる。図2D図2Sの図は、これらの神経または領域を標的とするための様々な選択肢を示している。場合によっては、特定の神経を刺激するために、電流経路が活性電極から神経(および周囲の組織)を通って戻り電極に流れるように、活性電極を神経上に直接整列させることができる。電極の整列または構成と共に、神経刺激の成功は、電極のサイズおよび形状、パルス幅および周波数などの刺激波形パラメータ、ならびに刺激の振幅を含む様々な要因に左右される。例えば22mm×22mmサイズの電極を使用して、例えば約、少なくとも約、または約5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15mmまたはそれ以上(または前述の値のうちの任意の2つを含む範囲)を超えない長さだけ活性電極を移動させることによって、標的神経の内側または外側のいずれかは神経の刺激を妨げることができ、代わりに隣接する皮膚分節の皮膚線維を刺激する。
【0069】
さらに、皮膚の表面下の深部にある神経を経皮的に刺激するために、より高い電流レベルが必要とされ得る。正中神経、橈骨神経、尺骨神経は、腕のより遠位で(すなわち、手首に近い)皮膚表面に近い傾向があるので、場合によっては腕のより近位側の皮膚分節を選択的に標的とすることが、主な神経の刺激を避けるために有利であり得る。
【0070】
皮膚分節を刺激するために、活性電極は、場合によっては、標的外神経から内側または外側に約5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、または15mm(または前述の値のうちの任意の2つを含む範囲)ずらして、隣接する神経を直接覆っていない皮膚分節の領域に配置することができる。図2D図2Sは、活性電極および戻り電極が神経の軸索と整列している直列構成、ならびに活性電極および戻り電極が腕の反対側にある円周構成を含む様々な電極構成を示す。図2Dは、橈骨神経、正中神経、および/または尺骨神経を標的とするための活性電極および戻り電極の標的刺激位置および横方向配置の実施形態を示し、図2Eは、C6、C8、およびT1皮膚分節を標的とするための活性電極および戻り電極のための標的刺激位置および横方向配置の実施形態を示す。
【0071】
図2Fは、正中神経のための標的横方向電極構成の実施形態を示し、図2Gは、T1皮膚分節のための標的横方向電極構成の実施形態を示す。
【0072】
図2Hは、橈骨神経のための標的横方向電極構成の実施形態を示し、図2Iは、C8皮膚分節のための標的横方向電極構成の実施形態を示す。
【0073】
図2Jは、尺骨神経のための標的電極横方向構成の実施形態を示し、図2Kは、C6皮膚分節のための標的横方向電極構成の実施形態を示す。
【0074】
図2Lは、橈骨神経、正中神経、および/または尺骨神経を標的とするための活性電極および戻り電極の標的刺激位置およびインライン配置の実施形態を示し、図2Mは、C6、C8、およびT1皮膚分節を標的とするための活性電極および戻り電極のための標的刺激位置およびインライン配置の実施形態を示す。
【0075】
図2Nは、正中神経のための標的インライン電極構成の実施形態を示し、図2Oは、T1皮膚分節のための標的インライン電極構成の実施形態を示す。
【0076】
図2Pは、橈骨神経のための標的インライン電極構成の実施形態を示し、図2Qは、C8皮膚分節のための標的インライン電極構成の実施形態を示す。
【0077】
図2Rは、尺骨神経のための標的電極インライン構成の実施形態を示し、図2Sは、C6皮膚分節のための標的インライン電極構成の実施形態を示す。
【0078】
一部の実施形態では、3つ以上の電極を刺激することは、2つ以上の神経または皮膚分節を刺激するために使用され得る。図2Tに示すような一部の実施形態では、配列を駆動するために使用される電子機器および電気回路1200は、各チャンネルのスイッチ1210を開閉することによって各個別電極1202を所与の時点で刺激装置1208の2つの接点1204、1206のいずれか1つに接続できるようにする適応スイッチを含み得る。各チャネルは、皮膚の刺激および火傷を防止するために電荷バランスが重要であり得るためDC遮断回路1212を含むことができ、そしてまた、傷害または不快を引き起こし得る電流サージを防止するために電流IOリミッタ1214によって個々に電流制限され得る。この電流制限は、特定の患者または患者のグループに対して所定の許容閾値に設定することができる。
【0079】
特定のノードへの電流を制限または遮断するためのポリヒューズのような多くのトランジスタ回路または構成要素がある。刺激装置、スイッチ、および電流制限器などのこれらの回路およびその構成要素は、マイクロプロセッサ1216によってリアルタイムで制御および/またはプログラム可能であり得る。最大限の柔軟性を得るために、15スイッチマトリックスにより、複数の電極を同じ刺激装置の接点に同時に接続することができる。さらに、両極パルスを発生させるために、電極を刺激装置の正および負の接点の間で切り替えることができる。
【0080】
図2Uは、一体型電極902、904を有する装着型バンド900の実施形態を示す。一体型電極902、904は、バンド内に埋め込まれた可撓性回路を介して取り外し可能な制御装置910と電気的に連通している乾式電極とすることができる。場合によっては、乾式電極は、バンドを交換する必要が生じるまでの少なくとも1、2、または3ヶ月などの数ヶ月間使用することができる長期使用電極にさらに適している可能性がある。一部の実施形態では、バンドは、交換前に比較的長期間にわたって使用することができる使い捨てバンドであり得る。
【0081】
一部の実施形態では、心機能不全の治療のために複数の神経を刺激するためのシステムおよび方法を本明細書に開示している。正中神経、正中皮神経、橈骨神経、および/または尺骨神経などの2、3、またはそれ以上の神経または皮膚分節の刺激は、心不整脈などの状態の治療に使用することができる。二重神経刺激は、場合によっては、個々の神経が脊髄近くで集束する近位位置である腕神経叢における効果によって、治療の有効性を相乗的に高めることができる。例えば、一実施形態では、本明細書に開示する装置は、腕神経叢から離れたところに位置する2つの神経(正中、橈骨、尺骨、または内側皮神経を含むがこれらに限定されない)を2つの異なる時点で刺激するために使用され、最終的に、腕神経叢は、2つ以上の神経からの両方の信号によって実質的に同時に(例えば、約2ミリ秒、1ミリ秒、0.5ミリ秒、0.4ミリ秒、0.3ミリ秒、0.2ミリ秒、0.1ミリ秒、0.09ミリ秒、0.08ミリ秒、0.07ミリ秒、0.06ミリ秒、0.05ミリ秒、0.04ミリ秒、0.03ミリ秒、0.02ミリ秒、0.01ミリ秒、またはそれ未満)刺激されるが、場合によってはより高い速度であってもよい。一実施形態では、2つの神経は(刺激のタイミングに関して)0.1~3.0ミリ秒だけずれている。一実施形態では、実質的に同時に標的に当たるように、標的からある距離にある2、3、4またはそれ以上の神経(腕神経叢を含むがこれに限定されない)を異なる時点で刺激する。以下の図2Vに関連して開示するものを含む一部の実施形態では、システムは、第1の標的神経(本明細書に列挙する周波数などの刺激パラメータを含む)および第2の標的神経の刺激をそれぞれ独立して制御するように構成され得る。言い換えれば、第1の標的神経および第2の標的神経は、同じかまたは異なるパラメータのいずれかで刺激され得、そして同時にまたは交互にまたは他の様式で刺激され得る。一部の実施形態では、刺激システムは、複数の独立した刺激回路、または1つ、2つ、またはそれ以上の神経に対する刺激パラメータを切り替えるように構成された制御装置を有する共通回路を含むことができる。
【0082】
一部の実施形態では、図2Vに概略的に示すように、システム1400は、3つの電極、例えば脛骨神経1402などの第1神経上に配置された第1電極1404、例えば伏在神経1408などの第2神経上に配置された第2電極1406、および最初の2つの電極1404、1406とは反対側の、例えば脚の外側に配置された第3の電極1410を利用することができる。この第3の電極1410は、他の2つの電極1404、1406のための共通の陰極として機能するであろう。3つの電極1404、1406、1410は、最初の2つの電極1404、1406のそれぞれと共通陰極1410との間の電場がそれぞれ脛骨神経1402および伏在神経1408を通過するように配向することができる。一部の実施形態では、例えば、総腓骨神経、大腿神経、仙骨神経、坐骨神経、および腓腹神経を含む、脚を神経支配する他の神経も刺激することができる。
【0083】
本発明の実施形態は、生物学的データ(例えば、心拍数、心拍数変動、ECG、電気皮膚反応、体温、および血圧)を測定および収集し、これらの測定が心臓の律動および/または血圧にどのように影響するかを解釈するためにデータを解析し、そして正中、尺骨、および/または橈骨神経などの1つ以上の個々の神経を標的とする末梢神経刺激を提供して心不整脈を治療または予防し、心同期不全を軽減し、および/または血圧を下げるための装置、システムおよび方法を含むことができ、加えられる刺激は、測定データに基づいて修正されてもされなくてもよい。
【0084】
治療システムの実施形態は、例えば、手首もしくは肘の正中神経、または膝もしくは足首付近の伏在もしくは脛骨神経などの特定の神経、または、図8Aおよび図8Bに示すように、橈骨神経および/または尺骨神経などの様々な神経、あるいは様々な指圧または経絡点にアクセスするために、身体の様々な場所に装着するように可撓性または適応可能であり得る。
【0085】
一部の実施形態では、電極は、筋筋膜神経支配のために、好ましくは手首の折り目から近位側に約3指幅である、内関穴またはPC5~6またはPE5もしくはPE6指圧点の近くに配置することができる。あるいは、電極は、正中神経が皮膚表面により近い腕の遠位側に配置することができ、これは必要とする電力が少なくなるので、より快適な経皮的シミュレーションを提供することができる。
【0086】
治療システムの実施形態は、以下の3つの構成要素をいくつでも含むことができる。(1)センサ、回路を有し、任意に電源および/またはマイクロ制御装置を有することができるモニタユニット、(2)刺激装置(例えばパルス発生器)、回路、電源およびマイクロ制御装置を有する治療ユニット、および(3)電極と、治療ユニットに電極を電気的に接続するための電気的接続とを有する皮膚インタフェース。一部の実施形態では、3つのすべての構成要素は、装着型治療システムを形成するために互いに可逆的に取り付けることができる別々の構成要素である。一部の実施形態では、構成要素のうちの任意の2つを互いに組み合わせるかまたは一体化して、互いに可逆的に取り付けることができる装着型二部構成システムを形成することができる。例えば、皮膚インタフェースの電極が電気的活動(例えば、EMGおよびECG)およびインピーダンスを測定するためのセンサとして使用されるなど、いくつかの機能が交差する可能性があることに留意されたい。一部の実施形態では、取り外し可能な構成要素のうちの任意の1つは使い捨てであり得、および/またはリサイクルのために製造業者に返送され得る。一部の実施形態では、センサは、血圧を測定するために腕の周りに圧力センサを有するバンドのように分離させることができ、刺激装置とは無線で通信することができる。
【0087】
一部の実施形態では、治療システムの構成要素の一部またはすべては、埋め込み型、および/または経皮的であり得る。例えば、刺激電極は標的神経の近傍に埋め込まれてもよい。電力は、有線接続を介してまたは無線で電極に供給することができる。埋め込まれた電極は、神経カフ、または円筒形または平坦(プレート形状)であり得る電極を含むがこれらに限定されない標的神経に電流の流れを向けるための様々な形状を有することができる。刺激電極はまた、経皮的に挿入され得る。あるいは、心臓モニタなどのセンサは、胸部または手首などにおいて経皮的に電気的活動を連続的に測定できるような場所(例えば、ループレコーダ)に埋め込むことができる。埋め込まれた構成要素はまた、有線接続または無線を介して治療システムの他の構成要素と通信することができる。
【0088】
一実施形態は、図3Aに示すように、一部の実施形態では装着型であり得るモニタユニット312および治療ユニット314を含む二部構成システム310である。一部の実施形態では、治療ユニット314は取り外し可能とすることができ、装着型モニタユニット312に可逆的に取り付けることができる。治療ユニット314は、電気刺激信号発生器316、電源318、ならびに刺激を制御するためのマイクロプロセッサおよび/またはマイクロ制御装置320を含み得る。治療ユニット314は、装着型モニタ312に可逆的に直接および/または無線で接続および通信することができる。一部の実施形態では、治療ユニット314は、装着型モニタユニット312とは別個のままであり得、装着型モニタユニット312と無線で通信し得る。一部の実施形態では、治療ユニット314は、ユーザが電源318を充電し、マイクロ制御装置320上のソフトウェアおよび/またはパラメータを更新し、および/または装着型モニタユニット312および/または治療ユニット314上のメモリからデータを取り出すことを可能にするUSBポートなどのデータ/電力ポート315を有することができる。一部の実施形態では、データ/電力ポートは、装着型モニタユニット312、または装着型モニタユニット12および治療ユニット314の両方に配置することができる。一部の実施形態では、装着型モニタユニット312および/または治療ユニット314は、ソフトウェアおよび/またはパラメータを更新し、および/またはデータを取り出すために外部のコンピューティング装置と無線で通信することができる。
【0089】
一部の実施形態では、装着型モニタユニット312は、1つ以上のセンサ324を囲むユーザインタフェース322を有するハウジングを有することができる。一部の実施形態では、装着型モニタ312を使用して、心拍数、律動、血圧、または、心不整脈、心同期不全、心臓活動、高血圧、心不全、または交感神経系の反応と相関または関連する他の尺度を測定できる。一部の実施形態では、装着型モニタ312は、患者の皮膚と接触するハウジングの基部に配置された1つ以上の電極326を有することができる。それに加えてまたはその代わりに、装着型モニタ312は、バンド328の皮膚に面する側に1つ以上の電極を有するバンド328または他の固定機能を有することができる。一部の実施形態では、装着型モニタユニット312は、2つもしくは3つの電極、または少なくとも2つもしくは3つの電極を有する。一部の実施形態では、装着型モニタユニット312には電源はなく、電力については治療ユニット314内の電源318に依存する。他の実施形態では、装着型モニタユニット312および治療ユニット314の両方が電源を有する。一部の実施形態では、装着型モニタユニット312のみが電源を有し、治療ユニットはモニタユニットからの電力に依存する。
【0090】
一部の実施形態では、図3Bに示すように、治療ユニット314’は、装着者の皮膚と直接接触し、電極326を使用して、正中、橈骨、および/または尺骨などの標的神経を電気刺激する能力を有し得る。一部の実施形態では、治療ユニット14’は、2つもしくは3つの電極、または少なくとも2つもしくは3つの電極を有する。これらの電極326は、治療ユニット314’のハウジング上に配置されてもよく、および/または治療ユニット314’はまた、電極326を有するバンド328または固定機能を有してもよい。一部の実施形態では、治療ユニット314’が電極326を有する場合、装着型モニタユニット312’は電極を有さない。一部の実施形態では、モニタユニットおよび治療ユニットの両方が電極を有することができる。上記のように、治療ユニット314’は刺激装置316、電源318、およびマイクロ制御装置320を有することができる。装着型モニタユニット312’は、ユーザインタフェース322および1つ以上のセンサ324、ならびに任意に電源330およびマイクロ制御装置321を有することができる。一部の実施形態では、モニタユニットが電源330および/またはマイクロ制御装置321を有する場合、治療ユニットは電源および/またはマイクロ制御装置を有さない。一部の実施形態では、装着型モニタユニット312’は、装着型装置が治療ユニットと通信してモニタユニットとして機能することを可能にするアプリケーションを有する、アップルウォッチまたはAndroidベースのスマートウォッチなどのスマートウォッチまたは他の装着型装置である。一部の実施形態では、装着型モニタユニット312’は治療ユニット314’と無線で通信することができ、これらの装置の一方または両方は、外部のコンピューティング装置とも無線で通信することができる。一部の実施形態では、装着型モニタユニット312’および治療ユニット314’の一方または両方は、データ/電力ポート315を有することができる。一部の実施形態では、装着型モニタユニット312および治療ユニット314’は、データ/電力ポート315を介して互いに接続することができる。
【0091】
一部の実施形態では、センサは、モニタユニットの代わりに治療ユニットの中または上に配置することができる。一部の実施形態では、センサは、治療ユニットおよびモニタユニットの両方に配置することができる。一部の実施形態では、1つ以上のセンサを、腕、脚、首、または胸の周りに装着することができるバンド上のセンサ、または体の内部に埋め込まれたセンサなど、別個の装着型装置に配置することができ、これらは治療ユニットおよび/またはモニタユニットと有線または無線接続を介して通信できる。
【0092】
一部の実施形態では、モニタユニットは、代わりに、装着されるのではなく、例えばユーザの手またはポケットの中でユーザによって携帯され得る。例えば、ユーザによって携帯されるモニタユニットは、AndroidスマートフォンまたはiPhoneなどのスマートフォンであり得る。
【0093】
一部の実施形態では、二部構成システムまたはモニタユニットは、装着型モニタユニットがセンサの1つによって測定している間、座って腕を弛緩させる、静止する、または静止を心がけるなどの動作を実行するようにユーザに指示し得る。
【0094】
一部の実施形態では、ユーザインタフェースはディスプレイを含み得る。一部の実施形態では、ディスプレイはタッチスクリーンディスプレイまたは容量センサであり得る。一部の実施形態では、ディスプレイはLEDライトの配列であり得る。一部の実施形態では、ユーザインタフェースは、1つ以上のボタン、ダイヤル、および/またはキーボードを含むことができる。
【0095】
一部の実施形態では、電極は、乾式接触(例えば、布地、金属、シリコーンまたは導電性フィラーを含浸させた他の任意のプラスチック、あるいはその組み合わせ)とすることができ、導電性ゲル(例えばヒドロゲル)を使用することができ、または湿式電極表面(例えば、水を含むスポンジまたは導電性の液体またはゲル)、または例えば細いマイクロニードルを有することができる。一部の実施形態では、電極はフォームバッキングを有することができる。
【0096】
一部の実施形態では、モニタユニットは、ユーザインタフェースを備えたハウジングを有する装着型モニタとすることができる。ハウジングは、血圧、運き(例えば、加速度計、ジャイロスコープ、磁力計、曲げセンサ)、筋肉活動(例えば、電極を用いたEMG)、心血管律動測定値(例えば、心拍数、心拍数変動、またはECG、心律動異常を測定するために電極を使用した心室および/または心房同期不全)、皮膚コンダクタンス(例えば、電極を使用した皮膚コンダクタンス反応、電気皮膚反応)、呼吸数、皮膚温、瞳孔径、および睡眠状態(例えば、覚醒、軽い睡眠、深い睡眠、レム)を含むがこれらに限定されない、装着者についての生物学的測定値を収集、保存、および分析するために複数のセンサを使用できる。心律動測定は、光学式、電気式、および/または加速度計ベースのセンサを用いて記録することができる。特に、ストレスレベルが上がると血圧が上がることが研究によって示されている。運動などの活動は、心拍数および/または律動に影響を与えたり、血圧に影響を与えたりし、加速度測定(動き)や心拍数などを測定することで、これらの活動を識別し、同様の活動で測定値を正規化できる。さらに、高血圧は心不全と相関しており、心室同期不全をECGセンサで測定すると、刺激の効果を識別して高血圧を慢性的に減らすのに役立つ。したがって、標準的な統計分析、機械学習、ディープラーニング、またはロジスティック回帰またはナイーブベイズ分類器などのビッグデータ技法を使用してこれらの生物学的尺度を分析して、ストレスレベルなどの個人の状態を評価でき、これは心不整脈、心同期不全、および/または血圧の上昇の予測因子として役立ち得る。一部の実施形態では、装置は、1つ以上の生物学的尺度の測定値、個人の状態の判定、および/または心不整脈、心同期不全、および/または血圧の変化の予測に基づいて刺激を与えることができる。
【0097】
一部の実施形態では、応答性は活動に依存し得る。例えば、活動によって悪化する可能性がある不整脈では、例えば、加速度計またはジャイロスコープなどの動きセンサは、個人が運動しているかどうかを感知することができる。その間、装置は、適切な刺激を提供するためにオンになり得る。一部の実施形態では、活動が完了すると装置はオフになり得る。一部の実施形態では、センサは、活動がない期間(例えば、対象が眠っているとき)に刺激を活性化することができる。
【0098】
一部の実施形態では、刺激の応答性は、運き(例えば、加速度計、ジャイロスコープ、磁力計、曲げセンサ)、地面反力または足の圧力(例:力センサーまたは圧力インソール)、筋肉活動(例えば、EMG)、心血管測定値(例えば、心拍数、心拍数変動(HRV)、フォトプレチスモグラフィ(PPG)、またはECGおよび/または心律動異常を測定するために電極を使用した心室および/または心房同期不全)、皮膚コンダクタンス(例えば、皮膚コンダクタンス反応、電気皮膚反応)、呼吸数、皮膚温、瞳孔径、および睡眠状態(例えば、覚醒、軽い睡眠、深い睡眠、レム)を含むがこれらに限定されない、装着者についての生物学的測定値を収集、保存、および分析するために装置に収容される1つ、2つまたはそれ以上のセンサに依存し得る。標準的な統計分析、機械学習、ディープラーニング、またはロジスティック回帰またはナイーブベイズ分類器などのビッグデータ技法を使用してこれらの生物学的尺度を分析して、座りがち対活動、ストレスレベルなどの装着者の活動状態を評価でき、これは血圧、心不整脈、または心同期不全の変化の予測因子として役立ち得る。
【0099】
交感神経および副交感神経活動は、マイクロニューログラフィ(MSNA)、カテコールアミンテスト、心拍数、HRV、または電気皮膚反応を含むいくつかの方法で測定できる。HRVは、体内の自律神経活動の迅速かつ効果的な近似値を提供し得る。HRVは、RR間隔としても知られる、心拍間の時間間隔を分析することによって決定できる。心拍数は、例えばチェストストラップや指センサなどの記録装置を通して正確に捉えることができる。連続したRR間隔間の違いは、心臓の健康状態と自律神経活動の状況を把握するのに役立つ。一般的に、健康な心臓は連続したRR間隔間により大きな変動がある。この拍動間データは、個人の交感神経および副交感神経の活動レベルを示すためにも使用できる。周波数領域分析により、心拍周波数は異なる帯域に分離することができる。高周波信号(約0.15~0.4Hz)はほぼ独占的に副交感神経活動を反映することができ、低周波信号(約0.04~0.15Hz)は交感神経活動と副交感神経活動の混合を表すことができる。したがって、高周波数(HF)と低周波数(LF)の信号の比をとると、おおよその交感神経緊張が得られる。一部の実施形態では、HRVは、例えば、周波数領域法に加えて時間領域、幾何学的領域法の下で分析することができる。一部の実施形態では、心拍数変動の増大は、副交感神経反応の増大および/または交感神経反応の減少を意味し得る。心拍数変動の減少は、副交感神経反応の低下および/または交感神経反応の増大を意味し得る。一部の実施形態では、システムはベースライン値(または目標所望HRV値)に対して、約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、75%、100%、またはそれ以上のHRVの増加または減少を感知することができ、そしてそれに応じて1つ、2つ、またはそれ以上の刺激モダリティパラメータにおける変化を設定する。一部の実施形態では、1つ、2つ、またはそれ以上の刺激モダリティは、交感神経系および/または副交感神経系に関連する1つ以上の神経(例えば末梢神経)への刺激の増減などを調節するように構成でき、治療への反応は、HRVの増加または減少、HRVの高周波成分の変化、ならびにHRVの高周波成分と低周波成分の比率の変化を含むがこれらに限定されない、副交感神経または交感神経の緊張の増減を感知することによって確認することができる。一部の実施形態では、副交感神経活動と交感神経活動のバランスは、膝の周りの(または他の実施形態では腕または首の中の)、大腿、膝窩、脛骨、後脛骨、前脛骨、および/または下行性の膝動脈または静脈のうちの1つ以上を含み得る主要血管の1つを標的とする血流による光レベルの変動を測定する、装置内に配置されたLED光源および光学センサを備えたパルスプレチスモグラフィによって測定された心拍数変動の周波数分析によって評価され得る。一部の実施形態では、心拍数は、単一または複数リードのECGモニタと同様に、加速度計ベースのセンサまたは電気ベースのセンサを使用して測定することができる。
【0100】
心拍数の光学的測定における大きな誤差の原因は、測定中の光学センサと血管との間の相対運動による運動アーチファクトである。一部の実施形態では、光学式心拍数センサは、装着者の皮膚と接触するハウジングの側面に接着剤を有し、センサと標的血管との間の相対運動を低減する。
【0101】
心血管疾患を有する対象におけるHRV測定値は、対照と比較して有意に異なり得る。周波数領域分析により、心拍周波数は異なる帯域に分離することができる。高周波信号(約0.15Hz~約0.4Hz)はほぼ独占的に副交感神経活動を反映することができ、低周波信号(約0.04Hz~約0.15Hz)は交感神経活動と副交感神経活動の混合を表すことができる。一部の実施形態では、高周波数(HF)と低周波数(LF)の信号の比をとると、おおよその交感神経緊張が得られる。超低周波(VLF)信号(約0.004Hz~約0.040Hz)もまた、副交感神経活動を評価するために評価することができる。周波数領域におけるHRVの総パワーも自律神経活動を評価するために評価することができる。
【0102】
交感神経機能および副交感神経機能はまた、例えば、平均正常対正常間隔、例えば、50ミリ秒を超える連続NN間隔の間隔差の数を含む、測定された心律動の隣接QRS群間の全間隔、連続するNN間隔の平均平方差の平方根、およびNN間隔の標準偏差を分析することによって評価できる。
【0103】
一部の実施形態では、交感神経活動はまた、解放前および握り運動を開始する前の血圧変化の測定、または手を冷たい水に浸す前後の血圧変化の測定(例えば、コールドプレッサーテスト)などのより伝統的な技術を用いて評価することができる。副交感神経活動は、深呼吸中の心拍数反応、または横臥もしくは座位からの立位に対する心拍数反応(起立性)を測定することによって、または例えば傾斜テーブルを使用して人体の向きを変えることによって評価できる。交感神経および副交感神経の両方の活動は、バルサルバ法(例えば、水銀圧計への吹き込みおよび約もしくは少なくとも約40mmHgの圧力の維持)、または(例えば、横臥または座位からの立位に対する)起立性心拍数反応中に評価できる。
【0104】
一部の実施形態では、心臓の活動を測定するために装着者の皮膚と接触する電気的センサおよび/または加速度センサ、または心拍数測定の忠実度を向上させるために光学センサと組み合わせて使用される、血管の変化を測定するための圧力センサを含む、1つ、2つ、またはそれ以上の追加のセンサが装置に配置される。
【0105】
一部の実施形態では、システムおよび装置は、センサデータからRR間隔を抽出し、RR間隔の変動性を計算し、データを周波数領域に変換し、高周波信号、低周波信号、および高周波と低周波信号との比率を計算するためのメモリおよびプロセッサを有する。一部の実施形態では、システムは、不整脈、頻脈、徐脈などの心臓事象を記憶することができる。
【0106】
一部の実施形態では、心拍数センサは、心拍数変動計算のために適切な日付を集めるために指定された期間にわたって収集されたデータを記憶することができる。指定された期間は、場合によっては1-60秒の範囲であり、10分以上に及ぶことがある。
【0107】
一部の実施形態では、例えば、電気皮膚反応または皮膚コンダクタンス反応としても知られる皮膚電気活動は、電極などのセンサを使用して測定することができ、以後、電気皮膚反応および皮膚電気活動は同義語として使用される。電気皮膚反応は、感情的なストレスによって引き起こされる皮膚の電気抵抗の変化であり、感度のよい検流計で測定可能である。理論によって制限されないが、皮膚抵抗は皮膚の汗腺の状態によって変わる。発汗は交感神経系によって制御されており、皮膚のコンダクタンスは心理的または生理学的興奮の指標となり得る。交感神経系が非常に興奮している場合は、汗腺の活動も増加し、それが皮膚コンダクタンスを増加させる。このようにして、皮膚コンダクタンスは、感情的および交感神経性反応の尺度となり得、フィードバックデータは、例えば交感神経系活動を減少させるために刺激を調節する制御装置に送信され得る。感知することができる交感神経系および/または副交感神経系の活動に関連する他の非限定的なパラメータには、例えば、昼および/または夜の特定の時間帯の発汗、例えばEEGヘッドバンドによって検出される睡眠状態(交感神経および/または副交感神経の活動がいつ特に高いか低いかを判断し、ステージ1、2、3、4、またはレムなどの睡眠状態を潜在的に相関させるため)、および/または動きが含まれる。一部の実施形態では、診断および/または組み合わせ診断/刺激装置は、個人の自律神経活動の推定を改善するために、個人の心拍数および電気皮膚反応を測定するように構成することができ、自律神経活動のこの推定は、刺激の頻度、刺激のバーストの調整、選択された神経標的、刺激セッションの持続時間、または刺激が適用される一日の中での時刻を含むがこれらに限定されない、処置として加えられる刺激を調整するために使用され得る。一部の実施形態では、手首装着型装置などの装着型装置は、皮膚電気活動(EDA)センサおよび心拍数センサの両方を含むことができる。このデータの組み合わせは、一部の実施形態では、単一の測定値単独よりも、交感神経および副交感神経活動の改善された推定を有利かつ相乗的に提供することができる。一部の実施形態では、システムは、心拍数およびHRVを組み合わせて皮膚電気活動を測定するための複数のセンサを含み得る。複数のセンサからのデータは、ハードウェアまたはソフトウェアプロセッサによって分析され得、そして交感神経および/または副交感神経活動のより正確な推定を提供するために組み合わされ得る。一部の実施形態では、EDAセンサおよびHRセンサは、有線または無線接続を介して刺激装置と通信するか、または集中リモートサーバ(例えば、クラウド)にデータを送信するための手首装着型装置内に配置することができる。とりわけ周波数またはパルス幅、神経標的位置(例えば、脛骨神経および/または伏在神経)または投与計画(例えば、刺激セッションの期間または一日の中での時刻)などの刺激パラメータは、交感神経および/または副交感神経活動の推定に基づいて調整することができる。一部の実施形態では、交感神経および/または副交感神経活動の著しい変化を用いて心室および/または心房同期不全または心律動異常の発症を予測することができ、装置は刺激を開始して同期不全事象の防止または期間を短縮することができる。調整は、リアルタイムで、またはその後の刺激セッションで行うことができる。一部の実施形態では、刺激頻度は、単一の特定の神経または複数の神経によって調節される自律神経活動を増加または減少させるように調節され得る。例えば、一部の実施形態では、標的神経の比較的低い周波数の刺激(例えば、閾値未満、例えば、約5Hz)は潜在的に神経を阻害し、したがって交感神経活動を減少させることができ、高い周波数刺激(例えば、閾値より高い、例えば、約5Hz)は潜在的に神経を興奮させ、したがって交感神経活動を増加させる可能性がある。さらに、刺激波形のパルス幅は、交感神経活動を阻害することができる皮膚線維を含む、特定のタイプの線維を多少なりとも補充するように調整することができる。副交感神経活動を調節するために、同じまたは他の標的神経で同じ作用が起こり得る。言い換えれば、一部の実施形態では、標的神経の比較的低い周波数の刺激(例えば、閾値未満、例えば、約5Hz)は潜在的に神経を阻害し、したがって副交感神経活動を減少させることができ、高い周波数刺激(例えば、閾値より高い、例えば、約5Hz)は潜在的に神経を興奮させ、したがって副交感神経活動を増加させる可能性がある。理論によって制限されないが、例えば、刺激パラメータに応じて、場合によっては、標的神経を刺激することは、交感神経活動、副交感神経活動のいずれか、またはその両方を増加または減少させることができる。一部の実施形態では、伏在神経の刺激は交感神経活動に作用し得、脛骨神経の刺激は副交感神経活動に作用し得る。
【0108】
理論によって制限されないが、心房細動を含む一部の不整脈は、迷走神経活動および交感神経活動の同時放出によって引き起こされ得、それは自律神経系の両群の不均衡をもたらす。一部の実施形態では、システムおよび方法は、末梢刺激に対する反応の可能性を決定するための、心拍数変動、電気皮膚反応、および例えば心房細動事象などの不整脈の測定値を用いた交感神経迷走神経バランスの評価を含み得る。例えば、心拍数を測定するための光学ベースのセンサのようなセンサ、および/または交感神経迷走神経バランスを評価し、例えば、心房細動事象などの不整脈を検出するための電気皮膚反応、および刺激装置を組み合わせる装置を手首に装着することができる。装置は、HRVおよび/またはGSRを測定し、1~3日または1週間などの指定された期間にわたって心房細動事象を検出して、交感神経迷走神経バランスの評価および不整脈事象の検出に基づいて、刺激パラメータ(例えば、刺激周波数、交番周波数、刺激期間、一日の中での刺激時刻)を調整することができる。一部の実施形態では、上肢および/または下肢における1つ、2つ、またはそれ以上の神経の刺激を、耳珠などによる迷走神経の耳介枝の刺激と組み合わせて、迷走神経活動を調節し、自律神経系のバランスを回復させることができる。図3Cは、耳390の選択的な解剖学的構造を示し、耳介側頭神経399によって概して神経支配された耳390の比較的内側の領域、耳珠398、耳輪397、耳甲介396、概して耳の下側端部および外側端部にある大耳神経395によって神経支配された領域、ならびにより中心にそして概して耳珠398の近傍にある迷走神経394の耳介枝によって神経支配された領域を含む。
【0109】
耳珠の刺激は、例えば、プラグ、イヤピース、または場合によっては経皮電気刺激のための電極を含むことができる他の装置を介して非侵襲的に起こり得る。図3Dは、耳390の耳珠398内に配置されたイヤホン形状を有する耳珠刺激装置392の実施形態を示す。刺激装置392は、図示のように有線でもよく、または他の実施形態では無線でもよい。刺激装置392は、カソード387およびアノード388を含み得る遠位耳レセプタクル部分389と、レセプタクル部分389に近接するハブ386と、電気エネルギーなどの電磁エネルギー源への導管388とを含み得る。一部の実施形態では、耳珠刺激装置392は、本明細書の他の箇所で論じるように、刺激および/または生理学的機能に関するパラメータを測定するための1つ以上のセンサを含む。耳珠刺激装置392は、片側性または両側性(例えば、両方の耳に配置される)であり得る。
【0110】
一部の実施形態では、システムは、互いに無線で通信し、かつ同期したパターン化刺激を提供する複数の刺激装置を含むことができる。一部の実施形態では、複数の刺激装置を複数の電極対と電気的に接続して、複数の神経を同時に刺激することができる。一実施形態では、システムは、正中神経を標的とするための手首の刺激装置と、迷走神経の耳介枝を標的とするための耳の中の刺激装置とを含むことができる。システム内の各刺激装置は、有線または無線接続を介して互いに通信することができる。複数の刺激装置は、複数の神経に同期刺激を提供することができる。刺激は、例えば、バースト、オフセット、または複数の神経間の交番であり得る。
【0111】
装置はまた、胸痛、呼吸困難、ふらつき、および/または不整脈の存在を示す動悸、心同期不全、および/または場合によっては異常血圧を含む症状のいくつかのエピソードにも反応することができる。より多くのエピソードが一日に起こる場合、例えば、刺激の振幅、刺激の持続時間、または治療セッションの数を増やすことによって治療を増やすことができる。
【0112】
症状のエピソード数は、システムおよび装置によって加えられる刺激を制御するために様々な方法で検出することができる。一部の実施形態では、患者は、胸痛、呼吸困難、ふらつき、および/または動悸事象を含むがこれらに限定されない心臓症状に関連する事象を携帯機器に入力することができる。
【0113】
システムの一実施形態は、年齢、体重、身長、性別、民族性などを含む各ユーザについての他の関連人口統計データと共に、サーバシステム(例えば、クラウド)上の複数の装着者からの生物学的測定値を集中的に記憶することができる。複数の装着者から収集されたデータは、標準的な統計分析、機械学習、ディープラーニング、またはロジスティック回帰またはナイーブベイズ分類器(または他の分類器)などのビッグデータ技法を使用して分析することができ、生物学的尺度と他の記録された事象との間の相関関係、および心不整脈、心同期不全、および/または血圧の上昇の間の相関関係を決定することによって、心不整脈、心同期不全、血圧または血圧変化の予測を改善することができる。これらの相関関係は、治療ユニットによって適用される刺激波形のパラメータを設定するため、刺激治療を適用するための最良の時間を決定するため、および/または治療ユニットによって適用される刺激波形をリアルタイムで適応させるために使用され得る。
【0114】
本システムの一実施形態では、装着型モニタは、(1)患者のコンプライアンスを追跡するため、(2)心不整脈、心同期不全、および/または血圧の測定値と組み合わせて治療効果を評価するため、(3)心不整脈、心同期不全、血圧または血圧の変化を決定または予測するために、薬の服用量と消費を自動的に検出して記録する。薬の服用量と消費は、(1)薬が消費される度にピルパックまたはボトルにマーキングを記録するための視覚的スキャナの使用、(2)薬が薬ボトルから消費される度に検出する力センサ付きスマート錠剤キャップおよび無線トランスミッタ、(3)消化によって活性化されモニタ装置と通信する、薬の各服用で消費される薬と同じサイズと形状のRFIDチップ、(4)消化によって活性化されモニタ装置と通信する、薬の各服用で消費される砂糖の錠剤に埋め込まれたRFIDチップ、(5)薬が消費される度に、モニタユニットのカメラによって走査され記録される視覚的符号化を有する錠剤、または(6)患者に服薬量を装置に記録させることによって、を含む複数の方法で検出し記録することができる。
【0115】
システムはまた、各刺激セッションの後、または日、週、または月のような指定された期間の終了後に装置上の入力を介して患者の満足度を記録することができ、これは治療のフィードバック適用を助けるための別の情報を提供する。場合によっては、個人が満足していれば、治療は現在の刺激波形およびレベルで維持される。他の場合では、これは、例えば波形周波数または振幅などの刺激パラメータを変更することによって、刺激治療を最適化する必要がある可能性があることを意味し得る。
【0116】
一部の実施形態では、装着型モニタは、それだけには限定されないが、心不整脈、心同期不全、血圧または血圧上昇、および/またはストレスレベル、心拍数、心拍数の変動性、または他のパラメータの上昇の予測を含む生物学的測定値の分析に基づいて、重要な事象を装着者に知らせるための視覚的、聴覚的、触覚的(例えば、圧迫バンド)、または振動触覚合図を有することができる。合図システムはまた、装着者によって設定された他の所定の事象またはリマインダを装着者に通知することもできる。合図システムは、社会的状況において他人の注意を引くことなく、心房細動などの不整脈の存在、高血圧または他の所定の事象などの情報を、より目立たない個別の方法で装着者に伝達するために使用される。
【0117】
一部の実施形態では、装着型モニタおよび/または治療ユニットの形態は、手首バンドまたは腕時計、指輪、手袋、アームスリーブまたはアームバンドまたはカフ、膝バンド、靴下、脚スリーブまたはカフ、耳ピース/ヘッドフォン、ヘッドバンド、ネックレスまたはネックバンド、または身体の複数の場所に適合するコンプライアントパッチであり得る。
【0118】
一実施形態では、装着型モニタは、処理ユニットおよび装着者によって入力された他のデータと共に、生物学的測定値を収集、記憶、処理、および分析するメモリを有することができる。
【0119】
一部の実施形態では、装着型モニタは、食事歴、投薬歴、カフェイン摂取量、アルコール摂取量、ナトリウム摂取量などを含む事象についてのユーザ入力を受け取ることができる。モニタは加速度計を使用して特定の動作、ジェスチャ、またはタップパターンを測定し、特定のプロンプトでのユーザ入力を記録できる。抵抗ストリップまたは感圧スクリーンなどの他のタッチセンサを使用して、特定のジェスチャを測定してユーザ入力を記録できる。ユーザ入力を記録するためのこれらのジェスチャベースの手段は、ユーザデータを装置に入力するために必要とされる工程の複雑さを最小限に抑える。データはメモリに格納され、処理ユニットによって処理され得る。一部の実施形態では、データは装着型モニタから外部のコンピューティング装置に送信することができる。
【0120】
一実施形態では、装着型モニタおよび/または治療ユニットは、カレンダーおよび活動ログなどの他のアプリケーションと接続して事象を同期および追跡することができ、あるいは保存されたカレンダーを装置に保存および記憶することができる。一部の実施形態では、装着型モニタおよび/または治療ユニットは、例えば、スマートフォン、スマートウォッチ、タブレット、ラップトップコンピュータ、またはデスクトップコンピュータなど、これらのアプリケーションを有する様々なコンピューティング装置と通信することができる。一部の実施形態では、装着型モニタは、携帯型血圧モニタを含み得る。
【0121】
一実施形態では、モニタユニットおよび/または治療ユニットは、装着者の位置を追跡し活動を評価するためにGPSまたは同様の装置を有することができる。GPS測定値は、装着者の活動の状況(例えば、ジム、オフィス、家)を決定したり、ランニングやサイクリングなどの特定の活動中の高さの変化を決定したりするためにマッピングシステムまたはロケーションシステムと組み合わせることができる。
【0122】
図4A図4Dに示すような一部の実施形態では、単一のモニタユニット412を、異なるバッテリ容量および電力出力を含む、異なるサイズ、形状、色、マーキングおよび/または機能を有する複数の治療ユニット414と共に使用することができる。異なる装着者および使用シナリオは異なる量の刺激期間および電力を必要とし、より小さいまたはより大きい治療ユニットがより望ましくなり、異なるシナリオにおいて装着者のニーズを満たすための選択肢を装着者に与える。一部の実施形態では、治療ユニット412はまた、異なる刺激パラメータおよび/または異なるタイプの治療に合わせて調整することができる治療を含む、異なるプログラミングを有することができる。例えば、1つの治療ユニットは心不整脈、心同期不全を治療するように調整することができ、他の治療ユニットは高血圧を治療するために使用することができる。一部の実施形態では、治療ユニットはそれぞれ、心不整脈、心同期不全、および/または高血圧の軽い治療用の1つのユニットと、高血圧の重度および積極的治療用、または、例えば毎日の刺激のための1単位および毎週の刺激のための1単位などの様々な使用パターンまたは投与計画のための別のユニットなど、異なる強度の治療を提供するように調整できる。治療ユニットの異なる特徴および能力は、異なるサイズ、形状、色、および/またはマーキングに対応することができる。キャリングケース432を使用して、バッテリ容量および電力出力または他の何らかの特徴が異なる、心不整脈、心同期不全、および/または高血圧を治療するための一組の治療ユニットなどの一組の治療ユニットを保持することができる。
【0123】
一実施形態では、治療ユニットは、複数の治療ユニットを同時に充電することができる独自の充電ステーションを有する。充電ステーションは、治療ユニットへのカスタム直接電気接続を有してもよく、または近接して無線で治療ユニットを充電してもよい。同様に、一部の実施形態では、充電ステーションは同様の方法でモニタユニットを充電することができる。
【0124】
一実施形態では、装着型モニタは、刺激の時間、刺激セッションの期間、および治療ユニットによって使用される電力を含む、治療ユニットによって提供される刺激に関するパラメータを追跡することができる。このデータは、装着型モニタ内のメモリに記憶され、装着型モニタによって処理され、および/または外部のコンピューティング装置に送信され得る。
【0125】
一実施形態では、治療ユニットは、(1)例えば、RFID、符号化EEPROMチップ、抵抗または容量ベースのID、バイナリ識別子、または表面パターンを介して固有のコードを通信する適切かつ固有の電極が設置されていることを保証するため(すなわち、異なるタイプまたは正しくないタイプの電極を使用しない)、(2)各電極の使用回数または電極の寿命を規制して過剰使用を防止するため、および(3)小さな衝撃を防ぐために電極なしで装置の使用を防ぐため、電極の接続を検出するためにスイッチまたは電気センサを使用することができる。一部の実施形態では、治療ユニットおよび/またはモニタユニットは、互いにまたは外部のコンピューティング装置に送受信することができる識別子を有することができる。識別子によって、一方のユニットが、上記の電極構成を含む他の装置の特徴、能力、および/または構成を決定することが可能になり、それによって適切な治療パラメータを使用することができ、また、電圧測定値、時間、治療セッションの数、または他のパラメータに基づき得る構成要素の使用寿命または有効期限も決定できる。一部の実施形態では、識別子を使用する代わりに、1つの装置の特徴、機能、および/または構成を、一方の装置から他方の装置へ直接、またはユーザインタフェースへの入力を通じて、または外部コンピューティング装置を通じて伝送することができる。
【0126】
バンド、治療ユニット、モニタユニット、皮膚インタフェースを含む治療システムの他の構成要素はそれぞれ、上述の機能を実行する1つ以上の識別子を有することができる。これらの識別子は、本明細書に記載されるような様々な情報、ならびに所定の投与計画、初期化ルーチン、較正ルーチン、または特定のパラメータを符号化することができる。識別子は、符号化情報を記憶するルックアップテーブルと関連付けられてもよい。
【0127】
一部の実施形態では、装着型モニタおよび/または治療ユニットは、データを記憶するために外部のコンピュータまたは装置(例えば、タブレット、スマートフォン、スマートウォッチ、または充電器および通信接続を含むカスタム基地局)と通信することができる。モニタと外部装置との間の通信は、直接的な物理的接続、またはブルートゥース、GSM、またはセルラなどの無線通信接続によるものとすることができる。
【0128】
装置の一実施形態では、治療ユニットは、治療ユニットと装着者の手首との間に電極配列および圧力センサなどの1つ以上のセンサを有し、電極におけるおよび/または電極の周囲の皮膚インタフェースの接触圧力を測定する。乾式電極材料の快適さのためには、皮膚インタフェースの一貫した圧力が特に重要である。この圧力データを分析して、配列内のどの電極が適切な神経を刺激するかを決定し、あるいは動きまたは他の条件による皮膚接触の変化を検出し、電極配列の刺激を最適位置に切り替えることができる。これらの方法は、(1)電極の接触不良を評価し、(2)圧力測定に基づいて刺激の振幅を調整するために使用される。
【0129】
装置と装着者の皮膚との間の接触圧力を増加させること、および/または適切な接触圧力または接触圧力閾値を超える電極で刺激することは、(1)接触の表面積を増加させ、それによって不快感を減少させ、(2)深部体性疼痛末梢神経線維を活性化し、刺激による不快感を軽減し、表在性疼痛線維を活性化し、(3)標的神経の刺激を改善するので、必要な刺激振幅を低減し(例えば、電極は周囲組織の圧迫により神経に物理的に近づく)、または、(4)皮膚の動きの影響を軽減することができる。
【0130】
一部の実施形態では、自律神経系の交感神経および副交感神経肢を特異的に調節することによって自律神経バランスを回復させるために、神経内の特定の線維型(例えば、選択的にAα、Aβ、Aδ、B、および/またはC線維のうちの1つのみ、または1つ以上)を選択的に活性化(例えば、そのような特定の線維型において活動電位を発生)することができる。一部の実施形態では、システムおよび方法は、Aα、Aβ、Aδ、B線維、またはC線維を刺激しないか、または実質的に刺激しない。
【0131】
理論によって制限されないが、表在性および/または皮膚の求心性神経および/または遠心性神経の刺激は、孤束核および迷走神経核を阻害し、大動脈減圧神経を阻害し、それによって副交感神経の心臓血液拍入量を阻害することによって不整脈を予防することができ、深部求心性神経および/または遠心性神経の刺激は、弓状核-腹側中脳水道周囲灰白質-縫線核経路を興奮させ、吻側延髄腹外側野(rVLM)を阻害し、それによって交感神経の心臓血液拍入量を阻害することによって不整脈を予防できる。表在性線維は、感覚的情報を表在性後角に中継するより細かい(例えば、より小さな直径の)求心性神経であり、表在性後角は、後角および脊髄灰白質の異なる領域であり、深部線維は、感覚情報を深部後角に中継するより太い(例えば、より大きな直径の)求心性神経である。
【0132】
一部の実施形態は、星状神経節を介する交感神経活動を阻害するための皮膚線維(例えば、Aα、Aβ、Aδ、および/またはC)線維の優先的刺激を含み得る。手首での選択された皮膚線維の刺激は、内側皮神経および腕神経叢の内側索を介して感覚情報を伝達することができ、それはC8-T1のレベルで脊髄を神経支配し、次に刺激は、C7-T1のレベルの交感神経の集合である星状神経節または頸胸神経節を介して心臓交感神経活動を調節する。一部の実施形態では、末梢神経エフェクタは、内側皮神経を刺激するが正中神経、橈骨神経、尺骨神経を刺激しない、または実質的に刺激しないように、または少なくとも内側皮神経を優先的に刺激するように、例えば前腕の内側などの患者の皮膚上に配置することができる。一部の実施形態では、側方皮神経および/または筋皮神経、またはそれらの特定の線維は、優先的にまたは特異的に刺激され得る。一部の実施形態では、単一のタイプの神経線維のみが活性化され、他のタイプの神経線維は活性化されない。例えば、一実施形態では、Aα線維のみが活性化され、B線維は活性化されない。一実施形態では、1つ以上の線維を不活性化したまま(または機能的に未刺激のまま)、1~5種類の線維を活性化する。一部の実施形態では、不活性化線維は発火せず、または活動電位を伝達しない。一部の実施形態では、Aα、Aβ、Aδ、B線維、またはC線維のうちの1つ以上が活性化されているか、または活性化されていない。一部の実施形態では、特定の末梢神経の1つ以上の線維のタイプのうちのより多数または一部が、その末梢神経の他の線維および/または標的末梢神経に近接する他の末梢神経に対して刺激されるように、1つ以上の線維が優先的に活性化される。一部の実施形態では、神経の1つ以上の線維タイプの約50%、60%、70%、80%、90%、95%を超える、または実質的にすべての線維が活性化され、一方、他の線維タイプの約50%、40%、30%、20%、10%、5%、またはそれ未満が活性化され、その結果、同じ神経の1つ以上の異なる線維タイプおよび/または標的末梢神経に近接する他の末梢神経に対して1つ以上の線維タイプが優先的に活性化される。
【0133】
様々なタイプの神経線維の選択的活性化は、様々な方法で達成することができる。一部の実施形態では、二相方形波のパルス幅(図13Aに概略的に示す)などの刺激パラメータは、(例えば、他のタイプの線維を活性化することなく)特定のタイプの線維を選択的に活性化するように制御され得る。例えば、約50~100μsのパルス幅は、より大きなAα線維を選択的に刺激することができ、約150~200μsのパルス幅は、より小さなAδ線維を選択的に刺激でき、約300~400μsのパルス幅は、さらに小さなC線維を選択的に刺激することができる。
【0134】
一部の実施形態では、正弦波パターン(図13Bに概略的に示す)の周波数は、特定のタイプの線維を選択的に活性化するように制御され得る。例えば、約2000Hz、約250Hz、および約5Hzの周波数は、それぞれAβ、AδおよびC求心性線維を選択的に活性化することができる。
【0135】
一部の実施形態では、装置は、電極を神経軸索の長さに沿って整列させることによって表在性神経線維(例えば、皮膚の表面により近い線維)を選択的に刺激するように構成された電極を含み得る。前述の図2Aは、手首の一例を概略的に示している。一部の実施形態では、装置の電極は、肢を横切って電極を横方向に整列させることによって深部神経線維(例えば、皮膚の表面からさらに離れた線維)を選択的に刺激するように選択的に構成することができる。前述の図2Bは、手首の一例を概略的に示している。
【0136】
一部の実施形態では、装置は複数の電極、例えば4つの電極を含み、第1の電極対は特定の第1の周波数fHzで刺激し、第2の電極対は第1の電極対よりわずかに高いまたは低い第2の周波数f±xHzで刺激し得る。一部の実施形態では、第2の周波数は、第1の周波数とは異なるが、その約±20%、15%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、または1%以内であり得る。
【0137】
一部の実施形態では、図13Cに示すように、2つの波形の周波数間の差である周波数、例えばxHzを有する刺激の干渉パターンを生成することによって、刺激波形が特定の交差点で結合して肢部の深部線維を標的にするように、電極対は肢部上に離間させることができる。
【0138】
一部の実施形態は、刺激の効率および有効性を改善するために選択された刺激パターン(例えば、バースト、パルスパターン、ランダム、擬似ランダム、またはノイズ)を含み得る。一部の実施形態では、図13Dに概略的に示すように、電極の配列は、神経に沿った特定の点が例えば約1cm/秒から約10cm/秒の間の速度で刺激されるように、規則的な間隔で隣接する電極対を刺激する神経の軸索に沿って整列され得る。一部の実施形態では、刺激は、バーストが律動(例えば、規則的な間隔で)または疑似ランダムであり得るバーストパターンで提供され得る。一部の実施形態では、超低刺激周波数(0.01~0.1Hz)をより高い周波数の刺激(1~200Hz)と、またはより低い周波数(1~200Hz)を非常に高い周波数(1000~10kHz)と組み合わせた刺激波形を提供することができる。
【0139】
一部の実施形態では、バーストパターン、例えば、心不整脈、心同期不全、高血圧、および/または本明細書に開示するものを含むがこれらに限定されない他の様々な状態を改善するためのシータバーストパターンの形で経皮感覚刺激を利用できる装着型システムおよび方法を本明細書に開示する。非侵襲的な末梢神経シータバースト刺激は、症状を軽減し、個人の生活の質を向上させるために、場合によっては、効率的に皮質または脊椎の可塑性を促進するのに連続刺激よりも効果的な場合がある。
【0140】
一部の実施形態では、刺激は末梢神経の電磁刺激のパターンを含む。パターン化刺激は、規則的な間隔(例えば、10ミリ秒の間オン、20ミリ秒の間オフなど)で繰り返すオン/オフパターンなどのバースト刺激、または一部の実施形態では、例えば、確率的パターンや正弦波エンベロープなどより複雑となり得る非バーストパターン化刺激であり得る。電磁刺激は、例えば、電気エネルギー、機械的エネルギー(例えば、振動)、磁気エネルギー、超音波エネルギー、高周波エネルギー、熱エネルギー、光エネルギー(例えば、赤外線または紫外線エネルギーなど)、および/またはマイクロ波エネルギー、またはそれらの組み合わせを含み得る。一部の実施形態では、刺激は電気エネルギーのみに限定される(例えば、磁気エネルギーまたは他のタイプのエネルギーは適用されない)。末梢刺激は、経皮刺激、および/または埋め込み刺激を含み得る。
【0141】
一部の実施形態では、刺激は、求心性神経および/または遠心性神経を含む末梢神経の非侵襲性経皮電気的パターン化刺激またはバースト刺激を含む。理論によって制限されないが、末梢神経のバースト刺激は、従来のまたは連続的な刺激と比較して、思いがけなく、より大きな有効性、より大きな可塑性、許容度または許容性の向上、慣れの影響の減少、快適性の向上、および/または同じ有益な効果を達成するのに必要な治療時間の短縮のうちの1つ以上をもたらし得る。求心性神経を含む末梢神経のバースト刺激は、場合によっては、1つ以上の中枢神経系(例えば、脳および/または脊髄)回路の可塑性を遠隔で加速することによって、言い換えれば、例えば、約または少なくとも約6時間、12時間、24時間、2日間、3日間、4日間、5日間、6日間、7日間、2週間、3週間、1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月、9ヶ月、12ヶ月、18ヶ月、24ヶ月、36ヶ月、さらにそれ以上のように、刺激セッションの持続時間よりはるかに長い期間にわたって神経回路に可塑性を作り出すことによって、より有効な治療を提供し得る。場合によっては、末梢刺激は、中心刺激(例えば、経頭蓋刺激および/または脊髄刺激)よりもユーザにとってより便利で快適であり得、そして家庭および携帯しての使用にさらに適し得る。
【0142】
一部の実施形態では、バースト刺激はシータバースト刺激を含む。シータバースト刺激(TBS)は、バースト間間隔を変えることによって分離された高周波パルスを使用するパターン化された形態の反復刺激である。もともと海馬学習や記憶研究における長期増強の誘導のために使用されていた反復磁気刺激(rTMS)の形でのシータバースト刺激は、運動、感覚および視覚皮質においてヒトの可塑性を非侵襲的に誘導することが実証されている。刺激の持続時間および継続性を含む様々なパラメータに応じて、シナプス効力の代用尺度である長期増強または長期抑制(LTP/LTD)様効果が観察され得る。セッション数および個々の刺激セッション間の間隔もまた、誘導反応の持続時間に影響を及ぼし得る。刺激前または刺激中の筋弛緩のレベルもまた、結果として生じる可塑性誘導の方向または振幅に影響を及ぼす可能性があり、これは、前のシナプス活動に応じて可塑性の閾値を調整する恒常性メカニズムが整っていることを示唆する。シータバースト刺激で実証された神経系による可塑性の効果的な調節は、様々な神経障害の治療に大きな可能性を秘めており、他の中枢神経回路にも影響を及ぼす可能性がある。
【0143】
一部の実施形態では、シータバースト刺激は、断続的シータバースト刺激(iTBS)、連続シータバースト刺激(cTBS)、および中間シータバースト刺激(imTBS)の形態をとり得る。iTBS、cTBS、およびimTBSの非限定的な例を図14Aに示す。各々は、200ミリ秒(5Hz)のバースト間間隔で繰り返された50Hz(各刺激間に20ミリ秒)での3刺激のバーストを含むTBSの例を示す。iTBSのパターン例では、約2秒のTBS列が約10秒ごとに合計190秒(600パルス)繰り返される。imTBSのパターン例では、約10秒のTBS列が15秒ごとに合計11秒(600パルス)繰り返される。cTBSパターンでは、中断されていない40秒のTBS列が与えられる(600パルス)。バーストパターン(または2つ以上のバーストパターンの組み合わせ)は、所望の臨床結果に応じて選択することができる。場合によっては、cTBSは阻害的であり得、iTBSは興奮性であり得、そしてimTBSは興奮性でも阻害性でもあり得ないが、これはパラメータに応じて変動し得る。一部の実施形態では、交感神経および副交感神経のバランスを回復または改善することに関して、第1の神経(例えば、正中、尺骨、または橈骨神経)の阻害性刺激は、単独で、または第2の神経(例えば、正中、尺骨、または橈骨神経)の興奮性刺激と組み合わせて使用され得る。一部の実施形態では、神経の阻害性または興奮性刺激は、刺激波形の周波数またはパルス幅を調整することによって制御することができる。
【0144】
一部の実施形態では、各バーストは、約または少なくとも約2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、30、40、50、60、70、80、90、100、またはそれ以上の刺激などの複数の刺激を含むことができる。各バーストは、同じ、または可変数の刺激を持つことができる。
【0145】
一部の実施形態では、バースト内周波数は、約または少なくとも約10Hz、20Hz、30Hz、40Hz、50Hz、100Hz、250Hz、500Hz、1kHz、またはそれ以上であり得る。一部の実施形態では、バースト内周波数は、約10Hzから約20kHzの間で変動し得る。バースト中にバースト内周波数をランダムまたは擬似ランダムに変化させて、慣れを軽減し、および/または快適さを向上させることもできる。他の実施形態では、バースト内周波数は、振戦低減を最大にし、快適性を改善し、慣れを低減し、および/または電気刺激装置の電力消費を低減するために、約10Hzから約250Hzの間、約50Hzから約150Hzの間、約10Hzから約100Hzの間、約100Hzから約150Hzの間、約50Hzから約250Hzの間、または約50Hzから約1000Hzの間であり得る。
【0146】
一部の実施形態では、バースト間周波数は、約4Hz(各バーストの開始間は250ミリ秒)から約12Hz(83ミリ秒)の間、約4Hz(250ミリ秒)から約8Hz(142ミリ秒)の間など、約1Hzから約20Hzの間であり得、これは約5Hz(200ミリ秒)を含む、または一部の実施形態では、約3.5Hzから約7.5Hzの間、または約6Hzから約10Hzの間のシータ帯域周波数として一般に認められている。
【0147】
一部の実施形態では、セッション間頻度は、例えば約5分から約120分、約5分から約60分、約10分から約30分、約10分から約30分など約1分から約12時間であり得、約5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、75、90、120、180、240、300、360、420、480、540、600、660、または720分、または前述の値の2つを組み込んだ範囲であり得る。
【0148】
一部の実施形態では、約30分などの期間にわたって約0.2Hzで繰り返される短間隔周波数(1.5ミリ秒の刺激間間隔)での4つのパルスを含む、4パルス刺激として知られる反復パターン刺激を使用することができる。4パルス刺激は、長期の可塑性を誘導することが示されている。このパラダイムを使用したバースト内周波数の変動は、誘導可塑性の方向に影響を与える可能性がある。これらの反復小パルスは、2~10パルス以上の間のどこかであり得る。
【0149】
シータバースト刺激以外の他のバーストパターンもまた、代わりにまたはそれに加えて使用することができる。一部の非限定的な例は、デルタ(0~4Hz)、アルファ(8~12Hz)、ベータ(12~30Hz)、およびガンマ(30~100Hz)のバースト間周波数を含む。一部の実施形態では、末梢バースト刺激は、正弦波、正方形、長方形、三角形、のこぎり歯、または他の波形を含み得る。
【0150】
一部の実施形態では、バースト経皮末梢電気刺激は、場合によってはバースト経皮末梢磁気刺激よりも好ましい場合がある。場合によっては、経皮的末梢電気刺激は、磁気シータバーストがより多くの電力を必要とする可能性があり、および/またはより重い装置となる可能性があるため、有利であり得る。電気刺激は、電極間の電流の流れを制御することによって、または経皮針を使用することによって、在宅での携帯使用、および標的神経のより正確な刺激を有利に提供することができる。一部の実施形態では、刺激は、対象に関連する生理学的もしくは病理学的パラメータまたは症状の測定周波数について測定/調整することなく、固定バースト周波数で提供することができる。
【0151】
一実施形態では、図14Bおよび図14Cに示すように、可塑性の持続時間を延長するために個々の刺激セッションのタイミングを変えることができる。休止間隔は、約1分の下限閾値と約24時間の上限閾値との間であり得る。シータバースト刺激セッション間間隔の変動は、刺激セッション間の間隔を変動させるという重大な影響を及ぼし得る。症状改善期間の延長は、慢性的な反復刺激の耐容性を改善する可能性がある。一部の実施形態では、休止間隔は、下限閾値と上限閾値との間でランダム化することができる。一部の実施形態では、休止間隔は、下限閾値または下限値から上限閾値または上限値まで増加させることができる。一部の実施形態では、休止間隔は、上限閾値または上限値から下限閾値または下限値まで減少させることができる。一部の実施形態では、休止間隔は、所定のアルゴリズムまたはスケジュールによって変更することができる。一部の実施形態では、休止間隔は、加速度計または筋電計からのデータに基づくフィードバックに基づいて変更することができる。一部の実施形態では、休憩期間は、症状の追跡および/または自律神経活動の尺度(例えば、HRV、EDA)に基づくフィードバックに基づいて変更することができる。間隔は、ディープラーニング、ナイーブベイズネットワーク、ニューラルネットワークなどの機械学習アルゴリズム、および/またはクラウドソース化された、またはリモートの集中型サーバ(例えば、クラウド)に記憶されたデータ(例えば、装置使用、症状追跡、自律神経活動)を備えた複数のユーザから他の方法で集約されたデータセットを使用して最適化され得る。
【0152】
一部の実施形態では、手首の神経(例えば、橈骨神経、正中神経、および/または尺骨神経)の交互刺激は、律動パターンまたは疑似ランダムパターンで実行され得る。理論によって制限されないが、律動パターンでのバーストは、皮質脊髄回路の可塑性を促進することによって治療上の利益の効率を改善することができる。律動または疑似ランダムなバーストパターンは、絶え間ない刺激で起こる神経の慣れを防ぐことができる。一部の実施形態では、律動バーストパターンは、P波、R波、QRS群、STセグメント、T波などの心周期の電気的位相を含むがこれらに限定されない、システム内の心拍数モニタによって検出される心律動事象に同期させることができる。理論によって制限されないが、正中、橈骨、および/または尺骨神経への交互のバースト刺激は、延髄中の孤束核(NTS)への入力を増加させ、かつ背側迷走神経核(DVN)および疑核(NA)の阻害性迷走神経遠心性ニューロンに投射するNTSニューロンの活動に影響を及ぼす相乗効果を有することによって不整脈を防ぐことができる。これらの迷走神経遠心性ニューロンは、迷走神経緊張を洞房結節(SA)に伝播させる。正中神経、橈骨神経、および/または尺骨神経の交互のバースト刺激はまた、尾側延髄腹外側野(CVLM)に興奮性投射を送達するNTSニューロンを興奮させ得る。CVLMは、脊髄の中間外側細胞柱(IML)における交感神経節前ニューロンへの興奮性駆動の主な供給源である延髄吻側腹外側部(RVLM)を阻害する。そのような反射ループの概略図を図14Dに示す。この阻害は交感神経活動を減少させる可能性がある。この刺激パターンは交感神経迷走神経のバランスを改善して心不整脈の負担を減らすことができる。
【0153】
理論によって制限されないが、正中、橈骨、および/または尺骨神経への交互のバースト刺激は、交感神経活動を阻害するか頸動脈洞神経を介して迷走神経緊張を調節するために腕神経叢を介して星状神経節への入力を増加させる相乗効果を有することによって、不整脈を防ぐことができる。
【0154】
一部の実施形態では、腕神経叢での相乗効果のために、正中、橈骨、および/または尺骨刺激を組み合わせることができる。正中神経、橈骨神経、および尺骨神経は、腕神経叢の様々なレベルの脊髄を神経支配し、経路は様々な標的部位および器官に進む。一部の実施形態は、腕神経叢内の標的化を制御して、星状神経節と交感神経の連鎖につながる、腕神経叢における神経活性化の相乗効果を提供するために、正中神経、橈骨神経、および/または尺骨神経に対して同時にまたは遅延して時限刺激を提供し得る。この相乗効果は、より少ない不快感およびより少ない電流(例えば、より少ない電力でより長いバッテリ寿命)でより大きな治療上の利益という利点を提供することができる。刺激のタイミングは同時であってもよく、または信号が腕神経叢に同時に到達するように異なる神経の伝導速度の差を考慮するために遅延を伴ってもよい。理論によって制限されないが、腕神経叢の同時またはほぼ同時の活性化は、星状神経節への経路を介した刺激を増強し、そして交感神経系の効果(例えば、阻害)を増大させることができる。例えば、橈骨神経、正中神経、および尺骨神経の感覚神経の平均伝導速度は、それぞれ約51ミリ秒、60ミリ秒、および63ミリ秒である。1パーセンタイル女性から99パーセンタイル男性までの手首から腕神経叢までの神経の長さの変化に基づくと、これには正中神経と橈骨神経との間で約1.3から約1.7ミリ秒の、正中神経と尺骨神経との間で約0.3ミリ秒から約0.4ミリ秒の、および橈骨神経と尺骨神経との間で約1.6ミリ秒から約2.1ミリ秒の刺激の遅延が必要となる。一部の実施形態では、第1の神経と第2の神経との間の刺激の遅延は、約0.3ミリ秒から約1.7ミリ秒、または約0.2ミリ秒から約2.0ミリ秒、約1.2ミリ秒から約2.1ミリ秒、または約1ミリ秒から約2ミリ秒であり得る。正中神経、橈骨神経、および/または尺骨神経の組み合わせにおけるより低い閾値の刺激は、有利には、個々の神経に対するより低い閾値の刺激を必要とし得、その結果、腕神経叢において相乗効果をもたらす。一部の実施形態では、システムは、刺激源を神経の遠位部分に適用し、測定電極を神経の近位部分に適用して、個体の神経伝導速度を測定し、かつ個別の測定に基づいて時限遅延を変更することによる神経伝導速度測定を含み得る。
【0155】
一部の実施形態では、システムは、律動または疑似ランダムであり得る交互パターンで神経(例えば、橈骨、正中、および/または尺骨)を刺激するための電極構成を含み得る。周期的な交互パターンの場合、交番周波数は1~100Hzの範囲内とすることができ、これは皮質脊髄回路の可塑性を促進することによって治療効率を改善することが示されている。一部の実施形態では、装置の実施形態は、神経の刺激(例えば、橈骨、正中、および/または尺骨)を交互にし、例えば、心拍変動(HRV)を測定し、絶対低周波(LF)と絶対高周波(HF)パワーの比、つまり本明細書の他の箇所に記載されているように測定されたHRVのLF/HFとして交感神経迷走神経バランスを分析することにより、自律神経バランスの評価に基づいて刺激パラメータ(例えば、刺激周波数、交流周波数、刺激期間、刺激時間)を調整するための電極構成を含み得る。
【0156】
図14E図14Gに概略的に示すように、装置の一態様は、2つの神経(例えば、正中および橈骨)を電気的に刺激するための3つの電極のみの使用であり、電極302、304が2つの神経306、308のそれぞれの皮膚上またはこれに近接して配置され、第3の電荷均衡電極300が2つの神経306、308と対向する身体部分(例えば、手首)に配置される。図14Eは、ユーザの手首の背側(左側)および腹側(右側)を示し、2つの神経を標的とするためのユーザの手首上の3つの電極300、302、304の配置の一例を示す。3つの電極300、302、304はすべて、図14Eに概略的に示すように、神経の標的刺激を調節するために単一の制御装置301に動作可能に接続されてもよい。一部の実施形態では、第3の電極300(例えば、電荷均衡電極)は、腕または手首の背側の長手方向中央線のほぼ上に配置され得る。一部の実施形態では、第1の電極302は、正中神経を標的とするために、腕または手首の腹側の長手方向中央線のほぼ上に配置することができる。一部の実施形態では、第2の電極304を電荷均衡電極300と腹側に配置された電極302との間に配置して橈骨神経を標的にすることができる。一部の実施形態では、尺骨神経を標的とするためにさらに別の電極(図示せず)を配置することができ、または尺骨神経を標的とする電極を、正中神経306を標的とする第1の電極302または橈骨神経308を標的とする第2の電極304のいずれかと置き換えることができる。
【0157】
図14Fおよび図14Gは、患者の手首や腕を遠位から見た横断面における電荷均衡電極300、腹側に配置された電極302、ならびに正中神経206および橈骨神経208に対する橈骨電極304の位置を示す。電極200、202、204は、腕または手首の横断面への射影において、正中神経306と電荷均衡電極300の中心を結ぶ線と、正中神経306と腹側に配置された電極303の中心を結ぶ線との間に90度から180度の角度α1があるように配置され、橈骨神経308と電荷均衡電極300を結ぶ線と、橈骨神経308と橈骨電極304を結ぶ線との間に90度から180度の角度α2があるように配置される。角度α1およびα2はそれぞれ、反時計回りの方向(α1が図14Fに示されるように)または時計回りの方向(α1が図14Gに示されるように)のいずれかで測定され得る。より一般的には、電極300、302、304は、電極300、302、304が患者の手首の周囲に周方向に配置されたときに各電極対とその標的神経との間に形成される角度の1つが約90度から180度の間であるように、所定の距離だけ離間して配置することができる。そのような配向は、電極対の各電極が一般的に標的神経の両側に配置されることをもたらす。言い換えれば、標的神経は、電極対のほぼ間に位置している。
【0158】
個々の刺激セッションの効果は、プライミング刺激セッションによって調節されてもよく、その一例を図15に示す。シナプス活動の以前の履歴は、Bienenstock-Cooper-Munro(BCM)理論による可塑性誘導パラダイムへの応答に影響を与える可能性がある。プライミングプロトコルは、強度(例えば、刺激振幅)、刺激周波数、刺激の持続時間、および/またはプライミングセッションと刺激セッションとの間の持続時間間隔を含む刺激波形パラメータを、その後のシータバースト刺激セッションに対する効果のその後の変動と共に変化させ得る。波形パラメータは、快適であるかまたは快適さを増すように変化し得る。固定周波数での反復末梢神経刺激は、周波数が低い(3~10Hz)かより高い(50~200Hz以上)かによって、神経回路の興奮性(例えば、運動皮質または脊髄反射回路)に影響を及ぼし得る。例えばシータバーストなどのバースト刺激による脳の興奮性に対する所望の効果に応じて、例えば固定周波数刺激を使用した初期プライミングセッションは、塑性効果の方向またはレベルを制御することを可能にし得る。一部の実施形態では、各刺激セッションはプライミングセッションによって先行されてもよい。一部の実施形態では、プライミングセッションは、他のすべての刺激セッションなどの刺激セッションのすべてではなく一部のみに先行してもよい。一部の実施形態では、プライミングセッションは、加速度計、ジャイロスコープ、筋電計、HRVモニタ、またはEDAセンサなどのセンサからのフィードバックに基づいて送達されてもよい。例えば、センサによって測定された交感神経活動の量がその日の平均交感神経活動よりも多いまたは少ない場合、プライミングセッションの期間は増加する可能性がある。プライミングセッションの持続時間は、刺激セッションの持続時間まで、または約、少なくとも約、または最大で約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、または90%、または刺激セッションの持続時間であり得る。一部の実施形態では、バースト内刺激周波数(201)は、電力を節約するため、または刺激の有効性を向上させるために変更することができる。バースト内周波数は、例えば、本明細書の他の箇所に開示されている通りであり得る。
【0159】
一部の実施形態では、刺激周波数は、ホワイトノイズ(等しいエネルギーを有する全ての周波数、周波数には依存しない)、グレーノイズ(等しい音量を有する全ての周波数、周波数に依存しない)、ピンクノイズ(パワーは1/fに比例した割合で減少)、レッドまたはブラウンノイズ(パワーは1/f2に比例した割合で減少)、またはブラックノイズ(パワーは1/f3に比例した割合で減少)を含むノイズ分類によって決定され得る。
【0160】
一実施形態では、治療ユニットは、柔軟な気密材料でできている膨張式リストバンドまたはアームカフの形態をしている。膨張式バンドまたはカフは、特に乾燥電極または皮膚インタフェース材料に関しては、皮膚と電極との間の良好な接触および適合性を維持するために一貫した圧力を加えるために有利である。気泡を空気で満たし、圧力を増大させて接触表面積を増大させるために、ユーザによって小型ポンプが作動され、それによって不快感が軽減される。一部の実施形態では、ポンプはリストバンドに組み込まれており、ユーザによって機械的に作動させるか、またはバッテリによって電気的に駆動することができる。他の実施形態では、ポンプはリストバンドから分離することができる。一部の実施形態では、バンドまたはカフは血圧センサを含むことができる。
【0161】
一実施形態では、膨張式リストバンドまたはアームカフを有する治療ユニットは、刺激電子機器および電極に加えて、心拍数、血圧、または他の心臓パラメータを測定するためのピエゾ抵抗トランスデューサなどの圧力センサを有する。血流の音を検出するためのマイクロフォンなど、他のタイプの心臓または血圧センサも使用することができる。膨張式バンドまたはカフは、肢部内の血流を遅くする圧力まで膨張することができ、次いで、血流がマイクロフォンによって検出されるまで圧力を下げることができる。図10A図10Dに示すように、ユニットを手首、前腕、肘、上腕、または脇の下に装着して、刺激および血圧測定のための理想的な標的を見つけることができる。一部の実施形態では、システムは機能を別々の装置に分離することができる。例えば、腕に装着した装置を使用して正中神経を刺激することができ、腕に装着した腕カフを使用して血圧を測定することができ、心臓を覆って胴体に装着した装置を使用して心拍数、心拍数変動、および同期不全を測定できる。図10Aは、リストバンド装置1090の一実施形態を示す。図10Bは、前腕にある腕カフ1092の実施形態を示す。図10Cは、肘にある腕カフ1092の実施形態を示す。図10Dは、脇の下または上腕にある腕カフ1094の実施形態を示す。
【0162】
一実施形態では、圧力は、柔らかい連続気泡フォームまたは一連のミニスプリング(例えば、ポゴピン)のような、バンド内のコンプライアント材料によって提供される。
【0163】
図5A図5Iは、使い捨てバンド500と、使い捨てバンド500に可逆的に取り付けることができる治療ユニット502とを含む二部構成治療システムの別の実施形態を示す。使い捨てバンド500は、バンドの皮膚に面する表面または内側表面に配置された2つ以上の電極504と、治療ユニット502を可逆的に受容するためのレセプタクル506または受容部分とを有することができる。バンド500内には、治療ユニット502がレセプタクル506内に配置されているときに電極504を治療ユニット502に電気的に接続するために電極504からレセプタクル506まで延びる可撓性回路505を形成するワイヤおよび/または導電トレースがある。一部の実施形態では、可撓性回路505のワイヤおよび/または導電性トレースは、その屈曲能力を向上させるために波状または波形パターンで配置される。図5Fに示すような一部の実施形態では、レセプタクル506は、治療ユニット502からピン509などの1つ以上の相補的電気接点を受けるための、1つ以上のピン穴507などの1つ以上の電気接点を有することができる。可撓性回路505は、ピンがピン穴に挿入されたときに電気的接続が形成されるように、ピン穴507まで延びることができる。一部の実施形態では、図5G図5Iに示すように、レセプタクル506は、クリップ、保持リップ、磁石、スナップフィット、ツイストフィット、フック、ラッチ、スライド機構、または治療ユニット502をバンド500に可逆的に固定するための他の固定機構を有することができる。図5Gは、治療ユニット502の周囲にスナップフィットを形成するためにバネ仕掛けであってもなくてもよいクリップ511を示す。図5Hは、治療ユニット502がレセプタクル506に挿入された後に治療ユニット502を保持するために使用することができる、レセプタクルの開口部の周りの可撓性リップ513を示す。図5Iは、治療ユニット502およびレセプタクル内の相補的位置に配置することができる磁石515を示す。一部の実施形態では、クリップ、磁石、スナップフィット機構、ツイストフィット機構、フック、または他の固定機構は、金属または他の導電材料で作られ、ワイヤおよび/または導電トレースを介して電極に電気的に接続され得る。電極504は乾式電極とすることができ、または導電性ゲルで被覆することができる。
【0164】
一部の実施形態では、治療ユニット502は、充電式であり得るバッテリと、電極を通して患者の神経に電気刺激を送達するための電子機器とを含み得る。電子機器は、刺激装置およびマイクロ制御装置を含むことができ、メモリおよび、血圧センサおよび/または心拍数および/または心拍数変動および/または電気皮膚反応を測定するためのセンサなどの1つ以上のセンサ、または非同期性を測定するための1つ、2つ、またはそれ以上のECG電極も含むこともできる。一部の実施形態では、装置は、皮膚インタフェースに対する電極の完全性を評価するために電極のインピーダンスを感知することができる。一部の実施形態では、バンドと治療ユニットとの間の接続の完全性を検出するための電気的表示(例えば、チップの読み取り、コネクタ上のセンサの押し込みなど)があり得る。一部の実施形態では、治療ユニット502は、治療ユニット502がバンド500に接続されているかどうか、治療ユニット502のバッテリに残っている電力、刺激が伝達されているかどうか、刺激レベル、データが送信されているかどうか、センサ測定が行われているかどうか、較正ルーチンが実行されているかどうか、治療ユニット502が初期化されているかどうか、治療ユニット502がスマートウォッチおよび/またはスマートフォンのような他の装置と対になっているかどうか、バッテリが充電されているかどうかなど、治療ユニット502の状態を示すことができる1つ以上のLED、ミニOLEDスクリーン、LCS、またはインジケータ501を有することができる。一部の実施形態では、治療ユニット502はまた、1つ以上のボタンなどのユーザインタフェース503を含み得る。
【0165】
図5Bは、ユーザに送達することができる手首装着型装置を含むキットを示す。キットは、異なるサイズ、形状、色などの複数のバンド500を含み、足首、腕、指、および脚などの異なる手首サイズまたは他の身体部分サイズを有する患者に対応し、二次ディスプレイ(例えばスマートウォッチ)のような異なるタイプの接続付属品を収容することができる。一部の実施形態では、キットは、手首サイズの大部分に対応するための3つのバンドを有する。一部の実施形態では、キットは、ほとんどのサイズをカバーするために2つのバンドを有する。さらに、キットは、1つ以上の電子ユニット502を含み得る。キット内に複数の電子ユニット502が設けられている場合、異なる使用タイプに対応するために、異なる電子ユニット502のバッテリ容量は異なり得る。例えば、比較的小容量のバッテリをオンデマンド刺激に使用することができ、一方、比較的大容量のバッテリをマイクロ制御装置によって駆動される自動および/または応答刺激に使用することができる。一部の実施形態では、単一の電子ユニットのみが提供される。他の実施形態では、単一のバンドが提供されながらも複数の電子ユニットが提供される。キットはまた、治療ユニット502を充電するための充電器508を含み得る。一部の実施形態では、充電器508は、治療ユニット502を誘導的に充電することができる。他の実施形態では、充電器508は、治療ユニット内の電源ポートに挿入することができる充電ケーブルで治療ユニットを充電することができる。一部の実施形態では、治療ユニット502は、充電のために充電器508とドッキングすることができる。
【0166】
図5Cは、アップルウォッチなどのスマートウォッチ510が、治療ユニット502を有してもよいバンド500に可逆的または恒久的に固定されている実施形態を示す。一部の実施形態では、スマートウォッチ510は、治療ユニット502のためのディスプレイおよびユーザインタフェースを提供してもよい。スマートウォッチ510は、ブルートゥースまたはWi-Fiを介するなどの無線で、またはスマートウォッチ内のデータポートおよび治療ユニット502内のデータポートを介する直接接続で、治療ユニット502と通信することができる。一部の実施形態では、電子ユニット502および/またはスマートウォッチ510は、本明細書に記載されるように、スマートフォン512と通信して、データを送信し、または治療ユニット502および/またはスマートウォッチ510上のソフトウェアおよび/または刺激パラメータを更新し得る。一部の実施形態では、スマートウォッチ510がバンド500に可逆的に取り付け可能である一方で、バンド500と治療ユニット502とは恒久的に固定されるかまたは互いに一体化される。スマートフォン512および/またはスマートウォッチ510は、治療ユニット502とインタフェースをとるように構成された、クラウドまたはコンピュータを通してダウンロードすることができるアプリケーションを含むことができる。
【0167】
図5Dおよび5Eは、装着型二部構成システムを一日を通して装着および使用できることを示している。治療ユニットのバッテリに残っている電力が少ないとき、治療ユニット502は充電器508で再充電することができる。充電は夜間またはバッテリの残量が少ないとき、あるいは希望するときに実行できる。一部の実施形態では、治療ユニットは充電前にバンドから取り外すことができる。一部の実施形態では、ユーザが常に治療ユニットを装着することができるように、ユーザは低充電治療ユニットを高充電治療ユニットと交換することができる。
【0168】
一部の実施形態では、図5Bに示すキットは診断試験キットとして使用することができる。患者は、最初は、約、少なくとも約、または約1日から約90日まで、あるいは約または少なくとも約1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月、9ヶ月、12ヶ月、またはそれ以上、あるいは所定の期間、治療システムを装着することができる。この初期期間は、心律動、血圧プロファイル、または他の関連する測定値、または他の疾患を特徴付け、そして患者が様々な治療にどれだけ反応しているかを特定するため、試験期間中の治療に対する患者の反応を評価するために、治療ユニットおよび/またはバンド内のセンサでデータを収集するために使用される。センサデータは、治療ユニット内のメモリに記憶することができ、および/またはネットワークを介してクラウドまたはサーバもしくは他のコンピューティング装置に送信することができ、それらは患者の医師、会社または他の第三者によってアクセスすることができる。
【0169】
神経心臓回路に関連する交感神経および/または副交感神経系の活動を減少させることを含むがこれに限定されない、交感神経および副交感神経系の活動のバランスを回復することによって心機能不全に関連する障害を治療できる方法論のさらなる具体例を本明細書に開示する。
【0170】
図16Aは、本発明の一部の実施形態による、心不整脈、高血圧または他の心機能不全を治療するための治療プロトコルの一例のフローチャートを示す。任意の数の工程を、フィードバック情報を受け取るためおよびそのような工程の実行のためのメモリおよびプロセッサを含む装置によって自動的に実行することができる。一部の実施形態では、1600で、交感神経および副交感神経活動は、心拍数、心拍数変動、および/または皮膚電気活動を測定するセンサを使用して、ベースライン期間中(例えば、一部の実施形態では約24時間~約30日)に評価できる。1602で、心拍数およびHRVは様々な方法で測定することができ、交感神経の過活動または活動低下を、手首に装着した装置の光学センサ、電気活動の変化を測定するチェストストラップまたはパッチ、指に装着したパルスオキシメータなどで評価する。交感神経および副交感神経活動はまた、本明細書の他の箇所に記載されているように、皮膚電気活動センサを使用して測定することができる。一部の実施形態では、単一の装置は、交感神経活動および副交感神経活動の推定を改善するために、光学的心拍数センサおよび皮膚電気活動センサの両方を含むことができる。1604で、(例えば、HRVおよび/または他の自律神経測定値から)異常な交感神経活動が識別された場合、正中、尺骨、または橈骨神経刺激(または、例えば交感神経活動に関連して本明細書に開示するような他の神経の刺激)を開始することができる。1606で、異常な副交感神経活動が識別された場合、耳珠神経刺激(または、例えば副交感神経活動に関連して本明細書に開示するような他の神経の刺激)を開始することができる。1607で、ある期間(例えば、約1~4週間)の刺激の後、制御された自律神経機能の測定値、例えばHRVを再評価することができる。
【0171】
一部の実施形態では、交感神経および副交感神経の活動は、特定の神経標的、刺激波形、刺激パラメータ、または刺激の投与(例えば、時刻、刺激の持続時間、1日または週あたりの回数)を選択するために初期刺激の前に評価される。他の方法では、1608で、デフォルト刺激が試行的に適用され、1609で、HRVが測定され、選択された治療期間中(例えば、約1~4週間)に症状が追跡される。許容可能な治療反応がある場合、1610で治療は継続され、1612で、個人が治療に反応しない場合にのみ、図16Bおよび図16Cに示すように、交感神経および副交感神経活動が評価される。1614で、異常な副交感神経活動が識別された場合、耳珠神経刺激(または、例えば、副交感神経活動に関連して本明細書に開示するような他の神経の刺激)を開始することができる。1618で、正中神経(または例えば、交感神経活動に関連して本明細書に開示されているように他の神経の刺激)にもかかわらず異常な交感神経活動が識別された場合、正中神経の刺激パラメータを修正することができる。次いで、1620で、HRVまたは他のパラメータを、その後の治療期間に(例えば、場合によっては約1~4週間)測定することができる。他の方法では、自律神経活動の変化を測定するために、治療の初期期間中、交感神経および副交感神経活動を1日または複数日にわたって評価する。
【0172】
一部の実施形態では、個人が治療に反応しない場合、セッション期間(例えば、20から120分)、1日または1週間あたりのセッション数(例えば、1日に2回から1週間に3回)、昼または夜の刺激の時刻、刺激頻度、バーストまたは他の刺激パターン(バースト周波数を含む)、神経標的(例えば、正中または耳珠)、および/または刺激振幅などの増加または減少、あるいは他の方法での任意の数の変更を含むがこれらに限定されずに、いくつかのパラメータを治療を修正するために変更することができる。
【0173】
図17は、本発明の一部の実施形態による、心機能不全を有する対象についての診断、評価、および処方のフローチャートを概略的に示す。医師は、対象を診断し、次いで、例えば連続的または断続的な手首装着型HRVモニタなどの自律神経系活動モニタ装置、およびAF事象を含む心臓症状を追跡するためのアプリケーションを含み得る評価キットを利用することができる。医師は評価データを確認し、評価データに基づいてカスタマイズされた治療法を処方することができる。
【0174】
一部の実施形態では、治療セッションの頻度および期間、または治療ユニットによって適用される波形の特性(例えば、パルス幅、周波数、および振幅)は、治療システムによって収集および記憶された測定値およびデータに基づいて調整され得る。例えば、装置によって毎日収集され記憶される心不整脈、心同期不全、および/または血圧の測定値が特定の閾値を超える場合、治療セッションの頻度は増加する可能性がある。心不整脈、心同期不全、および/または血圧が閾値を下回ると、図9Aに示すように、治療の頻度は減少する可能性がある。R波対R波(RR)間隔の変動性(心拍数変動とも呼ばれる)を含むがこれに限定されない、心不整脈および/または心同期不全の既存の分類に基づいて複数の閾値を確立することができる。例えば、RR間隔が例えば特定の閾値を超えて増加した場合、刺激を適用したり、パラメータを修正したりすることができる。例えば以下の表に記載されているように、例えば高血圧または心房細動の既存の分類に基づいて、複数の閾値を設定することもできる。
【表1】
【0175】
心房細動については、測定基準は心房細動症状スコアまたは心房細動負荷を含むことができ、これは持続期間、頻度、および他の負荷変数の集合であり得る。測定基準はまた、例えば、鬱血性心不全の有無、高血圧、75歳以上の年齢、真性糖尿病、以前の発作、TIA、または血栓塞栓症、血管疾患(例えば末梢動脈疾患、心筋梗塞、大動脈プラーク)、65から74歳の年齢、または性別カテゴリ(例えば、男性または女性)などの任意の数の発作危険因子を考慮に入れた、例えばCHA2DS2-VAScスコアなどのCHADSスコアを含む心房細動に関連する発作危険因子スコアを含み得る。
【0176】
一部の実施形態では、心不整脈および/または心同期不全測定値は、胸部またはその近く、あるいは手首部のセンサを用いて測定することができ、これには、橈骨パルス、または足の足背パルスまたは後脛骨パルスが含まれるがこれらに限定されない。
【0177】
一部の実施形態では、心臓モニタは、閉ループシステムにおいて、徐脈を検出し、振幅または周波数、あるいは刺激が適用される期間または回数などの刺激のパラメータを調整することができる。迷走神経緊張が高すぎると徐脈が生じることがあるので、場合によっては過剰刺激を制限することが目的となり得る。
【0178】
一部の実施形態では、患者はキットを医師またはキットの製造業者に返却することができ、データはシステムから取り出されて患者の医師に送信され得る。
【0179】
システムからのデータを使用して、医師は患者の心不整脈または心同期不全、または高血圧、血圧または他の疾患を特徴付け、診断を生成し、そして適切な治療システムおよび刺激パラメータの選択、および/または薬物療法の変更を含み得る患者の適切な治療を決定することができる。
【0180】
図6は、装着型治療装置を使用して高血圧または他の疾患または状態を治療するためのシステムの実施形態を示す。上述のように、治療装置は、バンド500および治療ユニット502の2つの部分を有することができる。上述のキット内の充電器に代わることができる基地局600を、治療装置の充電と、治療装置とクラウド602とのデータの送受信との両方に使用することができる。基地局600と治療装置との間の通信は、ブルートゥースおよび/またはWi-Fiなどを介して無線であり得、基地局600とクラウド602との間の通信は、3Gまたは4G接続を使用するセルラネットワークを介するもの、または、例えば、DSL、ケーブル、イーサネットなどを使用したインターネットへの有線接続によるものであり得る。医師または他のユーザは、オンラインポータルまたは医師のウェブポータル604を使用してクラウド602に記憶されているデータを閲覧および/または取得することができる。さらに、医師は、ウェブポータル604を使用してクラウド602および基地局600を介して治療ユニット502上の治療計画を処方および/または修正することができる。
【0181】
一部の実施形態では、基地局600は、約10MBから100MB/日、あるいは約10、20、30、40、または50MB/日であり得る、治療装置からの生データの送信のような、高帯域幅を必要とし得る比較的大量のデータを送受信するために使用される。一部の実施形態では、データは、基地局600のメモリに記憶され、送信帯域幅の拡大とともに、毎週または週に2回などの別の間隔で送信されてもよい。生データの高帯域幅送信は、通常の充電期間である夜間など、治療装置が充電されている間に毎日起こり得る。一部の実施形態では、生データは、クラウドおよび/または医師によって処理されて処理済データとなり、治療装置に送り返され得る。
【0182】
一部の実施形態では、システムは、患者のための二次ディスプレイおよびユーザインタフェースを提供するための、および治療装置をより容易に制御したり生データおよび処理済データを見たりするためのアプリケーションを実行するための、スマートフォンまたはタブレットなどのポータブルコンピューティング装置606を任意に含み得る。ポータブルコンピューティング装置は、刺激パラメータおよび投薬の調整など、患者または医師による治療装置への調整を行うために使用することができ、および、装置が使用された日時、エラー、振幅などの治療パラメータ、およびパラメータがいつ設定され送達されたかなどの装置に関するデータを含む装置状態データを、治療装置から受け取ることができる。一部の実施形態では、ポータブルコンピューティング装置606は、例えば、セルラネットワークを通じて、および/またはWi-Fiを使用するインターネット接続を通じて、クラウド602から処理済データを受け取ることができる。
【0183】
図7は、治療ユニット700、バンド702、および基地局704に含めることができる様々な構成要素を示す。これらの構成要素は、1つの特定の実施形態として上記および下記に詳細に記載する。例えば、治療ユニット700は、例えば、LEDとすることができる1つ以上のインジケータ706と、押しボタンとすることができるユーザインタフェース708とを含む。治療ユニット700はまた、刺激電子機器を有する刺激装置710を有することができ、電流および電圧を測定する能力を含み得る。治療ユニット700はまた、誘導性であり得る充電回路714を使用して再充電され得る、充電式であり得るバッテリ712を有し得る。治療ユニット710は、本明細書に記載の機能を実現するためのプログラムおよび命令を記憶し実行するためのプロセッサ716およびメモリ718をさらに含み得る。治療ユニット710はまた、血圧センサなどのセンサ720と、無線であり得、基地局704および/または二次ディスプレイ/コンピューティング装置と通信し得る通信モジュール722とを含み得る。
【0184】
バンド702は電極724を有することができ、識別情報を記憶するためのメモリを含むこともでき、または本明細書で説明するような他の何らかの形式の識別子726を含むこともできる。
【0185】
基地局704は充電回路728を含むことができ、充電回路728は誘導性でもよく、治療ユニット700上の相補型充電回路714に電力を送信することができる。基地局704はまた、命令およびプログラムを記憶し実行するためのプロセッサおよびメモリを有することができる。基地局704は、クラウドと通信するためのセルラであり得る通信モジュール732と、無線であり得、治療ユニットと通信するために使用され得る別の通信モジュール734とをさらに含むことができる。
【0186】
一部の実施形態では、装置は、心拍数モニタ、ECGモニタ、または身体に装着された他の心臓モニタ、または血圧計カフであり得、これらはそれぞれ一体型の神経刺激装置を含み得る。一部の実施形態では、神経刺激装置および心臓モニタおよび/または血圧装置は、無線で通信する別々の装置とすることができる。一部の実施形態では、装置は、数分、数時間、数日、数週間、および/または数ヶ月にわたって心臓の律動および/または血圧を測定し、患者の心不整脈、心同期不全、および/または血圧が上昇、下降、または同じままであるかどうかを判断することができる。一部の実施形態では、心律動および/または血圧測定値は、日、週、または月であり得る窓にわたって時間平均される。一部の実施形態では、運動センサ、IMU、またはGPSなどのセンサを使用して、心律動および/または血圧測定に影響を及ぼし得る、患者の活動を検出することができる。一部の実施形態では、患者が活動的であるときには、心律動および/または血圧測定は行われない。一部の実施形態では、心律動および/または血圧測定は、患者活動センサが患者が安静であると判断したときにのみ行われる。一部の実施形態では、センサは、電気皮膚反応を測定する電極とすることができ、電気皮膚反応はストレス、ならびに心律動、血圧、および/または交感神経活動の変化に相関し得る。一部の実施形態では、測定の一貫性を改善し、変動性を低減するために、心律動および/または血圧は同じ条件で毎日同じ時刻に測定される。一部の実施形態では、腕の1つの末梢神経、例えば正中神経、あるいは特定の神経位置、例えば指圧点または経絡を刺激するために、刺激装置を一方の手首または腕に適用する。
【0187】
他の実施形態では、図11に示すように、正中神経または指圧点などの手首および/または腕の神経を両側から刺激するために、刺激装置を手首/腕の両方に適用する。一部の実施形態では、装置は、手首、前腕、または上腕、あるいは膝の下や膝の上といった脚の周り、または足首の近く、あるいは耳の中または耳珠の上に装着することができる。一部の実施形態では、2つの両側性装置を同時に操作して両方の神経を同時に刺激することができる。各装置の刺激パラメータは同じでも異なってもよい。2つの装置は、装置間で波形を同期または相殺するために無線で通信することができる。波形は、心不全に関連する同期不全、不整脈、または心臓組織の収縮性などを改善するために心拍のペーシング(すなわち、左心室および右心室の収縮のタイミング)に影響を与えるように相殺されてもよい。場合によっては、心律動のペーシングは、迷走神経に関連する神経動力学に影響を及ぼすことによって、または心臓の直接的な電気的活動によって達成され得る。一部の実施形態では、2つの両側性装置は、一度に1つの装置だけが刺激を送達するように交互に動作することができる。交互装置は、時間、日、週、または月ごとに刺激を交互にすることができ、交替の頻度は血圧の測定値に基づいて修正することができる。
【0188】
一部の実施形態では、本明細書に記載の装置の刺激パラメータは、約1mAから約20mAの間、例えば約1mAから約10mAの間、または約2mAから約5mAの間の振幅である。一部の実施形態では、周波数は、約1Hzから約100kHzの間、約1Hzから約150Hzの間、または約1Hzから約10Hzの間であり得る。一部の実施形態では、パルス幅は約10μSから約1000μSであり得る。一部の実施形態では、パルス間隔は約0μSから約1000μSであり得る。一部の実施形態では、周波数は高周波刺激であり得、約100Hzから約100kHzの周波数を含む。一部の実施形態では、刺激波形は、二相性(すなわち、パルスの正の部分の実質的に直後にパルスの負の部分が続く、またはその逆)、または単相の方形波、正弦波、三角波、または他の形状である。他の実施形態は、最大振幅へのまたは最大振幅からのランプアップおよび/またはランプダウン期間があり得る曲線波形を含み得る。一部の実施形態では、刺激は対称的または非対称的である。一部の実施形態では、非対称波形は、正方向パルスの下の面積が負方向パルスの下の面積と等しくなり得るように電荷均衡になるように構成され得る。一部の実施形態では、先行パルスは正極性または負極性を有する。
【0189】
特徴または要素が本明細書で別の特徴または要素の「上に」あると言及される場合、それは別の特徴または要素の上に直接あることができ、または介在する特徴および/または要素も存在してもよい。対照的に、特徴または要素が別の特徴または要素の「上に直接」あると言及される場合、介在する特徴または要素は存在しない。特徴または要素が他の特徴または要素に「接続」、「取り付け」または「結合」されていると言及される場合、それは他の特徴または要素に直接接続、取り付けまたは結合されることができ、または介在する特徴または要素が存在してもよいことを理解されたい。対照的に、特徴または要素が他の特徴または要素に「直接接続」、「直接取り付け」または「直接結合」されていると言及される場合、介在する特徴または要素は存在しない。1つの実施形態に関して記載または図示されているが、そのように記載または図示された特徴および要素は、他の実施形態に適用することができる。別の特徴に「隣接して」配置された構造または特徴への言及が、隣接する特徴と重なり合うかまたはその基礎となる部分を有することができることも当業者には理解されよう。
【0190】
本明細書で使用する用語は、特定の実施形態を説明するためだけのものであり、本発明を限定するものではない。例えば、本明細書中で使用される場合、文脈上明らかに別段の指示がない限り、単数形「a」、「an」および「the」は複数形も含むことを意図する。本明細書で使用される場合、用語「含む」は、述べられた特徴、工程、動作、要素、および/または構成要素の存在を特定するが、1つ以上の他の特徴、工程、動作、要素、構成要素、および/またはそれらのグループの存在または追加を排除するものではないことをさらに理解されたい。本明細書で使用される場合、用語「および/または」は、関連する列挙された項目のうちの1つ以上の任意のすべての組み合わせを含み、「/」と省略されることがある。
【0191】
「下」、「上」などの空間的に相対的な用語は、本明細書では、説明を容易にするために、図に示されているような1つの要素または特徴と別の要素または特徴との関係を説明するために使用され得る。空間的に相対的な用語は、図面に描かれている向きに加えて、使用または動作中の装置の異なる向きを包含することが意図されていることが理解されよう。例えば、図中の装置が逆向きにされる場合、他の要素または特徴の「下」または「真下」として説明されている要素は、他の要素または特徴の「上」の向きになるであろう。したがって、「下」という例示的な用語は、「上」と「下」の両方の向きを包含することができる。装置は、他の方向を向いていてもよく(90度または他の向きに回転されてもよい)、本明細書で使用される空間的に相対的な記述子はそれに応じて解釈される。同様に、「上に」、「下に」、「垂直に」、「水平に」などの用語は、特に明記しない限り、本明細書では説明目的だけに使用される。
【0192】
本明細書では「第1」および「第2」という用語を(工程を含む)様々な特徴/要素を説明するために使用することができるが、文脈上別段の指示がない限り、これらの特徴/要素はこれらの用語によって限定されるべきではない。これらの用語は、ある特徴/要素を別の特徴/要素と区別するために使用することができる。したがって、本発明の教示から逸脱することなく、以下に説明する第1の特徴/要素は第2の特徴/要素と呼ぶことができ、同様に、以下に説明する第2の特徴/要素は第1の特徴/要素と呼ぶことができる。
【0193】
本明細書および添付の特許請求の範囲を通して、文脈が他の意味を要求しない限り、「含む」という語およびその変形は、方法および物品において様々な構成要素(例えば、装置および方法を含む組成物および装置)を共同で使用することができることを意味する。例えば、「含む」という用語は、任意の記載された要素または工程の包含を意味するが、他の要素または工程の排除を意味するものではないと理解される。
【0194】
本明細書および特許請求の範囲で使用される場合(実施例で使用される場合を含む)および他に明示的に指定されない限り、すべての数字は、その用語が明示的に現れない場合でも、「約」または「およそ」という語句を頭に付けたものとして読むことができる。「約」または「およそ」という語句は、記載された値および/または位置を記述するときに、記述する値および/または位置が、値および/または位置の合理的な予想される範囲内にあることを示すため使用することができる。例えば、数値は、記載された値(または値の範囲)の±0.1%の値、記載された値(または値の範囲)の±1%の値、記載された値(または値の範囲)の±2%の値、記載された値(または値の範囲)の±5%の値、記載された値(または値の範囲)の±10%の値などを有してもよい。本明細書に示す任意の数値はまた、文脈上別段の指示がない限り、その約またはおよその値を含むと理解されるべきである。例えば、値「10」が開示されている場合、「約10」も開示されている。本明細書に列挙された任意の数値範囲は、その中に包含されるすべての下位範囲を含むことが意図される。当業者によって適切に理解されるように、ある値が開示される場合、その値「以下」、「その値以上」および値の間の可能な範囲もまた開示することも理解される。例えば、値「X」が開示されている場合、「X以下」および「X以上」(例えば、Xが数値である場合)も開示する。本出願を通して、データはいくつかの異なるフォーマットで提供され、かつこのデータは終点および開始点、およびデータ点の任意の組み合わせの範囲を表すこともまた理解される。例えば、特定のデータ点「10」および特定のデータ点「15」が開示されている場合、10~15より大きい、10~15以上、10~15未満、10~15以下、および10~15と同じ、も10~15の間と同様に開示されている見なされることが理解される。2つの特定のユニット間の各ユニットもまた開示されていることも理解される。例えば、10および15が開示されている場合、11、12、13、および14も開示されている。
【0195】
以上、様々な例示的実施形態を上記に説明したが、特許請求の範囲に記載された本発明の範囲から逸脱することなく、様々な実施形態に対していくつかの変更を行うことができる。例えば、説明された様々な方法工程が実行される順序は、代替の実施形態ではしばしば変更されてもよく、他の代替実施形態では、1つ以上の方法工程が完全に省略されてもよい。様々な装置およびシステムの実施形態の任意選択の特徴は、一部の実施形態に含まれてもよく、他の実施形態に含まれなくてもよい。したがって、上記の説明は主に例示的な目的のために提供されるものであり、本発明の範囲が特許請求の範囲に記載されるものに限定されると解釈すべきではない。
【0196】
本明細書に含まれる例および図解は、本発明を実施することができる特定の実施形態を図示するものであり、限定するものではない。上述したように、本開示の範囲から逸脱することなく、構造的および論理的な置換および変更を行うことができるように、他の実施形態を利用したりそこから導出したりできる。本発明の主題のそのような実施形態は、単に便宜的に、および発明または発明の概念の1つ以上が実際に開示されている場合は本出願の範囲を任意の単一の発明または発明の概念に自発的に限定することなく、「発明」という用語によって個々にまたは集合的に本明細書で言及されてもよい。したがって、特定の実施形態を本明細書に図示し説明してきたが、同じ目的を達成するために計算された任意の構成を、示された特定の実施形態に置き換えることができる。この開示は、様々な実施形態の任意のおよびすべての改造または変形を網羅することを意図している。上記の実施形態の組み合わせ、および本明細書に具体的に記載されていない他の実施形態は、上記の説明を検討すれば当業者には明らかであろう。本明細書に開示された方法は、施術者によって取られる特定の行動を含むが、方法は、これらの行動に関する第三者の指示を明示的または暗示的に含むこともできる。例えば、「求心性末梢神経を経皮的に刺激する」などの行動は、「求心性末梢神経の刺激を指示すること」を含む。
図1
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