(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-31
(45)【発行日】2022-09-08
(54)【発明の名称】ファスナーストリンガー及びその製造方法、並びにスライドファスナー
(51)【国際特許分類】
A44B 19/24 20060101AFI20220901BHJP
【FI】
A44B19/24
(21)【出願番号】P 2021545013
(86)(22)【出願日】2019-09-10
(86)【国際出願番号】 JP2019035588
(87)【国際公開番号】W WO2021048930
(87)【国際公開日】2021-03-18
【審査請求日】2021-10-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000006828
【氏名又は名称】YKK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】董 宥辰
(72)【発明者】
【氏名】田村 和夫
(72)【発明者】
【氏名】児島 佳敬
(72)【発明者】
【氏名】野崎 二郎
【審査官】森本 哲也
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-507719(JP,A)
【文献】特表2014-526316(JP,A)
【文献】特開2007-229411(JP,A)
【文献】特開2004-248809(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A44B 19/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ファスナーエレメント(3n,3m)が設けられたファスナーテープ(4n,4m)と、
前記ファスナーテープ(4n,4m)の一端に設けられた止め具部品(5n,5m)を備えるファスナーストリンガー(2n,2m)であって、
前記止め具部品(5n,5m)は、磁性体(30n,30m)と、前記磁性体(30n,30m)を封入する封入部材(40n,40m)と、前記磁性体(30n,30m)が封入された前記封入部材(40n,40m)を少なくとも部分的に被覆又は包囲する射出成形部(50n,50m)を含み、前記射出成形部(50n,50m)の形成時に前記磁性体(30n,30m)に伝達する熱が少なくとも前記封入部材(40n,40m)により抑制される、ファスナーストリンガー。
【請求項2】
前記封入部材(40n,40m)と前記磁性体(30n,30m)の間に断熱層が形成される、請求項1に記載のファスナーストリンガー。
【請求項3】
前記封入部材(40n,40m)が前記射出成形部(50n,50m)から露出した露出面を有する、請求項1又は2に記載のファスナーストリンガー。
【請求項4】
前記射出成形部(50n,50m)は、前記射出成形部(50n,50m)からの前記封入部材(40n,40m)の分離を阻止するように形状付けられる、請求項1乃至3のいずれか一項に記載のファスナーストリンガー。
【請求項5】
前記射出成形部(50n,50m)は、前記封入部材(40n,40m)の外周に設けられた外周部(50m1,50n1)と、前記外周部(50m1,50n1)から径方向内側に延びる又は膨出したアンダーカット部(53n,53m)を有する、請求項1乃至4のいずれか一項に記載のファスナーストリンガー。
【請求項6】
前記封入部材(40n,40m)が少なくとも第1及び第2部材(45m,45n,46m,46n,47m,47n)を含み、前記射出成形部(50n,50m)が前記第1及び第2部材(45m,45n,46m,46n,47m,47n)の境界を封止する、請求項1乃至5のいずれか一項に記載のファスナーストリンガー。
【請求項7】
前記第1及び第2部材(45m,45n,46m,46n)の一方が、前記磁性体(30n,30m)を受け入れる受入口を有するカップ状部材(45m,45n)であり、前記第1及び第2部材(45m,45n,46m,46n)の他方が、前記カップ状部材(45m,45n)の受入口を閉鎖する蓋部材(46m,46n)である、請求項6に記載のファスナーストリンガー。
【請求項8】
前記第1及び第2部材(45m,45n,46m,46n)の一方が、前記磁性体(30n,30m)を受け入れる受入口と、前記受入口の外周に沿って配置された1以上の嵌合突起(45r,46r)を有し、前記第1及び第2部材(45m,45n,46m,46n)の他方が、前記1以上の嵌合突起に嵌合するべき1以上の嵌合凹部(45s,46s)を有する、請求項6に記載のファスナーストリンガー。
【請求項9】
前記封入部材(40n,40m)は、(i)前記射出成形部(50n,50m)により部分的に側面が被覆された円錐台状部分を有し、又は(ii)前記射出成形部(50n,50m)により部分的に被覆された平坦面を有する、請求項1乃至8のいずれか一項に記載のファスナーストリンガー。
【請求項10】
前記射出成形部(50n,50m)は、前記封入部材(40n,40m)が設けられた基部(51n,51m)と、スライダー内に挿入される挿入部(53m,53n)を有するべく前記基部(51n,51m)から延びる延在部(52n,52m)を含む、請求項1乃至9のいずれか一項に記載のファスナーストリンガー。
【請求項11】
前記基部(51m)は、前記磁性体(30m)のN極とS極が配列された軸線(AX1)に関する周方向に沿って延びるに応じて前記封入部材(40m)に接近する少なくとも一つの傾斜面(56)を有し、前記傾斜面(56)が少なくとも部分的に前記封入部材(40m)上に設けられる、請求項10に記載のファスナーストリンガー。
【請求項12】
前記封入部材(40n)は、前記射出成形部(50n)により部分的に側面が被覆された円錐台状部分を含み、
前記基部(51n)は、前記磁性体(30n)のN極とS極が配列された軸線(AX2)に関して前記円錐台状部分の径方向外側に設けられた少なくとも一つの摺動部(57)を有する、請求項10に記載のファスナーストリンガー。
【請求項13】
前記磁性体(30n,30m)がネオジム磁石である、請求項1乃至12のいずれか一項に記載のファスナーストリンガー。
【請求項14】
第1及び第2ファスナーストリンガー(2m,2n)にして、前記第1ファスナーストリンガー(2m)が、第1ファスナーエレメント(3m)が設けられた第1ファスナーテープ(4m)と、前記第1ファスナーテープ(4m)の一端に設けられた第1止め具部品(5m)を備え、前記第2ファスナーストリンガー(2n)が、第2ファスナーエレメント(3n)が設けられた第2ファスナーテープ(4n)と、前記第2ファスナーテープ(4n)の一端に設けられ、前記第1止め具部品と共に一つの止め具を構成する第2止め具部品(5n)を備える、第1及び第2ファスナーストリンガー(2m,2n)と、
前記第1及び第2ファスナーストリンガー(2m,2n)を開閉するためのスライダー(5)を備えるスライドファスナー(1)であって、
前記第1止め具部品(5m)は、第1磁性体(30m)と、前記第1磁性体(30m)を封入する第1封入部材(40m)と、前記第1磁性体(30m)が封入された前記第1封入部材(40m)を少なくとも部分的に被覆又は包囲する第1射出成形部(50m)と、前記第1磁性体(30m)のN極とS極が配列された軸線(AX1)に関する周方向に沿って延びるに応じて前記第1封入部材(40m)に接近する少なくとも一つの傾斜面(56)を含み、
前記第2止め具部品(5n)は、第2磁性体(30n)と、前記第2磁性体(30n)を封入する第2封入部材(40n)と、前記第2磁性体(30n)が封入された前記第2封入部材(40n)を少なくとも部分的に被覆又は包囲する第2射出成形部(50n)と、前記第1及び第2磁性体(30m,30n)間に生じる磁気吸引力に応じて前記傾斜面(56)を摺動する少なくとも一つの摺動部(57)を含む、スライドファスナー。
【請求項15】
前記第1封入部材(40m)は、前記射出成形部により部分的に被覆された平坦面を有し、前記傾斜面(56)が少なくとも部分的に前記平坦面上に形成され、
前記第2封入部材(40n)は、前記射出成形部(50n)により部分的に側面が被覆された円錐台状部分を有し、前記摺動部(57)は、前記第2磁性体(30n)のN極とS極が配列された軸線(AX2)に関して前記円錐台状部分の径方向外側に設けられる、請求項14に記載のスライドファスナー。
【請求項16】
前記第1及び第2封入部材(40n,40m)の少なくとも一方が、前記磁性体を受け入れる受入口を有するカップ状部材(45m,45n)と、前記カップ状部材(45m,45n)の受入口を閉鎖する蓋部材(46m,46n)を含む、請求項14又は15に記載のスライドファスナー。
【請求項17】
ファスナーエレメント(3n,3m)が設けられたファスナーテープ(4n,4m)と、
前記ファスナーテープ(4n,4m)の一端に設けられた止め具部品(5n,5m)を備えるファスナーストリンガー(2n,2m)の製造方法であって、
封入部材(40n,40m)に磁性体(30n,30m)を封入する工程と、
前記磁性体(30n,30m)を封入する前記封入部材(40n,40m)及び前記ファスナーテープ(4n,4m)の一部を金型の成形キャビティーに置かれた状態で射出成形する工程を含み、
前記射出成形時に前記磁性体(30n,30m)に伝達する熱が少なくとも前記封入部材(40n,40m)により抑制される、ファスナーストリンガーの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ファスナーストリンガー及びその製造方法、並びにスライドファスナーに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1、2に示すように磁性体が組み込まれた止め具が知られている。特許文献1では、同文献の
図5に図示のように摺接板の凹部に磁性体が圧入される。特許文献2では、同文献の
図2に図示のように基部の凹部に磁性体が設けられ、カバーにより閉じ込められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2004-248809号公報
【文献】中国実用新案公告第204032535号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本願発明者らは、従来とは異なる方法で止め具部品からの磁性体の脱落をより確実に回避する意義を新たに見出した。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様に係るファスナーストリンガーは、ファスナーエレメントが設けられたファスナーテープと、ファスナーテープの一端に設けられた止め具部品を含む。止め具部品は、磁性体と、磁性体を封入する封入部材と、磁性体が封入された封入部材を少なくとも部分的に被覆又は包囲する射出成形部を含む。射出成形部の形成時に磁性体に伝達する熱が少なくとも封入部材により抑制される。
【0006】
幾つかの実施形態においては、封入部材と磁性体の間に断熱層が形成される。封入部材が射出成形部から露出した露出面を有し得る。射出成形部は、射出成形部からの封入部材の分離を阻止するように形状付けられ得る。射出成形部は、封入部材の外周に設けられた外周部と、外周部から径方向内側に延びる又は膨出したアンダーカット部を有し得る。
【0007】
幾つかの実施形態においては、封入部材が少なくとも第1及び第2部材を含み、射出成形部が第1及び第2部材の境界を封止する。第1及び第2部材の一方が、磁性体を受け入れる受入口を有するカップ状部材であり、第1及び第2部材の他方が、カップ状部材の受入口を閉鎖する蓋部材であり得る。第1及び第2部材の一方が、磁性体を受け入れる受入口と、受入口の外周に沿って配置された1以上の嵌合突起を有し、第1及び第2部材の他方が、1以上の嵌合突起に嵌合するべき1以上の嵌合凹部を有し得る。
【0008】
幾つかの実施形態においては、封入部材は、(i)射出成形部により部分的に側面が被覆された円錐台状部分を有し、又は(ii)射出成形部により部分的に被覆された平坦面を有する。射出成形部は、封入部材が設けられた基部と、スライダー内に挿入される挿入部を有するべく基部から延びる延在部を含み得る。基部は、磁性体のN極とS極が配列された軸線に関する周方向に沿って延びるに応じて封入部材に接近する少なくとも一つの傾斜面を有し、傾斜面が少なくとも部分的に封入部材上に設けられ得る。
【0009】
幾つかの実施形態においては、封入部材は、射出成形部により部分的に側面が被覆された円錐台状部分を含み、基部は、磁性体のN極とS極が配列された軸線に関して円錐台状部分の径方向外側に設けられた少なくとも一つの摺動部を有する。磁性体がネオジム磁石であり得る。
【0010】
本開示の一側面に係るスライドファスナーは、第1及び第2ファスナーストリンガーにして、第1ファスナーストリンガーが、第1ファスナーエレメントが設けられた第1ファスナーテープと、第1ファスナーテープの一端に設けられた第1止め具部品を備え、第2ファスナーストリンガーが、第2ファスナーエレメントが設けられた第2ファスナーテープと、第2ファスナーテープの一端に設けられ、第1止め具部品と共に一つの止め具を構成する第2止め具部品を備える、第1及び第2ファスナーストリンガーと、第1及び第2ファスナーストリンガーを開閉するためのスライダーを含む。第1止め具部品は、第1磁性体と、第1磁性体を封入する第1封入部材と、第1磁性体が封入された第1封入部材を少なくとも部分的に被覆又は包囲する第1射出成形部と、第1磁性体のN極とS極が配列された軸線に関する周方向に沿って延びるに応じて第1封入部材に接近する少なくとも一つの傾斜面を含む。第2止め具部品は、第2磁性体と、第2磁性体を封入する第2封入部材と、第2磁性体が封入された第2封入部材を少なくとも部分的に被覆又は包囲する第2射出成形部と、第1及び第2磁性体間に生じる磁気吸引力に応じて傾斜面を摺動する少なくとも一つの摺動部を含む。
【0011】
幾つかの実施形態においては、第1封入部材は、射出成形部により部分的に被覆された平坦面を有し、傾斜面が少なくとも部分的に平坦面上に形成され、第2封入部材は、射出成形部により部分的に側面が被覆された円錐台状部分を有し、摺動部は、第2磁性体のN極とS極が配列された軸線に関して円錐台状部分の径方向外側に設けられる。
【0012】
幾つかの実施形態においては、第1及び第2封入部材の少なくとも一方が、磁性体を受け入れる受入口を有するカップ状部材と、カップ状部材の受入口を閉鎖する蓋部材を含む。
【0013】
本開示の一態様に係るファスナーストリンガーの製造方法は、ファスナーエレメントが設けられたファスナーテープと、ファスナーテープの一端に設けられた止め具部品を備えるファスナーストリンガーの製造方法であって、封入部材に磁性体を封入する工程と、磁性体を封入する封入部材及びファスナーテープの一部を金型の成形キャビティーに置かれた状態で射出成形する工程を含み、射出成形時に磁性体に伝達する熱が少なくとも封入部材により抑制される。
【発明の効果】
【0014】
本開示の一態様によれば、止め具部品からの磁性体の脱落をより確実に回避することが促進される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本開示の一態様に係る閉じたスライドファスナーの後端部の概略的な斜視図である。スライダーがスライドファスナーの後端部から前方に離れており、その図示が省略されている。
【
図2】本開示の一態様に係る閉じたスライドファスナーの後端部の概略的な上面図である。
【
図3】本開示の一態様に係る止め具の概略図な断面図であり、上下方向で重ね合わされた止め具部品それぞれが、磁性体、封入部材、及び射出成形部を有することを示す。
【
図4】本開示の一態様に係る開いたスライドファスナーの後端部の概略的な斜視図である。
【
図5】本開示の一態様に係る開いたスライドファスナーの後端部の概略的な上面図である。左側の止め具部品によりスライダーが保持されている。
【
図6】本開示の一態様に係る左側の止め具部品の概略的な斜視図である。
【
図7】本開示の一態様に係る左側の止め具部品の概略的な斜視図である。左側の止め具部品によりスライダーが保持されている。
【
図8】本開示の一態様に係る右側の止め具部品の封入部材の概略的な斜視図である。
【
図9】本開示の一態様に係る右側の止め具部品の封入部材の概略的な側面図である。
【
図10】本開示の一態様に係る左側の止め具部品の封入部材の概略的な斜視図である。
【
図11】本開示の一態様に係る左側の止め具部品の封入部材の概略的な側面図である。
【
図12】本開示の一態様に係るスライドファスナーにおいて左側の止め具部品の磁性体と右側の止め具部品の磁性体の間に生じる磁気吸引力によって右側の止め具部品の挿入部がスライダー内に自動的に挿入されることを示す模式図である。
【
図13】本開示の一態様に係るファスナーストリンガーの製造工程を示すフローチャートである。
【
図14】本開示の一態様に係るファスナーストリンガーの製造工程を示す概略図である。
【
図15】カップ状部材と蓋部材が嵌合されない形態を示す概略的な断面図である。
【
図16】封入部材に含まれるカップ状部材のバリエーションを示す概略的な斜視図である。
【
図17】封入部材に含まれる蓋部材のバリエーションを示す概略的な斜視図である。
【
図18】封入部材に含まれるカップ状部材のバリエーションを示す概略的な斜視図である。
【
図19】封入部材に含まれる蓋部材のバリエーションを示す概略的な斜視図である。
【
図20】止め具の1以上の機能部(例えば、傾斜面、摺動部、スライダーに挿入される挿入部)が封入部材により提供されるバリエーションを示す概略的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、
図1乃至
図20を参照しつつ、様々な実施形態及び特徴について説明する。当業者は、過剰説明を要せず、各実施形態及び/又は各特徴を組み合わせることができ、この組み合わせによる相乗効果も理解可能である。実施形態間の重複説明は、原則的に省略する。参照図面は、発明の記述を主たる目的とするものであり、作図の便宜のために簡略化されている。各特徴は、本願に開示されたファスナーストリンガー及びその製造方法にのみ有効であるものではなく、本明細書に開示されていない他の様々なファスナーストリンガー及びその製造方法にも通用する普遍的な特徴として理解される。
【0017】
以下、前後方向がスライダーの移動方向に即して理解され、スライダーの前進によりスライドファスナーが閉じられ、スライダーの後進によりスライドファスナーが開けられる。左右方向及び上下方向は、前後方向に直交する。左右方向は、ファスナーテープのテープ面に平行な方向である。上下方向は、ファスナーテープのテープ面に垂直な方向である。これらの方向を示す用語は、後続の記述に照らして、再定義可能であるものとする。
【0018】
スライドファスナー1は、左右一対のファスナーストリンガー2m,2nと、左右一対のファスナーストリンガー2m,2nを開閉するためのスライダー5を備える。なお、説明の一貫性を確保するため、実施形態の説明においては左右一対のファスナーストリンガーという用語が用いられるが、代替的に、左右一対のファスナーストリンガーは、第1及び第2ファスナーストリンガーと呼ばれ得る。ファスナーエレメント、ファスナーテープ、止め具部品といった他の構成要素についても同様、左右の代替として第1及び第2が用いられ得る。
【0019】
右側ファスナーストリンガー2mは、右側ファスナーエレメント3mが設けられた右側ファスナーテープ4mと、右側ファスナーテープ4mの一端に設けられた右側の止め具部品5mを有する。左側ファスナーストリンガー2nは、左側ファスナーエレメント3nが設けられた左側ファスナーテープ4nと、左側ファスナーテープ4nの一端に設けられた左側の止め具部品5nを有する。右側の止め具部品5mと左側の止め具部品5nが、一つの分離可能な止め具を構成する。ファスナーエレメントは、図示の樹脂エレメントに限られない。ファスナーエレメントは、ファスナーテープに対して加締め付けられた金属エレメント又はファスナーテープに縫い付けられた又は織り込まれたコイル状エレメントであり得る。ファスナーエレメントの種類に応じて止め具部品の構造が変更され得る。ファスナーテープは、織物又は編み物又はこれらの混在物である。
【0020】
図5及び7から理解されるように、左側ファスナーエレメント3nがスライダー5に通され、左側ファスナーエレメント3nからのスライダー5の離脱が左側の止め具部品5nによって阻止される。スライダー5が右側ファスナーエレメント3mに通され、その離脱が右側の止め具部品5mによって阻止される形態も想定される。スライダー5は、上翼板91、下翼板92、上翼板91と下翼板92を連結する連結柱93、上翼板91及び下翼板92の左右端に設けられたフランジ部94を有する。スライダー90は、連結柱93の左右に配置された左右一対の前口97と、一つの後口98を有し、Y字状のエレメント通路を有する。上翼板91のフランジ部94と下翼板92のフランジ部94の間の隙間にファスナーテープが通される。スライダー90は、樹脂又は金属又はこれら以外の材料から成る。
【0021】
図3に示すように、右側の止め具部品5mは、磁性体30mと、磁性体30mを封入する封入部材40mと、磁性体30mが封入された封入部材40mを少なくとも部分的に被覆又は包囲する射出成形部50mを含む。同様、左側の止め具部品5nは、磁性体30nと、磁性体30nを封入する封入部材40nと、磁性体30nが封入された封入部材40nを少なくとも部分的に被覆又は包囲する射出成形部50nを含む。
【0022】
磁性体は、例えば、永久磁石(例えば、ネオジム磁石といった希土類磁石)又は永久磁石により吸引される金属等である。幾つかの場合、腐食や減磁の回避又は抑制のため、磁性体がコーティング(例えば、ニッケルメッキ、クロムメッキ、エポキシ、ナイロン等)される。必要に応じて封入部材40m,40nにはヨーク材39m,39nが封入される。ヨーク材は、永久磁石ともに磁気回路を形成し、永久磁石の無駄な磁気漏れを抑制する。ヨーク材39m,39nは、封入部材40m,40nの対向面から磁性体30m,30nからより離れて設けられ得る。
【0023】
封入部材は、磁性体を封入するように構成され、射出成形部が磁性体に直に接触することを阻止する。封入部材は、透磁性材料から成る。典型的には、封入部材は、樹脂から成り、射出成形により製造される。幾つかの場合、封入部材と磁性体の間に断熱層が形成される。断熱層は、典型的には空気層であるが、これに限られない。封入部材と磁性体の隙間に熱伝導率が低い流体(粉体又は液体又はこれらの混合物)を注入しても構わない。
【0024】
封入部材は、結合可能な2以上の部品から構成され得る。図示の形態では、封入部材は、第1部材としてカップ状部材45を有し、また、第2部材として蓋部材46を有する。カップ状部材45は、磁性体を受け入れる受入口を有する。カップ状部材45の受入口を介してカップ状部材45に磁性体が導入され、次に、蓋部材46が、カップ状部材45上に配置されてその受入口を閉鎖する。このようにして磁性体の全体がカップ状部材45と蓋部材46により包囲される。
【0025】
カップ状部材45と蓋部材46は、例えば、嵌合、圧入といった態様で機械的に結合され得る。これにより射出成形時に成形キャビティーに流入する流体から受ける圧力に関わらず、封入部材は、その閉鎖状態を維持することができる。
図3に示す場合、カップ状部材45(45m,45n)の受入口を周囲する上端面に環状突起が設けられ、蓋部材46(46m,46n)の下方に延びる外周壁に圧入される。追加又は代替として、カップ状部材45(45m,45n)と蓋部材46(46m,46n)が接着剤により固定される。封入部材は、3つ以上の部品から構築されてもよい。
【0026】
射出成形部は、磁性体が封入された封入部材を少なくとも部分的に被覆又は包囲する。射出成形部は、磁性体が封入された封入部材が置かれた成形キャビティーに溶融材料を供給して成形される。封入部材によって溶融材料が磁性体に直接接触することが阻止され、磁性体の減磁が回避又は抑制される。必ずしもこの限りではないが、射出成形部は、カップ状部材45と蓋部材46(つまり、第1及び第2部材)の境界を封止し、両者のより強固な結合が促進される。換言すれば、カップ状部材45と蓋部材46の境界が射出成形部により封止される態様で封入部材が射出成形部により被覆又は包囲される。
【0027】
上述の説明から解かるように、本実施形態では、射出成形によって磁性体を止め具部品に一体的に設けることができ、さらに、封入部材の活用によって磁性体の減磁を回避又は抑制することができる。減磁を回避しつつ射出成形することによって磁性体が止め具部品に一体的に組み込まれ、その脱落の可能性が極小になり、長期使用に適する高耐久性の止め具部品を提供することができる。なお、磁性体の種類は問わないが、好適には、ネオジム磁石が採用される。ネオジム磁石は、比較的強い磁力を有し、また常温でのその減磁が緩やかであるため、止め具部品の長期使用に適する。
【0028】
左側の止め具部品と右側の止め具部品の一方又は両方に磁性体が組み込まれる。図示の形態の如く左側の止め具部品と右側の止め具部品の両方に磁性体が組み込まれる場合、左側の止め具部品と右側の止め具部品が吸引され、両者が重ね合わされる。オプションとして、これに加えて、左側の止め具部品に対する右側の止め具部品の回動が生じ、又は、右側の止め具部品に対する左側の止め具部品の回動が生じる。左側の止め具部品に対する右側の止め具部品の回動は、左側の止め具部品により保持されたスライダー内への右側の止め具部品の挿入部の挿入を生じさせる。右側の止め具部品に対して左側の止め具部品が回動する場合も同様に理解される。これによってスライドファスナーを閉じるために必要な動作が簡単になる。スライドファスナーの開閉が容易ではない幼児や要介護者にとってフレンドリーなスライドファスナーが提供される。
【0029】
封入部材は、射出成形部から露出した露出面を有し得る。図示の場合、封入部材40nの露出面は、射出成形部50nにより被覆されていないカップ状部材45の側面及び下面である。封入部材40mの露出面は、射出成形部50mにより被覆されていない蓋部材46の上面である。封入部材40nのカップ状部材45の下面と封入部材40mの蓋部材46の上面は、磁性体30m,30nの磁着時に対向する対向面又は接触する接触面である。封入部材が射出成形部から露出した露出面を有することによって、
図3に示すように、右側の止め具部品5m上に左側の止め具部品5nが重ね合わされる時、封入部材40m(蓋部材46m)の直上に封入部材40n(カップ状部材45n)が載置される。磁性体30mと磁性体30nの間には射出成形部50m,50nが存在せず、磁性体30m,30nの強固な磁着が促進される。
【0030】
必ずしもこの限りではないが、射出成形部は、射出成形部からの封入部材の分離(又は脱落)を阻止するように形状付けられ、換言すれば、射出成形部は、射出成形部からの封入部材の分離を阻止するアンダーカット部を有する。
図3に示すように、右側の止め具部品5mにおいて、射出成形部50mは、封入部材40mの外周に設けられた外周部50m1と、外周部50m1の下端から径方向内側に延びて封入部材40mの下面を少なくとも部分的に被覆するベース部50m2と、封入部材40mよりも上方の位置で外周部50m1から径方向内側に延びるアンダーカット部50m3を有する。封入部材40mがベース部50m2とアンダーカット部50m3の間で挟まれ、射出成形部50mからの封入部材40mの分離が阻止される。カップ状部材45と蓋部材46の境界が外周部50m1により封止される。
図3に示す場合、カップ状部材45が下方に配置され、蓋部材46が上方に配置され、アンダーカット部50m3が蓋部材46に接触する。カップ状部材45が上方に配置され、蓋部材46が下方に配置され、アンダーカット部50m3がカップ状部材45に接触する形態も想定される。
【0031】
左側の止め具部品5nにおいて、射出成形部50nは、封入部材40nの外周に設けられた外周部50n1と、外周部50n1の上端から径方向内側に延びて封入部材40nの上面を少なくとも部分的に被覆するベース部50n2と、封入部材40nの外周部50n1から径方向内側に膨出したアンダーカット部50n3を有する。カップ状部材45fは下方に向けて縮径し、射出成形部50nのアンダーカット部50n3の内周面は上方に向けて拡径する。これによって射出成形部50nからの封入部材40nの分離が阻止される。カップ状部材45と蓋部材46の境界が外周部50n1により封止される。
図3に示す場合、カップ状部材45が蓋部材46と比較して下方に配置され、アンダーカット部50n3がカップ状部材45に接触するが、カップ状部材45が蓋部材46と比較して上方に配置され、アンダーカット部50n3が蓋部材46に接触する形態も想定される。
【0032】
射出成形部は、単独で、若しくは、封入部材と一緒に、止め具部品に様々な機能を付与するように形状付けられる。非限定の一例においては、左側の止め具部品に対する右側の止め具部品の回動が生じ、又は、右側の止め具部品に対する左側の止め具部品の回動が生じるように止め具部品が構成される。左側及び右側の止め具部品5n,5mは、封入部材40n,40mが設けられた基部51n,51mと、スライダー90内に挿入される挿入部53n,53mを有するべく基部51n,51mから前方に延びる延在部52n,52mを有する。
【0033】
左側の止め具部品5nの延在部52nは、基部51nから前方に延びる挿入部53n及びガイドバー54nを有する。挿入部53nは、スライダー90の後口98を介してスライダー90内に挿入される。スライダー90内に挿入部53nが挿入されて挿入部53nによりスライダー90が保持される。挿入部53nとガイドバー54nの間の隙間に上翼板91又は下翼板92の左側のフランジ部94が導入される。挿入部53nとガイドバー54nの間で左側ファスナーテープ4nが露出し、又は、挿入部53nとガイドバー54nの間の領域が射出成形部50nの薄層により被覆される。延在部52nの挿入部53nは、スライドファスナー1が閉じられる時、右側の止め具部品5mの挿入部53mを受容するように構成される。
【0034】
右側の止め具部品5mの延在部52mは、基部51mから前方に延びる挿入部53m及び停止バー54mを有する。延在部52mの前端には右側ファスナーエレメント3mに隣接して疑似エレメント55が設けられる。挿入部53mは、スライダー90の右側の上下のフランジ部94間の隙間を介してスライダー90内に挿入される。停止バー54mは、スライダー90のフランジ部94に衝突し、スライダー90の連結柱に向けて枢動する挿入部53mの停止位置を定める。スライダー90内に挿入部53mが挿入された状態でスライダー90を前進させることにより、挿入部53mが挿入部53nにより受容され、左右の止め具部品5m,5nが結合する。なお、この時、左右の止め具部品5m,5nに設けられたフック部81m,81nが係合する。
【0035】
左側の止め具部品5nの基部51nにおいて封入部材40nが外周部50n1よりも下方に突出する。封入部材40nに封入される磁性体30nは、磁性体30mよりも上下方向の厚みが大きく、
図4に示した軸線AX2に沿ってより遠方まで磁場を形成することができる。他方、封入部材40mに封入される磁性体30mは、上下方向に直交する方向において磁性体30nよりも大きい幅、端的には直径を有し、
図4に示した軸線AX1から径方向外側に向かう放射方向に沿ってより遠方まで磁場を形成することができる。
【0036】
封入部材40mは、上下方向の厚みが小さい磁性体30nを封入するべく構成され、端的には、
図3、
図8、及び
図9に示すとおり、カップ状部材45mと蓋部材46mから構成される。封入部材40nは、上下方向の厚みが大きい磁性体30mを封入するべく構成され、端的には、
図3、
図10、及び
図11に示すとおり、カップ状部材45nと蓋部材46nから構成される。カップ状部材45nの深さ及び容積は、カップ状部材45mの深さ及び容積よりも大きい。左側の止め具部品5nの基部51nにおいてカップ状部材45nが外周部50n1よりも下方に突出する。封入部材40nは、射出成形部50nにより部分的に側面が被覆された円錐台状部分を有するものと言える。右側の止め具部品5mの基部51mにおいて蓋部材46mの上面が露出し、カップ状部材45nの下面に対向する。蓋部材46mの上面は、射出成形部50mにより部分的に被覆される平坦面である。
【0037】
図4及び
図5に示すように、右側の止め具部品5mの射出成形部50mは、左側の止め具部品5nの封入部材40n、端的にはカップ状部材45の円錐台状部分を受容するように構成される。アンダーカット部50m3が、封入部材40mの外周に沿って延び、受容空間が画定される。アンダーカット部は、周方向で連続する必要はない。周方向において複数のアンダーカット部が設けられる形態も想定される。射出成形部50mは、磁性体30mのN極とS極が配列された軸線AX1に関する周方向に沿って延びるに応じて封入部材40m(蓋部材46の上面)に接近する少なくとも一つの傾斜面56を有する。
【0038】
傾斜面56は、磁性体30mに関する軸線AX1から径方向外側に離れて設けられ、端的には、射出成形部50mの外周部50m1及び/又はアンダーカット部50m3に設けられる。傾斜面56は、周方向において局所的に設けられ、例えば、軸線AX1の全周の360°の角度範囲において180°以下、150°以下、又は90°以下の長さを有する。したがって、アンダーカット部50m3が傾斜面56によって薄厚化されるとしても、アンダーカット部50m3は、射出成形部50mからの封入部材40mの分離を十分に抑制することができる。
【0039】
図6及び
図7に示すように、左側の止め具部品5nの射出成形部50nは、磁性体30m,30n間に生じる磁気吸引力に応じて傾斜面56を摺動する少なくとも一つの摺動部57を有するように構成される。摺動部57は、磁性体30nに関する軸線AX2から径方向外側に離れて設けられ、端的には、軸線AX2に関して円錐台状部分の径方向外側に設けられる。摺動部57は、射出成形部50nの外周部50n1及び/又はアンダーカット部50n3に設けられる。摺動部57は、平坦面57pと垂直面57qの間の縁部であるが、これに限定されるべきではない。
【0040】
磁性体30m,30n間に生じる磁気吸引力によって左側及び右側の止め具部品5m,5nが重ね合わされる時、摺動部57が傾斜面56に接触し、傾斜面56を下る。この過程で、
図12に示すように、左側の止め具部品5nに対して右側の止め具部品5mが回動し、右側の止め具部品5mの挿入部53mがスライダー90の右側の上下のフランジ部94間の隙間を介してスライダー90内に挿入される。摺動部57が傾斜面56を下る過程で基部51m,51nの接触点が増加し、回動安定性が高められる形態も想定される。
【0041】
なお、
図6及び
図7に示すように、左側の止め具部品5nの射出成形部50nは、封入部材40n、端的にはカップ状部材45の円錐台状部分との間に溝85を形成するように設けられた壁86を含む。壁86は、軸線AX2に関する周方向に下り傾斜する下り傾斜面87を有する。下り傾斜面87の下流端は、スライダー5の後端部よりも左右方向において突出する。壁86と外周部50n1の間には溝88が形成される。溝88は、左側の止め具部品5nの挿入部53nの受容空間に空間的に連通する。右側の止め具部品5mの挿入部53mが下り傾斜面87上に配置される時、挿入部53mは、磁性体30m,30nの間の磁気吸引力に応じて下り傾斜面87を下り、続いてスライダー5と大きく干渉することなくスライダー5内及び溝88内に挿入される。
【0042】
図13及び
図14を参照して上述のファスナーストリンガーの非限定の製造方法について説明する。まず、封入部材に磁性体を封入する(S1)。封入部材は、あらかじめ射出成形によって製造することができる。詳細には、カップ状部材内に磁性体を入れ、続いてカップ状部材の受入口を蓋部材で閉鎖する。なお、封入部材に磁性体を封入することは、ヒト又はロボット又は両者の共働により実行される。封入部材に磁性体を封入する作業は、任意の場所で行うことができるが、後述の金型、例えば、固定型上で行うことができる。
【0043】
次に少なくとも封入部材とファスナーテープが金型の成形キャビティーに置かれた状態で射出成形を行う(S2)。
図14に示すように、金型は、固定型200aと可動型200bを有する。固定型200aと可動型200bには成形キャビティー201を形成するキャビティー面202a,202bを有する。可動型200bが固定型200aから離間した状態で封入部材を固定型200aのキャビティー面202aの所定場所に置くことができる。固定型200a上における封入部材40の適切なアライメントのため、固定型200aにアライメント用磁石210を設けることもできる。アライメント用磁石210によって封入部材40内の磁性体30が吸引されて適切にアライメントされる。なお、固定型200a及び可動型200bには、ファスナーエレメントを受容するための受容空間203,205を形成するための面204a,204b,206a,206bも形成される。
【0044】
金型の成形キャビティー201に供給される溶融材料、例えば、溶融樹脂は、不図示のスプルー、ランナー、ゲートを介して成形キャビティー201に供給される。成形キャビティー201に供給された溶融樹脂は、封入部材40に到達して接触するが、封入部材40により阻止されて磁性体に直接的に接触せず、磁性体の磁力の低下が回避又は抑制される。溶融樹脂によって成形キャビティー201が充填されると、金型200が冷却され、成形キャビティー201内の樹脂が硬化し、射出成形部が形成される。右側の止め具部品5mの射出成形部50mの射出成形についても同様に理解される。
【0045】
図15は、カップ状部材と蓋部材が嵌合されない形態を示す。カップ状部材の受入口の外周に位置する上面に蓋部材が載置され、接着剤材を介して固定される形態も想定される。
図16は、カップ状部材45と蓋部材46が嵌合される形態を示す。カップ状部材45は、磁性体を受け入れる受入口45tと、受入口45tの外周に沿って配置された複数の嵌合突起45rを有する。
図17に示すように、蓋部材46は、嵌合突起45rに嵌合する嵌合凹部46sを有する。嵌合突起45r及び嵌合凹部46sの数は、図示の8つに限られず、1以上、好ましくは、2以上、又は3以上、又は4以上である。
図18に示すようにカップ状部材45に周方向に連続した一つの嵌合凹部45sが設けられる形態も想定される。
図19は、
図18の嵌合凹部45sに嵌合する複数の嵌合突起46rが設けられた蓋部材46を示す。
【0046】
先に述べたように、射出成形部は、単独で、若しくは、封入部材と一緒に、止め具部品に様々な機能を付与するように形状付けられる。射出成形部にどの機能を割り当て、封入部材にどの機能を割り当てるのかは、個別事情(顧客要望、製造効率、設計の容易さ)に照らして決定付けられる。したがって、射出成形部に替えて封入部材に上述の傾斜面56や摺動部57を設ける形態も当然に想定される。
図20は、この点を明らかにするものであり、止め具部品の1以上の機能部(例えば、傾斜面、摺動部、スライダーに挿入される挿入部)が封入部材により提供されるバリエーションを示す。右側の止め具部品5mにおいて封入部材40mの下方に射出成形部50mが形成され、左側の止め具部品5nにおいて封入部材40nの上方に射出成形部50nが形成されている。
【0047】
封入部材40mは、磁性体30mを収容する凹部、(オプションとして)傾斜面56、及び(オプションとして)挿入部が設けられた本体部47mと、凹部に磁性体30mを閉じ込めるべく本体部47mに結合した蓋部材46mを有する。射出成形部50mの形成前、本体部47mがファスナーテープに予め固着する形態が想定されるが、これに限られない。同様、封入部材40nは、磁性体30nを収容する凹部、(オプションとして)摺動部57、及び(オプションとして)挿入部が設けられた本体部47nと、凹部に磁性体30nを閉じ込めるべく本体部47nに結合した蓋部材46nを有する。射出成形部50nの形成前、本体部47nがファスナーテープに予め固着する形態が想定されるが、これに限られない。
【0048】
上述の教示を踏まえると、当業者をすれば、各実施形態に対して様々な変更を加えることができる。請求の範囲に盛り込まれた符号は、参考のためであり、請求の範囲を限定解釈する目的で参照されるべきものではない。
【符号の説明】
【0049】
1 :スライドファスナー
2m,2n :ファスナーストリンガー
3m,3n :ファスナーエレメント
4m,4n :右側ファスナーテープ
5 :スライダー
5m,5n :止め具部品
30m,30n :磁性体
40m,40n :封入部材
46m,46n :蓋部材
50m,50n :射出成形部
200 :金型