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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-01
(45)【発行日】2022-09-09
(54)【発明の名称】走行制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60W 30/14 20060101AFI20220902BHJP
   B60K 31/00 20060101ALI20220902BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20220902BHJP
【FI】
B60W30/14
B60K31/00 Z
G08G1/16 C
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018062751
(22)【出願日】2018-03-28
(65)【公開番号】P2019172086
(43)【公開日】2019-10-10
【審査請求日】2021-02-08
(73)【特許権者】
【識別番号】301065892
【氏名又は名称】株式会社アドヴィックス
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】安井 拓哉
【審査官】平井 功
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-020590(JP,A)
【文献】特開2001-183150(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 30/00-60/00
B60K 31/00-31/18
G08G 1/00- 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両を目標地点まで移動させる際に、車両の速度である実車速の目標である目標車速を制御することによって車両の自動走行を支援する走行制御装置であって、
前記実車速と前記目標地点と、に基づいて車両が前記目標地点に到達するまでの前記目標車速の推移を設定する設定処理を実行する設定部と、
前記実車速が前記目標車速に追随するように前記車両の駆動装置及び制動装置の少なくとも一方を制御する操作量を算出する操作量算出部と、を備え、
前記設定部は、
前記自動走行の実行中に前記車両の車速を変化させる要求が生じ、当該要求に基づいて前記実車速が変化した場合、
前記要求が解消された時の前記実車速と、前記要求が解消された時の車両の位置から前記目標地点までの残距離と、に基づいて前記目標車速の推移を再設定する再設定処理を実行するようになっており、
前記設定部は、
前記自動走行の実行中に生じた前記要求が解消された時に、前記残距離が規定距離よりも長い場合、前記再設定処理では、規定の第1制限車速を上限とする車両の走行が行われたあとに当該車両を減速させるように、前記目標車速の推移を再設定し、
前記自動走行の実行中に生じた前記要求が解消された時に、前記残距離が前記規定距離以下であり、前記実車速が規定の車速閾値よりも小さい場合、前記再設定処理では、前記第1制限車速よりも小さい第2制限車速を上限とする車両の走行が行われたあとに当該車両を減速させるように、前記目標車速の推移を再設定する
走行制御装置。
【請求項2】
前記設定部は、
前記自動走行の実行中に生じた前記要求が解消された時に、前記残距離が前記規定距離以下であり、前記実車速が前記車速閾値よりも小さい場合、
前記再設定処理では、前記車両の車速を前記第2制限車速で維持させたあとで当該車両を減速させる前記目標車速の推移を再設定する
請求項1に記載の走行制御装置。
【請求項3】
前記操作量算出部は、
前記自動走行の実行中に生じた前記要求が解消された時に、前記残距離が前記規定距離以下であり、前記実車速が前記車速閾値よりも小さい場合、
前記実車速が前記第2制限車速に達するまでの間、前記目標車速を前記第2制限車速とし、当該目標車速と前記実車速との差分が大きいほど車両の加減速度が大きくなるように前記操作量を算出する
請求項1又は2に記載の走行制御装置。
【請求項4】
前記設定部は、
前記自動走行の実行中に生じた前記要求が解消された時に、前記残距離が前記規定距離以下であり、前記実車速が前記車速閾値以上である場合、
前記再設定処理では、車両を加速させないように、前記目標車速の推移を再設定する
請求項1~3のいずれか一項に記載の走行制御装置。
【請求項5】
前記設定部は、前記残距離が大きいほど前記車速閾値を大きくする閾値設定処理を実行する
請求項1~4のいずれか一項に記載の走行制御装置。
【請求項6】
前記要求は、前記車両の運転者による操作によって生じる
請求項1~5のいずれか一項に記載の走行制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の走行制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車両の自動走行を支援する走行制御装置が開示されている。この走行支援装置では、時間の経過によって変化する車両の目標位置と実位置との偏差が小さくなるように操作量が算出される。そして、当該操作量に基づいて車両の駆動装置や制動装置を制御することによって、車両の車速を制御することができる。
【0003】
また、この走行制御装置では、実位置が目標位置に追随していないと判断した場合に、目標位置を維持して実位置と目標位置との乖離が大きくなることを抑制している。これによって、車両の車輪が段差を乗り上げた場合などのように車両の車速が一時的に低下した場合に、操作量が過大となることが抑制されるため、車両が急加速することを抑制できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016‐78744号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
目標位置と実位置との偏差に応じた操作量に基づいて駆動装置や制動装置が制御されている場合に、例えば車両の運転者による制動操作によって車両の速度を変更する要求が同走行制御装置に入力されることがある。このような場合、当該要求が優先され、車両の速度が変更される。特許文献1に開示されている走行制御装置では、上記操作量に基づいて駆動装置や制動装置が制御されている状況下で当該要求が生じた場合について考慮されていない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための走行制御装置は、車両を目標地点まで移動させる際に、車両の速度である実車速の目標である目標車速を制御することによって車両の自動走行を支援する走行制御装置であって、前記実車速と前記目標地点と、に基づいて車両が前記目標地点に到達するまでの前記目標車速の推移を設定する設定処理を実行する設定部と、前記実車速が前記目標車速に追随するように前記車両の駆動装置及び制動装置の少なくとも一方を制御する操作量を算出する操作量算出部と、を備え、前記設定部は、前記自動走行の実行中に前記車両の車速を変化させる要求が生じ、当該要求に基づいて前記実車速が変化した場合、前記要求が解消された時の前記実車速と、前記要求が解消された時の車両の位置から前記目標地点までの残距離と、に基づいて前記目標車速の推移を再設定する再設定処理を実行することをその要旨とする。
【0007】
車両を目標地点まで移動させる自動走行が実行されている最中に車両の車速を変化させる要求が生じ、当該要求に基づいて実車速が変化した場合と、当該要求が生じなかった場合とでは、実車速の推移が相違する。そのため、当該要求が解消されたあとでも、上記要求の発生前に設定された上記目標車速の推移に基づいた目標車速を用いて操作量を算出し、この操作量に基づいて駆動装置や制動装置を駆動させた場合、車両を目標地点まで移動させる自動走行に支障をきたす虞がある。
【0008】
この点、上記構成によれば、車両の車速を変化させる要求が解消されると、再設定処理の実行によって、当該要求が解消された時の実車速と、当該要求が解消された時の車両の位置から目標地点までの残距離と、に基づいて目標車速の推移が再設定される。すると、再設定された目標車速の推移に基づいた目標車速を用いて操作量が算出されるようになる。そして、このような操作量に基づいて駆動装置や制動装置を駆動されることによって、自動走行の途中で上記要求が生じた場合であっても車両を目標地点まで移動させることが可能となる。
【0009】
上記走行制御装置の一例では、前記設定部は、前記自動走行の実行中に生じた前記要求が解消された時に、前記残距離が規定距離よりも長い場合、前記再設定処理では、規定の第1制限車速を上限とする車両の走行が行われたあとに当該車両を減速させるように、前記目標車速の推移を再設定する。一方で、前記設定部は、前記自動走行の実行中に生じた前記要求が解消された時に、前記残距離が前記規定距離以下であり、前記実車速が規定の車速閾値よりも小さい場合、前記再設定処理では、前記第1制限車速よりも小さい第2制限車速を上限とする車両の走行が行われたあとに当該車両を減速させるように、前記目標車速の推移を再設定する。
【0010】
上記走行制御装置の一例では、前記設定部は、前記自動走行の実行中に生じた前記要求が解消された時に、前記残距離が前記規定距離以下であり、前記実車速が前記車速閾値よりも小さい場合、前記再設定処理では、前記車両の車速を前記第2制限車速で維持させたあとで当該車両を減速させる前記目標車速の推移を再設定する。
【0011】
上記走行制御装置の一例では、前記操作量算出部は、前記自動走行の実行中に生じた前記要求が解消された時に、前記残距離が前記規定距離以下であり、前記実車速が前記車速閾値よりも小さい場合、前記実車速が前記第2制限車速に達するまでの間、前記目標車速を前記第2制限車速とし、当該目標車速と前記実車速との差分が大きいほど車両の加減速度が大きくなるように前記操作量を算出する。
【0012】
上記走行制御装置の一例では、前記設定部は、前記自動走行の実行中に生じた前記要求が解消された時に、前記残距離が前記規定距離以下であり、前記実車速が前記車速閾値以上である場合、前記再設定処理では、車両を加速させないように、前記目標車速の推移を再設定する。
【0013】
上記走行制御装置の一例では、前記設定部は、前記残距離が大きいほど前記車速閾値を大きくする閾値設定処理を実行する。
上記走行制御装置において前記要求としては、前記車両の運転者による操作によって生じる要求を採用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】走行制御装置の一実施形態と、同走行制御装置が適用される車両の概略構成を示す図。
図2】同走行制御装置で実行される自動走行制御の処理ルーチンを示すフローチャート。
図3】同走行制御装置で実行される割り込み処理の処理ルーチンを示すフローチャート。
図4】同走行制御装置で実行される速度プロファイル再設定処理の処理ルーチンを示すフローチャート。
図5】速度プロファイル再設定処理に用いられる車速閾値と残距離との関係を示すマップ。
図6】第1態様によって再設定される速度プロファイルを示す図。
図7】第2態様によって再設定される速度プロファイルを示す図。
図8】第2態様によって再設定される速度プロファイルの他の例を示す図。
図9】第3態様によって再設定される速度プロファイルを示す図。
図10】同走行制御装置によって速度プロファイルが再設定された場合のタイミングチャート。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、走行制御装置の一実施形態である走行制御装置10について、図1図10を参照して説明する。
図1には、車両に搭載される走行制御装置10を示している。走行制御装置10には、車両が備える監視装置41からの検出信号が入力される。監視装置41は、例えば車両に搭載されている撮影装置やミリ波レーダー装置によって構成されている。監視装置41は、車両の周囲の情報を取得して、車両の周囲の障害物と車両との相対距離を算出する。走行制御装置10には、車両が備える車速検出系42からの検出信号が入力される。車速検出系42は、車両の各車輪の速度に基づいて車両の車体速度を算出する。走行制御装置10には、車両のブレーキペダルの操作量を検出する制動操作量センサ43から信号が入力されるようになっている。
【0016】
また、当該車両には、制動ECU21と駆動ECU22が搭載されている。制動ECU21及び駆動ECU22は、走行制御装置10と各種の情報を送受信可能となっている。制動ECU21は、車両の制動装置31の駆動を制御する。駆動ECU22は、車両の駆動装置32の駆動を制御する。
【0017】
走行制御装置10は、目標地点LEを設定し、目標地点LEまで車両を移動させて目標地点LEで車両を停止させるような車両の自動走行を支援する自動走行制御を実行する。そして、走行制御装置10は、自動走行制御の実行に必要な機能部として検出部11と、設定部12と、操作量算出部13と、車速制御部14とを備えている。
【0018】
検出部11は、車速検出系42から入力された車体速度を実車速Vsとして取得する。検出部11は、制動操作量センサ43からの検出信号に基づいて車両の運転者の制動操作の有無を検出する。検出部11は、監視装置41から入力される信号に基づいて車両の実位置に相当するパラメータを算出する。また、検出部11は、実位置から自動走行制御における目標地点LEまでの距離を残距離Lrとして算出する。
【0019】
なお、検出部11は、車速検出系42から入力された信号に基づいて車輪の回転量を検出して、当該回転量に基づいて所定期間における車両の走行距離を算出することもできる。
【0020】
設定部12は、自動走行制御に用いられる速度プロファイルを設定する設定処理を実行する。速度プロファイルとは、時間の経過に伴う目標車速の推移のことである。また、設定部12は、速度プロファイルの再設定の条件が成立したときに、目標地点LEに向けて車両が移動している最中に速度プロファイルを再設定する再設定処理を実行する。
【0021】
操作量算出部13は、実車速Vsが目標車速に追随するように車両の制動装置31及び駆動装置32の少なくとも一方を制御するための操作量Xを算出する。例えば車両を加速させる場合、操作量算出部13は、駆動装置32に対する操作量Xを算出する。また、例えば車両を減速させる場合、操作量算出部13は、制動装置31に対する操作量Xを算出する。また、目標車速に実車速Vsを接近させるために、操作量算出部13は、制動装置31に対する操作量Xと、駆動装置32に対する操作量Xとの双方を算出することもある。
【0022】
操作量算出部13は、操作量Xを算出するに際し、目標車速と、単位時間あたりの車両の目標車速の変化量とに基づくF/F制御と、目標車速と実車速Vsとの偏差を入力とするF/B制御とを実施する。「F/F制御」とはフィードフォワード制御のことであり、「F/B制御」とはフィードバック制御のことである。そして、操作量算出部13は、F/F制御によって算出された制御量と、F/B制御によって算出された制御量との和を操作量Xとして算出する。ただし、詳しくは後述するが、F/B制御の実行が禁止されている場合、操作量算出部13は、F/F制御によって算出された制御量を操作量Xとする。
【0023】
車速制御部14は、操作量算出部13によって算出された操作量Xを制動ECU21及び駆動ECU22の少なくとも一方に出力する。
図2を参照して、走行制御装置10で実行される自動走行制御の処理ルーチンについて説明する。本処理ルーチンは、車両の運転者による自動走行制御の開始操作に基づいて実行が開始される。
【0024】
本処理ルーチンが実行されると、まずステップS101において、検出部11によって車両の実位置から自動走行制御における目標地点LEまでの残距離Lrが算出される。残距離Lrが算出されると、処理がステップS102に移行される。ステップS102では、検出部11によって実車速Vsが取得される。次のステップS103では、設定部12によって速度プロファイルの設定処理が実行される。
【0025】
設定部12によって実行される速度プロファイルの設定処理について説明する。
走行制御装置10で実行される自動走行制御は、車両の走行モードを複数備えている。複数の走行モードは、加速モードと定速モードと減速モードとを含む。加速モードでは、制限車速を上限として車両を加速させる。定速モードでは、車速が制限車速に維持される。減速モードでは、車速が制限車速から「0km/h」まで減速される。なお、ステップS103において実行される設定処理では、制限車速として基本制限車速Vtが選択される。
【0026】
速度プロファイルの設定処理では、基本制限車速Vtを上限として車両を加速させる間に車両が走行する距離を基本加速距離Laとして、加速モードにおける目標車速の推移が設定される。また、車速を基本制限車速Vtに維持して車両を走行させる距離を基本定速距離Lcとして、定速モードにおける目標車速の推移が設定される。また、車速を基本制限車速Vtから「0km/h」まで低下させる間に車両が走行する距離を基本減速距離Ldとして、減速モードにおける目標車速の推移が設定される。
【0027】
基本加速距離Laと基本定速距離Lcと基本減速距離Ldは、基本加速距離Laと基本定速距離Lcと基本減速距離Ldとの和が残距離Lrとなるように算出される。基本加速距離Laと基本定速距離Lcと基本減速距離Ldは、以下に示す関係式(式1)、関係式(式2)、関係式(式3)を用いて算出することができる。
【0028】
【数1】
関係式(式1)、関係式(式2)、関係式(式3)に示すように、基本制限車速Vtと実車速Vsと基準加速度Gとに基づいて、基本加速距離La及び基本減速距離Ldが算出される。すなわち、基本加速距離Laは、実車速Vsが小さいほど長くなる。そして、残距離Lrと基本加速距離Laと基本減速距離Ldとに基づいて、基本定速距離Lcが算出される。
【0029】
以上のようにして、ステップS103において、設定部12によって速度プロファイルが設定されると、処理がステップS104に移行される。
ステップS104では、車速制御が開始される。すなわち、操作量算出部13による操作量Xの算出が開始され、且つ、車速制御部14による操作量Xの制動ECU21や駆動ECU22への出力が開始される。その後、本処理ルーチンは終了される。
【0030】
操作量Xが制動ECU21や駆動ECU22に入力されるようになると、入力された操作量Xに基づいて制動ECU21が制動装置31を駆動させたり、入力された操作量Xに基づいて駆動ECU22が駆動装置32を駆動させたりする。これによって、実車速Vsが目標車速に追随するように車両が走行する。
【0031】
なお、ステップS104において開始される車速制御は、車両が目標地点LEに到達して残距離Lrが「0」となり、車両が停止すると終了される。或いは車速制御は、車両の運転者による中断操作によって終了されることもある。
【0032】
図3を参照して、車速制御の実行中に実行される割り込み処理の処理ルーチンについて説明する。この処理ルーチンは、車速制御の実行中に繰り返して実行される。
本処理ルーチンが実行されると、まずステップS201において、制動操作が検出されたか否かが検出部11によって判定される。制動操作が検出された場合、車速を変化させる要求が生じたと判断することができる。一方、制動操作が検出されていない場合、当該要求が生じていないと判断することができる。制動操作が検出されない場合(S201:NO)、本処理ルーチンが一旦終了される。
【0033】
一方、制動操作が検出された場合(S201:YES)、処理がステップS202に移行される。ステップS202では、F/B制御の実行停止が操作量算出部13に指示される。このようにF/B制御の実行が停止されると、操作量算出部13では、F/F制御によって算出された制御量が操作量Xとして導出されるようになる。そして、F/B制御が停止されると、処理がステップS203に移行される。
【0034】
ステップS203では、ステップS201において検出された要求が解消されているか否か、すなわち制動操作が解除されているか否かが検出部11によって判定される。制動操作が継続されている場合(S203:NO)、ステップS203の処理が繰り返し実行される。
【0035】
一方、制動操作が解除されている場合(S203:YES)、処理がステップS204に移行される。ステップS204では、検出部11によって残距離Lrが算出される。すなわち、要求が解消された時の車両の実位置から目標地点LEまでの距離が残距離Lrとして算出される。続いて処理がステップS205に移行され、検出部11によって、要求が解消された時の実車速Vsが取得される。続いて処理がステップS206に移行される。ステップS206では、後述する速度プロファイルの再設定処理が設定部12によって実行される。次のステップS207では、F/B制御の実行の再開が操作量算出部13に指示される。このようにF/B制御の実行が再開されると、操作量算出部13では、F/F制御によって算出された制御量と、F/B制御によって算出された制御量との和が操作量Xとして算出されるようになる。F/B制御が再開された後、本処理ルーチンが一旦終了される。
【0036】
図4を参照して、設定部12が実行する速度プロファイルの再設定処理の処理ルーチンについて説明する。本処理ルーチンは、図3に示した割り込み処理におけるステップS206の処理に続いて実行される。
【0037】
本処理ルーチンが実行されると、まずステップS301において、基本加速距離Laと基本定速距離Lcと基本減速距離Ldとが設定部12によって算出される。ここでは、ステップS103における処理と同様の算出方法が用いられる。基本加速距離Laと基本定速距離Lcと基本減速距離Ldが算出されると、処理がステップS302に移行される。
【0038】
ステップS302では、残距離Lrが基本加速距離Laと基本減速距離Ldとの和よりも大きいか否かが設定部12によって判定される。すなわち、本実施形態では、基本加速距離Laと基本減速距離Ldとの和が、「規定距離」の一例に相当する。残距離Lrが基本加速距離Laと基本減速距離Ldとの和よりも大きい場合(S302:YES)、処理がステップS303に移行される。ステップS303では、速度プロファイルの再設定が第1態様において実行される。すなわち、残距離Lrが規定距離よりも長いときに、第1態様で速度プロファイルの再設定が行われる。再設定にかかる第1態様の詳細は後述する。速度プロファイルが再設定されると、本処理ルーチンが終了される。
【0039】
一方、ステップS302において残距離Lrが基本加速距離Laと基本減速距離Ldとの和以下である場合(S302:NO)、処理がステップS304に移行される。ステップS304では、設定部12によって、車速閾値VsTが設定される。車速閾値VsTは、制動操作の解消時点での実車速Vsが大きいか否かを判断するための値である。車速閾値VsTは、残距離Lrと車速閾値VsTとの関係が記録されたマップを用いて算出される。このマップの一例が図5に示されている。図5に示すように、残距離Lrが「d」よりも小さい範囲では、車速閾値VsTは、規定値VsT0として設定される。残距離Lrが「d」以上となる範囲では、車速閾値VsTは、残距離Lrが大きいほど大きい値として設定される。すなわち、ステップS304の処理が、「閾値設定処理」の一例に相当する。車速閾値VsTが設定されると、処理がステップS305に移行される。
【0040】
ステップS305では、実車速Vsが車速閾値VsTよりも小さいか否かが判定される。実車速Vsが車速閾値VsTよりも小さい場合(S305:YES)、処理がステップS306に移行される。ステップS306では、速度プロファイルの再設定が第2態様において実行される。すなわち、残距離Lrが規定距離以下であり、実車速Vsが車速閾値VsTよりも小さい場合、第2態様で速度プロファイルの再設定が行われる。再設定にかかる第2態様の詳細は後述する。速度プロファイルが再設定されると、本処理ルーチンが終了される。
【0041】
一方、ステップS305において、実車速Vsが車速閾値VsT以上である場合(S305:NO)、処理がステップS307に移行される。ステップS307では、速度プロファイルの再設定が第3態様において実行される。すなわち、残距離Lrが規定距離以下であり、実車速Vsが車速閾値VsT以上である場合、第3態様で速度プロファイルの再設定が行われる。再設定にかかる第3態様の詳細は後述する。速度プロファイルが再設定されると、本処理ルーチンが終了される。
【0042】
図6を参照して、速度プロファイルの再設定処理における第1態様を説明する。
第1態様にかかる再設定処理では、制限車速として第1制限車速Vt1が選択される。本実施形態では、第1制限車速Vt1は基本制限車速Vtと等しい値である。そして、実車速Vsと第1制限車速Vt1と基準加速度Gと残距離Lrとに基づいて、各走行モードにおける目標車速の推移が設定される。
【0043】
具体的には、設定部12によって、次のように目標車速の推移が設定される。車両を第1制限車速Vt1まで加速させる間に車両が走行する距離を第1加速距離La1として、加速モードにおける目標車速の推移が設定される。また、車速を第1制限車速Vt1に維持して車両を走行させる距離を第1定速距離Lc1として、定速モードにおける目標車速の推移が設定される。また、車速を第1制限車速Vt1から減速させながら車両を走行させる距離を第1減速距離Ld1として、減速モードにおける目標車速の推移が設定される。
【0044】
第1加速距離La1と第1定速距離Lc1と第1減速距離Ld1は、以下に示す関係式(式4)、関係式(式5)、関係式(式6)を用いて算出することができる。
【0045】
【数2】
第1加速距離La1と第1定速距離Lc1と第1減速距離Ld1は、第1加速距離La1と第1定速距離Lc1と第1減速距離Ld1との和が残距離Lrとなるように算出される。
【0046】
図6には、第1態様によって再設定される速度プロファイルの例を示している。この速度プロファイルでは、制動操作が解消されるタイミングt11からタイミングt12までの期間が、目標車速を第1制限車速Vt1まで上昇させる加速モードが実施される期間となる。そして、タイミングt12からタイミングt13までの期間が、目標車速を第1制限車速Vt1で維持する定速モードが実施される期間である。最後に、タイミングt13からタイミングt14までの期間が、目標車速を第1制限車速Vt1から「0km/h」まで低下させる減速モードの期間である。
【0047】
なお、図6において、加速モードが実施されるタイミングt11からタイミングt12までの期間における目標車速の積分値が第1加速距離La1に相当する。定速モードが実施されるタイミングt12からタイミングt13までの期間における目標車速の積分値が第1定速距離Lc1に相当する。減速モードが実施されるタイミングt13からタイミングt14までの期間における目標車速の積分値が第1減速距離Ld1に相当する。
【0048】
図7を参照して、速度プロファイルの再設定処理における第2態様を説明する。
第2態様にかかる再設定処理では、制限車速として、第1制限車速Vt1よりも小さい値の第2制限車速Vt2が選択される。実車速Vsと第2制限車速Vt2と基準加速度Gと残距離Lrとに基づいて、各走行モードにおける目標車速の推移が設定される。
【0049】
具体的には、設定部12によって、次のように目標車速の推移が設定される。車両を第2制限車速Vt2まで加速させる間に車両が走行する距離を第2加速距離La2として、加速モードにおける目標車速の推移が設定される。また、車速を第2制限車速Vt2に維持して車両を走行させる距離を第2定速距離Lc2として、定速モードにおける目標車速の推移が設定される。また、車速を第2制限車速Vt2から減速させながら車両を走行させる距離を第2減速距離Ld2として、減速モードにおける目標車速の推移が設定される。
【0050】
第2加速距離La2と第2定速距離Lc2と第2減速距離Ld2は、以下に示す関係式(式7)、関係式(式8)、関係式(式9)を用いて算出することができる。
【0051】
【数3】
第2加速距離La2と第2定速距離Lc2と第2減速距離Ld2は、第2加速距離La2と第2定速距離Lc2と第2減速距離Ld2との和が残距離Lrとなるように算出される。
【0052】
図7に示す実線は、第2態様によって再設定される速度プロファイルの一例である。この速度プロファイルでは、制動操作が解消されるタイミングt21からタイミングt22までの期間が、目標車速を第2制限車速Vt2まで上昇させる加速モードが実施される期間となる。そして、タイミングt22からタイミングt23までの期間が、目標車速を第2制限車速Vt2で維持する定速モードが実施される期間である。最後に、タイミングt23からタイミングt24までの期間が、目標車速を第2制限車速Vt2から「0km/h」まで低下させる減速モードの期間である。
【0053】
なお、図7において、加速モードが実施されるタイミングt21からタイミングt22までの期間における目標車速の積分値が第2加速距離La2に相当する。定速モードが実施されるタイミングt22からタイミングt23までの期間における目標車速の積分値が第2定速距離Lc2に相当する。減速モードが実施されるタイミングt23からタイミングt24までの期間における目標車速の積分値が第2減速距離Ld2に相当する。
【0054】
また、図8には、第2態様において、第2定速距離Lc2の算出値が「0」になる場合に設定される速度プロファイルを示している。この速度プロファイルでは、図8に示すように、第2定速距離Lc2が「0」であるため定速モードが実施されない。すなわち、タイミングt31からタイミングt32間までの期間が、目標車速を第2制限車速Vt2まで上昇させる加速モードが実施される期間となる。そして、タイミングt32からタイミングt33までの期間が、目標車速を第2制限車速Vt2から「0km/h」まで低下させる減速モードの期間である。
【0055】
図9を参照して、速度プロファイルの再設定処理における第3態様を説明する。
第3態様にかかる再設定処理では、自動走行制御において加速モードが実施されないように、目標車速の推移が設定される。すなわち、第3態様にかかる再設定処理では、実車速Vsと基準加速度Gと残距離Lrとに基づいて、定速モード及び減速モードにおける目標車速の推移が設定される。なお、定速モードでは、車速を変化させる要求が解除された時点における実車速Vsの値が維持される。
【0056】
具体的には、設定部12によって、次のように目標車速の推移が設定される。車速を維持して車両を走行させる距離を第3定速距離Lc3として、定速モードにおける目標車速の推移が設定される。また、車速を低下させながら車両を走行させる距離を第3減速距離Ld3として、減速モードにおける目標車速の推移が設定される。
【0057】
第3定速距離Lc3と第3減速距離Ld3は、以下に示す関係式(式10)、関係式(式11)を用いて算出することができる。
【0058】
【数4】
第3定速距離Lc3と第3減速距離Ld3は、第3定速距離Lc3と第3減速距離Ld3との和が残距離Lrとなるように算出される。
【0059】
図9には、第3態様によって再設定される速度プロファイルの例を示している。この速度プロファイルでは、制動操作が解消されるタイミングt41からタイミングt42までの期間が、タイミングt41で検出された実車速Vsで目標車速を維持する定速モードが実施される期間である。そして、タイミングt42からタイミングt43までの期間が、タイミングt41で検出された実車速Vsから「0km/h」まで目標車速を低下させる減速モードの期間である。
【0060】
なお、図9において、定速モードが実施されるタイミングt41からタイミングt42までの期間における目標車速の積分値が第3定速距離Lc3に相当する。減速モードが実施されるタイミングt42からタイミングt43までの期間における目標車速の積分値が第3減速距離Ld3に相当する。
【0061】
本実施形態の作用及び効果について説明する。
図3図4図6図10を参照して、設定処理によって設定された速度プロファイルに基づいて車両が目標地点LEに向かって自動走行しているときに、車両を減速させる要求が発生した場合について説明する。
【0062】
まず、図10を用いて、再設定処理が実行される前に設定処理によって設定されている速度プロファイルについて説明する。この速度プロファイルは、タイミングt0における実車速Vsと、タイミングt0での車両の位置から目標地点LEまでの残距離Lrとに基づいて設定されている。設定処理によって設定されている速度プロファイルに従って車両が走行した場合、図10の(a)に実線で示すように、タイミングt0から走行開始した車両がタイミングt7において目標地点LEに到達することが推測される。
【0063】
設定処理によって設定されている速度プロファイルによれば、タイミングt0からタイミングt1までの期間が、図10の(b)に実線で示すように車速が基本制限車速Vtまで増加される加速モードの期間となる。タイミングt1で走行モードが加速モードから定速モードに移行される。定速モードでは車速が基本制限車速Vtで維持される。この定速モードは、タイミングt1からタイミングt5まで実施される。タイミングt5で走行モードが定速モードから減速モードに移行される。減速モードでは車速が基本制限車速Vtから「0km/h」まで減速される。このような減速モードは、タイミングt7まで実施される。そして、タイミングt7において車両が目標地点LEで停止する。
【0064】
次に、速度プロファイルが再設定される場合の車両の走行距離及び車速の変化について説明する。ここでは、制動操作が解除される時点での残距離Lrが基本加速距離Laと基本減速距離Ldとの和よりも大きい場合の例、すなわち速度プロファイルの再設定にかかる第1態様の例を説明する。
【0065】
タイミングt0からタイミングt1までの期間では、上述した速度プロファイルに従って加速モードが実施される。そのため、加速モードによって目標車速が基本制限車速Vtまで増加される。こうした目標車速の増加に追随するように実車速Vsが増加される。そして、タイミングt1で走行モードが加速モードから定速モードに移行される。すると、目標車速が基本制限車速Vtで維持されるようになる。
【0066】
なお、タイミングt1では、目標車速が基本制限車速Vtと等しくなっているものの、実車速Vsが目標車速(=基本制限車速Vt)に未だ達していないこともある。このような場合、タイミングt1以降でも実車速Vsが目標車速に達するまでの間、実車速Vsの増加が継続されることとなる。
【0067】
タイミングt2では、車両の運転者によるブレーキペダルの操作が開始される。すると、制動操作量センサ43から走行制御装置10に入力される信号が変化するため、図10の(c)に示すように検出部11によって制動操作が検出される。すなわち、車両を減速させる要求が発生したと判定することができる。図3を用いて説明したように、このように制動操作が検出されると(S201:YES)、操作量算出部13でのF/B制御の実行が停止される(S202)。このため、操作量算出部13で算出される操作量Xは、F/F制御によって算出される制御量と等しくなる。そのため、図10の(b)に示すように、運転者の制動操作によって車両に対する制動力が大きくなった分、タイミングt2以降では、実線で示す目標車速は維持されているものの、一点鎖線で示す実車速Vsが低下する。その結果、図10の(a)に示すように、実線で示した速度プロファイルに基づく走行距離の目標値から、一点鎖線で示す実際の走行距離が乖離するようになる。すなわち、時間の経過によって変化する走行距離の目標値に対して実際の走行距離が追随しなくなり、自動走行制御の実施中に制動操作が行われない場合と比して、残距離Lrの短縮速度が小さくなる。
【0068】
そして、図10に示す例では、タイミングt3で制動操作が解除される。すると、制動操作量センサ43から走行制御装置10に入力される信号が変化するため、図10の(c)に示すように検出部11によって制動操作が検出されなくなる。すなわち、車両を減速させる要求が解消されたと判定することができる。走行制御装置10では、図3を用いて説明したように、このように制動操作が解除されると(S203:YES)、速度プロファイルの再設定処理が実行される(S206)。再設定処理によれば、図4を用いて説明したように、制動操作が解除されるタイミングt3時点での残距離Lrが基本加速距離Laと基本減速距離Ldとの和よりも大きいため(S302:YES)、第1態様によって速度プロファイルの再設定が行われる(S303)。そして、タイミングt3以降では、操作量算出部13でのF/B制御の実行が再開される(S207)。すると、操作量算出部13で算出される操作量Xは、F/F制御によって算出される制御量と、F/B制御によって算出される制御量との和と等しくなる。
【0069】
図10の(b)では、第1態様によって再設定された速度プロファイルが二点鎖線で示されている。再設定された速度プロファイルによれば、タイミングt3からタイミングt4までの期間では、走行モードとして加速モードが実施される。タイミングt4で走行モードが加速モードから定速モードに移行され、タイミングt4からタイミングt6までの期間では走行モードとして定速モードが実施される。タイミングt6で走行モードが定速モードから減速モードに移行され、タイミングt6からタイミングt8までの期間では走行モードとして減速モードが実施される。こうして再設定された速度プロファイルに従って車両が走行した場合、タイミングt7よりも後の時期であるタイミングt8において、車両が目標地点LEに到達することが予測される。
【0070】
走行制御装置10によれば、制動操作が解除された時の実車速Vsと、制動操作が解除された時の残距離Lrとに基づいて速度プロファイルが再設定される。すると、再設定された速度プロファイルに基づいた目標車速を用いて操作量Xが算出され、この操作量Xに基づいて駆動装置32や制動装置31の駆動が制御されることとなる。そのため、自動走行の途中で制動操作が行われたために車両が減速された場合であっても、車両を目標地点LEまで移動させることができる。
【0071】
また、走行制御装置10によれば、速度プロファイルが再設定される前に残距離Lrが算出される。このため、制動操作中における車両の走行距離が反映された残距離Lrを用いて速度プロファイルを再設定することができる。これによって、目標地点LEと車両が実際に停止する位置とのずれを小さくすることができる。
【0072】
また、制動操作が解除された時に速度プロファイルが再設定され、再設定された速度プロファイルに基づいた目標車速と実車速Vsとの偏差に基づいてF/B制御が実行される。このため、制動操作の開始前に設定された最初の速度プロファイルに基づく目標車速に対する実車速Vsの偏差に基づいてF/B制御が実施される場合と比較し、操作量算出部13によって算出される操作量Xが過大に算出されることを抑制できる。これによって、制動操作の解除後における車両の急加速を抑制できる。
【0073】
走行制御装置10によれば、制動操作のような車速を変化させる要求が解除された時点の残距離Lrが基本加速距離Laと基本減速距離Ldとの和よりも大きい場合には(S302:YES)、車速の上限が第1制限車速Vt1とされる第1態様によって速度プロファイルが再設定される(S303)。一方、残距離Lrが基本加速距離Laと基本減速距離Ldとの和以下であり(S302:NO)、実車速Vsが車速閾値VsTよりも小さい場合には(S305:YES)、車速の上限が第2制限車速Vt2とされる第2態様によって速度プロファイルが再設定される(S306)。すなわち、残距離Lrが大きい場合には、車速の上限を第1制限車速Vt1として加速モードが実施される。このように残距離Lrが大きい場合には、残距離Lrが大きくない場合よりも、目標地点LEに向かう車両の最高車速を大きくすることができる。その結果、目標地点LEまでの距離が長い場合において、車両が目標地点LEに到達するまでの時間が長くなりすぎることを抑制できる。一方、目標地点LEまでの距離が短い場合には、目標地点LEに向かう車両の最高車速がそれほど大きくならない。すなわち、残距離Lrが小さく目標地点LEまでの距離が近い場合において車速の過度な上昇を避けることができる。
【0074】
また、走行制御装置10によれば、残距離Lrが基本加速距離Laと基本減速距離Ldとの和以下であり(S302:NO)、実車速Vsが車速閾値VsT以上である場合には(S305:NO)、加速モードが実施されない第3態様によって速度プロファイルが再設定される(S307)。これによって、残距離Lrが小さく、当該残距離Lrを走行するために実車速Vsが十分大きい場合には、車両が目標地点LEに到達するまでの間に車速がさらに増大されることを抑制できる。
【0075】
さらに、走行制御装置10では、図5に示したように、残距離Lrが「d」よりも大きいほど大きい値として車速閾値VsTを設定している。これによって、速度プロファイルの再設定に際して、残距離Lrの大きさに基づいて第2態様と第3態様とを使い分けることができる。すなわち、残距離Lrが大きいほど車速閾値VsTが大きくされて、加速モードが実施される第2態様によって速度プロファイルが再設定されやすくなる。このため、残距離Lrが大きい場合に第3態様が選択されることが抑制され、加速モードが実施されないがために車両が目標地点LEに到達するまでの時間が長くなりすぎることを抑制できる。
【0076】
ここで、制動操作のような車速を変化させる要求が解除された時点の残距離Lrによらず、第1態様で速度プロファイルを再設定することも考えられる。この場合、残距離Lrが小さい場合、加速モードや減速モードでは、実車速Vsを目標車速に追随させることが困難となるように目標車速が推移する虞がある。この点、走行制御装置10では、制動操作が解除された時の車両の状態に応じて、速度プロファイルの再設定態様を変更している。これによって、制動操作の解除後において、目標車速の急激な変化が抑制される分、目標車速への車速の追随性を向上することができる。そのため、車両が実際に停止する位置と目標地点LEとの乖離を抑制できる。
【0077】
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・上記実施形態では、図6図9に示した速度プロファイルの設定例を記載しているが、速度プロファイルはこれに限られるものではない。車速を変化させる要求があったときに、要求が解消された時点で、当該時点の実車速と車両の位置からプロファイルを再設定するように構成すれば、上記実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0078】
・上記実施形態では、車速を変化させる要求として制動操作を例示している。車速を変化させる要求については制動操作に限られるものではない。例えばアクセルペダルの操作などの加速操作でもよい。この場合、図3におけるステップS201において、加速操作がなされているか否かを判定して、ステップS203において加速操作が解除されているか否かを判定する。そして、加速操作が解除されたタイミングで速度プロファイルを再設定すれば、上記実施形態と同様に、自動走行制御において、加速操作が行われている間の車速の変化と走行距離とを反映させて車両を目標地点LEまで走行させることができる。
【0079】
また、車速を変化させるような車両の操作は、ブレーキペダルやアクセルペダルのような車載装置の操作に限らない。例えば、走行制御装置としてスマートフォンやタブレット端末のような通信端末と通信可能なものが考えられる。このような走行制御装置によれば、駐車位置を目標地点LEとして設定し、この目標地点LEへの車両の自動走行を支援することができる。この場合も設定処理によって速度プロファイルを設定し、この速度プロファイルに沿った車両の自動走行が支援される。このように自動走行を走行制御装置が支援している最中に、ユーザによる通信端末の操作によって、車速を変化させる要求が通信端末から走行制御装置に入力されると、当該要求に基づいて車速が変化される。そして、当該要求が解除された時には、上記実施形態と同様に、その時点の実車速Vsと残距離Lrとに基づいて速度プロファイルを再設定するようにしてもよい。この場合であっても、再設定された速度プロファイルに沿った車両の自動走行を支援することによって、上記実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0080】
また、加減速を問わず車速を変化させる要求は、運転者による操作に限られるものでもない。例えば、車両の制御装置によって指示される車速を変化させる要求が自動走行制御の実行中に介入するのであれば、当該要求の発生と解消とに基づいて速度プロファイルを再設定するように構成することもできる。車速を変化させる要求であれば、その種類に限らず、上記実施形態と同様に当該要求が解除されたタイミングで速度プロファイルを再設定することで、上記実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0081】
・上記実施形態では、速度プロファイルの設定に規定の基準加速度Gを用いているが、加速モードにおける車両の加速度として、制限車速と実車速Vsとの差に基づいて設定される代替加速度G*を用いることもできる。
【0082】
例えば図7を参照して説明すると、第2制限車速Vt2と実車速Vsとの差に基づいて、当該差が大きいほど代替加速度G*を大きく設定する。当該差が大きいとき、すなわちタイミングt21における車速が実車速Vsよりも小さい値「Vs1」であるとき、一点鎖線で示すように、単位時間当たりの車速の増加量が大きくされる。一方、当該差が小さいときは、すなわちタイミングt21における車速が実車速Vsよりも大きい値「Vs2」であるとき、二点鎖線で示すように、単位時間当たりの車速の増加量が小さくされる。
【0083】
このように可変値である代替加速度G*を採用することによって、制動操作が解除されたときの実車速Vsが小さいとしても、車速が制限車速に到達する時期を早めることができる。これによって、車両が目標地点LEに到達するまでの時間を短縮できる。
【0084】
・上記実施形態では、車速閾値VsTの設定について、図5に示す関係が記録されたマップを用いた。車速閾値VsTは、図5に示したように残距離Lrが「d」よりも小さい範囲で一定の値として設定することに限らず、残距離Lrの全範囲において残距離Lrが大きくなるほど車速閾値VsTが大きく設定される関係が記録されたマップを用いることもできる。また、残距離Lrが大きくなるほど段階的に大きくされるように車速閾値VsTを設定することもできる。
【0085】
・上記実施形態では、残距離Lrと車速閾値VsTとの関係に基づいて車速閾値VsTを設定しているが、車速閾値VsTとしては予め定められた規定の閾値を用いることもできる。
【0086】
・上記実施形態では、車速を変化させる要求が発生した場合、操作量算出部13によるF/B制御の実施が停止される。しかし、当該要求に応じて車速を変化させることができるのであれば、当該要求が発生しているときに操作量算出部13によるF/B制御の実施を停止させなくてもよい。例えば、F/B制御によって算出された制御量と上限値とのうちの小さい方の値と、F/F制御によって算出された制御量との和を操作量Xとして算出するようにしてもよい。
【0087】
・上記実施形態では、基本加速距離Laと基本減速距離Ldとの和を規定距離としている。しかし、規定距離は、基本加速距離Laと基本減速距離Ldとの和に応じた値であればよく、当該和と等しい値に限らない。例えば、基本加速距離Laと基本減速距離Ldと所定のオフセット値との和を規定距離としてもよい。この場合、オフセット値は、基本加速距離La及び基本減速距離Ldよりも短い値となる。例えば、オフセット値は、基本加速距離La及び基本減速距離Ldのうちの小さい方の値の半分未満の値であることが好ましい。
【0088】
・上記実施形態では、基本加速距離Laの算出に使用される基準加速度Gと、基本減速距離Ldの算出に使用される基準加速度Gとは互いに同じ値としている。しかし、基本加速距離Laの算出に使用される基準加速度Gと、基本減速距離Ldの算出に使用される基準加速度Gとを互いに異ならせるようにしてもよい。
【0089】
・上記実施形態では、車両の位置を検出するために監視装置41からの入力信号を用いている。これに替えて、GPSから取得した位置情報に基づいて車両の実位置を取得することもできる。
【0090】
・上記実施形態では、監視装置41からの入力信号に基づいて車両の実位置を取得しているが、これに替えて、目標地点LEまでの距離と走行距離とに基づいて、車両の実位置を推定することもできる。
【符号の説明】
【0091】
10…走行制御装置、11…検出部、12…設定部、13…操作量算出部、14…車速制御部、21…制動ECU、22…駆動ECU、31…制動装置、32…駆動装置、41…監視装置、42…車速検出系、43…制動操作量センサ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10