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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-01
(45)【発行日】2022-09-09
(54)【発明の名称】電気コネクタ
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/22 20060101AFI20220902BHJP
   H01R 4/58 20060101ALI20220902BHJP
【FI】
H01R13/22 Z
H01R4/58 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018198291
(22)【出願日】2018-10-22
(65)【公開番号】P2020068056
(43)【公開日】2020-04-30
【審査請求日】2021-06-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000243342
【氏名又は名称】本多通信工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001014
【氏名又は名称】弁理士法人東京アルパ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 慎司
(72)【発明者】
【氏名】笠原 雅之
(72)【発明者】
【氏名】飛永 真人
【審査官】藤島 孝太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-102999(JP,A)
【文献】特開2008-041442(JP,A)
【文献】特開2017-091781(JP,A)
【文献】実開平04-096982(JP,U)
【文献】特開2015-072848(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 4/58
13/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンタクトと、絶縁体とを備えるコネクタにおいて、
前記コンタクトは、
長尺板状であり、
第二のコネクタに設けられた第二のコンタクトと接触することにより、第二の前記コンタクトと電気接続して高周波電気信号を伝送し、
前記コンタクトの先端から、前記コネクタと前記第二のコネクタとを接続する接続方向とは異なる方向へ向けて真っ直ぐに延びる平坦部を有し、
前記平坦部において、第二の前記コンタクトと接触し、
前記絶縁体は、略平らな表面と、前記表面から凹設された溝部とを有し、
前記コンタクトは、前記絶縁体に嵌合して固定され、
前記平坦部は、前記溝部のなかに配置され、一方の面が露出し、
前記コンタクトは、更に、
前記先端の近くに位置し、幅が前記溝部の幅よりもわずかに大きい矢弦部を有し、
前記溝部に前記矢弦部が圧入され、
前記絶縁体は、更に、
前記矢弦部の近くに位置し、前記矢弦部を前記溝部に圧入したときに発生するバリを収容するバリ収容部を有する、
コネクタ。
【請求項2】
前記絶縁体は、更に、
前記コンタクトの前記先端よりも先に位置し、前記コンタクトの表面よりも隆起した隆起部を有する、
請求項のコネクタ。
【請求項3】
前記平坦部は、厚さが前記溝部の深さ以下であり、露出した前記一方の面が、前記絶縁体の前記表面と面一又はそれよりも凹んでいる、
請求項1又は2のコネクタ。
【請求項4】
前記コネクタは、更に、
前記溝部の周囲を囲み、前記コンタクトが第二の前記コンタクトと接触したとき、前記絶縁体と第二の前記コネクタの絶縁体との間の隙間を塞ぐパッキンを有する、
請求項乃至いずれかのコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、高密度実装基板を挿入するカードコネクタ装置が記載されている。
特許文献2には、タブレット型コンピュータなどの第1のユニットと、キーボードなどを有する第2のユニットとを備える電子機器が記載されている。第1のユニットと第2のユニットとは、着脱可能であり、第1のユニットが第2のユニットに装着された状態において、ノート型パソコンとして機能する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平5-259684号公報
【文献】特開2017-123100号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されたカードコネクタ装置は、実装基板を正しい方向からカードコネクタ装置に挿入する必要があり、挿入を案内するガイドなどを設けたとしても、挿入可能な方向の範囲は、あまり広くならない。
特許文献2に記載された電子機器は、ノート型パソコンとして機能するとき、第1のユニットが第2のユニットに対して回動可能に接続されるよう構成されている。したがって、特許文献1に記載されたようなカードコネクタ装置を第2のユニットに設け、第1のユニットに設けた基板を挿入して接続する構成とした場合、挿入可能な方向がわかりにくく、着脱に手間がかかる。また、挿入可能でない方向から無理に挿入しようとすると、コネクタ部分が破損する場合がある。
これに対し、特許文献2に記載されたように第1のユニットの側面に露出して固定された端子に正面から接触する端子を第2のユニットに設けるコネクタ構造であれば、特許文献1に記載されたように基板の端部をカードコネクタ装置に挿入する構造と異なり、着脱可能な方向の範囲が比較的広いので、着脱に手間がかからず、破損の危険も少なくなる。
ここで、第1のユニットの端子は、図11に示すように、端子(コンタクト12Z)の先端を上向きに折り曲げて、本体(絶縁体11Z)に嵌合させる。これは、端子を本体に対して位置決めするとともに、使用者が端子に爪を引っかけるなどして端子の先端が剥がれて浮き上がり破損するのを防ぐためである。
このように構成されたコネクタは、着脱が容易であり、堅牢性に優れている。また、最大5Gbps(ギガビット毎秒)程度の高速伝送が可能である。
しかし、近年、コンピュータのデータ処理能力の増大や通信速度の向上が著しく、更なる高速伝送が可能なコネクタが望まれる。
本発明は、例えば上記のような課題を解決し、着脱が容易で、堅牢性に優れ、更なる高速伝送が可能な電気コネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係るコネクタは、コンタクトを備える。前記コンタクトは、長尺板状である。第二のコネクタに設けられた第二のコンタクトと接触することにより、第二の前記コンタクトと電気接続して高周波電気信号を伝送する。前記コンタクトの先端から、前記コネクタと前記第二のコネクタとを接続する接続方向とは異なる方向へ向けて真っ直ぐに延びる平坦部を有する。前記平坦部において、第二の前記コンタクトと接触する。
前記コネクタは、更に、絶縁体を備えてもよい。前記絶縁体は、略平らな表面と、前記表面から凹設された溝部とを有してもよい。前記コンタクトは、前記絶縁体に嵌合して固定されてもよい。前記平坦部は、前記溝部のなかに配置され、一方の面が露出していてもよい。
前記コンタクトは、更に、前記先端の近くに位置し、幅が前記溝部の幅よりもわずかに大きい矢弦部を有してもよい。前記溝部に前記矢弦部が圧入されていてもよい。
前記絶縁体は、更に、前記矢弦部の近くに位置し、前記矢弦部を前記溝部に圧入したときに発生するバリを収容するバリ収容部を有してもよい。
前記絶縁体は、更に、前記コンタクトの前記先端よりも先に位置し、前記コンタクトの表面よりも隆起した隆起部を有してもよい。
前記平坦部は、厚さが前記溝部の深さ以下であり、露出した前記一方の面が、前記絶縁体の前記表面と面一又はそれよりも凹んでいてもよい。
前記コネクタは、更に、前記溝部の周囲を囲み、前記コンタクトが第二の前記コンタクトと接触したとき、前記絶縁体と第二の前記コネクタの絶縁体との間の隙間を塞ぐパッキンを有してもよい。
【発明の効果】
【0006】
本発明に係る前記コネクタによれば、前記平坦部が、前記コンタクトの前記先端から真っ直ぐに延びているので、第二の前記コンタクトと接触する接触点から先端までの距離が短くなり、高速伝送ができる。
前記コンタクトを前記絶縁体に嵌合して固定すれば、前記コンタクトが破損するのを防ぐことができる。
特に、前記矢弦部を前記溝部に圧入すれば、使用者が前記コンタクトに爪を引っかけるなどして、前記コンタクトの先端が剥がれて浮き上がるのを防ぐことができる。
更に、前記矢弦部を前記溝部に圧入するときに発生するバリを収容するバリ収容部を設ければ、前記バリが前記コンタクトと前記絶縁体との間に挟まったり、前記コンタクトの表面に付着したりするのを防ぐことができる。
また、前記隆起部を設けたり、前記平坦部の露出した面を前記絶縁体の表面と面一又はそれよりも凹ませたりすれば、使用者が前記コンタクトに爪を引っかけるなどするのを防ぐことができる。
そして、前記パッキンを設ければ、接続状態において、水分や塵芥の侵入を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】例示的なコネクタ10Aを示す底面図。
図2】例示的なコネクタ20の例を示す平面図。
図3】例示的な絶縁体11Aを線III-IIIに沿って切った拡大断面図。
図4】前記絶縁体11Aを示す拡大底面図。
図5】例示的なコンタクト12Aを示す拡大側面図。
図6】前記コンタクト12Aを示す拡大底面図。
図7】例示的な絶縁体21を示す拡大平面図。
図8】前記絶縁体21を線VIII-VIIIに沿って切った拡大断面図。
図9】例示的なコンタクト22を示す拡大側面図。
図10】前記コネクタ10Aと前記コネクタ20とが接続した状態を示す拡大断面図。
図11】比較例のコネクタ10Zを示す拡大断面図。
図12】挿入損失の一例を示すグラフ。
図13】例示的なコネクタ10Bを示す拡大断面図。
図14】例示的なコンタクト12Bを示す拡大側面図。
図15】例示的な絶縁体11Bを示す拡大断面図。
図16】前記絶縁体11Bを示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1を参照すると、コネクタ10Aは、以下を有する。
<絶縁体11A>略長方形板状である。
<複数のコンタクト12A>導電材料で形成され、L-R方向に所定の間隔で並べて配列され、前記絶縁体11Aに固定されている。
【0009】
図2を参照すると、コネクタ20は、以下を有する。
<絶縁体21>略長方形板状である。
<複数のコンタクト22>導電材料で形成され、L-R方向に所定の間隔で並べて配列され、前記絶縁体21に固定されている。
<パッキン23>前記コネクタ20が前記コネクタ10Aと接続されたとき、前記絶縁体11A及び21の間の隙間を塞ぐ。
【0010】
前記コネクタ10A及び20を接続すると、前記コンタクト12A及び22が互いに接触して導通し、電気信号を伝送する。図示していないが、前記コネクタ10A及び20は、前記コンタクト12A及び22が正しく接触した状態を維持するための係合部を有する。
【0011】
図3及び4を参照すると、前記絶縁体11Aは、以下を有する。
<溝部111>前記絶縁体11AのD側の平らな表面119からU方向へ向けて凹設され、ほぼ一定の深さDを有する。F-B方向に沿って長さLにわたって真っ直ぐに延び、ほぼ一定の幅Wを有する。
<封止材収容部113>前記絶縁体11AのU側の表面218からD方向へ向けて凹設されている。
<貫通穴112>前記絶縁体11AをU-D方向に沿って貫通している。D側は、前記溝部111のB側の端に接続している。U側は、前記封止材収容部113のなかに開口している。
【0012】
図5及び6を参照すると、前記コンタクト12Aは、折り曲げられた長尺板状であり、以下を有する。
<平坦部122>前記コンタクト12Aの先端121からB方向に真っ直ぐに延び、前記コネクタ20の前記コンタクト22と接触する。幅Wは、前記溝部111の幅Wよりもわずかに狭い。長さLは、前記溝部111の長さLよりもわずかに短い。厚さTは、前記溝部111の深さDよりも厚い。
<屈曲部123>前記平坦部122のB側の端に位置し、略直角に屈曲している。
<貫通部124>前記屈曲部123からU方向に真っ直ぐに延びている。
<接続部125>前記貫通部124のU側の端から更にU方向に真っ直ぐに延び、プリント配線板などにはんだ付けなどの固定手段によって固定され、電気接続される。
<矢弦部129>前記コンタクト12Aの前記先端121の近くに位置し、前記平坦部122のL及びR方向に設けられ、略三角形板状である。前記矢弦部129の外側の頂点の間の距離Wは、前記溝部111の幅Wよりもわずかに大きい。なお、前記平坦部122の中間部分や前記屈曲部123に近い部分に、第二の矢弦部を設けてもよく、更に、多くの矢弦部を設けてもよい。
【0013】
図7及び8を参照すると、前記絶縁体21は、以下を有する。
<パッキン収容部214>前記絶縁体21のU側の表面219からD方向へ向けて凹設され、前記パッキン23を収容する(図10参照)。
<コンタクト収容部211>前記パッキン収容部214の底面から更にD方向へ向けて凹設されている。
<枠部215>前記コンタクト収容部211の入口をL・B・R側の3方向から囲むよう、前記パッキン収容部214からU方向に向けて突設され、前記パッキン23と係合して、位置決めする。
<封止材収容部213>前記絶縁体21のD側の表面218からU方向へ向けて凹設されている。
<貫通穴212>前記絶縁体21をU-D方向に沿って貫通している。U側は、前記コンタクト収容部211のなかに開口し、D側は、前記封止材収容部213のなかに開口している。
【0014】
図9を参照すると、前記コンタクト22は、板ばねなど変形に対して復元力を発揮する材料で形成され、以下を有する。
<接続部228>前記コンタクト22のD側の端に位置する。はんだ付けなどの固定手段によって、プリント配線板などに固定され、電気接続される。
<貫通部227>前記接続部228からU方向へ向けて延びている。
<屈曲部226>前記貫通部227のU側の端に位置し、略直角に屈曲している。
<支持部225>前記屈曲部226からF方向へ向けて延びている。
<湾曲部224>前記支持部225のF側の端から、U方向に中心を有する円弧を描いて、約160度ほど湾曲して延びている。
<延伸部223>前記湾曲部224のU側の端から、U方向寄りの斜めB方向へ向けて延び、途中で屈曲して、B方向寄りの斜めU方向へ向けて延びている。
<接触部222>前記延伸部223のU側の端から、B方向に中心を有する円弧を描いて、約140度ほど湾曲して延びている。前記コンタクト12の前記平坦部122と接触する。前記平坦部122と接触する接触面は、F-B方向だけでなく、L-R方向にも湾曲して、略球面をなしている。
<先端部221>前記接触部222のB側の端から、B方向寄りの斜めD方向へ向けて延びている。
【0015】
図10を参照すると、前記コンタクト12Aは、前記絶縁体11Aに、D側からU方向へ向けて挿嵌されて固定されている。前記貫通部124は、前記貫通穴112を貫通し、前記接続部125は、前記絶縁体11AのU側に突出している。前記封止材収容部113には、封止材14が充填され、前記絶縁体11Aと前記コンタクト12Aとの間の隙間を塞いでいる。
前記平坦部122は、前記溝部111に収容されている。前述したように、前記平坦部122の厚さTは、前記溝部111の深さDよりも大きいので、前記平坦部122の表面は、前記絶縁体11Aの前記表面119よりもD方向に盛り上がっている。これにより、前記平坦部122が前記接触部222に確実に接触する。
また、前記矢弦部129は、幅Wが前記溝部111の幅Wよりも大きいので、前記溝部111に圧入されている。これにより、前記コンタクト12Aが前記絶縁体11Aに対して位置決めされるとともに、使用者が前記先端121に爪を引っかけるなどしても、抵抗力が発揮され、前記平坦部122が剥がれて浮き上がるのを防ぐことができる。
【0016】
前記パッキン23は、前記絶縁体21の前記パッキン収容部214に取り付けられ、前記枠部215に係合している。
前記コンタクト22は、前記絶縁体21に、U側からD方向へ向けて挿嵌されて固定されている。前記貫通部227は、前記貫通穴212を貫通し、前記接続部228は、前記絶縁体21のD側に突出している。前記封止材収容部213には、封止材24が充填され、前記絶縁体21と前記コンタクト22との間の隙間を塞いでいる。
【0017】
前記コネクタ10A及び20が接続されていない状態において、前記接触部222は、前記パッキン23のU側の端よりもU側に突出している。
前記コネクタ10Aを前記コネクタ20に接続するには、前記コネクタ10AをU方向から前記コネクタ20に接近させ、前記コンタクト12Aを前記コンタクト22に接触させる。前記コネクタ10A及び20が接続されると、前記平坦部122が前記接触部222に接触して、前記接触部222をD方向へ向けて押し、主に前記湾曲部224が変形する。これにより、前記接触部222をU方向へ押し戻す復元力が発揮され、前記平坦部122が前記接触部222に確実に接触して電気接続される。
【0018】
図11を参照すると、比較例のコネクタ10Zは、絶縁体11Zと、コンタクト12Zとを備える。前記コンタクト12Zは、前記コンタクト12Aとは形状がやや異なり、前記コンタクト12Aの前記先端121に相当する部分より先に更に延びて、略直角に屈曲し、U方向へ向けて延びている。前記絶縁体11Zは、前記コンタクト12Zの先端部が圧入される圧入穴が設けられている。
【0019】
図12を参照すると、横軸が周波数、縦軸が挿入損失を示すグラフが描かれている。
曲線50Zは、前記コネクタ10Zの挿入損失を示す。損失が非常に大きくなる谷が10.5GHz(ギガヘルツ)付近に存在することがわかる。したがって、前記コネクタ10Zは、せいぜい8Gbps(ギガビット毎秒)以下の信号しか伝送できない。
曲線50Aは、前記コネクタ10Aの挿入損失を示す。損失が大きくなる谷の位置が、17GHz付近に移動し、谷の深さが浅くなっていることがわかる。したがって、前記コネクタ10Aは、例えば15Gbpsなど、前記コネクタ10Zよりも高いビットレートの信号を伝送できる。
【0020】
このように挿入損失が改善し、高速伝送が可能となった原因としては、以下の点が考えられる。
第一に、前記コンタクト12A及び22が接触する接触点から前記コンタクト12Aの先端までの距離が短くなった点である。これにより、前記コンタクト12Aの先端で反射して返ってくる反射信号の遅れ時間が短くなる。前記コンタクト12Aから前記コンタクト22に伝達される伝達信号と前記反射信号との位相差が小さければ、前記反射信号は、前記伝達信号を補強することとなるが、前記位相差が90度を超えると、前記反射信号は、前記伝達信号を相殺することとなり、前記位相差がちょうど180度になったとき、損失が最大になる。前記遅れ時間が短くなったことにより、前記位相差が小さくなるので、損失が最大になる周波数が高くなる。
第二に、前記コンタクト12Aの先端が前記コンタクト22に近くなった点である。これにより、前記接触点から前記コンタクト12Aの先端までの部分と、前記コンタクト22との間の容量性結合が大きくなる。前記容量性結合によって前記コンタクト12Aから前記コンタクト22に信号が伝達されるので、前記接触点を介して伝達される伝達信号が補強され、損失が小さくなる。
【0021】
図13を参照すると、変形例のコネクタ10Bは、絶縁体11Bと、コンタクト12Bとを備える。
図14を参照すると、前記コンタクト12Bは、前記コンタクト12Aとは形状がやや異なり、屈曲部123が、略直角ではなく、鈍角に屈曲している。すなわち、平坦部122が、U-D方向に対して垂直ではなく、斜めに傾いた方向に延びている。これにより、前記コンタクト12Bの先端が前記コンタクト22に近づき、容量性結合が大きくなるので、挿入損失が小さくなり、高速伝送が可能となる。
【0022】
図15及び16を参照すると、前記絶縁体11Bは、前記絶縁体11Aとは形状がやや異なり、表面119が、U-D方向に対して垂直ではなく、斜めに傾き、B方向寄りの斜めD方向へ向いている。これは、前記コンタクト12Bの形状に対応したものである。前記表面119のU-D方向に対する傾きは、例えば30度以下である。また、前記絶縁体11Bは、更に以下を有する。
<バリ収容部116>前記溝部111のF側の端のL及びR側に設けられ、U方向へ向けて凹設されている。前記矢弦部129を前記溝部111に圧入したとき、前記絶縁体11Bが削れてバリが発生する場合がある。U側を下にしてこの作業をすることにより、発生した前記バリが前記バリ収容部116のなかに落下して収容される。これにより、前記バリが前記絶縁体11Bと前記コンタクト12Bとの間に挟まって前記コンタクト12Bが浮いたり、前記バリが前記コンタクト12Bの表面に付着して、前記コンタクト22との接触を妨げたりするのを防ぐことができる。
<隆起部115>前記溝部111のF側に位置し、前記表面119からD方向へ向けて隆起している。前記溝部111の底から前記隆起部115の頂上まで高さhは、前記平坦部122の厚さTよりも大きい。これにより、F方向から見ると、前記コンタクト12Bは、前記隆起部115の影に隠れている。したがって、使用者が前記先端121に爪を引っかけるなどするのを防ぐことができる。
なお、前記コネクタ10Aと同様、前記平坦部122の厚さTは、前記溝部111の深さDよりも大きく、前記平坦部122の表面は、前記絶縁体11Aの前記表面119よりもD方向に盛り上がっている。これにより、前記平坦部122が前記接触部222に確実に接触する。
【0023】
なお、前記平坦部122の厚さTは、前記溝部111の深さD以下であってもよく、前記平坦部122の表面は、前記絶縁体11Bの前記表面119と面一又はそれよりもU方向に凹んでいてもよい。そうすれば、前記隆起部115がなくても、使用者が前記先端121に爪を引っかけるなどするのを防ぐことができる。
また、前記屈曲部123は、逆に、鋭角に屈曲していてもよい。また、前記屈曲部123を設けず、前記平坦部122からそのまま前記貫通部124が真っ直ぐに延びていてもよい。その場合、前記貫通部124は、U-D方向に対して平行ではない方向に延びる。
【符号の説明】
【0024】
10A,10B,10Z,20 コネクタ、11A,11B,11Z,21 絶縁体、12A,12B,12Z,22 コンタクト、14,24 封止材、23 パッキン、111 溝部、112,212 貫通穴、113,213 封止材収容部、115 隆起部、116 バリ収容部、118,119,218,219 表面、121 先端、122 平坦部、123,226 屈曲部、124,227 貫通部、125,228 接続部、129 矢弦部、211 コンタクト収容部、214 パッキン収容部、215 枠部、221 先端部、222 接触部、223 延伸部、224 湾曲部、225 支持部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16