(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-31
(45)【発行日】2022-09-08
(54)【発明の名称】開閉機構
(51)【国際特許分類】
F16C 11/10 20060101AFI20220901BHJP
F16C 11/04 20060101ALI20220901BHJP
【FI】
F16C11/10 D
F16C11/04 F
(21)【出願番号】P 2021203131
(22)【出願日】2021-12-15
【審査請求日】2022-07-12
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000176833
【氏名又は名称】三菱製鋼株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】光井 泰弘
【審査官】稲村 正義
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-199928(JP,A)
【文献】特開2016-37979(JP,A)
【文献】特開2012-248761(JP,A)
【文献】特開2011-153685(JP,A)
【文献】特開2009-257428(JP,A)
【文献】特開2007-107592(JP,A)
【文献】登録実用新案第3165784(JP,U)
【文献】登録実用新案第3153622(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 11/00-11/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸上に回転部を有する開閉部材と、
前記回転軸上において前記開閉部材の前記回転部と対向して配置され、前記回転部の回転に負荷を与えるカム部材と
を備え、
前記カム部材および前記回転部のうちの一方の部材は、
前記回転軸を中心とする第1の円周上に設けられた少なくとも1つの第1のカム山と、
前記回転軸を中心とする前記第1の円周よりも半径が大きい第2の円周上に設けられた少なくとも1つの第2のカム山とを有し、
前記カム部材および前記回転部のうちの他方の部材は、
前記第1のカム山および前記第2のカム山が摺動する摺動面を有し、
前記第1のカム山が前記摺動面を摺動して前記第2のカム山が前記摺動面を摺動しない第1角度範囲と、
前記第2のカム山が前記摺動面を摺動して前記第1のカム山が前記摺動面を摺動しない第2角度範囲とを有する
ことを特徴とする開閉機構。
【請求項2】
前記カム部材は、
前記第1のカム山と、
前記第2のカム山とを有し、
前記回転部は、
前記摺動面を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の開閉機構。
【請求項3】
前記第1のカム山および前記第2のカム山は互いに高さが異なり、
高さが高い一方のカム山が摺動するときに、高さが低い他方のカム山が摺動しない第3角度範囲を有する
ことを特徴とする請求項1または2に記載の開閉機構。
【請求項4】
前記他方の部材は、
前記第1の円周上における一部の区間に、前記第1のカム山との摺動を回避する切り欠き状または凹み状の回避部を有する
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の開閉機構。
【請求項5】
前記他方の部材は、
前記第2の円周上における一部の区間に、前記第2のカム山との摺動を回避する切り欠き状または凹み状の回避部を有する
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の開閉機構。
【請求項6】
前記他方の部材は、
前記第1角度範囲または前記第2角度範囲のときに、前記第1のカム山または前記第2のカム山が嵌まり込むことにより、前記開閉部材の開閉角度を複数の段階に固定することが可能な、孔状または凹み状の嵌合部を複数有する
ことを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の開閉機構。
【請求項7】
前記カム部材は、
前記回転軸の軸方向に移動可能に設けられる
ことを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の開閉機構。
【請求項8】
前記回転軸上に配置され、前記カム部材を前記開閉部材の前記回転部側に付勢する弾性部材を備える
ことを特徴とする請求項7に記載の開閉機構。
【請求項9】
前記開閉部材の前記回転部を間に挟んで、互いに対称形状を有する一対の前記カム部材を備える
ことを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載の開閉機構。
【請求項10】
前記開閉部材は、
モニタを保持することにより、前記モニタとともに開閉する
ことを特徴とする請求項1から9のいずれか一項に記載の開閉機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、開閉機構に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、ヒンジ装置に関し、カム部材の表面に凸部を設け、ブラケットの表面に凹部を設けることにより、ブラケットの回転角度に応じて、摩擦トルクを変化させることが可能な技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の技術は、互いに摺動し合う2つの部材において、回転角度を問わず常に一定の部分が摺動するため、摺動部が比較的早期に摩耗して、摺動トルクが減少したり、ガタツキが生じたりする虞があった。
【0005】
本発明は、上述した課題を解決するため、摺動部の耐摩耗性を高めることが可能な開閉機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために、一実施形態に係る開閉機構は、回転軸上に回転部を有する開閉部材と、回転軸上において開閉部材の回転部と対向して配置され、回転部の回転に負荷を与えるカム部材とを備え、カム部材および回転部のうちの一方の部材は、回転軸を中心とする第1の円周上に設けられた少なくとも1つの第1のカム山と、回転軸を中心とする第1の円周よりも半径が大きい第2の円周上に設けられた少なくとも1つの第2のカム山とを有し、カム部材および回転部のうちの他方の部材は、第1のカム山および第2のカム山が摺動する摺動面を有し、第1のカム山が摺動面を摺動して第2のカム山が摺動面を摺動しない第1角度範囲と、第2のカム山が摺動面を摺動して第1のカム山が摺動面を摺動しない第2角度範囲とを有する。
【発明の効果】
【0007】
一実施形態に係る開閉機構によれば、摺動部の耐摩耗性を高めることが可能な開閉機構を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】一実施形態に係る表示装置の開閉動作を説明するための図
【
図4】一実施形態に係る開閉機構の開閉動作を説明するための図
【
図5】一実施形態に係る開閉機構が備えるブラケットの回転部および第2のカム部材の外観斜視図
【
図6】一実施形態に係る開閉機構(ブラケットの開閉位置が閉じ位置P1にあるとき)におけるブラケットの回転部とカム山との位置関係を示す図
【
図7】一実施形態に係る開閉機構(ブラケットの開閉位置がトルク発生位置P2にあるとき)におけるブラケットの回転部とカム山との位置関係を示す図
【
図8】一実施形態に係る開閉機構(ブラケットの開閉位置がクリック位置P3にあるとき)におけるブラケットの回転部とカム山との位置関係を示す図
【
図9】一実施形態に係る開閉機構(ブラケットの開閉位置がクリック位置P4にあるとき)におけるブラケットの回転部とカム山との位置関係を示す図
【
図10】一実施形態に係る開閉機構(ブラケットの開閉位置がクリック位置P5にあるとき)におけるブラケットの回転部とカム山との位置関係を示す図
【
図11】一実施形態に係る開閉機構(ブラケットの開閉位置が摺動トルク範囲R1の範囲内にあるとき)におけるブラケットの回転部とカム山との位置関係を示す図
【
図12】一実施形態に係る開閉機構(ブラケットの開閉位置が開き位置P6にあるとき)におけるブラケットの回転部とカム山との位置関係を示す図
【
図13】一実施形態に係る開閉機構が備えるブラケットの回転部におけるカム山の摺動部分を示す図
【
図14】従来の開閉機構の耐久試験の実施結果を示すグラフ
【
図15】一実施形態に係る開閉機構の耐久試験の実施結果を示すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態について説明する。
【0010】
(表示装置10の開閉動作)
図1は、一実施形態に係る表示装置10の開閉動作を説明するための図である。なお、本実施形態では、便宜上、X軸方向を左右方向とし、Y軸方向を前後方向とし、Z軸方向を上下方向とする。
【0011】
図1に示すように、表示装置10は、自動車等の車両の車室内の天井面20に設置される。表示装置10は、薄型の直方体形状を有するモニタ12を備える。モニタ12は、各種映像を表示可能な表示面12A(例えば、液晶パネル、有機ELパネル等)を有する。表示装置10は、左右方向(X軸方向)に直線状に延びる回転軸AXを、モニタ12の上端部の近傍に有する。モニタ12は、回転軸AXを中心として回動することにより、開閉動作が可能である。
【0012】
モニタ12は、回転軸AXよりも後方で、天井面20に沿って水平、且つ、表示面12Aが上向きな状態を閉じ位置P1(開閉角度0°)とし、回転軸AXよりも前方で、天井面20に沿って水平、且つ、表示面12Aが下向きな状態を開き位置P6(開閉角度180°)として、閉じ位置P1と開き位置P6との間で開閉動作可能である。
【0013】
モニタ12は、閉じ位置P1において、ロック機構(図示省略)によって開閉動作がロックされる。そして、モニタ12は、閉じ位置P1において、ユーザによるロックレバー(図示省略)等の操作によってロック機構が解除されると、当該モニタ12の自重によってトルク発生位置P2まで僅かに回動する。これにより、表示装置10は、モニタ12と天井面20との間に隙間を形成し、ユーザによってモニタ12を掴みやすくすることができる。
【0014】
モニタ12は、トルク発生位置P2と開き位置P6との間に、3つのクリック位置P3,P4,P5を有する。モニタ12は、3つのクリック位置P3,P4,P5のいずれかで固定されることにより、モニタ12よりも後方(Y軸負方向)の乗員に、表示面12Aに表示される各種映像を視聴させることができる。
【0015】
また、モニタ12は、クリック位置P5と開き位置P6との間に、摺動トルク範囲R1を有する。摺動トルク範囲R1は、モニタ12に一定の摺動抵抗を与えながら、モニタ12が開閉動作する範囲である。したがって、モニタ12は、摺動トルク範囲R1の範囲内においては、ユーザが任意の開閉角度で手を離した場合、付与される摺動抵抗によって、その開閉角度で停止した状態を維持することができる。
【0016】
なお、表示装置10は、
図2以降で説明する開閉機構100を備える。開閉機構100は、モニタ12を保持した状態で、開閉動作することができる。これにより、表示装置10は、上記したモニタ12の開閉動作を実現する。
【0017】
また、表示装置10は、実際には、互いに左右対称構造を有する、左右一対の開閉機構100を備えており、左右一対の開閉機構100により、モニタ12の左右両側部を保持する構成を採用している。
【0018】
(開閉機構100の構成)
図2は、一実施形態に係る開閉機構100の外観斜視図である。
図3は、一実施形態に係る開閉機構100の分解斜視図である。
【0019】
図2および
図3に示すように、開閉機構100は、スタンド110、シャフト120、ブラケット130、第1のカム部材140A、第2のカム部材140B、押さえ板150、および皿ばね160を備える。
【0020】
スタンド110は、天井面20に設けられた設置面22(
図4参照)に固定され、且つ、シャフト120を支持する部材である。スタンド110は、垂直な金属板の上部が左右方向(X軸方向)における内側に向かって直角に折り曲げられたL字状を有する。スタンド110は、水平壁部111と垂直壁部112とを有する。水平壁部111は、天井面20に対して平行な状態で、設置面22に固定される板状の部分である。例えば、本実施形態では、水平壁部111は、当該水平壁部111を上下方向(Z軸方向)に貫通する2つの貫通穴111Aが形成されており、2つの貫通穴111Aを貫通する2つの固定ネジ(図示省略)によって、設置面22にネジ止め固定される。垂直壁部112は、水平壁部111の左右方向(X軸方向)における外側の縁部から下方に垂下して設けられ、天井面20に対して垂直な状態となる板状の部分である。垂直壁部112における回転軸AX上には、当該垂直壁部112を左右方向(X軸方向)に貫通する嵌め込み孔112Aが形成されている。垂直壁部112は、嵌め込み孔112Aにシャフト120の末端部が嵌め込まれることにより、シャフト120の末端部を支持する。本実施形態では、スタンド110の素材の一例として、ステンレスが用いられている。但し、スタンド110の素材は、ステンレスに限らない。
【0021】
シャフト120は、回転軸AX上に配置され、回転軸AXの軸方向に延びる軸状(概ね円柱状)の部材である。シャフト120は、ブラケット130を回動可能に支持する。シャフト120は、末端部(左右方向(X軸方向)における外側の端部)に、スタンド110の嵌め込み孔112Aと同形状の嵌め込み部121を有する。シャフト120は、嵌め込み部121が嵌め込み孔112Aに嵌め込まれることで、スタンド110の垂直壁部112に固定され、垂直壁部112によって支持される。なお、スタンド110の嵌め込み孔112A、および、シャフト120の嵌め込み部121は、長円形状を有する。これにより、シャフト120は、回転軸AXの軸周りに回転しないように、回り止めがなされる。シャフト120の中央部は、円盤状のフランジ部122が形成されていることにより、部分的に直径が拡大されている。また、シャフト120は、先端部(左右方向(X軸方向)における内側の端部)に、押さえ板150の嵌め込み孔151と同形状の嵌め込み部123を有する。本実施形態では、シャフト120の素材の一例として、ステンレスが用いられている。但し、シャフト120の素材は、ステンレスに限らない。
【0022】
ブラケット130は、「開閉部材」の一例である。ブラケット130は、モニタ12を保持した状態で、回転軸AXを中心として回動することにより、モニタ12を開閉動作させる部材である。ブラケット130は、回転部131および保持部132を有する。
【0023】
回転部131は、回転軸AX上に配置される、円環状且つ板状の部分であり、ブラケット130の開閉動作に伴って回転軸AXを中心として回転する部分である。回転部131の中央には、回転軸AXを中心とする円形状の開口部131Aが形成されている。ブラケット130は、開口部131Aにシャフト120が挿通されることにより、シャフト120によって回動可能に支持される。
【0024】
保持部132は、回転部131から半径方向における外側に向かって直線状に延びるアーム状の部分であり、モニタ12を保持し、回転部131とともに回動する部分である。保持部132は、垂直な金属板の上部が左右方向(X軸方向)における内側に向かって直角に折り曲げられたL字状を有する。保持部132は、垂直壁部132Aと水平壁部132Bとを有する。垂直壁部132Aは、回転部131から半径方向における外側に向かって直線状に延びる、垂直な長板状の部分である。水平壁部132Bは、垂直壁部132Aの上縁部から、左右方向(X軸方向)における内側に向かって拡張された長板状の部分である。水平壁部132Bの上面には、任意の固定手段によって、モニタ12の背面が固定される。水平壁部132Bは、ブラケット130の開閉位置が閉じ位置P1にあるときに、水平(すなわち、天井面20に対して平行)となる。これにより、水平壁部132Bは、ブラケット130の開閉位置が閉じ位置P1にあるときに、モニタ12を天井面20に沿って水平な状態とすることができる。
【0025】
本実施形態では、ブラケット130の素材の一例として、ステンレスが用いられている。但し、ブラケット130の素材は、ステンレスに限らない。
【0026】
第1のカム部材140Aおよび第2のカム部材140Bは、回転軸AX上において、ブラケット130の回転部131を間に挟んで、互いに対向して配置されている。第1のカム部材140Aおよび第2のカム部材140Bは、いずれも、中央に回転軸AXを中心とする円形状の開口部141を有する、円盤状の部材であり、互いに左右対称形状を有する。
【0027】
具体的には、第1のカム部材140Aは、開口部141にシャフト120が挿通されることにより、回転部131の左右方向(X軸方向)における外側の表面である第1摺動面131Bと対向して、回転不可能に配置され、回転部131の回転に伴って、第1摺動面131Bに摺動することにより、回転部131の回転に負荷を与える。
【0028】
一方、第2のカム部材140Bは、開口部141にシャフト120が挿通されることにより、回転部131の左右方向(X軸方向)における内側の表面である第2摺動面131Cと対向して、回転不可能に配置され、回転部131の回転に伴って、第2摺動面131Cに摺動することにより、回転部131の回転に負荷を与える。
【0029】
すなわち、本実施形態の開閉機構100は、第1のカム部材140Aおよび第2のカム部材140Bによって、回転部131を挟み込むことにより、回転部131の回転に負荷を与えることができる。
【0030】
第1のカム部材140Aおよび第2のカム部材140Bの各々は、回転部131と対向する表面に、回転部131に向かって突出した、2つの第1のカム山142と、2つの第2のカム山143とが形成されている。2つの第1のカム山142は、回転部131と対向する表面において、回転軸AXを中心とする第1の円周上に180°間隔で設けられている。2つの第2のカム山143は、回転部131と対向する表面において、回転軸AXを中心とする第1の円周よりも半径が大きい第2の円周上に180°間隔で設けられている。
【0031】
本実施形態では、第1のカム部材140Aおよび第2のカム部材140Bの素材の一例として、炭素鋼が用いられている。但し、第1のカム部材140Aおよび第2のカム部材140Bの素材は、炭素鋼に限らない。
【0032】
押さえ板150は、シャフト120の先端部に固定される円盤状の部材である。押さえ板150の中央には、当該押さえ板150を左右方向(X軸方向)に貫通する嵌め込み孔151が形成されている。押さえ板150は、嵌め込み孔151にシャフト120の先端部(嵌め込み部123)が嵌め込まれることにより、シャフト120の先端部に回転不可能に固定される。これにより、押さえ板150は、ブラケット130、第1のカム部材140A、第2のカム部材140B、および皿ばね160が、シャフト120から抜け落ちないようにする。本実施形態では、押さえ板150の素材の一例として、ステンレスが用いられている。但し、押さえ板150の素材は、ステンレスに限らない。
【0033】
皿ばね160は、「弾性部材」の一例である。皿ばね160は、中央に回転軸AXを中心とする円形状の開口部161を有し、且つ、回転軸AXの軸方向(X軸方向)に弾性を有する、円盤状の部材である。皿ばね160は、回転軸AX上に配置され、第1のカム部材140Aおよび第2のカム部材140Bを、ブラケット130の回転部131側に付勢する。
【0034】
具体的には、皿ばね160を設けない場合、第1のカム部材140Aと、シャフト120のフランジ部122との間には、隙間(以下「外側隙間」と示す)が形成される。これにより、第1のカム部材140Aは、この外側隙間分、回転軸AXの軸方向(X軸方向)に移動可能に設けられる。
【0035】
皿ばね160は、第1のカム部材140Aと、シャフト120のフランジ部122との間に形成される外側隙間において、開口部161にシャフト120が挿通されることによって、回転軸AX上に配置される。これにより、皿ばね160は、第1のカム部材140Aを、ブラケット130の回転部131側に付勢する。第1のカム部材140Aは、この付勢力により、ブラケット130の回転部131の第1摺動面131Bに押し当てられて、回転部131の回転力に負荷を与える。すなわち、本実施形態の開閉機構100は、第1のカム部材140Aとシャフト120のフランジ部122との間の皿ばね160の付勢力(枚数、厚さ、ばね定数等)が調整されることにより、第1のカム部材140Aから回転部131の回転力に付与される負荷が調整できるようになっている。例えば、
図3に示す例では、第1のカム部材140Aとシャフト120のフランジ部122との間に2枚の皿ばね160を設けたことにより、第1のカム部材140Aから回転部131の回転力に付与される負荷が適切に調整されている。
【0036】
なお、皿ばね160は、ブラケット130の回転部131の回転時に、回転部131から第1のカム部材140Aに負荷が加えられたときに、回転軸AXの軸方向(X軸方向)に収縮することによって、第1のカム部材140Aの第1のカム山142および第2のカム山143が回転部131に押し当たる力を適度に吸収することができる。
【0037】
また、皿ばね160を設けない場合、第2のカム部材140Bと、押さえ板150との間には、隙間(以下「内側隙間」と示す)が形成される。これにより、第2のカム部材140Bは、この内側隙間分、回転軸AXの軸方向(X軸方向)に移動可能に設けられる。
【0038】
皿ばね160は、第2のカム部材140Bと、押さえ板150との間に形成される内側隙間において、開口部161にシャフト120が挿通されることによって、回転軸AX上に配置される。これにより、皿ばね160は、第2のカム部材140Bを、ブラケット130の回転部131側に付勢する。第2のカム部材140Bは、この付勢力により、ブラケット130の回転部131の第2摺動面131Cに押し当てられて、回転部131の回転力に負荷を与える。すなわち、本実施形態の開閉機構100は、第2のカム部材140Bと押さえ板150との間の皿ばね160の付勢力(枚数、厚さ、ばね定数等)が調整されることにより、第2のカム部材140Bから回転部131の回転力に付与される負荷が調整できるようになっている。例えば、
図3に示す例では、第2のカム部材140Bと押さえ板150との間に2枚の皿ばね160を設けたことにより、第2のカム部材140Bから回転部131の回転力に付与される負荷が適切に調整されている。
【0039】
なお、皿ばね160は、ブラケット130の回転部131の回転時に、回転部131から第2のカム部材140Bに負荷が加えられたときに、回転軸AXの軸方向(X軸方向)に収縮することによって、第2のカム部材140Bの第1のカム山142および第2のカム山143が回転部131に押し当たる力を適度に吸収することができる。
【0040】
(開閉機構100の開閉動作)
図4は、一実施形態に係る開閉機構100の開閉動作を説明するための図である。なお、
図4に示す位置P1~P6は、
図1に示す位置P1~P6に対応する。
【0041】
図4に示すように、開閉機構100は、スタンド110の水平壁部111が、自動車等の車両の車室内において、天井面20よりも上方に位置する設置面22に固定される。開閉機構100においては、ブラケット130の回転部131が、シャフト120によって回動可能に支持されている。これにより、ブラケット130は、回転軸AXを中心として回動し、開閉動作が可能である。
【0042】
ブラケット130は、モニタ12を保持可能な保持部132が、回転軸AXよりも後方で設置面22に沿って水平となる状態を閉じ位置P1(開閉角度0°)とし、保持部132が回転軸AXよりも前方で設置面22に沿って水平となる状態を開き位置P6(開閉角度180°)として、閉じ位置P1と開き位置P6との間で開閉動作可能である。
【0043】
ブラケット130は、当該ブラケット130の自重によって、閉じ位置P1からトルク発生位置P2まで僅かに回動可能である。
【0044】
開閉機構100は、トルク発生位置P2と開き位置P6との間に、3つのクリック位置P3,P4,P5を有する。
【0045】
また、開閉機構100は、クリック位置P5と開き位置P6との間に、摺動トルク範囲R1を有する。摺動トルク範囲R1は、ブラケット130に一定の摺動抵抗を与えながら、ブラケット130が開閉動作する範囲である。したがって、ブラケット130は、摺動トルク範囲R1の範囲内においては、ユーザが任意の開閉角度で手を離した場合、付与される摺動抵抗によって、その開閉角度で停止した状態を維持することができる。
【0046】
開閉機構100は、上記した開閉動作が可能に構成されていることにより、
図1に示すモニタ12の開閉動作を実現することが可能である。
【0047】
(ブラケット130の回転部131および第2のカム部材140Bの具体的な構成)
図5は、一実施形態に係る開閉機構100が備えるブラケット130の回転部131および第2のカム部材140Bの外観斜視図である。
【0048】
図5に示すように、第2のカム部材140Bは、回転部131と対向する表面140Baに、回転部131に向かって突出した、2つの第1のカム山142と、2つの第2のカム山143とが形成されている。
【0049】
2つの第1のカム山142は、表面140Baにおいて、回転軸AXを中心とする第1の円周C1上に180°間隔で設けられている。特に、
図5に示す例では、2つの第1のカム山142は、表面140Baにおいて、最も半径が小さい位置に設けられている。
【0050】
2つの第2のカム山143は、表面140Baにおいて、回転軸AXを中心とする第1の円周C1よりも半径が大きい第2の円周C2上に180°間隔で設けられている。特に、
図5に示す例では、2つの第2のカム山143は、表面140Baにおいて、最も半径が大きい位置に設けられている。
【0051】
第1のカム山142および第2のカム山143は互いに高さが異なり、本実施形態では、第1のカム山142が、第2のカム山143よりも高さが高くなっている。
【0052】
なお、本実施形態では、第1のカム山142および第2のカム山143は、平面視において略矩形状を有する。加えて、本実施形態では、第1のカム山142および第2のカム山143は、円周方向における両方の側面が、テーパ面となっており、後述する回転部131の段差への乗り上げをスムーズに行うことができるようになっている。
【0053】
一方、
図5に示すように、ブラケット130の回転部131は、第1のカム部材140Aと対向する第1摺動面131Bにおいて、第1の円周C1上に、一対の抑制部131Dと、一対の回避部131Eとが、それぞれ180°間隔で設けられている。
【0054】
抑制部131Dは、凹み状に形成されており、ブラケット130の開閉位置が閉じ位置P1とトルク発生位置P2との間にあるときに、第1のカム山142の摺動負荷を抑制するために設けられている。このため、抑制部131Dは、第1の円周C1上において、閉じ位置P1とトルク発生位置P2との間の角度に相当する角度範囲を有して、扇状に形成されている。
【0055】
回避部131Eは、切り欠き状に形成されており、ブラケット130の開閉位置がクリック位置P3とクリック位置P5との間にあるときに、第1のカム山142の摺動を回避するために設けられている。このため、回避部131Eは、第1の円周C1上において、クリック位置P3とクリック位置P5との間の角度に相当する角度範囲を有して、扇状に形成されている。
【0056】
また、
図5に示すように、ブラケット130の回転部131は、第1のカム部材140Aと対向する第1摺動面131Bにおいて、第2の円周C2上に、一対の回避部131Fと、一対の第1嵌合部131G1と、一対の第2嵌合部131G2と、一対の第3嵌合部131G3とが、それぞれ180°間隔で設けられている。
【0057】
回避部131Fは、凹み状に形成されており、ブラケット130の開閉位置が閉じ位置P1とトルク発生位置P2との間にあるときに、第2のカム山143との摺動を回避するために設けられている。このため、回避部131Fは、第2の円周C2上において、閉じ位置P1とトルク発生位置P2との間の角度に相当する角度範囲を有して、扇状に形成されている。
【0058】
第1嵌合部131G1は、孔状に形成されており、ブラケット130がクリック位置P3の開閉角度にあるときに、第2のカム山143が嵌まり込むことにより、ブラケット130をクリック位置P3の開閉角度で固定するために設けられている。
【0059】
第2嵌合部131G2は、孔状に形成されており、ブラケット130のがクリック位置P4の開閉角度にあるときに、第2のカム山143が嵌まり込むことにより、ブラケット130の開閉角度をクリック位置P4の開閉角度で固定するために設けられている。
【0060】
第3嵌合部131G3は、孔状に形成されており、ブラケット130がクリック位置P5の開閉角度にあるときに、第2のカム山143が嵌まり込むことにより、ブラケット130をクリック位置P5の開閉角度で固定するために設けられている。
【0061】
なお、本実施形態では、第2のカム山143が概ね矩形状を有するのに対応して、第1嵌合部131G1、第2嵌合部131G2、および第3嵌合部131G3の各々は、概ね矩形状に形成されている。
【0062】
なお、第1のカム部材140Aは、第2のカム部材140Bと左右対称形状を有する。すなわち、第2のカム部材140Bは、回転部131と対向する表面140Aaに、回転部131に向かって突出した、2つの第1のカム山142と、2つの第2のカム山143とが形成されている。
【0063】
また、回転部131の第1のカム部材140Aと対向する第2摺動面131Cは、第1摺動面131Bと左右対称形状を有する。すなわち、第2摺動面131Cは、第1の円周C1上に、一対の抑制部131Dと、一対の回避部131Eとが、それぞれ180°間隔で設けられており、第2の円周C2上に、一対の回避部131Fと、一対の第1嵌合部131G1と、一対の第2嵌合部131G2と、一対の第3嵌合部131G3とが、それぞれ180°間隔で設けられている。
【0064】
このため、本実施形態では、ブラケット130の開閉動作に伴い、回転部131の両面(第1摺動面131Bおよび第2摺動面131C)の各々に対し、第1のカム部材140Aおよび第2のカム部材140Bの各々が、同様に摺動する。
【0065】
(開閉機構100の動作)
以下、
図6~
図12を参照して、一実施形態に係る開閉機構100の動作を説明する。なお、以降の説明では、第1のカム部材140Aおよび第2のカム部材140Bが、同時且つ同様に作用するため、第1のカム部材140Aおよび第2のカム部材140Bをまとめて「カム部材140」と示す。
【0066】
<ブラケット130の開閉位置が閉じ位置P1にあるとき>
図6は、一実施形態に係る開閉機構100(ブラケット130の開閉位置が閉じ位置P1にあるとき)におけるブラケット130の回転部131とカム山142,143との位置関係を示す図である。
【0067】
図6に示すように、ブラケット130の開閉位置が閉じ位置P1にあるとき、第1のカム山142は、回転部131に形成されている抑制部131Dに当接している。そして、カム部材140は、皿ばね160を押し縮めつつ、第1のカム山142によって回転部131から離間する方向に押し上げられた状態にある。このため、ブラケット130が閉じ位置P1からトルク発生位置P2まで開動作するとき、第1のカム山142は、皿ばね160からの付勢力を受けて抑制部131Dを摺動し、ブラケット130の開動作に負荷を与える。但し、抑制部131Dが凹み状に形成されているため、皿ばね160を押し縮める量がその分減少し、すなわち、皿ばね160から受ける付勢力がその分減少するため、第1のカム山142によって与えられる負荷は、抑制部131Dが形成されていない部分を摺動するときと比較して、抑制される。したがって、ブラケット130が閉じ位置P1からトルク発生位置P2まで開動作するとき、第1のカム山142は、抑制部131Dを摺動し、ブラケット130の開動作に対して、比較的小さな負荷を与える。
【0068】
一方、
図6に示すように、ブラケット130の開閉位置が閉じ位置P1にあるとき、第2のカム山143は、回転部131に形成されている回避部131Fと対向する位置に位置している。但し、回避部131Fが凹み状に形成されており、第2のカム山143の高さが第1のカム山142の高さよりも低く、さらに、上記のとおりカム部材140が回転部131から離間する方向に押し上げられた状態にあるため、第2のカム山143は、回避部131Fに当接していない。このため、ブラケット130が閉じ位置P1からトルク発生位置P2まで開動作するとき、第2のカム山143は、回転部131に摺動しない。
【0069】
<ブラケット130の開閉位置がトルク発生位置P2にあるとき>
図7は、一実施形態に係る開閉機構100(ブラケット130の開閉位置がトルク発生位置P2にあるとき)におけるブラケット130の回転部131とカム山142,143との位置関係を示す図である。
【0070】
図7に示すように、ブラケット130がトルク発生位置P2まで開動作したとき、第1のカム山142の側壁部142Aが、抑制部131Dの円周方向における端部の内壁面131Daに突き当たる(図中丸枠で囲んだ部分参照)。これにより、ブラケット130の開動作が一旦停止し、その状態から、さらにユーザから操作荷重が加えられてブラケット130が開動作すると、第1のカム山142が、抑制部131Dの円周方向における端部の段差を乗り越えて、抑制部131Dと回避部131Eとの間の摺動部分131Hに乗り上げる。この際、操作荷重の急激な変動により、ユーザ操作に対して、クリック操作感が呈示される。これにより、カム部材140は、皿ばね160をさらに押し縮めつつ、回転部131からさらに離間する方向に押し上げられる。すなわち、カム部材140は、回転部131から最大量離間する方向に押し上げられた状態となる。このため、ブラケット130がトルク発生位置P2からクリック位置P3まで開動作するとき、第1のカム山142は、皿ばね160からの付勢力を受けて摺動部分131Hを摺動し、ブラケット130の開動作に負荷を与える。このとき、摺動部分131Hが平坦であるため、皿ばね160を押し縮める量が最大となり、すなわち、皿ばね160から受ける付勢力が最大となるため、第1のカム山142によって与えられる負荷は、最大となる。したがって、ブラケット130がトルク発生位置P2からクリック位置P3まで開動作するとき、第1のカム山142は、摺動部分131Hを摺動し、ブラケット130の開動作に対して、最大の負荷を与える。
【0071】
一方、
図7に示すように、ブラケット130がトルク発生位置P2まで開動作したとき、第2のカム山143は、回避部131Fの円周方向における端部131Faと対向する位置まで移動する。但し、第2のカム山143の高さが第1のカム山142の高さよりも低く、さらに、上記のとおりカム部材140が回転部131から最大量離間する方向に押し上げられた状態にあるため、第2のカム山143は、回避部131Fの円周方向における端部131Faに当接しない。このため、ブラケット130がトルク発生位置P2からクリック位置P3まで開動作するとき、第2のカム山143は、回転部131に摺動しない。
【0072】
<ブラケット130の開閉位置がクリック位置P3にあるとき>
図8は、一実施形態に係る開閉機構100(ブラケット130の開閉位置がクリック位置P3にあるとき)におけるブラケット130の回転部131とカム山142,143との位置関係を示す図である。
【0073】
図8に示すように、ブラケット130がクリック位置P3まで開動作したとき、第1のカム山142が、切り欠き状に形成されている回避部131E内に落ち込む。これにより、第1のカム山142によるカム部材140の押し上げが解消されるため、カム部材140は、皿ばね160からの付勢力を受けて、回転部131に近づく方向に移動し、回転部131に押し当てられる。同時に、第2のカム山143が、第1嵌合部131G1に嵌まり込む。これにより、ブラケット130は、クリック位置P3の開閉角度で固定される。この際、操作荷重が急激に減少することにより、ユーザ操作に対して、クリック操作感が呈示される。
【0074】
図8に示す状態から、さらにユーザから操作荷重が加えられてブラケット130が開動作すると、第2のカム山143が、第1嵌合部131G1の円周方向における端部の段差を乗り越えて、第1嵌合部131G1と第2嵌合部131G2との間の摺動部分131Iに乗り上げる。この際、操作荷重の急激な変動により、ユーザ操作に対して、クリック操作感が呈示される。これにより、カム部材140は、皿ばね160を押し縮めつつ、回転部131から離間する方向に押し上げられる。このため、ブラケット130がクリック位置P3からクリック位置P4まで開動作するとき、第2のカム山143は、皿ばね160からの付勢力を受けて摺動部分131Iを摺動し、ブラケット130の開動作に負荷を与える。このとき、摺動部分131Iは平坦であるが、第2のカム山143の高さが比較的低いため、皿ばね160を押し縮める量が中間量となり、すなわち、皿ばね160から受ける付勢力が中間量となるため、第2のカム山143によって与えられる負荷は、中間量となる。したがって、ブラケット130がクリック位置P3からクリック位置P4まで開動作するとき、第2のカム山143は、摺動部分131Iを摺動し、ブラケット130の開動作に対して、中間量の負荷を与える。
【0075】
なお、ブラケット130がクリック位置P3からクリック位置P4まで開動作するとき、第1のカム山142は、回避部131E内に落ち込んだままであるため、回転部131に摺動しない。
【0076】
<ブラケット130の開閉位置がクリック位置P4にあるとき>
図9は、一実施形態に係る開閉機構100(ブラケット130の開閉位置がクリック位置P4にあるとき)におけるブラケット130の回転部131とカム山142,143との位置関係を示す図である。
【0077】
図9に示すように、ブラケット130がクリック位置P4まで開動作したとき、第2のカム山143が、第2嵌合部131G2に嵌まり込む。これにより、ブラケット130は、クリック位置P4の開閉角度で固定される。同時に、第2のカム山143によるカム部材140の押し上げが解消されるため、カム部材140は、皿ばね160からの付勢力を受けて、回転部131に近づく方向に移動し、回転部131に押し当てられる。この際、操作荷重が急激に減少することにより、ユーザ操作に対して、クリック操作感が呈示される。
【0078】
図9に示す状態から、さらにユーザから操作荷重が加えられてブラケット130が開動作すると、第2のカム山143が、第2嵌合部131G2の円周方向における端部の段差を乗り越えて、第2嵌合部131G2と第3嵌合部131G3との間の摺動部分131Jに乗り上げる。この際、操作荷重の急激な変動により、ユーザ操作に対して、クリック操作感が呈示される。これにより、カム部材140は、皿ばね160を押し縮めつつ、回転部131から離間する方向に押し上げられる。このため、ブラケット130がクリック位置P4からクリック位置P5まで開動作するとき、第2のカム山143は、皿ばね160からの付勢力を受けて摺動部分131Jを摺動し、ブラケット130の開動作に負荷を与える。このとき、摺動部分131Jは平坦であるが、第2のカム山143の高さが比較的低いため、皿ばね160を押し縮める量が中間量となり、すなわち、皿ばね160から受ける付勢力が中間量となるため、第2のカム山143によって与えられる負荷は、中間量となる。したがって、ブラケット130がクリック位置P4からクリック位置P5まで回動するとき、第2のカム山143は、摺動部分131Jを摺動し、ブラケット130の開動作に対して、中間量の負荷を与える。
【0079】
なお、ブラケット130がクリック位置P4からクリック位置P5まで回動するとき、第1のカム山142は、回避部131E内に落ち込んだままであるため、回転部131に摺動しない。
【0080】
<ブラケット130の開閉位置がクリック位置P5にあるとき>
図10は、一実施形態に係る開閉機構100(ブラケット130の開閉位置がクリック位置P5にあるとき)におけるブラケット130の回転部131とカム山142,143との位置関係を示す図である。
【0081】
図10に示すように、ブラケット130がクリック位置P5まで開動作したとき、第2のカム山143が、第3嵌合部131G3に嵌まり込む。これにより、ブラケット130は、クリック位置P5の開閉角度で固定される。同時に、第2のカム山143によるカム部材140の押し上げが解消されるため、カム部材140は、皿ばね160からの付勢力を受けて、回転部131に近づく方向に移動し、回転部131に押し当てられる。この際、操作荷重が急激に減少することにより、ユーザ操作に対して、クリック操作感が呈示される。
【0082】
また、
図10に示すように、ブラケット130がクリック位置P5まで開動作したとき、第1のカム山142の側壁部142Aが、回避部131Eの円周方向における端部の内壁面131Eaに突き当たる(図中丸枠で囲んだ部分参照)。
【0083】
<ブラケット130の開閉位置が摺動トルク範囲R1の範囲内にあるとき>
図11は、一実施形態に係る開閉機構100(ブラケット130の開閉位置が摺動トルク範囲R1の範囲内にあるとき)におけるブラケット130の回転部131とカム山142,143との位置関係を示す図である。
【0084】
図10に示す状態から、さらにユーザから操作荷重が加えられてブラケット130が開動作すると、
図11に示すように、第1のカム山142が、回避部131Eの円周方向における端部の段差を乗り越えて、回避部131Eと抑制部131Dとの間の摺動部分131K(平坦部分)に乗り上げる。この際、操作荷重の急激な変動により、ユーザ操作に対して、クリック操作感が呈示される。これにより、カム部材140は、皿ばね160を最大量押し縮めつつ、回転部131から最大量離間する方向に押し上げられる。このため、ブラケット130が、クリック位置P5から開き位置P6まで、摺動トルク範囲R1を開動作するとき、第1のカム山142は、皿ばね160からの最大量の付勢力を受けて摺動部分131Kを摺動し、ブラケット130の開動作に対して、最大量の負荷を与える。
【0085】
一方、
図11に示すように、ブラケット130が摺動トルク範囲R1を開動作するとき、第2のカム山143は、回転部131の平坦部分(第3嵌合部131G3と回避部131Fとの間)と対向する位置を移動する。但し、第2のカム山143の高さが第1のカム山142の高さよりも低く、さらに、上記のとおりカム部材140が回転部131から最大量離間方向に押し上げられた状態にあるため、第2のカム山143は、回転部131の平坦部分に当接しない。このため、ブラケット130が摺動トルク範囲R1を開動作するとき、第2のカム山143は、回転部131に摺動しない。
【0086】
<ブラケット130の開閉位置が開き位置P6(開閉角度180°)にあるとき>
図12は、一実施形態に係る開閉機構100(ブラケット130の開閉位置が開き位置P6(開閉角度180°)にあるとき)におけるブラケット130の回転部131とカム山142,143との位置関係を示す図である。
【0087】
図12に示すように、ブラケット130が開き位置P6まで開動作したとき、第1のカム山142は、回転部131に形成されている抑制部131D(
図6の抑制部131Dとは180°異なる位置にある抑制部131D)に落ち込む。これにより、カム部材140は、皿ばね160を押し縮めつつ、第1のカム山142によって回転部131から離間する方向に押し上げられた状態となる。このため、ブラケット130が開き位置P6にあるとき、第1のカム山142は、皿ばね160からの付勢力を受けて抑制部131Dを押圧し、ブラケット130の開動作に負荷を与える。但し、抑制部131Dが凹み状に形成されているため、皿ばね160を押し縮める量がその分減少し、すなわち、皿ばね160から受ける付勢力がその分減少するため、第1のカム山142によって与えられる負荷は、抑制部131Dが形成されていない平坦部分を摺動するときと比較して、抑制される。したがって、ブラケット130が開き位置P6にあるとき、第1のカム山142は、抑制部131Dを押圧し、ブラケット130の開動作に対して、比較的小さな負荷を与える。
【0088】
一方、
図12に示すように、ブラケット130が開き位置P6まで開動作したとき、第2のカム山143は、回転部131に形成されている回避部131F(
図6の回避部131Fとは180°異なる位置にある回避部131F)と対向する位置に位置する。但し、回避部131Fが凹み状に形成されており、第2のカム山143の高さが第1のカム山142の高さよりも低く、さらに、上記のとおりカム部材140が回転部131から離間する方向に押し上げられた状態にある。このため、ブラケット130が開き位置P6にあるとき、第2のカム山143は、回転部131に当接しない。
【0089】
(カム山142,143の摺動部分)
図13は、一実施形態に係る開閉機構100が備えるブラケット130の回転部131におけるカム山142,143の摺動部分を示す図である。
【0090】
図13に示すように、回転部131において、第1のカム山142が摺動する部分は、抑制部131D、抑制部131Dと回避部131Eとの間の摺動部分131H、および、回避部131Eと抑制部131Dとの間の摺動部分131Kだけである。
【0091】
一方、
図13に示すように、回転部131において、第2のカム山143が摺動する部分は、第1嵌合部131G1と第2嵌合部131G2との間の摺動部分131I、および、第2嵌合部131G2と第3嵌合部131G3との間の摺動部分131Jだけである。
【0092】
すなわち、第1のカム山142は、ブラケット130が閉じ位置P1からクリック位置P3まで開動作するとき、および、ブラケット130がクリック位置P5から開き位置P6まで回動するときだけ、回転部131を摺動する。
【0093】
一方、第2のカム山143は、ブラケット130がクリック位置P3からクリック位置P5まで開動作するときだけ、回転部131を摺動する。
【0094】
このように、一実施形態に係る開閉機構100は、第1のカム山142が回転部131に摺動して第2のカム山143が回転部131に摺動しない第1角度範囲(閉じ位置P1~クリック位置P3、および、クリック位置P5~開き位置P6)と、第2のカム山143が回転部131に摺動して第1のカム山142が回転部131に摺動しない第2角度範囲(クリック位置P3~クリック位置P5)とを有する。
【0095】
これにより、一実施形態に係る開閉機構100は、ブラケット130の開閉角度に応じて、回転部131に対する摺動を、第1のカム山142と第2のカム山143とに分散できるため、第1のカム山142および第2のカム山143の各々の耐摩耗性を高めることができる。
【0096】
また、一実施形態に係る開閉機構100は、ブラケット130の開閉角度に応じて、回転部131の段差の乗り上げに伴うクリックの発生を、第1のカム山142と第2のカム山143とに分散できるため、第1のカム山142および第2のカム山143の各々の耐摩耗性を高めることができる。
【0097】
なお、閉じ位置P1~クリック位置P3、および、クリック位置P5~開き位置P6は、高さが高い一方のカム山(第1のカム山142)が回転部131に摺動するときに、高さが低い他方のカム山(第2のカム山143)が回転部131に摺動しない第3角度範囲でもある。すなわち、一実施形態に係る開閉機構100は、第1のカム山142と第2のカム山143とに高低差を設けたことにより、第2のカム山143が回転部131に摺動しない区間を容易に形成することができる。
【0098】
(実施例)
図14は、従来の開閉機構の耐久試験の実施結果を示すグラフである。
図15は、一実施形態に係る開閉機構100の耐久試験の実施結果を示すグラフである。
【0099】
本実施例では、従来の開閉機構と、一実施形態に係る開閉機構100との各々について、複数のクリック位置の各々のクリック発生時のトルクと、摺動トルクとの各々の、試験回数の増加に伴うトルク変化率を計測した。
【0100】
なお、従来の開閉機構は、カム部材の一の円周上(第2円周上に相当)に、一対のカム山を設け、回転部の一の円周上(第2円周上に相当)に、一対の第1嵌合部、一対の第2嵌合部、および一対の第3嵌合部を設ける構成を採用した。
【0101】
図14に示すように、従来の開閉機構は、試験回数の増加に伴うトルク変化率の低下が著しかった。
【0102】
一方、
図15に示すように、一実施形態に係る開閉機構100は、試験回数の増加に伴うトルク変化率の低下が抑制された。
【0103】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形又は変更が可能である。
【0104】
例えば、実施形態では、第1の円周C1上に2つの第1のカム山142を設けているが、これに限らず、第1の円周C1上に1つまたは3つ以上の第1のカム山142を設けてもよい。
【0105】
また、例えば、実施形態では、第2の円周C2上に2つの第2のカム山143を設けているが、これに限らず、第2の円周C2上に1つまたは3つ以上の第2のカム山143を設けてもよい。
【0106】
また、例えば、実施形態では、2つの円周上の各々にカム山を設けているが、3つ以上の円周上の各々にカム山を設けてもよい。
【0107】
また、例えば、実施形態では、カム部材140にカム山を設けて、当該カム山をブラケット130の回転部131に摺動させるようにしているが、これに限らず、ブラケット130の回転部131にカム山を設けて、当該カム山をカム部材140に摺動させるようにしてもよい。すなわち、カム部材140の構成部と、ブラケット130の回転部131の構成部とを、逆転させて設けてもよい。
【0108】
また、例えば、実施形態では、ブラケット130の回転部131を、2つのカム部材140A,140Bで挟み込む構成としているが、これに限らず、いずれか一方のカム部材140のみを設ける構成としてもよい。
【0109】
また、例えば、実施形態では、開閉機構100をモニタ12の開閉用に用いているが、これに限らず、開閉機構100をモニタ12以外の開閉用に用いてもよい。
【0110】
また、例えば、実施形態では、3つのクリック位置を設けているが、これに限らず、2以下、または、4つ以上のクリック位置を設けてもよく、クリック位置を設けなくともよい。
【符号の説明】
【0111】
10 表示装置
12 モニタ
12A 表示面
20 天井面
22 設置面
100 開閉機構
110 スタンド
111 水平壁部
111A 貫通穴
112 垂直壁部
112A 嵌め込み孔
120 シャフト
121 嵌め込み部
122 フランジ部
123 嵌め込み部
130 ブラケット(開閉部材)
131 回転部
131A 開口部
131B 第1摺動面
131C 第2摺動面
131D 抑制部
131Da 内壁面
131E 回避部
131Ea 内壁面
131F 回避部
131Fa 端部
131G1 第1嵌合部
131G2 第2嵌合部
131G3 第3嵌合部
131H 摺動部分
131I 摺動部分
131J 摺動部分
131K 摺動部分
132 保持部
132A 垂直壁部
132B 水平壁部
140 カム部材
140A 第1のカム部材
140Aa 表面
140B 第2のカム部材
140Ba 表面
141 開口部
142 第1のカム山
142A 側壁部
143 第2のカム山
150 押さえ板
151 嵌め込み孔
160 皿ばね(弾性部材)
161 開口部
C1 第1の円周
C2 第2の円周
P1 閉じ位置
P2 トルク発生位置
P3,P4,P5 クリック位置
P6 開き位置
R1 摺動トルク範囲
AX 回転軸
【要約】
【課題】摺動部の耐摩耗性を高めることが可能な開閉機構を提供すること。
【解決手段】開閉機構は、回転軸上に回転部を有する開閉部材と、回転軸上において開閉部材の回転部と対向して配置され、回転部の回転に負荷を与えるカム部材とを備え、カム部材および回転部のうちの一方の部材は、回転軸を中心とする第1の円周上に設けられた少なくとも1つの第1のカム山と、回転軸を中心とする第1の円周よりも半径が大きい第2の円周上に設けられた少なくとも1つの第2のカム山とを有し、カム部材および回転部のうちの他方の部材は、第1のカム山および第2のカム山が摺動する摺動面を有し、第1のカム山が摺動面を摺動して第2のカム山が摺動面を摺動しない第1角度範囲と、第2のカム山が摺動面を摺動して第1のカム山が摺動面を摺動しない第2角度範囲とを有する。
【選択図】
図13