(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-31
(45)【発行日】2022-09-08
(54)【発明の名称】バイオアベイラビリティが高いアルボシジブプロドラッグ
(51)【国際特許分類】
A61K 31/675 20060101AFI20220901BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20220901BHJP
A61K 9/48 20060101ALI20220901BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20220901BHJP
A61K 47/04 20060101ALI20220901BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20220901BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20220901BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20220901BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20220901BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20220901BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220901BHJP
【FI】
A61K31/675
A61K9/20
A61K9/48
A61K45/00
A61K47/04
A61K47/12
A61K47/26
A61K47/38
A61P35/00
A61P35/02
A61P43/00 111
A61P43/00 123
(21)【出願番号】P 2021079708
(22)【出願日】2021-05-10
(62)【分割の表示】P 2020075973の分割
【原出願日】2016-05-18
【審査請求日】2021-06-07
(32)【優先日】2015-05-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】510055334
【氏名又は名称】スミトモ ファーマ オンコロジー, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】アダム シディクイ-ジェイン
(72)【発明者】
【氏名】デイビッド ジェイ.ベアス
【審査官】薄井 慎矢
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2006/101846(WO,A1)
【文献】特表2004-529125(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K A61P
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の構造(IB’):
【化1】
を有する化合物、またはその互変異性体、もしくは薬学的に許容され得る塩を含む、肉腫を処置するための医薬組成物。
【請求項2】
前記肉腫が、軟骨肉腫、線維肉腫、脂肪肉腫、粘液肉腫、骨肉腫、筋肉腫、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、血管肉腫、リンパ管肉腫、癌肉腫、葉状嚢肉腫、白血肉腫または粘液肉腫である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
構造(IB’)を有する化合物を含む、請求項1または2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
構造(IB’)を有する化合物の互変異性体を含む、請求項1または2に記載の医薬組成物。
【請求項5】
構造(IB’)を有する化合物の薬学的に許容され得る塩を含む、請求項1または2に記載の医薬組成物。
【請求項6】
薬学的に許容され得る担体または賦形剤をさらに含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項7】
下記の1つまたは複数をさらに含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の医薬組成物:結合剤、賦形剤、滑沢剤および流動促進剤。
【請求項8】
結合剤、賦形剤、滑沢剤および流動促進剤を含む、請求項7に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記結合剤が微晶質セルロースであり、前記賦形剤がラクトースであり、前記滑沢剤がステアリン酸マグネシウムであり、前記流動促進剤がコロイド状二酸化珪素である、請求項7または8に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記医薬組成物が、経口送達のために製剤化されている、請求項1~9のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記医薬組成物が、錠剤またはカプセル剤として製剤化されている、請求項1~10のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項12】
1つまたは複数のさらなる治療剤と組み合わせて使用するための、請求項1~11のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項13】
下記の構造(IB’):
【化2】
を有する化合物、またはその互変異性体、もしくは薬学的に許容され得る塩、および1つまたは複数のさらなる治療剤を含む、肉腫を処置するための医薬組成物。
【請求項14】
前記肉腫が、軟骨肉腫、線維肉腫、脂肪肉腫、粘液肉腫、骨肉腫、筋肉腫、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、血管肉腫、リンパ管肉腫、癌肉腫、葉状嚢肉腫、白血肉腫または粘液肉腫である、請求項13に記載の医薬組成物。
【請求項15】
構造(IB’)を有する化合物を含む、請求項13または14に記載の医薬組成物。
【請求項16】
構造(IB’)を有する化合物の互変異性体を含む、請求項13または14に記載の医薬組成物。
【請求項17】
構造(IB’)を有する化合物の薬学的に許容され得る塩を含む、請求項13または14に記載の医薬組成物。
【請求項18】
構造(IB’)を有する化合物、またはその互変異性体、もしくは薬学的に許容され得る塩、および薬学的に許容され得る担体もしくは賦形剤を含む医薬組成物を含む、請求項13~17のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項19】
構造(IB’)を有する化合物、またはその互変異性体、もしくは薬学的に許容され得る塩、および下記の1つもしくは複数を含む医薬組成物を含む、請求項13~17のいずれか一項に記載の医薬組成物:結合剤、賦形剤、滑沢剤および流動促進剤。
【請求項20】
結合剤、賦形剤、滑沢剤および流動促進剤を含む、請求項19に記載の医薬組成物。
【請求項21】
前記結合剤が微晶質セルロースであり、前記賦形剤がラクトースであり、前記滑沢剤がステアリン酸マグネシウムであり、前記流動促進剤がコロイド状二酸化珪素である、請求項19または20に記載の医薬組成物。
【請求項22】
構造(IB’)を有する化合物、またはその互変異性体、もしくは薬学的に許容され得る塩を含む前記医薬組成物が、経口送達のために製剤化されている、請求項18~21のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項23】
構造(IB’)を有する化合物、またはその互変異性体、もしくは薬学的に許容され得る塩を含む前記医薬組成物が、錠剤またはカプセル剤として製剤化されている、請求項18~22のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項24】
1つまたは複数のさらなる治療剤と組み合わせて使用するための、請求項18~23のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
背景
技術分野
本発明は、一般に、アルボシジブのホスフェートプロドラッグおよびがん処置のためのその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
関連技術の説明
サイクリン依存性キナーゼ(CDK)は、細胞周期のタイミングおよび協調を調節する重要な制御因子である。CDKは、その必須のサイクリンパートナーと可逆的な複合体を形成して、細胞周期における重大な時点からの移行を調節する。例えば、活性化されたCDK4-サイクリンD1複合体は細胞周期のG1期の通過を調節し、CDK1-サイクリンB1複合体は細胞周期の分裂期に入るのを調節する。内因性サイクリン依存性キナーゼ阻害タンパク質(CDKI)は、CDK成分またはサイクリン成分のいずれかに結合し、複合体のキナーゼ活性を阻害することが公知である。黒色腫、膵臓がん、および食道がんなどの多くの腫瘍において、これらの天然CDKIは存在しないか変異している。したがって、選択的CDKインヒビターは、有効な化学治療剤である可能性がある。
【0003】
アルボシジブ(フラボピリドールとしても公知)は、下記の構造:
【化1】
を有する合成フラボンである。
【0004】
アルボシジブは、CDKの強力且つ選択的なインヒビターであり、ヒトの肺癌および乳癌などの種々の腫瘍細胞系に対して抗腫瘍活性を有し、異種移植片モデルの腫瘍成長も阻害する。アルボシジブは、細胞周期のG1期およびG2期の両方の停止を誘導し、CDK9阻害によってポリメラーゼII駆動転写も阻害することが示されている。アルボシジブ処置は、陽性転写伸長因子またはP-TEFbとして公知の複合体の一部を形成するCDK9を阻害することにより、MYCなどの重要な癌遺伝子およびMCL1などの重要な抗アポトーシスタンパク質の発現を減少させる。したがって、アルボシジブは、魅力的ながんの治療剤であり、現在、再発性/難治性AML患者において臨床試験を実施しているところである。
【0005】
胃腸管に有毒であり、且つ経口バイオアベイラビリティが制限されるので、アルボシジブの経口投与は限定的である。さらに、前臨床研究により、アルボシジブ活性を最大にするには暴露時間を長くすることが重要であり得ることが示唆される。したがって、ヒト試験において持続静脈内注入スケジュールが広く検討されてきた。別の複合型投与(静脈内ボーラス投与後の低速注入が含まれる)も調査されているが、今日までに治療有効量のアルボシジブの経口送達については報告されていない。
【0006】
この分野は進歩しているが、当該技術分野では依然として、アルボシジブの経口バイオアベイラビリティを向上させることが必要とされている。本発明は、この要求を満たし、関連する利点を提供する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
簡単な概要
簡単には、本発明の実施形態は、アルボシジブ親化合物と比較してバイオアベイラビリティが高いアルボシジブのホスフェートプロドラッグを提供する。したがって、一実施形態では、下記の構造(I):
【化2】
を有する化合物またはその立体異性体、互変異性体、もしくは薬学的に許容され得る塩であって、ここで、
【0008】
R1、R2、またはR3のうちの1つは-P(=O)(OH)2であり、R1、R2、およびR3のうちの他の2つはそれぞれHである、化合物またはその立体異性体、互変異性体、もしくは薬学的に許容され得る塩を提供する。
【0009】
他の実施形態は、薬学的に許容され得る担体または賦形剤および構造(I)の化合物を含む医薬組成物に関する。サイクリン依存性キナーゼ(CDK)の過剰発現に関連する疾患の処置を、それを必要とする哺乳動物において行うための構造(I)の化合物およびこれを含む医薬組成物の使用方法も提供する。
【0010】
本発明のこれらおよび他の態様は、以下の詳細な説明を参照すると明らかになる。この目的を達成するために、特定の背景情報、手順、化合物、および/または組成物をより詳細に記載している種々のリファレンスを本明細書中に記載しており、これらのリファレンスは、それぞれ、参考としてそれらの全体が本明細書に援用される。
一実施形態において、例えば、以下の項目が提供される。
(項目1)
下記の構造(I):
【化15】
を有する化合物またはその立体異性体、互変異性体、もしくは薬学的に許容され得る塩であって、ここで、
R
1、R
2、またはR
3のうちの1つは-P(=O)(OH)
2であり、R
1、R
2、およびR
3のうちの他の2つはそれぞれHである、化合物またはその立体異性体、互変異性体、もしくは薬学的に許容され得る塩。
(項目2)
下記の構造(I’):
【化16】
を有する、項目1に記載の化合物。
(項目3)
下記の構造(IA):
【化17】
を有する、項目1に記載の化合物。
(項目4)
下記の構造(IA’):
【化18】
を有する、項目3に記載の化合物。
(項目5)
下記の構造(IB):
【化19】
を有する、項目1に記載の化合物。
(項目6)
下記の構造(IB’):
【化20】
を有する、項目5に記載の化合物。
(項目7)
下記の構造(IC):
【化21】
を有する、項目1に記載の化合物。
(項目8)
下記の構造(IC’):
【化22】
を有する、項目7に記載の化合物。
(項目9)
項目1~8のいずれか1項に記載の化合物の薬学的に許容され得る塩。
(項目10)
前記薬学的に許容され得る塩が塩基付加塩である、項目9に記載の薬学的に許容され得る塩。
(項目11)
前記薬学的に許容され得る塩がナトリウム塩である、項目10に記載の薬学的に許容され得る塩。
(項目12)
前記薬学的に許容され得る塩が酸付加塩である、項目9に記載の薬学的に許容され得る塩。
(項目13)
前記薬学的に許容され得る塩が塩酸塩である、項目12に記載の薬学的に許容され得る塩。
(項目14)
薬学的に許容され得る担体または賦形剤および項目1~13のいずれか1項に記載の化合物を含む医薬組成物。
(項目15)
前記医薬組成物が経口送達のために製剤化されている、項目14に記載の医薬組成物。
(項目16)
サイクリン依存性キナーゼ(CDK)の過剰発現に関連する疾患の処置を、それを必要とする哺乳動物において行う方法であって、治療有効量の項目1~13のいずれか1項に記載の化合物または項目14もしくは15のいずれか1項に記載の組成物を前記哺乳動物に投与する工程を含む、方法。
(項目17)
前記疾患ががんである、項目16に記載の方法。
(項目18)
前記がんが血液学的がんである、項目17に記載の方法。
(項目19)
前記血液学的がんが、急性骨髄白血病(AML)、多発性骨髄腫、濾胞性リンパ腫、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、慢性リンパ性白血病(CLL)、および非ホジキンリンパ腫から選択される、項目18に記載の方法。
(項目20)
前記血液がんが急性骨髄白血病(AML)である、項目19に記載の方法。
(項目21)
前記血液学的がんが慢性リンパ性白血病(CLL)である、項目19に記載の方法。
(項目22)
前記血液学的がんが骨髄異形成症候群(MDS)である、項目18に記載の方法。
(項目23)
前記方法が、項目1~13のいずれか1項に記載の化合物または項目14もしくは15のいずれか1項に記載の組成物を前記哺乳動物に経口投与する工程を含む、項目16~22のいずれか1項に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、化合物IBをスプレーグ・ドーリーラットに投与した後のアルボシジブおよび化合物IBの薬物動態学的プロフィールを示す。
【0012】
【
図2A】
図2A~Dは、単一用量(
図2A~Bは経口、
図2C~Dは静脈内)のアルボシジブまたは化合物IBで処置したマウスの体重を示す。
【
図2B】
図2A~Dは、単一用量(
図2A~Bは経口、
図2C~Dは静脈内)のアルボシジブまたは化合物IBで処置したマウスの体重を示す。
【
図2C】
図2A~Dは、単一用量(
図2A~Bは経口、
図2C~Dは静脈内)のアルボシジブまたは化合物IBで処置したマウスの体重を示す。
【
図2D】
図2A~Dは、単一用量(
図2A~Bは経口、
図2C~Dは静脈内)のアルボシジブまたは化合物IBで処置したマウスの体重を示す。
【0013】
【
図3A】
図3A~Dは、一日用量(
図3A~Bは経口、
図3C~Dは静脈内)のアルボシジブまたは化合物IBで処置したマウスの体重を示す。
【
図3B】
図3A~Dは、一日用量(
図3A~Bは経口、
図3C~Dは静脈内)のアルボシジブまたは化合物IBで処置したマウスの体重を示す。
【
図3C】
図3A~Dは、一日用量(
図3A~Bは経口、
図3C~Dは静脈内)のアルボシジブまたは化合物IBで処置したマウスの体重を示す。
【
図3D】
図3A~Dは、一日用量(
図3A~Bは経口、
図3C~Dは静脈内)のアルボシジブまたは化合物IBで処置したマウスの体重を示す。
【0014】
【
図4】
図4A~Bは、単一用量(経口)のアルボシジブまたは化合物IBで処置したラットの体重および飼料消費を示す。
【0015】
【
図5A】
図5A~Bは、異種移植片有効性研究中の化合物IB投与後のin vivo腫瘍体積および体重を示す。
【
図5B】
図5A~Bは、異種移植片有効性研究中の化合物IB投与後のin vivo腫瘍体積および体重を示す。
【0016】
【
図6】
図6A~Bは、異種移植片薬力学研究中の化合物IBでの処置後のMCL-1タンパク質発現の減少を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
詳細な説明
以下の説明において、本発明の種々の実施形態の充分な理解をもたらすために特定の具体的な詳細な説明を示す。しかしながら、当業者には、本発明がこれらの詳細な説明なしに実施され得ることが理解されよう。
【0018】
文脈からそうでないことが必要とされない限り、本明細書および特許請求の範囲全体を通して、文言「含む(comprise)」およびその語尾変化形、例えば、「含む(comprises)」および「含んでいる(comprising)」は、非限定で包含的な意味、すなわち「含むが、それらに限定されない(including, but not limited to)」と解釈されたい。
【0019】
本明細書全体を通して、「一実施形態(one embodiment)」または「一実施形態(an embodiment)」に対する言及は、該実施形態に関して記載した特定の特性、構造または特徴が本発明の少なくとも一つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書全体における種々の箇所での語句「一実施形態において(in one embodiment)」または「一実施形態において(in an embodiment)」の出現は、必ずしもすべてが同じ実施形態に言及している訳ではない。さらに、具体的な特性または特徴は、1つまたはそれを超える実施形態において任意の好適な手法で組み合わされ得る。
【0020】
本発明の実施形態は、アルボシジブのホスフェートプロドラッグを含む。「ホスフェート」は、-OP(=O)(OH)2部分を指す。説明を容易にするために、本明細書中のホスフェート部分を、しばしば、二プロトン化形態で示すが、ホスフェート部分は、pHに応じて、一プロトン化形態(-OP(=O)(OH)(O-))および非プロトン化形態(-OP(=O)(O-)2)でも存在する。一プロトン化形態および非プロトン化形態は、典型的には、化合物が薬学的に許容され得る塩の形態であるように、対イオンと会合するであろう。かかる一プロトン化形態および非プロトン化形態、ならびにその薬学的に許容され得る塩は、化学構造中に具体的に例示しない場合でさえ、本発明の範囲内に含まれる。
【0021】
「プロドラッグ」は、生理学的条件下で、または加溶媒分解によって本明細書中に記載される生物学的活性化合物(例えば、構造(I)の化合物)に変換され得る化合物を示すことを意図する。したがって、用語「プロドラッグ」は、薬学的に許容され得る、生物学的活性化合物の前駆体を指す。いくつかの態様において、プロドラッグは、被験体に投与されたときは不活性であるが、インビボで、例えば、加水分解によって活性化合物に変換されるものである。プロドラッグ化合物は、多くの場合、哺乳動物生物において可溶性、組織適合性または放出遅延の利点をもたらす(例えば、Bundgard, H., Design of Prodrugs (1985), pp. 7-9, 21-24
(Elsevier,Amsterdam)を参照)。プロドラッグの考察は、Higuchi, T.ら, "Pro-drugsasNovelDelivery Systems," A.C.S. Sy
mposium Series, Vol. 14, and in Bioreversible Carriers in Drug Design, Ed. Edward B. Roche, American Pharmaceutical Association and Pergamon Press,1987に示されている。これらの両方ともが、参考により本明細書中に全体が援用される。
【0022】
「本発明の化合物」は、本明細書中に定義の構造(I)の化合物およびその下位構造の化合物を指す。
【0023】
また、本明細書に開示した本発明の実施形態は、異なる原子質量または質量数を有する原子で置き換えられた1個またはそれ超の原子を有することによって同位体標識された構造(I)の薬学的に許容され得るあらゆる化合物を包含していることを意図する。開示した化合物に組み込まれ得る同位体の例としては、水素、炭素、窒素、酸素、リン、フッ素、塩素およびヨウ素の同位体、例えば、それぞれ、2H、3H、11C、13C、14C、13N、15N、15O、17O、18O、31P、32P、35S、18F、36Cl、123I、および125Iが挙げられる。これらの放射性標識化合物は、例えば、作用部位または作用様式または薬理学的に重要な作用部位に対する結合親和性を特性評価することにより該化合物の有効性を決定するかまたは測定することを補助するのに有用であり得る。構造(I)の特定の同位体標識化合物、例えば、放射性同位体が組み込まれたものは、薬物および/または基質の組織分布試験に有用である。放射性同位体トリチウム、すなわち3H、および炭素-14、すなわち14Cは、組込みの容易性および容易な検出手段に鑑みると、この目的に対して特に有用である。
【0024】
より重い同位体(例えば、重水素(すなわち2H))での置換により、代謝安定性が大きくなることに起因する特定の治療上の利点、例えば、インビボ半減期の増大または必要投薬量の低減がもたらされ得、したがって一部の状況では好ましいことであり得る。
【0025】
陽電子放出同位体、例えば、11C、18F、15Oおよび13Nでの置換は、基質受容体占有を調べるための陽電子放出断層撮影(PET)試験に有用であり得る。構造(I)の同位体標識化合物は、一般的に、当業者に公知の慣用的手法によって、または先に使用した非標識試薬の代わりに適切な同位体標識試薬を用いる、以下に示す実施例および調製に記載のプロセスと類似のプロセスによって調製され得る。
【0026】
また、本明細書に開示した本発明の実施形態は、開示した化合物のインビボ代謝産物を包含することを意図する。このような産物は、例えば、投与された化合物の、主に酵素的プロセスによる酸化、還元、加水分解、アミド化、エステル化などの結果として生じるものであり得る。したがって、本発明の実施形態は、本発明の化合物を哺乳動物に、その代謝産物が生成されるのに充分な期間投与することを含むプロセスによってもたらされる化合物を包含する。このような産物は、典型的には、放射性標識した本発明の化合物を、検出可能な用量で動物(ラット、マウス、モルモット、サルなど)またはヒトに投与し、代謝が起きるのに充分な期間を与え、その変換生成物を尿、血液または他の生物学的試料から単離することにより確認される。
【0027】
「薬学的に許容され得る担体、希釈剤または賦形剤」としては、限定されないが、任意の補助剤、担体、賦形剤、流動促進剤、甘味剤、希釈剤、保存剤、色素/着色剤、フレーバー向上剤、界面活性剤、湿潤剤、分散剤、懸濁化剤、安定剤、等張化剤(isotonic agent)、溶媒、または乳化剤などであって、米国食品医薬品局によってヒトまたは飼育動物における使用に対して許容され得ると承認されたものが挙げられる。
【0028】
「薬学的に許容され得る塩」には酸付加塩と塩基付加塩の両方が包含される。
【0029】
「薬学的に許容され得る酸付加塩」は、遊離塩基の生物学的有効性および特徴を保持しており、生物学的にもその他の点でも望ましくないものではなく、無機酸、例えば限定されないが、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸など、および有機酸、例えば限定されないが、酢酸、2,2-ジクロロ酢酸、アジピン酸、アルギン酸、アスコルビン酸、アスパラギン酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、4-アセトアミド安息香酸、ショウノウ酸、カンフル-10-スルホン酸、カプリン酸、カプロン酸、カプリル酸、炭酸、桂皮酸、クエン酸、シクラミン酸、ドデシル硫酸、エタン-1,2-ジスルホン酸、エタンスルホン酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、ギ酸、フマル酸、ガラクタル酸、ゲンチシン酸、グルコヘプトン酸、グルコン酸、グルクロン酸、グルタミン酸、グルタル酸、2-オキソ-グルタル酸、グリセロリン酸、グリコール酸、馬尿酸、イソ酪酸、乳酸、ラクトビオン酸、ラウリン酸、マレイン酸、リンゴ酸、マロン酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、ムチン酸、ナフタレン-1,5-ジスルホン酸、ナフタレン-2-スルホン酸、1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、ニコチン酸、オレイン酸、オロチン酸、シュウ酸、パルミチン酸、パモ酸、プロピオン酸、ピログルタミン酸、ピルビン酸、サリチル酸、4-アミノサリチル酸、セバシン酸、ステアリン酸、コハク酸、酒石酸、チオシアン酸、p-トルエンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、ウンデシレン酸などと形成される塩を指す。
【0030】
「薬学的に許容され得る塩基付加塩」は、遊離酸の生物学的有効性および特徴を保持しており、生物学的にもその他の点でも望ましくないものではない塩を指す。これらの塩は、無機塩基または有機塩基を遊離酸に添加することによって調製される。無機塩基から誘導される塩としては、限定されないが、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、アンモニウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、鉄塩、亜鉛塩、銅塩、マンガン塩、アルミニウム塩などが挙げられる。好ましい無機塩は、アンモニウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩およびマグネシウム塩である。有機塩基から誘導される塩としては、限定されないが、第一級、第二級および第三級のアミン、置換アミン(例えば、天然に存在する置換アミン)、環状アミンおよび塩基性イオン交換樹脂の塩、例えば、アンモニア、イソプロピルアミン、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、ジエタノールアミン、エタノールアミン、デアノール、2-ジメチルアミノエタノール、2-ジエチルアミノエタノール、ジシクロヘキシルアミン、リシン、アルギニン、ヒスチジン、カフェイン、プロカイン、ヒドラバミン、コリン、ベタイン、ベネタミン、ベンザチン、エチレンジアミン、グルコサミン、メチルグルカミン、テオブロミン、トリエタノールアミン、トロメタミン、プリン、ピペラジン、ピペリジン、N-エチルピペリジン、ポリアミン樹脂などの塩が挙げられる。特に好ましい有機塩基は、イソプロピルアミン、ジエチルアミン、エタノールアミン、トリメチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、コリンおよびカフェインである。
【0031】
多くの場合、晶出によって本発明の化合物の溶媒和物が生成される。本明細書において使用される場合、用語「溶媒和物」は、本発明の化合物の一つまたはそれ超の分子を、溶媒の一つまたはそれ超の分子と共に含む凝集体を指す。溶媒は水であってもよく、その場合、溶媒和物は水和物であり得る。あるいはまた、溶媒は有機溶媒であってもよい。したがって、本発明の化合物の実施形態は、水和物(例えば、一水和物、二水和物、半水和物、セスキ水和物、三水和物、四水和物など)、ならびに対応する溶媒和形態として存在し得る。本発明の化合物の実施形態は真の溶媒和物であり得るが、場合によっては、本発明の化合物は、単に付随的な水分を保持したものであっても、水といくらかの付随的な溶媒との混合物であってもよい。
【0032】
「医薬組成物」は、本発明の化合物と、生物学的活性化合物を哺乳動物(例えば、ヒト)に送達するための当該技術分野で一般的に許容されている媒体との製剤を指す。このような媒体としては、薬学的に許容され得るあらゆる担体、希釈剤または賦形剤が挙げられる。
【0033】
「哺乳動物」は、ヒトならびに飼育動物(例えば、実験動物および家庭用ペット(例えば、ネコ、イヌ、ブタ、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、ウサギ))と非飼育動物(例えば、野生生物など)の両方を包含する。
【0034】
「有効量」または「治療有効量」は、哺乳動物(好ましくは、ヒト)に投与されると、該哺乳動物(好ましくは、ヒト)において、以下に定義される、サイクリン依存性キナーゼ(CDK)の過剰発現に関連する疾患の処置が行われるのに充分な本発明の化合物の量を指す。「治療有効量」を構成する本発明の化合物の量は、該化合物、状態およびその重症度、投与手法、処置される哺乳動物の年齢に応じて異なるが、当業者は、自身の知識と本開示を考慮して常套的に決定され得る。
【0035】
本明細書において使用される場合、「処置する」または「処置」は、対象の疾患または状態を有する哺乳動物(好ましくは、ヒト)の該対象の疾患または状態の処置を包含し、また、
(i)哺乳動物において、該疾患または状態が発生するのを予防すること(特に、このような哺乳動物が該状態に罹りやすいが、該状態を有するとは未だ診断されていない場合);
(ii)該疾患または状態を抑制すること、すなわち、その発症を止めること;
(iii)該疾患または状態を軽減すること、すなわち、該疾患または状態の後退をもたらすこと;あるいは
(iv)該疾患または状態に起因する症状を軽減すること、すなわち、根源的な疾患または状態に取り組まずに痛みを軽減することを含む。本明細書において使用される場合、用語「疾患」および「状態」は互換的に使用され得るか、あるいは、具体的な疾病または状態が既知の原因因子を有していなくともよく(その結果、病因がまだ解明されていない)、したがって、それはまだ疾患と認識されていないが単に望ましくない状態または症候群とだけ認識されており、臨床医によって多かれ少なかれ具体的な1セットの症状が確認されているという点で異なり得る。
【0036】
本発明の化合物またはその薬学的に許容され得る塩は、一つまたはそれ超の不斉中心を含むものであってもよく、したがって、エナンチオマー、ジアステレオマーおよび他の立体異性体形態(絶対立体化学に関して(R)-もしくは(S)-、またはアミノ酸では(D)-もしくは(L)-で規定され得るもの)が生じるものであってもよい。本発明は、このような可能な異性体のすべて、ならびにそのラセミ化合物および光学的に純粋な形態を包含することを意図する。光学活性な(+)および(-)、(R)-および(S)-、または(D)-および(L)-異性体は、キラルシントンまたはキラル試薬を用いて調製したものであっても、慣用的手法、例えばクロマトグラフィおよび分別結晶を用いて分割したものであってもよい。個々のエナンチオマーの調製/単離のための慣用的手法としては、適当な光学的に純粋な前駆物質からのキラル合成、または、例えば、キラル高速液体クロマトグラフィ(HPLC)を使用するラセミ化合物(あるいは塩もしくは誘導体のラセミ化合物)の分割が挙げられる。本明細書に記載の化合物がオレフィン性二重結合または他の幾何学的不斉中心を含むものである場合、特に記載のない限り、該化合物は、EとZの両方の幾何異性体を包含することを意図する。同様に、あらゆる互変異性体形態も包含されることを意図する。
【0037】
「立体異性体」は、同じ結合によって結合された同じ原子から構成されているが、異なる3次元構造を有し、互換的でない化合物を指す。本発明の実施形態では、種々の立体異性体およびその混合物が想定され、二つの立体異性体分子が互いに重なり合うことができない鏡像である二つの立体異性体を指す「エナンチオマー」を包含する。
【0038】
「互変異性体」は、分子のある一つの原子から同じ分子の別の原子へのプロトンシフトを指す。本発明の実施形態は、任意の上記化合物の互変異性体を包含する。
I.化合物
【0039】
上述のように、本開示の実施形態は、親化合物と比較してバイオアベイラビリティが高いアルボシジブのプロドラッグに関する。驚いたことに、本発明の裏付けとして行った実験では、CD-1マウスに経口送達させた場合にアルボシジブのモノホスフェートアナログのバイオアベイラビリティが親アルボシジブ化合物のおよそ1.3倍であり、関連するジホスフェートプロドラッグの8倍超であることを証明している。本開示のモノホスフェート化合物はin vivoでアルボシジブに代謝され、理論に拘束されることを望まないが、アルボシジブ親化合物と比較した、モノホスフェートプロドラッグから放出されたアルボシジブのバイオアベイラビリティの増加は、アルボシジブと比較したプロドラッグの代謝速度の低下に関連すると考えられる。本発明の化合物の他の期待される利点には、典型的な医薬製剤、水、および体液中での溶解度の増加、ならびに経口投与された場合のアルボシジブ親化合物と比較した毒性の減少が含まれる。
【0040】
したがって、一実施形態において、下記の構造(I):
【化3】
を有する化合物、またはその立体異性体、互変異性体、もしくは薬学的に許容され得る塩であって、ここで、
R
1、R
2、またはR
3のうちの1つは-P(=O)(OH)
2であり、R
1、R
2、およびR
3のうちの他の2つはそれぞれHである、化合物、またはその立体異性体、互変異性体、もしくは薬学的に許容され得る塩を提供する。
【0041】
特定の実施形態において、化合物は、下記の構造(I’):
【化4】
を有する。
【0042】
いくつかの他の実施形態において、化合物は、下記の構造(IA):
【化5】
を有する。
【0043】
いくつかのさらなる実施形態において、化合物は、下記の構造(IA’):
【化6】
を有する。
【0044】
また他の実施形態において、化合物は、下記の構造(IB):
【化7】
を有する。
【0045】
他の異なる実施形態において、化合物は、下記の構造(IB’):
【化8】
を有する。
【0046】
なおさらなる実施形態において、化合物は、下記の構造(IC):
【化9】
を有する。
【0047】
いくつかの他の異なる実施形態において、化合物は、下記の構造(IC’):
【化10】
を有する。
【0048】
いくつかの実施形態において、前述の化合物のいずれかは薬学的に許容され得る塩の形態である。塩は、酸付加塩または塩基付加塩であり得る。例えば、塩は、N-メチルピペラジン部分のプロトン化によって形成されたアミン塩(例えば、HCl塩など)であり得る。他の実施形態において、塩はホスフェートで形成され、化合物はリン酸基のモノ塩またはジ塩の形態である(例えば、リン酸一ナトリウム塩またはリン酸二ナトリウム塩など)。前述の化合物の全ての薬学的に許容され得る塩は、本発明の範囲に含まれる。
【0049】
薬学的に許容され得る担体または賦形剤および前述の化合物のいずれか(すなわち、構造(I)、(I’)、(IA)、(IA’)、(IB)、(IB’)、(IC)、または(IC’)の化合物)を含む医薬組成物も提供する。有利には、本開示の化合物は、アルボシジブ親化合物と比較してバイオアベイラビリティが高く、したがって、特定の実施形態は、経口送達用に製剤化された、前述の医薬組成物に関する。当業者が誘導可能な他の担体および/または賦形剤に加えて、経口製剤のための当該分野で公知の担体および/または賦形剤のいずれかをこれらの実施形態で使用することができる。
【0050】
投与目的で、本発明の化合物を未加工の化学物質として投与してもよく、医薬組成物として製剤化してもよい。本発明の医薬組成物の実施形態は、構造(I)の化合物および薬学的に許容され得る担体、希釈剤または賦形剤を含むものである。構造(I)の化合物は該組成物中に、対象の特定の疾患または状態を処置するのに有効な量で、すなわち、典型的には、サイクリン依存性キナーゼ(CDK)の過剰発現に関連する疾患を処置するのに充分な量で、好ましくは患者に対する許容可能な毒性を伴って、存在する。構造(I)の化合物のバイオアベイラビリティは当業者により、例えば、以下の実施例に記載のとおりに決定され得る。適切な濃度および投薬量は、当業者が容易に決定することができる。
【0051】
本発明の化合物またはその薬学的に許容され得る塩の純粋な形態または適切な医薬組成物での投与は、同様の有用性を提供するための剤の許容されている投与様式のいずれかによって行われ得る。本発明の実施形態の医薬組成物は、本発明の化合物を適切な薬学的に許容され得る担体、希釈剤または賦形剤と合わせることにより調製され得、固体、半固体、液体またはガス状形態の調製物、例えば、錠剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤、軟膏、液剤、坐剤、注射剤、吸入剤、ゲル剤、ミクロスフェアおよびエーロゾル剤などに製剤化され得る。このような医薬組成物の典型的な投与経路としては、限定されないが、経口、局所的、経皮、吸入、非経口、舌下、口腔内、経直腸、経膣および鼻腔内が挙げられる。本明細書において使用される非経口という用語は、皮下注射、静脈内、筋肉内、胸骨内注射または輸注手法を包含している。本発明の医薬組成物は、該組成物が患者に投与されたときに、該組成物中に含有されている活性成分が生物学的に利用可能となるように製剤化される。被験体または患者に投与される組成物は、一またはそれ超の投薬単位の形態を採り、ここで、例えば、錠剤は単回投薬単位であり得、エーロゾル形態の本発明の化合物の容器は、複数の投薬単位を収容するものであり得る。このような投薬形態の実際の調製方法は、当業者に公知であるか、明らかとなる。例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy,第20版(Philadelphia College of Pharmacy and Science,2000)参照。投与される組成物は、いずれの場合も、本発明の教示に従って対象の疾患または状態を処置するための治療有効量の本発明の化合物またはその薬学的に許容され得る塩を含むものである。
【0052】
本発明の一部の実施形態の医薬組成物は固体または液体の形態であり得る。一態様において、担体(1種類または複数種)は微粒子状であり、その結果、該組成物は、例えば錠剤または散剤の形態である。該組成物が、例えば、経口シロップ剤、注射用液体またはエーロゾル剤(これは、例えば吸入投与に有用である)である場合、担体(1種類または複数種)は液体であってよい。
【0053】
経口投与が意図される場合、医薬組成物は、好ましくは固体形態または液体形態のいずれかであり、この場合、半固体、半液体、懸濁物およびゲルの形態は、本明細書において固体または液体のいずれかとみなされる形態の範囲内に包含される。
【0054】
経口投与のための固体組成物として、医薬組成物は、散在、顆粒剤、圧縮錠剤、丸剤、カプセル剤、チューインガム、オブラートなどの形態に製剤化され得る。このような固体組成物には、典型的には1種類またはそれ超の不活性な希釈剤または食用担体が含有される。また、以下の結合剤(カルボキシメチルセルロース、エチルセルロース、微晶質セルロース、トラガカントガムまたはゼラチンなど);賦形剤(デンプン、ラクトースまたはデキストリンなど)、崩壊剤(例えば、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、プリモゲル、コーンスターチなど);滑沢剤(ステアリン酸マグネシウムまたはSterotexなど);流動促進剤(コロイド状二酸化珪素など);甘味剤(スクロースまたはサッカリンなど);矯味矯臭剤(ペパーミント、サリチル酸メチルまたはオレンジフレーバーなど);ならびに着色剤のうちの1種類またはそれ超を存在させてもよい。
【0055】
医薬組成物がカプセル剤(例えば、ゼラチンカプセル剤)の形態である場合、それは、上記の種類の物質に加えて、ポリエチレングリコールまたは油などの液体担体を含有し得る。
【0056】
医薬組成物は、液体の形態、例えば、エリキシル剤、シロップ剤、液剤、乳剤または懸濁剤であり得る。該液体は、二つの例として経口投与のため、または注射による送達のためのものであり得る。経口投与が意図される場合、好ましい組成物は、本発明の化合物に加えて、甘味剤、保存剤、色素/着色剤およびフレーバー向上剤のうちの1種類またはそれ超を含有する。注射による投与が意図される組成物には、界面活性剤、保存剤、湿潤剤、分散剤、懸濁化剤、緩衝剤、安定剤および等張化剤のうちの1種類またはそれ超が含められ得る。
【0057】
本発明の一部の実施形態の液体医薬組成物は、それが液剤、懸濁剤、他の同様の形態のいずれであっても、以下の佐剤:滅菌希釈剤、例えば、注射用水、食塩水、好ましくは、生理食塩水、リンゲル液、等張性塩化ナトリウム、固定油(溶媒または懸濁媒体としての機能を果たし得る合成モノグリセリドまたは合成ジグリセリドなど)、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールまたは他の溶媒;抗菌剤(ベンジルアルコールまたはメチルパラベンなど);抗酸化剤(アスコルビン酸または重亜硫酸ナトリウムなど);キレート化剤(エチレンジアミン四酢酸など);緩衝剤(酢酸塩、クエン酸塩またはリン酸塩など)および張度調整のための剤(塩化ナトリウムまたはデキストロースなど)のうちの1種類またはそれ超を含み得る。非経口調製物は、ガラスまたはプラスチック製のアンプル、使い捨てシリンジまたは複数回用量バイアル内に封入され得る。生理食塩水は好ましい佐剤である。注射用医薬組成物は、好ましくは滅菌されたものである。
【0058】
非経口投与または経口投与のいずれかが意図される本発明のある特定の実施形態の液体医薬組成物は、適当な投薬量が得られるような量の本発明の化合物を含有するべきである。
【0059】
一部の実施形態において、本発明の医薬組成物は、局所投与が意図されるものであってもよく、その場合、担体は、適切に液剤、乳剤、軟膏またはゲル剤の基剤を構成するものであり得る。基剤は、例えば、以下のワセリン、ラノリン、ポリエチレングリコール、蜜蝋、鉱油、希釈剤(水およびアルコールなど)、ならびに乳化剤および安定剤のうちの1種類またはそれ超を含むものであり得る。局所投与のための医薬組成物に増粘剤を存在させてもよい。経皮投与が意図される場合、該組成物としては経皮パッチまたはイオン導入デバイスが挙げられ得る。
【0060】
本発明の種々の実施形態の医薬組成物は、例えば坐剤(これは直腸内で融解して薬物を放出する)の形態で経直腸投与が意図されるものであってもよい。経直腸投与のための組成物は、油性基剤を適当な非刺激性賦形剤として含有し得る。かかる基剤としては、限定されないが、ラノリン、ココアバターおよびポリエチレングリコールが挙げられる。
【0061】
本発明の医薬組成物の実施形態は、固体または液体の投薬単位の物理的形状を変更する種々の物質を含んでもよい。例えば、該組成物は、活性成分の周囲にコーティング殻を形成する物質を含んでもよい。コーティング殻を形成する物質は典型的には不活性であり、例えば、糖、シェラックおよび他の腸溶性コーティング剤から選択され得る。あるいは、活性成分はゼラチンカプセル剤に内包されてもよい。
【0062】
固体または液体形態の本発明の一部の実施形態の医薬組成物に、本発明の化合物に結合することによって該化合物の送達を補助する物質を含めてもよい。この能力において作用し得る好適な物質としては、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、タンパク質またはリポソームが挙げられる。
【0063】
本発明の他の実施形態の医薬組成物は、エーロゾル剤として投与され得る投薬単位からなるものであってもよい。エーロゾル剤という用語は、コロイド状の性質のものから加圧パッケージからなるシステムに及ぶさまざまな系を表すために使用される。送達は、液化ガスもしくは圧縮ガスによる送達、または活性成分を分注する適当なポンプシステムによる送達であり得る。本発明の化合物のエーロゾル剤は、活性成分(1種類または複数種)を送達するために単相、二相系または三相系で送達され得る。エーロゾル剤の送達には、必要な容器、活性化因子、弁、補助容器などが含まれ、これらを一緒にしてキットを構成してもよい。当業者は、過度の実験をすることなく、好ましいエーロゾル剤を決定し得る。
【0064】
一部の実施形態において、本発明の医薬組成物は、製薬技術分野で周知の方法論によって調製され得る。例えば、注射による投与が意図される医薬組成物は、液剤が形成されるように、本発明の化合物を滅菌蒸留水と合わせることにより調製され得る。均一な液剤または懸濁剤の形成を助長するために界面活性剤を添加してもよい。界面活性剤は、水性送達系中への本発明の化合物の溶解または均一な懸濁が助長されるように該化合物と非共有結合で相互作用する化合物である。
【0065】
本発明の化合物またはその薬学的に許容され得る塩は治療有効量で投与され、治療有効量は、さまざまな要素、例えば、使用される具体的な化合物の活性;該化合物の代謝安定性および作用の長さ;患者の年齢、体重、一般健康状態、性別および食生活;投与の様式および時間;排出速度;薬物の併用;具体的な障害または状態の重症度;ならびに被験体が受けている治療法に応じて異なる。
【0066】
また、本発明の化合物またはその薬学的に許容され得る誘導体は、1種類またはそれ超の他の治療剤の投与と同時、該投与前または該投与後に投与され得る。このような併用療法は、本発明の化合物と1種類またはそれ超のさらなる活性剤を含む単一の医薬投薬製剤の投与、ならびに本発明の化合物および各活性剤の、それ自体の別々の医薬投薬製剤での投与を包含する。例えば、本発明の化合物と該他の活性剤は、患者に、単一の経口投薬組成物(錠剤もしくはカプセル剤など)で一緒に投与されてもよく、各剤が、別々の経口投薬製剤で投与されてもよい。別々の投薬製剤を使用する場合、本発明の化合物および1種類またはそれ超のさらなる活性剤は、本質的に同時に(すなわち、同時進行で)投与されてもよく、別々に時差的に(すなわち、逐次)投与されてもよい。併用療法は、これらのあらゆるレジメンを包含していると理解される。
【0067】
いくつかの実施形態において、本発明の医薬組成物中に含まれる構造(I)の化合物の濃度は、100%、90%、80%、70%、60%、50%、40%、30%、20%、19%、18%、17%、16%、15%,14%、13%、12%、11%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、0.5%、0.4%、0.3%、0.2%、0.1%、0.09%、0.08%、0.07%、0.06%、0.05%、0.04%、0.03%、0.02%、0.01%、0.009%、0.008%、0.007%、0.006%、0.005%、0.004%、0.003%、0.002%、0.001%、0.0009%、0.0008%、0.0007%、0.0006%、0.0005%、0.0004%、0.0003%、0.0002%、または0.0001%(w/w、w/v、またはv/v)未満である。
【0068】
いくつかの実施形態において、本発明の医薬組成物中に含まれる構造(I)の化合物の濃度は、90%、80%、70%、60%、50%、40%、30%、20%、19.75%、19.50%、19.25% 19%、18.75%、18.50%、18.25% 18%、17.75%、17.50%、17.25% 17%、16.75%、16.50%、16.25% 16%、15.75%、15.50%、15.25% 15%、14.75%、14.50%、14.25% 14%、13.75%、13.50%、13.25% 13%、12.75%、12.50%、12.25% 12%、11.75%、11.50%、11.25% 11%、10.75%、10.50%、10.25% 10%、9.75%、9.50%、9.25% 9%、8.75%、8.50%、8.25% 8%、7.75%、7.50%、7.25% 7%、6.75%、6.50%、6.25% 6%、5.75%、5.50%、5.25% 5%、4.75%、4.50%、4.25%、4%、3.75%、3.50%、3.25%、3%、2.75%、2.50%、2.25%、2%、1.75%、1.50%、125%、1%、0.5%、0.4%、0.3%、0.2%、0.1%、0.09%、0.08%、0.07%、0.06%、0.05%、0.04%、0.03%、0.02%、0.01%、0.009%、0.008%、0.007%、0.006%、0.005%、0.004%、0.003%、0.002%、0.001%、0.0009%、0.0008%、0.0007%、0.0006%、0.0005%、0.0004%、0.0003%、0.0002%、または0.0001%(w/w、w/v、またはv/v)を超える。
【0069】
いくつかの実施形態において、本発明の医薬組成物中に含まれる構造(I)の化合物の濃度は、およそ0.0001%~およそ50%、およそ0.001%~およそ40%、およそ0.01%~およそ30%、およそ0.02%~およそ29%、およそ0.03%~およそ28%、およそ0.04%~およそ27%、およそ0.05%~およそ26%、およそ0.06%~およそ25%、およそ0.07%~およそ24%、およそ0.08%~およそ23%、およそ0.09%~およそ22%、およそ0.1%~およそ21%、およそ0.2%~およそ20%、およそ0.3%~およそ19%、およそ0.4%~およそ18%、およそ0.5%~およそ17%、およそ0.6%~およそ16%、およそ0.7%~およそ15%、およそ0.8%~およそ14%、およそ0.9%~およそ12%、およそ1%~およそ10%(w/w、w/v、またはv/v)の範囲である。
【0070】
いくつかの実施形態において、本発明の医薬組成物中に含まれる構造(I)の化合物の濃度は、およそ0.001%~およそ10%、およそ0.01%~およそ5%、およそ0.02%~およそ4.5%、およそ0.03%~およそ4%、およそ0.04%~およそ3.5%、およそ0.05%~およそ3%、およそ0.06%~およそ2.5%、およそ0.07%~およそ2%、およそ0.08%~およそ1.5%、およそ0.09%~およそ1%、およそ0.1%~およそ0.9%(w/w、w/v、またはv/v)の範囲である。
【0071】
いくつかの実施形態において、本発明の医薬組成物中に含まれる構造(I)の化合物の量は、10g、9.5g、9.0g、8.5g、8.0g、7.5g、7.0g、6.5g、6.0g、5.5g、5.0g、4.5g、4.0g、3.5g、3.0g、2.5g、2.0g、1.5g、1.0g、0.95g、0.9g、0.85g、0.8g、0.75g、0.7g、0.65g、0.6g、0.55g、0.5g、0.45g、0.4g、0.35g、0.3g、0.25g、0.2g、0.15g、0.1g、0.09g、0.08g、0.07g、0.06g、0.05g、0.04g、0.03g、0.02g、0.01g、0.009g、0.008g、0.007g、0.006g、0.005g、0.004g、0.003g、0.002g、0.001g、0.0009g、0.0008g、0.0007g、0.0006g、0.0005g、0.0004g、0.0003g、0.0002g、もしくは0.0001gに等しいかまたはそれ未満である。
【0072】
いくつかの実施形態において、本発明の医薬組成物中に含まれる構造(I)の化合物の量は、0.0001g、0.0002g、0.0003g、0.0004g、0.0005g、0.0006g、0.0007g、0.0008g、0.0009g、0.001g、0.0015g、0.002g、0.0025g、0.003g、0.0035g、0.004g、0.0045g、0.005g、0.0055g、0.006g、0.0065g、0.007g、0.0075g、0.008g、0.0085g、0.009g、0.0095g、0.01g、0.015g、0.02g、0.025g、0.03g、0.035g、0.04g、0.045g、0.05g、0.055g、0.06g、0.065g、0.07g、0.075g、0.08g、0.085g、0.09g、0.095g、0.1g、0.15g、0.2g、0.25g、0.3g、0.35g、0.4g、0.45g、0.5g、0.55g、0.6g、0.65g、0.7g、0.75g、0.8g、0.85g、0.9g、0.95g、1g、1.5g、2g、2.5、3g、3.5、4g、4.5g、5g、5.5g、6g、6.5g、7g、7.5g、8g、8.5g、9g、9.5g、または10gを超える。
【0073】
いくつかの実施形態において、本発明の医薬組成物中に含まれる構造(I)の化合物の量は、0.0001~10g、0.0005~9g、0.001~8g、0.005~7g、0.01~6g、0.05~5g、0.1~4g、0.5~4g、または1~3gの範囲である。
【0074】
また、当業者には、本明細書に記載の構造(I)の化合物の調製プロセスにおいて、中間体化合物の官能基を好適な保護基で保護する必要があり得ることも認識される。このような官能基としてはヒドロキシ、アミノ、メルカプトおよびカルボン酸が挙げられる。ヒドロキシに対する好適な保護基としては、トリアルキルシリルまたはジアリールアルキルシリル(例えば、t-ブチルジメチルシリル、t-ブチルジフェニルシリルまたはトリメチルシリル)、テトラヒドロピラニル、ベンジルなどが挙げられる。アミノ、アミジノおよびグアニジノに対する好適な保護基としては、t-ブトキシカルボニル、ベンジルオキシカルボニルなどが挙げられる。メルカプトに対する好適な保護基としては、-C(O)-R”(式中、R”はアルキル、アリールまたはアリールアルキルである)、p-メトキシベンジル、トリチルなどが挙げられる。カルボン酸に対する好適な保護基としては、アルキル、アリールまたはアリールアルキルエステルが挙げられる。保護基は、当業者に公知の標準的な手法に従って、本明細書に記載のようにして付加または除去され得る。保護基の使用は、Green,T.W.and P.G.M.Wutz,Protective Groups in Organic Synthesis(1999),第3版,Wileyに詳細に記載されている。当業者が認識するであろうとおり、保護基はまた、Wang樹脂、Rink樹脂または2-クロロトリチルクロリド樹脂などの高分子樹脂であってもよい。
【0075】
また、当業者には、本発明の化合物のこのような保護された誘導体は、それ自体では薬理活性を有しないかもしれないが、哺乳動物に投与され、その後、体内で代謝されると薬理学的に活性である本発明の化合物が形成され得ることが認識される。したがって、かかる誘導体を「プロドラッグ」と記載している場合がある。本発明の化合物のプロドラッグはすべて、本発明の範囲に含まれる。
【0076】
さらに、遊離の塩基または酸の形態で存在する本発明の化合物はすべて、当業者に公知の方法による適切な無機塩基、無機酸、有機塩基または有機酸での処理によって、その薬学的に許容され得る塩に変換することができる。本発明の化合物の塩は、標準的な手法によって、その遊離の塩基または酸の形態に変換することができる。
【0077】
構造(I)の化合物を、アルボシジブの3つの遊離ヒドロキシルのうちの1つへのリン酸基の付加によって調製することができる。アルボシジブ親化合物(ならびにその塩および溶媒和物)を、販売者から購入するか、当該分野で公知の方法、例えば、米国特許第6,136,981号;同第6,225,473号;同第6,406,912号;同第6,576,647号;および同第6,821,990号(その開示全体が本明細書中で参考として援用される)に記載の方法に従って調製することができる。
【0078】
以下の一般反応スキームは、本発明の化合物、すなわち、構造(I):
【化11】
の化合物(式中、R
1、R
2、およびR
3は、上記に定義の通りである)またはその立体異性体、互変異性体、もしくは薬学的に許容され得る塩の作製方法を例示する。当業者はこれらの化合物を同様の方法によって、または当業者に公知の他の方法を組み合わせることによって作製することが可能であり得ることが理解される。また、当業者であれば、後述するものと同様の手法で、以下に具体的に例示していない構造(I)の他の化合物を、適切な出発成分を使用し、必要に応じて合成パラメータを修正することにより作製することが可能であり得ることが理解される。一般に、出発成分は、例えば、Sigma Aldrich、Lancaster Synthesis,Inc.、Maybridge、Matrix Scientific、TCI、およびFluorochem USAなどの供給元から入手され得るか、または当業者に公知の情報源(例えば、Advanced Organic Chemistry:Reactions,Mechanisms,and Structure,第5版(Wiley,2000年12月)参照)に従って合成され得るか、または本発明に記載のようにして調製され得る。
【0079】
【0080】
一般反応スキーム1に示すように、アルボシジブHCl塩Aを、最初に、適切に保護したクロロホスフェート(すなわち、B(式中、Rはエチルなどの保護基である))と反応させる。次いで、脱保護して所望の構造(I)の化合物を得る。アルボシジブの3つのヒドロキシル基のうちのいずれか1つに単一のホスフェートを有する構造(I)の化合物を上記スキームに従って調製し、クロマトグラフィなどの通常の技術によって所望の位置異性体を分離することができることが当業者に明らかであろう。所望の位置異性体の収率を最適にするための保護基ストラテジーも当業者に明らかであろう。
方法
【0081】
種々の実施形態において、本発明は、構造(I)の化合物または前記化合物を含む医薬組成物を哺乳動物に投与することによる、疾患の処置を必要とする哺乳動物において疾患を処置する方法を提供する。いくつかの具体的な実施形態において、本方法は、サイクリン依存性キナーゼ(CDK)の過剰発現に関連する疾患の処置を必要とする哺乳動物における処置方法であって、本方法は、治療有効量の前述の構造(I)の化合物のいずれかまたは前記化合物を含む医薬組成物を哺乳動物に投与する工程を含む。
【0082】
いくつかのさらなる実施形態において、疾患はがん、例えば、血液学的がんである。これらの実施形態のいくつかにおいて、血液学的がんは、急性骨髄白血病(AML)、多発性骨髄腫、濾胞性リンパ腫、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、慢性リンパ性白血病(CLL)、および非ホジキンリンパ腫から選択される。他の実施形態において、血液がんは急性骨髄白血病(AML)である。他の異なる実施形態において、血液学的がんは慢性リンパ性白血病(CLL)である。さらにより異なる実施形態において、血液学的がんは骨髄異形成症候群(myelodysplasic syndrome)(MDS)である。
【0083】
前述の方法のいくつかの他の具体的な実施形態において、本方法は、構造(I)の化合物または前記化合物を含む医薬組成物を哺乳動物に経口投与する工程を含む。
【0084】
上記の疾患例に加えて、広範な種々のがん(固形腫瘍および白血病(例えば、急性骨髄性白血病)が含まれる)が本明細書中に開示の方法に適している。種々の実施形態で処置することができるがんのタイプには、以下が含まれるが、これらに限定されない:乳房、前立腺、および結腸の腺癌;全形態の気管支原性肺癌;ミエロイド;黒色腫;ヘパトーム;神経芽細胞腫;乳頭腫;アプドーマ;分離腫;鰓腫;悪性カルチノイド症候群;カルチノイド心疾患;および癌腫(例えば、ウォーカー癌、基底細胞癌、基底扁平細胞癌、ブラウン・ピアース癌、腺管癌、エールリッヒ癌、クレブス2癌、メルケル細胞癌、粘液性癌腫、非小細胞性肺癌、燕麦細胞癌、乳頭状癌、硬性癌、細気管支癌、気管支原性癌、扁平上皮癌、および移行上皮癌)。処置することができるさらなるがんのタイプには、以下が含まれる:組織球障害;白血病;悪性組織球増殖症;ホジキン病;免疫増殖性小腸疾患(immunoproliferative small);非ホジキンリンパ腫;プラズマ細胞腫;細網内皮症;黒色腫;軟骨芽腫;軟骨腫;軟骨肉腫;線維腫;線維肉腫;巨細胞腫;組織球腫;脂肪腫;脂肪肉腫;中皮腫;粘液腫;粘液肉腫;骨腫;骨肉腫;脊索腫;頭蓋咽頭腫;未分化胚細胞腫;過誤腫;間葉腫;中腎腫;筋肉腫;エナメル芽細胞腫;セメント質腫;歯牙腫;テラトーマ;胸腺腫;絨毛性腫瘍。さらに、以下のがんタイプも処置に適していると予想される:腺腫;胆管腫;コレステリン腫;円柱腫(cyclindroma);嚢胞腺癌;嚢胞腺腫;顆粒膜細胞腫;半陰陽性卵巣腫瘍;ヘパトーム;汗腺腫;島細胞腫;ライディッヒ細胞腫;乳頭腫;セルトリ細胞腫;卵胞膜細胞腫;平滑筋腫(leimyoma);平滑筋肉腫;筋芽細胞腫;筋腫(myomma);筋肉腫;横紋筋腫;横紋筋肉腫;上衣腫;神経節神経腫;神経膠腫;髄芽腫;髄膜腫;神経鞘腫;神経芽細胞腫;神経上皮腫;神経線維腫;神経腫;傍神経節腫;非クロム親和性傍神経節腫。処置することができるがんのタイプには、以下も含まれるが、これらに限定されない:被角血管腫;好酸球増加随伴性血管類リンパ組織増殖症;硬化性血管腫;血管腫症;グロムス血管腫;血管内皮腫;血管腫;血管周囲細胞腫;血管肉腫;リンパ管腫;リンパ管筋腫;リンパ管肉腫;松果体腫;癌肉腫;軟骨肉腫;葉状嚢肉腫;線維肉腫;血管肉腫;平滑筋肉腫;白血肉腫;脂肪肉腫;リンパ管肉腫;筋肉腫;粘液肉腫;卵巣癌;横紋筋肉腫;肉腫;新生物;神経線維腫症(nerofibromatosis);および子宮頸部異形成。
【0085】
本発明の化合物は、広範な投薬量範囲にわたって有効である。例えば、成人の処置において、0.01~1000mg、0.5~100mg、1~50mg/日、および5~40mg/日の投薬量がいくつかの実施形態において使用される投薬量の例である。例示的な投薬量は10~30mg/日である。正確な投薬量は、投与経路、化合物の投与形態、処置される被験体、処置される被験体の体重、ならびに主治医の優先度および経験に依存するであろう。
【0086】
いくつかの実施形態において、本発明の化合物を、単一用量で投与する。本発明の化合物の単一用量を、急性状態の処置のために使用することもできる。
【0087】
いくつかの実施形態において、本発明の化合物を、複数回用量で投与する。いくつかの実施形態において、投与は、1日あたり約1回、約2回、約3回、約4回、約5回、約6回、または約6回超である。他の実施形態において、投与は、1ヶ月に約1回、2週間毎に約1回、1週間に約1回、または1日おきに約1回である。別の実施形態において、本発明の化合物および別の薬剤を、1日当たり約1回~1日当たり約6回、一緒に投与する。別の実施形態において、本発明の化合物および薬剤の投与を、約7日間未満継続する。また別の実施形態において、投与を、約6、10、14、28日間、2ヶ月間、6ヶ月間、または1年間を超えて継続する。いくつかの場合、必要な限り長期間、継続投与を行い、それを維持する。
【0088】
本発明の化合物の投与を必要な限り長期間継続することができる。いくつかの実施形態において、本発明の化合物を、1、2、3、4、5、6、7、14、または28日間を超えて投与する。いくつかの実施形態において、本発明の化合物を、28、14、7、6、5、4、3、2、または1日間未満投与する。いくつかの実施形態において、本発明の化合物を、継続的に慢性投与する(例えば、慢性的影響の処置のため)。
【0089】
いくつかの実施形態において、本発明の化合物を、複数回投与する。化合物の薬物動態学が被験体によって変動するので、特定の実施形態において、投与計画の個別化が提供される。本発明の化合物の投与を、当業者は、本開示を考慮して慣用的実験によって見出し、そして/または導き出すことができる。
【実施例】
【0090】
実施例1
代表的なホスフェートプロドラッグ(IB’)の調製
【化13】
【0091】
2-(2-クロロフェニル)-5-ヒドロキシ-8-(3-ヒドロキシ-1-メチルピペリジン-4-イル)-4-オキソ-4H-クロメン-7-イルジエチルホスフェート
【0092】
アルボシジブHCl(2g、4.56mmol、1当量)を含む1,2-ジクロロエタン(40mL)の懸濁液を0℃に冷却した。この溶液に、トリエチルアミン(1.9mL、13.7mmol、3当量)を添加し、その後にジエチルクロロホスフェート(0.78g、4.56mmol、1当量)を添加した。反応混合物を0℃で30~45分間撹拌した。次いで、反応混合物を氷上に注ぎ、ジクロロメタン(3×25mL)で抽出した。合わせた有機層を無水Na2SO4で乾燥させ、濃縮して粗残渣を得た。粗残渣を、10~15%メタノールを含むジクロロメタンを使用したフラッシュカラムクロマトグラフィによって精製して、2-(2-クロロフェニル)-5-ヒドロキシ-8-(3-ヒドロキシ-1-メチルピペリジン-4-イル)-4-オキソ-4H-クロメン-7-イルジエチルホスフェート(550mg、1.02mmol;22%)を得た。
【0093】
LCMS:カラム:XBridge C8(50×4.6mm×3.5μm);移動相:A:10mM NH4CO3水溶液;B:ACN;RT:5.97;純度:(極大:67.63);M+H:538.0.
【0094】
リン酸二水素2-(2-クロロフェニル)-5-ヒドロキシ-8-(3-ヒドロキシ-1-メチルピペリジン-4-イル)-4-オキソ-4H-クロメン-7-イル(IB’)
【0095】
0℃の2-(2-クロロフェニル)-5-ヒドロキシ-8-(3-ヒドロキシ-1-メチルピペリジン-4-イル)-4-オキソ-4H-クロメン-7-イルジエチルホスフェート(0.55g、1.02mmol、1当量)を含むジクロロメタン(4mL)溶液に、トリメチルシリルブロミド(2.0mL、15.1mmol、15当量)を添加した。次いで、反応混合物を密封条件下にて36℃で20時間加熱した。反応混合物をエバポレートした。得られた粗残渣を、分取HPLCによって精製して、リン酸二水素2-(2-クロロフェニル)-5-ヒドロキシ-8-(3-ヒドロキシ-1-メチルピペリジン-4-イル)-4-オキソ-4H-クロメン-7-イル(35mg;0.073mmol;7%)を得た。
【0096】
LCMS:カラム:XBridge C8(50×4.6mm×3.5μm);移動相:A:10mM NH4CO3水溶液;B:ACN;RT:3.11;純度:(極大:93.56);M+H:482.0.
【0097】
HPLC:カラム:XBridge C8(50×4.6mm×3.5μm);移動相:A:0.1%TFA水溶液;B:ACN;RT:2.55;純度:(極大:96.39;254nm:96.57).
【0098】
1HNMR(DMSO-d6-D2O交換):δ7.84(d,J=7.20Hz,1H),7.71-7.70(m,1H),7.65-7.62(m,1H),7.59-7.55(m,1H),7.07(s,1H),6.62(s,1H),4.12(s,1H),3.60-3.54(m,1H),3.30-3.26(m,3H),3.13-3.11(m,2H),2.71(s,3H),1.83-1.80(m,1H).
【0099】
実施例2
アルボシジブプロドラッグの薬物動態学的プロフィール
【0100】
以下の化合物を調製し、下記のように、その薬物動態学的プロフィールを決定し、化合物(IB’)の薬物動態学的プロフィールと比較した。
【化14】
【0101】
化合物を調製し、表1にまとめるように、CD-1マウスに静脈内(IV)または経口(PO)投与した。アルボシジブ親化合物の血漿中濃度を、種々の時間間隔で決定し(表2)、薬物動態学パラメータを計算した(表3)。化合物EおよびFは、in vivoでアルボシジブに変換されなかった(すなわち、これらの化合物で処置したマウスの血漿試料中にアルボシジブは検出されなかった)ので、その薬物動態学パラメータをさらに調査しなかった。表3に認められるように、化合物(IB’)のバイオアベイラビリティは、親アルボシジブ化合物(A)および2つのジホスフェート化合物(CおよびD)のバイオアベイラビリティより優れている。
【表1】
【表2】
注釈:結果を、平均±SD(n=3匹の動物/群)で示す。
n.e.=未評価
【表3】
【0102】
注釈:結果を、平均±SD(N=3匹の動物/群)で示す。
実施例3
動力学的溶解度プロフィール
【0103】
広範なpH(すなわち、pH2.2~pH8.7)にわたって化合物IB’の動力学的水溶解度を決定し、同一pH範囲でアルボシジブの動力学的水溶解度と比較した。化合物IB’の溶解度は、試験した最低pH(pH2.2)で1mg/mLを超え、pH6.8およびpH8.7で5mg/mL超に上昇することが見出された。比較すると、アルボシジブの溶解度は、pH2.2およびpH4.5で1mg/mL超であるが、pH6.8およびpH8.7で0.02mg/mLに低下する。
【表4】
【0104】
実施例4
血漿安定性プロフィール
化合物IB’の血漿安定性を、4種由来の血漿を使用して決定した。マウス、ラット、イヌ、およびヒトの結果を、表5、6、7、および8にそれぞれ示す。アルボシジブおよびフルマゼニルをコントロールとして使用した。マウス、ラット、およびヒトの血漿では、化合物IB’は、5時間のインキュベーション後に安定性が100%維持された。イヌ血漿では、5時間後におよそ90%の化合物IB’が残存した。比較すると、アルボシジブは、5時間後に4種全てにわたって100%安定性を維持し、フルマゼニルはマウスおよびラットの血漿で不安定であった。
【表5】
【表6】
【表7】
【表8】
【0105】
実施例5
スプレーグ・ドーリーラットにおける薬物動態学
【0106】
雄スプレーグ・ドーリー(SD)ラットにおける化合物IB’の経口投与および静脈内(IV)投与によって生じたアルボシジブおよび吸収された化合物IB’自体の血漿中濃度を決定した(
図1を参照のこと)。血漿試料を、化合物IB’の単回投与後24時間にわたって8つの時点(IV)または7つの時点(経口)で採取した(3匹の動物/群)。薬物動態学パラメータの計算値を、表9および表10に示す。化合物IB’のIV投与および経口投与の両方により、アルボシジブに有意に曝露された。静脈内投与した場合、化合物IB’(1mg/kg)はC
0270.3ng/mLでアルボシジブに代謝され、半減期1.6時間で消失した。経口投与した場合、化合物IB’(10mg/kg)はC
max178.6ng/mLおよびT
max2.92時間でアルボシジブに代謝され、半減期4.4時間で消失した。アルボシジブのバイオアベイラビリティ(99.03%)を、化合物IB’の経口投与およびIV投与から得られたアルボシジブについての曲線下面積(AUC)の比から計算した。化合物IB’の存在についても血漿試料を分析した。SDラットにおける化合物IB’の血漿中濃度も
図1および表11に示す。SDラットにおけるIV投与および経口投与の両方について、化合物IB’の血漿中レベルは、投与2時間後に定量レベル未満に低下した。
【表9】
【表10】
【表11】
#測定せず BQL=定量限界未満
【0107】
実施例6
マウスにおける最大忍容急性用量
【0108】
マウスにおいて急性(すなわち、単一用量)毒性研究を行った。急性研究を、雌SHO
SCIDマウスを処置群あたり3匹使用して行った。動物を、45、30、15、または7.5mg/kgの単一用量の化合物IB’を使用して処置した。比較のために、さらなる動物を同一の用量レベルのアルボシジブで処置した。経口投与後(
図2A~B)および静脈内(IV)投与後(
図2C~D)の体重測定を死亡率および臨床所見と共に使用して、最大忍容急性用量(MTD
acute)を決定した。
【0109】
急性研究の結果から、経口投与された化合物IB’のMTDacuteが15mg/kgであると判断された。静脈内投与された化合物IB’のMTDacuteは15mg/kgである。30mg/kgおよび45mg/kgを投与した動物において体重の低下および嗜眠の増大が認められた。45mg/kgを経口投与された動物において、1匹の動物が2日目に死亡し、1匹の動物が3日目に死亡した。30mg/kgを経口投与した動物において、1匹の動物が4日目に死亡した。45mg/kgを静脈内投与した動物において、2匹の動物が2日目に死亡した。30mg/kgを静脈内投与した動物において、1匹の動物が3日目に死亡した。
【0110】
アルボシジブの急性MTDacuteは、経口投与した場合、15mg/kgである。静脈内投与したアルボシジブのMTDacuteは7.5mg/kgである。30mg/kgおよび45mg/kgの両用量レベルでアルボシジブを投与した動物において、いくらかの体重低下、嗜眠の増加、および動物の死亡が認められた。
【0111】
45mg/kgおよび30mg/kgの化合物IB’経口投与レベルで生存している動物において体重低下が認められ、この低下のピークは30mg/kg群において17%であった。静脈内投与した生存動物の体重低下のピークは12%であった。
【0112】
15mg/kgまたは7.5mg/kgで経口投与または静脈内投与されたマウスにおいて明白な毒性は認められなかった。15mg/kg静脈内投与群における小さな体重低下のピーク3.3%は、試験動物における通常の体重変動に寄与していた。
【0113】
マウスにおいて静脈内投与した場合、化合物IB’(MTDacute=15mg/kg)は、アルボシジブ(MTDacute=7.5mg/kg)と比較して忍容性が高い。
実施例7
マウスにおける最大忍容反復用量スケジュール
【0114】
反復用量毒性学研究を、雌SHO SCIDマウスを処置群あたり3匹使用して行った。動物を、1日量が15、7.5、または2.5mg/kgの化合物IB’の5回の投与で処置し、投与計画後さらに5日間観察した。比較のために、さらなる動物を、同一の用量レベルのアルボシジブで処置し、同一の投与計画/観察を実施した。一連の5日間の反復投与期間およびその後の5日間の観察期間にわたる経口投与(
図3A~Bを参照のこと)および静脈内投与(
図3C~Dを参照のこと)によって処置された動物の体重測定を死亡率および臨床所見と共に使用して、最大忍容投与計画(MTD
repeat)を決定した。
【0115】
5日反復用量研究の結果から、経口投与された化合物IBのMTDrepeatが7.5mg/kgであると判断された。静脈内投与された化合物IB’のMTDrepeatは15mg/kgである。15mg/kgを経口投与した動物において体重低下が認められた。15mg/kgを経口投与した動物において、1匹の動物が5日目に死亡し、1匹の動物が7日目に死亡した。
【0116】
比較のために、アルボシジブを経口投与した場合について決定されたMTDrepeatは7.5mg/kgであった。アルボシジブを静脈内投与した場合について決定されたMTDrepeatは7.5mg/kgであった。アルボシジブの経口投与および静脈内投与の両方について15mg/kgの投与レベルで嗜眠、体重低下、および死亡が認められた。
【0117】
15mg/kgの化合物IB’経口投与レベルで生存している動物において体重低下が認められ、この低下のピークは12%であった。7.5mg/kgや2.5mg/kgを経口投与した動物または静脈内投与した場合に試みられた任意の用量レベルを投与した動物において明白な毒性は認められなかった。
【0118】
マウスにおいて静脈内投与した場合、化合物IB’(MTDrepeat=15mg/kg)は、アルボシジブ(MTDrepeat=7.5mg/kg)と比較して忍容性が高い。
【0119】
実施例8
ラットにおける最大忍容急性用量
【0120】
ラットにおいて急性(すなわち、単一用量)毒性研究を行った。急性研究を、雌スプレーグ・ドーリーラットを処置群あたり3匹使用して行った。動物を、36、18、9、または4.5mg/kgの単一用量の化合物IB’を使用して処置した。比較のために、さらなる動物に、18、9、または4.5mg/kgのアルボシジブを投与した。経口投与後(
図4Aを参照のこと)の体重測定を、死亡率、臨床所見、飼料消費(
図4Bを参照のこと)、および全血球計算値(CBC;表12を参照のこと)と共に使用して、最大忍容急性用量(MTD
acute)を決定した。
【0121】
急性研究の結果から、ラットにおける化合物IB’のMTDacuteが18mg/kgであると判断された。36mg/kgの化合物IBを投与した動物おいて下痢、体重低下、および嗜眠の増大が認められた。この用量レベルで、1匹の動物が3日目に死亡し、1匹の動物が4日目に死亡し、1匹の動物が5日目に死亡した。いかなる他の処置群においても死亡は認められなかった。
【0122】
36mg/kgの用量レベルの化合物IB’で処置した動物において、死亡に進行する体重低下が認められ、低下率は13.1%に達した(
図4Aを参照のこと)。この体重低下は、これらの動物において有意な下痢および嗜眠の増加を伴っていた。18、9、または4.5mg/kgの化合物IB’を投与したラットにおいて明白な毒性(体重の変化または下痢が含まれる)は認められなかった。比較すると、18mg/kgアルボシジブを投与した動物は、実際に下痢の徴候を示した。さらに、18mg/kgのアルボシジブ投与において異常な飼料消費パターンが認められたが、同一の投薬量レベルで化合物IB’処置した動物では認められなかった。
【0123】
いくつかの動物において異常なCBCが認められた(表12)。具体的には、血小板数がビヒクルならびに9mg/kgの投薬量の化合物IB’、および用量4.5mg/kgのアルボシジブで正常範囲を逸脱していた。生存している処置した動物において一貫した用量依存傾向は認められなかった。18mg/kg用量レベルの化合物IB’において赤血球数および白血球数がわずかに減少した。しかし、いくつかの非処置動物において血球数のわずかな上昇も認められた。これらの結果の大きな変動は、薬物依存性機構ではなく動物間のばらつきに起因していた。36mg/kgの化合物IB’で処置した動物が一夜のうちに死亡したので、CBCを得られなかった。
【0124】
上記データに基づいて、無毒性量(NOAEL)が化合物IB’については18mg/kgであり、アルボシジブについては9mg/kgであることが見出されたので、化合物IB’のラット経口MTD
acuteは、その忍容性プロフィールとアルボシジブの忍容性プロフィールとを区別することが見出された。
【表12】
【0125】
実施例9
マウス異種移植片有効性研究
【0126】
急性骨髄性白血病(AML)のMV4-11マウス異種移植片モデルにおける化合物IB’のin vivo活性を決定した。8×10
6個のMV4-11細胞/マウスの注射後、腫瘍をおよそ100mm
3まで成長させた。腫瘍が適切なサイズに到達した後、マウスを以下の処置群に無作為に割り付けた:ビヒクル、化合物IB’(7.5mg/kg、qd×5×3)、化合物IB’(2.5mg/kg、qd×5×3)、化合物IB’(0.1mg/kg、qd×5×3)、および化合物IB(7.5mg/kg、q7d×3)。最後のアームにおいて化合物IB’(7.5mg/kg、q7d×3)を静脈内投与したことを除き、ビヒクルおよび化合物IB’を経口投与した。処置により、腫瘍成長が有意に阻害された(%TGI;
図5A~Bおよび表13を参照のこと)。
【表13】
【0127】
実施例10
マウス異種移植片薬力学研究
【0128】
AMLのMV4-11マウス異種移植片モデルにおける化合物IB’のin vivo薬力学活性を決定した(
図6A~B)。8×10
6細胞/マウスの注射後、腫瘍をおよそ100mm
3まで成長させた。腫瘍が適切なサイズに到達した後、マウスを以下の処置群に無作為に割り付けた:ビヒクル、化合物IB’(2.5mg/kg)、化合物IB’(0.5mg/kg)、化合物IB’(0.1mg/kg)、化合物IB’(0.02mg/kg)。マウスに単一処置用量を投与し、処置48時間後に腫瘍を採取した。標準的なポリアクリルアミドゲル電気泳動および免疫ブロッティング技術を使用して、採取した腫瘍のMCL-1タンパク質レベルを評価した(
図6A)。処置によりMCL-1タンパク質発現が低下した(
図6Bおよび以下の表14を参照のこと)。
【表14】
【0129】
本明細書で言及した米国特許、米国特許出願公開公報、米国特許出願、外国特許、外国特許出願および非特許刊行物はすべて(2015年5月18日に出願された米国仮特許出願第62/163,188号を含む)、参考としてその全体が、本発明の説明と矛盾しない範囲で本明細書に援用される。
【0130】
前述のことから、本発明の具体的な実施形態を本明細書において例示目的で記載したが、本発明の趣旨および範囲を逸脱することなく種々の修正が行われ得ることが認識される。したがって、本発明は、添付の特許請求の範囲によって限定される場合を除いて限定されない。