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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-31
(45)【発行日】2022-09-08
(54)【発明の名称】クリーンオーブン
(51)【国際特許分類】
   F27B 5/06 20060101AFI20220901BHJP
   F27D 7/04 20060101ALI20220901BHJP
【FI】
F27B5/06
F27D7/04
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020047996
(22)【出願日】2020-03-18
(65)【公開番号】P2021148356
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2021-03-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000211123
【氏名又は名称】中外炉工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100144200
【弁理士】
【氏名又は名称】奥西 祐之
(74)【代理人】
【識別番号】100183276
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 裕三
(72)【発明者】
【氏名】山村 正道
【審査官】立木 林
(56)【参考文献】
【文献】特表2007-526978(JP,A)
【文献】特開2002-243368(JP,A)
【文献】実開平7-41396(JP,U)
【文献】特開2012-167865(JP,A)
【文献】特開2014-139510(JP,A)
【文献】特開2005-249276(JP,A)
【文献】特開平06-221764(JP,A)
【文献】特開平08-259209(JP,A)
【文献】特開2011-127830(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F27B 5/06
F27D 7/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状のワークを熱処理するための熱処理室と、前記熱処理室の上流側と下流側を連通してヒータおよび循環ファンを備えた連通空間とによって循環流路を形成し、前記循環流路に第1ガスを循環させる筐体と、
前記熱処理室に配置され、ワークを内部に収容する内部空間を有し、前記内部空間に第2ガスが充填されるマッフルと、
前記マッフルの前記内部空間に前記第2ガスを導入するガス導入管と、
前記マッフルの前記内部空間から前記第2ガスを排出するガス排出管と、
制御部と、を備え、
前記ガス導入管と前記ガス排出管のそれぞれは、横方向に長い先端部を有し、前記内部空間に収容された前記ワークの表面に沿って前記第2ガスを流し、
前記制御部は、前記循環流路を冷却する冷却動作において、前記ガス導入管から前記マッフルの前記内部空間へ前記第2ガスを導入して前記ガス排出管から外部へ排気することで、前記内部空間および前記ワークを冷却する、クリーンオーブン。
【請求項2】
前記熱処理室の上流側および下流側と前記連通空間との間はそれぞれ多孔板で仕切られている、請求項1に記載のクリーンオーブン。
【請求項3】
前記ガス導入管と前記ガス排出管のそれぞれは、前記筐体の前記循環流路を通過して前記マッフルに接続される、請求項1又は2に記載のクリーンオーブン。
【請求項4】
前記筐体へ外気を導入する吸気流路と、
前記筐体から外部に排気する排気流路と、
前記吸気流路を通じて前記筐体内へ外気を送り込む吸気ファンと、
前記吸気流路および/又は前記排気流路に設けたダンパと、をさらに備える、請求項1から3のいずれか1つに記載のクリーンオーブン。
【請求項5】
前記マッフルは、外部に連通する開口を有し、
前記開口を1つ以上の前記マッフルごとに開閉可能とする扉を前記筐体に取り付けた、請求項1から4のいずれか1つに記載のクリーンオーブン。
【請求項6】
前記マッフルは上面および下面を有し、前記上面と前記下面を接続する端部は先細りの形状を有する、請求項1から5のいずれか1つに記載のクリーンオーブン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、クリーンオーブンに関する。
【背景技術】
【0002】
クリーンオーブンとして、特許文献1のようなものがある。特許文献1のクリーンオーブンは、雰囲気中のダストを除去するフィルタを内部に有しており、そのフィルタを介して熱風や冷風を循環させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6140264号公報
【文献】特許第3920227号公報
【文献】特許第3866085号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の構成ではクリーンオーブンの内部の構造が複雑であり、ダストの付着や発生源が多く、雰囲気のクリーン化が困難となっている。
【0005】
また、フィルタ繊維自体からの発塵や、メンテナンスで内部を清掃した後、再びクリーン化するまでの立ち上げに時間がかかるという問題もある。
【0006】
また、そのオーブンで特許文献2や特許文献3のようにワークとしてガラス基板を水平に多段置きして加熱する場合は、ワークの表面積が広く、その表面を気流が流れるため、ダストの付着する確率が高く、不良品が多く発生してしまう。
【0007】
本開示は、前記課題を解決するものであり、ワークへの不純物の付着を抑制できるクリーンオーブンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様のクリーンオーブンは、ワークを熱処理するための熱処理室と、前記熱処理室の上流側と下流側を連通してヒータおよび循環ファンを備えた連通空間とによって循環流路を形成し、前記循環流路に第1ガスを循環させる筐体と、前記熱処理室に配置され、ワークを内部に収容する内部空間を有し、前記内部空間に第2ガスが充填されるマッフルと、を備える。
【0009】
前記構成によれば、熱処理室を循環する第1ガスによってマッフルを熱処理することで、マッフル内部のワークが間接的に熱処理される。マッフルを加熱する第1ガスはワークに直接接触しないため、熱処理室や連通空間に浮遊するゴミが第1ガスによって運ばれてワークに付着することなく、ワークの熱処理を行うことができる。これにより、ワークへの不純物の付着を抑制することができる。
【0010】
前記クリーンオーブンにおいて、前記熱処理室の上流側および下流側と前記連通空間との間はそれぞれ多孔板で仕切られてもよい。前記構成によれば、熱処理室に第1ガスを均等に送り込むことができる。
【0011】
前記クリーンオーブンは、前記マッフルの前記内部空間に前記第2ガスを導入するガス導入管をさらに備え、前記ガス導入管は、前記筐体の前記循環流路を通過して前記マッフルに接続されてもよい。前記構成によれば、ガス導入管を連通空間と熱処理室に通すことで、第2ガスがマッフルに到達する前に加熱することができ、効率的な熱処理が可能となる。
【0012】
前記クリーンオーブンは、前記筐体へ外気を導入する吸気流路と、前記筐体から外部に排気する排気流路と、前記吸気流路を通じて前記筐体内へ外気を送り込む吸気ファンと、前記吸気流路および/又は前記排気流路に設けたダンパと、をさらに備えてもよい。前記構成によれば、ワークの加熱時はダンパを閉じて筐体の内部を加熱することができ、加熱終了後はヒータを止めてダンパを開けば、筐体の内部を冷却してワークを冷却できる。また、吸気ファンを止めておけば流れは生じないので、ダンパは吸気流路か排気流路のいずれか片方だけでもよい。
【0013】
前記クリーンオーブンにおいて、前記マッフルは、外部に連通する開口を有し、前記開口を1つ以上の前記マッフルごとに開閉可能とする扉を前記筐体に取り付けてもよい。前記構成によれば、ワークを多品種少量生産するときに、ワークを1つずつ処理できる。
【0014】
前記クリーンオーブンにおいて、前記マッフルは上面および下面を有し、前記上面と前記下面を接続する端部は先細りの形状を有してもよい。前記構成によれば、マッフルの上面および下面にスムーズに気体が流れるので、循環の流路抵抗が減り、加熱冷却の効率が向上する。
【発明の効果】
【0015】
本開示によれば、ワークへの不純物の付着を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施形態におけるクリーンオーブンの縦断面図
図2】実施形態におけるマッフルの縦断面図
図3】実施形態におけるマッフルを含むクリーンオーブンの横断面図
図4】実施形態におけるマッフルの開口部を示す正面図
図5】実施形態における扉を閉めた状態におけるマッフルの縦断面図
図6】変形例におけるマッフルを含むクリーンオーブンの横断面図
【発明を実施するための形態】
【0017】
(実施形態)
以下、本開示に係るクリーンオーブンの好適な実施形態について、添付の図面を参照しながら説明する。本開示は、以下の実施形態の具体的な構成に限定されるものではなく、同様の技術的思想に基づく構成が本開示に含まれる。
【0018】
1.クリーンオーブンの構成
図1は、実施形態におけるクリーンオーブン2の概略構成を示す縦断面図である。
【0019】
クリーンオーブン2は、ワークSを内部に収容して加熱するための熱処理炉である。本実施形態のクリーンオーブン2は、複数のワークSをマッフル16のそれぞれに個別に収容した状態でマッフル16の外側から間接加熱する。ワークSは例えば、有機ディスプレイに用いられるガラス基板である。基板に液体が塗られた状態でクリーンオーブン2で加熱することにより、焼成処理を行う。
【0020】
図1に示すように、クリーンオーブン2は、筐体4と、吸気機構6と、排気機構8と、循環ファン10と、ヒータ12と、第1多孔板14Aと、第2多孔板14Bと、複数のマッフル16と、温度センサ17と、制御部18とを備える。
【0021】
筐体4は、ワークSを加熱するための加熱空間を形成する。筐体4の内部には、ワークSを加熱するための気体が循環する循環流路5が形成されている。図1では、循環流路5における気体の流れを矢印で示している。図1に示すように、筐体4の循環流路5に対して吸気機構6および排気機構8が接続されている。
【0022】
吸気機構6は、循環流路5に対して気体としての第1ガスを導入する機構である。本実施形態の吸気機構6は、第1ガスとして常温の空気を導入する。
【0023】
吸気機構6は、吸気ファン20と、吸気流路22と、ダンパ24と、コントロールモータ26とを備える。吸気ファン20は、吸気流路22に第1ガスとしての空気を供給するためのファンである。吸気流路22の途中にはダンパ24が設けられている。ダンパ24は吸気流路22を開閉するための開閉部材である。ダンパ24の開閉およびその開度はコントロールモータ26によって変更される。吸気ファン20およびコントロールモータ26の運転は後述する制御部18によって制御される。
【0024】
排気機構8は、循環流路5を流れる第1ガスを外部へ排出する機構である。排気機構8は、排気流路28と、ダンパ30と、コントロールモータ32とを備える。これらの構成は吸気機構6の構成と同様であるため、説明を省略する。
【0025】
循環ファン10は、循環流路5において第1ガスを循環させるためのファンである。循環ファン10はモータ11により駆動される。
【0026】
ヒータ12は、循環流路5を流れる第1ガスを加熱するためのヒータである。
【0027】
第1多孔板14Aおよび第2多孔板14Bは、循環流路5を仕切るための部材である。第1多孔板14Aおよび第2多孔板14Bはともに多数の穴が形成された板状の部材で構成される。第1多孔板14Aおよび第2多孔板14Bによって、循環流路5は熱処理室7と連通空間9とに仕切られる。
【0028】
熱処理室7は、第1多孔板14Aと第2多孔板14Bの間に形成される空間であり、複数のマッフル16が配置される。連通空間9は、熱処理室7の下流側と上流側とを接続する空間であり、循環ファン10およびヒータ12が配置される。
【0029】
第1多孔板14Aは第2多孔板14Bの上流側に配置されており、第1多孔板14Aを通過した気体が熱処理室7に流入し、第2多孔板14Bに向かって流れる。
【0030】
熱処理室7に配置されるマッフル16は、ワークSを収容する部材である。本実施形態のマッフル16は上下に複数段設けられており、マッフル16のそれぞれに1つのワークSが収容される。熱処理室7に流入した第1ガスはマッフル16同士の間を通過してマッフル16の表面に沿って流れることで、マッフル16が加熱され、マッフル16内のワークSが間接加熱される。マッフル16の材質は例えばステンレスである。マッフル16は例えば支柱や梁(図示せず)によって支持された状態で熱処理室7に配置される。また、ワークSはマッフル16の底面に設けられたピン(図示せず)によって底面から浮かせた状態で保持される。
【0031】
マッフル16の断面形状について、図2を用いて説明する。図2は、マッフル16の縦断面図である。
【0032】
図2に示すように、マッフル16は、互いに対向する上面44および下面46を有する。上面44および下面46は、気体の流れ方向の上流側において上流端部48によって互いに接続され、下流側において下流端部50によって互いに接続される。上流端部48および下流端部50のそれぞれの先端は先細りの形状となっている。先細りの形状とすることで、マッフル16の表面に沿って第1ガスがスムーズに流れ、第1ガスとマッフル16との熱交換が促進され、マッフル16を効率的に加熱することができる。
【0033】
マッフル16の内部には、第1ガスとは異なる種類のガスである第2ガスが供給される。マッフル16の内部に第2ガスを供給するための構成について、図3を用いて説明する。
【0034】
図3は、マッフル16を含むクリーンオーブン2の横断面図である。図3に示すように、クリーンオーブン2は、ガス導入管34と、ガス排出管36と、扉38とをさらに備える。
【0035】
ガス導入管34は、マッフル16の内部空間19に第2ガスを導入するためのパイプである。本実施形態のガス導入管34は、第2ガスとして窒素を導入する。マッフル16の内部空間19に窒素ガスを導入することで、内部空間19をクリーンな状態に保ちながらワークSを加熱することができる。
【0036】
ガス排出管36は、マッフル16の内部空間19から第2ガスを外部に排出するためのパイプである。ガス排出管36を設けることで、マッフル16の内部空間19に継続的に窒素ガスを供給し続けることができ、内部空間19のクリーンな状態を保つことができる。
【0037】
図3に示すように、ガス導入管34は、扉38に挿通されている。ガス排出管36は、ガス導入管34に対して、ガス導入管34からの第2ガスの流れ方向の下流側に配置され、筐体4に挿通されている。ガス導入管34およびガス排出管36のそれぞれは、横方向に長い先端部35、37を有し、ガス導入管34からガス排出管36にかけて第2ガスがワークSの表面全体に対して均一に流れるようにしている。
【0038】
扉38は、マッフル16の開口43を開閉するための部材である。扉38は、筐体4のフランジ40に接触した状態でマッフル16の開口43を閉じる。フランジ40の表面には封止用のパッキン42が設けられている。
【0039】
フランジ40の正面図を図4に示す。図4に示すように、フランジ40の表面において、マッフル16A、16Bのそれぞれの開口43A、43Bを囲む位置にパッキン42A、42Bが設けられている。具体的には、上段のマッフル16Aの開口43Aの周囲にパッキン42Aが設けられ、下段のマッフル16Bの開口43Bの周囲にパッキン42Bが設けられる。
【0040】
扉38を閉めた状態のマッフル16の縦断面図を図5に示す。図5のように、扉38として、上段のマッフル16Aの開口43Aを開閉する扉38Aと、下段のマッフル16Bの開口43Bを開閉する扉38Bとが設けられている。扉38A、38Bのそれぞれは独立して開閉可能であり、扉38Aはパッキン42Aに接触し、扉38Bはパッキン42Bに接触する。複数のマッフル16のそれぞれに対応する扉38を設けることで、マッフル16のそれぞれでワークSを個別に搬入および搬出することができ、メンテナンス等も個別に実施することができる。
【0041】
図5に示すように、扉38Aにはガス導入管34Aが挿通され、扉38Bにはガス導入管34Bが挿通されている。
【0042】
図1に戻ると、温度センサ17は、循環流路5を流れる第1ガスの温度を測定するセンサである。温度センサ17は、連通空間9の途中において第1多孔板14Aの上流側近傍に配置されている。温度センサ17の測定値は随時、制御部18に送信される。
【0043】
制御部18は、クリーンオーブン2の運転を制御するための部材である。制御部18は例えばマイクロコンピュータを有した制御盤で構成される。制御部18は、図1の点線で示すようにクリーンオーブン2の構成要素に電気的に接続されており、これらの構成要素の運転を制御する。
【0044】
2.クリーンオーブンの動作
上述した構成を有するクリーンオーブン2の動作例について説明する。以下の動作は、例えば温度センサ17から送信される温度測定値に基づいて制御部18によって実行される。
【0045】
2-1.加熱動作
まず、ワークSを加熱する加熱動作を実行する。制御部18は、循環ファン10を運転し、循環流路5に第1ガスを循環させる。制御部18はこのとき、吸気流路22および排気流路28がダンパ24、30によって閉じられるようにコントロールモータ26、32を制御する。これにより、筐体4の内部で循環流路5が密閉される。制御部18はさらにヒータ12を運転し、循環流路5を循環する第1ガスを加熱する。
【0046】
上記制御によれば、循環流路5を循環する第1ガスが加熱されるとともに、熱処理室7を通過する第1ガスによってマッフル16が加熱され、マッフル16の内部に配置されたワークSを間接加熱することができる。
【0047】
循環流路5を循環する第1ガスに空気を用いることで、窒素やその他の気体を用いる場合に比べて、コストを大幅に低減することができる。ワークSはマッフル16に収容されているため、第1ガスである空気に含まれる不純物がワークSに付着することなく、ワークSの熱処理を行うことができる。
【0048】
また第1多孔板14Aと第2多孔板14Bを設けることで、熱処理室7に第1ガスを均等に流入させることができ、ワークSを上段から下段にかけて均一な温度で加熱することができる。
【0049】
2-2.冷却動作
上記加熱動作が終了すると、クリーンオーブン2の内部を冷却する冷却動作を実行する。具体的には、制御部18は、ヒータ12の運転を停止するとともに、ダンパ24、30が吸気流路22および排気流路28を開くようにコントロールモータ26、32を制御する。制御部18はさらに、吸気ファン20を運転することで、吸気流路22を介して第1ガスとしての空気を循環流路5に導入し、さらに循環ファン10を運転することで、循環流路5を循環させつつ、排気流路28を介して外部に排気する。このように常温の空気を導入して循環流路5に循環させて排気も行うことで、加熱処理後のクリーンオーブン2内部の循環流路5を冷却することができ、熱処理室7に配置されたマッフル16およびその内部に配置されたワークSも同時に冷却される。
【0050】
上記冷却動作において、制御部18はさらに、図3に示したガス導入管34からマッフル16の内部空間19へ第2ガスとしての窒素を導入し、ガス排出管36から外部へ排気する。これにより、加熱処理後のマッフル16の内部空間19をさらに冷却して、ワークSをさらに冷却することができる。なお、冷却動作は、ワークSを取り出すごとに行う必要はない。加熱状態としたまま扉38を開けてワークSを取り出してもよい。マッフル16の内部は熱処理室7から隔離されているので、加熱中の第1ガスが外に流出することはない。
【0051】
3.作用効果
上述した実施形態のクリーンオーブン2は、ワークSを熱処理するための熱処理室7と、熱処理室7の上流側と下流側を連通してヒータ12および循環ファン10を備えた連通空間9とによって循環流路5を形成する。クリーンオーブン2は、循環流路5に第1ガスを循環させる筐体4と、熱処理室7に配置されるマッフル16とを備える。マッフル16は、ワークSを内部に収容する内部空間19を有し、内部空間19に第2ガスが充填される。
【0052】
このような構成によれば、熱処理室7を循環する第1ガスによってマッフル16を加熱することで、マッフル16の内部空間19に配置したワークSを間接的に加熱することができる。マッフル16を加熱する第1ガスはワークSに直接接触しないため、熱処理室7や連通空間9に浮遊するゴミが第1ガスによって運ばれてワークSに付着することなく、ワークSの熱処理を行うことができる。これにより、ワークSへの不純物の付着を抑制しながら、ワークSの熱処理を行うことができる。また、マッフル16はワークSを1つずつ狭い空間で囲んでいるため、第2ガスの使用量を減らすことができる。
【0053】
また、実施形態のクリーンオーブン2では、熱処理室7の上流側および下流側と連通空間9との間はそれぞれ多孔板14A、14Bで仕切られている。このような構成によれば、熱処理室7に第1ガスを均等に送り込むことができる。
【0054】
また、実施形態のクリーンオーブン2は、筐体4へ外気を導入する吸気流路22と、筐体4から外部に排気する排気流路28と、吸気流路22を通じて筐体4内へ外気を送り込む吸気ファン20と、吸気流路22および/又は排気流路28に設けたダンパ24、30とをさらに備える。このような構成によれば、ワークSの加熱時はダンパ24、30を閉じて筐体4の内部を加熱することができ、加熱終了後はヒータ12を止めてダンパ24、30を開けば、筐体4の内部を冷却してワークSを冷却できる。
【0055】
また、実施形態のクリーンオーブン2では、マッフル16は、外部に連通する開口43を有し、開口43を各マッフル16ごとに開閉可能とする扉38を筐体4に取り付けている。このような構成によれば、多品種少量生産するときに、ワークSを1つずつ処理できる。
【0056】
また、実施形態のクリーンオーブン2では、マッフル16は上面44および下面46を有し、上面44と下面46を接続する端部48、50は先細りの形状を有する。このような構成によれば、マッフル16の上面44および下面46にスムーズに気体が流れるため、循環の流路抵抗が減り、加熱冷却の効率が向上する。
【0057】
4.変形例
以上、上述の実施形態を挙げて本開示の発明を説明したが、本開示の発明は上述の実施形態に限定されない。例えば、上記実施形態では、図3に示したガス導入管34が扉38を通じてマッフル16の内部空間19と筐体4の外部に接続される場合について説明したが、このような場合に限らない。図6に示す変形例のクリーンオーブン60のように、ガス導入管62は、筐体4の循環流路5を通過してからマッフル16に接続されてもよい。このような構成によれば、マッフル16に接続する前にガス導入管62を加熱することができ、ガス導入管62を流れる第2ガスを予め加熱した状態でマッフル16の内部空間に供給することができ、効率的な熱処理が可能となる。なお、ガス排出管64は、ガス導入管62に対して、ガス導入管62からの第2ガスの流れ方向の下流側に配置され、筐体4に挿通される。ガス導入管62およびガス排出管64のそれぞれは、横方向に長い先端部63、65を有し、ガス導入管62からガス排出管64にかけて第2ガスがワークSの表面全体に対して均一に流れるようにしている。
【0058】
また上記実施形態では、複数のマッフル16のそれぞれに扉38を設ける場合について説明したが、このような場合に限らない。複数のマッフル16をまとめて開閉する1つの扉を設けてもよい。
【0059】
また上記実施形態では、第1ガスに空気を用いて第2ガスに窒素を用いる場合について説明したが、このような場合に限らず、その他の種類の気体を用いてもよい。
【0060】
本開示は、添付図面を参照しながら好ましい実施形態に関連して充分に記載されているが、この技術の熟練した人々にとっては種々の変形や修正は明白である。そのような変形や修正は、添付した特許請求の範囲による本開示の範囲から外れない限りにおいて、その中に含まれると理解されるべきである。また、各実施形態における要素の組合せや順序の変化は、本開示の範囲及び思想を逸脱することなく実現し得るものである。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本開示は、クリーンオーブンであれば適用可能である。
【符号の説明】
【0062】
2 クリーンオーブン
4 筐体
5 循環流路
6 吸気機構
7 熱処理室
8 排気機構
9 連通空間
10 循環ファン
11 モータ
12 ヒータ
14A 第1多孔板
14B 第2多孔板
16、16A、16B マッフル
17 温度センサ
18 制御部
19 内部空間
20 吸気ファン
22 吸気流路
24 ダンパ
26 コントロールモータ
28 排気流路
30 ダンパ
32 コントロールモータ
34、34A、34B ガス導入管
35 先端部
36、36A、36B ガス排出管
37 先端部
38、38A、38B 扉
40 フランジ
42、42A、42B パッキン
43、43A、43B 開口
44 上面
46 下面
48 上流端部
50 下流端部
60 クリーンオーブン
62 ガス導入管
63 先端部
64 ガス排出管
65 先端部
S ワーク
図1
図2
図3
図4
図5
図6