(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-31
(45)【発行日】2022-09-08
(54)【発明の名称】多発性嚢胞腎疾患の処置のための修飾オリゴヌクレオチド
(51)【国際特許分類】
C12N 15/113 20100101AFI20220901BHJP
C07H 21/00 20060101ALI20220901BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20220901BHJP
A61K 31/7125 20060101ALI20220901BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20220901BHJP
【FI】
C12N15/113 Z ZNA
C07H21/00 CSP
A61P13/12
A61K31/7125
A61K48/00
(21)【出願番号】P 2019529933
(86)(22)【出願日】2017-12-04
(86)【国際出願番号】 US2017064428
(87)【国際公開番号】W WO2018106566
(87)【国際公開日】2018-06-14
【審査請求日】2020-12-02
(32)【優先日】2016-12-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513267855
【氏名又は名称】レグルス セラピューティクス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アラーソン チャールズ アール.
【審査官】鈴木 崇之
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/123449(WO,A2)
【文献】特表2010-539959(JP,A)
【文献】Mol. Biol. Rep.,2010年,Vol. 37,pp. 2951-2958
【文献】MEDCHEM NEWS,2015年,Vol. 25, No. 2,pp. 103-108
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
CAplus/REGISTRY(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
9個の結合したヌクレオシドからなる修飾オリゴヌクレオチドを含む化合物であって、前記修飾オリゴヌクレオチドが、5′から3′の方向に下記のヌクレオシドパターンを有する、前記化合物
N
SN
SN
MN
FN
FN
FN
MN
SN
S
[式中、下付き文字「M」を後に伴うヌクレオシドは、2′-O-メチルヌクレオシドであり、下付き文字「F」を後に伴うヌクレオシドは、2′-フルオロヌクレオシドであり、下付き文字「S」を後に伴うヌクレオシドは、S-cEtヌクレオシドであり、全ての結合は、ホスホロチオエート結合であり;
前記修飾オリゴヌクレオチドの核酸塩基配列は、核酸塩基配列
5′-AGCACUUUG-3′を含み、配列中、各シトシンは、非メチル化シトシン及び5-メチルシトシンから独立的に選択される]
またはその薬学的に許容される塩。
【請求項2】
各シトシンが非メチル化シトシンである、請求項
1に記載の化合物。
【請求項3】
前記修飾オリゴヌクレオチドまたはその薬学的に許容される塩からなる、請求項1
又は2に記載の化合物。
【請求項4】
前記薬学的に許容される塩がナトリウム塩である、請求項1~
3のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項5】
下記構造を有する修飾オリゴヌクレオチド
【化1】
またはその薬学的に許容される塩。
【請求項6】
前記構造の薬学的に許容される塩である、請求項
5に記載の修飾オリゴヌクレオチド。
【請求項7】
前記構造のナトリウム塩である、請求項
6に記載の修飾オリゴヌクレオチド。
【請求項8】
下記構造を有する修飾オリゴヌクレオチド。
【化2】
【請求項9】
請求項1~
4のいずれか1項に記載の化合物または請求項
5~8のいずれか1項に記載の修飾オリゴヌクレオチドと、薬学的に許容される希釈剤とを含む、薬学的組成物。
【請求項10】
前記薬学的に許容される希釈剤が水性溶液である、請求項
9に記載の薬学的組成物。
【請求項11】
前記水性溶液が食塩水である、請求項
10に記載の薬学的組成物。
【請求項12】
請求項1~
4のいずれか1項に記載の化合物または請求項
5~8のいずれか1項に記載の修飾オリゴヌクレオチドを含む薬学的組成物であって、凍結乾燥組成物である、前記薬学的組成物。
【請求項13】
食塩水中の、請求項1~
4のいずれか1項に記載の化合物または請求項
5~8のいずれか1項に記載の修飾オリゴヌクレオチドから本質的になる、薬学的組成物。
【請求項14】
細胞におけるmiR-17ファミリーのうちの1つ以上のメンバーの活性を阻害するための
in vitrоの方法であって、前記細胞を、請求項1~
4のいずれか1項に記載の化合物または請求項
5~8のいずれか1項に記載の修飾オリゴヌクレオチドに接触させることを含む、前記方法。
【請求項15】
対象におけるmiR-17ファミリーのうちの1つ以上のメンバーの活性を阻害するための
薬学的組成物である、
請求項9~13のいずれかに記載の薬学的組成物。
【請求項16】
前記対象がmiR-17に関連する疾患を有する、請求項
15に記載の
薬学的組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2016年12月5日出願の米国仮出願第62/430,139号の優先権の恩典を主張し、当該仮出願はあらゆる目的においてその全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0002】
発明の分野
本明細書では、多発性嚢胞腎疾患の処置のための組成物及び方法が提供される。
【背景技術】
【0003】
「多発性嚢胞腎疾患」は、腎臓内に液体で満たされた多数の嚢胞が蓄積することを特徴とする。この嚢胞は、嚢胞上皮と呼ばれる単層の上皮細胞により覆われている。嚢胞は、時間と共に、細胞増殖の上昇や嚢胞上皮による活発な液体分泌のため、サイズが増大する。拡大した嚢胞は周囲の正常組織を圧迫し、腎機能の低下をもたらす。当該疾患は、やがて透析または腎移植を必要とする末期腎疾患に進行する。この段階では、嚢胞は、萎縮した尿細管を含む線維化領域に囲まれていると考えられる。
【0004】
複数の遺伝子的障害が多発性嚢胞腎疾患(PKD)をもたらし得る。様々な形態のPKDは、遺伝の様式(例えば、常染色体優性遺伝または常染色体劣性遺伝;腎臓外の臓器の関与及び表現型の提示;末期腎疾患の発症年齢、例えば、誕生時、小児期、または成人期;ならびに当該疾患に関連する根源的な遺伝子変異)により区別される。例えば、Kurschat et al.,2014,Nature Reviews Nephrology,10:687-699を参照。
【発明の概要】
【0005】
実施形態1。9個の結合したヌクレオシドからなる修飾オリゴヌクレオチドを含む化合物であって、前記修飾オリゴヌクレオチドが、5′から3′の方向に下記のヌクレオシドパターンを有する、前記化合物
NSNSNMNFNFNFNMNSNS
[式中、下付き文字「M」を後に伴うヌクレオシドは、2′-O-メチルヌクレオシドであり、下付き文字「F」を後に伴うヌクレオシドは、2′-フルオロヌクレオシドであり、下付き文字「S」を後に伴うヌクレオシドは、S-cEtヌクレオシドであり、全ての結合は、ホスホロチオエート結合であり;
前記修飾オリゴヌクレオチドの核酸塩基配列は、核酸塩基配列5′-CACUUU-3′を含み、配列中、各シトシンは、非メチル化シトシン及び5-メチルシトシンから独立的に選択される]
またはその薬学的に許容される塩。
【0006】
実施形態2。前記修飾オリゴヌクレオチドの核酸塩基配列が核酸塩基配列5′-GCACUUU-3′を含み、配列中、各シトシンが、非メチル化シトシン及び5-メチルシトシンから独立的に選択される、実施形態1に記載の化合物。
【0007】
実施形態3。前記修飾オリゴヌクレオチドの核酸塩基配列が5′-AGCACUUUG-3′であり、配列中、各シトシンが、非メチル化シトシン及び5-メチルシトシンから独立的に選択される、実施形態1に記載の化合物。
【0008】
実施形態4。各シトシンが非メチル化シトシンである、実施形態1、2、または3のいずれか1つに記載の化合物。
【0009】
実施形態5。前記修飾オリゴヌクレオチドまたはその薬学的に許容される塩からなる、実施形態1~4のいずれか1つに記載の化合物。
【0010】
実施形態6。前記薬学的に許容される塩がナトリウム塩である、実施形態1~5のいずれか1つに記載の化合物。
【0011】
実施形態7。下記構造を有する修飾オリゴヌクレオチド
【化1】
またはその薬学的に許容される塩。
【0012】
実施形態8。前記構造の薬学的に許容される塩である、実施形態7に記載の修飾オリゴヌクレオチド。
【0013】
実施形態9。前記構造のナトリウム塩である、実施形態7に記載の修飾オリゴヌクレオチド。
【0014】
実施形態10。下記構造を有する修飾オリゴヌクレオチド。
【化2】
【0015】
実施形態11。実施形態1~6のいずれか1つに記載の化合物または実施形態7~10のいずれか1つに記載の修飾オリゴヌクレオチドと、薬学的に許容される希釈剤とを含む、薬学的組成物。
【0016】
実施形態12。前記薬学的に許容される希釈剤が水性溶液である、実施形態11に記載の薬学的組成物。
【0017】
実施形態13。前記水性溶液が食塩水である、実施形態12に記載の薬学的組成物。
【0018】
実施形態14。実施形態1~6のいずれか1つに記載の化合物または実施形態7~10のいずれか1つに記載の修飾オリゴヌクレオチドを含む薬学的組成物であって、凍結乾燥組成物である、前記薬学的組成物。
【0019】
実施形態15。食塩水中の、実施形態1~6のいずれか1つに記載の化合物または実施形態7~10のいずれか1つに記載の修飾オリゴヌクレオチドから本質的になる、薬学的組成物。
【0020】
実施形態16。細胞におけるmiR-17ファミリーのうちの1つ以上のメンバーの活性を阻害するための方法であって、前記細胞を、実施形態1~6のいずれか1つに記載の化合物または実施形態7~10のいずれか1つに記載の修飾オリゴヌクレオチドに接触させることを含む、前記方法。
【0021】
実施形態17。対象におけるmiR-17ファミリーのうちの1つ以上のメンバーの活性を阻害するための方法であって、前記対象に、実施形態11~15のいずれか1つに記載の薬学的組成物を投与することを含む、前記方法。
【0022】
実施形態18。前記対象がmiR-17に関連する疾患を有する、実施形態17に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】(A)miR-17のルシフェラーゼアッセイにおけるRG4326の活性。(B)miR-17ファミリーメンバーのルシフェラーゼアッセイにおけるRG4326活性。
【
図2】RG4326または対照RG5124による処置後の、IMCD3細胞におけるPDシグネチャースコア。
【
図3】(A)野生型マウスの腎臓及び(B)RG4326処置マウスの腎臓におけるmiR-17ターゲットエンゲージメントを示すmiPSA。
【
図4】PKDのPkd2-KOモデルにおけるRG4326の有効性。処置が、(A)腎臓対体重比、(B)血中尿素窒素(BUN)レベル、及び(C)嚢胞インデックスに及ぼす効果。
【
図5】PKDのPcyモデルにおけるRG4326の有効性。処置が、(A)腎臓対体重比、(B)血中尿素窒素(BUN)レベル、及び(C)嚢胞インデックスに及ぼす効果。
【発明を実施するための形態】
【0024】
別途定義されない限り、本明細書で使用されている全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されている意味と同じ意味を有する。具体的な定義が示されない限り、本明細書に記載されている分析化学、合成有機化学、ならびに医療的化学及び薬学的化学に関連して利用されている命名法、ならびにこれらの手順及び技法は、当技術分野で周知され一般に使用されているものである。本明細書中の用語について複数の定義が存在する場合は、本項の定義が優先される。化学合成、化学分析、薬学的調製、製剤及び送達、ならびに対象の処置に対し、標準的技法を使用することができる。ある特定のこのような技法及び手順は、例えば、Sanghvi及びCook編“Carbohydrate Modifications in Antisense Research”,American Chemical Society,Washington D.C.,1994;ならびに“Remington’s Pharmaceutical Sciences,” Mack Publishing Co.,Easton,Pa.,18th edition,1990に見いだすことができ、これらはあらゆる目的において参照により本明細書に組み入れられる。可能な場合、本明細書における開示内容の全体にわたり言及されている全ての特許、特許出願、公開された出願及び刊行物、GENBANK配列、ウェブサイト、ならびにその他の公開された資料は、別段の記載がない限り、その全体が参照により組み入れられる。URL、または他のこのような識別子もしくはアドレスが引用されている場合、このような識別子やインターネット上の特定の情報は変化する可能性があるが、インターネットを検索することにより同等の情報を見いだすことができることを理解されたい。これらに対する言及は、このような情報の可用性や公共的な普及を立証するものである。
【0025】
本発明の組成物及び方法を開示し説明する前に、本明細書で使用する用語は、特定の実施形態を説明するためのものであり、限定的であるようには意図されていないことを理解されたい。本明細書及び付属の請求項で使用する単数形「a」、「an)」、及び「the」は、文脈による別段の明確な定めがない限り、複数の指示対象を含むことに注意しなければならない。
【0026】
定義
「多発性嚢胞腎疾患」または「PKD」は、腎臓内に液体で満たされた多数の嚢胞が蓄積することを特徴とする嚢胞性腎疾患である。少なくとも1つの腎臓に複数の嚢胞が形成され、これはしばしば、発症した腎臓(複数可)の拡大や進行性の腎機能喪失につながる。
【0027】
「多発性嚢胞腎疾患のマーカー」とは、多発性嚢胞腎疾患の重症度、腎機能、及び/または多発性嚢胞腎疾患を有する対象の処置に対する応答を評価するために使用される医学的パラメーターを意味する。多発性嚢胞腎疾患のマーカーの非限定的な例としては、総腎容積、高血圧、糸球体濾過量、及び腎臓痛が挙げられる。
【0028】
「腎機能のマーカー」とは、対象における腎機能を評価するために使用される医学的パラメーターを意味する。腎機能のマーカーの非限定的な例としては、糸球体濾過量、血中尿素窒素レベル、及び血清クレアチニンレベルが挙げられる。
【0029】
「常染色体優性多発性嚢胞腎疾患」または「ADPKD」は、PKD1及び/またはPKD2遺伝子における1つ以上の遺伝子変異によって引き起こされる多発性嚢胞腎疾患である。ADPKDの85%は、第16染色体上に位置するPKD1における変異によって引き起こされ、残りのADPKD症例の多くは、第4染色体上に位置するPKD2における変異によって引き起こされる。
【0030】
「常染色体劣性多発性嚢胞腎疾患」または「ARPKD」は、第6染色体上に位置するPKHD1遺伝子における1つ以上の遺伝子変異によって引き起こされる多発性嚢胞腎疾患である。ARPKDを有する新生児の最大50%が子宮内腎疾患の合併症により死亡し、生存した新生児の約1/3が10年以内に末期腎疾患(ESRD)に罹患する。
【0031】
「ネフロン癆」または「NPHP」とは、皮髄の嚢胞、尿細管基底膜の崩壊、及び尿細管間質性ネフロパシーを特徴とする常染色体劣性嚢胞性腎疾患を意味する。
【0032】
「総腎容積」または「TKV」は、総腎容積の測定値である。総腎容積は、磁気共鳴イメージング(MRI)、コンピューター断層撮影(CT)スキャン、または超音波(US)イメージングにより定量することができ、当該容積は、楕円体容積の方程式(超音波向け)のような標準的方法論、または定量的立体解析学もしくは境界追跡(CT/MRI向け)により算出される。
【0033】
「身長補正総腎容積」または「HtTKV」は、単位高さ当たりの総腎容積の尺度である。HtTKV値≧600ml/mを有する患者は、8年以内にステージ3の慢性腎疾患に罹患することが予測される。
【0034】
「腎臓痛」とは、医療休暇、薬理学的処置(麻薬性もしくは最終手段の鎮痛剤)、または侵襲的介入を必要とする臨床的に顕著な腎臓痛を意味する。
【0035】
「高血圧悪化」とは、高血圧処置の開始または増大を必要とする血圧の変化を意味する。
【0036】
「線維化」とは、臓器または組織における過剰な線維性結合組織の形成または発生を意味する。ある特定の実施形態において、線維化は、修復性または反応性のプロセスとして生じる。ある特定の実施形態において、線維化は、損傷または傷害に応答して生じる。「線維化」という用語は、臓器または組織の正常な構成要素としての線維性組織の形成とは対照的に、修復性または反応性のプロセスとしての、臓器または組織における過剰な線維性結合組織の形成または発生として理解されるものとする。
【0037】
「血尿」とは、尿中に赤血球が存在することを意味する。
【0038】
「アルブミン尿」とは、尿中に過剰なアルブミンが存在することを意味し、アルブミン尿としては、以下に限定されないが、正常アルブミン尿、正常高アルブミン尿、微量アルブミン尿、マクロアルブミン尿が挙げられる。通常、たこ足細胞、糸球体基底膜、及び内皮細胞から構成されている糸球体濾過の透過性バリアは、血清タンパク質が尿に漏出するのを防止する。アルブミン尿は、糸球体濾過の透過性バリアの傷害を反映している可能性がある。アルブミン尿は、24時間尿サンプル、一晩尿サンプル、またはスポット尿サンプルから算出することができる。
【0039】
「正常高アルブミン尿」とは、(i)24時間当たり15~30mg未満のアルブミンが尿中に排出されること、及び/または(ii)アルブミン/クレアチニン比が男性で1.25~2.5mg/mmol未満(または10~20mg/g未満)、女性で1.75~3.5mg/mmol未満(または15~30mg/g未満)であることを特徴とするアルブミン尿の上昇を意味する。
【0040】
「微量アルブミン尿」とは、(i)24時間当たり30~300mgのアルブミンが尿中に排出されること、及び/または(ii)アルブミン/クレアチニン比が男性で2.5~25mg/mmol未満(または20~200mg/g未満)、女性で3.5~35mg/mmol未満(または30~300mg/g未満)であることを特徴とするアルブミン尿の上昇を意味する。
【0041】
「マクロアルブミン尿」とは、24時間当たり300mgを超えるアルブミンが尿中に排出されること、及び/または(ii)アルブミン/クレアチニン比が男性で>25mg/mmol(または>200mg/g)、女性で>35mg/mmol(または>300mg/g)であることを特徴とするアルブミン尿の上昇を意味する。
【0042】
「アルブミン/クレアチニン比」とは、尿中クレアチニン(g/dL)当たりの尿中アルブミン(mg/dL)の比を意味し、mg/gとして表される。ある特定の実施形態において、アルブミン/クレアチニン比は、スポット尿サンプルから算出することができ、これは24時間の期間にわたるアルブミン排出の推定値として使用することができる。
【0043】
「糸球体濾過量」または「GFR」とは、腎臓で濾過された液体の流量を意味し、対象における腎機能の指標として使用される。ある特定の実施形態において、対象のGFRは、推算糸球体濾過量を算出することにより定量される。ある特定の実施形態において、対象のGFRは、イヌリン法を用いて対象内で直接測定される。
【0044】
「推算糸球体濾過量」または「eGFR」とは、どの程度腎臓がクレアチニンを濾過するかの測定値を意味し、これは糸球体濾過量を概算するために使用される。GFRを直接測定するのは複雑であるため、診療ではeGFRが頻繁に使用されている。正常な結果は、90~120mL/分/1.73m2を範囲とし得る。3ヵ月以上続く60mL/分/1.73m2未満のレベルは、慢性腎疾患の指標であり得る。15mL/分/1.73m2未満のレベルは、腎不全の指標であり得る。
【0045】
「タンパク尿」とは、尿中に過剰な血清タンパク質が存在することを意味する。タンパク尿は、24時間当たり>250mgのタンパク質が尿中に排出されること、及び/または尿タンパク質対クレアチニン比が≧0.20mg/mgであることを特徴とし得る。尿タンパク質に関連して上昇する血清タンパク質としては、以下に限定されないが、アルブミンが挙げられる。
【0046】
「血中尿素窒素レベル」または「BUNレベル」とは、血液中における尿素の形態での窒素の量の尺度を意味する。肝臓は、尿素回路において、タンパク質消化の廃棄物としての尿素を産生し、尿素は、腎臓によって血液から除去される。正常な成人の血液は、100ml(7~21mg/dL)の血液当たり7から21mgの間の尿素窒素を含有し得る。血中尿素窒素レベルの測定は、腎臓の健康状態の指標として使用される。腎臓が血液から尿素を正常に除去することができない場合、対象のBUNレベルは増加する。
【0047】
「上昇」とは、臨床的に有意義であると考えられている医学的パラメーターの増大を意味する。医療従事者は、増大が臨床的に重要であるかどうかを判定することができる。
【0048】
「末期腎疾患(ESRD)」とは、完全またはほぼ完全な腎機能の不全を意味する。
【0049】
「クオリティーオブライフ」とは、対象の身体的、心理的、及び社会的な機能性が疾患及び/または疾患の処置により損なわれる程度を意味する。多発性嚢胞腎疾患を有する対象では、クオリティーオブライフが低減される恐れがある。
【0050】
「腎機能障害」とは、正常な腎機能との対比において腎機能が低減していることを意味する。
【0051】
「~の悪化を遅らせる」及び「悪化を遅らせる」とは、医学的状態が進行状態に移る速度を低減することを意味する。
【0052】
「透析までの時間を遅延させる」とは、十分な腎機能を維持することにより、透析処置の必要性を遅延させることを意味する。
【0053】
「腎移植までの時間を遅延させる」とは、十分な腎機能を維持することにより、腎移植の必要性を遅延させることを意味する。
【0054】
「期待寿命を向上させる」とは、対象における疾患の1つ以上の症状を処置することにより、対象の寿命を長くすることを意味する。
【0055】
「対象」とは、処置または療法のために選択されたヒトまたは非ヒト動物を意味する。
【0056】
「それを必要とする対象」とは、療法または処置を必要とすると同定されている対象を意味する。
【0057】
「~を有する疑いのある対象」とは、疾患の1つ以上の臨床的指標を示す対象を意味する。
【0058】
「miR-17に関連する疾患」とは、1つ以上のmiR-17ファミリーメンバーの活性により調節された疾患または状態を意味する。
【0059】
「投与する」とは、薬学的作用物質または薬学的組成物を対象に提供することを意味し、以下に限定されないが、医療専門家による投与及び自己投与を含む。
【0060】
「非経口投与」とは、注射または注入による投与を意味する。非経口投与としては、以下に限定されないが、皮下投与、静脈内投与、及び筋肉内投与が挙げられる。
【0061】
「皮下投与」とは、皮膚直下への投与を意味する。
【0062】
「静脈内投与」とは、静脈内への投与を意味する。
【0063】
「同時に投与される」とは、2つ以上の作用物質を、患者内で同時に両方の作用物質の薬理学的効果も著明となる任意の方法で同時に投与することを指す。同時投与において、両方の作用物質を単一の薬学的組成物、同じ剤形、または同じ投与経路で投与することは求められない。両方の作用物質の効果が同時に示される必要はない。これらの効果は、一定期間重複すれば十分であり、同一時間にわたる必要はない。
【0064】
「持続時間」とは、活性または事象が継続する期間を指す。ある特定の実施形態において、処置の持続時間は、薬学的作用物質または薬学的組成物の用量が投与される期間である。
【0065】
「療法」とは、疾患の処置方法を意味する。ある特定の実施形態において、療法は、以下に限定されないが、疾患を有する対象に対する1つ以上の薬学的作用物質の投与を含む。
【0066】
「処置する」とは、ある疾患の少なくとも1つの指標の緩和に使用される1つ以上の具体的手順を適用することを意味する。ある特定の実施形態において、具体的手順は、1つ以上の薬学的作用物質の投与である。ある特定の実施形態において、PKDの処置としては、以下に限定されないが、総腎容積の低減、腎機能の向上、高血圧の低減、及び/または腎臓痛の低減が挙げられる。
【0067】
「緩和する」とは、ある状態または疾患における少なくとも1つの指標の重症度を軽減することを意味する。ある特定の実施形態において、緩和は、ある状態または疾患における1つ以上の指標の進行を遅延させるまたは遅らせることを含む。指標の重症度は、当業者に公知の主観的または客観的な尺度により判定することができる。
【0068】
「~に罹患するリスクがある」とは、対象がある状態または疾患に罹患する素因になる状態を意味する。ある特定の実施形態において、ある状態または疾患に罹患するリスクがある対象は、当該状態または疾患の1つ以上の症状を示すが、当該状態または疾患と診断されるのに十分な数の症状は示さない。ある特定の実施形態において、ある状態または疾患に罹患するリスクがある対象は、当該状態または疾患の1つ以上の症状を示すが、当該状態または疾患と診断されるのに求められる程度よりも少ない程度で示す。
【0069】
「~の発症を防止する」とは、ある状態または疾患に罹患するリスクがある対象における当該状態または疾患の罹患を防止することを意味する。ある特定の実施形態において、ある疾患または状態に罹患するリスクがある対象は、既に当該疾患または状態を有する対象が受ける処置に類似した処置を受ける。
【0070】
「~の発症を遅延させる」とは、ある状態または遅延に罹患するリスクがある対象における当該状態または疾患の罹患を遅延させることを意味する。ある特定の実施形態において、ある疾患または状態に罹患するリスクがある対象は、既に当該疾患または状態を有する対象が受ける処置に類似した処置を受ける。
【0071】
「用量」とは、単回投与で提供される薬学的作用物質の指定量を意味する。ある特定の実施形態において、ある用量は、2つ以上のボーラス、錠剤、または注射で投与することができる。例えば、ある特定の実施形態において、皮下投与が所望される場合、所望の用量では、単回注射による適応が容易ではない量が必要となる。このような実施形態においては、所望の用量を達成するために2つ以上の注射を使用してもよい。ある特定の実施形態において、ある用量は、個体における注射部位反応を最小限に抑えるために、2つ以上の注射で投与することができる。ある特定の実施形態において、ある用量は、緩徐注入として投与される。
【0072】
「投薬単位」とは、薬学的作用物質が提供される形態を意味する。ある特定の実施形態において、投薬単位は、凍結乾燥されたオリゴヌクレオチドを含有するバイアルである。ある特定の実施形態において、投薬単位は、再構成されたオリゴヌクレオチドを含有するバイアルである。
【0073】
「治療有効量」とは、動物に対し治療利益をもたらす薬学的作用物質の量を指す。
【0074】
「薬学的組成物」とは、個体への投与に好適な、薬学的作用物質を含む物質の混合物を意味する。例えば、薬学的組成物は、無菌の水性溶液を含むことができる。
【0075】
「薬学的作用物質」とは、対象に投与したときに治療効果をもたらす物質を意味する。
【0076】
「活性薬学的成分」とは、所望された効果をもたらす、薬学的組成物中の物質を意味する。
【0077】
「薬学的に許容される塩」とは、本明細書で提供される化合物の生理的及び薬学的に許容される塩、すなわち、対象に投与したときに、当該化合物の所望される生物学的活性を保持し、所望されない毒性学的効果を有しない塩を意味する。非限定的な例示となる、本明細書で提供される化合物の薬学的に許容される塩としては、ナトリウム塩形態及びカリウム塩形態が挙げられる。本明細書において、「化合物」、「オリゴヌクレオチド」、及び「修飾オリゴヌクレオチド」という用語には、別段の具体的な指示がない限り、その薬学的に許容される塩が含まれる。
【0078】
「食塩水」とは、塩化ナトリウムの水中溶液を意味する。
【0079】
「臓器機能の向上」とは、臓器機能における正常限界方向への変化を意味する。ある特定の実施形態において、臓器機能は、対象の血液中または尿中で見いだされる分子を測定することにより評価される。例えば、ある特定の実施形態において、腎臓機能の向上は、血中尿素窒素レベルの低減、タンパク質尿の低減、アルブミン尿の低減などにより測定される。
【0080】
「許容される安全性プロファイル」とは、臨床的許容限界内にある副作用のパターンを意味する。
【0081】
「副作用」とは、所望される効果以外の、処置に起因し得る生理的応答を意味する。ある特定の実施形態において、副作用としては、以下に限定されないが、注射部位反応、肝機能検査異常、腎機能異常、肝毒性、腎毒性、中枢神経系異常、及びミオパシーが挙げられる。このような副作用は、直接的または間接的に検出することができる。例えば、血清中のアミノトランスフェラーゼレベルの増大は、肝毒性または肝機能異常を意味すると考えられる。例えば、ビリルビンの増大は、肝毒性または肝機能異常を意味すると考えられる。
【0082】
本明細書において「血液」という用語は、全血と、血清及び血漿のような血液分画とを包含する。
【0083】
「抗miR」とは、マイクロRNAに対し相補的な核酸塩基配列を有するオリゴヌクレオチドを意味する。ある特定の実施形態において、抗miRは修飾オリゴヌクレオチドである。
【0084】
「抗miR-17」とは、1つ以上のmiR-17ファミリーメンバーに対し相補的な核酸塩基配列を有する修飾オリゴヌクレオチドを意味する。ある特定の実施形態において、抗miR-17は、1つ以上のmiR-17ファミリーメンバーに対し完全に相補的(すなわち100%相補的)である。ある特定の実施形態において、抗miR-17は、1つ以上のmiR-17ファミリーメンバーに対し、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも95%相補的である。
【0085】
「miR-17」とは、核酸塩基配列5′-CAAAGUGCUUACAGUGCAGGUAG-3′(配列番号1)を有する成熟miRNAを意味する。
【0086】
「miR-20a」とは、核酸塩基配列5′-UAAAGUGCUUAUAGUGCAGGUAG-3′(配列番号2)を有する成熟miRNAを意味する。
【0087】
「miR-20b」とは、核酸塩基配列5′-CAAAGUGCUCAUAGUGCAGGUAG-3′(配列番号3)を有する成熟miRNAを意味する。
【0088】
「miR-93」とは、核酸塩基配列5′-CAAAGUGCUGUUCGUGCAGGUAG-3′(配列番号4)を有する成熟miRNAを意味する。
【0089】
「miR-106a」とは、核酸塩基配列5′-AAAAGUGCUUACAGUGCAGGUAG-3′(配列番号5)を有する成熟miRNAを意味する。
【0090】
「miR-106b」とは、核酸塩基配列5′-UAAAGUGCUGACAGUGCAGAU-3′(配列番号6)を有する成熟miRNAを意味する。
【0091】
「miR-17シード配列」とは、核酸塩基配列5′-AAAGUG-3′を意味し、これはmiR-17ファミリーメンバーの各々に存在する。
【0092】
「miR-17ファミリーメンバー」とは、miR-17シード配列を含む核酸塩基配列を有する成熟miRNAを意味し、これはmiR-17、miR-20a、miR-20b、miR-93、miR-106a、及びmiR-106bから選択される。
【0093】
「miR-17ファミリー」とは、以下のグループ:miR-17、miR-20a、miR-20b、miR-93、miR-106a、及びmiR-106bのmiRNAを意味し、これらの各々は、miR-17シード配列を含む核酸塩基配列を有する。
【0094】
「標的核酸」とは、オリゴマー化合物がこれとハイブリダイズするように設計されている核酸を意味する。
【0095】
「標的化」とは、標的核酸とハイブリダイズする核酸塩基配列を設計及び選択するプロセスを意味する。
【0096】
「~に標的化された」とは、標的核酸とのハイブリダイズを可能にする核酸塩基配列を有することを意味する。
【0097】
「調節(modulation)」とは、機能、量、または活性を変動させることを意味する。ある特定の実施形態において、調節とは、機能、量、または活性の増大を意味する。ある特定の実施形態において、調節とは、機能、量、または活性の減少を意味する。
【0098】
「発現」とは、遺伝子のコード情報を細胞内に存在し作動している構造に変換する任意の機能及びステップを意味する。
【0099】
「核酸塩基配列」とは、オリゴマー化合物または核酸内の連続した核酸塩基の順序を意味し、典型的には5′から3′の方向に列記され、いかなる糖、結合、及び/または核酸塩基修飾とも無関係である。
【0100】
「連続した核酸塩基」とは、核酸内で互いにすぐに隣接している核酸塩基を意味する。
【0101】
「核酸塩基相補性」とは、2つの核酸塩基が水素結合を介して非共有結合的に対形成する能力を意味する。
【0102】
「相補的」とは、ある核酸がもう1つの核酸またはオリゴヌクレオチドとハイブリダイズが可能であることを意味する。ある特定の実施形態において、相補的とは、標的核酸とハイブリダイズが可能なオリゴヌクレオチドを指す。
【0103】
「完全に相補的」とは、オリゴヌクレオチドの各々の核酸塩基が、標的核酸内の各々の対応位置にある核酸塩基との対形成が可能であることを意味する。ある特定の実施形態において、オリゴヌクレオチドは、マイクロRNAに対し完全に相補的(100%相補的とも称される)であり、すなわち、オリゴヌクレオチドの各々の核酸塩基は、マイクロRNA内の対応位置にある核酸塩基に対し相補的である。修飾オリゴヌクレオチドは、マイクロRNAに対し完全に相補的であり、かつマイクロRNAの長さ未満の複数の結合したヌクレオシドを有することができる。例えば、16個の結合したヌクレオシドを有するオリゴヌクレオチドは、オリゴヌクレオチドの各々の核酸塩基が、マイクロRNA内の対応位置にある核酸塩基に対し相補的である場合、マイクロRNAに対し完全に相補的である。ある特定の実施形態において、各々の核酸塩基がマイクロRNAのステムループ配列の領域内の核酸塩基に対し相補性を有するオリゴヌクレオチドは、マイクロRNAのステムループ配列に対し完全に相補的である。
【0104】
「パーセント相補性」とは、標的核酸の同じ長さの部分に対し相補的であるオリゴヌクレオチドの核酸塩基のパーセンテージを意味する。パーセント相補性は、標的核酸内の対応位置にある核酸塩基に対し相補的であるオリゴヌクレオチドの核酸塩基の数を、オリゴヌクレオチド内の核酸塩基の総数で割ることにより、算出される。
【0105】
「パーセント同一性」とは、第2の核酸内の対応位置にある核酸塩基に対し同一である第1の核酸内の核酸塩基の数を、第1の核酸内の核酸塩基の総数で割ったものを意味する。ある特定の実施形態において、第1の核酸はマイクロRNAであり、第2の核酸はマイクロRNAである。ある特定の実施形態において、第1の核酸はオリゴヌクレオチドであり、第2の核酸はオリゴヌクレオチドである。
【0106】
「ハイブリダイズする」とは、核酸塩基の相補性により生じる相補的核酸のアニーリングを意味する。
【0107】
「ミスマッチ」とは、第2の核酸の対応位置にある核酸塩基とのワトソン・クリック対形成が不可能である第1の核酸の核酸塩基を意味する。
【0108】
核酸塩基配列の文脈における「同一」とは、糖、結合、及び/または核酸塩基修飾と無関係に、かつ存在する任意のピリミジンのメチル化状態と無関係に、同じ核酸塩基配列を有することを意味する。
【0109】
「マイクロRNA」とは、18から25の間の核酸塩基長の内在的な非コードRNAを意味し、これは、ダイサー酵素によるプレマイクロRNA切断の産物である。成熟マイクロRNAの例は、miRBaseとして知られるマイクロRNAデータベースで見いだされる(microma.sanger.ac.uk/)。ある特定の実施形態において、マイクロRNAは「miR」と略される。
【0110】
「マイクロRNA制御転写物」とは、マイクロRNAにより制御されている転写物を意味する。
【0111】
「シードマッチ配列」とは、シード配列に対し相補的であり、かつシード配列と同じ長さである核酸塩基配列を意味する。
【0112】
「オリゴマー化合物」とは、複数の結合したモノマーサブユニットを含む化合物を意味する。オリゴマー化合物にはオリゴヌクレオチドが含まれる。
【0113】
「オリゴヌクレオチド」とは、複数の結合したヌクレオシドを含む化合物を意味し、このヌクレオシドの各々は、互いとは無関係に修飾されていても修飾されていなくてもよい。
【0114】
「天然存在のヌクレオシド間結合」とは、ヌクレオシド間における3′から5′のホスホジエステル結合を意味する。
【0115】
「天然糖」とは、DNA(2′-H)またはRNA(2′-OH)で見いだされる糖を意味する。
【0116】
「ヌクレオシド間結合」とは、隣接するヌクレオシド間の共有結合を意味する。
【0117】
「結合したヌクレオシド」とは、共有結合により連結したヌクレオシドを意味する。
【0118】
「核酸塩基」とは、もう1つの核酸塩基との非共有結合的対形成が可能な複素環式部分を意味する。
【0119】
「ヌクレオシド」とは、糖部分に結合した核酸塩基を意味する。
【0120】
「ヌクレオチド」とは、ヌクレオシドの糖部分に共有結合したリン酸基を有するヌクレオシドを意味する。
【0121】
複数の結合したヌクレオシド「からなる修飾オリゴヌクレオチドを含む化合物」とは、指定された数の結合したヌクレオシドを有する修飾オリゴヌクレオチドを含む化合物を意味する。したがって、この化合物は、追加的な置換基または結合体を含んでもよい。別段の指示がない限り、修飾オリゴヌクレオチドは相補的鎖とハイブリダイズせず、この化合物は、修飾オリゴヌクレオチドのヌクレオシド以外のいかなる追加的なヌクレオシドも含まない。
【0122】
「修飾オリゴヌクレオチド」とは、天然存在の末端、糖、核酸塩基、及び/またはヌクレオシド間結合との対比において1つ以上の修飾を有する1本鎖のオリゴヌクレオチドを意味する。修飾オリゴヌクレオチドは、非修飾ヌクレオシドを含んでもよい。
【0123】
「修飾ヌクレオシド」とは、天然存在のヌクレオシドからの任意の変化を有するヌクレオシドを意味する。修飾ヌクレオシドは、修飾糖及び非修飾核酸塩基を含んでもよい。修飾ヌクレオシドは、修飾糖及び修飾核酸塩基を含んでもよい。修飾ヌクレオシドは、天然糖及び修飾核酸塩基を含んでもよい。ある特定の実施形態において、修飾ヌクレオシドは、二環式ヌクレオシドである。ある特定の実施形態において、修飾ヌクレオシドは、二環式でないヌクレオシドである。
【0124】
「修飾ヌクレオシド間結合」とは、天然存在のヌクレオシド間結合からの任意の変化を意味する。
【0125】
「ホスホロチオエートヌクレオシド間結合」とは、非架橋原子のうちの1個が硫黄原子であるヌクレオシド間の結合を意味する。
【0126】
「修飾糖部分」とは、天然糖からの置換及び/または任意の変化を意味する。
【0127】
「非修飾核酸塩基」とは、RNAまたはDNAにおける天然存在の複素環式塩基:プリン塩基のアデニン(A)及びグアニン(G)、ならびにピリミジン塩基のチミン(T)、シトシン(C)(5-メチルシトシンを含む)、及びウラシル(U)を意味する。
【0128】
「5-メチルシトシン」とは、5位に結びついたメチル基を含むシトシンを意味する。
【0129】
「非メチル化シトシン」とは、5位に結びついたメチル基を有しないシトシンを意味する。
【0130】
「修飾核酸塩基」とは、非修飾核酸塩基ではない任意の核酸塩基を意味する。
【0131】
「糖部分」とは、天然存在のフラノシルまたは修飾糖部分を意味する。
【0132】
「修飾糖部分」とは、置換された糖部分または糖代替物を意味する。
【0133】
「2′-O-メチル糖」または「2′-OMe糖」とは、2′位にO-メチル修飾を有する糖を意味する。
【0134】
「2′-O-メトキシエチル糖」または「2′-MOE糖」とは、2′位にO-メトキシエチル修飾を有する糖を意味する。
【0135】
「2′-フルオロ」または「2′-F」とは、2′位のフルオロ修飾を有する糖を意味する。
【0136】
「二環式糖部分」とは、4~7員環を含む修飾糖部分(以下に限定されないがフラノシルを含む)であって、4~7員環の2個の原子を接続する架橋を含み、その結果第2の環を形成し、二環式構造をもたらす修飾糖部分を意味する。ある特定の実施形態において、この4~7員環は糖環である。ある特定の実施形態において、この4~7員環はフラノシルである。ある特定のこのような実施形態において、架橋は、フラノシルの2′-炭素及び4′-炭素を接続する。非限定的な例示となる二環式糖部分としては、LNA、ENA、cEt、S-cEt、及びR-cEtが挙げられる。
【0137】
「ロックド核酸(LNA)糖部分」とは、4′及び2′のフラノース環原子間に(CH2)-O架橋を含む、置換された糖部分を意味する。
【0138】
「ENA糖部分」とは、4′及び2′のフラノース環原子間に(CH2)2-O架橋を含む、置換された糖部分を意味する。
【0139】
「拘束エチル(constrained ethyl)(cEt)糖部分」とは、4′及び2′のフラノース環原子間にCH(CH3)-O架橋を含む、置換された糖部分を意味する。ある特定の実施形態において、CH(CH3)-O架橋は、S方向に拘束されている。ある特定の実施形態において、CH(CH3)-Oは、R方向に拘束されている。
【0140】
「S-cEt糖部分」とは、4′及び2′のフラノース環原子間にS拘束CH(CH3)-O架橋を含む、置換された糖部分を意味する。
【0141】
「R-cEt糖部分」とは、4′及び2′のフラノース環原子間にR拘束CH(CH3)-O架橋を含む、置換された糖部分を意味する。
【0142】
「2′-O-メチルヌクレオシド」とは、2′-O-メチル糖修飾を有する2′-修飾ヌクレオシドを意味する。
【0143】
「2′-O-メトキシエチルヌクレオシド」とは、2′-O-メトキシエチル糖修飾を有する2′-修飾ヌクレオシドを意味する。2′-O-メトキシエチルヌクレオシドは、修飾核酸塩基または非修飾核酸塩基を含むことができる。
【0144】
「2′-フルオロヌクレオシド」とは、2′-フルオロ糖修飾を有する2′-修飾ヌクレオシドを意味する。2′-フルオロヌクレオシドは、修飾核酸塩基または非修飾核酸塩基を含むことができる。
【0145】
「二環式ヌクレオシド」とは、二環式糖部分を有する2′-修飾ヌクレオシドを意味する。二環式ヌクレオシドは、修飾核酸塩基または非修飾核酸塩基を有することができる。
【0146】
「cEtヌクレオシド」とは、cEt糖部分を含むヌクレオシドを意味する。cEtヌクレオシドは、修飾核酸塩基または非修飾核酸塩基を含むことができる。
【0147】
「S-cEtヌクレオシド」とは、S-cEt糖部分を含むヌクレオシドを意味する。
【0148】
「R-cEtヌクレオシド」とは、R-cEt糖部分を含むヌクレオシドを意味する。
【0149】
「β-D-デオキシリボヌクレオシド」とは、天然存在のDNAヌクレオシドを意味する。
【0150】
「β-D-リボヌクレオシド」とは、天然存在のRNAヌクレオシドを意味する。
【0151】
「LNAヌクレオシド」とは、LNA糖部分を含むヌクレオシドを意味する。
【0152】
「ENAヌクレオシド」とは、ENA糖部分を含むヌクレオシドを意味する。
【0153】
概要
多発性嚢胞腎疾患(PKD)は、液体で満たされた嚢胞が腎臓内に発生し、腎機能不全や、しばしば末期腎疾患につながる、遺伝性形態の腎疾患である。ある特定のPKDは、腎臓の拡大も特徴とする。嚢胞の過剰な増殖は、PKDの特質的な病理学的特徴である。PKDの管理において、処置の主目的は、高血圧及び感染症のような症状を管理し、腎機能を維持し、末期腎疾患(ESRD)を防止することであり、これによりPKDを有する対象の期待寿命が向上する。
【0154】
PKDのマウスモデルにおいて、マイクロRNAのmiR-17-92クラスターのmiR-17ファミリーメンバーは上方制御されている。PKDのマウスモデルにおけるmiR-17-92クラスターの遺伝子欠失は、腎嚢胞の成長を低減し、腎機能を向上させ、生存期間を長くする(Patel et al.,PNAS,2013;110(26):10765-10770)。PKDの実験モデルにおいて、リサーチツール化合物を用いたmiR-17の阻害により、腎臓対体重比が低減し腎機能が向上することが示されている。さらに、miR-17阻害により、ヒトドナーの嚢胞由来の初代培養物の増殖及び嚢胞成長も抑制された。
【0155】
PKDを有する対象への投与に十分に有効であり、安全であり、好都合である1つ以上のmiR-17ファミリーメンバーの阻害物質を同定するため、miR-17シード配列に対し相補的な核酸塩基を含み、様々な長さ及び化学組成を有する、およそ200種の修飾オリゴヌクレオチドを設計した。化合物の長さは9~20個の結合したヌクレオシドの範囲とし、化合物における化学修飾の数、タイプ、及び配置を変動させた。単に化合物の化学構造に基づいて薬理学、薬物動態的挙動、及び安全性を予測することはできないため、化合物に対し、in vitro及びin vivoの両方で、効力、有効性、薬物動態的挙動、安全性、及び代謝安定性を含めた特徴を、好ましくない特性を有する化合物を排除するように設計された一連のアッセイで評価した。本明細書で説明するほぼ200の化合物の各々は、最初にいくつかのin vitroアッセイ(例えば、効力、毒性学、代謝安定性)で試験して、より複雑なin vivoアッセイ(例えば、薬物動態プロファイル、有効性、毒性学)でさらに試験するのに好適な、より小さなセットの化合物を同定した。このスクリーニングプロセスにより、PKDの処置のための候補薬学的作用物質、RG4326が同定された。本明細書で説明する糖部分のタイプ及び配置のバリエーションは、試験対象化合物の諸特性(効力及び組織分布を含む)に対し、相当な影響をもたらした。RG4326は、同じ長さ及び核酸塩基配列と異なる糖修飾パターンとを有する他の化合物との対比において、最も好適な薬物力学、安全性、及び薬物動態のプロファイルを示したため、候補薬学的作用物質として選択された。
【0156】
本発明におけるある特定の化合物
本明細書では、9個の結合したヌクレオシドからなる修飾オリゴヌクレオチドを含む化合物であって、当該修飾オリゴヌクレオチドが、5′から3′の方向に下記のヌクレオシドパターンを有する化合物:
NSNSNMNFNFNFNMNSNS
[式中、下付き文字「M」を後に伴うヌクレオシドは、2′-O-メチルヌクレオシドであり、下付き文字「F」を後に伴うヌクレオシドは、2′-フルオロヌクレオシドであり、下付き文字「S」を後に伴うヌクレオシドは、S-cEtヌクレオシドであり;当該修飾オリゴヌクレオチドの核酸塩基配列は、核酸塩基配列5′-CACUUU-3′を含み、配列中、各シトシンは、非メチル化シトシンまたは5-メチルシトシンのいずれかである]
またはその薬学的に許容される塩が提供される。ある特定の実施形態において、修飾オリゴヌクレオチドの核酸塩基配列は、5′-AGCACUUUG-3′であり、配列中、各シトシンは、非メチル化シトシンまたは5-メチルシトシンのいずれかである。ある特定の実施形態において、各シトシンは、非メチル化シトシンである。一部の実施形態において、各結合は、ホスホジエステル結合及びホスホロチオエート結合から独立的に選択される。一部の実施形態において、全ての結合は、ホスホロチオエート結合である。
【0157】
本明細書では、構造ASGSCMAFCFUFUMUSGSの化合物[式中、下付き文字「M」を後に伴うヌクレオシドは、2′-O-メチルヌクレオシドであり、下付き文字「F」を後に伴うヌクレオシドは、2′-フルオロヌクレオシドであり、下付き文字「S」を後に伴うヌクレオシドは、S-cEtヌクレオシドであり、各シトシンは、非メチル化シトシンまたは5-メチルシトシンのいずれかである]、またはその薬学的に許容される塩が提供される。ある特定の実施形態において、各シトシンは、非メチル化シトシンである。一部の実施形態において、各結合は、ホスホジエステル結合及びホスホロチオエート結合から独立的に選択される。一部の実施形態において、全ての結合は、ホスホロチオエート結合である。
【0158】
本明細書では、構造ASGSCMAFCFUFUMUSGSの化合物[式中、下付き文字「M」を後に伴うヌクレオシドは、2′-O-メチルヌクレオシドであり、下付き文字「F」を後に伴うヌクレオシドは、2′-フルオロヌクレオシドであり、下付き文字「S」を後に伴うヌクレオシドは、S-cEtヌクレオシドであり、各シトシンは非メチル化シトシンである]、またはその薬学的に許容される塩が提供される。一部の実施形態において、各結合は、ホスホジエステル結合及びホスホロチオエート結合から独立的に選択される。一部の実施形態において、全ての結合は、ホスホロチオエート結合である。
【0159】
本明細書では、9個の結合したヌクレオシドからなる修飾オリゴヌクレオチドを含む化合物であって、当該修飾オリゴヌクレオチドが、5′から3′の方向に下記のヌクレオシドパターンを有する化合物:
NSNSNMNFNFNFNMNSNS
[式中、下付き文字「M」を後に伴うヌクレオシドは、2′-O-メチルヌクレオシドであり、下付き文字「F」を後に伴うヌクレオシドは、2′-フルオロヌクレオシドであり、下付き文字「S」を後に伴うヌクレオシドは、S-cEtヌクレオシドであり、全ての結合は、ホスホロチオエート結合であり;当該修飾オリゴヌクレオチドの核酸塩基配列は、核酸塩基配列5′-CACUUU-3′を含み、配列中、各シトシンは、非メチル化シトシンまたは5-メチルシトシンのいずれかである]
またはその薬学的に許容される塩が提供される。ある特定の実施形態において、修飾オリゴヌクレオチドの核酸塩基配列は、5′-AGCACUUUG-3′であり、配列中、各シトシンは、非メチル化シトシンまたは5-メチルシトシンのいずれかである。ある特定の実施形態において、各シトシンは、非メチル化シトシンである。
【0160】
本明細書では、構造ASGSCMAFCFUFUMUSGSの化合物[式中、下付き文字「M」を後に伴うヌクレオシドは、2′-O-メチルヌクレオシドであり、下付き文字「F」を後に伴うヌクレオシドは、2′-フルオロヌクレオシドであり、下付き文字「S」を後に伴うヌクレオシドは、S-cEtヌクレオシドであり、各シトシンは、非メチル化シトシンまたは5-メチルシトシンのいずれかであり、全ての結合は、ホスホロチオエート結合である]、またはその薬学的に許容される塩が提供される。ある特定の実施形態において、各シトシンは、非メチル化シトシンである。
【0161】
本明細書では、構造ASGSCMAFCFUFUMUSGSの化合物[式中、下付き文字「M」を後に伴うヌクレオシドは、2′-O-メチルヌクレオシドであり、下付き文字「F」を後に伴うヌクレオシドは、2′-フルオロヌクレオシドであり、下付き文字「S」を後に伴うヌクレオシドは、S-cEtヌクレオシドであり、各シトシンは、非メチル化シトシンであり、全ての結合は、ホスホロチオエート結合である]、またはその薬学的に許容される塩が提供される。
【0162】
本明細書では、RG4326という名称の修飾オリゴヌクレオチドが提供され、この修飾オリゴヌクレオチドの構造は以下の通りである。
【化3】
また、本明細書では、修飾オリゴヌクレオチドRG4326の薬学的に許容される塩も提供される。したがって、一部の実施形態において、修飾オリゴヌクレオチドは、構造:
【化4】
またはその薬学的に許容される塩を有する。非限定的な例示となる、RG4326の薬学的に許容される塩は、以下の構造を有する。
【化5】
【0163】
一部の実施形態において、修飾オリゴヌクレオチドの薬学的に許容される塩は、分子当たりに存在するホスホロチオエート結合及び/またはホスホジエステル結合よりも少ないカチオン性対イオン(例えば、Na+)を含む(すなわち、一部のホスホロチオエート結合及び/またはホスホジエステル結合はプロトン化されている)。一部の実施形態において、RG4326の薬学的に許容される塩は、RG4326の分子当たり8個より少ないカチオン性対イオン(例えば、Na+)を含む。すなわち、一部の実施形態において、RG4326の薬学的に許容される塩は、RG4326の分子当たり平均で、1、2、3、4、5、6、または7個のカチオン性対イオンを含むことができ、残りのホスホロチオエート基はプロトン化されている。
【0164】
本発明におけるある特定の用法
本明細書では、細胞内のmiR-17のうちの1つ以上のメンバーの活性を阻害するための方法であって、細胞を、本明細書で提供される、miR-17シード配列に対し相補的な核酸塩基配列を含む化合物に接触させることを含む、方法が提供される。
【0165】
本明細書では、対象におけるmiR-17ファミリーのうちの1つ以上のメンバーの活性を阻害するための方法であって、対象に、本明細書で提供される薬学的組成物を投与することを含む、方法が提供される。ある特定の実施形態において、対象は、miR-17ファミリーのうちの1つ以上のメンバーに関連する疾患を有する。
【0166】
本明細書では、多発性嚢胞腎疾患(PKD)の処置のための方法であって、それを必要とする対象に、本明細書で提供される、miR-17シード配列に対し相補的な核酸塩基配列を含む化合物を投与することを含む、方法が提供される。ある特定の実施形態において、対象は多発性嚢胞腎疾患を有する。ある特定の実施形態において、多発性嚢胞腎疾患は、常染色体優性多発性嚢胞腎疾患(ADPKD)、常染色体劣性多発性嚢胞腎疾患(ARPKD)、及びネフロン癆(NPHP)から選択される。ある特定の実施形態において、多発性嚢胞腎疾患は、常染色体優性多発性嚢胞腎疾患(ADPKD)及び常染色体劣性多発性嚢胞腎疾患(ARPKD)から選択される。
【0167】
ある特定の実施形態において、対象は、複数の非腎臓指標を特徴とし、かつ多発性嚢胞腎疾患も特徴とする障害を有する。このような障害としては、例えば、ジュベール症候群及び関連障害(JSRD)、メッケル症候群(MKS)、またはバルデー・ビードル症候群(BBS)が挙げられる。したがって、本明細書では、多発性嚢胞腎疾患(PKD)の処置のための方法であって、対象に、本明細書で提供される、miR-17シード配列に対し相補的な核酸塩基配列を含む化合物を投与することを含み、対象が、ジュベール症候群及び関連障害(JSRD)、メッケル症候群(MKS)、またはバルデー・ビードル症候群(BBS)を有する、方法が提供される。本明細書では、多発性嚢胞腎疾患(PKD)の処置のための方法であって、本明細書で提供される、miR-17シード配列に対し相補的な核酸塩基配列を含む化合物を投与することを含み、対象が、ジュベール症候群及び関連障害(JSRD)、メッケル症候群(MKS)、またはバルデー・ビードル症候群(BBS)を有する疑いがある、方法が提供される。
【0168】
ある特定の実施形態において、多発性嚢胞腎疾患は、常染色体優性多発性嚢胞腎疾患(ADPKD)である。ADPKDは、PKD1遺伝子またはPKD2遺伝子の変異によって引き起こされる。ADPKDは、嚢胞形成及び腎臓の拡大が腎不全につながり、やがて60歳までには患者の50%において末期腎疾患につながる、進行性疾患である。ADPKD患者は、生涯にわたる透析及び/または腎移植を必要とし得る。ADPKDは、腎不全における最も頻度の高い遺伝子的原因である。嚢胞の過剰な増殖は、ADPKDの特質的な病理学的特徴である。PKDの管理において、処置の主目的は、腎機能を維持し、末期腎疾患(ESRD)を防止することであり、これによりPKDを有する対象の期待寿命が向上する。ADPKD患者において、概して総腎容積は着実に増大し、増大は腎機能の低下に相関する。本明細書では、ADPKDの処置のための方法であって、ADPKDを有するまたは有する疑いのある対象に、本明細書で提供される、miR-17シード配列に対し相補的な核酸塩基配列を含む化合物を投与することを含む、方法が提供される。
【0169】
ある特定の実施形態において、多発性嚢胞腎疾患は、常染色体劣性多発性嚢胞腎疾患(ADRKD)である。ARPKDは、PKHD1遺伝子の変異によって引き起こされ、そして児童における慢性腎疾患の原因である。ARPKDにおける典型的な腎臓の表現型は拡大した腎臓であるが、ARPKDは、他の臓器、特に肝臓にも顕著な影響を及ぼす。ARPKDを有する患者は末期腎疾患に進行し、15歳という若さで腎移植を必要とする。本明細書では、ARPKDの処置のための方法であって、ARPKDを有するまたは有する疑いのある対象に、本明細書で提供される、miR-17シード配列に対し相補的な核酸塩基配列を含む化合物を投与することを含む、方法が提供される。
【0170】
ある特定の実施形態において、多発性嚢胞腎疾患は、ネフロン癆(NPHP)である。ネフロン癆は常染色体劣性多発性嚢胞腎疾患であり、児童におけるESRDの原因となることが多い。NPHPは、正常なまたは低減したサイズの腎臓、皮髄境界部に集中した嚢胞、及び尿細管間質性の線維化を特徴とする。NPHP患者において、いくつかのNPHP遺伝子のうちの1つ、例えばNPHP1の変異が同定されている。本明細書では、NPHPの処置のための方法であって、NPHPを有するまたは有する疑いのある対象に、本明細書で提供される、miR-17シード配列に対し相補的な核酸塩基配列を含む化合物を投与することを含む、方法が提供される。
【0171】
ある特定の実施形態において、多発性嚢胞腎疾患を有する対象は、ジュベール症候群及び関連障害(JSRD)を有する。JSRDは、脳、網膜、及び骨格の異常を含めた広範囲の特質的特徴を含む。JSRDを有するある特定の対象は、JSRDの特質的特徴に加えて、多発性嚢胞腎疾患を有する。したがって、本明細書では、JSRDを有する対象における多発性嚢胞腎疾患の処置のための方法であって、JSRDを有する対象に、本明細書で提供される、miR-17シード配列に対し相補的な核酸塩基配列を含む化合物を投与することを含む、方法が提供される。ある特定の実施形態において、対象は、JSRDを有する疑いがある。
【0172】
ある特定の実施形態において、多発性嚢胞腎疾患を有する対象は、メッケル症候群(MKS)を有する。MKSは、中枢神経系、骨格系、肝臓、腎臓、及び心臓を含めた身体の多くの部分における重度の徴候及び症状を伴う障害である。MKSの一般的特徴は、腎臓内に液体で満たされた多数の嚢胞が存在すること、及び腎臓の拡大である。したがって、本明細書では、MKSの処置のための方法であって、MKSを有する対象に、本明細書で提供される、miR-17シード配列に対し相補的な核酸塩基配列を含む化合物を投与することを含む、方法が提供される。ある特定の実施形態において、対象は、MKSを有する疑いがある。
【0173】
ある特定の実施形態において、多発性嚢胞腎疾患を有する対象は、バルデー・ビードル症候群(BBS)を有する。BBSは、目、心臓、腎臓、肝臓、及び消化系を含めた身体の多くの部分に影響を及ぼす障害である。BBSの特質的特徴は、腎嚢胞の存在である。したがって、本明細書では、BBSを有する対象における多発性嚢胞腎疾患の処置のための方法であって、BBSを有する対象に、本明細書で提供される、miR-17シード配列に対し相補的な核酸塩基配列を含む化合物を投与することを含む、方法が提供される。ある特定の実施形態において、対象は、BBSを有する疑いがある。
【0174】
ある特定の実施形態において、対象は、修飾オリゴヌクレオチドを含む化合物の投与の前に、PKDを有すると診断されている。PKDの診断は、以下に限定されないが、対象の家族歴、臨床的特徴(以下に限定されないが、高血圧、アルブミン尿、血尿、及びGFR異常を含む)、腎臓イメージング試験(以下に限定されないが、MRI、超音波、及びCTスキャンを含む)を含めたパラメーターの評価、及び/または組織学的分析により、達成することができる。
【0175】
ある特定の実施形態において、PKDの診断には、PKD1遺伝子またはPKD2遺伝子のうちの1つ以上における変異のスクリーニングが含まれる。ある特定の実施形態において、ARPKDの診断には、PKHP1遺伝子における変異のスクリーニングが含まれる。ある特定の実施形態において、NPHPの診断には、NPHP1遺伝子、NPHP2遺伝子、NPHP3遺伝子、NPHP4遺伝子、NPHP5遺伝子、NPHP6遺伝子、NPHP7遺伝子、NPHP8遺伝子、またはNPHP9遺伝子のうちの1つ以上における変異のスクリーニングが含まれる。ある特定の実施形態において、JSRDの診断には、NPHP1遺伝子、NPHP6遺伝子、AHI1遺伝子、MKS3遺伝子、またはRPGRIP1L遺伝子のうちの1つ以上における変異のスクリーニングが含まれる。ある特定の実施形態において、MKSの診断には、NPHP6遺伝子、MKS3遺伝子、RPGRIP1L遺伝子、NPHP3遺伝子、CC2D2A遺伝子、BBS2遺伝子、BBS4遺伝子、BBS6遺伝子、またはMKS1遺伝子のうちの1つ以上における変異のスクリーニングが含まれる。ある特定の実施形態において、NPHPの診断には、BBS2遺伝子、BBS4遺伝子、BBS6遺伝子、MKS1遺伝子、BBS1遺伝子、BBS3遺伝子、BBS5遺伝子、BBS7遺伝子、BBS7遺伝子、BBS8遺伝子、BBS9遺伝子、BBS10遺伝子、BBS11遺伝子、またはBBS12遺伝子のうちの1つ以上における変異のスクリーニングが含まれる。
【0176】
ある特定の実施形態において、対象は、増大した総腎容積を有する。ある特定の実施形態において、総腎容積は、身長補正総腎容積(HtTKV)である。ある特定の実施形態において、対象は高血圧を有する。ある特定の実施形態において、対象は腎機能障害を有する。ある特定の実施形態において、対象は腎機能向上を必要とする。ある特定の実施形態において、対象は腎機能障害を有すると同定されている。
【0177】
ある特定の実施形態において、PKDを有する対象の腎臓内で1つ以上のmiR-17ファミリーメンバーのレベルが増大する。ある特定の実施形態において、対象は、投与の前に、腎臓内で1つ以上のmiR-17ファミリーメンバーのレベル増大を有すると判定される。miR-17ファミリーメンバーのレベルは、腎臓生検材料から測定することができる。ある特定の実施形態において、対象は、投与の前に、対象の尿中または血液中で1つ以上のmiR-17ファミリーメンバーのレベル増大を有すると判定される。
【0178】
本明細書で提供される実施形態のいずれにおいても、対象は、例えば、多発性嚢胞腎疾患の原因を判定する、対象における多発性嚢胞腎疾患の程度を評価する、及び/または処置に対する対象の応答を判定するために、対象における多発性嚢胞腎疾患を診断するためのある特定の試験を受けることができる。このような試験は、多発性嚢胞腎疾患のマーカーを評価することができる。これらの試験の一部、例えば、糸球体濾過量及び血中尿素窒素レベルは、腎機能の指標でもある。多発性嚢胞腎疾患のマーカーとしては、以下に限定されないが、対象における総腎容積の測定;対象における高血圧の測定;対象における腎臓痛の評価;対象における線維化の測定;対象における血中尿素窒素レベルの測定;対象における血清クレアチニンレベルの測定;対象におけるクレアチニンクリアランスの測定;対象におけるアルブミン尿の測定;対象におけるアルブミン:クレアチニン比の測定;対象における糸球体濾過量の測定;対象における血尿の測定;対象の尿中のNGALタンパク質の測定;及び/または対象の尿中のKIM-1タンパク質の測定が挙げられる。本明細書において別段の指示がない限り、血中尿素窒素レベル、血清クレアチニンレベル、クレアチニンクリアランス、アルブミン尿、アルブミン:クレアチニン比、糸球体濾過量、及び血尿とは、対象の血液(例えば、全血または血清)中の測定値を指す。
【0179】
多発性嚢胞腎疾患のマーカーは、実験室試験により判定される。個々のマーカーに対する基準範囲は、実験室によって変動し得る。変動は、例えば、使用する特定のアッセイにおける違いによるものであり得る。したがって、集団内におけるマーカーの正規分布の上限及び下限(それぞれ正常値上限(ULN)及び正常値下限(LLN)としても知られている)は、実験室によって変動し得る。任意の特定のマーカーについて、医療従事者は、正規分布の外側のどのレベルが臨床的に有意義であるか及び/または疾患を示すかを判定することができる。例えば、医療従事者は、多発性嚢胞腎疾患を有する対象における腎機能の速度の低下を示し得る糸球体濾過量を判定することができる。
【0180】
ある特定の実施形態において、本明細書で提供される化合物の投与は、1つ以上の臨床的に有益な結果をもたらす。ある特定の実施形態において、投与は、対象における腎機能を向上させる。ある特定の実施形態において、投与は、対象における腎機能の低下の速度を遅らせる。ある特定の実施形態において、投与は、対象における総腎容積を低減する。ある特定の実施形態において、投与は、対象における総腎容積の増大の速度を遅らせる。ある特定の実施形態において、投与は、身長補正総腎容積(HtTKV)を低減する。ある特定の実施形態において、投与は、HtTKV増大の速度を遅らせる。
【0181】
ある特定の実施形態において、投与は、対象における嚢胞の成長を阻害する。ある特定の実施形態において、投与は、対象における嚢胞成長の増大の速度を遅らせる。一部の実施形態において、嚢胞は、対象の腎臓内に存在する。一部の実施形態において、嚢胞は、腎臓以外の臓器内、例えば、肝臓内に存在する。
【0182】
ある特定の実施形態において、投与は、対象における腎臓痛を緩和する。ある特定の実施形態において、投与は、対象における腎臓痛の増大を遅らせる。ある特定の実施形態において、投与は、対象における腎臓痛の発症を遅延させる。
【0183】
ある特定の実施形態において、投与は、対象における高血圧を低減する。ある特定の実施形態において、投与は、対象における高血圧の悪化を遅らせる。ある特定の実施形態において、投与は、対象における高血圧の発症を遅延させる。
【0184】
ある特定の実施形態において、投与は、対象の腎臓における線維化を低減する。ある特定の実施形態において、投与は、対象の腎臓における線維化の悪化を遅らせる。
【0185】
ある特定の実施形態において、投与は、対象における末期腎疾患の発症を遅延させる。ある特定の実施形態において、投与は、対象にとっての透析までの時間を遅延させる。ある特定の実施形態において、投与は、対象にとっての腎移植までの時間を遅延させる。ある特定の実施形態において、投与は、対象の期待寿命を向上させる。
【0186】
ある特定の実施形態において、投与は、対象におけるアルブミン尿を低減する。ある特定の実施形態において、投与は、対象におけるアルブミン尿の悪化を遅らせる。ある特定の実施形態において、投与は、対象におけるアルブミン尿の発症を遅延させる。ある特定の実施形態において、投与は、対象における血尿を低減する。ある特定の実施形態において、投与は、対象における血尿の悪化を遅らせる。ある特定の実施形態において、投与は、対象における血尿の発症を遅延させる。ある特定の実施形態において、投与は、対象における血中尿素窒素レベルを低減する。ある特定の実施形態において、投与は、対象における血清クレアチニンレベルを低減する。ある特定の実施形態において、投与は、対象におけるクレアチニンクリアランスを向上させる。ある特定の実施形態において、投与は、対象におけるアルブミン:クレアチニン比を低減する。
【0187】
ある特定の実施形態において、投与は、対象における糸球体濾過量を向上させる。ある特定の実施形態において、投与は、対象における糸球体濾過量の低下の速度を遅らせる。ある特定の実施形態において、糸球体濾過量は、推算糸球体濾過量(eGFR)である。ある特定の実施形態において、糸球体濾過量は、実測糸球体濾過量(mGFR)である。
【0188】
ある特定の実施形態において、投与は、対象の尿中の好中球ゼラチナーゼ関連リポカリン(NGAL)タンパク質を低減する。ある特定の実施形態において、投与は、対象の尿中の腎傷害分子-1(KIM-1)タンパク質を低減する。
【0189】
本明細書で提供される実施形態のいずれにおいても、対象は、対象における疾患の程度を評価するためのある特定の試験に供され得る。このような試験としては、以下に限定されないが、対象における総腎容積の測定;対象における高血圧の測定;対象における腎臓痛の測定;対象の腎臓における線維化の測定;対象における血中尿素窒素レベルの測定;対象における血清クレアチニンレベルの測定;対象の血液におけるクレアチニンクリアランスの測定;対象におけるアルブミン尿の測定;対象におけるアルブミン:クレアチニン比の測定;対象における糸球体濾過量(糸球体濾過量は推算または実測される)の測定;対象の尿中の好中球ゼラチナーゼ関連リポカリン(NGAL)タンパク質の測定;及び/または対象の尿中の腎傷害分子-1(KIM-1)タンパク質の測定が挙げられる。
【0190】
ある特定の実施形態において、多発性嚢胞腎疾患を有する対象は、クオリティーオブライフの低下を経験する。例えば、多発性嚢胞腎疾患を有する対象は、対象のクオリティーオブライフを低下させる恐れがある腎臓痛を経験し得る。ある特定の実施形態において、投与は、対象のクオリティーオブライフを向上させる。
【0191】
本明細書で提供される実施形態のいずれにおいても、対象はヒト対象である。ある特定の実施形態において、ヒト対象は成人である。ある特定の実施形態において、成人は21歳以上である。ある特定の実施形態において、ヒト対象は小児対象であり、すなわち、ヒト対象は21歳未満である。小児集団は、規制当局により定義され得る。ある特定の実施形態において、ヒト対象は青年である。ある特定の実施形態において、青年は、12歳以上21歳未満である。ある特定の実施形態において、ヒト対象は児童である。ある特定の実施形態において、児童は、2歳以上12歳未満である。ある特定の実施形態において、ヒト対象は乳幼児である。ある特定の実施形態において、乳幼児は、生後1ヵ月以上2歳未満である。ある特定の実施形態において、対象は新生児である。ある特定の実施形態において、新生児は生後1ヵ月未満である。
【0192】
本明細書に記載されている任意の化合物は、療法で使用するためのものであり得る。本明細書で提供される任意の化合物は、多発性嚢胞腎疾患の処置で使用するためのものであり得る。ある特定の実施形態において、多発性嚢胞腎疾患は、常染色体優性多発性嚢胞腎疾患である。ある特定の実施形態において、多発性嚢胞腎疾患は、常染色体劣性多発性嚢胞腎疾患である。ある特定の実施形態において、多発性嚢胞腎疾患は、ネフロン癆である。ある特定の実施形態において、対象は、ジュベール症候群及び関連障害(JSRD)、メッケル症候群(MKS)、またはバルデー・ビードル症候群(BBS)を有する。
【0193】
本明細書に記載されている任意の修飾オリゴヌクレオチドは、療法で使用するためのものであり得る。本明細書で提供される任意の修飾オリゴヌクレオチドは、多発性嚢胞腎疾患の処置で使用するためのものであり得る。
【0194】
本明細書で提供される任意の化合物は、医薬の調製で使用するためのものであり得る。本明細書で提供される任意の化合物は、多発性嚢胞腎疾患の処置のための医薬の調製で使用するためのものであり得る。
【0195】
本明細書で提供される任意の修飾オリゴヌクレオチドは、医薬の調製で使用するためのものであり得る。本明細書で提供される任意の修飾オリゴヌクレオチドは、多発性嚢胞腎疾患の処置のための医薬の調製で使用するためのものであり得る。
【0196】
本明細書で提供される任意の薬学的組成物は、多発性嚢胞腎疾患の処置で使用するためのものであり得る。
【0197】
ある特定の追加的療法
多発性嚢胞腎疾患または本明細書に列記されている任意の状態のための処置は、2つ以上の療法を含むことができる。そのため、ある特定の実施形態において、本明細書では、多発性嚢胞腎疾患を有するまたは有する疑いのある対象を処置するための方法であって、miR-17シード配列に対し相補的な核酸塩基配列を含む、本明細書で提供される化合物を投与することに加えて、少なくとも1つの療法を投与することを含む、方法が提供される。
【0198】
ある特定の実施形態において、少なくとも1つの追加的療法は、薬学的作用物質を含む。
【0199】
ある特定の実施形態において、薬学的作用物質は、降圧剤である。降圧剤は、対象の血圧をコントロールするために使用される。
【0200】
ある特定の実施形態において、薬学的作用物質は、バソプレシン受容体2拮抗薬である。ある特定の実施形態において、バソプレシン受容体2拮抗薬は、トルバプタンである。
【0201】
ある特定の実施形態において、薬学的作用物質は、アンジオテンシンII受容体ブロッカー(ARB)を含む。ある特定の実施形態において、アンジオテンシンII受容体ブロッカーは、カンデサルタン、イルベサルタン、オルメサルタン、ロサルタン、バルサルタン、テルミサルタン、またはエプロサルタンである。
【0202】
ある特定の実施形態において、薬学的作用物質は、アンジオテンシンII変換酵素(ACE)阻害薬を含む。ある特定の実施形態において、ACE阻害薬は、カプトプリル、エナラプリル、リシノプリル、ベナゼプリル、キナプリル、ホシノプリル、またはラミプリルである。
【0203】
ある特定の実施形態において、薬学的作用物質は、利尿薬である。ある特定の実施形態において、薬学的作用物質は、カルシウムチャネルブロッカーである。
【0204】
ある特定の実施形態において、薬学的作用物質は、キナーゼ阻害薬である。ある特定の実施形態において、キナーゼ阻害薬は、ボスチニブまたはKD019である。
【0205】
ある特定の実施形態において、薬学的作用物質は、アドレナリン受容体拮抗薬である。
【0206】
ある特定の実施形態において、薬学的作用物質は、アルドステロン受容体拮抗薬である。ある特定の実施形態において、アルドステロン受容体拮抗薬は、スピロノラクトンである。ある特定の実施形態において、スピロノラクトンは、1日10~35mgの範囲の用量で投与される。ある特定の実施形態において、スピロノラクトンは、1日25mgの用量で投与される。
【0207】
ある特定の実施形態において、薬学的作用物質は、哺乳類ラパマイシン標的タンパク質(mTOR)阻害薬である。ある特定の実施形態において、mTOR阻害薬は、エベロリムス、ラパマイシン、またはシロリムスである。
【0208】
ある特定の実施形態において、薬学的作用物質は、ホルモンアナログである。ある特定の実施形態において、ホルモンアナログは、ソマトスタチンまたは副腎皮質刺激ホルモンである。
【0209】
ある特定の実施形態において、薬学的作用物質は、抗線維化剤である。ある特定の実施形態において、抗線維化剤は、miR-21に対し相補的な修飾オリゴヌクレオチドである。
【0210】
ある特定の実施形態において、追加的療法は、透析である。ある特定の実施形態において、追加的療法は、腎移植である。
【0211】
ある特定の実施形態において、薬学的作用物質は、抗炎症剤を含む。ある特定の実施形態において、抗炎症剤は、ステロイド系抗炎症剤である。ある特定の実施形態において、ステロイド系抗炎症剤は、コルチコステロイドである。ある特定の実施形態において、コルチコステロイドは、プレドニゾンである。ある特定の実施形態において、抗炎症剤は、非ステロイド系抗炎症薬物である。ある特定の実施形態において、非ステロイド系抗炎症剤は、イブプロフェン、COX-I阻害薬、またはCOX-2阻害薬である。
【0212】
ある特定の実施形態において、薬学的作用物質は、線維形成性シグナルに対する1つ以上の応答をブロックする薬学的作用物質である。
【0213】
ある特定の実施形態において、追加的療法は、低用量のシクロホスファミド、サイモスチムリン、ビタミン及び栄養サプリメント(例えば、ビタミンA、C、E、ベータカロテン、亜鉛、セレン、グルタチオン、コエンザイムQ-10、及びエキナセアを含めた抗酸化物質)、ならびにワクチン(例えば、免疫刺激複合体(ISCOM))を含む、身体の免疫系を強化する薬学的作用物質とすることができ、これは、抗原の多量体提示とアジュバントとを合わせるワクチン製剤を含む。
【0214】
ある特定の実施形態において、追加的療法は、本発明の1つ以上の薬学的組成物の副作用を処置または緩和するように選択される。このような副作用としては、以下に限定されないが、注射部位反応、肝機能検査異常、腎機能異常、肝毒性、腎毒性、中枢神経系異常、及びミオパシーが挙げられる。例えば、血清中のアミノトランスフェラーゼレベルの増大は、肝毒性または肝機能異常を意味すると考えられる。例えば、ビリルビンの増大は、肝毒性または肝機能異常を意味すると考えられる。
【0215】
ある特定のマイクロRNA核酸塩基配列
miR-17ファミリーには、miR-17、miR-20a、miR-20b、miR-93、miR-106a、及びmiR-106bが含まれる。miR-17ファミリーの各メンバーは、核酸塩基配列5′-AAAGUG-3′、すなわちmiR-17シード配列を含む核酸塩基配列を有し、これは配列番号1の2位~7位にある核酸塩基配列である。加えて、miR-17ファミリーの各メンバーは、シード領域以外でいくらかの核酸塩基配列同一性を共有する。したがって、miR-17シード配列に対し相補的な核酸塩基配列を含む修飾オリゴヌクレオチドは、miR-17に加えて、miR-17ファミリーの他のマイクロRNAを標的化することができる。ある特定の実施形態において、修飾オリゴヌクレオチドは、miR-17ファミリーの2つ以上のマイクロRNAを標的化する。ある特定の実施形態において、修飾オリゴヌクレオチドは、miR-17ファミリーの3つ以上のマイクロRNAを標的化する。ある特定の実施形態において、修飾オリゴヌクレオチドは、miR-17ファミリーの4つ以上のマイクロRNAを標的化する。ある特定の実施形態において、修飾オリゴヌクレオチドは、miR-17ファミリーの5つ以上のマイクロRNAを標的化する。ある特定の実施形態において、修飾オリゴヌクレオチドは、miR-17ファミリーの6つのマイクロRNAを標的化する。例えば、核酸塩基配列5′-AGCACUUUG-3′を有する修飾オリゴヌクレオチドは、miR-17ファミリーの全てのメンバーを標的化する。
【0216】
ある特定の実施形態において、修飾オリゴヌクレオチドは、核酸塩基配列5′-CACUUU-3′を含む。ある特定の実施形態において、修飾オリゴヌクレオチドは、核酸塩基配列5′-GCACUUUG-3′を含む。ある特定の実施形態において、修飾オリゴヌクレオチドは、核酸塩基配列5′-AGCACUUU-3′を含む。ある特定の実施形態において、修飾オリゴヌクレオチドの核酸塩基配列は、5′-AGCACUUUG-3′である。
【0217】
ある特定の実施形態において、修飾オリゴヌクレオチドは、核酸塩基配列5′-CACTTT-3′を含む。ある特定の実施形態において、修飾オリゴヌクレオチドは、核酸塩基配列5′-CACUTT-3′を含む。ある特定の実施形態において、修飾オリゴヌクレオチドは、核酸塩基配列5′-CACUUT-3′を含む。ある特定の実施形態において、修飾オリゴヌクレオチドは、核酸塩基配列5′-CACTUT-3′を含む。ある特定の実施形態において、修飾オリゴヌクレオチドは、核酸塩基配列5′-CACUTT-3′を含む。ある特定の実施形態において、修飾オリゴヌクレオチドは、核酸塩基配列5′-CACTTU-3′を含む。
【0218】
ある特定の実施形態において、各シトシンは、非メチル化シトシン及び5-メチルシトシンから独立的に選択される。ある特定の実施形態において、少なくとも1つのシトシンは、非メチル化シトシンである。ある特定の実施形態において、各シトシンは、非メチル化シトシンである。ある特定の実施形態において、少なくとも1つのシトシンは、5-メチルシトシンである。ある特定の実施形態において、各シトシンは、5-メチルシトシンである。
【0219】
ある特定の実施形態において、修飾オリゴヌクレオチドにおける結合したヌクレオシドの数は、その標的マイクロRNAの長さ未満である。標的マイクロRNAの長さ未満であり、標的マイクロRNAの対応位置にある核酸塩基に対し相補的である、複数の結合したヌクレオシドを有する修飾オリゴヌクレオチドは、標的マイクロRNA配列の領域に対し完全に相補的である(100%相補的とも称される)核酸塩基配列を有する修飾オリゴヌクレオチドであると考えられる。例えば、9個の結合したヌクレオシドからなる修飾オリゴヌクレオチドは、各核酸塩基がmiR-17の対応位置に対し相補的である場合、miR-17に対し完全に相補的である。
【0220】
ある特定の実施形態において、修飾オリゴヌクレオチドは、標的マイクロRNAの核酸塩基配列に対し1つのミスマッチを有する核酸塩基配列を有する。ある特定の実施形態において、修飾オリゴヌクレオチドは、標的マイクロRNAの核酸塩基配列に対し2つのミスマッチを有する核酸塩基配列を有する。ある特定のこのような実施形態において、修飾オリゴヌクレオチドは、標的マイクロRNAの核酸塩基配列に対し2つ以下のミスマッチを有する核酸塩基配列を有する。ある特定のこのような実施形態において、ミスマッチ核酸塩基は連続している。ある特定のこのような実施形態において、ミスマッチ核酸塩基は連続していない。
【0221】
本出願に付属する配列表は、各核酸塩基配列を必要に応じて「RNA」または「DNA」のいずれかとして同定しているが、実際的には、これらの配列は、本明細書で指定されている化学修飾の組合せで修飾されていてもよい。当業者であれば、配列表における修飾オリゴヌクレオチドを説明するための「RNA」または「DNA」のような呼称が恣意的なものであることを容易に理解する。例えば、2′-O-メトキシエチル糖部分とチミン塩基とを含むヌクレオシドを含む、本明細書で提供される修飾オリゴヌクレオチドは、このヌクレオシドが修飾されており天然のDNAヌクレオシドではないにもかかわらず、配列表にはDNA残基として記載され得る。
【0222】
したがって、配列表に示される核酸配列は、天然のまたは修飾されたRNA及び/またはDNAの任意の組合せを含有する核酸(以下に限定されないが、修飾核酸塩基を有する核酸を含む)を包含するように意図されている。さらなる例として、以下に限定されないが、配列表における核酸塩基配列「ATCGATCG」を有する修飾オリゴヌクレオチドは、修飾されていても修飾されていなくても、このような核酸塩基配列を有する任意のオリゴヌクレオチドを包含し、これには、以下に限定されないが、RNA塩基(例えば、配列「AUCGAUCG」を有するもの)を含むこのような化合物、ならびに「AUCGATCG」のようないくつかのDNA塩基及びいくつかのRNA塩基を有する化合物、ならびに「ATmeCGAUCG」(配列中、meCは、5-メチルシトシンを示す)のような他の修飾塩基を有するオリゴヌクレオチドが含まれる。
【0223】
ある特定の修飾
ある特定の実施形態において、本明細書で提供されるオリゴヌクレオチドは、核酸塩基、糖、及び/またはヌクレオシド間結合に対する1つ以上の修飾を含むことができ、そのため、本明細書で提供されるオリゴヌクレオチドは、修飾オリゴヌクレオチドである。修飾された核酸塩基、糖、及び/またはヌクレオシド間結合は、例えば、細胞取込みの強化、他のオリゴヌクレオチドまたは核酸標的に対する親和性の強化、及びヌクレアーゼの存在下での安定性の増大のような望ましい特性ゆえに、非修飾形態に優先して選択され得る。
【0224】
ある特定の実施形態において、修飾オリゴヌクレオチドは、1つ以上の修飾ヌクレオシドを含む。
【0225】
ある特定の実施形態において、修飾ヌクレオシドは、糖修飾ヌクレオシドである。ある特定の実施形態において、糖修飾ヌクレオシドは、さらに天然のまたは修飾された複素環式塩基部分を含んでもよく、及び/または天然のまたは修飾されたヌクレオシド間結合により別のヌクレオシドと接続していてもよく、及び/または糖修飾と無関係にさらなる修飾を含んでもよい。ある特定の実施形態において、糖修飾ヌクレオシドは、糖環が天然リボースまたは2′-デオキシ-リボースからの2′炭素にて修飾されている2′-修飾ヌクレオシドである。
【0226】
ある特定の実施形態において、2′-修飾ヌクレオシドは、二環式糖部分を有する。ある特定のこのような実施形態において、二環式糖部分は、アルファ立体配置におけるD糖である。ある特定のこのような実施形態において、二環式糖部分は、ベータ立体配置におけるD糖である。ある特定のこのような実施形態において、二環式糖部分は、アルファ立体配置におけるL糖である。ある特定のこのような実施形態において、二環式糖部分は、ベータ立体配置におけるL糖である。
【0227】
このような二環式糖部分を含むヌクレオシドは、二環式ヌクレオシドまたはBNAと称される。ある特定の実施形態において、二環式ヌクレオシドとしては、以下に限定されないが、下記に示される(A)α-L-メチレンオキシ(4′-CH
2-O-2′)BNA;(B)β-D-メチレンオキシ(4′-CH
2-O-2′)BNA;(C)エチレンオキシ(4′-(CH
2)
2-O-2′)BNA;(D)アミノオキシ(4′-CH
2-O-N(R)-2′)BNA;(E)オキシアミノ(4′-CH
2-N(R)-O-2′)BNA;(F)メチル(メチレンオキシ)(4′-CH(CH
3)-O-2′)BNA(拘束エチルまたはcEtとも称される);(G)メチレン-チオ(4′-CH
2-S-2′)BNA;(H)メチレン-アミノ(4′-CH2-N(R)-2′)BNA;(I)メチル炭素環式(4′-CH
2-CH(CH
3)-2′)BNA;(J)c-MOE(4′-CH(CH
2-OMe)-O-2′)BNA及び(K)プロピレン炭素環式(4′-(CH
2)
3-2′)BNA
【化6】
[式中、Bxは核酸塩基部分であり、Rは独立的に、H、保護基、またはC
1-C
12アルキルである]が挙げられる。
【0228】
ある特定の実施形態において、2′-修飾ヌクレオシドは、F、OCF3、O-CH3(「2′-OMe」とも称される)、OCH2CH2OCH3(「2′-O-メトキシエチル」または「2′-MOE」とも称される)、2′-O(CH2)2SCH3、O-(CH2)2-O-N(CH3)2、-O(CH2)2O(CH2)2N(CH3)2、及びO-CH2-C(=O)-N(H)CH3から選択される2′-置換基を含む。
【0229】
ある特定の実施形態において、2′-修飾ヌクレオシドは、F、O-CH3、及びOCH2CH2OCH3から選択される2′-置換基を含む。
【0230】
ある特定の実施形態において、糖修飾ヌクレオシドは、4′-チオ修飾ヌクレオシドである。ある特定の実施形態において、糖修飾ヌクレオシドは、4′-チオ-2′-修飾ヌクレオシドである。4′-チオ修飾ヌクレオシドは、4′-Oが4′-Sで置き換えられたβ-D-リボヌクレオシドを有する。4′-チオ-2′-修飾ヌクレオシドは、2′-置換基で置き換えられた2′-OHを有する4′-チオ修飾ヌクレオシドである。好適な2′-置換基としては、2′-OCH3、2′-OCH2CH2OCH3、及び2′-Fが挙げられる。
【0231】
ある特定の実施形態において、修飾オリゴヌクレオチドは、1つ以上のヌクレオシド間修飾を含む。ある特定のこのような実施形態において、修飾オリゴヌクレオチドの各ヌクレオシド間結合は、修飾ヌクレオシド間結合である。ある特定の実施形態において、修飾ヌクレオシド間結合は、リン原子を含む。
【0232】
ある特定の実施形態において、修飾オリゴヌクレオチドは、少なくとも1つのホスホロチオエートヌクレオシド間結合を含む。ある特定の実施形態において、修飾オリゴヌクレオチドの各ヌクレオシド間結合は、ホスホロチオエートヌクレオシド間結合である。
【0233】
ある特定の実施形態において、修飾オリゴヌクレオチドは、1つ以上の修飾核酸塩基を含む。ある特定の実施形態において、修飾核酸塩基は、5-ヒドロキシメチルシトシン、7-デアザグアニン、及び7-デアザアデニンから選択される。ある特定の実施形態において、修飾核酸塩基は、7-デアザ-アデニン、7-デアザグアノシン、2-アミノピリジン、及び2-ピリドンから選択される。ある特定の実施形態において、修飾核酸塩基は、2-アミノプロピルアデニン、5-プロピニルウラシル、及び5-プロピニルシトシンを含めた、5-置換ピリミジン、6-アザピリミジン、ならびにN-2、N-6、及びO-6置換プリンから選択される。
【0234】
ある特定の実施形態において、修飾核酸塩基は、多環式複素環を含む。ある特定の実施形態において、修飾核酸塩基は、三環式複素環を含む。ある特定の実施形態において、修飾核酸塩基は、フェノキサジン誘導体を含む。ある特定の実施形態において、フェノキサジンをさらに修飾して、当技術分野でG-クランプとして公知の核酸塩基を形成することができる。
【0235】
ある特定の実施形態において、修飾オリゴヌクレオチドは、得られるアンチセンスオリゴヌクレオチドの活性、細胞分布、または細胞取込みを強化する1つ以上の部分と結合している。ある特定の実施形態において、この部分は、コレステロール部分である。ある特定の実施形態において、この部分は、脂質部分である。結合のための追加的な部分としては、炭水化物、ペプチド、抗体または抗体断片、リン脂質、ビオチン、フェナジン、葉酸、フェナントリジン、アントラキノン、アクリジン、フルオレセイン、ローダミン、クマリン、及び色素が挙げられる。ある特定の実施形態において、炭水化物部分は、N-アセチル-D-ガラクトサミン(GalNac)である。ある特定の実施形態において、結合体基は、オリゴヌクレオチドに直接結びついている。ある特定の実施形態において、結合体基は、アミノ、アジド、ヒドロキシル、カルボン酸、チオール、不飽和(例えば、二重結合または三重結合)、8-アミノ-3,6-ジオキサオクタン酸(ADO)、4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボン酸スクシンイミジル(SMCC)、6-アミノヘキサン酸(AHEXまたはAHA)、置換C1-C10アルキル、置換または非置換C2-C10アルケニル、及び置換または非置換C2-C10アルキニルから選択される結合部分により、修飾オリゴヌクレオチドに結びついている。ある特定のこのような実施形態において、置換基は、ヒドロキシル、アミノ、アルコキシ、アジド、カルボキシ、ベンジル、フェニル、ニトロ、チオール、チオールアルコキシ、ハロゲン、アルキル、アリール、アルケニル、及びアルキニルから選択される。
【0236】
ある特定の実施形態において、化合物は、例えば、ヌクレアーゼ安定性のような特性を強化するために、修飾オリゴヌクレオチドの一方または両方の末端に結びついている1つ以上の安定化基を有する、修飾オリゴヌクレオチドを含む。安定化基に含まれるのが、キャップ構造である。この末端の修飾は、修飾オリゴヌクレオチドをエキソヌクレアーゼ分解から保護し、また細胞内の送達及び/または局在化の一助となり得る。キャップは、5′-末端(5′-キャップ)に存在しても3′-末端(3′-キャップ)に存在してもよく、両方の末端に存在してもよい。キャップ構造としては、例えば、逆位のデオキシ脱塩基キャップが挙げられる。
【0237】
ある特定の薬学的組成物
本明細書では、本明細書で提供される化合物または修飾オリゴヌクレオチドと、薬学的に許容される希釈剤とを含む、薬学的組成物が提供される。ある特定の実施形態において、薬学的に許容される希釈剤は、水性溶液である。ある特定の実施形態において、水性溶液は、食塩水である。本明細書において、薬学的に許容される希釈剤は、無菌の希釈剤であるように理解される。好適な投与経路としては、以下に限定されないが、静脈内投与及び皮下投与が挙げられる。
【0238】
ある特定の実施形態において、薬学的組成物は、投薬単位の形態で投与される。例えば、ある特定の実施形態において、投薬単位は、錠剤、カプセル、またはボーラス注射の形態をとる。
【0239】
ある特定の実施形態において、薬学的作用物質は、好適な希釈剤中で調製され、調製中に酸または塩基でpH7.0~9.0に調整され、次に無菌条件下で凍結乾燥された、修飾オリゴヌクレオチドである。凍結乾燥された修飾オリゴヌクレオチドは、次に、好適な希釈剤、例えば、水または生理的に適合性の緩衝液(例えば、食塩水、ハンクス液、もしくはリンガー液)で再構成される。再構成産物は、皮下注射としてまたは静脈内注入として投与される。凍結乾燥された薬品は、2mL、タイプIの透明なガラスバイアル(硫酸アンモニウム処理)に詰め、ブロモブチルゴムの蓋で栓をし、アルミニウムオーバーシールで密封することができる。
【0240】
ある特定の実施形態において、本明細書で提供される薬学的組成物は、追加的に、薬学的組成物中に慣例的に見いだされる他の補助的構成成分を、その技術的に確立した使用レベルにて含有することができる。したがって、例えば、当該組成物は、例えば、鎮痒薬、収斂剤、局所麻酔薬、または抗炎症剤のような追加的な適合性の薬学的活性材料を含有することができる。
【0241】
一部の実施形態において、本明細書で提供される薬学的組成物は、様々な剤形の本発明組成物を、物理的に製剤化するのに有用な追加的材料、例えば、色素、香味剤、保存料、抗酸化物質、乳白剤、増粘剤、及び安定剤を含有することができ、さらに、このような追加的材料には、以下に限定されないが、アルコール、ポリエチレングリコール、ゼラチン、ラクトース、アミラーゼ、ステアリン酸マグネシウム、タルク、ケイ酸、粘性パラフィン、ヒドロキシメチルセルロース、及びポリビニルピロリドンのような賦形剤も含まれる。様々な実施形態において、このような材料は、添加されたときに、本発明組成物の構成成分における生物学的活性を過度に妨害すべきではない。製剤は、滅菌し、所望の場合、製剤のオリゴヌクレオチド(複数可)と有害に相互作用しない助剤、例えば、滑沢剤、保存料、安定剤、湿潤剤、乳化剤、浸透圧に影響を及ぼすための塩、緩衝液、着色料、香味料、及び/または芳香物質などと混合することができる。ある特定の注射用薬学的組成物は、油性または水性のビヒクル中の懸濁液、溶液、または乳濁液であり、懸濁剤、安定剤、及び/または分散剤のような製剤用作用物質を含有することができる。注射用薬学的組成物で使用するのに好適なある特定の溶媒としては、以下に限定されないが、親油性溶媒、ならびにゴマ油のような脂肪性油、オレイン酸エチルまたはトリグリセリドのような合成脂肪酸エステル、及びリポソームが挙げられる。水性注射懸濁液は、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトール、またはデキストランのような懸濁液の粘度を増大させる物質を含有することができる。任意選択で、このような懸濁液は、薬学的作用物質の溶解性を増大させて高濃度溶液の調製を可能にする、好適な安定剤または作用物質を含有することもできる。
【0242】
脂質部分は、核酸療法において、様々な方法で使用されてきた。ある方法では、核酸は、カチオン性脂質と中性脂質との混合物から作製された、事前形成されたリポソームまたはリポプレックスに導入される。別の方法では、モノカチオン性脂質またはポリカチオン性脂質を有するDNA複合体が、中性脂質の存在なしで形成される。ある特定の実施形態において、脂質部分は、特定の細胞または組織に対する薬学的作用物質の分布を増大させるように選択される。ある特定の実施形態において、脂質部分は、脂肪組織に対する薬学的作用物質の分布を増大させるように選択される。ある特定の実施形態において、脂質部分は、筋組織に対する薬学的作用物質の分布を増大させるように選択される。
【0243】
ある特定の実施形態において、本明細書で提供される薬学的組成物は、核酸と複合化されたポリアミン化合物または脂質部分を含む。ある特定の実施形態において、このような調製物は、各々が個別に式(Z)により定義される構造またはその薬学的に許容される塩を有する、1つ以上の化合物、
【化7】
[式中、各々のX
a及びX
bは、各出現において、独立的にC
1-6アルキレンであり、nは、0、1、2、3、4、または5であり、各Rは、独立的にHであり、調製物における式(Z)の化合物の分子の少なくとも約80%において、R部分のうちの少なくともn+2個はHではなく、mは、1、2、3、または4であり、Yは、O、NR
2、またはSであり、R
1は、アルキル、アルケニル、またはアルキニルであり、その各々は、任意選択で、1つ以上の置換基で置換されており、R
2は、H、アルキル、アルケニル、またはアルキニルであり、その各々は、任意選択で1つ以上の置換基で置換されており、ただし、n=0の場合、R部分のうちの少なくともn+3個がHではないことを条件とする]を含む。このような調製物は、PCT公開第WO/2008/042973号で説明されており、脂質調製物の開示内容について、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。ある特定の追加的調製物は、Akinc et al.,Nature Biotechnology 26,561-569(01 May 2008)で説明されており、脂質調製物の開示内容について、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。
【0244】
ある特定の実施形態において、本明細書で提供される薬学的組成物は、以下に限定されないが、混合、溶解、造粒、ドラジェ作製、湿式粉砕、乳化、カプセル化、封入、または打錠プロセスを含めた公知の技法を用いて、調製される。
【0245】
ある特定の実施形態において、本明細書で提供される薬学的組成物は、固体(例えば、粉末、錠剤、及び/またはカプセル)である。このような実施形態のいくつかにおいて、1つ以上のオリゴヌクレオチドを含む固体の薬学的組成物は、以下に限定されないが、デンプン、糖、希釈剤、造粒剤、滑沢剤、結合剤、及び崩壊剤を含めた当技術分野で公知の成分を用いて、調製される。
【0246】
ある特定の実施形態において、本明細書で提供される薬学的組成物は、デポー調製物として製剤化される。ある特定のこのようなデポー調製物は、典型的には、非デポー調製物よりも長時間作用する。ある特定の実施形態において、このような調製物は、留置(例えば、皮下または筋肉内)によりまたは筋肉内注射により、投与される。ある特定の実施形態において、デポー調製物は、好適なポリマー材料もしくは疎水性材料(例えば、許容される油中のエマルション)またはイオン交換樹脂を用いて調製され、あるいはやや難溶の誘導体として、例えば、やや難溶の塩として調製される。
【0247】
ある特定の実施形態において、本明細書で提供される薬学的組成物は、送達系を含む。送達系の例としては、以下に限定されないが、リポソーム及びエマルションが挙げられる。ある特定の送達系は、疎水性化合物を含む薬学的組成物を含めた、ある特定の薬学的組成物を調製するのに有用である。ある特定の実施形態において、ジメチルスルホキシドのようなある特定の有機溶媒が使用される。
【0248】
ある特定の実施形態において、本明細書で提供される薬学的組成物は、本発明の1つ以上の薬学的作用物質を特定の組織または細胞タイプに送達するように設計された、1つ以上の組織特異的送達分子を含む。例えば、ある特定の実施形態において、薬学的組成物は、組織特異的抗体でコーティングされたリポソームを含む。
【0249】
ある特定の実施形態において、本明細書で提供される薬学的組成物は、徐放系を含む。このような徐放系における1つの非限定的例は、固体疎水性ポリマーの半透性マトリックスである。ある特定の実施形態において、徐放系は、その化学的性質に応じて、時間、日、週、または月という期間にわたり、薬学的作用物質を放出する。
【0250】
ある特定の注射用薬学的組成物は、単位剤形で、例えば、アンプルまたは多用量容器で、提示される。
【0251】
ある特定の実施形態において、本明細書で提供される薬学的組成物は、治療有効量における修飾オリゴヌクレオチドを含む。ある特定の実施形態において、治療有効量は、疾患の症状を防止、軽減、もしくは寛解するのに、または処置対象の生存期間を延長するのに、十分なものである。
【0252】
ある特定の実施形態において、本明細書で提供される1つ以上の修飾オリゴヌクレオチドは、プロドラッグとして製剤化される。ある特定の実施形態において、プロドラッグは、in vivo投与時に、生物学的、薬学的、または治療的により活性の高い形態のオリゴヌクレオチドへと化学的に変換される。ある特定の実施形態において、プロドラッグは、対応する活性形態よりも投与が容易であるため、有用である。例えば、ある特定の場合において、プロドラッグは、(例えば、経口投与により)対応する活性形態よりも生体利用能が高い。ある特定の場合において、プロドラッグは、対応する活性形態に比べて向上した溶解性を有し得る。ある特定の実施形態において、プロドラッグは、対応する活性形態よりも水溶性が低い。ある特定の場合において、このようなプロドラッグは、水溶性が移動性に有害となる細胞膜間において優れた伝達性を所持する。ある特定の実施形態において、プロドラッグは、エステルである。ある特定のこのような実施形態において、エステルは、投与時、代謝的に加水分解されてカルボン酸になる。ある特定の場合において、カルボン酸含有化合物は、対応する活性形態である。ある特定の実施形態において、プロドラッグは、酸基に結合した短いペプチド(ポリアミノ酸)を含む。このような実施形態のいくつかにおいて、ペプチドは、投与時に切断されて対応する活性形態を形成する。
【0253】
ある特定の実施形態において、プロドラッグは、薬学的に活性の化合物に対し、当該活性化合物がin vivo投与時に再生されるように修飾することにより、産生される。プロドラッグは、代謝安定性もしくは薬物の輸送特徴を変更し、副作用もしくは毒性を遮蔽し、薬物の風味を向上させ、または薬物の他の特徴もしくは特性を変更するように設計することができる。当業者は、薬物力学プロセス及びin vivoの薬物代謝の知識に基づき、ひとたび薬学的に活性の化合物が公知になれば、その化合物のプロドラッグを設計することができる(例えば、Nogrady(1985) Medicinal Chemistry A Biochemical Approach,Oxford University Press,New York,pages 388-392を参照)。
【0254】
追加的な投与経路としては、以下に限定されないが、経口、直腸、経粘膜、腸管、経腸、局所、座薬、吸入経由、髄腔内、心臓内、心室内、腹腔内、鼻腔内、眼球内、腫瘍内、筋肉内、及び髄内の投与が挙げられる。ある特定の実施形態において、薬学的髄腔内薬(pharmaceutical intrathecals)は、全身的曝露ではなく局所的曝露を達成するために投与される。例えば、薬学的組成物は、所望される効果のエリアに(例えば、腎臓内に)直接注射することができる。
【0255】
ある特定のキット
本発明は、キットも提供する。一部の実施形態において、キットは、本明細書で開示されている修飾オリゴヌクレオチドを含む1つ以上の化合物を含む。一部の実施形態において、キットは、対象への化合物の投与のために使用することができる。
【0256】
ある特定の実施形態において、キットは、投与の準備が整った薬学的組成物を含む。ある特定の実施形態において、薬学的組成物は、バイアル内に存在する。複数の、例えば10個のバイアルが、例えば、分注パック内に存在する。一部の実施形態において、バイアルは、シリンジでアクセス可能であるように製造される。キットは、化合物を使用するための説明書も収容することができる。
【0257】
一部の実施形態において、キットは、バイアル内ではなく、事前充填されたシリンジ(例えば、単回用量シリンジ、例えば、27ゲージ、1/2インチの針及び針ガード付き)内に存在する薬学的組成物を含む。複数の、例えば10個の事前充填されたシリンジが、例えば、分注パック内に存在していてもよい。キットは、本明細書で開示されている修飾オリゴヌクレオチドを含む化合物を投与するための説明書も収容することができる。
【0258】
一部の実施形態において、キットは、凍結乾燥された薬品としての本明細書で提供される修飾オリゴヌクレオチドと、薬学的に許容される希釈剤とを含む。対象への投与に備えて、凍結乾燥された薬品は、薬学的に許容される希釈剤中で再構成される。
【0259】
一部の実施形態において、キットは、本明細書で開示されている修飾オリゴヌクレオチドを含む化合物に加えて、さらに、以下のうちの1つ以上を含むことができる:シリンジ、アルコール消毒綿、綿球、及び/またはガーゼパッド。
【0260】
ある特定の実験モデル
ある特定の実施形態において、本発明は、本発明の修飾オリゴヌクレオチドを実験モデルで使用する及び/または試験する方法を提供する。当業者は、本発明の薬学的作用物質を評価するために、このような実験モデル用のプロトコルを選択し修正することができる。
【0261】
概して、修飾オリゴヌクレオチドは、最初は培養細胞において試験される。好適な細胞タイプとしては、修飾オリゴヌクレオチドの送達がin vivoで所望される細胞タイプに関連するものが挙げられる。例えば、本明細書で説明されている方法の研究に好適な細胞タイプとしては、初代細胞または培養細胞が挙げられる。
【0262】
ある特定の実施形態において、修飾オリゴヌクレオチドが1つ以上のmiR-17ファミリーメンバーの活性を妨害する程度は、培養細胞において評価される。ある特定の実施形態において、マイクロRNA活性の阻害は、予測または検証されたマイクロRNA制御転写物のうちの1つ以上のレベルを測定することにより、評価することができる。マイクロRNA活性の阻害は、miR-17ファミリーメンバー制御転写物、及び/またはmiR-17ファミリーメンバー制御転写物によりコードされたタンパク質の増大をもたらし得る(すなわち、miR-17ファミリーメンバー制御転写物が抑制解除される)。さらに、ある特定の実施形態において、ある特定の表現型結果が測定され得る。
【0263】
いくつかの動物モデルは、当業者がヒトの疾患のモデルにおける1つ以上のmiR-17ファミリーメンバーを研究するために利用できる。多発性嚢胞腎疾患のモデルとしては、以下に限定されないが、Pkd1及び/またはPkd2における変異及び/または欠失を有するモデル、ならびに他の遺伝子における変異を含むモデルが挙げられる。非限定的な例示となる、Pkd1及びPkd2における変異及び/または欠失を含むPKDのモデルとしては、低次形態モデル、例えば、Pkd1におけるミスセンス変異を含むモデル及びPkd2の発現が低減したまたは不安定なモデル;誘導性コンディショナルノックアウトモデル;ならびにコンディショナルノックアウトモデルが挙げられる。非限定的な例示となる、Pkd1及びPkd2以外の遺伝子における変異を含むPKDモデルとしては、Pkhd1、Nek8、Kif3a、及び/またはNphp3における変異を有するモデルが挙げられる。PKDモデルは、例えば、Shibazaki et al.,Human Mol.Genet.,2008;17(11):1505-1516;Happe and Peters,Nat Rev Nephrol.,2014;10(10): 587-601;及びPatel et al.,PNAS,2013;110(26):10765-10770で概説されている。
【0264】
ある特定の定量化アッセイ
ある特定の実施形態において、マイクロRNAレベルは、細胞または組織内でin vitroまたはin vivoにて定量化される。ある特定の実施形態において、マイクロRNAの変化は、マイクロアレイ分析により測定される。ある特定の実施形態において、マイクロRNAレベルの変化は、TaqMan(登録商標)マイクロRNAアッセイ(Applied Biosystems)のようないくつかの市販されているPCRアッセイのうちの1つにより測定される。
【0265】
抗miRまたはマイクロRNA模倣体によるマイクロRNA活性の調節は、mRNAのマイクロアレイプロファイリングにより評価することができる。抗miRまたはマイクロRNA模倣体により調節されている(増大または減少している)mRNAの配列に対し、マイクロRNAのシード配列を検索して、マイクロRNAの標的であるmRNAの調節とマイクロRNAの標的ではないmRNAの調節とを比較する。このようにして、抗miRとその標的マイクロRNAとの相互作用、またはマイクロRNA模倣体とその標的との相互作用を評価することができる。抗miRの場合には、発現レベルが増大しているmRNAに対し、抗miRが相補的であるマイクロRNAに対するシードマッチを含むmRNA配列を選別する。
【0266】
抗miR化合物によるマイクロRNA活性の調節は、マイクロRNAのメッセンジャーRNA標的のレベルを測定することにより(メッセンジャーRNA自体またはメッセンジャーRNAから転写されたタンパク質のレベルを測定することにより)、評価することができる。マイクロRNAのアンチセンス阻害は、概して、メッセンジャーRNA及び/またはマイクロRNAのメッセンジャーRNA標的のタンパク質のレベルの増大をもたらす。すなわち、抗miR処置は、1つ以上の標的メッセンジャーRNAの抑制解除をもたらす。
【実施例】
【0267】
以下の実施例は、本発明の一部の実施形態をより十分に説明するために提示される。ただし、この実施例は、決して、本発明の広い範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。当業者であれば、本発見の根底にある原理を容易に取り入れて、本発明の趣旨から逸脱することなく様々な化合物を設計するであろう。
【0268】
実施例1:PKDにおけるmiR-17の役割
PKDのマウスモデルにおいて、マイクロRNAのmiR-17-92クラスターのmiR-17ファミリーメンバーファミリーメンバーは上方制御されている。PKDのマウスモデルにおけるmiR-17-92クラスターの遺伝子欠失は、腎嚢胞の成長を低減し、腎機能を向上させ、生存期間を長くする(Patel et al.,PNAS,2013;110(26):10765-10770)。miR-17-92クラスターは、以下の6つの異なるマイクロRNAを含有し、各々は別々の配列を有する:miR-17、miR-18a、miR-19a、miR-19-b-1、及びmiR-92a-1。
【0269】
miR-17-92クラスターは、2つのマイクロRNA、miR-17及びmiR-20aを含み、これらはマイクロRNAのmiR-17ファミリーのメンバーである。このファミリーの各メンバーは、シード配列の同一性と、シード領域以外での様々な程度の配列同一性とを共有する。miR-17ファミリーの他のメンバーは、miR-20b、miR-93、miR-106a,、及びmiR-106bである。miR-20b及びmiR-106aは、ヒトX染色体上のmiR-106a-363クラスター内に存在し、miR-93及びmiR-106bは、ヒト第7染色体上のmiR-106b-25クラスター内に存在する。miR-17ファミリーメンバーの配列を表1に示す。
【表1】
【0270】
リサーチツール抗miR-17化合物を用いた過去の研究では、PKDの2つの異なるモデル、Pkd2-KOモデル(Pkhd1/cre;Pkd2F/Fモデルとしても知られている)及びPcyモデルにおいて、PKDにおけるmiR-17の役割が同定された。リサーチツールmiR-17に対し相補的な修飾オリゴヌクレオチドを、PKDのマウスモデルで試験した。この抗miR-17化合物は、DNA、2′-MOE、及びS-cEt糖部分を伴った、19個の結合したヌクレオシド(5′-CTGCACTGTAAGCACTTTG-3′;配列番号7)の長さの、完全にホスホロチオエート化されたオリゴヌクレオチドであった。この化合物は、miR-17ファミリーの他のメンバーに対しミスマッチを有するが、in vitroアッセイでの試験から、miR-17ファミリーの全てのメンバーとハイブリダイズし、これらを阻害することが明らかになった。
【0271】
Pkd2-KOマウスは、自然発生的に多発性嚢胞腎疾患に罹患する。マウスに対し、20mg/kgのツール抗miR-17化合物もしくは対照オリゴヌクレオチド、またはPBSで処置した。この結果は、Pkd2-KOマウスの抗miR-17処置が、プライマリー処置エンドポイントの腎臓対体重比を、対照処置との対比において17%低減することを実証した(p=0.017)。また、抗miR-17処置は、Pkd2-KOマウスにおいて、BUNならびに腎傷害mRNAバイオマーカーであるKim1及びNgalの発現も顕著に低減した。最後に、抗miR-17処置は、Pkd2-KOマウスにおいて、血清クレアチニンレベルを低減し嚢胞インデックスを低減する傾向をもたらした。これらの結果は抗miR対照では観察されなかった。このことは、これらの結果が明確にmiR-17阻害によることを意味する。
【0272】
Nphp3に変異を有するPcyマウスは、自然発生的に多発性嚢胞腎疾患に罹患するが、疾患の進行は、Pkd2-KOマウスで観察される進行よりも遅い。マウスに対し、50mg/kgのツール抗miR-17化合物またはPBSで、週1回、合計26週処置した。抗miR-17で処置したPcyマウスにおける腎重量対体重比の平均は、PBSのみを投与したPcyマウスにおける腎臓重量対体重比の平均よりも19%低かった(p=0.0003)。抗miR-17で処置したPcyマウスは、PBSのみを投与したPcyマウスに比べて、嚢胞インデックスにおける平均28%の低減を示した(p=0.008)。
【0273】
これらのデータは、miR-17が、PKDの2つの異なる実験モデルにおいて、PKDの処置に対する確証された標的であることを実証した。
【0274】
実施例2:化合物の設計及びスクリーニング
リサーチツール化合物は、PKDのモデルにおいて有効性を示した一方、in vivo研究ではわずかに炎症促進性であることが観察された。さらに、リサーチツール化合物は、PKDの処置のための薬学的作用物質として開発するには十分に有効でなかった。したがって、十分に有効であり、投与に好都合であり、PKDを有する対象への投与に対し安全である、1つ以上のmiR-17ファミリーメンバーの阻害物質を同定するためのスクリーニングを実施した。標的臓器に送達される抗miR-17化合物の割合を高めるため、追加的な基準は、十分に高い腎臓対肝臓の送達比とした。
【0275】
miR-17シード配列に対し相補的な核酸塩基配列を含み、様々な長さ及び化学組成を有する、およそ200種の修飾オリゴヌクレオチドを設計した。化合物の長さは9~20個の結合したヌクレオシドの範囲とし、化合物における化学修飾の数、タイプ、及び配置を変動させた。化合物の核酸塩基の化学構造に基づいて効力及び安全性を予測することはできないため、化合物に対し、in vitro及びin vivoの両方で、効力、有効性、薬物動態的挙動、粘度、安全性、及び代謝安定性を含めた特徴を、好ましくない特性を有する化合物を排除するように設計された一連のアッセイで評価した。ある特定のアッセイでは、ツール抗miR-17化合物を、ライブラリーの化合物を比較するベンチマークとして使用した。以下で説明するほぼ200種の化合物の各々は、最初にいくつかのin vitroアッセイ(例えば、効力、毒性学、代謝安定性)で試験して、より複雑なin vivoアッセイ(例えば、薬物動態プロファイル、有効性、毒性学)でさらに試験するのに好適な、より小さなセットの化合物を同定した。全てのアッセイから集めたデータに基づき、効力、薬物動態プロファイル(例えば、腎臓への送達)、及び安全性の特徴に力点を置いて、候補薬学的作用物質を同定するようにスクリーニングプロセスを設計した。
【0276】
in vitro及びin vivoの効力及び有効性
ルシフェラーゼレポーターアッセイを用いて、in vitroの効力を評価した。ルシフェラーゼ遺伝子の3′-UTR内に、直列に、2つの完全に相補的なmiR-17結合部位を有する、miR-17用のルシフェラーゼレポータープラスミド。化合物の最大阻害が、ツール抗miR-17化合物の最大阻害よりも大きい場合、より長い長さの化合物を選択した。9-merのようなより短い化合物は、典型的には、長い化合物に使用する同じアッセイ条件では最大の活性にならないため、適切な対照化合物に対する最大阻害に基づいてより短い化合物を選択した。このようにして、長さ及び化学組成の両方において多様である化合物をさらなる試験に含めた。
【0277】
マイクロRNAポリソームシフトアッセイ(miPSA)を用いて、in vivoの効力を評価した。このアッセイを使用して、正常マウス及びPKDマウスにおいて、腎臓内で化合物がmiR-17標的と直接係合する程度を定量した。miPSAは、活性のmiRNAが、翻訳的に活性の高分子量(HMW)ポリソーム内でmiRNAのmRNA標的に結合し、一方阻害されたmiRNAが、低MW(LMW)ポリソーム内に存在するという原理に依存する。抗miR-17による処置は、マイクロRNAのHMWポリソームからLMWポリソームへのシフトをもたらす。したがって、miPSAは、相補的な抗miRによるマイクロRNAターゲットエンゲージメントの直接的な測定をもたらす(Androsavich et al.,Nucleic Acids Research,2015,44:e13)。
【0278】
複数のスクリーニング基準を通過した選択化合物に対し、PKDの実験モデル(例えば、Pkd2-KOマウスモデル及びPcyマウスモデル)における有効性を評価した。マウスを抗miR-17化合物で処置し、腎臓重量対体重の比、血中尿素窒素レベル、血清クレアチニンレベル、及び腎嚢胞インデックスを含めた臨床的に有意義なエンドポイントを評価した。
【0279】
薬物動態特性
各抗miR-17化合物をマウス肝臓ライセート中でインキュベートすることにより、代謝安定性を評価した。24時間後、残存するインタクトな化合物のパーセンテージを算出した。24時間のインキュベート後に安定していない化合物は、in vivoでも安定していない可能性がある。
【0280】
選択化合物の薬物動態特性及び組織分布を、野生型C57BL6マウス及びJCKマウス(PKDの実験モデルの1つ)において評価した。化合物を、野生型マウスに対し0.3、3、または30mg/kgの用量で投与し、JCKマウスに対し3、30、または100mg/kgの用量で投与した。7日後、マウスを屠殺した。腎臓組織及び肝臓組織を採取した。抗miR-17化合物の濃度を肝臓及び腎臓において測定した。肝臓との対比において、腎臓でより高いレベルに蓄積する(すなわち、より高い腎臓対肝臓比を有する)化合物を好ましいものとした。
【0281】
複数のスクリーニング基準を通過した選択化合物についての完全な薬物動態プロファイルを、C57BL6マウスにおいて取得した。ある研究では、マウスに対し、30mg/kgの抗miR-17化合物の皮下注射を1回投与した。もう1つの研究では、マウスに対し、39mg/kgの抗miR-17化合物の皮下注射を3回、2ヵ月の期間にわたり投与した。各研究において、肝臓及び腎臓のサンプルを、注射後1時間、4時間、8時間、1日、4日、7日、14日、28日、及び56日に採取した。
【0282】
毒性学
in vitroアッセイにおいて、生化学的蛍光結合アッセイ(FBA)及び肝臓または腎臓のスライスアッセイを用いて毒性の可能性を評価した。FBAは、蛍光色素を各化合物と共にインキュベートし、直ちに蛍光を測定することにより実施する。高蛍光化合物は、in vivoで毒性を産生する可能性を有する。肝臓または腎臓のスライスアッセイは、ラットから単離したコア肝臓サンプルからの組織スライスをインキュベートすることにより実施する。24時間のインキュベート後、組織スライスからRNAを抽出し、18種の炎症促進性遺伝子の発現レベルを測定する。炎症促進性遺伝子の発現の誘導は、in vivoにおける炎症促進性効果の可能性を意味する。
【0283】
追加的なin vivoの毒性学評価を、正常マウス(Sv129マウス)に対し、300mg/kgの抗miR-17化合物の皮下注射を1回実施した。4日後、マウスを屠殺し、血清化学分析のために血液を採取し、肝臓及び脾臓を秤量し、腎臓組織及び肝臓組織からRNAを単離した。炎症促進性遺伝子、テトラトリコペプチドリピートを有するインターフェロン誘導タンパク質(IFIT)の発現レベルを測定した。IFIT発現の誘導は毒性の指標となる可能性があるため、IFIT発現を誘導しない化合物が好ましい。
【0284】
スクリーニングプロセス全体にわたり、ある特定のmiR-17化合物が複数のアッセイで良好に機能した。あらゆるアッセイで最も良好に機能する化合物がなかった一方で、ある特定の化合物は、複数のスクリーニング段階の後に、特に好ましい特徴、例えば、高い効力及び比較的高い腎臓対肝臓比を示した。in vitroアッセイで試験したほぼ200種の化合物のうち、およそ20種が、in vivoでのさらなる試験のための基準を満たした。これらの20種の化合物をその後5種の化合物に絞り、最終的に1種の化合物、RG4326に絞った。RG4326は、全体的なプロファイルが最も良好であり、候補薬学的作用物質として選択された。この化合物を同定した後、追加的な研究を行って、効力、薬物動態プロファイル、及び有効性を評価した。
【0285】
RG4326は、以下の配列及び化学修飾パターンを有する:ASGSCMAFCFUFUMUSGS[式中、下付き文字「M」を後に伴うヌクレオシドは、2′-O-メチルヌクレオシドであり、下付き文字「F」を後に伴うヌクレオシドは、2′-フルオロヌクレオシドであり、下付き文字「S」を後に伴うヌクレオシドは、S-cEtヌクレオシドであり、各シトシンは、非メチル化シトシンであり、全ての結合は、ホスホロチオエート結合である]。以下の実施例で説明されるように、この化合物は、in vivoでの強力なmiR-17のターゲットエンゲージメント、PKDのマウスモデルにおける有効性、及び腎臓への分布に好都合に働く薬物動態プロファイルを示した。加えて、RG4326の粘度は、およそ150mg/mL(20℃の水中)の濃度において6cPと定量されたため、溶解したRG4326は、皮下注射による投与に好適である。
【0286】
実施例3:追加的な短い抗miR-17化合物
追加的な9ヌクレオチドの化合物(RG4047)(各ヌクレオシドはS-cEtヌクレオシドである)を選択したアッセイで試験して、活性、安全性、及び薬物動態プロファイルをRG4326と比較した。
【0287】
用いた1つのアッセイは、ルシフェラーゼアッセイであった。上述したように、短い(例えば、9ヌクレオチド)抗miR-17化合物は、in vivo研究では利点を有し得る一方、in vitroトランスフェクションアッセイでは必ずしも良好に機能するわけではない。したがって、ルシフェラーゼアッセイのトランスフェクション条件を短い抗miR-17化合物向けに最適化して、この化合物の阻害活性を測定できるようにした。
【0288】
RG5124を対照化合物として使用した。RG5124は、長さが9個の結合したヌクレオシドであり、RG4326と同じパターンの糖修飾を有するが、miR-17に対し相補的ではない核酸塩基配列を有する。
【0289】
miR-17用のルシフェラーゼレポータープラスミドは、ルシフェラーゼ遺伝子の3′-UTR内に1つの完全に相補的なmiR-17結合部位を含有していた。HeLa細胞に対し、マイクロRNA模倣体及びその同種ルシフェラーゼレポーターをトランスフェクトし、次に抗miR-17を0.001、3、10、30、100、及び300nMの用量でトランスフェクトした。24時間のトランスフェクト期間の終了時に、ルシフェラーゼ活性を測定した。表2-1に示されるように、RG4047は、RG4326ほどの効力ではなかったものの、用量依存的様式でmiR-17活性を阻害した。SDは、標準偏差を意味する。
【表2-1】
【0290】
RG4047に対し、in vivoでの効力、安全性、及び腎臓及び肝臓への分布を評価した。より大きなライブラリースクリーンと同様に、in vitroの効力からはin vivoの挙動が予測されなかった。RG4047は、腎臓及び肝臓の両方でわずかな炎症促進性シグナルを産生し、野生型マウス及びPKDマウスの両方でin vivoにおいてRG4326よりも効力の弱いmiR-17阻害物質であり、そしてはるかに低い腎臓対肝臓比を有した(表2-2を参照)。これらの研究から、RG4047の活性及び特性は、RG4326との対比において、向上していないことが明らかになった。
【0291】
化学修飾の配置、タイプ、及び数における、9-mer化合物の活性及び腎臓対肝臓比に及ぼす効果をさらに探索するため、追加的な抗miR-17化合物を野生型マウス及びJCKマウスの両方で評価した。JCKモデルは、ヒト9型ネフロン癆を引き起こす同じ遺伝子に関連する腎嚢胞疾患を緩やかに進行させるマウスモデルである。このマウスにおける腎嚢胞は、ネフロンの複数の領域で発生する。
【0292】
miPSAを使用して、野生型マウス及びJCKマウスの両方において、置換スコアにより測定される各化合物の効力を評価した。抗miR-17化合物の組織蓄積を、液液抽出(LLE)及び/または固相抽出(SPE)を用いた化合物の抽出により測定し、次に、イオン対逆相高速液体クロマトグラフィーと飛行時間型質量分析との組合せ(IP-RP-HPLC-TOF)を用いて、化合物のアイデンティティー及び濃度を分析した。
【0293】
これらの追加的な化合物ならびにRG4326及びRG4047の結果を表2-2に示す。
【0294】
野生型マウスに対し、miPSA分析のために3mg/kgの単回用量を投与し、組織蓄積分析のために30mg/kgの単回用量を投与した。JCKマウスに対しては、miPSA及び組織蓄積分析のいずれについても30mg/kgの単回用量を投与した。抗miR-17化合物の投与から7日後に、腎臓組織を採取した。表2-2に示されるように、修飾ヌクレオシドのタイプ及び配置におけるバリエーションは、抗miR-17化合物のmiR-17阻害活性及び/または腎臓対肝臓比に対し相当な影響を示した。例えば、RG4324は、miPSAにより測定される効力を示したが、腎臓:肝臓比は他の化合物において観察された比よりも低かった。腎臓対肝臓比が高いほど、概して、主要な作用部位が腎臓である疾患には好ましい。逆にRG4327は、PKDマウスにおいて、高い腎臓:肝臓比を示し、低い効力を示した。上述したように、RG4326は、PKDの処置に最も好適な効力及び薬物動態プロファイルを示した。
【表2-2】
【0295】
実施例4:追加的なin vitroアッセイにおけるRG4326の活性
RG4326の効力をさらに探索するため、追加的なin vitroアッセイを行った。ルシフェラーゼレポーターアッセイを使用して、RG4326がmiR-17ファミリーメンバー、miR-17、miR-20a、miR-93、及びmiR-106bを阻害する能力を試験した。miR-20a、miR-93、及びmiR-106bの各々のために、ルシフェラーゼ遺伝子の3′-UTR内に1つの完全に相補的なmiRマイクロRNA結合部位を有する、ルシフェラーゼレポータープラスミドを構築した。HeLa細胞に対し、マイクロRNA模倣体及びその同種ルシフェラーゼレポーターをトランスフェクトし、次に抗miR-17を100nMの用量でトランスフェクトした。表3に示されるように、miR-17、miR-20a、miR-93、及びmiR-106bの各々が、RG4326により阻害された。これは、抗miR-17化合物がmiR-17ファミリーの複数のメンバーを阻害することを実証している。RG4326は、試験しなかった他のmiR-17ファミリーメンバー、miR-20b及びmiR-106b、に対しても100%相補的であることから、これらのマイクロRNAも阻害すると予測される。表3のデータは、
図1Aにも示されている。
【表3】
【0296】
RG4326がmiR-17の内在性標的の制御を阻害する能力を試験するため、正常マウス及びPKDマウスの腎臓からのいくつかの腎臓の細胞タイプにおけるmiR-17標的遺伝子抑制解除をin vitroで評価した。マウス腎臓集合管細胞(IMCD3)を、0.3nM、1.2nM、4.7nM、18.8nM、75nM、及び300nMのRG4326または対照オリゴヌクレオチドRG5124で処理した。追加的な対照群には、未処置細胞及び模擬トランスフェクト細胞(トランスフェクション試薬のみで処置した細胞)が含まれた。24時間のトランスフェクション期間後、細胞を採取し、RNAを抽出した。miR-17により標的化される18種の遺伝子のmRNAレベルを測定し、平均をとって、薬物力学シグネチャースコア(PDシグネチャースコア)(模擬トランスフェクションに対するLog2倍数変化(Log2FC)として表される)を提供した。表4に示されるように、RG4326は、miR-17標的を用量依存的様式で抑制解除したが、対照処置はmiR-17標的を抑制解除しなかった。このデータは、
図2Bにも示されている。
【表4】
【0297】
RG4326がmiR-17標的を抑制解除する能力についても、正常マウス及びPKDマウスの両方の腎臓からの追加的な腎臓の細胞タイプで評価した。細胞を、30nMのRG4326または対照オリゴヌクレオチドRG5124で処置した。24時間のトランスフェクション期間後、細胞を採取し、RNAを抽出した。miR-17により標的化される18種の遺伝子のmRNAレベルを測定し、平均をとって、薬物力学シグネチャースコア(PDシグネチャースコア)(模擬トランスフェクションに対するLog2倍数変化(Log2FC)として表される)を提供した。表5に示されるように、RG4326は、いくつかの異なる健康な腎臓由来細胞タイプ及び病的な腎臓由来細胞タイプにおいて、miR-17標的を抑制解除したが、対照オリゴヌクレオチドはmiR-17標的を抑制解除しなかった。「P<0.05」とは、一元配置ANOVAにより算出されるp値が0.05未満であることを意味する。「NS」とは、統計的に有意ではない変化を意味する。
【表5】
【0298】
実施例5:RG4326のin vivo効力
マイクロRNAポリソームシフトアッセイ(miPSA)を使用して、正常マウス及びPKDマウスにおいて、腎臓内でmiR-17に直接係合する化合物を同定した。miPSAは、活性のmiRNAが、翻訳的に活性の高分子量(HMW)ポリソーム内でmiRNAのmRNA標的に結合し、一方阻害されたmiRNAが、低MW(LMW)ポリソーム内に存在するという原理に依存する。抗miR-17による処置は、マイクロRNAのHMWポリソームからLMWポリソームへのシフトをもたらす。したがって、miPSAは、相補的な抗miRによるマイクロRNAターゲットエンゲージメントの直接的な測定をもたらす(Androsavich et al.,Nucleic Acids Research,2015,44:e13)。
【0299】
この実験において、選択したPKDモデルはJCKモデルであった。JCKモデルは、ヒト9型ネフロン癆を引き起こす同じ遺伝子に関連する腎嚢胞疾患を緩やかに進行させるマウスモデルである。このマウスにおける腎嚢胞は、ネフロンの複数の領域で発生する。
【0300】
C57BL6マウスに対し、0.3、3、及び30mg/kgのRG4326またはツール抗miR-17(実施例1で説明)の単回皮下用量で処置した。JCKマウスに対し、3、30、及び100mg/kgのRG4326またはツール抗miR-17の単回皮下用量で処置した。PBS処置を追加的な対照として使用した。処置から7日後にマウスを屠殺し、miPSA用に腎臓組織を単離した。表6に示される算出された置換スコアは、正常腎臓及びPKD腎臓の両方において、RG4326による強力なターゲットエンゲージメントを実証した。RG4326による処置後の置換スコアは、ツール抗miR-17化合物による処置後の置換スコアよりも高かった。野生型マウス及びJCKマウスについてのデータは、それぞれ
図3A及び
図3Bにも示されている。
【表6】
【0301】
実施例6:PKDの実験モデルにおけるin vivoでのRG4326の有効性
2つのPKD実験モデルを使用して有効性を評価した。Pkd2-KOマウスは自然発生的に多発性嚢胞腎疾患に罹患するが、このPkd2-KOマウスをADPKDのモデルとして使用した。Patel et al.,PNAS,2013;110(26):10765-10770を参照。Nphp3に変異を有するPcyマウスは、自然発生的に多発性嚢胞腎疾患に罹患するが、疾患の進行は、Pkd2-KOマウスで観察される進行よりも遅い。Pcyモデルをネフロン癆のモデルとして使用する。Happe and Peters,Nat.Rev.Nephrol.,2014;10: 587-601を参照。
【0302】
Pkd2-KOモデル
ADPKDのPkd2-KOマウスモデルにおいて、RG4326を試験した。このモデルは、PKD2-KOモデルとも称される。野生型マウスを対照マウスとして使用した。miR-17に無関係なmiRNAに対し相補的なオリゴヌクレオチドを、特異性に関する処置対照として使用した(RG5124)。
【0303】
10、11、12、及び19日目の各々に、同じ日齢及び性別の同腹仔マウスに対し、20mg/kgの用量のRG4326(n=12)、20mg/kgの用量のRG5124(n=12)、20mg/kgの用量のツール抗miR-17(n=12)、またはPBS(n=12)の皮下注射を投与した。マウスを28日齢時に屠殺し、腎臓重量、体重、嚢胞インデックス、血清クレアチニンレベル、及び血中尿素窒素(BUN)レベルを測定した。BUNレベルは、腎機能のマーカーである。より高いBUNレベルはより低い腎機能に相関するため、BUNレベルの低減は、腎臓の傷害及び損傷の低減ならびに機能向上の指標となる。ダネットの補正を伴った一元配置ANOVAにより、統計的有意性を算出した。
【0304】
嚢胞インデックスは、総腎面積に対する嚢胞面積の組織学的測定値である。この分析のために、1つの腎臓を低温のPBS及び4%(wt/vol)のパラホルムアルデヒドで灌流させ、次に採取した。腎臓を4%のパラホルムアルデヒドで2時間固定し、次に薄切を行うためにパラフィンに包埋した。腎臓の矢状切片をヘマトキシリン及びエオシン(H&E)で染色した。全ての画像処理ステップは、自由に利用可能なオープンソースソフトウェア:EBImage Bioconductor package2からの機能を使用したR1スクリプト及びImageMagick3の画像処理ツール一式で自動化され行われた。Aperio SVSフォーマットの腎臓H&E画像をTIFF画像に変換し、最初のフレームを画像分析用に保持した。最初に、画像セグメンテーションを用いて総腎断面積を算出した。画像セグメンテーションを同様に使用して、腎嚢胞を含めた全ての内部構造を見いだした。平均半径3ピクセル未満の全てのオブジェクトを削除するフィルターを適用した。嚢胞インデックスは、嚢胞に関連する画像面積を総腎面積で割ったものである。嚢胞インデックスは、各個々の動物の縦方向及び横方向の腎臓切片に対し別々に算出される。個々の動物の嚢胞インデックスを合わせたものを各処置群ごとに比較した。
【0305】
結果を表7に示す。RG4326で処置したPkd2-KOマウスにおける平均の腎臓重量対体重比(KW/BW比)は、PBSを投与したPkd2-KOマウスにおける平均KW/BW比よりも29%低かった(p=0.0099)。RG4326で処置したPkd2-KOマウスは、PBSを投与したPkd2-KOマウスに比べて平均12%の嚢胞インデックスの低減を示したが、この差は統計的に有意ではなかった。平均BUNレベルは、PBSで処置したPkd2-KOマウスにおいて13%低減されたが、この差は統計的に有意ではなかった。RG4326で処置したPkd2-KOマウスにおける平均の血清クレアチニンレベルは、PBSで処置したPkd2-KOマウスよりも18%低かったが、この結果は統計的に有意ではなかった。これらの結果は対照オリゴヌクレオチドでは観察されなかった。このことは、これらの結果が明確にmiR-17阻害によることを意味するものである。先の研究が、ツール抗miR-17化合物による処置後のPkd2-KOにおいて、KW/BW比、BUN、及び嚢胞インデックスの低減を実証した一方で、本研究では統計的に有意な変化が観察されなかった。対照オリゴヌクレオチドRG5124による処置は、腎臓重量対体重、嚢胞インデックス、またはBUNを低減しなかった。KW/BW比、BUN、及び嚢胞インデックスは、それぞれ
図4A、
図4B、及び
図4Cにも示されている。
【表7】
【0306】
これらの結果は、RG4326処置が、Pkd2-KOマウスにおいて、PKDの処置に関係する生物学的エンドポイント、体重に対する腎容積に関して正の結果を導くということを実証している。この特定のエンドポイントに関しては、RG4326は、ツール抗miR-17化合物よりも有効であった。RG4326処置は、Pkd2-KOマウスにおいて、BUNを低減し嚢胞インデックスを低減する傾向をもたらした。
【0307】
Pcyモデル
Pcyマウスモデルにおいて、RG4326を試験した。野生型マウスを対照群として使用した。Pcyマウスに対し、4週齢から週1回、皮下注射を介して、25mg/kgの用量のRG4326、25mg/kgの用量の抗miR-17、25mg/kgの用量の対照オリゴヌクレオチドRG5124、またはPBSで処置した。各処置群には15匹の雄マウスが含まれた。3つの処置を55、56、及び57日齢時に投与し、その後は週1回、6、7、8、9、10、11、12、13、及び14週齢時に投与した。多発性嚢胞腎疾患を有する一部の患者に処方されるバソプレシンV2受容体拮抗薬(VRA)、トルバプタンも試験した。15週齢時にマウスを屠殺した。体重を記録した。一方の腎臓を抽出し、秤量し、他方の腎臓を組織学的分析のために処理して、Pkhd1/cre;/Pkd2F/Fの研究に関し説明されている嚢胞インデックスを算出した。血中尿素窒素(BUN)レベル及び血清クレアチニンレベルを測定した。ダネットの補正を伴った一元配置ANOVAにより、統計的有意性を算出した。
【0308】
結果を表8に示す。PBS処置マウスにおける平均KW/BW比との対比において、処置したPcyマウスにおける平均KW/BW比は、25mg/kgのRG4326で処置した群では19%低かった(p=0.0055)。加えて、嚢胞インデックスは、RG4326で処置したPcyマウスでは、PBSを投与したPcyマウスに比べて34%低減された(p=0.016)。PcyマウスにおけるRG4326による処置は、PBS処置PcyマウスにおけるBUNとの対比において、BUNを16%低減した(p=0.0070)。対照オリゴヌクレオチドまたはツール抗miR-17化合物による処置は、KW/BW比にも、BUNにも、嚢胞インデックスにも、統計的に有意な低減をもたらさなかった。本研究において、トルバプタンは有効ではなかった。表8のデータは、
図5にも示されている。
【表8】
【0309】
これらのデータは、PKDの追加的モデルにおいて、RG4326による処置が、腎臓重量、BUN、及び嚢胞インデックスにおける低減を導くことを実証している。
【0310】
実施例7:RG4326の薬物動態評価
短いオリゴヌクレオチドは、体内のオリゴヌクレオチド分布を推進する特性である血清タンパク質結合能力が低減しているため、必ずしも、薬物としての使用に好適となるような薬物動態特性を有することを期待されるものではない。RG4326を、マウス、サル、またはヒトの肝臓ホモジェネート中でインキュベートした。24時間のインキュベート後に、RG4326及び代謝物のアイデンティティー及び濃度を定量した。RG4326及び代謝物を、液液抽出(LLE)及び/または固相抽出(SPE)を用いて抽出し、次に、イオン対逆相高速液体クロマトグラフィーと飛行時間型質量分析との組合せ(IP-RP-HPLC-TOF)を用いて、抽出物のアイデンティティー及び濃度を分析した。表9に示されるように、RG4326は、その長さが短いにもかかわらず、特に好ましい薬物動態プロファイルを有し、親化合物RG4326の95%超が24時間のインキュベート後に依然としてインタクトであることが見いだされた。
【表9】
【0311】
野生型マウスに対し、30mg/kg用量のRG4326またはツール抗miR-17化合物を単回皮下投与することにより、薬物動態的挙動を評価した。単回注射から1時間、4時間、8時間、1日、7日、14日、28日、及び56日後に、マウスを屠殺し、腎臓組織及び肝臓組織における抗miR化合物の平均濃度を上述のように測定した(ug/g)。式ug*h/g(式中、ugは組織内のオリゴヌクレオチドの量であり、hは組織採取の時点(時単位)であり、gは組織の重量である)を用いて、腎臓組織及び肝臓組織における曲線下面積(AUC)を算出した。腎臓AUC対肝臓AUCの比を定量した。腎臓組織をさらにmiPSAに処理し、本研究における各化合物ごとのターゲットエンゲージメントを定量した。式Log2FC*h(式中、Log2FCは置換値であり、hは組織採取の時点(時単位)である)を用いて、PSA AUCを算出した。式Log2FC+g/ug(式中、Log2FCはmiPSAにより定量される置換値であり、gは腎臓組織の重量であり、ugは7日時における腎臓組織内の抗miRの量である)を用いて、7日時における腎臓の効力を算出した。
【0312】
表10に示されるように、RG4326の場合の腎臓AUC対肝臓AUCの比は、ツール抗miR-17化合物の場合よりも高い。際立ったことに、RG4326の場合の腎臓AUCは、ツール抗miR-17化合物の場合より低いものの、miPSAにより定量される効力は、ツール抗miR-17化合物の場合より相当に高い。したがって、RG4326は、PKDにおける主要な標的組織である腎臓において、より低い濃度でより高い効力を示す。
【表10】
【0313】
野生型(C57B16)マウス及びPKD(JCK)マウスにおいて、RG4326の薬物動態的挙動の特徴をさらに明らかにした。5匹のマウスの各群に対し、10mg/kgの皮下注射を3回、連続3日の各日に投与した。3回目の最後の注射後1、4、7、14、及び21日時にマウスを屠殺し、血漿、腎臓、及び肝臓のサンプルを採取した。RG4326の測定については、RG4326を、液液抽出(LLE)及び/または固相抽出(SPE)を用いて抽出し、次に、イオン対逆相高速液体クロマトグラフィーと飛行時間型質量分析との組合せ(IP-RP-HPLC-TOF)を用いて、抽出物のアイデンティティー及び濃度を分析した。
【0314】
データを表11に概括する。RG4326は、血漿及び組織の両方において安定しており、21日後に親化合物の90%超が残存していることが観察された。抗miRは、注射から数時間以内で組織に、主に腎臓に迅速に分布する。半減期は、野生型マウスの肝臓及び腎臓においておよそ8日、JCKマウスの肝臓においておよそ6日、そしてJCKマウスの腎臓においておよそ8日である。野生型マウスにおいて、腎臓AUC対肝臓AUCの比は17であった。PKDマウスにおいて、腎臓AUC対肝臓AUCの比は13であった。これらのデータは、RG4326の薬物動態プロファイルが正常マウス及びPKDマウスの場合と同等であることを実証している。
【表11】
【0315】
実施例8:RG4326の安全性評価
腎臓及び肝臓における毒性の可能性を、in vitro、ex vivo、及びin vivoアッセイで評価した。
【0316】
生化学的蛍光結合アッセイ(FBA)を用いて、毒性の可能性を評価した。FBAは、蛍光色素を各化合物と共にインキュベートし、直ちに蛍光を測定することにより実施する。結果は、対照処置サンプルに対する倍数変化(線形FC)として表現される。高蛍光化合物は、in vivoで毒性を産生する可能性を有する。
【0317】
肝臓または腎臓の組織スライスを用いてex vivoアッセイを実施した。肝臓または腎臓のスライスアッセイは、ラットから単離したコア肝臓または腎臓のサンプルからの組織スライスをインキュベートすることにより実施する。24時間のインキュベート後、組織スライスからRNAを抽出し、IFITを含めた18種の炎症促進性遺伝子の発現レベルを測定する。PBS処置に対する倍数変化(Log2-FC)のlog2変換を実施した。炎症促進性遺伝子の発現の誘導は、in vivoにおける炎症促進性効果の可能性を意味する。
【0318】
正常なSv129マウスにおいて、in vivoアッセイを実施した。300mg/kgのRG4326の単回皮下用量を投与した。PBSと、miR-17に関係しない2つの抗miRとが対照処置として含まれており、抗miRの一方は炎症促進性であることが知られているもの(陽性対照)であり、一方は炎症促進性でないもの(陰性対照)であった。4日後、マウスを屠殺した。RNA抽出のために、腎臓組織及び肝臓組織を単離した。炎症応答中に誘導されることが知られている遺伝子IFITのレベルを測定し、マウスGAPDHに対し正規化した。PBS処置に対する倍数変化(Log2-FC)のlog2変換を実施した。
【表12】
【0319】
これらのデータは、RG4326が、複数のアッセイに基づいた好ましい安全性プロファイルと、炎症促進性傾向における最小限のリスクとを示すことを実証した。
【配列表】