(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-31
(45)【発行日】2022-09-08
(54)【発明の名称】放送中継装置、及びその制御方法
(51)【国際特許分類】
H04B 7/15 20060101AFI20220901BHJP
H04B 7/005 20060101ALI20220901BHJP
H04B 17/29 20150101ALI20220901BHJP
H04B 17/40 20150101ALI20220901BHJP
【FI】
H04B7/15
H04B7/005
H04B17/29 300
H04B17/40
(21)【出願番号】P 2021545067
(86)(22)【出願日】2019-09-13
(86)【国際出願番号】 JP2019036043
(87)【国際公開番号】W WO2021048997
(87)【国際公開日】2021-03-18
【審査請求日】2022-01-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000001122
【氏名又は名称】株式会社日立国際電気
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】千葉崎 元輝
(72)【発明者】
【氏名】坂田 誠志
【審査官】佐藤 敬介
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-186974(JP,A)
【文献】特開2005-236492(JP,A)
【文献】特開2012-23709(JP,A)
【文献】特開2007-173970(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/15
H04B 7/005
H04B 17/29
H04B 17/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
受信した無線周波数(RF)信号を中間周波数(IF)信号に変換する受信変換部と、
前記受信変換部から前記IF信号が入力される等化器と、
前記等化器の同期異常の検出時に、前記同期異常の原因分析を行う処理部と、を備え、
前記処理部は、前記受信変換部が受信する前記RF信号の入力検知と、変換後の前記IF信号の入力検知と、前記等化器の入力検知と、前記等化器の同期有無の情報とに基づき、前記同期異常の原因分析を行う、
ことを特徴とする放送中継装置。
【請求項2】
請求項1記載の放送中継装置であって、
前記受信変換部は、発振信号を出力する局部発振器と、受信した前記RF信号と前記発振信号が入力されるミキサを有し、
前記処理部は、前記同期異常の原因が受信チャンネル設定ミスと判断した場合、前記局部発振器に対して周波数掃引命令を出すよう制御する、
ことを特徴とする放送中継装置。
【請求項3】
請求項1記載の放送中継装置であって、
前記等化器から入力されるIF信号をRF信号に変換する送信変換部を備え、
前記処理部は、前記送信変換部の前記IF信号の入力検知と、変換後の前記RF信号の入力検知と、出力検知の情報に基づき、前記送信変換部のチャンネル設定ミスの原因分析を行う、
ことを特徴とする放送中継装置。
【請求項4】
請求項3記載の放送中継装置であって、
前記送信変換部は、発振信号を出力する局部発振器と、入力された前記IF信号と前記発振信号が入力されるミキサを有し、
前記処理部は、送信チャンネル設定ミスを検出した場合、前記局部発振器に対して周波数掃引命令を出すよう制御する、
ことを特徴とする放送中継装置。
【請求項5】
受信した無線周波数(RF)信号を中間周波数(IF)信号に変換する受信変換部と、前記受信変換部から前記IF信号が入力される等化器と、前記等化器の同期異常の検出時に、前記同期異常の原因分析を行う処理部と、を備える放送中継装置の制御方法であって、
前記処理部は、前記受信変換部が受信する前記RF信号の入力検知と、変換後の前記IF信号の入力検知と、前記等化器の入力検知と、前記等化器の同期有無の情報とに基づき、前記同期異常の原因分析を行う、ことを特徴とする放送中継装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、受信信号を受けて周波数変換し、デジタル信号処理を行って送信する中継送信機の制御技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の地上デジタル放送中継局におけるRF(Radio Frequency)受信周波数の設定および送信周波数の設定は、周波数が既知で且つ固定であるため、中継送信機の受信変換部や送信変換部に内蔵された設定スイッチを使って、受信チャンネルや送信チャンネルを手動で設定している。このような地上デジタル放送などに関連する先行技術としては、例えば特許文献1~特許文献3がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2000-151552号公報
【文献】特開2009-177500号公報
【文献】特開平06-006253号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したように、従来の中継送信機では、受信チャンネルや送信チャンネルを手動で設定しているため、チャンネルが間違って設定される可能性がある。受信チャンネル、すなわちRF受信周波数が間違って設定されると間違った周波数に周波数変換され、後段のIF(Intermediate Frequency)周波数のデジタル信号処理回路等で正常にIF入力信号に同期することができず、その結果、出力が出ない、あるいはノイズを出力するなどの不具合を起こすことがあった。
【0005】
また、IF周波数の回路では、同期の取れない信号を受信した場合、信号処理ができない等化回路をバイパス回路に切り替え、同期異常状態を外部に知らせる監視機能を有しているが、同期異常状態には、受信チャンネルの設定間違いの場合、回路が故障した場合、入力信号自身が同期できない信号の場合(同期異常)、及び入力信号がない場合の4パターンの原因があり、どの原因で同期異常が起こったのかが分からず、対応に遅れがでる場合があった。
【0006】
本発明は、上記の課題を解決し、間違った周波数に周波数変換することを防ぎ、同期異常状態の原因を容易に分析することが可能な放送中継装置、及びその制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、本発明においては、受信したRF信号をIF信号に変換する受信変換部と、受信変換部からIF信号が入力される等化器と、等化器の同期異常の検出時に、同期異常の原因分析を行う処理部と、を備え、処理部は、受信変換部が受信するRF信号の入力検知と、変換後のIF信号の入力検知と、等化器の入力検知と、等化器の同期有無の情報とに基づき、同期異常の原因分析を行う構成の放送中継装置(第1)を提供する。
【0008】
また、上記の目的を達成するため、本発明における放送中継装置は、上述した放送中継装置(第1)であって、受信変換部は、発振信号を出力する局部発振器と、受信したRF信号と発振信号が入力されるミキサを有し、処理部は、同期異常の原因が受信チャンネル設定ミスと判断した場合、局部発振器に対して周波数掃引命令を出すよう制御する、ことを特徴とする放送中継装置(第2)を提供する。
【0009】
また、上記の目的を達成するため、本発明における放送中継装置は、上述した放送中継装置(第1)であって、等化器から入力されるIF信号をRF信号に変換する送信変換部を備え、処理部は、送信変換部のIF信号の入力検知と、変換後のRF信号の入力検知と、出力検知の情報に基づき、送信変換部のチャンネル設定ミス、及び/または、chBPFの装着間違いの原因分析を行う、ことを特徴とする放送中継装置(第3)を提供する。
【0010】
また、上記の目的を達成するため、本発明における放送中継装置は、上述した放送中継装置(第3)であって、送信変換部は、発振信号を出力する局部発振器と、入力された前記IF信号と発振信号が入力されるミキサを有し、処理部は、送信チャンネル設定ミスを検出した場合、局部発振器に対して周波数掃引命令を出すよう制御する、ことを特徴とする放送中継装置(第4)を提供する。
【0011】
また、上記の目的を達成するため、本発明においては、受信したRF信号をIF信号に変換する受信変換部と、受信変換部からIF信号が入力される等化器と、等化器の同期異常の検出時に、同期異常の原因分析を行う処理部とを備える放送中継装置の制御方法であって、処理部は、受信変換部が受信するRF信号の入力検知と、変換後のIF信号の入力検知と、等化器の入力検知と、等化器の同期有無の情報とに基づき、同期異常の原因分析を行う放送中継装置の制御方法を提供する。
【発明の効果】
【0012】
同期異常状態の原因を容易・詳細に分析することが可能な放送中継装置、及び制御方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施例1に係る、中継送信機の一構成例を示す回路ブロック図。
【
図2】実施例1に係る、中継送信機の受信変換部における異常原因分析結果を説明するための図。
【
図3】実施例1と従来の中継送信機の送信変換部におけるチャンネル設定ミスの原因分析結果を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明を実施するための形態を、図面に従い順次説明する。なお、本明細書において、処理部とは各種の基板で利用される中央処理部(CPU)の総称である。
【実施例1】
【0015】
実施例1は、受信したRF信号をIF信号に変換する受信変換部と、受信変換部からIF信号が入力される等化器と、等化器の同期異常の検出時に、同期異常の原因分析を行う処理部と、を備え、処理部は、受信変換部が受信するRF信号の入力検知と、変換後のIF信号の入力検知と、等化器の入力検知と、等化器の同期有無の情報とに基づき、同期異常の原因分析を行う構成の放送中継装置、及びその制御方法の実施例である。すなわち、実施例1は、受信信号レベル検波をUHF帯・IF帯の両方で行い、受信状況の状態を細かく分類し、例えば、受信チャンネル(ch)設定ミスの場合と回路異常の場合を分けて信号処理することを可能とする放送中継装置、及びその制御方法の実施例である。
【0016】
本実施例においては、受信ch設定ミスの場合と回路異常の場合を分けて処理できるようにするために、受信信号レベル検波をUHF帯のRF信号、IF帯のIF信号の両方で行い、受信状況の状態をより細かく分類する。従来IF帯でのみ入力検波を検出している理由としては、UHF帯のRF信号の検波については、入力信号以外の不要波も混在してくるため、レベル検波しても目的の周波数に信号があるかどうかの判断はできずないため、UHF帯で入力検波をする必要性はなかった。
【0017】
しかしながら、受信周波数設定が間違っているという情報を機器に認識させるためには、周波数変換する前のUHF帯にRF信号があるかないかの情報が必要であるため、本実施例ではUHF帯とIF帯の両方でレベル検波を行い、例えば、UHF帯でRF受信信号がないと判断し、IF帯で受信信号がないとなると、入力信号がないことがわかる。また、UHF帯のRF受信信号があって、IF帯で受信信号がないとなると、UHF帯からIF帯への周波数変換途中で信号が途切れてしまったということになり、受信ch設定ミスとして判断できる。
【0018】
図1に実施例1の中継送信機の回路構成例を示す。同図の中継送信機1は、受信変換部11、等化器及びIF遅延部12、送信変換部13、処理部としてのCPU基板14、パネル基板15、チャンネルバンドパスフィルタ(chBPF)16、電源基板17等が含まれている。同図において、外部から受信変換部11に入力されたUHF帯のRF信号は適宜増幅され、局部発振器(Lo)からの発振信号と共にミキサに入力され、IF帯のIF信号がIFフィルタ(SAW)を経由して出力される。本実施例の受信変換部11は、入力されたUHF帯のRF信号の入力検知部111と、出力されるIF帯のIF信号の入力検知部112、及びこれらの入力検知の情報を受け、CPU基板14の処理部であるCPUに送るためのCPUを備えている。なお、この受信変換部11内のCPUは、CPU基板14から受信ch設定ミスの情報を受け取り、局部発振器(Lo)に対して周波数掃引命令を出し、正しいch設定を行わせる機能も備える。
【0019】
受信変換部11から出力されたIF帯のIF信号は、等化器及びIF遅延部12に入力され、等化処理やIF遅延処理がされた後、送信変換部13に入力される。等化器及びIF遅延部12の内部には、等化の有無やIF遅延の有無を切り替える等化器及びIF遅延系統切替部120、等化器の入力検知部121、等化器の入力検知や同期異常の情報をCPU基板14に渡すField Programmable Gate Array(FPGA)122などを含む。FPGA122は等化器の入力検知や、同期異常のアラーム情報をCPU基板14のCPUに渡す。また、FPGA122は同期が取れない信号が来た時は、上記のアラーム情報をCPU基板14に出力すると同時に、等化器及びIF遅延系統切替部120を自動でバイパス回路に切替る制御も行う。
【0020】
図2は、従来と本実施例の中継送信機1の処理部であるCPU基板14による同期異常検出時の原因分析結果を比較するためのテーブルを示す。テーブル21は従来の原因分析結果、テーブル22は本実施例の処理部であるCPU基板14による原因分析結果を示している。テーブル22に示すように、本実施例の中継送信機1の受信変換部11で、UHF帯のRF信号、IF帯のIF信号の入力検知部111、112による入力検知1、2が行われることにより、同期できない信号の場合、回路異常に基づく同期異常、受信ch設定ミスなどの原因を明確に分析することが可能になる。例えば、UHF帯の入力検知部111の検知が有り、IF帯の入力検知部112の検知がなく、等化器及びIF遅延部12の等化器の入力検知部121の検知がなく、等化器の同期がない場合、CPU基板14の処理部であるCPUは受信ch設定ミスと判断し、受信変換部11内のCPUに対し、自動的に局部発振器(Lo)の受信周波数掃引命令を出し、同期がとれる受信周波数を探し出して迅速に正しいch設定を行わせることができる。更に、UHF帯の入力検知部111の検知がなく、IF帯の入力検知部112の検知がなく、等化器及びIF遅延部12の等化器の入力検知部121の検知がなく、等化器の同期がない場合、入力信号無しと判断し、受信ch設定ミスとは区別することができる。
【0021】
なお、本実施例の中継送信機1は、上述した受信ch設定ミスの防止だけでなく、送信側である送信変換部13のch設定ミスの原因分析も可能となる。すなわち、CPU基板14のCPUは、送信変換部13の入力検知と、変換後のRF信号の入力検知と、出力検知の情報に基づき、送信変換部13のチャンネル設定ミスの原因分析を行う。
【0022】
図1の中継送信機1の送信変換部13は、等化器及びIF遅延部12からIF入力を適宜増幅し、局部発振器(Lo)からの発振信号と共にミキサに入力し、外付けのchBPF16、スケルチ回路等を経由してRF出力を行っている。この送信変換部13においても、IF帯、UHF帯の信号をそれぞれ検知する送信変換入力検知部131、132、及び送信変換出力検知部133で入出力検知を行うことにより、処理部であるCPU基板14は送信ch設定ミスの原因を明確に分析することが可能となる。
【0023】
図3は、従来と本実施例の中継送信機1の処理部であるCPU基板14による送信変換部13におけるch設定ミス原因分析結果を比較したテーブルを示す。テーブル31は従来の原因分析結果、テーブル32は本実施例による送信変換部13におけるch設定ミス原因分析結果を示している。すなわち、
図3のテーブル32に示すように、本実施例の送信変換部13の送信変換入力検知部131、132で入力検知1、入力検知2が行われることにより、処理部であるCPU基板14のCPUは、外付けchBPF16の挿入間違いや、ch設定ミスの原因を明確に区別して把握することが可能となる。このようなCPU基板14の原因分析結果に基づき、送信変換部13のCPU134は、局部発振器(Lo)に対して送信周波数掃引命令を出し、自動的に正しいCh設定を行うことができる。
【0024】
なお、本実施例の放送中継装置を適用する場合は、運用状態での誤動作防止のために、受信、送信周波数自動掃引機能を有効にするメンテナンスモードと、運用モードをパネル基板15のスイッチ(SW)等で設定可能にしておくことが望ましい。これにより、パネル基板15のCPUから各基板のCPUやFPGAに対してメンテナンスモード、運用モードの情報を送ることができる。
【0025】
また、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明のより良い理解のために詳細に説明したのであり、必ずしも説明の全ての構成を備えるものに限定されるものではない。上記実施例では、受信変換部と送信変換部それぞれに複数の入力検知部を設置したが、例えば受信変換部にのみ複数の入力検知部を設置する構成としても良い。
【0026】
更に、上述した複数の基板で利用した処理部であるCPUは、等化器及びIF遅延部で利用したFPGAなどの他の集積回路で実現してもよい。また、各基板にそれぞれCPUを設置することなく、CPU基板14の一つのCPUが他の基板のCPUの機能を実現する構成とすることも可能である。
【符号の説明】
【0027】
1 中継送信機
11 受信変換部
111 UHF帯の入力検知部
112 IF帯の入力検知部
12 等化器及びIF遅延部
120 等化器及びIF遅延系統切替部
121 等化器の入力検知部
122 FPGA
13 送信変換部
131、132 送信変換入力検知部
133 送信変換出力検知部
134 CPU
14 CPU基板
15 パネル基板
16 チャンネルバンドパスフィルタ(chBPF)
17 電源基板