(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-31
(45)【発行日】2022-09-08
(54)【発明の名称】芳香族化の前の抽出による芳香族化合物の製造方法
(51)【国際特許分類】
C10G 61/04 20060101AFI20220901BHJP
C10G 35/095 20060101ALI20220901BHJP
C10G 45/02 20060101ALI20220901BHJP
C10G 21/00 20060101ALI20220901BHJP
B01J 29/62 20060101ALI20220901BHJP
C07C 7/10 20060101ALN20220901BHJP
C07C 15/04 20060101ALN20220901BHJP
C07C 15/08 20060101ALN20220901BHJP
【FI】
C10G61/04
C10G35/095
C10G45/02
C10G21/00
B01J29/62 M
C07C7/10
C07C15/04
C07C15/08
(21)【出願番号】P 2020529158
(86)(22)【出願日】2018-11-16
(86)【国際出願番号】 EP2018081581
(87)【国際公開番号】W WO2019105766
(87)【国際公開日】2019-06-06
【審査請求日】2021-11-12
(32)【優先日】2017-11-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】591007826
【氏名又は名称】イエフペ エネルジ ヌヴェル
【氏名又は名称原語表記】IFP ENERGIES NOUVELLES
(74)【代理人】
【識別番号】100106091
【氏名又は名称】松村 直都
(74)【代理人】
【識別番号】100079038
【氏名又は名称】渡邉 彰
(74)【代理人】
【識別番号】100199369
【氏名又は名称】玉井 尚之
(72)【発明者】
【氏名】ベルティノ-ゲラ セリーヌ
(72)【発明者】
【氏名】パゴット アレクサンドル
【審査官】齊藤 光子
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-191594(JP,A)
【文献】特開2017-61651(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0277505(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10G 1/00-99/00
B01J 29/00
C07C 7/00,15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナフサタイプの炭化水素供給原料からC6-C7の芳香族化合物を製造する方法であって、以下の段階:
a) 前記供給原料(1)を、第1の分画ユニット(2)に送り、C6およびC7の炭化水素化合物を主として含んでいる上部流れ(3)と、C8~C10の炭化水素化合物を主として含んでいる下部流れ(4)とを得る段階;
b) 上部流れ(3)および段階e)の終結の際に得られたC6-C7の芳香族化合物を主として含んでいる流れ(12)を、芳香族化合物の抽出のためのユニット(5)に送り、芳香族化合物ベース(6)と、液体流出物(7)とを得る段階;
c) 液体流出物(7)を、第1の接触改質ユニット(8)に送り、第1のリフォメート流出物(9)を得る段階;
d) 前記第1のリフォメート流出物(9)を、リフォメート分離セクション(10)に送り、C5の炭化水素化合物を主として含んでいる第1の流れ(11)と、C6およびC7の芳香族化合物を主として含んでいる第2の流れ(12)とを得る段階;
e) C6およびC7の芳香族化合物を主として含んでいる第2の流れ(15)を、少なくとも一部において、段階b)に再循環させる段階
を含む、方法。
【請求項2】
第1の接触改質ユニットにおける液体流出物の接触改質を行う際の温度は、400℃~600℃であり、圧力は、0.1~3MPaであり、水素対液体流出物の炭化水素のモル比は、0.8~8mol/molであり、触媒の重量の単位当たりかつ時間当たりの処理されるべき流れの重量による流量は、1~10h
-1である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
C8~C10の炭化水素化合物を主として含んでいる下部流れ(4)を、第2の接触改質ユニット(16)に送り、第2のリフォメート流出物(17)を得る、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
第2の接触改質ユニットにおいて下部流れ(4)の接触改質を行う際の温度は、400℃~600℃であり、圧力は、0.1~3MPaであり、水素対下部流れの炭化水素のモル比は、0.8~8mol/molであり、触媒の重量の単位当たりかつ時間当たりの処理されるべき流れの重量による流量は、0.1~10h
-1である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記第2のリフォメート流出物(17)を、前記第1のリフォメート流出物(9)と一緒に前記リフォメート分離セクション(10)に送る、請求項3または4に記載の方法。
【請求項6】
段階a)とb)との間に、上部流れ(3)の水素化脱硫の段階を水素化処理ユニット(13)において行う、請求項1~5のいずれか1つに記載の方法。
【請求項7】
下部流れ(4)の水素化脱硫の段階を、第2の接触改質反応器(16)の上流に置かれた水素化処理ユニット(13)において行う、請求項3~6のいずれか1つに記載の方法。
【請求項8】
第1の接触改質ユニットが含んでいる触媒は、単独でまたは混合物として利用される白金、亜鉛またはモリブデンから選ばれる少なくとも1種の金属を含む活性相と、ゼオライトL、ゼオライトX、ゼオライトYまたはゼオライトZSM-5から選ばれるゼオライトを含む担体と、場合による、アルミノケイ酸塩、アルミナ、シリカ、粘
土または炭化ケイ素から選ばれるバインダとを含んでいる、請求項1~7のいずれか1つに記載の方法。
【請求項9】
触媒が含んでいる活性相は、白金を含んでいる、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記ゼオライトは、ゼオライトLである、請求項8または9に記載の方法。
【請求項11】
前記バインダは、シリカである、請求項8~10のいずれか1つに記載の方法。
【請求項12】
触媒は、少なくとも1種のドーピング金属をさらに含んでおり、該ドーピング金属は、ガリウム、金、ニッケル、レニウム、バリウム、銀、鉄、ビスマス、インジウム、イットリウム、セリウム、ジスプロシウムおよびイッテルビウムによって形成される群から選ばれ、これらは、単独でまたは混合物として利用される、請求項8~11のいずれか1つに記載の方法。
【請求項13】
触媒は、塩素またはフッ素から選ばれる少なくとも1種のハロゲンをさらに含んでいる、請求項8~12のいずれか1つに記載の方法。
【請求項14】
第2の接触改質ユニットが含んでいる触媒は、ニッケル、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、イリジウムまたは白金から選ばれる少なくとも1種の金属、レニウム、スズ、ゲルマニウム、コバルト、ニッケル、イリジウム、ロジウムまたはルテニウムから選ばれる少なくとも1種のプロモータを含む活性相と、アルミナ、シリカ/アルミナまたはシリカをベースとする担体とを含んでいる、請求項3~13のいずれか1つに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナフサタイプの炭化水素供給原料を接触改質することによって芳香族化合物、より詳細には、ベンゼン、トルエンおよびキシレンタイプの芳香族化合物を製造する方法の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、接触改質ユニットの目的は、ナフテン系およびパラフィン系(n-パラフィンおよびイソパラフィン)の化合物を芳香族化合物に転化することにある。含まれる主反応は、ナフテンの脱水素および芳香族化合物を与えるパラフィンの脱水素環化、パラフィンおよびナフテンの異性化である。他の「副」反応も起こり得、例えば、パラフィンおよびナフテンの水素化分解(hydrocracking、hydrogenolysis)、軽質化合物およびより軽質な芳香族化合物の元である、アルキル芳香族化合物の水素化脱アルキル、並びに、触媒の表面におけるコークの形成である。
【0003】
接触改質ユニットに典型的に送られる供給原料は、パラフィン系およびナフテン系の化合物に富んでおり、芳香族化合物に比較的乏しい。それらは、一般的に、原油または天然ガスの凝縮物の蒸留に由来するナフサである。種々の含有率の芳香族化合物を含有している他の供給原料も利用可能であってよい。すなわち、重質な接触分解ナフサ、重質コーカーナフサまたは重質水素化分解ナフサ、さらには水蒸気分解ガソリンである。
【0004】
石油化学における適用のために、望まれる性能品質は、芳香族化合物の収率、さらには、生じた芳香族化合物の分配である。芳香族化合物は、一般的には、アロマティックコンプレクス(aromatic complex)において処理されて、1種または複数種の生成物、一般的にはキシレン類およびベンゼンの製造が最大にされる。トルエンとそれより重質の芳香族化合物は、ガソリンベースを形成するようにまたはキシレン類の混合物の製造によって品質向上させられ得る。C6-C7の芳香族化合物の製造により、特に、ガソリンのオクタン価を向上させることが可能となり、かつ/または、ベンゼン、トルエンおよびキシレン類の供給を増大させることが可能となる。接触改質によってC6-C7の芳香族化合物の製造を最大にするために、一般的には触媒的に活性な金属(一般的には白金)と非酸ゼオライトとを含んでいる特定の触媒系の存在が用いられる。
【0005】
C6-C7の芳香族化合物の製造を最大にするという目標を有している多くの既知の方法が存在する。例えば、特許出願(特許文献1)には、ナフサタイプの供給原料からのベンゼンおよびトルエンの製造を改善する方法であって、以下の段階:
- ナフサの流れを、分画ユニットに送り、C7以下の軽質の炭化水素を含んでいる第1の流れと、より重質の炭化水素を含んでいる第2の流れとを生じさせる段階;
- 第1の流れを、第1の改質ユニットに送り、第1の流出物を生じさせる段階;
- 第2の流れを、第2の改質ユニットに、第1の改質ユニットに適用された温度より高い温度で送り、第2の流出物を生じさせる段階;
- 第1の流出物および第2の流出物を、リフォメート分離塔に送り、これにより、頂部流れと、底部流れとを作り出す段階;
- 頂部流れを、芳香族化合物の精製のためのユニットに送り、これにより、C6およびC7の芳香族化合物を含んでいる芳香族化合物の精製済みの流れと、ラフィネート流れとを作り出す段階;
- ラフィネート流れを、第1の改質ユニットに再循環させる段階
を含む、方法が開示されている。
【0006】
このような方法により、ナフサ供給原料の流れからの芳香族炭化水素、特には、ベンゼンおよびトルエンの増大した製造が可能となる。より詳細には、ラフィネートを再循環させる段階および並列に置かれた2基の接触改質ユニットに対する芳香族化合物の抽出のためのユニットの再位置取りにより、ベンゼンの収率における25%の増大およびトルエンの収率における約10%の増大を生じさせることが可能となる。
【0007】
C7以下の軽質の炭化水素留分を接触改質するために一般に用いられる触媒は、一般的に、第VIII族からの金属をベースとする活性相をゼオライト上に担持されて含む。しかしながら、そのような触媒は、非常に過敏であり、改質反応の間の炭素ベースの沈着物(すなわちコーク)の形成によって容易に不活性にされ得る。これは、特に、種々の方法で:活性な分子よりそこにより強く吸着させることによって、それらと反応することによって、さらには、それらの接近を立体的に閉塞させることによって、活性中心(ブレンステッドの酸点)を不活性にすることによって、コークがゼオライトを不活性化させる原因であるからである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】米国特許出願公開第2012/0277505号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の一つの目標は、ゼオライト性の接触改質触媒の不活性化を制限しながら、ナフサタイプの供給原料を接触改質することにより、芳香族化合物、特に、ベンゼンおよびトルエンを製造するための方法を提供することにある。
【0010】
本出願人の会社は、驚くべきことに、接触改質の入口のところの芳香族化合物の含有率を低減させることを可能にする方法段階の賢明な配列によって、芳香族化合物、特にベンゼンおよびトルエンの抽出のための方法においてゼオライト上に担持された接触改質触媒の不活性化を制限することが可能であることを発見した。これは、処理されるべき炭化水素の供給原料により、芳香族化合物の初期濃度は、特に、重質接触分解ナフサ、重質コーカーナフサまたは重質水素化分解ナフサ、さらには、水蒸気分解ガソリンにおいて多少高くあり得て、これは、接触改質段階、特に、コークの形成をもたらす反応の間に「副」反応を生じさせ得るからである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(発明の目的)
本発明の目的は、ナフサタイプの炭化水素供給原料からのC6-C7の芳香族化合物の製造のための方法であって、以下の段階:
a) 前記供給原料を、第1の分画ユニットに送り、C6およびC7の炭化水素化合物を主として含んでいる上部流れと、C8~C10の炭化水素化合物を主として含んでいる下部流れとを得る、段階;
b) 上部流れおよび段階e)の終結の際に得られたC6-C7の芳香族化合物を主として含んでいる流れを、芳香族化合物の抽出のためのユニットに送り、芳香族化合物ベースと、液体流出物とを得る段階;
c) 液体流出物を、第1の接触改質ユニットに送り、第1のリフォメート流出物を得る段階;
d) 前記第1のリフォメート流出物を、リフォメート分離セクションに送り、C5の炭化水素化合物を主として含んでいる第1の流れと、C6およびC7の芳香族化合物を主として含んでいる第2の流れとを得る段階;
e) C6およびC7の芳香族化合物を主として含んでいる第2の流れを、少なくとも一部において、段階b)に再循環させる段階
を含む、方法である。
【0012】
本発明の意味合いの範囲内で、用語「第1の接触改質ユニット(a first catalytic reforming unit)」は、本発明の方法においてこのものの上流にあるだろう改質ユニットは他にないこと:特に、段階a)の分画ユニットの上流にまたは段階b)の芳香族化合物の抽出のためのユニットの上流に接触改質ユニットはないことを意味する。「上流(upstream)」および「下流(downstream)」は、本方法およびそれを実施するプラントにおける供給原料の移動の一般的な方向に関するとして理解される。本発明は、それ故に、芳香族化合物の抽出を行った後に任意の接触改質の操作を行う。
【0013】
本発明の意味合いの範囲内で、用語「主として(predominantly)」は、本明細書を通じて、考慮下の流れは、重量で、考慮下の成分の最低50重量%、特には最低80重量%、特には最低90重量%または最低95重量%を含むという事実を意味するとして理解される。それは、通常の不純物を除いて、考慮下の成分の全部の問題でもあるかもしれない。
【0014】
段階e)において、第2の流れの少なくとも一部、特には、第2の流れの全部を再循環させることが可能である。
【0015】
好ましくは、第1の接触改質ユニットにおける液体流出物の接触改質の段階が行われる際の温度は、400℃~600℃であり、圧力は、0.1~3MPaであり、水素対液体流出物の炭化水素のモル比は、0.8~8mol/molであり、触媒の重量の単位当たりかつ時間当たりの処理されるべき流れの重量による流量は、1~10h-1である。
【0016】
有利には、C8~C10の炭化水素化合物を主として含んでいる下部流れは、第2の接触改質ユニットに送られ、これにより第2のリフォメート流出物が得られる。
【0017】
好ましくは、第2の接触改質ユニットにおける下部流れの接触改質の段階が行われる際の温度は、400℃~600℃であり、圧力は、0.1~3MPaであり、水素対下部流れの炭化水素のモル比は、0.8~8mol/molであり、触媒の重量の単位当たりかつ時間当たりの処理されるべき流れの重量による流量は、1~10h-1である。
【0018】
有利には、前記第2のリフォメート流出物は、前記第1のリフォメート流出物と一緒に前記リフォメート分離セクションに送られる。
【0019】
好ましくは、段階a)とb)との間に、上部流れの水素化脱硫の段階が水素化処理ユニットにおいて行われる。
【0020】
有利には、下部流れの水素化脱硫の段階は、第2の接触改質反応器の上流に置かれた水素化処理ユニットにおいて行われる。
【0021】
好ましくは、第1の接触改質ユニットが含んでいる触媒は、単独でまたは混合物として利用される白金、亜鉛またはモリブデンから選ばれる少なくとも1種の金属を含む活性相と、ゼオライトL、ゼオライトX、ゼオライトYまたはゼオライトZSM-5から選ばれるゼオライトを含む担体と、場合による、アルミノケイ酸塩、アルミナ、シリカ、粘土または炭化ケイ素から選ばれるバインダとを含んでいる。
【0022】
より好ましくは、触媒が含んでいる活性相は、白金を含んでいる。
【0023】
より好ましくは、当該ゼオライトは、ゼオライトLである。
【0024】
有利には、当該バインダは、シリカである。
【0025】
好ましくは、触媒は、ガリウム、金、ニッケル、レニウム、バリウム、銀、鉄、ビスマス、インジウム、イットリウム、セリウム、ジスプロシウムおよびイッテルビウムによって形成される群から選ばれる少なくとも1種のドーピング金属をさらに含み、これらは、単独でまたは混合物として利用される。
【0026】
有利には、触媒は、塩素またはフッ素から選ばれる少なくとも1種のハロゲンをさらに含む。
【0027】
好ましくは、第2の接触改質ユニットが含んでいる触媒は、ニッケル、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、イリジウムまたは白金から選ばれる少なくとも1種の金属を含んでいる活性相と、レニウム、スズ、ゲルマニウム、コバルト、ニッケル、イリジウム、ロジウムまたはルテニウムから選ばれる少なくとも1種のプロモータと、アルミナ、シリカ/アルミナまたはシリカをベースとする担体とを含んでいる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明による方法の第1の実施形態の図表示である。
【
図2】本発明による方法の第2の実施形態の図表示である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
(発明の詳細な説明)
(定義)
芳香族化合物の抽出のためのユニットは、種々の分画ユニット(この分画は、吸着、蒸留、抽出蒸留、液/液抽出または結晶化によるかどうか)、および/または、転化ユニット(この転化は、芳香族化合物の再配置、例えば、選択的または非選択的なトランスアルキル化または不均化のための方法であるかどうか)、芳香族化合物の脱アルキル化またはアルキル化のためのユニット、さらには、エチルベンゼンの脱アルキル化を伴うまたは伴わないキシレン類の異性化のためのユニットの組み合わせを意味する。アロマティックコンプレクスの生成物は、主に、ここでは「芳香族ベース(aromatic bases)」として知られている石油化学中間体、例えば、ベンゼン、パラキシレン、オルトキシレン、メタキシレン、キシレン類留分、エチルベンゼン、スチレンモノマー、クメンまたは直鎖アルキルベンゼン類、さらには、石油ベースを形成するための成分、例えば、トルエン、または重質芳香族留分である。必要であるならば、アロマティックコンプレクスに入る供給原料は、水素化処理され得る。
【0030】
Cn炭化水素留分は、n個の炭素原子を有する炭化水素を含んでいる留分を意味するとして理解される。
【0031】
Cn+留分は、少なくともn個の炭素原子を有する炭化水素を含んでいる留分を意味するとして理解される。
【0032】
Cn-留分は、多くともn個の炭素原子を有する炭化水素を含んでいる留分を意味するとして理解される。
【0033】
最後に、以降では化学元素の族は、CAS分類に従って与えられる(CRC Handbook of Chemistry and Physics, 出版元CRC Press、主任編集者D.R. Lide、第81版、2000-2001)。例えば、CAS分類による第Ib族は、新IUPAC分類による11族の金属に対応する。
【0034】
(説明)
本発明は、C6~C10の炭化水素を主として含んでいるナフサ留分からの芳香族化合物、特には、ベンゼンおよびトルエンの製造方法に関する。本発明によると、本方法は、以下の段階:
a) 前記供給原料を、第1の分画ユニットに送り、C6およびC7の炭化水素化合物を主として含んでいる上部流れと、C8~C10の炭化水素化合物を主として含んでいる下部流れとを得る段階;
b) 上部流れおよび工程e)の終結の際に得られるC6-C7の芳香族化合物を主として含んでいる流れを、芳香族化合物の抽出のためのユニットに送り、芳香族化合物ベースと、液体流出物とを得る段階;
c) 液体流出物を、第1の接触改質ユニットに送り、第1のリフォメート流出物を得る段階;
d) リフォメート流出物を、リフォメート分離セクションに送り、C5の炭化水素化合物を主として含んでいる第1の流れと、C6およびC7の芳香族化合物を主として含んでいる第2の流れとを得る段階;
e) C6およびC7の芳香族化合物を主として含んでいる第2の流れを、少なくとも一部について、工程b)に再循環させる段階
を含む。
【0035】
第1の改質ユニットにおける接触改質の段階は、脱水素環化反応を促進するようにかつ副反応を制限するように調節された操作条件下に行われる。典型的には、用いられる圧力は、一般的に0.1~3MPaであり、水素/液体流出物の炭化水素のモル比(H2/HC)は、一般的に1:1~10:1、好ましくは2:1~6:1である。温度は、一般的には400℃~600℃、好ましくは470℃~570℃である。触媒の重量の単位当たりかつ時間当たりの処理されるべき流れの重量による流量(P.P.H.)は、一般的には0.1~10h-1、好ましくは0.5~6h-1である。
【0036】
接触改質の段階c)は、単独でまたは混合物として利用される白金、亜鉛またはモリブデンから選ばれる少なくとも1種の金属を含む活性相と、ゼオライトを含む担体と、場合によるバインダとを含んでいる触媒が存在する中で行われる。より好ましくは、金属は、白金である。
【0037】
典型的には、触媒は、触媒の全重量に対して、0.02重量%~2重量%、好ましくは0.05重量%~1.5重量%、一層より好ましくは0.1重量%~0.8重量%の量の金属を含有する。
【0038】
より詳細には、ゼオライトは、ゼオライトL、ゼオライトX、ゼオライトYまたはゼオライトZSM-5から選ばれる。より好ましくは、ゼオライトは、ゼオライトLである。
【0039】
好ましくは、バインダは、アルミノケイ酸塩、アルミナ、シリカ、粘土または炭化ケイ素から選ばれ、これらは、単独でまたは組み合わせで利用される。より好ましくは、バインダは、シリカから選ばれる。
【0040】
触媒は、少なくとも1種のドーピング金属も含むことができ、ドーピング金属は、ガリウム、金、ニッケル、レニウム、バリウム、銀、鉄、ビスマス、インジウム、イットリウムおよびランタニド族(セリウム、ジスプロシウム、イッテルビウム)によって形成される群から選ばれ、これらは、単独でまたは混合物として利用される。各ドーパント金属の含有率は、触媒の全重量に対して、0重量%~2重量%、好ましくは0.01重量%~1重量%、好ましくは0.01重量%~0.7重量%である。
【0041】
触媒は、アルミナ担体を酸性にするために用いられる少なくとも1種のハロゲンも含むことができる。ハロゲンの含有率は、触媒の全重量に対して0.1重量%~15重量%、好ましくは触媒の全重量に対して0.2重量%~5重量%を示すことができる。好ましくは、ちょうど1種のハロゲン、特には塩素またはフッ素が用いられる。触媒がちょうど1種のハロゲン(塩素またはフッ素)を含む場合、塩素の含有率は、触媒の全重量に対して0.5重量%~2重量%である。
【0042】
触媒は、アルカリ金属も、触媒の全重量に対して0.1重量%~3重量%の程度の割合で含むことができる。好ましくは、アルカリ金属は、カリウムである。
【0043】
C8~C10の炭化水素化合物を主として含んでいる下部流れの接触改質の段階が第2の専用の接触改質ユニットにおいて行われる特定の実施形態において、前記改質段階は、ニッケル、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、イリジウムまたは白金から選ばれる少なくとも1種の金属、およびレニウム、スズ、ゲルマニウム、コバルト、ニッケル、イリジウム、ロジウムまたはルテニウムから選ばれる少なくとも1種のプロモータを含む活性相を含んでいる触媒が存在する中で行われる。好ましくは、触媒が含んでいる活性相は、白金およびスズを含む。金属の量は、触媒の全重量に対して、0.02重量%~2重量%、好ましくは0.05重量%~1.5重量%、一層より好ましくは0.1重量%~0.8重量%である。好ましくは、触媒が含んでいる担体は、アルミナ、シリカ/アルミナまたはシリカをベースとしている。好ましくは、担体がベースとしているのは、アルミナである。触媒において用いられる多孔質担体のアルミナ(1種または複数種)は、χ、η、γまたはδのタイプのものである。好ましくは、それらは、γまたはδのタイプのものである。一層より好ましくは、それらは、γのタイプのものである。接触改質段階が行われる際の圧力は、一般的には0.1~3MPa、好ましくは0.3~2.5MPaであり、水素/炭化水素H2/HCのモル比は、一般的に0.8~8mol/molであり、温度は、一般的に400℃~600℃、好ましくは470℃~570℃であり、触媒の重量の単位当たりかつ時間当たりの処理されるべき流れの重量による流量は、0.1~10h-1、好ましくは0.5~6h-1である。
【0044】
本発明は、ここから、
図1および2に基づいて詳細に説明されることになる。これらの図面は、特に有利な実施形態を示している。これらの実施形態は、本発明を例証するために提供されるが、それらは、決して本発明の範囲を限定することを目的としていない。
【0045】
図1は、本発明による方法の第1の実施形態を非限定的に例証しており、この
図1に関連して、C6~C10の炭化水素を含んでいるナフサタイプの供給原料(1)は、分離塔(2)に送られ、これにより、上部流れ(3)と下部流れ(4)とが得られる。上部流れ(3)は、C6およびC7の炭化水素化合物を主として含み、下部流れ(4)は、C8~C10の化合物を主として含む。下部流れ(4)は、10容積%未満のC7の化合物を含む。上部流れ(3)は、場合によっては、水素化脱硫(水素化処理)ユニット(13)に送られ、適宜水素化脱硫された上部流れは、芳香族化合物の抽出のためのユニット(5)に送られ、これにより、芳香族化合物の精製済みの流れ(6)と、液体流出物(7)が形成され、液体流出物(7)は、接触改質ユニット(8)に送られる。接触改質ユニット(8)が含んでいる触媒は、白金をベースとする活性相と、ゼオライトタイプの担体とを含んでいる。改質ユニット(8)における操作条件は、以下の通りである:温度は、400℃~600℃であり、圧力は、0.5~2.5MPaであり、水素対処理される液体流出物のモル比は、0.8~8mol/molであり、触媒の重量の単位当たりかつ時間当たりの処理されるべき流れの重量による流量(P.P.H.)は、1~10h
-1である。リフォメート流出物(9)は、リフォメート分離セクション(10)に送られ、これにより、第1の流れ(11)と、第2の流れ(12)とが得られる。第1の流れ(11)は、C5の炭化水素化合物を主として含み、第2の流れ(12)は、C6およびC7の芳香族化合物を主として含む。C6およびC7の芳香族化合物を主として含んでいる流れ(12)は、続いて、ライン(15)を介して芳香族化合物の抽出のためのユニット(5)の上流に再循環させられる。本発明における前記化合物の蓄積を防止するためにブリード(14)が提供され得る。
【0046】
図2は、本発明による方法の第2の実施形態を非限定的に例証するものであり、この
図2に関連して、C6~C10の炭化水素を含んでいるナフサタイプの供給原料(1)は、分離塔(2)に送られ、これにより、上部流れ(3)と下部流れ(4)とが得られる。上部流れ(3)は、C6およびC7の炭化水素化合物を主として含み、下部流れ(4)は、C8~C10の化合物を主として含む。下部流れ(4)は、10容積%未満のC7の化合物を含む。上部流れ(3)は、場合によっては、水素化脱硫(水素化処理)ユニット(13)に送られ、適宜水素化脱硫された上部流れは、芳香族化合物の抽出のためのユニット(5)に送られ、これにより、芳香族化合物の精製済みの流れ(6)と、液体流出物(7)とが形成され、この液体流出物(7)は、接触改質ユニット(8)に送られる。接触改質ユニット(8)が含んでいる触媒は、白金をベースとする活性相と、ゼオライトタイプの担体とを含む。改質ユニット(8)における操作条件は、以下の通りである:温度は、400℃~600℃であり、圧力は、0.3~2.5MPaであり、水素対液体流出物の炭化水素のモル比は、0.8~8mol/molであり、触媒の重量の単位当たりかつ時間当たりの処理されるべき流れの重量による流量(P.P.H.)は、1~10h
-1である。下部流れ(4)は、場合によっては、水素化脱硫ユニット(
図2に示されていない)に送られ、適宜に水素化処理された下部流れは、第2の接触改質ユニット(16)に送られる。第2の接触改質ユニット(16)は、二機能性の触媒を含んでおり、この二機能性の触媒は、白金およびスズをベースとする活性相(Pt-Sn)を、アルミナ上に担持されて含んでいる。第2の改質ユニット(16)における操作条件は、以下の通りである:温度は、400℃~600℃であり、圧力は、0.5~2.5MPaであり、水素対(場合によっては水素化脱硫された)下部流れの炭化水素のモル比は、0.8~8mol/molであり、触媒の重量の単位当たりかつ時間当たりの処理されるべき流れの重量による流量(P.P.H.)は、1~10h
-1である。第1の改質ユニット(8)に由来する第1のリフォメート(9)および第2の改質ユニット(16)に由来する第2のリフォメート(17)は、続けて一緒に合わせられ、これにより、リフォメート流れ(18)が形成される。リフォメート流れ(18)は、続いて、分離セクション(10)(詳細には図面に記載されていない)に送られ、これにより、第1の流れ(11)と、第2の流れ(12)と、第3の流れ(19)とが得られる。第1の流れ(11)は、C5の炭化水素化合物を主として含み、第2の流れ(12)は、C6およびC7の芳香族化合物を主として含み、第3の流れ(19)は、C8+の炭化水素化合物を主として含む。C6およびC7の芳香族化合物を主として含んでいる第2の流れ(12)は、続いて、ライン(15)を介して芳香族化合物の抽出のためのユニット(5)の上流に再循環させられる。本方法における前記化合物の蓄積を防ぐためにブリード(14)が提供され得る。
【0047】
(実施例)
以下の実施例は、2つの処理スキームを比較する:本発明に合致しないスキームは、芳香族化合物の抽出のためのユニットを含んでおり、これは、接触改質ユニットの下流に配置され(
図3を参照)、本発明に合致するスキームは、芳香族化合物の抽出のためのユニットを含んでおり、これは、接触改質ユニットの上流に配置されている(
図1または
図2を参照)。
【0048】
従来技術および本発明に合致する各スキームについて、接触改質ユニットおよび芳香族化合物の抽出のためのユニットは同一である。
【0049】
全ての場合において、考慮下のナフサ供給原料は、以下の通りである:
- 15℃における密度=0.758kg/dm3;
- 重量による分配:供給原料の全重量に対して、パラフィン49.55重量%、ナフテン2.7重量%および芳香族化合物47.7重量%。
【0050】
(実施例1:従来技術に合致する改質方法)
従来技術に合致する方法のスキームは
図3に対応している。
【0051】
従来技術に合致するスキームにおいて、C6~C10の炭化水素を含んでいるナフサ供給原料(1)は、分離塔(20)に送られ、これにより、上部流れ(30)と、下部流れ(40)とが得られ、上部流れ(30)は、C6およびC7の炭化水素化合物を主として含んでおり、下部流れ(40)は、C8~10の化合物を主として含んでいる。下部流れ(40)は、10容積%未満のC7の化合物を含んでいる。上部流れ(30)は、接触改質ユニット(50)に送られる。接触改質ユニット(50)は、直列の5基の反応器を含んでおり、これらの反応器が含んでいる触媒は、白金をベースとする活性相と、ゼオライトLタイプの担体とを含んでいる。
【0052】
下記の操作条件は、第1の改質ユニット(50)のための試作ユニットにおいて用いられる操作条件を示している:
温度=470℃;
圧力=0.39MPa;
P.P.H.=1h-1;
H2/HC=1.5。
【0053】
第1の接触改質ユニットにおいて用いられる触媒は、ゼオライトL上に担持された白金(触媒の全重量に対してPt0.3重量%)をベースとする触媒である。
【0054】
第1の改質ユニット(50)に由来するリフォメート(60)は、リフォメート分離塔(70)に送られ、これにより、頂部流れ(80)と、底部流れ(90)とが得られる。頂部流れ(80)は、C5の炭化水素化合物を主として含んでおり、底部流れ(90)は、C6およびC7の芳香族化合物を主として含んでいる。底部流れ(90)は、続いて、芳香族化合物の抽出のためのユニット(100)に送られ、これにより、芳香族化合物の精製済みの流れ(110)と、液体流出物(120)とが形成され、液体流出物(120)の一部は、ライン(140)を介して接触改質ユニット(50)に再循環させられる。流れ(120)の他の部分は、ライン(130)を介して本方法から排出される。
【0055】
従来技術に合致する方法(
図3)において、芳香族化合物の抽出のためのユニット(100)は、本発明に合致する方法の状況における場合と同様に、接触改質ユニット(50)の(流体の流通の方向における)下流に置かれ、接触改質ユニットの上流には置かれない。
【0056】
(実施例2:本発明に合致する改質方法)
実施例2の本発明に合致する方法のスキームは、
図1において記載されたものに対応している。
【0057】
下記の操作条件は、第1の改質ユニット(5)のための試作ユニットにおいて用いられる操作条件を示しており、第1の改質ユニット(5)は、直列の5基の改質反応器を含んでいる:
温度=470℃;
圧力=0.39MPa;
P.P.H.=1h-1;
H2/HC=1.5。
【0058】
第1の接触改質ユニットにおいて用いられる触媒は、ゼオライトL上に担持された白金(触媒の全重量に対してPt0.3重量%)をベースとする触媒である。
【0059】
(実施例3:コークの含有率の評価)
本発明に合致しない実施例1の状況および本発明に合致する実施例2の状況において、第1の接触改質ユニットにおいて用いられた触媒上に得られたコークの形成は、等温条件下に試作ユニット上で加速された仕方で、工業スケールで行われた方法との比較においてシミュレートされる。制限される期間にわたって試験を行う(本実施例において、15日の期間)。この試験は、それ故に、触媒の加速された経時変化をシミュレートする。
【0060】
温度470℃、圧力0.39MPaおよび第1の改質ユニットにおいて処理されるべき流れの重量による流量1h-1で15日の期間にわたって操作することによって試験を行った。15日にわたって試験した後の触媒に関して測定されるコークの含有率は、下記の表1に示される。
【0061】
【0062】
本発明に合致する方法の状況で第1の改質ユニットの触媒上に形成されたコークの含有率(触媒の全重量に対して1.3重量%)は、従来技術に合致する方法の状況で第1の改質ユニットの触媒上に形成されたコーク含有率(触媒の全重量に対してコーク2.0重量%)より低い。本発明に合致する方法の状況での触媒上のコークの形成における低減は、接触改質ユニットの上流の芳香族化合物の抽出のためのユニットの非常に特定的な位置取りに主として起因し、これにより、ナフサ供給原料中に最初に既に存在する芳香族化合物を抽出することが可能となり、それ故に、ゼオライト性の改質触媒上のコークの形成を低減させることが可能となる。これは、コークがゼオライトの不活性化の要因であるためであり、特に、異なる方法:反応性分子よりもそこにより強く吸着されることによるか、それらと反応するか、さらには、それらのアクセスを立体的にブロックすることによるかで活性中心(ブレンステッド酸サイト)を不活性化することによるものである。