(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-01
(45)【発行日】2022-09-09
(54)【発明の名称】超音波洗浄装置および洗濯機
(51)【国際特許分類】
D06F 7/04 20060101AFI20220902BHJP
B06B 1/06 20060101ALI20220902BHJP
D06F 39/00 20200101ALI20220902BHJP
B08B 3/12 20060101ALI20220902BHJP
【FI】
D06F7/04
B06B1/06 Z
D06F39/00 Z
B08B3/12 A
(21)【出願番号】P 2017128009
(22)【出願日】2017-06-29
【審査請求日】2020-06-26
(73)【特許権者】
【識別番号】512128645
【氏名又は名称】青島海爾洗衣机有限公司
【氏名又は名称原語表記】QINGDAO HAIER WASHING MACHINE CO.,LTD.
(73)【特許権者】
【識別番号】307036856
【氏名又は名称】アクア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111383
【氏名又は名称】芝野 正雅
(74)【代理人】
【識別番号】100170922
【氏名又は名称】大橋 誠
(72)【発明者】
【氏名】鳶 幸生
(72)【発明者】
【氏名】川上 直也
(72)【発明者】
【氏名】川端 睦美
(72)【発明者】
【氏名】竹村 ゆい
(72)【発明者】
【氏名】國谷 尚子
(72)【発明者】
【氏名】内藤 正浩
【審査官】木戸 優華
(56)【参考文献】
【文献】実開昭49-144991(JP,U)
【文献】特開2001-310165(JP,A)
【文献】特開2004-275721(JP,A)
【文献】特開2002-355492(JP,A)
【文献】特開2001-113077(JP,A)
【文献】特開2002-186921(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06F 7/04
B06B 1/06
D06F 39/00
B08B 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波を発生させる超音波発生体と、
前記超音波発生体の下方に配置され、被洗浄物が浸漬される水が溜められる貯水槽と、
前記超音波発生体を収容するハウジングと、を備え、
前記ハウジングの先端面には、
矩形の開口部が形成され、
前記超音波発生体の先端が、前記開口部を通じて前記貯水槽に臨み、
前記ハウジングの前記開口部の左右両側
のみに、前記超音波発生体の先端よりも下方に張り出し、被洗浄物が押し付けられても前記超音波発生体に対して上方へ動かない
矩形の張出部が設けられ、
前記張出部の下面には、多数の
半球状の突部を有し、被洗浄物が擦り洗いされる擦り洗い部が設けられる、
ことを特徴とする超音波洗浄装置。
【請求項2】
超音波を発生させる超音波発生体と、
前記超音波発生体の下方に配置され、被洗浄物が浸漬される水が溜められる貯水槽と、
前記超音波発生体を収容するハウジングと、を備え、
前記ハウジングの先端面には、
矩形の開口部が形成され、
前記超音波発生体の先端が、前記開口部を通じて前記貯水槽に臨み、
前記ハウジングの前記開口部の左右両側
のみに、前記超音波発生体の先端よりも下方に張り出し、被洗浄物が押し付けられても前記超音波発生体に対して上方へ動かない張出部が設けられ、
前記張出部の下面には、多数のブラシを有し、被洗浄物が擦り洗いされる擦り洗い部が設けられる、
ことを特徴とする超音波洗浄装置。
【請求項3】
洗濯物を収容して洗濯するための洗濯槽と、
請求項1または2に記載の超音波洗浄装置と、
を備えることを特徴とする洗濯機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波洗浄装置、およびかかる超音洗浄装置を備える洗濯機に関する。
【背景技術】
【0002】
振動ホーンを含む超音波発生手段を内蔵する洗浄装置本体と、水が溜められる水溜め部を有し被洗浄物を受けるトレイと、を備える超音波洗浄装置が、特許文献1に記載されている。
【0003】
特許文献1の超音波洗浄装置では、ユーザが、被洗浄物の汚れ箇所に振動ホーンの先端を接触させた状態で、被洗浄物を水溜め部に溜められた水の中に沈み込ませる。超音波発生手段が動作すると、振動ホーンから放出された超音波エネルギーの作用によって、被洗浄物に付着していた汚れ成分が被洗浄物から分離される。
【0004】
なお、洗浄装置本体には、振動ホーンの露出部を囲むように、上下スライド可能な保護スリーブが設けられている。洗浄装置本体に被洗浄物が押し付けられると、保護スリーブが上昇し、振動ホーンの先端部に被洗浄物が接触する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
水溜め部に浸漬された被洗浄物の表面には、浸み出した水による水の層ができる。上記の超音波洗浄装置では、水の層に接触した状態の振動ホーンから超音波エネルギーである超音波振動が放出されることで、超音波振動が水に伝播し、被洗浄物に含まれる水にキャビテーションが生じる。このキャビテーションの効果により、被洗浄物から汚れが剥離される。
【0007】
ユーザは、汚れを良く落としたいとの思いから、どうしても被洗浄物を振動ホーンの先端に強く押し付けようとしてしまう。しかしながら、このように被洗浄物が振動ホーンに強く押し付けられてしまうと、振動ホーンからの超音波振動の放出が妨げられやすくなる。また、放出された超音波振動が水へ伝播しづらくなる。これにより、超音波振動によるキャビテーション効果が得られにくくなり、被洗浄物の十分な洗浄性能が得られなくなる虞がある。
【0008】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、洗浄性能が向上し得る超音波洗浄装置、および、かかる超音波洗浄装置を備える洗濯機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様に係る超音波洗浄装置は、超音波を発生させる超音波発生体と、前記超音波発生体の下方に配置され、被洗浄物が浸漬される水が溜められる貯水槽と、前記超音波発生体を収容するハウジングと、を備える。ここで、前記ハウジングの先端面には、矩形の開口部が形成され、前記超音波発生体の先端が、前記開口部を通じて前記貯水槽に臨む。前記ハウジングの前記開口部の左右両側のみに、前記超音波発生体の先端よりも下方に張り出し、被洗浄物が押し付けられても前記超音波発生体に対して上方へ動かない矩形の張出部が設けられ、前記張出部の下面には、多数の半球状の突部を有し、被洗浄物が擦り洗いされる擦り洗い部が設けられる。
本発明の第2の態様に係る超音波洗浄装置は、超音波を発生させる超音波発生体と、前記超音波発生体の下方に配置され、被洗浄物が浸漬される水が溜められる貯水槽と、前記超音波発生体を収容するハウジングと、を備える。ここで、前記ハウジングの先端面には、矩形の開口部が形成され、前記超音波発生体の先端が、前記開口部を通じて前記貯水槽に臨む。前記ハウジングの前記開口部の左右両側のみに、前記超音波発生体の先端よりも下方に張り出し、被洗浄物が押し付けられても前記超音波発生体に対して上方へ動かない張出部が設けられ、前記張出部の下面には、多数のブラシを有し、被洗浄物が擦り洗いされる擦り洗い部が設けられる。
【0010】
上記の構成によれば、被洗浄物が下方からハウジングに押し付けられても、被洗浄物が超音波発生体に接触しにくいため、超音波発生体からの超音波振動の放出が妨げられにくくなり、放出された超音波振動の水への伝播も妨げられにくくなる。よって、キャビテーションの効果が十分に発揮され、被洗浄物の洗浄性能が向上することが期待される。
【0012】
上記の構成によれば、擦り洗い部で被洗浄物の擦り洗いを行うことができるので、被洗浄物からの汚れの剥離を促進させることができ、被洗浄物の洗浄性能を一層向上させることができる。
【0013】
本発明の第3の態様に係る洗濯機は、洗濯物を収容して洗濯するための洗濯槽と、第1の態様または第2の態様に係る超音波洗浄装置と、を備える。
【0014】
上記の構成によれば、第1の態様または第2の態様に係る超音波洗浄装置と同様、超音波洗浄装置による被洗浄物の洗浄性能が向上することが期待される。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、洗浄性能が向上し得る超音波洗浄装置、および、かかる超音波洗浄装置を備える洗濯機を提供することができる。
【0016】
本発明の効果ないし意義は、以下に示す実施形態の説明によりさらに明らかとなろう。ただし、以下の実施形態は、あくまでも、本発明を実施化する際の一つの例示であって、本発明は、以下の実施形態に記載されたものに何ら制限されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、実施の形態に係る、全自動洗濯機の側面断面図である。
【
図2】
図2は、実施の形態に係る、全自動洗濯機の上部の斜視図である。
【
図3】
図3は、実施の形態に係る、超音波発生ユニットが取り外された状態の超音波洗浄装置の周辺の斜視図である。
【
図4】
図4(a)は、実施の形態に係る、超音波発生ユニットの超音波発生体の位置で切断した超音波洗浄装置の周辺の側面断面図であり、
図4(b)は、実施の形態に係る、超音波発生ユニットのハウジングの固定台への右側の取付位置で切断した超音波洗浄装置の周辺の側面断面図である。
【
図5】
図5(a)は、実施の形態に係る、超音波発生ユニットの超音波発生体の位置で切断した超音波洗浄装置の周辺の正面断面図である。
図5(b)は、実施の形態に係る、超音波発生体の斜視図であり、
図5(c)は、実施の形態に係る、ホルダーに取り付けられた超音波発生体の斜視図である。
【
図6】
図6(a)は、実施の形態に係る、斜め下方から見た超音波発生ユニットの斜視図であり、
図6(b)は、実施の形態に係る、斜め下方から見た2つのサポートポールの斜視図である。
【
図7】
図7(a)ないし(c)は、実施の形態に係る、超音波洗浄装置による被洗浄物の汚れの除去について説明するための図である。
【
図8】
図8(a)は、変更例1に係る、超音波発生ユニットの先端部分の断面図であり、
図8(b)は、変更例1に係る、張出部材の平面図である。
図8(c)は、変更例2に係る、超音波発生ユニットの先端部分の断面図であり、
図8(d)は、変更例2に係る、張出部材の平面図である。
【
図9】
図9(a)は、変更例3に係る、超音波発生ユニットの先端部分の斜視図である。
図9(b)は、変更例4に係る、超音波発生ユニットの先端部分の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の超音波洗浄装置および洗濯機の一実施形態について、図面を参照して説明する。
【0019】
図1は、本実施の形態に係る、全自動洗濯機1の側面断面図である。
【0020】
全自動洗濯機1は、外観を構成する筐体10を備える。筐体10は、上下の面が開放された方形筒状の胴体部11と、胴体部11の上面を覆う上面板12と、胴体部11を支持する脚台13とを含む。上面板12には、洗濯物の投入口14が形成される。投入口14は、開閉自在な上蓋15により覆われる。
【0021】
筐体10内には、上面が開口する外槽20が、防振装置を有する4本の吊棒21により弾性的に吊り下げ支持される。外槽20内には、上面が開口する洗濯脱水槽22が配される。洗濯脱水槽22は、鉛直方向に延びる回転軸を中心に回転する。洗濯脱水槽22の内周面には、全周に亘って多数の脱水孔22aが形成される。洗濯脱水槽22の上部には、バランスリング23が設けられる。洗濯脱水槽22の底部には、パルセータ24が配される。パルセータ24の表面には、放射状に複数の羽根24aが設けられる。なお、外槽20と洗濯脱水槽22とによって、本発明の洗濯槽が構成される。
【0022】
外槽20の外底部には、洗濯脱水槽22およびパルセータ24を駆動するトルクを発生させる駆動ユニット30が配される。駆動ユニット30は、駆動モータ31と、伝達機構部32とを含む。伝達機構部32は、クラッチ機構32aを有し、当該クラッチ機構32aによる切替操作により、洗い工程およびすすぎ工程では、駆動モータ31のトルクをパルセータ24のみに伝達してパルセータ24のみを回転させ、脱水工程では、駆動モータ31のトルクをパルセータ24および洗濯脱水槽22に伝達してパルセータ24および洗濯脱水槽22を一体的に回転させる。
【0023】
外槽20の外底部には、排水口部20aが形成される。排水口部20aには、排水バルブ40が設けられる。排水バルブ40は、排水ホース41に接続される。排水バルブ40が開放されると、洗濯脱水槽22および外槽20に溜められた水が排水ホース41を通じて機外へ排出される。
【0024】
上面板12の前部には、超音波洗浄装置50が設けられる。超音波洗浄装置50は、主に、ワイシャツの袖や襟口の部分に付着した皮脂汚れ、作業着に付着した油汚れなど、被洗浄物に部分的に付着した汚れを、全自動洗濯機1での洗濯に先立って除去するために用いられる。
【0025】
上面板12の後部には、洗濯脱水槽22内および超音波洗浄装置50に水道水を供給するための給水ユニット60が配される。給水ユニット60は、給水バルブ61を有する。給水バルブ61は、第1バルブ62と、第2バルブ63とを含み、水道栓に接続される。第1バルブ62が開放されると、水道栓からの水道水が給水路64を通じて洗濯脱水槽22内へ供給される。第2バルブ63が開放されると、水道水が超音波洗浄装置50の貯水槽(後述する)に供給される。なお、給水ユニット60は、超音波洗浄装置50の貯水槽へ給水を行う給水部であるため、超音波洗浄装置50には、給水ユニット60が含まれる。
【0026】
次に、超音波洗浄装置50の構成ついて詳細に説明する。
【0027】
図2は、本実施の形態に係る、全自動洗濯機1の上部の斜視図である。
図3は、本実施の形態に係る、超音波発生ユニット100が取り外された状態の超音波洗浄装置50の周辺の斜視図である。
図4(a)は、本実施の形態に係る、超音波発生ユニット100の超音波発生体110の位置で切断した超音波洗浄装置50の周辺の側面断面図であり、
図4(b)は、本実施の形態に係る、超音波発生ユニット100のハウジング130の固定台200への右側の取付位置で切断した超音波洗浄装置50の周辺の側面断面図である。
図5(a)は、本実施の形態に係る、超音波発生ユニット100の超音波発生体110の位置で切断した超音波洗浄装置50の周辺の正面断面図である。
図5(b)は、本実施の形態に係る、超音波発生体110の斜視図であり、
図5(c)は、本実施の形態に係る、ホルダー120に取り付けられた超音波発生体110の斜視図である。
図6(a)は、本実施の形態に係る、斜め下方から見た超音波発生ユニット100の斜視図であり、
図6(b)は、本実施の形態に係る、斜め下方から見た2つのサポートポール134の斜視図である。
【0028】
図2に示すように、上面板12を構成する前フレーム16は、樹脂材料により、前部17が後部18よりも一段低くなる形状に形成され、後部18にて上蓋15の前端部を受ける。前部17の上面17aは、中央部が低くなる凹湾曲形状を有する。前部17の上面17aの後端から後部18の前面18aがほぼ垂直に立ち上がる。
【0029】
超音波洗浄装置50は、前フレーム16の中央部に設けられる。即ち、超音波洗浄装置50は、上面板12の投入口14よりも前側に設けられる。なお、超音波洗浄装置50が使用されないとき、前フレーム16の前部17上方を図示しないカバーで覆い、超音波洗浄装置50を覆い隠すことができる。
【0030】
図2ないし
図5(c)に示すように、超音波洗浄装置50は、超音波発生ユニット100と、固定台200と、貯水槽300と、排水槽400とを含む。
【0031】
固定台200は、前フレーム16の前部17の上面17aの中央部において後部18の前面18aに接するように前フレーム16と一体形成される。固定台200は、貯水槽300に対して所定の高さを有する。固定台200は、天面である取付面201を有する。取付面201の後方には、左右2つの取付ボス202が上下の向きに設けられる。取付ボス202には、挿通孔203が形成される。前フレーム16の後部18の前面18aには、2つの取付ボス202に対応する位置に開口部18bが形成される。
【0032】
貯水槽300は、前フレーム16の前部17の上面17aの中央部の前寄りに形成される。貯水槽300は、後部が円弧形状を有する。貯水槽300の底面には、後端部の中央に給水口301が形成される。貯水槽300の外底面は、給水口301に繋がる給水パイプ302が形成される。給水パイプ302には、第2バルブ63から延びる給水管303が接続される。
【0033】
排水槽400は、前フレーム16の前部17の上面17aの中央部であって貯水槽300の周囲に形成される。排水槽400の底面には、貯水槽300の後方の中央位置に排水口401が形成される。排水槽400の外底面は、排水口401に繋がる排水パイプ402が形成される。排水パイプ402には、外槽20に繋がる排水管403が接続される。なお、排水管403は、排水ホース41に繋げられてもよい。
【0034】
超音波発生ユニット100は、超音波を発生させる超音波発生体110と、超音波発生体110を保持するホルダー120と、超音波発生体110を収容するハウジング130とを含む。超音波発生体110は、ホルダー120を介してハウジング130の内部に装着される。
【0035】
超音波発生体110は、超音波振動子111と、超音波振動子111に結合される振動ホーン112とを含む。振動ホーン112は、導電性を有する金属材料で形成され、先端側に向かうにつれて徐々に細くなる形状を有する。振動ホーン112の先端面112aの形状は、細長い長方形状となる。振動ホーン112の上端部には、ほぼ四角形状のフランジ部113が形成される。
【0036】
ホルダー120は、中央部にほぼ四角形の開口部121を有する。開口部121の内周面には、全周に溝部122が形成される。超音波発生体110は、開口部121に通され、振動ホーン112のフランジ部113が溝部122に嵌め込まれることにより、ホルダー120に固定される。ホルダー120には、左右両側に取付タブ123が形成される。各取付タブ123には軸孔124が形成される。なお、ホルダー120は、振動ホーン112のフランジ部113を溝部122に嵌め込むために、溝部122の位置で上下に分離できる構成とされるとよい。
【0037】
ハウジング130は、樹脂材料により形成され、前後方向に長く、その先端部130aが下方に突出するようなアーム形状を有する。ハウジング130の先端部130aは、先細りとなるように形成され、その先端面に開口部131が形成される。
【0038】
ハウジング130は、上面が開放された下部材140と、下面が開放された上部材150とを結合することにより形成される。下部材140と上部材150には、これらを結合するための下取付ボス141と上取付ボス151とが設けられる。これら下取付ボス141と上取付ボス151とが固定ネジ161で止められる。
【0039】
ハウジング130の内部において、開口部131から上方に延びるほぼ四角筒状の設置部142が下部材140に設けられる。超音波発生体110を保持したホルダー120が設置部142の上に設置される。このとき、振動ホーン112は設置部142の内部に収容された状態となり、振動ホーン112の先端面112aが、開口部131の下面とほぼ面一となる。下部材140には、設置部142の左右両側に下支持ボス143が形成され、上部材150には、下支持ボス143の真上位置に上支持ボス152が形成される。各下支持ボス143には下挿入穴144が形成され、各上支持ボス152には上挿入穴153が形成される。各下支持ボス143と各上支持ボス152との間に、金属材料からなる丸棒状のガイド軸170が取り付けられる。このとき、下挿入穴144の内径はガイド軸170の外径よりも僅かに小さく、ガイド軸170は、その下端部が下挿入穴144に圧入されることで下支持ボス143に固定される。また、上挿入穴153の内径はガイド軸170の外径よりも僅かに大きく、ガイド軸170の上端部が上挿入穴153に挿入された状態となる。
【0040】
設置部142の上に置かれたホルダー120の左右の取付タブ123の軸孔124に左右のガイド軸170が通される。各ガイド軸170には、各取付タブ123と各上支持ボス152との間に支持バネ180が挿入される。ホルダー120に保持された超音波発生体110は、左右の支持バネ180で上下方向に弾性的に支持される。支持バネ180は、圧縮バネであり、所定のバネ力で超音波発生体110を下方に押し付ける。振動ホーン112の先端面112aがバネ力より大きな力で上方に押されると、支持バネ180が圧縮されて、超音波発生体110がガイド軸170に案内されつつ上方に動く。
【0041】
ハウジング130の天面には、上方から見て超音波発生体110の振動ホーン112の先端面112aと同じ位置に、先端面112aと同じ形状を有する目印部132が形成される。ユーザは、目印部132を見ることで振動ホーン112の先端面112aの位置を確認することができる。
【0042】
さらに、ハウジング130の天面には、円形の表示窓133が形成される。上部材150には、表示窓133に繋がる円筒状のランプ収容部154が形成され、ランプ収容部154に下方から、報知部である報知ランプ190が収容される。報知ランプ190は、基盤191に実装され、基盤191を介してランプ収容部154の下端に固定される。報知ランプ190は、たとえば、LEDランプであり、表示窓133から外部に臨む。報知ランプ190は、洗浄運転中に点灯する。
【0043】
ハウジング130の後端部には、下部材140側の左右に、固定台200の取付ボス202に対応する取付ボス145が形成される。各取付ボス145には、ネジ穴146が形成される。ハウジング130の後端部は、固定台200の取付面201に載せられる。固定台200の取付ボス202の挿通孔203に通された固定ネジ162がハウジング130の取付ボス145のネジ穴146に止められることにより、ハウジング130が、貯水槽300に対して所定の高さ位置となるように固定台200に固定される。
【0044】
ハウジング130が固定台200に取り付けられた状態において、ハウジング130内に収容された超音波発生体110の先端、即ち振動ホーン112の先端が、開口部131を通じて、その下方の貯水槽300に臨む。超音波発生体110の振動ホーン112の先端面112aと貯水槽300の上面との間に僅かな隙間が形成される。この隙間は、超音波洗浄装置50による洗浄に多く利用されると考えられるワイシャツやそれと同類のシャツの襟や袖口の厚みを考慮し、その厚みよりも僅かに大きな隙間に設定され得る。
【0045】
ハウジング130の先端部130aには、2つのサポートポール134が配置される。サポートポール134は、弾性部材、たとえばゴム材により円柱状に形成され、開口部131の左側と右側において、前後方向に沿って配置される。サポートポール134は、そのほぼ半分の部位がハウジング130内に埋め込まれており、残りの部位がハウジング130から露出して超音波発生体110の先端、即ち振動ホーン112の先端よりも下方に張り出す。サポートポール134は、外部に露出した周面に、擦り洗い部135を有する。擦り洗い部135は、前後方向に沿う多数の突条135aにより構成される。サポートポール134は、被洗浄物が押し付けられても超音波発生体110に対して上方に動かない。サポートポール134は、本発明の張出部に相当し、突条135aは、本発明の突部に相当する。
【0046】
全自動洗濯機1では、各種運転コースの洗濯運転が行われる。洗濯運転では、洗い工程、中間脱水工程、すすぎ工程および最終脱水工程が順番に実行される。
【0047】
洗い工程およびすすぎ工程では、洗濯脱水槽22内に水が溜められた状態で、パルセータ24が右方向および左方向に回転する。パルセータ24の回転により洗濯脱水槽22内に水流が発生する。洗い工程では、発生した水流と水に含まれる洗剤とにより洗濯物が洗われる。すすぎ工程では、発生した水流により洗濯物がすすがれる。
【0048】
中間脱水工程および最終脱水工程では、洗濯脱水槽22およびパルセータ24が一体となって高速回転する。洗濯脱水槽22に発生する遠心力の作用により、洗濯物が脱水される。
【0049】
さらに、全自動洗濯機1では、超音波洗浄装置50による部分洗浄運転が行われる。ユーザは、ワイシャツ等の被洗浄物を洗濯する際に、その被洗浄物が部分的に頑固な汚れを含んでいるようなとき、洗濯に先立って超音波洗浄装置50を用いた被洗浄物の部分洗浄を行う。このとき、被洗浄物の汚れ部分には、予め洗剤が塗布されていてよい。
【0050】
ユーザは、被洗浄物の汚れの付着部分、たとえ、ワイシャツの襟の部分、を貯水槽300の上、即ち、貯水槽300と超音波発生体110の振動ホーン112との間にセットし、所定の開始操作を行う。
【0051】
部分洗浄運転が開始され、貯水槽300内に給水口301を通じて給水が行われる。貯水槽300では、被洗浄物が溜められた水で浸され、被洗浄物の内部に浸透した水が被洗浄物の表面に染み出す。被洗浄物の表面には薄い水の層が形成され、この水の層に振動ホーン112の先端が接触する。貯水槽300内から水が溢れ出す程度の時間が給水開始から経過すると、超音波振動子111に通電が行われ、超音波発生体110が作動する。
【0052】
図7(a)ないし(c)は、本実施の形態に係る、超音波洗浄装置50による被洗浄物の汚れの除去について説明するための図である。
【0053】
超音波発生体110が作動すると、振動ホーン112の先端から超音波が発生し、超音波振動が振動ホーン112の周りの水を介して被洗浄物内部の水に伝わる。
図7(a)に示すように、被洗浄物の内部では、超音波振動の作用によって減圧と加圧が交互に生じ、圧力が低くなった部分に真空の空洞が生じる。即ち、被洗浄物の汚れの部分に多数の空洞が存在する状態となる。
図7(b)に示すように、空洞の部分の圧力が高まり、この圧力に潰されて空洞が破壊されると、被洗浄物の汚れ部分に衝撃波が生じる。この衝撃波によって被洗浄物から汚れが剥離される。つまり、被洗浄物の表面の水の層に振動ホーン112から超音波振動が放出されると、被洗浄物の内部では、含まれた水にキャビテーションが生じ、このキャビテーションの効果によって被洗浄物から汚れが剥離されるのである。
【0054】
図7(c)に示すように、振動ホーン112からの超音波振動は、被洗浄物の内部から貯水槽300内への水流を生み出し、この水流によって、被洗浄物から剥離された汚れが貯水槽300内に排出される。貯水槽300では、上記の水流により対流が発生するので、被洗浄物から汚れが引き離されやすくなる。このようにして、被洗浄物から汚れが除去される。
【0055】
部分洗浄運転中、ユーザがハウジング130の先端部130aに設けられた2つのサポートポール134に被洗浄物を押し付けて左右に細かく動かすと、被洗浄物の汚れ部分が擦り洗い部135の突条135aで擦られる。このように、上述した超音波振動によるキャビテーションの効果に加え、擦り洗い部135で擦り洗いが行われることによって、被洗浄物からの汚れの剥離が促進される。
【0056】
サポートポール134は、超音波発生体110の先端よりも下方に張り出している。このため、ハウジング130の先端部130aに被洗浄物が押し付けられても、被洗浄物が超音波発生体110に接触しにくく、接触したとしても超音波発生体110に強く押し付けられにくい。よって、振動ホーン112からの超音波振動の放出が妨げられにくく、放出された超音波振動の水への伝播も妨げられにくい。
【0057】
こうして、被洗浄物の洗浄が完了すると、ユーザは、所定の停止操作を行う。超音波発生体110の動作と貯水槽300への給水が停止され、部分洗浄運転が終了される。
【0058】
<本実施の形態の効果>
以上、本実施の形態によれば、ハウジング130の先端部130aに、超音波発生体110の下端よりも下方に張り出すサポートポール134が設けられているので、部分洗浄運転が行われているときに、ハウジング130の先端部130aに被洗浄物が押し付けられても、被洗浄物が超音波発生体110に接触しにくい。これにより、振動ホーン112からの超音波振動の放出が妨げられにくく、放出された超音波振動の水への伝播も妨げられにくい。よって、キャビテーションの効果が十分に発揮され、被洗浄物の洗浄性能を向上させることができる。
【0059】
また、本実施の形態によれば、サポートポール134に、多数の突条135aからなる擦り洗い部135が設けられているので、この擦り洗い部135により被洗浄物の擦り洗いを行うことができる。これにより、被洗浄物からの汚れの剥離を促進させることができ、被洗浄物の洗浄性能を一層向上させることができる。
【0060】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は、上記実施の形態によって何ら制限されるものではなく、また、本発明の実施の形態も、上記以外に種々の変更が可能である。
【0061】
たとえば、上記実施の形態では、ハウジング130の開口部131の左右両側にサポートポール134が配置された。しかしながら、開口部131の左右両側に加えて、あるいは左右両側に替えて、開口部131の前後両側にサポートポール134が配置されてもよい。
【0062】
また、上記実施の形態では、ハウジング130に、張出部としてサポートポール134が備えられた。しかしながら、張出部の構成は、上記のものに限られない。たとえば、張出部の構成として、以下に説明する
図8(a)ないし
図9(b)に示す構成を挙げることができる。
【0063】
図8(a)は、変更例1に係る、超音波発生ユニット100の先端部分の断面図であり、
図8(b)は、変更例1に係る、張出部材136の平面図である。なお、
図8(a)では、張出部材136が断面図として表されていない。
【0064】
変更例1では、超音波発生ユニット100において、ハウジング130の開口部131の左右両側に、張出部材136が設けられる。張出部材136は、超音波発生体110の先端、即ち振動ホーン112の先端よりも下方に張り出すとともに、その下面に多数のブラシ137aによる擦り洗い部137を有する。張出部材136は、本発明の張出部に相当する。本変更例の構成によっても、張出部材136により、被洗浄物が超音波発生体110の先端に接触しにくくなる。また、ブラシ137aからなる擦り洗い部137により、被洗浄物の擦り洗いを行うことができる。
【0065】
図8(c)は、変更例2に係る、超音波発生ユニット100の先端部分の断面図であり、
図8(d)は、変更例2に係る、張出部材138の平面図である。なお、
図8(c)では、張出部材138が断面図として表されていない。
【0066】
変更例2では、超音波発生ユニット100において、ハウジング130の開口部131の左右両側に、張出部材138が設けられる。張出部材138は、超音波発生体110の先端よりも下方に張り出すとともに、その下面に多数の半球状の突部139aによる擦り洗い部139を有する。張出部材138は、本発明の張出部に相当する。本変更例の構成によっても、張出部材138により、被洗浄物が超音波発生体110の先端に接触しにくくなる。また、突部139aからなる擦り洗い部139により、被洗浄物の擦り洗いを行うことができる。
【0067】
図9(a)は、変更例3に係る、超音波発生ユニット100の先端部分の斜視図である。
【0068】
変更例3では、超音波発生ユニット100において、ハウジング130の開口部131の左右両側に、半円柱状の突条部130bがハウジング130と一体形成されるようにして設けられる。突条部130bは、超音波発生体110の先端よりも下方に張り出す。突条部130bは、本発明の張出部に相当する。本変更例の構成によっても、突条部130bにより、被洗浄物が超音波発生体110の先端に接触しにくくなる。なお、突条部130bの形状は、たとえば、三角柱状など、他の形状とされてもよい。
【0069】
図9(b)は、変更例4に係る、超音波発生ユニット100の先端部分の断面図である。
【0070】
変更例4では、超音波発生ユニット100において、ハウジング130の開口部131の周縁部130cが超音波発生体110の先端よりも下方に張り出す。即ち、開口部131の周縁部130cが、本発明の張出部として機能する。本変更例の構成によっても、周縁部130cにより、被洗浄物が超音波発生体110の先端に接触しにくくなる。
【0071】
なお、開口部131の左右両側に加えて、あるいは左右両側に替えて、開口部131の前後両側に、上記変更例1の張出部材136、上記変更例2の張出部材138および上記変更例3の突条部130bが設けられてもよい。
【0072】
さらに、上記実施の形態では、超音波洗浄装置50が、上面板12の投入口14より前側に設けられているが、たとえば、上面板12の後部であって投入口14内に後方から張り出すように超音波洗浄装置50が設けられてもよい。この場合、貯水槽300から溢れた水が投入口14を通じて洗濯脱水槽22内に落下するため、排水槽400が設けられなくてもよい。
【0073】
さらに、上記実施の形態では、超音波発生体110がハウジング130内において支持バネ180で上下方向に弾性的に支持される。しかしながら、超音波発生体110は、バネ等で弾性的に支持されず、ハウジング130内において上下に動かないように固定されてもよい。
【0074】
さらに、上記実施の形態では、超音波洗浄装置50が全自動洗濯機1に備えられる。しかしながら、超音波洗浄装置50が、全自動洗濯機1以外の洗濯機、たとえば、ドラム式洗濯機に備えられてもよい。また、超音波洗浄装置50が、たとえば、乾燥機能を有する全自動洗濯乾燥機やドラム式洗濯乾燥機に備えられてもよい。ドラム式洗濯機およびドラム式洗濯乾燥機では、外槽と、外槽内に配置されるドラムとによって洗濯槽が構成される。
【0075】
この他、本発明の実施の形態は、特許請求の範囲に示された技術的思想の範囲内において、適宜、種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0076】
1 全自動洗濯機(洗濯機)
20 外槽(洗濯槽)
22 洗濯脱水槽(洗濯槽)
50 超音波洗浄装置
110 超音波発生体
130 ハウジング
134 サポートポール(張出部)
135 擦り洗い部
135a 突条(突部)
300 貯水槽