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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-31
(45)【発行日】2022-09-08
(54)【発明の名称】介入処置計画のためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 34/20 20160101AFI20220901BHJP
   A61B 34/35 20160101ALI20220901BHJP
   A61B 34/10 20160101ALI20220901BHJP
【FI】
A61B34/20
A61B34/35
A61B34/10
【請求項の数】 8
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020075774
(22)【出願日】2020-04-22
(62)【分割の表示】P 2018165726の分割
【原出願日】2013-12-31
(65)【公開番号】P2020163161
(43)【公開日】2020-10-08
【審査請求日】2020-05-18
(31)【優先権主張番号】61/747,920
(32)【優先日】2012-12-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】14/144,232
(32)【優先日】2013-12-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】510253996
【氏名又は名称】インテュイティブ サージカル オペレーションズ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100091214
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 進介
(72)【発明者】
【氏名】ドンホウィ,ケイトリン キュー
(72)【発明者】
【氏名】ショプラ,プラシャント
(72)【発明者】
【氏名】レイリー,キャロル
(72)【発明者】
【氏名】ザオ,タオ
(72)【発明者】
【氏名】パネスク,ドーリン
【審査官】北村 龍平
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-510332(JP,A)
【文献】特表2007-526801(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102007009016(DE,A1)
【文献】中国特許出願公開第102406517(CN,A)
【文献】独国実用新案第202005016721(DE,U1)
【文献】国際公開第2011/057157(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/00 - 17/94
A61B 34/00 - 34/37
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
介入処置を実行するシステムであって:
介入器具と;
プロセッサ及び機械可読命令を含むメモリを有する制御システムであって、前記機械可読命令は、前記プロセッサによって実行されるとき、前記制御システムに:
剖学的構造のモデルを受けさせ、前記解剖学的構造は複数の通路を含み
前記モデル内の標的構造を特定させ;
前記モデル内の前記標的構造の位置を記録させ;
前記モデル内の前記標的構造の記録された前記位置に基づいて、前記標的構造に前記介入処置を実行するために前記介入器具の遠位端の計画的配置位置を決定させ;
センサシステムから、前記標的構造の手術画像を含むセンサデータを受けさせ;
前記標的構造の手術画像に基づき、前記標的構造に前記介入処置を実行するために前記介入器具の前記遠位端の修正された計画的配置位置を特定させ;
前記介入器具の屈曲性能に関する情報を受けさせ、前記修正された計画的配置位置を特定することはさらに、前記介入器具の前記屈曲性能に基づく;
制御システムと;
を有する、
システム。
【請求項2】
前記モデルは、手術前又は手術中のうちの少なくとも一方で記録された画像から生成される、
請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記機械可読命令は、前記プロセッサによって実行されるとき、前記制御システムに:
前記標的構造の手術画像に基づいて前記モデル内の前記標的構造の修正位置を特定させる、
請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記センサデータは、超音波センサデータを含む、
請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記センサデータは、光コヒーレンス断層撮影センサデータを含む、
請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記センサシステムの少なくとも一部を収容する画像化プローブをさらに有する、
請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記センサデータは、前記画像化プローブの位置データをさらに含み、前記修正された計画的配置位置を特定することはさらに、前記画像化プローブの前記位置データに基づく、
請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記センサデータは、前記画像化プローブのロール角度を含む、
請求項6に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、低侵襲的処置を行うために患者の生体構造をナビゲートするシステム及び方法を対象とし、より具体的には、介入器具を配置するための処置を計画するシステム及び方法を対象とする。
【背景技術】
【0002】
低侵襲的な医療技術は、介入処置の際に損傷を受ける組織の量を減らし、それによって患者の回復時間、不快感、及び有害な副作用を減らすことを目的としている。そのような低侵襲的な技術は、患者の生体構造における自然開口を通じて或いは1又は複数の外科的切開を通じて実施され得る。これらの自然開口又は切開を通じ、臨床医は、標的組織の位置に達するように(手術器具、診断器具、治療器具、又は生検器具を含む)介入器具を挿入し得る。標的組織の位置に達するために、低侵襲的介入器具は、肺、結腸、腸、腎臓、心臓、循環系等の解剖学的システムにおける自然に或いは外科的に創出された通路を移動し得る。それら通路を通る器具をナビゲートする際に臨床医を支援するために、術前画像又は術中画像を用いてそれら通路のモデルが準備される。介入器具を配置するための現在のシステムは、標的組織の位置に最も近いモデル化された通路内の点として器具配置位置を特定する。この最近点の配置位置は、介入器具又は生体構造の制約を考慮すると、アクセス困難な場合がある。標的組織の位置で処置を行うための計画的器具配置位置を決めるには改善されたシステム及び方法が必要とされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許第6380732号明細書
【文献】米国特許出願第11/180389号
【文献】米国仮特許出願第60/588336号
【文献】米国特許第6389187号
【文献】米国特許第7930065号
【文献】米国特許出願第13/107562号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の実施例は、その説明に後に続く特許請求の範囲によって要約される。
【0005】
一実施例では、介入器具を配置するための処置を計画する方法は、解剖学的構造のモデルを受けることを含む。解剖学的構造は複数の通路を含む。更に、その方法は、そのモデルにおける標的構造を特定すること、及び、それら複数の通路内における介入器具の操作性能に関する情報を受けることを含む。更に、その方法は、介入器具の操作性能に基づき、標的構造に処置を施すために介入器具の遠位端を位置付けるための計画的配置位置を特定することを含む。
【0006】
別の実施例では、システムは、介入器具を配置するための処置を計画するためのコンピュータが実行可能な命令を記録する非一時的コンピュータ可読媒体を含む。そのコンピュータが実行可能な命令は、複数の通路を含む解剖学的構造のモデルを受けるための命令、及び、そのモデルにおいて標的構造を特定するための命令を含む。また、そのコンピュータが実行可能な命令は、それら複数の通路内における介入器具の操作性能に関する情報を受けるための命令、及び、介入器具の操作性能に基づき、標的構造に処置を施すために介入器具の遠位端を位置付けるための計画的配置位置を特定するための命令を含む。
【0007】
本開示の態様は、添付図面を参照して以下の詳細な説明を読むことで最も分かり易く理解される。当該業界における標準的な習慣に従って種々の特徴が正確な縮尺で描かれていないことを強調しておく。実際、それら種々の特徴の寸法は、議論を明確にするため、任意に増大され或いは低減され得る。更に、本開示は、複数の例で参照数字及び/又は参照文字を繰り返す場合がある。この繰り返しは、単純化及び明確化のためであり、議論される複数の実施例間及び/又は複数の構成間の関係にそれ自体が影響するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本開示の実施例に従った遠隔操作介入システムである。
図2】本開示の特徴を利用する介入器具システムを示す。
図3】伸張された介入用具を有する、図2の介入器具システムの遠位端を示す。
図4】配置位置における介入器具の遠位端を含む解剖学的モデル画像を示す。
図5図4の一部の図である。
図6】センサフィードバックに基づく修正配置位置における介入器具の遠位端を含む解剖学的モデル画像を示す。
図7】介入器具に関する計画的配置位置を特定するための方法を説明するフローチャートである。
図8】センサフィードバックに基づいて計画的配置位置を修正するための方法を説明するフローチャートである。
図9】画像化システムを用いて標的構造を特定するための方法を説明するフローチャートである。
図10図9の方法の説明図である。
図11図9の方法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の態様に関する以下の詳細な説明において、開示された実施例の十分な理解をもたらすために、多くの具体的詳細が説明される。しかしながら、この開示における実施例がこれらの具体的詳細が無くとも実施され得ることは当業者にとって明らかである。他の例では、よく知られた方法、手順、構成要素、及び回路は、本発明の実施例の態様を不必要に分かり難くすることがないよう、詳細には説明されていない。また、不必要な説明の繰り返しを避けるため、1つの実施形態に従って説明された1又は複数の構成要素又は動作は、他の実施形態から適用できるものとして扱われてもよく或いは省略されてもよい。
【0010】
以下の実施例は、様々な器具及び器具の一部分を三次元空間におけるそれらの状態の観点から説明する。本書で使用されるように、用語“ポジション(position)”は、三次元空間における物体又は物体の一部分の位置(location)(例えばX、Y、Zのデカルト座標に沿った並進の3自由度)を参照する。本書で使用されるように、用語“方向付け(orientation)”は、物体又は物体の一部分の回転配置(rotational placement)(例えば、ロール、ピッチ、及びヨーの回転の3自由度)を参照する。本書で使用されるように、用語“ポーズ(pose)”は、少なくとも1つの並進自由度における物体又は物体の一部分のポジションと、少なくとも1つの回転自由度における物体又は物体の一部分の方向付けとを(合計で6つの自由度まで)参照する。本書で使用されるように、用語“形状(shape)”は、物体に沿って測られたポーズ、ポジション、又は方向付けの1セットを参照する。
【0011】
図面のうちの図1を参照すると、例えば外科的、診断的、治療的、又は生検的な処置で使用される遠隔操作介入システムが参照数字100で大まかに示されている。図1に示すように、遠隔操作システム100は、通常、患者Pに様々な処置を施すときに介入器具104を操作するための介入マニピュレータアセンブリ102を含む。アセンブリ102は、手術台Oに搭載され、或いは、手術台Oの近くに搭載される。マスタアセンブリ106は、外科医Sが手術部位を見てスレーブマニピュレータアセンブリ102を制御できるようにする。
【0012】
マスタアセンブリ106は、通常は手術台Oと同じ部屋に配置される外科医用コンソールCのところに配置され得る。しかしながら、患者Pとは別の部屋又は全く別の建物に外科医Sが居てもよいことを理解されたい。マスタアセンブリ106は、通常、オプションのサポート108と、マニピュレータアセンブリ102を制御するための1又は複数の制御装置112とを含む。制御装置112は、ジョイスティック、トラックボール、データグローブ、トリガーガン、手動コントローラ、音声認識装置、体動センサ、存在センサ等、任意の数の様々な入力装置を含み得る。いくつかの実施例では、制御装置112は、テレプレゼンスを外科医に提供するために、すなわち、器具104を直接的に制御しているという強い感覚を外科医が持つように制御装置112が器具104と一体となっているという感覚を外科医に提供するために、関連する介入器具104と同じ自由度数を備える。別の実施例では、制御装置112は、関連する介入器具104より多くの或いはより少ない自由度を有していてもよいが、それでもやはり外科医にテレプレゼンスを提供する。いくつかの実施例では、制御装置112は、6自由度で動く手動入力装置であり、(例えば把持用顎を閉じるため、電極に電位を印加するため、医療的治療を実施するため等、)器具を作動させるための作動可能ハンドルを含んでいてもよい。
【0013】
別の実施例では、遠隔操作システムは、2以上のスレーブマニピュレータアセンブリ、及び/又は、2以上のマスタアセンブリを含んでいてもよい。マニピュレータアセンブリの正確な数は、数ある要因の中でも特に、外科的処置及び手術室内のスペースによる制約に依存する。複数のマスタアセンブリは一緒に並べられてもよく、或いは、それらは別々の位置に配置されてもよい。複数のマスタアセンブリは、2人以上のオペレータが1又は複数のスレーブマニピュレータアセンブリを様々な組み合わせで制御できるようにする。
【0014】
オプションの可視化システム110は、手術部位の同時(リアルタイム)画像が外科医用コンソールCに提供されるよう、内視鏡システムを含んでいてもよい。その同時画像は、例えば、手術部位内に位置付けられた内視鏡プローブによって取り込まれる2次元又は3次元画像であってもよい。この実施例では、可視化システム110は、介入器具104に一体的に或いは取り外し可能に結合され得る内視鏡的な構成要素を含む。しかしながら、別の実施例では、別個のマニピュレータアセンブリに取り付けられた別個の内視鏡がその手術部位を撮像するために用いられてもよい。或いは、別個の内視鏡アセンブリは、遠隔操作コントロール無しに、ユーザによって直接的に操作されてもよい。内視鏡アセンブリは、(例えば、遠隔操作ステアリングワイヤによる)アクティブステアリング、又は、(例えば、ガイドワイヤ若しくは直接的なユーザガイダンスによる)パッシブステアリングを含み得る。可視化システム110は、1又は複数のコンピュータプロセッサと情報をやり取し、さもなくば、1又は複数のコンピュータプロセッサによって実行される、ハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア、又はそれらの組み合わせとして実現されてもよい。1又は複数のコンピュータプロセッサはコントロールシステム116における1又は複数のプロセッサを含み得る。
【0015】
ディスプレイシステム111は、可視化システム110によって取り込まれた、手術部位と介入器具の画像を表示し得る。オペレータがあたかも実質的に正確に存在する作業空間を見るようにして介入器具104と1又は複数のマスタ制御装置112を操作できるよう、内視鏡アセンブリの画像化装置と介入器具の相対ポジションが外科医の目と手の相対ポジションと同様になるように、ディスプレイ111と1又は複数のマスタ制御装置112は方向付けされ得る。正確な存在は、オペレータの目には、その表示された組織の画像が、あたかもオペレータが画像化装置の位置に物理的に存在しその画像化装置の視点からその組織を直接的に見ているかのように見えることを意味する。
【0016】
代替的に或いは追加的に、ディスプレイシステム111は、コンピュータ断層撮影法(CT)、磁気共鳴映像法(MRI)、蛍光透視法、サーモグラフィ、超音波、光コヒーレンス断層撮影法(OCT)、熱画像、インピーダンス画像、レーザ画像、ナノチューブX線画像等の画像化技術を用いて手術前に記録され且つ/或いはモデル化される手術部位の画像を提示してもよい。提示された手術前の画像は、二次元、三次元、又は(例えば、時間ベースの或いは速度ベースの情報を含む)四次元の画像を含んでいてもよい。
【0017】
いくつかの実施例では、ディスプレイシステム111は、仮想の可視化画像を表示してもよい。その仮想の可視化画像では、手術器具の先端の位置における内部の手術部位の仮想画像を外科医Sに提示するために、モデル化された生体構造の手術前の画像又は同時画像に介入器具の実際の位置が登録される(例えば、動的に参照される)。
【0018】
別の実施例では、ディスプレイシステム111は、仮想の可視化画像を表示してもよい。その仮想の可視化画像では、手術部位における介入器具の仮想画像を外科医Sに提示するために、モデル化された生体構造の(手術前に記録された画像を含む)事前の画像、又は、同時画像に介入器具の実際の位置が登録される(例えば、動的に参照される)。外科医が介入器具を制御するのを支援するために、介入器具の一部の画像はその仮想画像上に重ね合わされてもよい。
【0019】
図1では、コントロールシステム116は、少なくとも1つのプロセッサ(図示せず。)を含み、典型的には、手術用スレーブマニピュレータアセンブリ102、マスタアセンブリ106、可視化システム110、及びディスプレイシステム111の間のコントロールを実現させるための複数のプロセッサを含む。また、コントロールシステム116は、本書で説明される方法の一部又は全部を実行するためのプログラム命令(例えば、命令を記憶するコンピュータ可読媒体)を含む。図1の単純化された概略図ではコントロールシステム116は単一のブロックとして示されるが、そのシステムは、(例えば、手術用スレーブマニピュレータアセンブリ102及び/又はマスタアセンブリ106に)複数のデータ処理回路を有していてもよく、処理の少なくとも一部がオプション的に手術用スレーブマニピュレータアセンブリの近くで実行され、一部がマスタアセンブリで実行される等してもよい。集中型若しくは分散型の多種多様なデータ処理アーキテクチャの任意のものが採用されてもよい。同様に、プログラム命令は、複数の別々のプログラム若しくはサブルーチンとして実装されてもよく、或いは、本書で説明される遠隔操作システムの他の複数の態様に統合されてもよい。一実施例では、コントロールシステム116は、Bluetooth(登録商標)、IrDA、HomeRF、IEEE 802.11、DECT、及び無線テレメトリ等の無線通信プロトコルをサポートする。
【0020】
いくつかの実施例では、コントロールシステム116は、介入器具104からのフォース及びトルクフィードバックを1又は複数の制御装置112のための1又は複数の対応するサーボモータに提供するために、1又は複数のサーボコントローラを含んでいてもよい。また、1又は複数のサーボコントローラは、体の開口を介して患者の体内にある内部の手術部位に及ぶ器具を動かすようにマニピュレータアセンブリ102を指示する信号を発信してもよい。任意の適切な従来型の若しくは特殊なサーボコントローラが用いられてもよい。サーボコントローラは、マニピュレータアセンブリ102から切り離されていてもよく、或いは一体化されていてもよい。いくつかの実施例では、サーボコントローラ及びマニピュレータアセンブリは患者の体に隣接して置かれるマニピュレータアームカートの一部として提供される。
【0021】
各マニピュレータアセンブリ102は介入器具104を支持し、且つ、1又は複数の非サーボ制御リンク(例えば、一般にセットアップ構造と呼ばれる、手動で位置付けられて適当な位置でロックされ得る1又は複数のリンク)の運動学的構造及び遠隔操作マニピュレータを有していてもよい。遠隔操作マニピュレータアセンブリ102は、複数のアクチュエータ(例えば、モータ)によって駆動される。それらのモータは、コントロールシステム116からのコマンドに応じて遠隔操作マニピュレータを能動的に動かす。さらに、それらのモータは介入器具に結合される。自然に或いは外科的に創出された解剖学的開口内に介入器具を進入させるため、且つ、複数の自由度で介入器具の遠位端を動かすためである。複数の自由度は、直線運動の3自由度(例えば、X、Y、Zのデカルト軸に沿った直線運動)、及び、回転運動の3自由度(例えば、X、Y、Zのデカルト軸回りの回転)を含む。また、それらのモータは、生検装置等の顎部で組織をつかむためのその器具の関節結合可能なエンドエフェクタを作動させるために用いられてもよい。
【0022】
図2は、本開示における特徴を利用する低侵襲システム200を示す。システム200は、システム100のような遠隔操作介入システムに組み込まれてもよい。或いは、システム200は、予備的な手術で用いられてもよく、或いは、腹腔鏡手術器具のような従来の手動操作式の介入器具を伴う手術で用いられてもよい。システム200は、インタフェースユニット204によってトラッキングシステム206に結合されるカテーテルシステム202(例えば、器具104の一部)を含む。ナビゲーションシステム210(例えば、コントロールシステム116の一部)は、ディスプレイシステム214(例えば、ディスプレイシステム111の一部)に1又は複数の画像表示を生成するために、仮想可視化システム208、1又は複数の画像化システム212、及び/又はトラッキングシステム206からの情報を処理する。さらに、システム200は、照明システム、操縦制御システム、洗浄(irrigation)システム、及び/又は吸引システムのようなオプションの運転及び支援システム(図示せず。)を含んでいてもよい。
【0023】
カテーテルシステム202は、近位端217及び遠位端218を有する細長い可撓性本体216を含む。チャネル219は可撓性本体216内を延びる。一実施例では、可撓性本体216は約3mmの外径を有する。可撓性本体の他の外径はより大きいものであってもより小さいものであってもよい。カテーテルシステム202は、オプション的にセンサシステムを含んでいてもよい。センサシステムは、遠位端218におけるカテーテルチップ及び/若しくは本体216に沿った1又は複数のセグメント224のポジション、方向付け、速度、ポーズ、及び/若しくは形状を決めるためのポジションセンサシステム220(例えば、電磁(EM)センサシステム)及び/又は形状センサシステム222を含む。遠位端218と近位端217との間の本体216の全長は、複数のセグメント224に効果的に分割され得る。ポジションセンサシステム220及び形状センサシステム222はトラッキングシステム206とインタフェースをとる。トラッキングシステム206は、ハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア、又はそれらの組み合わせとして実現され得る。ハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア、又はそれらの組み合わせは、1又は複数のコンピュータプロセッサと情報をやり取りしさもなくば1又は複数のコンピュータプロセッサによって実行される。1又は複数のコンピュータプロセッサは、コントロールシステム116における複数のプロセッサを含んでいてもよい。
【0024】
ポジションセンサシステム220は、外部的に生成された電磁場にさらされ得る1又は複数の導電コイルを含むEMセンサシステムであってもよい。そして、EMセンサシステム220の各コイルは、外部的に生成された電磁場に対するコイルのポジション及び方向付けに依存する特性を有する誘導的電気信号を創出する。一実施例では、EMセンサシステムは、例えば、3つのポジション座標X、Y、Zと、基点のピッチ、ヨー、及びロールを示す3つの方向付け角度である6自由度を測るために構成され且つ位置付けられてもよい。EMセンサシステムのさらなる説明は、参照によりその全部が本書で援用される、“Six-Degree of Freedom Tracking System Having a Passive Transponder on the Object Being Tracked”を開示する1999年8月11日出願の米国特許第6380732号で提供される。
【0025】
形状センサシステム222は、可撓性本体216と並行する(例えば、内部チャネル(図示せず。)内に備えられた或いは外部に取り付けられた)光ファイバを含む。トラッキングシステム206は、その光ファイバの近位端に結合されてもよい。一実施例では、光ファイバは約200μmの直径を有する。別の実施例では、その直径はより大きいものであってもよく、より小さいものであってもよい。
【0026】
形状センサシステム222の光ファイバは、カテーテルシステム202の形状を決定するための光ファイバ屈曲センサを形成する。一代替手段では、1又は複数の次元における構造上のひずみ測定をもたらすためにファイバ・ブラッグ・グレーティング(FBGs)を含む光ファイバが使用される。3次元における光ファイバの形状及び相対ポジションをモニターするための様々なシステム及び方法は、“Fiber optic position and shape sensing device and method relating thereto;”を開示する2005年7月13日出願の米国特許出願第11/180389号、“Fiber-optic shape and relative position sensing;”を開示する2004年7月16日出願の米国仮特許出願第60/588336号、及び、“Optical Fibre Bend Sensor”を開示する1998年6月17日出願の米国特許第6389187号に記載され、それらの全てが参照により本書に援用される。別の代替手段では、レイリー散乱、ラマン散乱、ブリルアン散乱、及び蛍光散乱といった他のひずみ検知技術を採用するセンサが適切となり得る。他の代替の実施例では、カテーテルの形状は、他の技術を用いて決定されてもよい。例えば、ナビゲーションディスプレイをリフレッシュするための期間又は(例えば吸入及び放出といった)交互動作のための期間より短い時間間隔にわたってカテーテルの遠位端のポーズの履歴が保存される場合、そのポーズの履歴は、その時間間隔にわたって装置の形状を再構成するために使用され得る。別の例として、ポーズ、ポジション、又は方向付けのデータの履歴は、呼吸のような交互動作のサイクルに沿って器具の既知のポイントのために保存されてもよい。
【0027】
この保存されたデータは、カテーテルに関する形状情報を発展させるために用いられてもよい。或いは、カテーテルに沿って位置付けられるEMセンサ等の一連のポジションセンサは、形状検知のために用いられてもよい。或いは、手術中に器具上にあるEMセンサ等のポジションセンサからのデータの履歴は、特に解剖学的通路がほぼ静止している場合、その器具の形状を表すために用いられてもよい。或いは、外部磁場によって制御されるポジション又は方向付けを有する無線装置は、形状検知のために用いられてもよい。そのポジションの履歴は、ナビゲートされた通路の形状を決定するために用いられてもよい。
【0028】
この実施例では、光ファイバは単一のクラッド内に複数のコアを含んでいてもよい。各コアは、各コアにおける光が他のコアで伝送される光と顕著には相互作用を起こさないように複数のコアを別々にする被膜と十分な距離とを有するシングルモードであってもよい。他の実施例では、コアの数は様々であってもよく、或いは、各コアは個別の光ファイバ内に収められていてもよい。
【0029】
いくつかの実施例では、FBGの配列は各コア内に提供される。各FBGは、コアの屈折率の空間周期性を生成するためにコアの屈折率の一続きの変調を有する。それぞれの屈折率変調による部分反射が狭帯域の波長に関してコヒーレントに強まり、それ故に、ずっと広い帯域を通過させながらこの狭帯域の波長のみを反射させるように、その間隔は選択されてもよい。FBGの製造の際、それら変調は既知の距離だけ間隔を空けられ、それによって既知の波長帯域の反射がもたらされる。しかしながら、ファイバコアでひずみが誘起された場合、そのコアのひずみ量に応じてそれら変調の間隔は変化する。或いは、後方散乱、又は、光ファイバの屈曲を伴って変化する他の光学現象が、各コア内のひずみを決定するために用いられてもよい。
【0030】
このように、ひずみを測定するために、光がファイバに送られ、戻ってくる光の特性が測定される。例えば、FBGは、そのファイバのひずみとその温度の関数である反射波長を創出する。このFBG技術は、Smart Fibres Ltd. of Bracknell, England等の様々な供給元から市販されている。遠隔操作手術のためのポジションセンサでのFBG技術の利用は、“Robotic Surgery System Including Position Sensors Using Fiber Bragg Gratings”を開示する2006年7月20日出願の米国特許第7930065号に記載されており、その全部が参照により本書に援用される。
【0031】
マルチコアファイバに適用される場合、光ファイバの屈曲は、各コアにおける波長シフトをモニターすることによって測定され得る複数のコアのひずみをもたらす。そのファイバの軸外に配置された2以上のコアを有することによって、そのファイバの屈曲は、複数のコアのそれぞれにおける様々なひずみをもたらす。これらのひずみは、そのファイバの局所的な屈曲の度合いの関数である。例えば、FBGを含むコアの領域は、そのファイバが曲げられたポイントに位置付けられた場合には、その結果として、それらのポイントでの屈曲量を決定するために使用され得る。これらのデータは、FBG領域の既知の間隔と組み合わされ、そのファイバの形状を再構成するために使用され得る。そのようなシステムは、バージニア州のBlacksburgにあるLuna Innovations. Inc.によって説明されている。
【0032】
説明されているように、その光ファイバは、カテーテルシステム202の少なくとも一部の形状をモニターするために使用され得る。より具体的には、その光ファイバを通過する光は、カテーテルシステム202の形状を検出するため、且つ、外科手術を支援すべくその情報を利用するために、トラッキングシステム206によって処理される。トラッキングシステム206は、カテーテルシステム202の形状を決定するために使用される光を生成し且つ検出するための検出システムを含んでいてもよい。この情報は、同様に、介入器具の各部の速度及び加速度等の他の関連する変数を決定するために使用され得る。そのセンシングは、遠隔操作システムによって作動させられる自由度のみに限定されてもよく、或いは、受動的自由度(例えば、ジョイント間の剛性部材の作動されていない屈曲)及び能動的自由度(その器具の作動させられた動き)の双方に適用されてもよい。
【0033】
可撓性本体216は、オプション的に、1又は複数の画像取込プローブ226を収容してもよい。1又は複数の画像取込プローブ226は、取り込んだ画像データを1又は複数の画像化システム212に伝達する。例えば、画像取込プローブ226は、画像化システム212に伝達される画像(ビデオ画像を含む。)を取り込むため、可撓性本体216の遠位端218の近くに配置されるステレオカメラ又は単眼カメラを備えた先端部分を含む内視鏡プローブであってもよい。画像取込プローブ226は、取り込んだ画像データを伝送するために、カメラに結合されるケーブルを含んでいてもよい。或いは、画像取込機器は、画像化システムに連結するファイバスコープのような光ファイバ束であってもよい。画像取込機器は、例えば可視スペクトルにおける画像データを取り込む、或いは、可視スペクトルと赤外若しくは紫外スペクトルとにおける画像データを取り込む、単一スペクトル若しくはマルチスペクトルのものであってもよい。
【0034】
追加的に或いは代替的に、画像取込プローブ226は、超音波若しくは光コヒーレンス断層撮影法(OCT)のような反射型画像化技術と共に使用するためのセンサプローブであってもよい。例えば、そのプローブは、超音波トランスデューサのような送受信装置を含んでいてもよい。超音波トランスデューサは、細長いシャフトの端部に搭載され得る。そのような情報源(ソース)は、介入手術が実施されるべき解剖学的領域の術前若しくは術中の二次元若しくは三次元の画像若しくはモデルを取得するために使用され得る。二次元ソースとして、超音波トランスデューサは、単一の超音波画像を取得するために使用され得る。三次元ソースとして、それは、間隔を空けられた複数の超音波画像若しくはカットを取得し、それによって三次元モデルの構築のための十分な情報を提供するように使用され得る。従って、それは、そのような画像若しくはカットを取り込むために解剖学的部位内で(回転を含めて)動けるように配置され得る。このことは、典型的には、例えば、遠隔操作コントロールによって超音波トランスデューサを動かすために前もってプログラムされたシーケンス、超音波トランスデューサの手動動作等によって実現され得る。
【0035】
また、本体216は、例えば遠位端の点線バージョンで示されるように、遠位端218を制御可能に曲げ或いは向きを変えるために、インタフェース204と遠位端218との間に延びる、ケーブル、リンク機構、又は他の操縦コントロール(図示せず。)を収容してもよい。そのカテーテルシステムは操縦可能であってもよく、或いは、器具の屈曲のオペレータ用コントロールのための統合された機構を持たない操縦不能のものであってもよい。さらに、可撓性本体216は、手術用エンドエフェクタを操作するためのコントロール機構(図示せず。)、又は、例えば標的組織の所定の治療を達成するための医療機能のために操作可能な別の作業用遠位部を収容してもよい。例えば、いくつかのエンドエフェクタは、外科用メス(scalpel)、ブレード、光ファイバ、又は電極のような単一の作業用部材を有する。他のエンドエフェクタは、例えば、鉗子、把持器具、はさみ、又はクリップアプライヤのような一対の或いは複数の作業用部材を含んでいてもよい。電気的に作動するエンドエフェクタの例は、電気外科的電極、トランスデューサ、センサ等を含む。
【0036】
図3でより詳細に示すように、手術、生検、焼灼、照明、洗浄、又は吸引のような処置のための介入用具228は、チャネル219を通じて配置され、且つ、生体構造内の標的位置で使用され得る。また、介入用具228は、画像取込プローブであってもよい。用具228は、その処置を実行するためにチャネル219の開口から前に進められ、そして、その処置が完了したときにそのチャネル内に引っ込められてもよい。介入用具228は、カテーテルの可撓性本体の近位端217から取り除かれてもよく、或いは、その可撓性本体に沿って別のオプションの器具ポート(図示せず。)から取り除かれてもよい。
【0037】
仮想可視化システム208は、カテーテルシステム202にナビゲーション支援をもたらす。仮想可視化システムを用いた仮想ナビゲーションは、解剖学的通路の三次元構造に関連する獲得したデータセットへの参照に基づく。より具体的には、仮想可視化システム208は、コンピュータ断層撮影法(CT)、磁気共鳴映像法(MRI)、蛍光透視法、サーモグラフィ、超音波、光コヒーレンス断層撮影法(OCT)、熱画像、インピーダンス画像、レーザ画像、ナノチューブX線画像等の画像化技術を用いて記録され且つ/或いはモデル化された手術部位の画像を処理する。記録された画像を部分的な或いは全体的な解剖学的臓器若しくは解剖学的領域の二次元若しくは三次元のモデルに変換するためにソフトウェアが用いられる。そのモデルは、通路の様々な位置及び形状並びにそれらの接続性を表す。そのモデルを生成するために用いられた画像は、術前に或いは臨床処置の際の術中に記録されてもよい。別の実施例では、仮想可視化システムは、標準モデル(すなわち患者特有のものではない)を用いてもよく、或いは、標準モデルと患者特有のデータの合成物を用いてもよい。そのモデル、及び、そのモデルによって生成される任意の仮想画像は、運動の1又は複数の局面の際(例えば、肺の吸気/呼気サイクルの際)に、変形しやすい解剖学的領域の静的姿勢を表現し得る。
【0038】
仮想ナビゲーション処理中、センサシステムは、患者の生体構造に対する器具のおおよその位置を演算するために用いられてもよい。その位置は、患者の生体構造のマクロレベルのトラッキング画像とその患者の生体構造の仮想内部画像の双方を創出するために使用され得る。仮想可視化システムからの画像のような術前に記録された手術画像と一緒に、介入手段を登録し且つ表示すべく光ファイバセンサを用いる様々なシステムが知られている。例えば、参照によりその全部が本書に援用される、“Medical System Providing Dynamic Registration of a Model of an Anatomical Structure for Image-Guided Surgery”を開示する2011年5月13日出願の米国特許出願第13/107562号は、そのようなシステムの1つを開示する。
【0039】
ナビゲーションシステム210は、コントロールシステム116の一部として、解剖学的システムを通じた標的の解剖学的構造への介入器具のナビゲーション経路を決定するために、仮想可視化システム208、1又は複数の画像化システム212、及び/又は、トラッキングシステム206からの情報を処理する。また、ナビゲーションシステム210は、介入器具が解剖学的システムを通じて標的構造まで動くときのその介入器具のナビゲーション経路をモニターしてもよい。ナビゲーションシステム210は、仮想可視化システム208によって準備された解剖学的モデル内で標的の解剖学的構造(例えば、腫瘍)の場所を臨床医が見つけ、且つ、介入器具を用いて介入処置(例えば生検)を施すべくその標的構造に到達するために解剖学的通路を通じたナビゲーション経路をその臨床医が特定できるようにする計画モジュール211を含む。標的の位置確認及びナビゲーション経路の決定は、ナビゲーションシステムが1又は複数のナビゲーション経路を特定できるように自動化されてもよい。或いは、臨床医は、解剖学的モデルからナビゲーション経路を決定し、且つ、オプション的に、その選択された経路をナビゲーションシステムに伝えてもよい。さらに別の実施例では、計画モジュールは、自動化と臨床医の選択との混成によるナビゲーション経路の決定方法を用いてもよい。その決定方法では、臨床医はシステムが計画した経路を修正してもよく、或いは、臨床医は、回避すべき解剖学的領域、計画モジュール211によって提案された計画的ナビゲーション経路を制約する器具に関する制限といったパラメータを入力してもよい。
【0040】
ナビゲーション計画モジュールは、介入手術を行うために介入器具の遠位端を置いておくための解剖学的通路内の計画的配置位置を生成し、或いは、その配置位置を臨床医が選択できるようにする。ここで図4を参照すると、腫瘍等の標的構造302、及び、その近くの解剖学的通路304の仮想画像300が示される。その通路は、通路壁306及び分岐する領域(竜骨)(carina)308を含む。この実施例では、解剖学的通路は肺の気管支の通路であるが、本開示におけるシステム及び方法は、結腸、腸、腎臓、心臓、循環系等の解剖学的システムにおける自然の或いは外科的に作られた他の通路での使用に適したものであってもよい。(実質的に可撓性本体216と同様である)可撓性本体309を有する介入器具、及び、伸張された介入用具310が示される。一実施例では、ナビゲーション計画モジュールは、計画的配置位置を、標的構造に最も近い或いは標的構造の近くにある解剖学的通路の壁に沿った位置312として特定する。しかしながら、専ら標的構造との近さを基準として配置位置を選択することは、介入器具がアクセス不能な或いは容易にアクセスできない配置位置の選択をもたらす場合がある。例えば、介入器具は、近さ基準の配置位置にアクセスするために通路内で十分に曲がることができない場合がある。更に、その選択された配置位置、又は、その配置位置までのナビゲーション経路は、瘢痕又は病変組織等の回避すべき解剖学的制約を考慮していない場合がある。
【0041】
別の実施例では、ナビゲーション計画モジュールは、場合によっては、標的構造との距離、及び/又は、他の解剖学的特徴に対する標的構造の位置といった手術的特性であってもよい複数の要因に基づいて配置位置を選択する。別の実施例では、ナビゲーション計画モジュールは、追加的に或いは代替的に、配置位置を決めるために介入器具の操作性能に関する情報を受け且つ使用してもよい。例えば、カテーテル材料の柔軟性及び弾性、カテーテル若しくはそのカテーテルのチャネルを通過させられる用具の前もって形成された任意の形状特徴、カテーテル若しくは用具の遠位端の操縦可能性(カテーテルの遠位端がそのカテーテルの主軸に対してどれくらい曲げられるかの程度)、並びに、カテーテルの長さに沿った曲率といった、その器具の屈曲性能に関する情報が考慮されてもよい。また、カテーテルの直径、用具の直径、カテーテルから伸ばされたときの用具の軌跡(例えば、曲がっているか、真っ直ぐか)、用具の動き(例えば、カーブを描く動きか、スピンか、直線的か)、カテーテルの軸に対する用具の軸の最大角度、カテーテルから伸びることができる用具の最大長さ、及び、通路壁との摩擦接触をもたらすカテーテルの遠位端における任意の固着構造を含む介入器具の他の特性がその配置位置を決めるために用いられてもよい。介入器具の屈曲性能に関する情報、及び/又は、介入器具の特性に関連する情報は、解剖学的通路内における介入器具の操作性能を決めるために使用され得る典型的な要因である。
【0042】
ナビゲーション計画モジュールは、同様に或いは代替的に、配置位置を決めるために患者の生体構造に関する情報を受け且つ使用してもよい。そのような情報は、例えば、標的構造に最も近い解剖学的通路の分岐する領域の位置、及び、その標的構造に最も近い通路のサイズを含んでいてもよい。他の解剖学的情報は、解剖学的通路の弾性を含んでいてもよく、任意の疾患過程がその通路の弾性に与えたかもしれない影響を含んでいてもよい。また、ナビゲーション計画モジュールは、例えば周辺の組織に対するリスクを低減させる配置位置を選択するため、周辺の解剖学的組織を考慮してもよい。一例として、配置された用具で肺に穴を開けてしまうリスクを避けるために、肺の周囲から離れたところにある配置位置が選択されてもよい。また、ナビゲーション計画モジュールは、標的構造の望ましい位置にアクセスするためにその標的構造の生体構造を考慮してもよい。例えば、その配置位置は生検用具が腫瘍の石灰化部分を避けられるように選択されてもよい。
【0043】
また、ナビゲーション計画モジュールは、カテーテルの端から標的構造までの距離といった介入器具と患者の生体構造との間の関係に関する情報を考慮してもよい。図5を参照すると、ナビゲーション計画モジュールは、介入用具と通路壁との間のアプローチの角度320を考慮してもよい。例えば、90°のアプローチ角は、その通路のサイズの小ささとカテーテルの遠位端の曲げ性のために実行不可能な場合がある。1°のアプローチ角もまた、介入用具が通路壁を突き抜くことなく通路壁の表面をかすめて通るおそれがあるため、不適当となり得る。これらの理由のため、ナビゲーション計画モジュールは、アプローチ角がおおよそ30°と90°の間となるように配置位置を選択してもよい。
【0044】
再び図4を参照すると、ナビゲーション計画モジュールが介入器具と患者の生体構造とに関する要因を評価した後、解剖学的通路の壁上の配置位置314が特定される。オプション的に、ナビゲーション計画モジュールは、その配置位置までの推奨ナビゲーション経路を提示してもよい。その後、臨床医は、介入器具の遠位端をその配置位置に向けることができる。臨床医は、仮想的な或いは実際的な画像のガイダンスに基づいて介入器具のナビゲーションを手動で制御してもよい。代替的に、臨床医は、介入器具のナビゲーションを遠隔操作で制御してもよく、或いは、推奨ナビゲーション経路に沿った介入器具のコンピュータ制御によるナビゲーションを許容してもよい。介入器具の遠位端がその配置位置に配置された後、介入用具がカテーテルから伸ばされ、通路壁を通って標的構造と接触する。ある状況では、例えば標的構造が解剖学的通路内に位置付けられている場合、配置位置は、その通路の壁上よりもむしろ、その通路の内腔に位置付けられてもよい。例えば、標的構造がその通路内にある場合、配置位置は、標的構造の表面上であってもよい。
【0045】
図7は、介入器具の計画的配置位置を特定するためにナビゲーション計画モジュールによって用いられる方法400を説明するフローチャートである。402では、解剖学的構造のモデルが受け入れられる。その解剖学的構造は、そのモデルによって示される複数の解剖学的通路を含む。そのモデルは、CT、MRI、蛍光透視法、サーモグラフィ、超音波、OCT、熱画像、インピーダンス画像、レーザ画像、ナノチューブX線画像等の画像化技術を用いて手術前に或いは手術中に記録され且つ/或いはモデル化される手術部位の2次元若しくは3次元の画像から形成される。
【0046】
そのモデルの受け入れは、そのモデルから導かれる、或いは、その患者の生体構造を表すユーザ入力から導かれる、或いは、他の参照源から導かれる患者の生体構造に関する情報を受けることを含んでいてもよい。患者の生体構造に関するそのような情報は、例えば、標的構造に最も近い1又は複数の解剖学的通路内の1又は複数の位置、標的構造に最も近い解剖学的通路の分岐する領域の位置、及び、標的構造に最も近い通路のサイズを含んでいてもよい。他の解剖学的情報は、解剖学的通路の弾性、標的構造の望ましい位置にアクセスするためのその標的構造の生体構造、並びに、周辺組織の種類及びその周辺組織との接触に関連する任意のリスクを含んでいてもよい。
【0047】
404では、標的構造(例えば腫瘍)の位置がそのモデル内で特定される。標的構造の特定は、そのモデルから、或いは、標的構造を表すユーザ入力から、或いは、他の参照源から、標的構造に関する情報を決定し或いは受け取ることを含んでいてもよい。標的構造に関するそのような情報は、例えば、標的構造の形状、標的構造を形成する1又は複数の物質、及び、すぐ近くの解剖学的通路に対するその標的構造の表面の位置を含んでいてもよい。
【0048】
406では、介入器具の操作性能に関する情報が受け取られる。介入器具の操作性能を決めるために受け取られる情報は、例えば、カテーテル材料の柔軟性及び弾性、カテーテル若しくはそのカテーテルのチャネルを通過させられる用具の前もって形成された任意の形状特徴、カテーテル若しくは用具の遠位端の操縦可能性、並びに、カテーテルの長さに沿った曲率といったその器具の屈曲性能に関する情報を含んでいてもよい。また、介入器具の操作性能は、カテーテルの直径、用具の直径、カテーテルの軸に対する用具の軸の最大角度、カテーテルから伸びることができる用具の最大長さ、及び、通路壁との摩擦接触をもたらすカテーテルの遠位端における任意の固着構造といった介入器具の特性から決定されてもよい。
【0049】
408では、介入器具のための計画的配置位置が位置決めされる。その計画的配置位置は、複数の通路のモデル上にマークされてもよい。その計画的配置位置は、器具の操作性能情報、標的構造情報、患者の生体構造情報、又は、それらの情報の組み合わせに基づいて選択されてもよい。選択された配置位置は、標的構造に最も近い解剖学的通路における一点であってもよい。しかしながら、多くの患者では、選択された解剖学的通路のサイズ及び弾性に関する制約の下でその器具が十分な屈曲性能を有しないために、最近点である配置位置に介入器具の遠位端が到達できない場合がある。より適切な配置位置は、介入器具がその器具の屈曲性能内である、解剖学的通路の壁に対するアプローチ角を有するところの解剖学的通路の壁上の一点であってもよい。例えば、屈曲をほとんど或いは全く許容しない柔軟性のない遠位端を介入器具が有する場合、適切な配置位置は、標的構造の近くの分岐する領域のところとなり得る。その分岐する領域において、介入器具は、その器具の遠位端の最低限の屈曲でその通路壁に対して約90°のアプローチ角で配置され得る。別の例として、ナビゲーション計画モジュールは、アプローチ角がおおよそ30°と90°の間となるように配置位置を選択してもよい。また、配置位置を選択するとき、その計画システムは、介入処置を行うために標的構造に達するのに十分な距離だけ介入用具がカテーテルから伸びることができることも確認する。
【0050】
説明したように、計画的配置位置は、器具の操作性能、標的構造、及び患者の生体構造の分析に基づいて位置決めされてもよい。代替的に或いはシステム評価と組み合わせ、計画的配置位置は、臨床医によって特定され、且つ、そのモデルにおいて臨床医が特定した計画的配置位置を位置決めし或いはマークするために、ナビゲーション計画モジュールに伝えられてもよい。臨床医が特定した計画的配置位置をナビゲーション計画モジュールが受けると、そのモジュールは、その的配置位置とシステムが特定した配置位置とを比較してもよい。臨床医が特定した配置位置が好ましくない場合、(例えば、“選ばれた生検針はこの配置位置から標的に達するには十分な長さではない”といった)可視フィードバックキュー又は可聴フィードバックキューが出されてもよい。
【0051】
オプション的には、ナビゲーション計画モジュールは、複数の選択可能な配置位置を特定する。それらの選択可能な配置位置は、その処置を行うべく介入器具を配置するための選択可能な配置位置の相対的品質に関する情報を提示するように(例えばディスプレイ上の色で)コード化されてもよい。臨床医は、計画的配置位置となるように複数の選択可能な配置位置のうちの1つを選択してもよい。或いは、複数の選択可能な配置位置から2以上の計画的配置位置が選択され、様々なアプローチから介入処置が実行されるのを可能にしてもよい。また、最初に選んだ配置位置が不適当であったと臨床医が判断した場合には、選択可能な配置位置の選択が介入処置中に行われてもよい。
【0052】
標的構造を特定するステップを更に改良するために、特定された配置位置又はその付近に介入器具が配置された後で標的構造の位置に関する追加的な情報を集めるために1又は複数の画像化システム212が用いられてもよい。ここで図6を参照すると、標的構造302とその近くの解剖学的通路304の仮想画像300が再び示される。可撓性本体309の遠位端は最初に位置312のような標的確認位置に位置付けられる。画像取込プローブ226は、標的構造302がその標的確認位置に対して期待された位置にあるかを判断するために操作される。標的構造302が見当たらない或いはその期待された位置にない場合、可撓性本体及び画像取込プローブは、標的構造の場所が見つかるまであちこち移動させられ得る。標的構造の場所が見つけられると、可撓性本体309又は画像取込プローブの遠位端の位置は新たな位置322で記録される。その後、ナビゲーション計画モジュール211は、標的構造302’の位置を更新する。標的構造の新たな位置が特定されると、介入器具に関する操作性能情報は、修正された計画的配置位置324を特定するために用いられる。例えば、ナビゲーション計画モジュールは、位置314を位置324に更新するために、且つ、標的構造302の位置を標的構造302’の位置に更新するために、位置312と位置322との間の差を用いてもよい。一実施例では、画像取込プローブは、標的構造の位置を改善するために超音波又はOCTのような反射型画像化技術のための1又は複数のセンサを用いる。或いは、標的構造の位置を特定するために他の非画像センサが用いられてもよい。
【0053】
図8は、介入器具に関する計画的配置位置を修正するためにナビゲーション計画モジュールによって用いられる方法450を説明するフローチャートである。452では、画像取込プローブが当初の計画的配置位置又は標的確認位置で操作された後でその画像取込プローブから情報が受け取られる。454では、画像取込プローブから受けた情報を用いて標的構造の修正位置が特定される。456では、複数の通路のモデルにおいて、修正された計画的配置位置が特定される。
【0054】
画像化システム212を用いて標的構造を特定するための代替的な方法500が図9で説明され、且つ、図10及び図11で図示される。方法500は、当初の介入器具配置位置を特定するために実行されてもよく、或いは、以下で説明するように、修正された配置位置を特定するために用いられてもよい。
【0055】
502では、例えば視覚センサ情報、EMセンサ情報、又は形状センサ情報を含むナビゲーションシステムのガイダンスで、カテーテルが位置312又は位置314のような通路位置までナビゲートされる。カテーテルがその位置に到達すると、臨床医からの確認又は介入器具からの確認がもたらされてもよい。504では、画像化プローブ(例えば超音波プローブ)がカテーテルを通じて挿入され、カテーテルの一部(例えばカテーテル先端)に対する画像化プローブの動きが追跡される。いくつかの実施例では、502のナビゲーションの際にも、同じ画像化プローブ(例えば、同じ超音波プローブ)が使用され得る。画像化プローブの動きは、例えば、5又は6自由度のEMセンサのようなポジションセンサを用いて追跡され得る。或いは、その動きは、患者の生体構造の外に置かれたエンコーダのような挿入センサを用いて追跡されてもよい。或いは、その動きは、画像化プローブの挿入動作を制御するためのステッピングモータを係合させることによって追跡されてもよい。
【0056】
506では、カテーテルに対する画像化プローブの画像座標系におけるロール角度が決定される。例えば、そのロール角度は、軸方向画像化プローブ及びカテーテルのロールアライメント特徴(例えばキーシステム)を用いて決定されてもよい。或いは、患者の生体構造の外に置かれたロールセンサが用いられてもよい。更に別の代替例では、ロール角度は、画像化プローブによって記録された画像においてカテーテルに対する既知の角度を有する1又は複数のマーカ又は他の特徴を見ることで決定されてもよい。例えば、その特徴又はマーカはカテーテルの外周上に配置され、且つ、カテーテルに対するコントラスト(例えば、超音波コントラスト)を有していてもよい。
【0057】
508では、画像化プローブによって生成される画像で標的構造を検出するために、カテーテル及び/又は画像化プローブが解剖学的通路内であちこち移動させられる。510では、標的構造が画像化プローブによって検出された後で、臨床医が、ポインタ位置でポインティング装置を用いて画像内の標的構造を特定し得る。その画像(例えば超音波画像)は、呼吸サイクル及び/又は心臓周期に合わせてゲート制御されるスキャンによって生成され得る。3次元画像は、2次元スキャンから構築され得る。
【0058】
512では、ポインタ位置が、カテーテル座標系又は(カテーテル座標系に事前に登録されている)患者座標系に変換される。514では、ポインタ位置は、術前の解剖学的モデルで特定された標的構造の位置にオフセットを適用するために使用され得る。修正標的構造位置はそのオフセットに基づいて計算される。その後、その修正位置で処置(例えば生検)を行うために、画像化プローブが取り除かれ、且つ、生検用具又は他の介入用具がカテーテルを通じて挿入され得る。
【0059】
本開示におけるシステム及び方法は、肺における連結気管支通路での使用に関して説明されたが、それらは、結腸、腸、腎臓、脳、心臓、循環系等を含む様々な解剖学的システムの何れかにおいて自然に或いは外科的に創出された連結通路を介した他の組織に関するナビゲーション及び治療にも適している。また、本開示における方法及び実施例は、非侵襲的な応用にも適している。
【0060】
本発明の実施例における1又は複数の要素は、コントロールシステム116のようなコンピュータシステムのプロセッサで実行するためにソフトウェアで実現されてもよい。ソフトウェアで実現される場合、本発明の実施例におけるそれら要素は、基本的に、必要なタスクを実行するためのコードセグメントである。伝送媒体又は通信リンク上の搬送波で具体化されるコンピュータデータ信号を介してダウンロードされ得るプログラム又はコードセグメントは、プロセッサ可読の記憶媒体又は記憶装置に記憶され得る。そのプロセッサ可読の記憶媒体は、光媒体、半導体媒体、及び磁気媒体を含め、情報を記憶可能な任意の媒体を含み得る。プロセッサ可読の記憶装置の例は、電子回路、半導体装置、半導体メモリ装置、読み取り専用メモリ(ROM)、フラッシュメモリ、消去可能・プログラム可能・読み取り専用メモリ(EPROM)、フロッピーディスケット、CD-ROM、光ディスク、ハードディスク、又は他の記憶装置を含む。コードセグメントは、インターネット、イントラネット等のコンピュータネットワークを介してダウンロードされてもよい。
【0061】
提示されたプロセス及び表示は、本質的に、特定のコンピュータ又は他の機器の何れにも関連しない点に留意すべきである。これらの様々なシステムのための所要の構造は請求項における要素として登場する。更に、本発明の実施例は、何れかの特定のプログラミング言語に準拠して記述されるものではない。当然ながら、本書で説明されたように本発明が教示するところを実現するために、様々なプログラミング言語が用いられてもよい。
【0062】
本発明のいくらかの典型的な実施例が説明され且つ添付図面に示されたが、それら実施例は広範な発明の単なる例示であり限定的なものではない点、及び、当業者は他の様々な変更に思い当たる可能性があるため、本発明の実施例は図示され且つ説明された特定の構成及び配置に限定されない点を理解されたい。
図1
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