(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-31
(45)【発行日】2022-09-08
(54)【発明の名称】レンズ駆動アクチュエータ及び携帯端末
(51)【国際特許分類】
G02B 7/04 20210101AFI20220901BHJP
G02B 7/02 20210101ALI20220901BHJP
G03B 17/04 20210101ALI20220901BHJP
【FI】
G02B7/04 D
G02B7/04 E
G02B7/02 D
G03B17/04
(21)【出願番号】P 2020557630
(86)(22)【出願日】2019-11-21
(86)【国際出願番号】 JP2019045647
(87)【国際公開番号】W WO2020110910
(87)【国際公開日】2020-06-04
【審査請求日】2021-05-12
(31)【優先権主張番号】P 2018225824
(32)【優先日】2018-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019075441
(32)【優先日】2019-04-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000104652
【氏名又は名称】キヤノン電子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】特許業務法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 久聡
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 雄樹
(72)【発明者】
【氏名】川久保 直樹
(72)【発明者】
【氏名】周 耀民
【審査官】越河 勉
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-022123(JP,A)
【文献】特開平09-211281(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 7/02-7/16
G03B 17/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光が通過する開口を有する上カバーと、
前記上カバー内に配置され、内部に光を透過するレンズが設けられた鏡筒と、
前記鏡筒の外周面に設けられた駆動ピンと、
前記鏡筒の外周を覆うように設けられ、前記駆動ピンと係合するカム溝を有する駆動カム部材と、
前記駆動カム部材に設けられたギアに駆動力を供給する駆動源と
を備え、
前記鏡筒は、
前記上カバーから突出する突出位置と、前記上カバーの内部に収容される収容位置との間で移動可能であり、前記駆動カム部材が前記鏡筒の外周面に沿って回転することによって、前記駆動ピンが前記カム溝から駆動力を受け、前記上カバーに対し光軸方向に移動
し、
前記上カバーには、前記突出位置において前記駆動ピンが当接する突き当て部が設けられていることを特徴とするレンズ駆動アクチュエータ。
【請求項2】
前記鏡筒が前記突出位置に移動する方向に付勢力を発揮する付勢手段を有することを特徴とする請求項
1に記載のレンズ駆動アクチュエータ。
【請求項3】
前記付勢手段は、前記駆動カム部材に当接して付勢することで、前記鏡筒を前記突出位置に移動させることを特徴とする請求項
2に記載のレンズ駆動アクチュエータ。
【請求項4】
前記付勢手段は、前記鏡筒が前記収容位置にあるときには前記駆動カム部材を付勢せず、前記鏡筒が前記突出位置付近に位置するときのみ前記駆動カム部材を付勢することを特徴とする請求項
3に記載のレンズ駆動アクチュエータ。
【請求項5】
前記鏡筒と前記駆動カム部材との間には、異物の侵入を防止する防塵部材が環状に設けられたことを特徴とする請求項1から
4のいずれか一項に記載のレンズ駆動アクチュエータ。
【請求項6】
請求項1から
5のいずれか一項に記載のレンズ駆動アクチュエータを内部に備える筐体と、
前記レンズと対向する位置に設けられた撮像素子とを備え、
前記撮像素子による撮像時に、前記鏡筒を前記筐体から突出する位置に移動させることを特徴とする携帯端末。
【請求項7】
光が通過する開口を有する上カバーと、
前記上カバー内に配置され、内部に光を透過するレンズが設けられた鏡筒と、
前記鏡筒の外周面に設けられた駆動ピンと、
前記鏡筒の外周を覆うように設けられ、前記駆動ピンと係合するカム溝を有する駆動カム部材と、
前記駆動カム部材に設けられたギアに駆動力を供給する駆動源と
を備え、
前記鏡筒は、前記駆動カム部材が前記鏡筒の外周面に沿って回転することによって、前記駆動ピンが前記カム溝から駆動力を受け、前記上カバーに対し光軸方向に移動し、
前記鏡筒と前記駆動カム部材との間には、異物の侵入を防止する防塵部材が環状に設けられ、
前記防塵部材は環状に設けられた周方向の一部で前記光軸方向に対し斜めに切断された部分が前記光軸方向で重なるように設けられており、
前記駆動カム部材の前記防塵部材が設けられる部分において、前記防塵部材が前記光軸方向で重なる部分に対応する位置は、前記防塵部材側に突出する押さえ凸部を有することを特徴とす
るレンズ駆動アクチュエータ。
【請求項8】
一端を前記上カバーに固定された少なくとも一つの弾性部
材を備え、
前記弾性部材によって前記駆動カム部材を、前記鏡筒の外周面に沿って回転する方向に付勢していることを特徴とする
請求項1又は7に記載のレンズ駆動アクチュエータ。
【請求項9】
撮影状態と、非撮影状態との間でレンズを動作させるレンズ駆動アクチュエータであって、
撮影状態において、前記弾性部材は、前記駆動カム部材の外周に設けられた被押動部が有する斜面部を押動することで前記駆動カム部材を回転端部側に付勢し、
非撮影状態において、前記弾性部材は、前記被押動部との当接状態が解除され、前記駆動カム部材を回転中心に向かう方向に付勢することを特徴とする請求項
8に記載のレンズ駆動アクチュエータ。
【請求項10】
前記駆動カム部材に前記駆動源の駆動力を伝達する駆動力伝達ギアをさらに備え、
少なくとも一つの前記弾性部材は、前記駆動カム部材に対し、前記駆動力伝達ギアと反対側に配置され、前記駆動カム部材を前記駆動力伝達ギアの側に押し付けていることを特徴とする請求項
8または
9に記載のレンズ駆動アクチュエータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯端末に搭載されるカメラ等の光学系として設けられるレンズを駆動するアクチュエータ及びそれを備えるスマートフォンなどに代表される携帯端末に関する。
【背景技術】
【0002】
スマートフォンなどの携帯端末に搭載されるカメラにおいて、撮像素子の被写体側にレンズや絞りを設ける技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、携帯電話やスマートフォンなどの小型の携帯端末において、レンズを撮像素子の光軸方向に移動させることで光学特性を向上させることが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記を鑑み、本発明に係るレンズ駆動アクチュエータは、
光が通過する開口を有する上カバーと、
前記上カバー内に配置され、内部に光を透過するレンズが設けられた鏡筒と、
前記鏡筒の外周面に設けられた駆動ピンと、
前記鏡筒の外周を覆うように設けられ、前記駆動ピンと係合するカム溝を有する駆動カム部材と、
前記駆動カム部材に設けられたギアに駆動力を供給する駆動源と
を備え、
前記鏡筒は、前記上カバーから突出する突出位置と、前記上カバーの内部に収容される収容位置との間で移動可能であり、前記駆動カム部材が前記鏡筒の外周面に沿って回転することによって、前記駆動ピンが前記カム溝から駆動力を受け、前記上カバーに対し光軸方向に移動し、
前記上カバーには、前記突出位置において前記駆動ピンが当接する突き当て部が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、小型の駆動アクチュエータによってレンズを移動させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1A】本発明の一実施形態に係る駆動アクチュエータの斜視図。
【
図1B】本発明の一実施形態に係る駆動アクチュエータの斜視図。
【
図2】本発明の一実施形態に係る駆動アクチュエータの分解斜視図。
【
図3A】本発明の一実施形態に係る駆動アクチュエータの動作説明図(収容位置)。
【
図3B】本発明の一実施形態に係る駆動アクチュエータの動作説明図(収容位置)。
【
図4】本発明の一実施形態に係る駆動アクチュエータの下面図(突出位置)。
【
図5A】本発明の他の実施形態に係る駆動アクチュエータの断面図(収容位置)。
【
図5B】本発明の他の実施形態に係る駆動アクチュエータの断面図(突出位置)。
【
図6A】本発明の他の実施形態に係る駆動アクチュエータの斜視図。
【
図6B】防塵部材と摺動シートのみを抜粋して示す図。
【
図7】本発明の第2実施形態に係る駆動アクチュエータの分解斜視図。
【
図8】本発明の第2実施形態に係る駆動アクチュエータの下面図(突出位置)。
【
図9A】本発明の第3実施形態に係る駆動アクチュエータの斜視図。
【
図9B】本発明の第3実施形態に係る駆動アクチュエータの斜視図。
【
図10】本発明の第3実施形態に係る駆動アクチュエータの分解斜視図。
【
図11A】本発明の第3実施形態に係る駆動アクチュエータの動作説明図。
【
図11B】本発明の第3実施形態に係る駆動アクチュエータの動作説明図。
【
図12】本発明の第3実施形態に係る駆動アクチュエータの下面図(突出位置)。
【
図13A】本発明の第3実施形態に係る駆動アクチュエータの下面図(突出位置)。
【
図13B】本発明の第3実施形態に係る駆動アクチュエータの下面図(収容位置)。
【
図14】本発明の第4実施形態に係る駆動アクチュエータの分解斜視図。
【
図15A】本発明の第4実施形態に係る駆動アクチュエータの下面図(突出位置)。
【
図15B】本発明の第4実施形態に係る駆動アクチュエータの下面図(収容位置)。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。尚、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明に必須のものとは限らない。実施形態で説明されている複数の特徴のうち二つ以上の特徴が任意に組み合わされてもよい。また、同一若しくは同様の構成には同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0009】
<第1実施形態>
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
図1A及び
図1Bは、本実施形態に係るレンズ駆動アクチュエータ100の斜視図である。
図1A及び
図1Bに示すように、レンズ駆動アクチュエータ100は、点線で示すスマートフォンSにおける背面側に設けられる。このレンズ駆動アクチュエータ100に対し、スマートフォンSの正面側には撮像素子としてのカメラモジュールが配置され、レンズ駆動アクチュエータ100内部に配置されるレンズによって撮像素子の撮像面に被写体像を結像する。
【0010】
図1A及び
図1Bに示すように、レンズ駆動アクチュエータ100は、光が通過する開口を有する上カバー2に対し、駆動源3を駆動することで内部に光を透過するレンズが設けられた鏡筒1を移動させ、鏡筒1を
図1AのスマートフォンSの背面で上カバー2から突出する位置(突出位置)と、
図1Bの背面で上カバー2内部に収容される位置(収容位置)との間で移動可能になっている。なお、本実施形態においては駆動源3としてはステッピングモータを用いている。鏡筒1の位置の切り替えが終わると、駆動源3の駆動は切断される。鏡筒1が突出位置にある際に撮像位置として用いられ、カメラモジュールによる撮像が行われる。カメラモジュールによる撮像が行われる際には、鏡筒1内に収められているボイスコイルモータ(以下VCM)により鏡筒1内のレンズが光軸方向に移動し、合焦動作が行われる。
【0011】
鏡筒1の外面には金属からなる外観カバー部材1aが設けられており、この外観カバー部材1aにつや消し処理やつや出し処理をすることで、ユーザーに対して好印象を与えることができる。スマートフォンSの構成によっては、上カバー2の上面もユーザーから見える範囲になる外装を構成する場合もあり、上カバー2を覆うように金属からなる外観カバー部材2bを設けることで、鏡筒1の外観カバー部材1aと同様の効果を持たせることもできる。
【0012】
図2には、本実施形態に係るレンズ駆動アクチュエータ100の分解斜視図を示している。駆動源3で発生した駆動力が第1ギア11から、第2ギア12、第3ギア13、第4ギア14、第5ギア15を通じて、駆動カム部材4に設けられた駆動ギア歯4aに伝達されることによって供給され、鏡筒1が光軸方向に移動する。
【0013】
鏡筒1、駆動カム部材4および各ギアは、上カバー2と下カバー5との間に設けられた空間に収容される。鏡筒1は、上カバー2内に設けられた駆動カム部材4の内側に配置される。また、後述するように駆動カム部材4を付勢する付勢部材6も、これらと同様に上カバー2と下カバー5との間に設けられた空間に収容されている。
【0014】
図3には、本実施形態に係るレンズ駆動アクチュエータ100の動作を説明するための図を示している。駆動源3を駆動することによって発生した駆動力を駆動カム部材4に対して各ギアを介して伝達し、鏡筒1を光軸方向に移動させる。まず、駆動源3を駆動すると、ピニオン3aが回転し、ピニオン3aと噛合する第1ギア11が従動回転する。順次、第2ギア12、第3ギア13、第4ギア14、第5ギア15と駆動伝達され、第5ギア15から駆動カム部材4の駆動ギア歯4aに対して駆動力が伝達し、駆動カム部材4が回転する。
【0015】
なお、第4ギア14と第5ギア15との間は、ギア歯同士が噛み合うのではなく、間にスリップクラッチ(トルクリミッタ)が介在しており、駆動源3による駆動力以上の駆動が伝達された場合に第4ギア14と第5ギア15との間の駆動伝達が遮断されるようになっている。これによって、例えば突出位置にある鏡筒1が無理矢理押し込まれて過大な負荷が及ぼされたときに、各ギアや駆動源3を保護することができる。
【0016】
駆動カム部材4に伝達された駆動力によって駆動カム部材4が回転すると、駆動カム部材4に設けられたカム溝4bと係合する、鏡筒1の外周面に設けられた駆動ピン1bが光軸方向にガイドされることで鏡筒1が光軸方向に移動する。
図3A及び
図3Bは、鏡筒1が収容位置(沈胴位置)にある状態を示している。
図3AはスマートフォンSの背面側の斜視図であり、
図3BはスマートフォンSの正面側の斜視図である。
【0017】
図3Bに示すように、カム溝4bは、鏡筒1を突出位置とする側の端部(突出側端部)においては、駆動カム部材4の回転に伴って常に鏡筒1が光軸方向に連続的に移動するようにカム溝4bが形成されており、他方、
図3Aに示すように、鏡筒1を収容位置とする側の端部(収容側端部)においては、駆動カム部材4が回転しても鏡筒1が光軸方向に移動しないようにカム溝4bに不感帯が設けられている。なお、鏡筒1が突出位置となる際に、駆動ピン1bは、カム溝4bの突出側端部には当接せず、
図2に示す上カバー2に設けられた突き当て部2aに当接する。そのため、突出側端部においては、カム溝4bには不感帯は設けられていない。すなわち、鏡筒1の突出位置においては、駆動カム部材4を介して鏡筒1へ伝達された駆動源3の駆動力もしくは後述する付勢部材6の付勢力によって、鏡筒1の駆動ピン1bを上カバー2の突き当て部2aに押し付けることにより、鏡筒1の光軸方向における安定した停止位置を実現している。また、詳しくは後述するように、鏡筒1が突出位置にある状態でスマートフォンSの背面を下にして載置された場合などに、鏡筒1が収容位置に向けて移動可能になり、駆動ピン1bがカム溝4bの側壁に押圧されてダメージを受けることを防止できる。
【0018】
鏡筒1が突出位置、収容位置に到達したことの判定は、それぞれの位置に対応して設けられたフォトインタラプタ(以下PI)にて行う。駆動カム部材4にはPIを遮光するための遮光部4dが
図4に示す通り設けられており、収容位置では収容位置に対応して配置されているPI1を遮光部が覆っていて、突出位置では突出位置に対応して配置されているPI2を遮光部4dが覆っている。
【0019】
いずれかの位置に鏡筒1を移動させる制御を行った結果、どちらのPIも遮光部4dで覆われていない場合はエラーと判断して、鏡筒1を収容位置に戻す動作を行う。
【0020】
本実施形態では駆動源3にステッピングモータを使用しているため、突出位置への到達を検知したあとにさらに規定のステップ数動作させることで、鏡筒1の位置を完全に突出位置の突き当て2aに当接させることが可能であり、かつ、無駄に多く駆動源3を駆動させる必要もない。
【0021】
スマートフォンSにおいては、例えばカメラアプリが起動状態になった際もしくは鏡筒1を突出位置に突出させる制御指示が出された際に鏡筒1を突出位置に向けて移動させるように制御するが、この状態(鏡筒1が突出位置にある状態)において、ユーザーがスマートフォンSの背面側を下にして机などに置いた場合や、ユーザーが指で鏡筒1の先端(背面側の端部)を押下してしまうと鏡筒1がスマートフォンSの正面側に移動しようとすることになる。駆動源3から常時駆動伝達しておけば鏡筒1が正面側に移動してしまう外力が及ぼされても突出位置を保持できるが、その場合には電力消費が大きくなってしまう。
【0022】
それに対し、本実施形態においては、
図4に示すように、駆動カム部材4の突出側端部に不感帯を設けずに鏡筒1が正面側に移動し易く構成した上で、鏡筒1に対して背面側(突出位置側)に移動する付勢力を及ぼすように、付勢部材6を配置している。これによって、鏡筒1に対して正面側に移動させる外力が及ぼされたとしても、付勢部材6の付勢力が及ぼされる範囲においては、駆動源3を駆動しなくても鏡筒1を突出位置に保持することができる。
【0023】
付勢部材6は、本体部と、上カバー2に係合するトーションバネ6aとを備えている。付勢部材6は、
図4に示す付勢位置においては、駆動カム部材4の周縁部に設けられた被押動部4cを押す方向に付勢力を及ぼすことによって、駆動カム部材4を突出位置側に付勢している。これによって鏡筒1は、その突出位置付近においては付勢部材6によってスマートフォンSの背面側に付勢されている。従って、ユーザーの操作などによる外力によって鏡筒1が正面側に押し込まれた場合にも、付勢部材6の付勢力によって、外力の解除後に鏡筒1を突出位置に復帰させることができる。
【0024】
また、付勢部材6は、鏡筒1が突出位置から収容位置に遷移するように駆動カム部材4が回転することに伴って、本体部と被押動部4cとの当接状態が解除され、駆動ギア歯4aの延長上に設けられた外周部4eに当接することとなる。このとき、付勢部材6は駆動カム部材4に対してはその回転方向には付勢力を及ぼさないようになり、駆動カム部材4の回転動作を著しく妨げることはない。
【0025】
なお、本実施形態では付勢部材6が駆動カム部材4を介して鏡筒1を付勢する構成としたが、鏡筒1を直接付勢する構成でもよい。
【0026】
図4には、本実施形態に係るレンズ駆動アクチュエータ100の鏡筒1が突出位置(繰り出し位置)にある状態における下面図(スマートフォンSの正面側から見た図)を示している。付勢部材6は、このように、上カバー2との間に設けられたトーションバネ6aによって回動する本体部によって駆動カム部材4を付勢しており、上カバー2と下カバー5との間の空間内において、駆動源3のピニオン3aや駆動ギア歯4aが設けられた側とは、鏡筒1に対して反対側(特に、円形に設けられた駆動カム部材4周囲における上カバー2の角部)に付勢部材6を設けることによって、略円筒状の鏡筒1の周囲のスペースを有効に利用して省スペースに付勢部材6を配置することができる。換言すれば、付勢部材6を鏡筒1に対して反対側に設けるために、駆動ギア歯4aが設けられた駆動カム部材4のフランジ部において外周部4eに形成する被押動部4cを駆動ギア歯4aから離れた位置(駆動源3と鏡筒1に対して対向する位置)に設けている。
【0027】
<第2実施形態>
以下に、本発明の第2実施形態に係るレンズ駆動アクチュエータについて説明する。
図5A及び
図5Bは本実施形態に係るレンズ駆動アクチュエータ200の断面図を示している。なお、本実施形態の基本的な構成は第1実施形態と同様であり、同じ構成については同じ符号を用いて説明を省略し、異なる構成についてのみ説明する。近年のスマートフォンSには防塵・防水機能が標準的に備わっていることが多く、本実施形態の鏡筒1(突出部)については、防塵・防水を目的とした構成が盛り込まれている。
【0028】
突出、収容動作をする鏡筒1は、上カバー2との間に動作するための隙間が必ず必要になるが、この隙間から細かなチリやホコリ、水滴等の異物が侵入する可能性がある。これを防止するために、鏡筒1の外周部に当接するように防塵部材8を配置することで、隙間を埋めている。防塵部材8は、鏡筒1に接しつつ、上カバー2と上カバー2の外面に設けられた外観カバー部材2bとの間に配置される。こうすることで、ユーザーに対する外観と、防塵・防水機能を同時に達成するとともに、部品点数の削減が可能となる。
【0029】
次に防塵部材8について詳細に説明する。
図5A及び
図5Bに示すように、防塵部材8は鏡筒1の外周形状に沿って隙間を埋める必要があるため、画一的な剛体では不適当である。部品個体ごとの微妙な形状の違いを補うように変形をすることが好ましいため、スポンジのように弾力を持って変形する素材、たとえばウレタンフォーム材のような素材が望ましく、本実施形態においては、ウレタンフォームを用いている。
【0030】
一方、鏡筒1の外周に当接するこの防塵部材8の当接圧力が強すぎたり、当接面の摩擦力が大きすぎたりすると、鏡筒1の動作の妨げとなってしまい、駆動源3のトルクに対して不利となる。その場合、より大きなトルクを出せるサイズの駆動源が必要になったり、より多くの減速ギアを用いて減速させる必要が発生し、ギア列が長く、大きくなったりしてしまう。そのため、防塵部材8の素材には、低圧力で形を変えられる素材が適当であり、その表面は低摩擦であることが求められる。たとえば、本実施形態のように防塵部材8の当接面側に摺動シート9の一例であるポリテトラフルオロエチレン製のシートを設けたり、防塵部材8の表面自体を炭素粒子のコーティング(DLCコート)で覆ったりするなどの手段をとることで、この目的を達成しやすくなる。
【0031】
次に、
図5の断面図を用いて防塵部材8について説明する。
図5Aでは鏡筒1が収容位置にある状態を、
図5Bでは鏡筒1が突出位置にある状態を示している。駆動源3からの駆動力がギア列を介して伝達されることによって、駆動カム部材4が回転されることで、その内部に設けられた鏡筒1が光軸方向に移動する。なお、説明のために鏡筒1の内部に配置されるレンズ群は省略して図示している。
図5Bに示す突出位置においては、第1実施形態において説明したように、鏡筒1の駆動ピン1bが上カバー2の突き当て部2aに突き当たることによって鏡筒1が突出位置に移動する。なお、
図5A及び
図5Bの断面図は後述の
図8におけるA-A断面である。
【0032】
このように、鏡筒1が収容位置から突出位置に移動する間、鏡筒1の外周面と防塵部材8とが摺接しており、上述したように防塵部材8の当接面側(内周面側)もしくは鏡筒1の外周面を低摩擦部材によって形成することで、鏡筒1の摺動性を向上しつつ、防塵・防水機能を確保することができる。
【0033】
また、
図6Aは、本実施形態に係るレンズ駆動アクチュエータ200において、説明のために鏡筒1を削除した状態の斜視図を示している。
【0034】
図6Bはそのうちの防塵部材8と摺動シート9のみを抜粋して示しており、環状に形成したうちの一部分が光軸方向に対して斜めに切断された切断部を有している。このように構成された防塵部材8は、接着などによって駆動カム部材4の内周面に貼り付けられている。防塵部材8と摺動シート9とは例えば接着によって一体に形成されているが、このように環状の一部を斜めに切断して形成することによって、駆動カム部材4に対して防塵部材8を貼り付ける際に、
図6Cの模式図に示すように防塵部材8の端部を光軸方向にずらしながら貼り付けることより、防塵部材8および駆動カム部材4の間で公差などによって生じるズレを吸収して、防塵部材8の周方向で隙間が生じないようにして駆動カム部材4に密着して貼り付けることができる。
【0035】
一方、防塵部材8を切断することによって、鏡筒1との密着性が低下することがある。本実施形態においては、駆動カム部材4における防塵部材8の切断部に対応する位置に、シート端部押さえ凸部4fを設けている。
図7には、本実施形態に係るレンズ駆動アクチュエータ200の分解斜視図を示している。なお、外観カバー部材2bと摺動シート9が設けられた防塵部材8を分解して表示し、鏡筒1は削除している。
【0036】
このように、駆動カム部材4のシート端部押さえ凸部4fが設けられた部分に防塵部材8の切断部が位置するようにして貼り付けられることで、上述した周方向への防塵、防水性を確保すると共に、シート端部押さえ凸部4fによって鏡筒1側に圧縮力を発揮しやすくして鏡筒1との密着性を向上することができる。
【0037】
なお、シート端部押さえ凸部4fの形状について、本実施形態においては、駆動カム部材4の内周面から三角柱状に突出する形状としているが、これに限られない。例えば、防塵部材8において斜めに設けられた切断部と周方向で重なる位置全体に亘って一様に突出するように設けても良いし、半円径の柱状に突出するように設けても良い。
【0038】
図8には、本実施形態におけるレンズ駆動アクチュエータ200の下面図を示している。基本的な構造は第1実施形態と同様であるが、本実施形態においては、駆動源3の駆動力を駆動ギア歯4aに伝達するためのギアが第1ギア21、第2ギア22、第3ギア23によって構成されている。本実施形態においては、第1実施形態のようにスリップクラッチは設けておらず、第1ギア21から第3ギア23まですべて段ギアで構成されており、その減速比を大きくしている。
【0039】
また、この第1ギア21、第2ギア22、第3ギア23のいずれも、駆動カム部材4の駆動ギア歯4aと光軸方向で重なるように配置されている。これによって段ギアを用いつつ、光軸と直交する方向(面方向)における省スペース化を図ることができる。
【0040】
本実施形態においては、駆動ギア歯4aが設けられた駆動カム部材4のフランジ部とは別に設けた外周部4eに被押動部4cを設けており、付勢部材6をレンズ駆動アクチュエータ200の筐体内において駆動源3と対角側に設けることでも、面方向における省スペース化をしている。
【0041】
また、
図8に示す鏡筒1の突出位置においては、PI1とPI2の両方を遮光部4dが遮光しており、収容位置に向けて駆動カム部材4を回動させるにつれて、まずPI2から遮光部4dが外れ、収容位置に到達したときにPI1から遮光部4dが外れる。したがって、PI1、PI2ともに遮光されているときは突出位置であり、ともに遮光されていないときは収容位置に対応する。
【0042】
以上の実施形態で説明したように、レンズ駆動アクチュエータ100、200は、その突出位置と収容位置とが切り替え可能であり、それを備えるスマートフォンSなどの携帯端末においては、その筐体から鏡筒1が突出する突出位置を撮像位置とし、撮像素子による撮像時に、防塵・防水性能を発揮しながら、鏡筒1を撮像位置に移動させて撮像を行うことができる。
【0043】
<第3実施形態>
以下、本発明の第三実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
図9A及び
図9Bは、本実施形態に係るレンズ駆動アクチュエータ300の斜視図である。
図9A及び
図9Bに示すように、レンズ駆動アクチュエータ300は、点線で示すスマートフォンSにおける背面側に設けられる。このレンズ駆動アクチュエータ300に対し、スマートフォンSの正面側には撮像素子としてのカメラモジュールが配置され、レンズ駆動アクチュエータ300内部に配置されるレンズによって撮像素子の撮像面に被写体像を結像する。
【0044】
図9A及び
図9Bに示すように、レンズ駆動アクチュエータ300は、光が通過する開口を有する上カバー302に対し、駆動モータ303を駆動することで、内部に光を透過するレンズが設けられた鏡筒
301を移動させ、
図9AのスマートフォンSの背面から突出する位置(突出位置)と、
図9Bの背面に収容される位置(収容位置)との間で切り替え可能になっている。なお、本実施形態においては、駆動モータ303としてステッピングモータを用いている。鏡筒301の位置の切り替えが終わると、駆動モータ303の駆動は切断される。鏡筒301が突出位置にある際に撮像位置として用いられ、カメラモジュールによる撮像が行われる。
【0045】
図10には、本実施形態に係るレンズ駆動アクチュエータ
300の分解斜視図を示している。駆動モータ303で発生した駆動力が第1ギア311から第3ギア313を通じて、駆動カム部材304に設けられた駆動ギア歯304aに伝達されることによって供給され、鏡筒301が光軸方向に移動する。
【0046】
鏡筒301、駆動カム部材304および各ギアは、上カバー302と下カバー305との間に設けられた空間に収容される。また、後述するように駆動カム部材304を付勢する付勢部材306も、これらと同様に上カバー302と下カバー305との間に設けられた空間に収容されている。
【0047】
ここで、駆動カム部材304に伝達された駆動力によって駆動カム部材304が回転すると、駆動カム部材304に設けられたカム溝304bと係合する、鏡筒301の外周面に設けられた駆動ピン301bが光軸方向にガイドされることで鏡筒301が光軸方向に移動する。
図11A及び
図11Bは、鏡筒301が突出位置にある状態を示している。
図11AはスマートフォンSの背面側の斜視図であり、
図11BはスマートフォンSの正面側の斜視図である。
【0048】
図11A及び
図11Bに示すように、カム溝304bは、鏡筒301を突出位置とする側の端部(突出側端部)においては、駆動カム部材304の回転に伴って常に鏡筒301が光軸方向に連続的に移動するようにカム溝304bが形成されており、他方、鏡筒301を収容位置とする側の端部(収容側端部)においては、駆動カム部材
304が回転しても鏡筒301が光軸方向に移動しないようにカム溝に不感帯が設けられている。なお、鏡筒
301が突出位置となる際に、駆動ピン301bはカム溝304bの突出側端部には当接しておらず、
図10に示す上カバー302に設けられた突き当て部302aに当接する。
【0049】
スマートフォンSにおいては、例えばカメラアプリが起動状態になった際に鏡筒301を突出位置に制御するが、この状態において、ユーザーがスマートフォンSの背面側を下にして机などに置いた場合や、ユーザーが指で鏡筒301の先端(背面側の端部)を押下してしまうと鏡筒301がスマートフォンSの正面側に移動しようとする。駆動モータ303から常時駆動伝達しておけば鏡筒301が正面側に移動してしまう外力が及ぼされても突出位置を保持できるが、電力消費が大きくなってしまう。
【0050】
それに対し、本実施形態においては、駆動カム部材304の突出側端部に不感帯を設けずに鏡筒301が正面側に移動し易い構成とした上で、鏡筒301に対して背面側に移動する付勢力を及ぼすように、付勢部材306を配置している。これによって、鏡筒301に対して正面側に移動させる外力が及ぼされたとしても、駆動モータ303を駆動しなくても付勢部材306の付勢力によって鏡筒301を突出位置に保持することができる。
【0051】
本実施形態における付勢部材306は板バネであり、弾性を有する板状の部材としている。
図11A及び
図11Bに示す付勢位置において、付勢部材306は駆動カム部材304の外周面に設けられた被押動部304cの斜面部を押しつけている。
図12には、本実施形態における付勢部材306および駆動カム部材304の正面図を示している。被押動部304cは斜面形状となっており、付勢部材306によって押動されることで駆動カム部材304を回転させ、駆動カム部材304を突出位置側に付勢している。これによって鏡筒301は、その突出位置付近においてはスマートフォンSの背面側に付勢されている。従って、ユーザーの操作などによる外力によって鏡筒301が正面側に押し込まれた場合にも、付勢部材306の付勢力によって、外力の解除後に鏡筒301を突出位置に復帰させることができる。
【0052】
また、付勢部材306は、鏡筒301が突出位置から収容位置に遷移するように駆動カム部材304が回転することに伴って、被押動部304cとの当接状態が解除され、被押動部304cとなめらかに接続された外周部304dに当接することとなる。このとき、付勢部材306は駆動カム部材304の回転方向に対しては付勢力を及ぼさずに、駆動カム部材304の回転動作を妨げない。
【0053】
より具体的には、
図12に示すように、板バネで構成された付勢部材306が被押動部304cの斜面部を押すことにより、斜面部にかかった力が駆動カム部材304の径方向と周方向とに分力される。周方向の力は、駆動カム部材304を突出位置側に付勢し、上述した作用を及ぼす。一方、径方向の力は、駆動カム部材304を駆動ギア歯304aが設けられた方向に付勢しており、後述するように駆動ギア歯304aと第3ギア313との間のガタ寄せを行うことができる。
【0054】
図13A及び
図13Bは、本実施形態に係るレンズ駆動アクチュエータ300の下面図(スマートフォンSの正面側から見た図)を示している。付勢部材306は、一端部が上カバー302に設けられたスリット部に取り付けられ、固定されている。他端部周辺は上カバー302が退避しており、弾性変形することができるように配置されている。
【0055】
上カバー302と下カバー305との間の空間内において、駆動モータ303のピニオン303aや駆動ギア歯304aが設けられた側とは、鏡筒301に対して反対側に付勢部材306を設けることによって、略円筒状の鏡筒301の周囲のスペースを有効に利用して省スペースに付勢部材306を配置することができる。
【0056】
また、一般的に平歯車で接続されたギアは、駆動力を伝達するときに、それらの軸間が離れる方向に力が発生する。平歯車で接続されている第3ギア313と駆動カム部材の駆動ギア歯304aも回転力を伝える際にそれらの軸間が離れる方向に力が発生するが、駆動モータ303のピニオン303aや駆動ギア歯304aが設けられた側とは鏡筒301に対して反対側に付勢部材306を設けることによって、歯車が離れる力を打ち消すよう付勢することができる。
【0057】
以上説明したように、本実施形態に係るレンズ駆動アクチュエータ300は、その突出位置と収容位置とが切り替え可能であり、突出位置においては、電力消費を抑えつつ精度よく突出状態を保持することが可能となっている。
【0058】
本実施形態に係るレンズ駆動アクチュエータ300を備えるスマートフォンSなどの携帯端末においては、その筐体から鏡筒301が突出する突出位置を撮像位置とし、撮像素子による撮像時に、鏡筒301を撮像位置に移動させて撮像を行うことができる。
【0059】
<第4実施形態>
以下に、本発明の第4実施形態に係るレンズ駆動アクチュエータについて説明する。なお、本実施形態の基本的な構成は第3実施形態と同様であり、同じ構成については同じ符号を用いて説明を省略し、異なる構成についてのみ説明する。
【0060】
図14には、第4実施形態に係るレンズ駆動アクチュエータ400の分解斜視図を示している。本実施形態では、付勢部材306を2つ備える。
図15A及び
図15Bには、第4実施形態に係るレンズ駆動アクチュエータ400の下面図(スマートフォンSの正面側から見た図)を示している。
【0061】
付勢部材306は、上カバー302に設けられた2箇所のスリット部に一端部が取り付けられ、固定されている。他端部周辺は上カバー302が退避しており、弾性変形することができるように配置されている。
【0062】
図15A及び
図15Bに示すように2つの付勢部材306は鏡筒301に対して略点対称に配置されている。これにより
図15Aに示すように鏡筒
301が繰り出し状態にあるときは、2つの付勢部材306が駆動カム部材304の2つの被押動部304cをそれぞれ押し付けることで、回転方向の偶力を発生させる。
図15Bに示すように鏡筒301が収納状態にあるときは、2つの付勢部材306の力が駆動カム部材304の径方向で対向して及ぼされ、打ち消しあう。
【0063】
なお、2つの付勢部材306が駆動カム部材304を押し付ける合力の向きを、鏡筒301から第3ギア313へ向かう方向と一致させると、歯車が離れようとする力を押さえつけることができ、より好ましい。
【0064】
以上、発明の実施形態について説明したが、発明は上記の実施形態に制限されるものではなく、発明の要旨の範囲内で、種々の変形・変更が可能である。