(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-31
(45)【発行日】2022-09-08
(54)【発明の名称】水分計測装置
(51)【国際特許分類】
G01N 22/04 20060101AFI20220901BHJP
G01N 22/00 20060101ALI20220901BHJP
G01R 29/08 20060101ALI20220901BHJP
【FI】
G01N22/04 Z
G01N22/00 W
G01N22/00 F
G01R29/08 F
(21)【出願番号】P 2019522019
(86)(22)【出願日】2018-04-18
(86)【国際出願番号】 JP2018016007
(87)【国際公開番号】W WO2018221051
(87)【国際公開日】2018-12-06
【審査請求日】2021-03-30
(31)【優先権主張番号】P 2017109917
(32)【優先日】2017-06-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002185
【氏名又は名称】ソニーグループ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】316005926
【氏名又は名称】ソニーセミコンダクタソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003339
【氏名又は名称】特許業務法人南青山国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100104215
【氏名又は名称】大森 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100196575
【氏名又は名称】高橋 満
(74)【代理人】
【識別番号】100168181
【氏名又は名称】中村 哲平
(74)【代理人】
【識別番号】100117330
【氏名又は名称】折居 章
(74)【代理人】
【識別番号】100160989
【氏名又は名称】関根 正好
(74)【代理人】
【識別番号】100168745
【氏名又は名称】金子 彩子
(74)【代理人】
【識別番号】100176131
【氏名又は名称】金山 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100197398
【氏名又は名称】千葉 絢子
(74)【代理人】
【識別番号】100197619
【氏名又は名称】白鹿 智久
(72)【発明者】
【氏名】山田 篤
(72)【発明者】
【氏名】吉満 匡平
(72)【発明者】
【氏名】三田 宏幸
(72)【発明者】
【氏名】飯田 幸生
(72)【発明者】
【氏名】小林 誠司
(72)【発明者】
【氏名】廣井 聡幸
【審査官】田中 秀直
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-027664(JP,A)
【文献】特開2012-194027(JP,A)
【文献】特開平11-173998(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 22/00ー22/04
G01R 29/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信部と
、
受信部と
、
前記送信部から放射され、前記送信部と前記受信部との間の媒質中を伝搬し、前記受信部で受信された、電磁波の特性を評価する信号処理部を
支持し、配線層を有する基板
と、を備え、
前記評価に基づいて前記媒質に含まれる水分量を計測する
水分計測装置であって、
前記
水分計測装置は、
前記送信部を有する第1プローブと、
前記受信部を有する第2プローブと、
前記第1プローブと前記第2プローブとの間を連結し前記送信部と前記受信部とを所定の距離を隔てて相互に対向させる支持部と、を備え、
前記
第1プローブは、
第1信号線と、
前記第1信号線
の周囲を覆う第1シールド層と、
電磁波を吸収する材料を含み、かつ、前記第1信号線および前記第1シールド層の延在方向に沿って配置され、かつ、前記第1信号線と前記第1シールド層とを併せたその周囲を
被覆する第1電磁波吸収層と、
を有し、
前記送信部は、前記第1電磁波吸収層
から露出する前記第1シールド層と、
当該第1シールド層
から露出する前記第1信号線と
により形成され、
前記
第2プローブは、
第2信号線と、
前記第2信号線
の周囲を覆う第2シールド層と、
電磁波を吸収する材料を含み、かつ、前記第2信号線および前記第2シールド層の延在方向に沿って配置され、かつ、前記第2信号線と前記第2シールド層とを併せたその周囲を
被覆する第2電磁波吸収層と、
を有し、
前記受信部は、前記第2電磁波吸収層
から露出する前記第2シールド層と、該第2シールド層
から露出する前記第2信号線と
により形成され、
前記第1信号線と、前記第1シールド層と、前記第2信号線と、前記第2シールド層と、のいずれもが、前記配線層を介して、前記信号処理部に接続されている、
水分計測装置。
【請求項2】
前記第1
プローブと前記第2
プローブの少なくとも一方は、ストリップラインまたはマイクロストリップライン
で構成される、
請求項1に記載の水分計測装置。
【請求項3】
前記第1
プローブと前記第2
プローブは、
相互に平行に延在している、
請求項1に記載の水分計測装置。
【請求項4】
前記送信部と
、前記受信部は、電磁波透過性の保護部材で被覆されている、
請求項1に記載の水分計測装置。
【請求項5】
前記送信部から放射される前記電磁波の周波数は、500MHz以上8GHz以下である、
請求項1に記載の水分計測装置。
【請求項6】
前記
水分計測装置は、前記送信部から放射する前記電磁波を作り出す信号発生
器をさらに備え、
前記信号発生器は、前記電磁波の周波数が掃引されている前記電磁波を作り出す、
請求項1に記載の水分計測装置。
【請求項7】
前記信号発生
器は、前記周波数が所定の大きさで段階的に変化した電磁波を作り出す、
請求項6に記載の水分計測装置。
【請求項8】
前記媒質に含まれる前記水分量を求めるために評価する、前記電磁波の特性は、前記伝搬中に発生した伝搬遅延に関する特性である、
請求項1に記載の水分計測装置。
【請求項9】
前記信号処理部は、直交検波器をさらに備え、
前記直交検波器は、前記受信部で受信された前記電磁波に対して、直交検波を行う、
請求項1に記載の水分計測装置。
【請求項10】
前記
水分計測装置は、温度検出部または電気伝導度検出部もしくはpH検出部の少なくとも一つをさらに備える、
請求項1に記載の水分計測装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、土壌などの媒質中の水分量を測定するためのセンサ装置、水分量測定装置、水分量測定方法、情報処理装置および情報処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
媒質中の水分量測定方法として、TDR(Time Domain Reflectometry)法が知られている。この方法は、媒質中に埋め込んだ金属プローブに沿って電磁波を送り、その反射応答をもとに測定された比誘電率から媒質中の水分量を算出するものである(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、TDR法では、プローブ近傍の媒質の電磁波伝搬特性から比誘電率を計測しているため、プローブ近傍に生じる空隙の影響を大きく受け、正しい比誘電率を測定できないという問題がある。
【0005】
以上のような事情に鑑み、本技術の目的は、媒質の比誘電率又は水分量の測定精度を向上させることができるセンサ装置、水分量測定装置、水分量測定方法、情報処理装置および情報処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本技術の一形態に係るセンサ装置は、センサヘッドと、測定ユニットとを具備する。
上記センサヘッドは、送信用の第1のアンテナ部を有する第1のプローブと、上記第1のプローブと所定の距離をおいて対向する受信用の第2のアンテナ部を有する第2のプローブとを含む。
上記測定ユニットは、上記第1及び第2のアンテナ部の間における媒質中での電磁波の伝搬特性に関する情報を含む測定信号を生成する信号生成部を有する。
【0007】
上記センサ装置は、電磁波の送信と受信をそれぞれ担う第1及び第2のプローブ間の媒質中での電磁波の伝搬特性を取得する。第1及び第2のプローブ間の距離を各プローブ近傍に生じる空隙よりも充分に大きくすることで、当該空隙が比誘電率又は水分量の測定に与える影響を無視できるほど小さくすることができる。
上記センサ装置は、第1及び第2のアンテナ部を介して電磁波を送受信するため、プローブの共振による測定精度の低下を抑制する。
【0008】
上記第1及び第2のプローブは、芯線部とシールド部とを有する同軸ケーブルで構成されてもよい。この場合、上記第1及び第2のアンテナ部を、上記シールド部の一部に設けられた開口部として構成することができる。
これにより、アンテナ部を有するプローブの構成を簡素化することができる。
【0009】
上記第1及び第2のプローブは、上記芯線部の終端部と上記シールド部との間に電気的に接続された終端抵抗をそれぞれ有してもよい。
これにより、プローブ終端における送受信信号の不要反射が防止される。
【0010】
上記センサヘッドは、電磁波吸収材をさらに有してもよい。上記電磁波吸収材は、上記第1及び第2のプローブに設けられ、上記開口部の周辺の上記シールド部を被覆する。
これにより開口部以外の領域からの送受信信号の漏洩が抑制される。
【0011】
上記電磁波吸収材は、フェライトを含んでもよい。
【0012】
上記センサヘッドは、第1のアーム部と、第2のアーム部と、上記第1及び第2のアーム部を連結する連結部とを含む支持基板をさらに有し、上記第1及び第2のプローブは、上記第1及び第2のアーム部にそれぞれ設けられたストリップ線路で構成されてもよい。
これにより、センサヘッドの構成の簡素化、堅牢化が可能となり、取り扱い性の向上を図ることができる。
【0013】
この場合、上記測定ユニットは、上記連結部に搭載されてもよい。
これにより、センサヘッドと測定ユニットとを一体的に構成することが可能となる。
【0014】
上記センサヘッドは、温度検出部をさらに有してもよい。上記温度検出部は、上記第1及び第2のプローブの少なくとも一方に設けられ、上記媒質の温度を検出することが可能に構成される。
これにより、測定データの補正に用いる媒質の温度情報を取得することができる。
【0015】
上記センサヘッドは、電気伝導度検出部をさらに有してもよい。上記電気伝導度検出部は、上記第1及び第2のプローブの少なくとも一方に設けられ、上記媒質の電気伝導度を検出することが可能に構成される。
これにより、測定データの補正に用いる媒質の電気伝導度情報を取得することができる。
【0016】
上記信号生成部は、信号発生器と、検波器とを有してもよい。上記信号発生器は、上記第1のプローブに所定周波数のパルス信号を入力する。上記検波器は、上記第2のプローブの出力を直交検波する。
これにより、プローブ間を伝搬する電磁波の伝搬遅延時間に関する情報を生成することができる。
【0017】
上記測定ユニットは、上記測定信号を情報処理装置へ送信することが可能に構成された通信部をさらに有してもよい。
これにより、観測地とは異なる場所に配置された情報処理装置へ測定信号を提供することができる。
【0018】
本技術の一形態に係る水分量測定装置は、センサヘッドと、測定部と、信号処理部とを具備する。
上記センサヘッドは、送信用の第1のアンテナ部を有する第1のプローブと、上記第1のプローブと所定の距離をおいて対向する受信用の第2のアンテナ部を有する第2のプローブとを含む。
上記測定部は、上記第1及び第2のアンテナ部の間における媒質中での電磁波の伝搬特性に関する情報を含む測定信号を生成する。
上記信号処理部は、上記測定信号に基づいて、上記媒質中の水分量を測定する。
【0019】
上記信号処理部は、遅延時間算出部と、比誘電率算出部と、水分量算出部とを有してもよい。上記遅延時間算出部は、上記測定信号に基づいて上記第1及び第2のプローブ間における電磁波の伝搬遅延時間を算出する。上記比誘電率算出部は、上記伝搬遅延時間に基づいて媒質の比誘電率を算出する。上記水分量算出部は、上記比誘電率に基づいて上記媒質中の水分量を算出する。
【0020】
上記センサヘッドは、上記媒質の温度を検出することが可能に構成された温度検出部をさらに有し、上記信号処理部は、上記温度検出部の出力に基づいて上記水分量を補正するように構成されてもよい。
【0021】
上記センサヘッドは、上記媒質の電気伝導度を検出することが可能に構成された電気伝導度検出部をさらに有し、上記信号処理部は、上記電気伝導度検出部の出力に基づいて上記水分量を補正するように構成されてもよい。
【0022】
本技術の一形態に係る水分量測定方法は、媒質中に配置された第1のプローブの第1のアンテナ部から送信された電磁波を、上記第1のプローブと所定の距離をおいて上記媒質中に配置された第2のプローブの第2のアンテナ部で受信することで、上記電磁波の伝搬特性に関する情報を含む測定信号を生成することを含む。
上記測定信号に基づいて、上記媒質中の水分量が測定される。
【0023】
上記水分量の測定は、上記測定信号に基づいて測定された上記電磁波の伝搬遅延時間を算出し、上記伝搬遅延時間に基づいて上記媒質の比誘電率を算出し、上記比誘電率に基づいて上記媒質中の水分量を算出することを含んでもよい。
【0024】
上記媒質は、土壌であってもよい。
【0025】
本技術の一形態に係る情報処理装置は、遅延時間算出部と、比誘電率算出部と、水分量算出部とを具備する。
上記遅延時間算出部は、媒質中に配置された第1のプローブの第1のアンテナ部から送信され、上記第1のプローブと所定の距離をおいて上記媒質中に配置された第2のプローブのアンテナ部で受信された電磁波に基づいて、上記第1及び第2のプローブ間における電磁波の伝搬遅延時間を算出する。
上記比誘電率算出部は、上記伝搬遅延時間に基づいて媒質の比誘電率を算出する。
上記水分量算出部は、上記比誘電率に基づいて上記媒質中の水分量を算出する。
【0026】
本技術の一形態に係る情報処理方法は、媒質中に配置された第1のプローブの第1のアンテナ部から送信され、上記第1のプローブと所定の距離をおいて上記媒質中に配置された第2のプローブの第2のアンテナ部で受信された電磁波に基づいて、上記第1及び第2のプローブ間における電磁波の伝搬遅延時間を算出することを含む。
上記伝搬遅延時間に基づいて媒質の比誘電率が算出される。
上記比誘電率に基づいて上記媒質中の水分量が算出される。
【発明の効果】
【0027】
以上のように、本技術によれば、媒質の比誘電率又は水分量の測定精度を向上させることができる。
なお、ここに記載された効果は必ずしも限定されるものではなく、本開示中に記載されたいずれかの効果であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本技術の第1の実施形態に係るセンサ装置を備えた水分量測定装置の概略構成図である。
【
図2】上記水分量測定装置の構成を示すブロック図である。
【
図3】上記水分量測定装置における測定ユニットの構成を示すブロック図である。
【
図4】本技術の一実施形態に係る水分量測定方法を説明するフローチャートである。
【
図6】空隙がTDR法の測定値に及ぼす影響を示す一実験結果である。
【
図7】上記測定方法による測定値と採土法による測定値とを比較した一実験結果である。
【
図8】上記水分量測定装置の一作用を説明する図である。
【
図9】上記水分量測定装置の一作用を説明する図である。
【
図10】上記水分量測定装置の一作用を説明する図である。
【
図11】上記水分量測定装置の一作用を説明する図である。
【
図12】本技術の第2の実施形態に係るセンサ装置を備えた水分量測定装置の概略構成図である。
【
図13】上記水分量測定装置の一作用を説明する図である。
【
図14】上記水分量測定装置の一作用を説明する図である。
【
図15】上記水分量測定装置の一作用を説明する図である。
【
図16】上記水分量測定装置の一作用を説明する図である。
【
図17】本技術の第3の実施形態に係るセンサ装置を備えた水分量測定装置の概略構成図である。
【
図18】本技術の第4の実施形態に係るセンサ装置の構成を概略的に示す正面図である。
【
図19】本技術の第4の実施形態に係るセンサ装置の構成を概略的に示す部分破断側面図である。
【
図20】本技術の実施形態に係るセンサ装置の変形例を示す概略構成図である。
【
図21】本技術の実施形態に係るセンサ装置の変形例を示す概略構成図である。
【
図22】本技術の実施形態に係るセンサ装置の変形例を示す概略構成図である。
【
図23】本技術の実施形態に係るセンサ装置の変形例を示す概略構成図である。
【
図24】本技術の実施形態に係るセンサ装置の変形例を示す概略構成図である。
【
図25】本技術の実施形態に係るセンサ装置の変形例を示す概略構成図である。
【
図26】本技術の実施形態に係るセンサ装置の変形例を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本技術に係る実施形態を、図面を参照しながら説明する。
【0030】
<第1の実施形態>
図1は、本技術の一実施形態に係るセンサ装置を備えた水分量測定装置の概略構成図である。
図2は、上記水分量測定装置の構成を示すブロック図である。
【0031】
[水分量測定装置]
本実施形態の水分量測定装置100は、センサ装置10と、信号処理ユニット50とを有する。本実施形態では、農作物を育成する土壌の水分量の測定に本技術を適用した例について説明する。
【0032】
センサ装置10は、媒質(土壌)Mの電磁波伝搬特性を取得し、媒質Mの比誘電率の算出に用いられる測定信号S1を生成する。信号処理ユニット50は、センサ装置10から測定信号S1を受信し、測定信号S1に基づいて媒質M中の水分量を算出する。
以下、各部の詳細について説明する。
【0033】
センサ装置10は、センサヘッド20と、測定ユニット30とを有する。
【0034】
(センサヘッド)
センサヘッド20は、送信用プローブ21(第1のプローブ)と、受信用プローブ22(第2のプローブ)とを有する。センサヘッド20は、土壌等の媒質Mの中に配置され、送信用及び受信用プローブ21,22間で所定周波数の電磁波EWを送受信することが可能なアンテナ部210,220(第1のアンテナ部、第2のアンテナ部)をそれぞれ有する。
【0035】
送信用プローブ21及び受信用プローブ22は、距離Dをおいて相互に対向するように媒質M中に概ね垂直な姿勢で埋め込まれる。送信用プローブ21及び受信用プローブ22は、芯線部C1とシールド部C2とを有する同軸ケーブルで構成される。当該ケーブルの太さ及び長さは特に限定されず、任意の太さ及び長さとすることができる。例えば、当該ケーブルの太さ(直径)を2mm~6mmとすることで、土壌への挿入が容易となる。芯線部C1は銅線で構成され、シールド部C2は銅パイプで構成されるが、シールド部C2は銅線のメッシュ体で構成されてもよい。シールド部C2の外表面は、図示せずとも、絶縁材料で構成された保護層で被覆される。
【0036】
送信用プローブ21は、測定ユニット30の出力端子34(
図3参照)に接続され、測定ユニット30からアンテナ部210へ送信信号を伝送する。アンテナ部210は、送信用プローブ21の先端部(終端部)又はその近傍に設けられ、送信信号に応じた電磁波EWを受信用プローブ22へ送信する。
【0037】
受信用プローブ22は、測定ユニット30の入力端子35(
図3参照)に接続され、アンテナ部220で電磁波EWを受信し、測定ユニット30へ受信信号を入力する。アンテナ部220は、送信用プローブ21のアンテナ部210と対向するように受信用プローブ22の先端部(終端部)又はその近傍に設けられる。アンテナ部210,220は、プローブ21,22の先端部に設けられる場合に限られず、プローブ21,22の中央位置など任意の位置に設けられてもよい。
【0038】
アンテナ部210,220は、プローブ21,22の所定位置において局所的に電磁波EWを送受信するためのものであり、典型的には、プローブ21,22を共振させない大きさで形成された微小アンテナで構成される。これにより、プローブ21,22の共振による測定精度の低下を抑制することができる。
【0039】
本実施形態において、アンテナ部210,220は、シールド部C2の一部に設けられた開口部Hを含む。すなわち、プローブ21,22は、アンテナ部210,220を電波漏洩部として有する漏洩同軸アンテナで構成される。
【0040】
開口部Hは、矩形、円形、楕円形、長円形等の開口形状を有し、本実施形態ではプローブ21,22の長手方向に長軸を有する長円形状で形成される。開口部Hの長軸は、使用する電磁波EWの波長に応じて適宜設定可能である。例えば、電磁波EWの波長が500MHz~8GHzの場合、開口部Hの長軸の長さは、5mm~15mm程度である。
【0041】
送信用プローブ21及び受信用プローブ22は、終端抵抗23をそれぞれ有する。終端抵抗23は、芯線部C1の終端部とシールド部C2との間に電気的に接続される。これにより、プローブ終端における送受信信号の不要反射が防止される。
【0042】
送信用プローブ21及び受信用プローブ22の先端部は、アンテナ部210,220を被覆する電磁波透過性の保護部材(図示略)で被覆することが望ましい。
【0043】
送信用プローブ21及び受信用プローブ22は、電磁波吸収材を含有するスリーブ24をさらに有する。スリーブ24は、アンテナ部210,220(開口部H)周辺のプローブ21,22の外周面を被覆し、開口部H以外の領域からの送受信信号の漏洩を抑制する。
【0044】
スリーブ24を構成する電磁波吸収材には主にフェライトが用いられるが、これに限られず、電磁波EWの周波数等に応じて、センダストやパーマロイ等の他の高透磁率材料が用いられてもよい。スリーブ24は、必要に応じて省略されてもよいし、いずれか一方のプローブ21,22にのみ設けられてもよい。
【0045】
送信用プローブ21と受信用プローブ22との距離Dの大きさは特に限定されず、例えば、20mm~100mmである。距離Dが100mmより大きいと、媒質Mを伝搬する電磁波EWの減衰が大きくなり、十分な受信強度が得られなくなるおそれがある。一方、距離Dが20mmより小さいと、技術的に観測が難しくなる。また距離Dが短くなると、プローブ21,22の近傍に形成される空隙の影響を大きく受け、正しい比誘電率あるいは水分量を測定できなくなるおそれがある。
【0046】
上記空隙は、媒質Mとプローブ21,22の周囲との間に形成される空気層であり、プローブ21,22を媒質Mにその表面から埋め込むときに、あるいは、プローブ21,22を媒質M内で動かしたりしたときに形成されてしまう。後述するように、媒質Mの比誘電率あるいは水分量を精度よく測定する上で、空隙の大きさ(空気層の厚さ)は小さい方が好ましいが、典型的には、1mm程度の空隙が生じることがある。
【0047】
(測定ユニット)
図3は、測定ユニット30の構成を示すブロック図である。
【0048】
測定ユニット30は、信号生成部31と、通信部32とを有する。測定ユニット30は、典型的には、ネットワークアナライザで構成される。
【0049】
信号生成部31は、制御部310と、信号発生器311、位相シフタ313、混合器315等を有する。信号生成部31は、送信用プローブ21のアンテナ部210と受信用プローブ22のアンテナ部220との間における媒質M中での電磁波EWの伝搬特性に関する情報を含む測定信号S1を生成する。
【0050】
制御部310は、CPU(Central Processing Unit)やメモリ等を有するコンピュータで構成され、信号発生器311、通信部32を含む測定ユニット30の各部を制御する。
【0051】
信号発生器311は、所定周波数の送信信号Fを発生し、増幅器312および出力端子34を介して送信用プローブ21へ入力する。信号発生器311は、送信信号Fとしてパルス波(パルス信号)を生成するが、送信信号Fとして連続波を生成するように構成されてもよい。
【0052】
信号発生器311は、送信信号Fの周波数掃引機能を有していてもよい。この場合、信号発生器311は、制御部310の指令に基づいて、例えば500MHzから8GHzの送信信号Fを生成する。
【0053】
位相シフタ313は、送信信号Fを位相が90度異なる2つの信号に分離して混合器315へ入力する。混合器315は、受信用プローブ22から入力端子35および増幅器314を介して入力された受信信号を、位相シフタ313から出力される2つの信号と混合して、互いに直交する2つの応答信号(I信号/Q信号)に変調する。これら応答信号は、AD変換器316を介してアナログ信号からデジタル信号に変換されて、制御部310において測定信号S1として生成される。
【0054】
位相シフタ313および混合器315は、受信用プローブ22の出力を直交検波(IQ検波)する検波器を構成する。I信号とQ信号の二乗和は受信信号の強度に、I信号とQ信号の二乗和の平方根は受信信号の振幅に、I信号とQ信号の逆正接は位相に、それぞれ相当する。
【0055】
通信部32は、通信用アンテナ等を含む通信モジュールで構成される。通信部32は、センサ装置10から信号処理ユニット50へ測定信号S1を無線送信するためのものである。これにより、観測地とは異なる場所に配置された信号処理ユニット50へ測定信号S1を提供することができる。これに限られず、センサ装置10は信号処理ユニット50と配線ケーブル等を介して接続されてもよい。
【0056】
(信号処理ユニット)
信号処理ユニット50は、
図2に示すように、遅延時間算出部51、比誘電率算出部52および水分量算出部53、メモリ54を有する。信号処理ユニット50は、センサ装置10(測定ユニット30)から送信される測定信号S1に基づいて、媒質M中の水分量を測定する情報処理装置で構成される。
【0057】
当該情報処理装置は、CPU、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等のコンピュータに用いられるハードウェア要素および必要なソフトウェアにより実現され得る。CPUに代えて、またはこれに加えて、FPGA(Field Programmable Gate Array)等のPLD(Programmable Logic Device)、あるいは、DSP(Digital Signal Processor)、その他ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等が用いられてもよい。
【0058】
本実施形態では、CPUが所定のプログラムを実行することで、機能ブロックとしての遅延時間算出部51、比誘電率算出部52および水分量算出部53が構成される。信号処理ユニット50のROM等によりメモリ54が構成される。もちろん各ブロックを実現するために、IC(集積回路)等の専用のハードウェアが用いられてもよい。プログラムは、例えば種々の記録媒体を介して信号処理ユニット50にインストールされる。あるいは、インターネット等を介してプログラムのインストールが実行されてもよい。
【0059】
遅延時間算出部51は、測定信号S1に基づいて送信用プローブ21(アンテナ部210)と受信用プローブ22(アンテナ部220)との間における電磁波EWの伝搬遅延時間を算出するように構成される。
【0060】
電磁波EWの伝搬遅延時間とは、典型的には、空気中における電磁波EWの伝搬時間に対する媒質M中における電磁波の伝搬時間の差分をいう。電磁波の伝搬遅延時間は、伝送経路の比誘電率に依存し、伝搬遅延時間は媒質の比誘電率の平方根に比例する。一般的に土壌自体の比誘電率は1から10程度であり、水分に応じて変化する。したがって、伝搬遅延時間を測定できれば、媒質M中の水分量を間接的に測定することができることになる。
【0061】
伝搬遅延時間の算出方法は特に限定されず、本実施形態では、測定信号S1を逆フーリエ変換(逆FFT)してインパルス応答を求め、そのピーク位置からパルス遅延時間を算出する。パルス遅延時間からプローブ21,22の伝送時間(ケーブル伝送時間)を差し引くことにより、電磁波EWの伝搬遅延時間が算出される。
【0062】
比誘電率算出部52は、遅延時間算出部51において算出された電磁波EWの伝搬遅延時間に基づいて、媒質Mの比誘電率を算出するように構成される。水の比誘電率は、典型的には、80である。
【0063】
水分量算出部53は、比誘電率算出部52において算出された比誘電率に基づいて、媒質M中の水分量を算出するように構成される。水分量の算出には、例えば、Toppの式が用いられ(後述)、水分量として、媒質Mの体積含水率[%]が算出される。
【0064】
信号処理ユニット50はさらに、測定ユニット30の通信部32と通信可能に構成された通信部、各機能ブロックで算出された伝搬遅延時間、比誘電率、水分量に関する情報等を表示可能な表示部などを備えてもよい。
【0065】
[水分量測定方法]
以下、信号処理ユニット50の詳細について、本実施形態に係る水分量測定装置の典型的な動作とともに説明する。
【0066】
図4は、本実施形態における水分量測定方法を説明するフローチャートである。
【0067】
まず
図1に示すように、送信用プローブ21及び受信用プローブ22が土壌M中に埋め込まれる(ステップ101)。送信用プローブ21と受信用プローブ22との間の対向距離Dは、例えば、50mmである。
【0068】
続いて、送信用プローブ21(アンテナ部210)と受信用アンテナ(アンテナ部220)との間で電磁波EWが送受信される(ステップ102)。
【0069】
本実施形態において測定ユニット30は、送信用プローブ21へ入力される送信信号F(n)の周波数を10MHzステップで変化させながら、受信用プローブ22から出力される受信信号の直交周波数応答信号(I(n)信号、Q(n)信号)を含む測定信号S1を生成し、信号処理ユニット50へ送信する。
【0070】
続いて、信号処理ユニット50(遅延時間算出部51)は、測定信号S1に基づいて、送信用プローブ21と受信用プローブ22との間における電磁波EWの伝搬遅延時間を算出する(ステップ103)。
【0071】
遅延時間算出部51は、I(n)信号を実部、Q(n)信号を虚部として、高速フーリエ変換(FFT)により受信信号を逆フーリエ変換し、インパルス応答h(τ)を求める。
h(τ)=FFT{I(n)、Q(n)} …(1)
【0072】
遅延時間算出部51は、インパルス応答h(τ)のピーク位置からパルス遅延時間τ[s]を求め、パルス遅延時間τからケーブル伝送時間τ0[s]を差し引くことにより、伝搬遅延時間τdelay[s]を求める。
τdelay=τ-τ0 …(2)
【0073】
続いて、信号処理ユニット50(比誘電率算出部52)は、伝搬遅延時間をτdelay[s]、光速をc[m/s]、プローブ間距離(D)をd[m]として、媒質Mの比誘電率εrを算出する(ステップ104)。
τdelay=d・√(εr)/c …(3)
【0074】
続いて、信号処理ユニット50(水分量算出部53)は、Topp式から、媒質M中の水分量(体積含水率)θ[%]を算出する。
θ=-5.3×10-2+2.92×10-2εr-5.5×10-4εr
2+4.3×10-6εr
3 …(4)
【0075】
以上のようにして、媒質Mの比誘電率および媒質M中の体積含水率が算出される。
【0076】
本実施形態においては、送信用プローブ21と受信用プローブ22との間の媒質M中での電磁波EWの伝搬遅延時間を基に、媒質Mの比誘電率および体積含水率を算出する。両プローブ21,22間の距離D(50mm)は、各プローブ21,22近傍に生じる空隙(1mm)よりもはるかに大きいため、当該空隙の比誘電率の測定に与える影響が小さくなる。したがって、空隙による計測誤差が抑制されるため、媒質Mの比誘電率および媒質中の体積含水率の測定精度が向上する。
【0077】
ここで、TDR法は、
図5に示すように、媒質中に、TDRセンサ1の2本の測定プローブ1a,1bを埋め込み、これら測定プローブに沿ってパルス信号(電磁波)を入力し、プローブ終端での反射応答により電磁波の伝搬遅延時間を算出する。ところが、プローブ1a,1bの周囲に空隙Gが存在すると、空隙Gの比誘電率情報が応答信号に混在するため、媒質Mの比誘電率を正しく計測することができない。したがってTDR法では、空隙Gの大きさによって計測誤差が大きく増加する。
【0078】
一例として、空隙がTDR法の測定値に及ぼす影響を
図6に示す。図中縦軸は、同一の土壌について得られた採土法による測定値との誤差であり、横軸は空隙の大きさを表している。採土法は、乾燥前後の重量から土壌の水分量を算出する方法であり、空隙の影響を受けない。これに対して、TDR法は、空隙の測定値に及ぼす影響が無視できないほど大きく、採土法の測定値と大きく乖離する。したがって、TDR法では、作業者による測定値のバラツキが生じやすく、空隙をなるべく生じさせないように測定プローブを媒質中に埋め込むための熟練度が要求される。
【0079】
これに対して本実施形態では、上述のように、上記空隙よりも十分に大きな距離を隔てて媒質M中に配置された2つのプローブ21,22間での電磁波の伝搬遅延特性を評価するようにしている。これにより、空隙の影響を実質的に受けることなく、媒質Mの比誘電率情報を精度よく算出することが可能となる。
【0080】
図7は、本実施形態による測定値と採土法による測定値とを比較した一実験結果である。図中縦軸は、任意の土壌を対象として測定した水分量の基データとなる電磁波の伝搬遅延時間を表し、横軸は同一の土壌について取得した採土法による測定値を表している。図中黒四角は空隙なしでの測定値、白丸は空隙が1mmのときの測定値である。
【0081】
図7に示すように、本実施形態では採土法による測定値との誤差はほとんど見られない。しかも、空隙の有無によらず、安定した測定値が得られることから、作業者による測定値のバラツキが生じにくく、土壌へのプローブの設置に熟練度を必要としない。
【0082】
続いて、上述した本実施形態の水分量測定方法によって、水分量(体積含水率)の異なる4種類の土壌について電磁波の伝搬遅延時間(インパルス応答)を測定した。その結果を
図8に示す。土壌には、豊浦硅石鉱業株式会社製の「標準砂(豊浦標準砂)」を用いた。
図8において、波形P11、P12、P13、P14は、体積含水率が0%、8%、17%、25%のサンプルにそれぞれ相当する。上記(4)式を用いた比誘電率の算出値はそれぞれ、1.9、5.0、9.1、13.4であった。
【0083】
土壌に有機土壌(タキイ種苗株式会社製「育苗培土」)を用いたときの同様の実験結果を
図9に示す。
図9において、波形P21、P22、P23、P24は、体積含水率が11%、19%、27%、36%のサンプルにそれぞれ相当する。上記(4)式を用いた比誘電率の算出値はそれぞれ、6.4、10.3、14.7、21.2であった。
【0084】
インパルス応答と体積含水率の関係に対して近似を求め、同じ遅延時間における体積含水率を比較することで、土壌(標準砂と有機土壌)の違いを確認した。その結果、7%の誤差があった。この原因は、有機土壌自体の密度が標準砂に比べて小さいことや、土壌自体の誘電率が異なることが推定される。
【0085】
インパルス応答のピーク位置(伝搬遅延時間)を縦軸とし、採土法によって求めた体積含水率を横軸としてプロットしたグラフを
図10に示す。同様に、インパルス応答のピーク位置を縦軸とし、上記(4)式を用いて算出した比誘電率を横軸としてプロットしたグラフを
図11に示す。空隙の影響を想定して、標準砂及び有機土壌について2回ずつ測定したが、誤差は1%以下であり、空隙の影響はほぼ皆無であった。
【0086】
本実施形態によれば、土壌の体積含水率を精度よく測定することができるため、例えば、農作物の育成に適した土壌であるかどうかを適正に判定することができる。また、土壌の水分量の適切な管理が可能となる。
【0087】
<第2の実施形態>
図12は、本技術の第2の実施形態に係る水分量測定装置を示す概略構成図である。
以下、第1の実施形態と異なる構成について主に説明し、第1の実施形態と同様の構成については同様の符号を付しその説明を省略または簡略化する。
【0088】
本実施形態の水分量測定装置200は、センサヘッド20を構成する送信用プローブ21及び受信用プローブ22がそれぞれ終端抵抗23(
図2参照)を有していない点で、第1の実施形態と異なる。
【0089】
本実施形態においても上述の第1の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。例えば
図13及び
図14に、第1の実施形態において説明した2種の土壌(標準砂、有機土壌)について測定した電磁波伝搬特性をそれぞれ示す。
図13において波形P31、P32、P33、P34は、体積含水率が0%、8%、17%、25%の標準砂サンプルにそれぞれ相当する。
図14において波形P41、P42、P43、P44は、体積含水率が11%、19%、27%、36%の有機土壌サンプルにそれぞれ相当する。
【0090】
また、終端抵抗の設置を省略することで、電磁波の透過特性(感度)が向上し、水分量に関係なくほぼ一様な感度で伝搬特性を測定できることが確認された。
【0091】
第1の実施形態と同様に、インパルス応答のピーク位置(伝搬遅延時間)を縦軸とし、採土法によって求めた体積含水率及び比誘電率を横軸としてプロットしたグラフを
図15及び
図16にそれぞれ示す。本実施形態においても、各回での測定値の誤差は1%以下であり、空隙の影響はほぼ皆無であった。
【0092】
<第3の実施形態>
図17は、本技術の第3の実施形態に係る水分量測定装置を示す概略構成図である。
以下、第1の実施形態と異なる構成について主に説明し、第1の実施形態と同様の構成については同様の符号を付しその説明を省略または簡略化する。
【0093】
本実施形態の水分量測定装置300は、センサヘッド20が温度検出部25及び電気伝導度検出部26を有する点で、第1の実施形態と異なる。
【0094】
温度検出部25は、媒質Mの温度を検出することが可能に構成される。温度検出部25は、例えば、熱電対、サーミスタ等の任意の温度センサが採用可能である。
【0095】
温度検出部25は、受信用プローブ22のアンテナ部220の近傍に設けられる。これに代えて、温度検出部25は、スリーブ24の表面など受信用プローブ22の他の位置に設けられてもよい。温度検出部25は、受信用プローブ22だけでなく送信用プローブ21に設けられてもよいし、送信用プローブ21に設けられてもよい。
【0096】
電気伝導度検出部26は、媒質Mの電気伝導度を検出することが可能に構成される。電気伝導度検出部26は、例えば、2線式、4線式等の適宜の導電率センサあるいは抵抗率センサが採用可能である。
【0097】
電気伝導度検出部26は、送信用プローブ21のアンテナ部210の近傍に設けられる。これに代えて、電気伝導度検出部26は、スリーブ24の表面など送信用プローブ21の他の位置に設けられてもよい。電気伝導度検出部25は、送信用プローブ21だけでなく受信用プローブ22に設けられてもよいし、受信用プローブ22に設けられてもよい。
【0098】
媒質Mの比誘電率は、媒質Mの温度あるいは電気伝導度に一定の相関があることが知られている。本実施形態によれば、媒質M中の電磁波伝搬特性だけでなく、媒質Mの温度及び電気伝導度に関する情報も取得することができるため、得られた温度情報あるいは電気伝導度情報に応じて媒質Mの比誘電率あるいは体積含有率の算出値を補正することができる。これにより、測定精度の更なる向上を図ることができる。
【0099】
本実施形態では、温度検出部25及び電気伝導度検出部26の双方がセンサヘッド20に設けられたが、これに限られず、何れか一方のみが設けられてもよい。また、終端抵抗23は、必要に応じて省略されてもよい。温度検出部25及び電気伝導度検出部26に代えて、又はこれに加えて、媒質MのpHを測定可能なpH検出部がセンサヘッド20に設けられてもよい。
【0100】
<第4の実施形態>
図18及び
図19はそれぞれ、本技術の他の実施形態に係るセンサ装置の構成を概略的に示す正面図及び部分破断側面図である。本実施形態のセンサ装置40は、センサヘッド420と、測定ユニット430とを有する。
【0101】
センサヘッド420は、支持基板410を有する。支持基板410は、第1のアーム部411と、第2のアーム部412と、連結部413とを有する。第1のアーム部411は、送信用プローブ421を構成し、第2のアーム部412は、受信用プローブ422を構成する。
【0102】
支持基板410は、所定厚みの板材で構成され、典型的には、その表面及び内部に配線層を有する配線基板で構成される。第1及び第2のアーム部411,412は、所定の間隔(例えば20mm~100mm)をおいて一軸方向に平行に延びる所定長さの帯状に形成される。連結部413は、概略矩形状に形成され、第1及び第2のアーム部411,412のそれぞれの一端を相互に連結する。
【0103】
送信用プローブ421及び受信用プローブ422は、表層20a,20b及び内層20cを有するストリップ線路で構成される。送信用プローブ421及び受信用プローブ422において、内層20cを構成する配線層は信号線に相当し、表層20a,20bを構成する配線層はシールド線に相当する。表層20a,20b及び内層20cは、典型的には、銅箔で構成される。
【0104】
センサヘッド420は、電磁波吸収材を含有する一対のスリーブ424をさらに有する。各スリーブ424は、第1及び第2のアーム部411,412
の送信用プローブ421及び受信用プローブ422の先端部(終端部)を除く領域を被覆する。
図18においてスリーブ424で被覆される第1及び第2のアーム部411,412の周縁部には複数の開口が設けられているが、これら開口は省略されてもよい。
【0105】
スリーブ424で被覆されていない各プローブ421,422の先端部(終端部)は、各プローブ421,422のアンテナ部4210,4220(第1のアンテナ部、第2のアンテナ部)を構成する。アンテナ部4210,4220において表層20a,20bは、単数又は複数のスルーホール20dを介して相互に電気的に接続される。スルーホール20dは中空でもよいし、樹脂材料や金属材料で充填されてもよい。あるいは、スルーホール20に代えて、終端抵抗が接続されてもよい。アンテナ部4210,4220は、電磁波透過性の保護部材20e(
図19)で被覆されてもよい。
【0106】
送信用プローブ421及び受信用プローブ422のアンテナ部4210,4220は、相互に対向して配置されており、媒質中に埋め込まれた両プローブ421、422間で所定周波数の電磁波を送受信することが可能に構成される。
【0107】
測定ユニット430は、第1の実施形態における測定ユニット30に相当し、送信用プローブ421及び受信用プローブ422各々のアンテナ部4210,4220の間における媒質中での電磁波の伝搬特性に関する情報を含む測定信号を生成する。
【0108】
測定ユニット430は、センサヘッド420と一体的に構成される。本実施形態において測定ユニット430は、支持基板410の連結部413の表面に搭載された単数又は複数の電子部品で構成される。測定ユニット430は、支持基板410の配線層を介して、受信用プローブ421及び送信用プローブ422各々の表層20a,20b及び内層20cに電気的に接続される。
【0109】
以上のように構成される本実施形態のセンサ装置40においても上述の第1の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。本実施形態によれば、送信用及び受信用プローブ421,422が支持基板410の第1及び第2のアーム部411,412にそれぞれ設けられたストリップ線路で構成されているため、センサヘッド420の構成の簡素化、堅牢化が可能となる。本実施形態によれば、アンテナ部4210,4220間の距離が常に一定に保たれるため、受信用プローブ421と送信用プローブ422との距離を調整することなく土壌への埋め込み作業が容易となり、取り扱い性が向上する。
【0110】
本実施形態では、受信用プローブ421及び送信用プローブ422がストリップ線路で構成されたが、これに限られず、受信用プローブ421及び送信用プローブ422は、表層20a,20bのいずれか一方が省略されたマイクロストリップ線路で構成されてもよい。
【0111】
支持基板410の第1及び第2のアーム411,412の何れか一方には、媒質の温度を検出する温度検出部、媒質の電気伝導度を検出する電気伝導度検出部、媒質のpHを検出するpH検出部等がさらに設けられてもよい。
【0112】
<変形例>
以上、本技術の実施形態について説明したが、本技術は上述の実施形態にのみ限定されるものではなく、種々変更を加え得ることは勿論である。
【0113】
例えば以上の実施形態では、農作物を育成する土壌の水分量の測定に本技術を適用した例について説明したが、これに限られず、比誘電率が既知の他の物質(肥料など)の濃度等の測定にも本技術は適用可能である。
【0114】
測定対象である媒質は、土壌に限られず、畜産用の飼料のような土以外の物質であってもよい。
【0115】
水分量測定装置100は、媒質中の電磁波伝搬特性から比誘電率が算出し、その比誘電率に基づいて媒質中の水分量を算出するように構成されたが、これに限られず、得られた電磁波の伝搬特性から直接、媒質中の水分量を算出するように構成されてもよい。例えば、媒質が比較的単純な系で構成されている場合、電磁波の伝搬特性と媒質中の水分量との対応テーブルが作成可能であるため、当該対応テーブルを参照することで、電磁波の伝搬特性から媒質中の水分量を直接的に求めることができる。
【0116】
以上の実施形態では、信号処理ユニット50が単一の情報処理装置で構成される場合を例に挙げて説明したが、これに限られず、複数のコンピュータが連動して動作するコンピュータシステムで信号処理ユニット50が構成されてもよい。
【0117】
さらに以上の各実施形態では、センサ装置における送信用プローブ及び受信用プローブがそれぞれ1つのアンテナ部を有する例について説明したが、これに限られず、送信用プローブ及び受信用プローブの少なくとも一方が複数のアンテナ部を有してもよい。また、センサ装置は、送信用プローブ及び受信用プローブをそれぞれ1つずつ備える例に限られず、少なくともいずれか一方が複数備えていてもよい。
【0118】
例えば、
図20に示すセンサ装置は、送信用プローブ21及び受信用プローブ22がそれぞれ2つのアンテナ部210,220を有する。この例では、送信用プローブ21のアンテナ部210と受信用プローブ22のアンテナ部220は、相互に対向するように両プローブ21,22の軸方向に沿って所定の間隔をおいて配置される。
【0119】
図21に示すセンサ装置は、2つの送信用プローブ21と1つの受信用プローブとを備え、各プローブが1つのアンテナ部210,220を有する。この例では、2つの送信用プローブ21の間に受信用プローブ22が配置され、各送信用プローブ21のアンテナ部210から受信用プローブ22のアンテナ部220に向けて電磁波を送信するように構成される。
【0120】
図22に示すセンサ装置は、2つの送信用プローブ21と2つの受信用プローブ22とを備え、各送信用プローブ21が1つの受信用プローブ22と対をなすように相互に対向して配置される。この例では、各プローブ21,22が
図20に示すようにアンテナ部210,220を2つずつ有する場合を示しているが、これに限られず、各プローブ21,22がアンテナ部210,220を1つずつ有する場合についても同様に適用可能である。
【0121】
図23に示すセンサ装置は、2つのアンテナ部210を有する送信用プローブ21と、1つのアンテナ部220を有する受信用プローブ22とを備え、受信用プローブ22のアンテナ部220が送信用プローブ21の各アンテナ部210から送信される電磁波を受信することが可能に構成される。
【0122】
図24に示すセンサ装置は、1つのアンテナ部210を有する送信用プローブ21と、2つのアンテナ部220を有する受信用プローブ22とを備え、送信用プローブ21のアンテナ部210が受信用プローブ22の各アンテナ部220に向けて電磁波を送信することが可能に構成される。
【0123】
図25に示すセンサ装置は、1つの送信用プローブ21と2つの受信用プローブ22とを備え、各プローブが1つのアンテナ部210,220を有する。この例では、2つの受信用プローブ22の間に送信用プローブ21が配置され、各受信用プローブ22のアンテナ部220が送信用プローブ21のアンテナ部210から送信される電磁波を受信することが可能に構成される。
【0124】
図26に示すセンサ装置は、1つの送信用プローブ21と2つの受信用プローブ22とを備え、各プローブが1つのアンテナ部210,220を有する。この例においても、各受信用プローブ22のアンテナ部220が送信用プローブ21のアンテナ部210から送信される電磁波を受信することが可能に構成されるが、各受信用プローブ22のアンテナ部220は、送信用プローブ21のアンテナ部210に対して異なる距離をおいて配置される。
【0125】
なお、本技術は以下のような構成もとることができる。
(1) 送信用の第1のアンテナ部を有する第1のプローブと、前記第1のプローブと所定の距離をおいて対向する受信用の第2のアンテナ部を有する第2のプローブとを含むセンサヘッドと、
前記第1及び第2のアンテナ部の間における媒質中での電磁波の伝搬特性に関する情報を含む測定信号を生成する信号生成部を有する測定ユニットと
を具備するセンサ装置。
(2)上記(1)に記載のセンサ装置であって、
前記第1及び第2のプローブは、芯線部とシールド部とを有する同軸ケーブルで構成され、
前記第1及び第2のアンテナ部は、前記シールド部の一部に設けられた開口部を含む
センサ装置。
(3)上記(2)に記載のセンサ装置であって、
前記第1及び第2のプローブは、前記芯線部の終端部と前記シールド部との間に電気的に接続された終端抵抗をそれぞれ有する
センサ装置。
(4)上記(2)又は(3)に記載のセンサ装置であって、
前記センサヘッドは、前記第1及び第2のプローブに設けられ前記開口部の周辺の前記シールド部を被覆する電磁波吸収材をさらに有する
センサ装置。
(5)上記(4)に記載のセンサ装置であって、
前記電磁波吸収材は、フェライトを含む
センサ装置。
(6)上記(1)に記載のセンサ装置であって、
前記センサヘッドは、第1のアーム部と、第2のアーム部と、前記第1及び第2のアーム部を連結する連結部とを含む支持基板をさらに有し、
前記第1及び第2のプローブは、前記第1及び第2のアーム部にそれぞれ設けられたストリップ線路で構成される
センサ装置。
(7)上記(6)に記載のセンサ装置であって、
前記測定ユニットは、前記連結部に搭載される
センサ装置。
(8)上記(1)~(7)のいずれか1つに記載のセンサ装置であって、
前記センサヘッドは、前記第1及び第2のプローブの少なくとも一方に設けられ前記媒質の温度を検出することが可能に構成された温度検出部をさらに有する
センサ装置。
(9)上記(1)~(8)のいずれか1つに記載のセンサ装置であって、
前記センサヘッドは、前記第1及び第2のプローブの少なくとも一方に設けられ前記媒質の電気伝導度を検出することが可能に構成された電気伝導度検出部をさらに有する
センサ装置。
(10)上記(1)~(9)のいずれか1つに記載のセンサ装置であって、
前記信号生成部は、前記第1のプローブに所定周波数のパルス信号を入力する信号発生器と、前記第2のプローブの出力を直交検波する検波器とを有する
センサ装置。
(11)上記(1)~(10)のいずれか1つに記載のセンサ装置であって、
前記測定ユニットは、前記測定信号を情報処理装置へ送信することが可能に構成された通信部をさらに有する
センサ装置。
(12) 送信用の第1のアンテナ部を有する第1のプローブと、前記第1のプローブと所定の距離をおいて対向する受信用の第2のアンテナ部を有する第2のプローブとを含むセンサヘッドと、
前記第1及び第2のアンテナ部の間における媒質中での電磁波の伝搬特性に関する情報を含む測定信号を生成する測定ユニットと、
前記測定信号に基づいて、前記媒質中の水分量を測定する信号処理ユニットと
を具備する水分量測定装置。
(13)上記(12)に記載の水分量測定装置であって、
前記信号処理ユニットは、
前記測定信号に基づいて前記第1及び第2のプローブ間における電磁波の伝搬遅延時間を算出する遅延時間算出部と、
前記伝搬遅延時間に基づいて媒質の比誘電率を算出する比誘電率算出部と、
前記比誘電率に基づいて前記媒質中の水分量を算出する水分量算出部と
を有する
水分量測定装置。
(14)上記(12)又は(13)に記載の水分量測定装置であって、
前記センサヘッドは、前記媒質の温度を検出することが可能に構成された温度検出部をさらに有し、
前記信号処理ユニットは、前記温度検出部の出力に基づいて前記水分量を補正する
水分量測定装置。
(15)上記(12)~(14)のいずれか1つに記載の水分量測定装置であって、
前記センサヘッドは、前記媒質の電気伝導度を検出することが可能に構成された電気伝導度検出部をさらに有し、
前記信号処理ユニットは、前記電気伝導度検出部の出力に基づいて前記水分量を補正する
水分量測定装置。
(16) 媒質中に配置された第1のプローブの第1のアンテナ部から送信された電磁波を、前記第1のプローブと所定の距離をおいて前記媒質中に配置された第2のプローブの第2のアンテナ部で受信することで、前記電磁波の伝搬特性に関する情報を含む測定信号を生成し、
前記測定信号に基づいて、前記媒質中の水分量を測定する
水分量測定方法。
(17)上記(16)に記載の水分量測定方法であって、
前記水分量の測定は、
前記測定信号に基づいて測定された前記電磁波の伝搬遅延時間を算出し、
前記伝搬遅延時間に基づいて前記媒質の比誘電率を算出し、
前記比誘電率に基づいて前記媒質中の水分量を算出することを含む
水分量測定方法。
(18)上記(16)又は(17)に記載の水分量測定方法であって、
前記媒質は、土壌である
水分量測定方法。
(19) 媒質中に配置された第1のプローブの第1のアンテナ部から送信され、前記第1のプローブと所定の距離をおいて前記媒質中に配置された第2のプローブの第2のアンテナ部で受信された電磁波に基づいて、前記第1及び第2のプローブ間における電磁波の伝搬遅延時間を算出する遅延時間算出部と、
前記伝搬遅延時間に基づいて媒質の比誘電率を算出する比誘電率算出部と、
前記比誘電率に基づいて前記媒質中の水分量を算出する水分量算出部と
を具備する情報処理装置。
(20) 媒質中に配置された第1のプローブの第1のアンテナ部から送信され、前記第1のプローブと所定の距離をおいて前記媒質中に配置された第2のプローブの第2のアンテナ部で受信された電磁波に基づいて、前記第1及び第2のプローブ間における電磁波の伝搬遅延時間を算出し、
前記伝搬遅延時間に基づいて媒質の比誘電率を算出し、
前記比誘電率に基づいて前記媒質中の水分量を算出する
情報処理方法。
【符号の説明】
【0126】
10,40…センサ装置
20,420…センサヘッド
21,421…送信用プローブ
22,422…受信用プローブ
23…終端抵抗
24,424…スリーブ
25…温度検出部
26…電気伝導度検出部
30,430…測定ユニット
31…信号生成部
32…通信部
50…信号処理ユニット
51…遅延時間算出部
52…比誘電率算出部
53…水分量算出部
100,200,300…水分量測定装置
210,220,4210,4220…アンテナ部
310…制御部
311…信号発生器
313…位相シフタ
314…混合器