IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社アドヴィックスの特許一覧

特許7133760車両用ドラムブレーキおよび車両用インホイール構造
<>
  • 特許-車両用ドラムブレーキおよび車両用インホイール構造 図1
  • 特許-車両用ドラムブレーキおよび車両用インホイール構造 図2
  • 特許-車両用ドラムブレーキおよび車両用インホイール構造 図3
  • 特許-車両用ドラムブレーキおよび車両用インホイール構造 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-01
(45)【発行日】2022-09-09
(54)【発明の名称】車両用ドラムブレーキおよび車両用インホイール構造
(51)【国際特許分類】
   F16D 65/22 20060101AFI20220902BHJP
   B60T 13/74 20060101ALI20220902BHJP
   F16D 51/22 20060101ALI20220902BHJP
   F16H 25/20 20060101ALI20220902BHJP
   B60K 17/14 20060101ALI20220902BHJP
   B60K 7/00 20060101ALI20220902BHJP
   H02K 7/116 20060101ALI20220902BHJP
   H02K 7/06 20060101ALI20220902BHJP
   F16D 121/24 20120101ALN20220902BHJP
   F16D 125/40 20120101ALN20220902BHJP
   F16D 125/48 20120101ALN20220902BHJP
   F16D 131/00 20120101ALN20220902BHJP
   F16D 131/02 20120101ALN20220902BHJP
【FI】
F16D65/22
B60T13/74 G
F16D51/22 Z
F16H25/20 Z
B60K17/14
B60K7/00
H02K7/116
H02K7/06 A
F16D121:24
F16D125:40
F16D125:48
F16D131:00
F16D131:02
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018215021
(22)【出願日】2018-11-15
(65)【公開番号】P2020085014
(43)【公開日】2020-06-04
【審査請求日】2021-10-18
(73)【特許権者】
【識別番号】301065892
【氏名又は名称】株式会社アドヴィックス
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】勝山 智徳
【審査官】羽鳥 公一
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-012521(JP,A)
【文献】特開2002-252955(JP,A)
【文献】特開平09-109696(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 1/00-6/12
B60K 7/00-8/00
B60K 16/00
B60K 17/10-17/26
B60T 13/00-13/74
F16D 49/00-71/04
F16H 19/00-37/16
F16H 49/00
H02K 7/00-7/20
F16D 121/24
F16D 125/40
F16D 125/48
F16D 131/00
F16D 131/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内周面を有した円筒状のドラムと、
第一ロータを有した第一モータと、
前記第一ロータと連動して回転する回転部材と、当該回転部材の回転に応じて直動する直動部材と、を有した回転直動変換機構と、
前記直動部材の直動に応じて、前記内周面と接する摺動位置と当該摺動位置よりも前記内周面から離間した離間位置との間で移動する制動部材と、
電子部品と、当該電子部品が実装され円筒状のホイールの第一回転中心と平行な方向に対して交差した姿勢で前記ホイールの筒内に位置された回路基板と、を有し、前記第一ロータの回転を制御する制御装置と、
を備えた、車両用ドラムブレーキ。
【請求項2】
前記回路基板の少なくとも一部と前記第一モータとが前記第一回転中心と平行な方向に重なった、請求項1に記載の車両用ドラムブレーキ。
【請求項3】
前記回路基板は、前記第一回転中心の周方向に沿って延びた、請求項1または2に記載の車両用ドラムブレーキ。
【請求項4】
前記回転直動変換機構は、二つの前記制動部材の間に位置され、
前記回転部材は、当該回転部材の第二回転中心の軸方向に移動可能に設けられ、
二つの前記制動部材のうちの一つに当接し前記回転部材の前記直動部材とは反対側の第一端部と、二つの前記制動部材のうちのもう一つに当接し前記直動部材の前記回転部材とは反対側の第二端部と、の距離が、前記回転部材の回転に応じて長くなることにより、前記回転部材および前記直動部材がそれぞれ前記制動部材を前記内周面に押し付ける、請求項1~3のうちいずれか一つに記載の車両用ドラムブレーキ。
【請求項5】
前記第一モータは、前記ホイールを回転可能に支持する支持部材とサスペンションとを回動可能に接続した接続部材に対して、前記第一回転中心の周方向にずれて位置された、請求項1~4のうちいずれか一つに記載の車両用ドラムブレーキ。
【請求項6】
請求項1~5のうちいずれか一つに記載の車両用ドラムブレーキと、
第二ロータを有し少なくとも一部が前記ホイールの筒内に収容された第二モータと、前記第二ロータの回転を減速して前記ホイールに伝達する減速機構と、を有した駆動ユニットと、
を備えた、車両用インホイール構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両用ドラムブレーキおよび車両用インホイール構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、モータのロータの回転を直動部材の直動に変換してブレーキシューを動かす電動アクチュエータがホイール内に設けられた車両用ドラムブレーキが、知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2001-12521号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の車両用ドラムブレーキは、電動アクチュエータの制御装置の位置や部品配置等によっては電動アクチュエータひいては車両用ドラムブレーキが大型化してしまう虞があった。
【0005】
そこで、本発明の課題の一つは、例えば、より小型化することを可能とするなど、より不都合の少ない新規な構成の車両用ドラムブレーキおよび車両用インホイール構造を得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の車両用ドラムブレーキは、例えば、内周面を有した円筒状のドラムと、第一ロータを有した第一モータと、上記第一ロータと連動して回転する回転部材と、当該回転部材の回転に応じて直動する直動部材と、を有した回転直動変換機構と、上記直動部材の直動に応じて、上記内周面と接する摺動位置と当該摺動位置よりも上記内周面から離間した離間位置との間で移動する制動部材と、電子部品と、当該電子部品が実装され円筒状のホイールの第一回転中心と平行な方向に対して交差した姿勢で上記ホイールの筒内に位置された回路基板と、を有し、上記第一ロータの回転を制御する制御装置と、を備えている。
【0007】
上記車両用ドラムブレーキでは、制御装置の回路基板がホイールの第一回転中心と平行な方向に対して交差した姿勢でホイールの筒内に位置されているため、制御装置ひいては車両用ドラムブレーキを第一回転中心の軸方向により小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施形態の車両用インホイール構造の例示的かつ模式的な断面図である。
図2図2は、実施形態の車両用インホイール構造の一部を車幅方向外側から見た例示的かつ模式的な斜視図である。
図3図3は、図1のIII-III断面図である。
図4図4は、実施形態の車両用インホイール構造の一部を車幅方向内側から見た例示的かつ模式的な斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の例示的な実施形態が開示される。以下に示される実施形態の構成、ならびに当該構成によってもたらされる作用および結果(効果)は、一例である。本発明は、以下の実施形態に開示される構成以外によっても実現可能である。また、本発明によれば、開示される構成および類似の構成によって得られる種々の効果(派生的な効果も含む)のうち少なくとも一つを得ることが可能である。
【0010】
また、本明細書において、序数は、部品や部位等を区別するために便宜上付与されており、優先順位や順番を示すものではない。また、各図では、便宜上、車両前方が矢印Xで示され、車両上方が矢印Zで示され、車幅方向外方が矢印Y1で示され、車幅方向内内方が矢印Y2で示されている。また、以下では、特に断らない限り、回転中心Ax1の軸方向が単に軸方向と称され、回転中心Ax1の径方向が単に径方向と称され、回転中心Ax1の周方向が単に周方向と称される。回転中心Ax1は、第一回転中心の一例である。
【0011】
[全体構成]
図1は、ホイール1およびインホイール構造2の断面図であり、図2は、インホイール構造2の車幅方向外側から見た斜視図である。なお、図2では、ドラムブレーキ30のドラム31は図示されていない。
【0012】
図1に示されるように、インホイール構造2は、有底円筒状のホイール1の筒内に収容されている。ホイール1は、側壁1aと周壁1bとを有している。側壁1aは、軸方向と平行な方向と交差し開口(不図示)が設けられた円板状であり、周壁1bは、側壁1aの周縁から車幅方向内側に延びた円筒状である。
【0013】
インホイール構造2は、ドラムブレーキ30と、駆動ユニット40とを有している。
【0014】
[ドラムブレーキ]
ドラムブレーキ30は、ドラム31と、バッキングプレート32と、ブレーキシュー33と、押圧機構80と、を有している。
【0015】
ドラム31は、側壁31aと周壁31bとを有している。側壁31aは、軸方向と平行な方向と交差した円板状であり、周壁31bは、側壁31aの周縁から車幅方向内方に延びた円筒状である。側壁31aは、ホイール1の側壁1aとボルト1cを介して結合されている。よって、ドラム31は、ホイール1とともに回転中心Ax1回りを回転する。周壁31bは、回転中心Ax1を中心とする円筒状の形状を有している。周壁31bの内周面31cは、円筒内面とも称され、ブレーキシュー33が押し当てられて制動される被制動面である。なお、ドラム31とホイール1とは、スタッドボルトとナットとによって結合されてもよい。
【0016】
バッキングプレート32は、軸方向と平行な方向と交差した円板状であり、ドラム31の筒内の空間を車幅方向内側から覆っている。バッキングプレート32は、車幅方向外側の外面32aと、車幅方向内側の内面32bと、を有している。また、バッキングプレート32には、開口32cが設けられており、この開口32cを、駆動ユニット40が貫通している。すなわち、駆動ユニット40は、ドラム31の筒内に位置される部位と、ドラム31の筒外、すなわちドラム31よりも車幅方向内側に位置される部位と、を有している。また、図2に示されるように、バッキングプレート32の後部の周縁部には、車幅方向外側に向けて突出した突出部32dが設けられている。
【0017】
バッキングプレート32の車幅方向外側には、回転中心Ax1を中心とする円弧状の二つのブレーキシュー33が位置されている。ブレーキシュー33は、バッキングプレート32の外面32aに沿って移動可能に、当該バッキングプレート32に支持されている。ブレーキシュー33のライニングの外周面33aは、ドラム31の内周面31c(図1)に押し当てられ、これによりドラム31ひいてはホイール1が制動される。ブレーキシュー33は、外周面33aが内周面31cと摺動する摺動位置(制動位置、不図示)と、外周面33aが摺動位置よりも内周面31cから離間した離間位置Pn(非制動位置)との間で移動することができる。外周面33aは、制動面あるいは摺動面と称され、内周面31cは、被制動面あるいは被摺動面と称されうる。ブレーキシュー33は、制動部材の一例である。
【0018】
二つのブレーキシュー33は、上下に離間して配置されている。ブレーキシュー33の前側の端部33bは、押圧機構80と接続され、ブレーキシュー33の後側の端部33cは、突出部32dに支持されている。突出部32dは、ブレーキシュー33を移動可能あるいは回動可能に支持するアンカの一例である。突出部32dは、上側のブレーキシュー33の外周面33a(ライニング)の後端33a2と下側のブレーキシュー33の外周面33aの後端33a2との間に位置されている。
【0019】
[押圧機構]
バッキングプレート32の前部の周縁部には、当該バッキングプレート32を車幅方向に貫通する開口32eが設けられている。押圧機構80は、開口32eを貫通した状態で、バッキングプレート32に、不図示のねじ等によって取り付けられている。押圧機構80は、電動アクチュエータとも称されうる。
【0020】
図3は、図1のIII-III断面図である。図3に示されるように、押圧機構80は、モータ81と、減速機構82と、回転直動変換機構83と、ケース84と、制御装置85と、を有している。
【0021】
モータ81は、ロータ81aとステータ81bとを有している。出力シャフト81a1は、ロータ81aの一部である。制御装置85によって制御されることにより、ロータ81aおよび出力シャフト81a1は、回転中心Ax1と平行な方向(方向Y1,Y2)と直交する回転中心Ax3回りに回転する。モータ81は、制動用のモータであり、第一モータの一例である。ロータ81aは、第一ロータの一例である。
【0022】
減速機構82は、複数のギヤ82a~82dを有している。ギヤ82aは、出力シャフト81a1に固定され、ギヤ82dは、回転直動変換機構83の回転部材83aを回転させる。ギヤ82aは、ギヤ82bと噛み合い、ギヤ82bは、ギヤ82cと噛み合い、ギヤ82cは、ギヤ82dと噛み合っている。減速機構82において、ロータ81aの回転が、複数のギヤ82a~82dを介して減速され、回転部材83aに伝達される。
【0023】
回転直動変換機構83は、回転部材83aと、直動部材83bと、を有している。回転部材83aは、回転中心Ax1と平行な方向(方向Y1,Y2)と直交する回転中心Ax4回りに回転可能に設けられている。回転直動変換機構83は、二つのブレーキシュー33の端部33bの間に位置されている。下側のブレーキシュー33の端部33bには、回転部材83aの端部83a1が当接し、上側のブレーキシュー33の端部33bには、直動部材83bの端部83b1が当接している。なお、本実施形態では、回転中心Ax3と回転中心Ax4とは平行であるが、これには限定されない。回転中心Ax4は、第二回転中心の一例である。
【0024】
また、回転部材83aには雄ねじ83c1が設けられ、直動部材83bに設けられた雌ねじ83c2と噛み合っている。また、直動部材83bとケース84との間には、例えばスプライン構造のような、回り止め機構83dが設けられている。回り止め機構83dは、直動部材83bの回転中心Ax4に沿った移動を許容しながら回転中心Ax4回りの回転を抑制する。このような構成により、回転部材83aの回転に応じて直動部材83bは直動する。なお、ケース84は、バッキングプレート32に固定されている。
【0025】
また、回転部材83aとギヤ82dとの間には、雄ねじ83c1とは回転中心Ax4の軸方向にずれた位置において、例えばスプライン機構のような、連動機構83eが設けられている。連動機構83eは、回転部材83aのギヤ82dに対する回転中心Ax4に沿った移動を許容しながら回転部材83aとギヤ82dとの回転中心Ax4回りの相対回転を抑制する。このように、回転部材83aは、連動機構83eにおいて、ギヤ82dに対して回転中心Ax4の軸方向に移動可能に支持されるとともに、上述したように、直動部材83bは、回り止め機構83dにおいて、ケース84に対して回転中心Ax4の軸方向に移動可能に支持されている。すなわち、回転直動変換機構83は、ケース84に、回転中心Ax4の軸方向に移動可能に支持されている。
【0026】
制御装置85は、電子部品85aと、当該電子部品85aが実装された回路基板85bと、を有している。電子部品85aは、例えば、electronic control unit(ECU)や、当該ECUによって制御される複数のスイッチング素子、コンデンサ等である。モータ81が三相交流モータである場合、回路基板85bに実装されたコンデンサおよび六つのスイッチング素子が、直流を三相交流に変換するインバータ回路を構成する。ECUがスイッチング素子のオンオフを切り替えることにより、モータ81に印加される三相の電力を変化させ、これによりモータ81の回転を制御する。
【0027】
回路基板85bは、例えば多層のリジッド基板であるが、これには限定されず、フレキシブル基板や、フレキシブルリジッド基板であってもよい。
【0028】
モータ81は、バッキングプレート32の内面32bよりも車幅方向内方に位置され、当該内面32bに沿って延びている。回転直動変換機構83は、バッキングプレート32の外面32aよりも車幅方向外方に位置され、当該外面32aに沿って延びている。モータ81、当該モータ81の回転中心Ax3、回転直動変換機構83、および回転部材83aの回転中心Ax4は、いずれもホイール1の回転中心Ax1の周方向に略沿って延びており、一例として、上下方向に略沿って延びている。また、減速機構82は、バッキングプレート32に設けられた開口32eを車幅方向に貫通し、言い換えるとバッキングプレート32と交差して延びて延び、モータ81と回転直動変換機構83とを接続している。
【0029】
また、回路基板85bは、回転中心Ax1の軸方向と平行な方向と交差した姿勢で(直交した姿勢で)、バッキングプレート32の内面32bに沿って設けられている。また、回路基板85bは、モータ81と、回転中心Ax1の軸方向と平行な方向に重なっている。モータ81の回転中心Ax3は、バッキングプレート32に沿って延びており、モータ81とバッキングプレート32の内面32bとの間には、隙間が設けられている。回路基板85bは、この隙間に収容されている。すなわち、回路基板85bは、バッキングプレート32とモータ81との間に設けられている。モータ81および制御装置85は、ケース84によって車幅方向内側から覆われている。ケース84は、複数の構成部材を有しており、ケース84内には、モータ81、減速機構82、回転直動変換機構83、および制御装置85が、収容されている。なお、ケース84は一体化される必要はなく、例えば互いに離れた複数のカバーを有するような形態であってもよい。
【0030】
このような押圧機構80において、制御装置85によって制御されたモータ81のロータ81aの回転に伴って回転部材83aが回転すると、回転部材83aと直動部材83bとの回転中心Ax4の軸方向における相対的な位置関係が変化し、回転部材83aの直動部材83bとは反対側の端部83a1と、直動部材83bの回転部材83aとは反対側の端部83b1との回転中心Ax4の軸方向の距離Lが変化する。この距離Lは、回転直動変換機構83の回転中心Ax4の軸方向の長さである。端部83a1は、第一端部の一例であり、端部83b1は、第二端部の一例である。
【0031】
回転直動変換機構83の回転中心Ax4の軸方向、すなわち上下方向における伸びにより、回転部材83a(の端部83a1)および直動部材83b(の端部83b1)は、二つのブレーキシュー33の前側の端部33bを互いに上下に離間するように押圧する。これにより、二つのブレーキシュー33の外周面33aは、ドラム31の内周面31cに押し付けられ、ドラム31ひいてはホイール1の回転速度が減速する。すなわち、押圧機構80の作動により、ブレーキシュー33は、バッキングプレート32の外面32aに沿って離間位置Pnから摺動位置へ移動し、外周面33aと内周面31cとの摺動によって、ドラム31ひいてはホイール1が制動される。
【0032】
[駆動ユニット]
図1に示されるように、駆動ユニット40は、モータ41と、減速機構42と、ケース43と、を有している。
【0033】
図1に示されるように、モータ41は、回転中心Ax1に対して径方向外側にずれて位置されている。本実施形態では、一例として、モータ41は、回転中心Ax1に対して後方にずれて位置されている。また、モータ41は、車軸12およびナックル14のフランジ14aよりも径方向外側に位置されうる。
【0034】
モータ41は、ステータ41aとロータ41bとを有している。通電により、ロータ41bは、回転中心Ax1と平行な回転中心Ax2回りに回転する。図2に示されるように、回転中心Ax2は、回転中心Ax1に対して後方にずれて位置されている。なお、回転中心Ax2は、回転中心Ax1と平行でなくてもよい。なお、モータ41としては種々の型式や構造のものを採用することができる。モータ41は、第二モータの一例であり、ロータ41bは、第二ロータの一例である。
【0035】
また、図1に示されるように、モータ41は、部分的にドラム31の筒内に位置されている。本実施形態では、ロータ41bの一部である出力シャフト41b1の一部が、ドラム31の筒内に位置されている。また、モータ41は、少なくとも部分的にホイール1の筒内に位置されている。言い換えると、モータ41の少なくとも一部は、内周面31cの径方向内側に位置されている。モータ41は、インホイールモータとも称されうる。また、モータ41は、車両駆動用のモータである。
【0036】
減速機構42は、少なくとも部分的にドラム31の筒内に収容されている。言い換えると、減速機構42の少なくとも一部は、内周面31cの径方向内側に位置されている。本実施形態では、一例として、減速機構42は全体的にドラム31の筒内に収容されている。ロータ41bの回転は、減速機構42を介してホイール1に伝達される。減速機構42は、互いに噛み合った複数のギヤ42a,42bを有し、ロータ41bの回転を減速する。ギヤ42aは、出力シャフト41b1と固定され、回転中心Ax2回りに回転する。ギヤ42bはギヤ42aの回転に伴って回転する。ギヤ42bは、ハブ11と固定されており、ハブ11は、ボルト1cを介してドラム31およびホイール1と結合されている。よって、ロータ41bの回転が、ギヤ42a,42bを介して減速され、ホイール1に伝達される。
【0037】
ケース43は、モータ41および減速機構42を収容している。ケース43は、モータ41を覆うモータカバー43aと、減速機構42を覆うギヤカバー43bと、モータ41が収容されるモータ室と減速機構42が収容されるギヤ室とを隔てる隔壁43cと、を有している。隔壁43cには、貫通孔43c1が設けられており、この貫通孔43c1を出力シャフト41b1が貫通している。ケース43は、例えば、鉄系材料やアルミ二ウム合金のような、金属材料で作られる。なお、ケース43は、一体化された複数の部品(分割体)により構成されている。
【0038】
ギヤカバー43bは、ギヤ室の車幅方向内側の側壁43b1を有している。側壁43b1と隔壁43cとは、軸方向と交差する方向に連なっており、一つの壁43dを構成している。側壁43b1(壁43d)には、貫通孔43b2が設けられており、この貫通孔43b2を車軸12が貫通している。側壁43b1のうち貫通孔43b2が設けられた部位の厚さは、他の部位の厚さよりも大きく、他の部位に比べて剛性および強度が高い。壁43dは、バッキングプレート32と軸方向と交差する方向に連なるかあるいはバッキングプレート32と軸方向に重ねられた状態で、当該バッキングプレート32と固定されている。すなわち、ケース43の一部である壁43dは、バッキングプレート32の一部を構成している。
【0039】
また、図2に示されるように、ギヤカバー43bは、ギヤ42bを覆う円筒状の第一部位43b3と、ギヤ42aを覆う半円筒状の第二部位43b4と、を有している。第二部位43b4の半円筒部位の外径は、第一部位43b3の円筒部位の外径よりも小さく、第一部位43b3から径方向外方に(本実施形態では後方に)突出している。第一部位43b3は、二つのブレーキシュー33の中央部の間に位置され、第二部位43b4は、二つのブレーキシュー33の後側の端部33cの間に位置されている。また、バッキングプレート32の突出部32dには、第二部位43b4を収容する凹部32d1が設けられている。凹部32d1は、車幅方向外方に開放されるとともに、径方向内方に開放されている。
【0040】
[ホイールの支持構造]
図1に示されるように、ホイール1の略中央に位置するハブ11は、円筒部11aと、フランジ11bと、を有している。円筒部11aは、軸方向に沿って延びており、フランジ11bは、円筒部11aの車幅方向外側の端部から径方向外方に張り出している。ハブ11には、回転中心Ax1に沿って軸方向に延びる貫通孔11cが設けられており、この貫通孔11cを車軸12が貫通している。車軸12は、ベアリング13を介してハブ11の円筒部11aを回転中心Ax1回りに回転可能に支持している。フランジ11bの車幅方向外側の側面11b1上には、車幅方向外方に向けて、ドラム31の側壁31aおよびホイール1の側壁1aが重ねられ、ボルト1cによってこれらが一体に結合されている。側面11b1は、ドラム取付面と称され、ドラム31の側壁31aの車幅方向外側の側面31a1は、ホイール取付面と称される。側面11b1および側面31a1は、軸方向と平行な方向と交差している(直交している)。車軸12は、ホイール1の支持部材の一例である。
【0041】
[サスペンションとの接続構造]
図4は、ホイール1およびドラム31を除いた状態で車幅方向内側から見たインホイール構造2の斜視図である。図4に示されるように、ナックル14は、フランジ14aと、第一アーム14bと、第二アーム14cと、第三アーム14dと、を有している。
【0042】
フランジ14aは、軸方向と交差する方向に延びており、板状の形状を有している。また、図1に示されるように、フランジ14aには、貫通孔14a1が設けられており、この貫通孔14a1を車軸12が貫通している。フランジ14aは、車軸12およびケース43の壁43dと固定されている。ナックル14は、ホイール1の支持部材の一例である。
【0043】
図4に示されるように、第一アーム14bは、フランジ14aの上端部から上方かつ車幅方向内方に向けて斜めに延びている。第一アーム14bの先端は、ホイール1の筒外まで延びて、ホイール1の車幅方向の端部よりも車幅方向内側に位置されている。第一アーム14bの先端には、サスペンション50のストラット51が接続されている。サスペンション50は、一例として、マクファーソンストラット型のサスペンションである。
【0044】
第二アーム14cは、フランジ14aの下端部から車幅方向内方に延びている。第二アーム14cの先端は、ホイール1の筒内に位置されている。第二アーム14cは、サスペンション50のロワアーム52に、例えばボールジョイントのような接続部材71を介して回動可能に接続されている。接続部材71は、第一接続部材の一例である。
【0045】
また、第三アーム14dは、フランジ14aの前端部から前方かつ車幅方向内方に向けて斜めに延びている。第三アーム14dの先端は、ホイール1の筒内に位置されている。第三アーム14dは、操舵機構60のタイロッド61に、例えばボールジョイントのような接続部材72を介して回動可能に接続されている。タイロッド61は、操舵部品の一例であり、接続部材72は、第二接続部材の一例である。
【0046】
[部品のレイアウト]
図4に示されるように、第二アーム14cおよび接続部材71、モータ41、およびモータ81(押圧機構80)は、周方向に互いにずれて配置されている。ナックル14の第二アーム14cとサスペンション50のロワアーム52とを接続する接続部材71は、ホイール1の筒内に位置される。よって、第二アーム14cおよび接続部材71、モータ41、およびモータ81が周方向互いにずれて配置される構成により、第二アーム14cおよび接続部材71による所要の機能を確保しながら、当該第二アーム14cおよび接続部材71と干渉しない位置に、モータ41,81を配置することができる。第二アーム14cおよび接続部材71は、軸方向に見た場合に、回転中心Ax1よりも下方に位置されている。よって、モータ41,81は、軸方向に見た場合に、回転中心Axよりも下方となる位置以外に、位置されうる。
【0047】
また、モータ41は、第一アーム14b、第三アーム14d、および接続部材72とも、周方向に互いにずれて位置されている。このような構成により、第一アーム14b、第三アーム14d、および接続部材72による所要の機能を確保しながら、当該第一アーム14b、第三アーム14d、および接続部材72と干渉しない位置に、モータ41を配置することができる。
【0048】
また、モータ41は、回転中心Ax1に対して後方にずれて位置され、モータ81(押圧機構80)は、回転中心Ax1に対して前方にずれて位置されている。ストラット51のようなサスペンション50の上部(上側の部位または部品)と接続される第一アーム14bは、軸方向に見た場合に、回転中心Ax1よりも上方に位置される。また、上述したように、ロワアーム52のようなサスペンション50の下部(下側の部位または部品)と接続される第二アーム14cおよび接続部材71は、軸方向に見た場合に、回転中心Ax1よりも下方に位置される。よって、モータ41およびモータ81が、回転中心Ax1に対して、上方および下方とは異なる前方および後方にそれぞれずれて位置される構成により、ナックル14のうちサスペンション50と接続される部位(以下、単に接続部位と称する)およびナックル14とサスペンション50とを接続する接続部材71の所要の機能を確保しながら、接続部位および接続部材71と干渉しない位置に、モータ41およびモータ81を配置することができる。本実施形態では、モータ41は、回転中心Ax1に対して後方にずれて位置されるとともに、モータ81は、回転中心Ax1に対して前方にずれて位置されている。また、モータ41は、車軸12およびナックル14のフランジ14aよりも後方に位置されるとともに、モータ81は、車軸12およびナックル14のフランジ14aよりも前方に位置されている。なお、モータ41が回転中心Ax1に対して前方にずれて位置され、モータ81が回転中心Ax1に対して後方にずれて位置された構成によっても、同様の効果が得られる。この場合、モータ41は、車軸12およびナックル14のフランジ14aよりも前方に位置されてもよいし、モータ81は、車軸12およびナックル14のフランジ14aよりも後方に位置されてもよい。
【0049】
また、モータ41は、回転中心Ax1に対して、第三アーム14dおよび接続部材72とは反対側に位置されている。ナックル14の第三アーム14dとタイロッド61のような操舵機構60の構成部品(操舵部品)とを接続する接続部材72は、軸方向に見た場合に、回転中心Ax1よりも前方かあるいは後方に位置される。よって、モータ41が回転中心Ax1に対して第三アーム14dおよび接続部材72とは反対側、すなわち、回転中心Ax1よりも後方かあるいは前方に位置される構成により、第三アーム14dおよび接続部材72による所要の性能を確保しながら、当該第三アーム14dおよび接続部材72と干渉しない位置に、モータ41を配置することができる。なお、本実施形態では、一例として、軸方向に見た場合にタイロッド61が回転中心Ax1よりも前方に位置されているため、モータ41は回転中心Ax1よりも後方にずれて位置されている。逆に、軸方向に見た場合にタイロッド61が回転中心Ax1よりも後方に位置された構成にあっては、モータ41は回転中心Ax1よりも前方にずれて位置される。
【0050】
また、図4に示されるように、また、モータ81は、回転中心Ax1に対してモータ41の反対側に配置されている。よって、軸方向に見てモータ81とモータ41との間が広くなるため、減速機構42の所要の機能が確保されやすい。
【0051】
また、回路基板85bは、回転中心Ax1の周方向に沿って延びている。なお、回路基板85bは、一例として円弧状であるが、これには限定されず、回転中心Ax1の周方向に沿って折れ曲がりながら当該周方向に沿って延びてもよいし、当該周方向に略沿って直線状に延びてもよい。
【0052】
以上、説明したように、本実施形態では、回路基板85bが、回転中心Ax1(第一回転中心)と平行な方向と交差した姿勢で、ホイール1の筒内に位置されている。このような構成によれば、例えば、回路基板85bを含む制御装置85が軸方向に大型化するのを抑制することができ、当該制御装置85を収容するケース84、ひいては押圧機構80を、より小型に構成することができる。
【0053】
また、本実施形態では、回路基板85bの一部とモータ81(第一モータ)とが回転中心Ax1と平行な方向に重なっている。このような構成によれば、例えば、回転中心Ax1の軸方向に見た場合に回路基板85bとモータ81とが重なっていない構成に比べて、押圧機構80が回転中心Ax1と交差する方向に広がるのを抑制することができ、ひいては、押圧機構80をより小型化することができる。また、これにより、モータ81と回路基板85bとを収容するケース84あるいはモータ81と回路基板85bとを覆うカバーを、より小型化することができる。
【0054】
また、本実施形態では、回路基板85bは、回転中心Ax1の周方向に沿って延びている。このような構成によれば、車軸12の外周とホイール1の内周(バッキングプレート32の外縁)との間の円弧状の空間を利用して、回路基板85bを配置することができる。これにより、回路基板85bがデッドスペースとしての円弧状の空間に位置されない場合に比べて、制御装置85、ひいては押圧機構80を、より小型に構成することができる。
【0055】
また、本実施形態では、回転部材83aの回転に応じて、回転部材83aの端部83a1(第一端部)と直動部材83bの端部83b1(第二端部)との距離L(回転直動変換機構83の長さ)が長くなることにより、回転部材83a(の端部83a1)および直動部材83b(の端部83b1)がそれぞれブレーキシュー33を内周面31cに押し付ける。このような構成によれば、例えば、回転直動変換機構83が直接的に二つのブレーキシュー33を動かすことができるため、例えば、回転直動変換機構83がレバーのような他の部材を介して間接的に二つのブレーキシュー33を動かすような構成に比べて、押圧機構80がより簡素に構成されやすくなったり、押圧機構80がより小型化されやすくなったりする。また、回転部材83aが回転中心Ax4(第二回転中心)の軸方向に移動可能に構成されていることにより、例えば、回転部材83aの端部83a1によってブレーキシュー33を押圧することができるため、回転中心Ax4の軸方向に移動できない回転部材83aの回転に応じて直動する二つの直動部材83bがブレーキシュー33を押圧する構成に比べて、押圧機構80がより一層簡素に構成されやすくなったり、押圧機構80がより一層小型化されやすくなったりする。
【0056】
また、本実施形態では、上述したように、モータ41、モータ81、および接続部材71(第一接続部材)が周方向に互いにずれて位置されたり、モータ41と接続部材72(第二接続部材)とが周方向に互いにずれて位置されたり、モータ41,81が回転中心Ax1に対して前方および後方にずれて位置されたり、軸方向に見た場合にモータ41と押圧機構80とが回転中心Ax1に対して互いに反対側に配置されたり、モータ81と駆動ユニット40とが互いにずれて配置されたりすることにより、モータ41,81と他の部品との干渉が抑制されている。これにより、例えば、モータ41,81が必要以上に小型化されずに済むため、モータ41,81の所要のトルクが確保されやすい。また、例えば、モータ41,81との干渉を考慮せずに済む分、各部品の所要の機能あるいは性能が確保されやすいとともに、各部品のスペックやレイアウトの自由度が高まりやすいという利点も得られる。
【0057】
また、本実施形態では、モータ41がホイール1の回転中心Ax1に対して径方向外側にずれて位置されている。また、モータ41および減速機構42のうちの少なくとも一部が、ドラム31の筒内に位置されている。言い換えると、モータ41および減速機構42のうちの少なくとも一部が、ドラム31の内周面31cの径方向内側に位置されている。このような構成により、例えば、ドラム31と駆動ユニット40とが軸方向に部分的に重なり合うことなく直列に並んだ構成に比べて、インホイール構造2を軸方向により小さく構成することができる。
【0058】
以上、本発明の実施形態が例示されたが、上記実施形態は一例であって、発明の範囲を限定することは意図していない。上記実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、組み合わせ、変更を行うことができる。また、各構成や、形状、等のスペック(構造や、種類、方向、形式、大きさ、長さ、幅、厚さ、高さ、数、配置、位置、材質等)は、適宜に変更して実施することができる。
【0059】
例えば、上記実施形態では、サスペンションは、例えばマルチリンク式のような、マクファーソンストラット式とは異なる型式のサスペンションであってもよい。また、各減速機構は上記実施形態には限定されず、ギヤの数、大きさ、配置等は適宜に変更して実施することが可能であるし、例えば遊星歯車のようなギヤセットを含んでもよいし、ベルト式のようなギヤ式とは異なる減速機構であってもよい。また、回転直動変換機構では、回転部材に雌ねじが設けられ、直動部材に雄ねじが設けられてもよい。また、回転直動変換機構は、ねじ機構に替えて例えばラックアンドピニオン機構のような他の機構を有してもよい。また、回転直動変換機構は、一つの回転部材と当該一つの回転部材の回転に伴って互いに逆向きに移動する二つの直動部材とを有してもよい。この場合、回転直動変換機構は、一つのピニオンと二つのラックとを有するラックアンドピニオン機構を有してもよい。また、車両駆動用のモータと減速機構とは、ホイールの回転中心の軸方向に重なってもよい。
【符号の説明】
【0060】
1…ホイール、2…インホイール構造、14…ナックル(支持部材)、30…ドラムブレーキ、31…ドラム、31c…内周面、33…ブレーキシュー(制動部材)、40…駆動ユニット、41…モータ(第二モータ)、41b…ロータ(第二ロータ)、42…減速機構、50…サスペンション、71…接続部材、81…モータ(第一モータ)、81a…ロータ(第一ロータ)、83…回転直動変換機構、83a…回転部材、83a1…端部(第一端部)、83b…直動部材、83b1…端部(第二端部)、85…制御装置、85a…電子部品、85b…回路基板、Ax1…回転中心(第一回転中心)、Ax4…回転中心(第二回転中心)、L…距離。
図1
図2
図3
図4