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特許7133804太陽電池デバイスの製造プロセス起因の不良の特定方法および特定装置、並びに太陽電池デバイスの製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-01
(45)【発行日】2022-09-09
(54)【発明の名称】太陽電池デバイスの製造プロセス起因の不良の特定方法および特定装置、並びに太陽電池デバイスの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H02S 50/10 20140101AFI20220902BHJP
   G01N 21/23 20060101ALI20220902BHJP
   G01N 21/88 20060101ALI20220902BHJP
   G01N 21/956 20060101ALI20220902BHJP
   H01L 21/66 20060101ALI20220902BHJP
【FI】
H02S50/10
G01N21/23
G01N21/88 H
G01N21/956 A
H01L21/66 X
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018161914
(22)【出願日】2018-08-30
(65)【公開番号】P2020036474
(43)【公開日】2020-03-05
【審査請求日】2021-06-03
(73)【特許権者】
【識別番号】504255685
【氏名又は名称】国立大学法人京都工芸繊維大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】100131705
【弁理士】
【氏名又は名称】新山 雄一
(72)【発明者】
【氏名】福澤 理行
(72)【発明者】
【氏名】福田 将典
【審査官】原 俊文
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-187524(JP,A)
【文献】特開2016-070730(JP,A)
【文献】特表2011-516374(JP,A)
【文献】特開2014-085300(JP,A)
【文献】特開2011-222735(JP,A)
【文献】特開2005-201749(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0196639(US,A1)
【文献】SARAU, George et al.,"Stresses and their relation to defects in multicrystalline solar silicon",Conference Record of the 2010 35th IEEE Photovoltaic Specialists Conference,2010年,pp. 699-703,DOI: 10.1109/PVSC.2010.5616923
【文献】福澤理行 ほか,"赤外光弾性法を用いた半導体ウェハ・デバイス中のひずみ分布測定",Journal of the Society of Materials Science, Japan,2002年09月15日,Vol. 51, No. 9,pp. 966-970,DOI: 10.2472/jsms.51.966
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02S 50/00-50/15
H01L 31/02-31/078
H01L 31/18-31/20
H01L 21/66
G01N 21/23
G01N 21/84-21/958
JSTPlus/JSTChina/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板を含む太陽電池デバイスの製造プロセスに起因する不良の特定方法であって、
前記太陽電池デバイスの複数の製造プロセスのうちの所定のプロセスの前に、赤外光弾性測定法を用いて前記半導体基板の複屈折率分布を表す第1複屈折率マッピングを取得する工程と、
前記所定のプロセスの後に、前記赤外光弾性測定法を用いて前記半導体基板の複屈折率分布を表す第2複屈折率マッピングを取得する工程と、
前記第1複屈折率マッピングに存在せず、前記第2複屈折率マッピングに存在する複屈折率分布の特異点を特定する工程と、
前記所定のプロセスの前に、前記赤外光弾性測定法を用いて前記半導体基板の赤外光透過率分布を表す第1赤外光透過率マッピングを取得する工程と、
前記所定のプロセスの後に、前記赤外光弾性測定法を用いて前記半導体基板の赤外光透過率分布を表す第2赤外光透過率マッピングを取得する工程と、
前記第1赤外光透過率マッピングに存在せず、前記第2赤外光透過率マッピングに存在する赤外光透過率分布の特異点を特定する工程と、
前記複屈折率分布の特異点を、前記所定のプロセスに起因する不良の発生箇所として特定し、かつ、前記複屈折率分布の特異点が前記赤外光透過率分布の特異点と一致するか否かを判定する工程と、
を含む、太陽電池デバイスの製造プロセス起因の不良の特定方法。
【請求項2】
前記不良は、残留歪みである、請求項1に記載の太陽電池デバイスの製造プロセス起因の不良の特定方法。
【請求項3】
前記判定する工程では、判定の結果、前記赤外光透過率分布の特異点と一致しない前記複屈折率分布の特異点を、前記所定のプロセスに起因する不良のうちの残留歪みの発生箇所として特定する、請求項1または2に記載の太陽電池デバイスの製造プロセス起因の不良の特定方法。
【請求項4】
半導体基板を含む太陽電池デバイスの製造プロセスに起因する不良の特定装置であって、
前記太陽電池デバイスに赤外光を照射する光源と、
前記太陽電池デバイスを透過した赤外光を電気信号に変換する光電変換素子と、
前記光源と前記太陽電池デバイスとの間に配置され、前記赤外光を偏光して前記太陽電池デバイスに照射する偏光子と、
前記太陽電池デバイスと前記光電変換素子との間に配置され、前記太陽電池デバイスを透過した赤外光を偏光して前記光電変換素子に照射する検光子と、
前記太陽電池デバイスを前記光源からの赤外光に対して走査する走査ステージと、
前記光源、前記走査ステージの位置、前記偏光子の偏光角、および、前記検光子の偏光角を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記太陽電池デバイスの複数の製造プロセスのうちの所定のプロセスの前に、前記光電変換素子からの電気信号、前記走査ステージの位置、前記偏光子の偏光角、および、前記検光子の偏光角に基づいて、前記半導体基板の複屈折率分布を表す第1複屈折率マッピングを取得し、
前記所定のプロセスの後に、前記光電変換素子からの電気信号、前記走査ステージの位置、前記偏光子の偏光角、および、前記検光子の偏光角に基づいて、前記半導体基板の複屈折率分布を表す第2複屈折率マッピングを取得し、
前記第1複屈折率マッピングに存在せず、前記第2複屈折率マッピングに存在する複屈折率分布の特異点を特定し、
前記所定のプロセスの前に、前記光電変換素子からの電気信号、前記走査ステージの位置、前記偏光子の偏光角、および、前記検光子の偏光角に基づいて、前記半導体基板の赤外光透過率分布を表す第1赤外光透過率マッピングを取得し、
前記所定のプロセスの後に、前記光電変換素子からの電気信号、前記走査ステージの位置、前記偏光子の偏光角、および、前記検光子の偏光角に基づいて、前記半導体基板の赤外光透過率分布を表す第2赤外光透過率マッピングを取得し、
前記第1赤外光透過率マッピングに存在せず、前記第2赤外光透過率マッピングに存在する赤外光透過率分布の特異点を特定し、
前記複屈折率分布の特異点を、前記所定のプロセスに起因する不良の発生箇所として特定し、かつ、前記複屈折率分布の特異点が前記赤外光透過率分布の特異点と一致するか否かを判定する、
太陽電池デバイスの製造プロセス起因の不良の特定装置。
【請求項5】
前記制御部では、判定の結果、前記赤外光透過率分布の特異点と一致しない前記複屈折率分布の特異点を、前記所定のプロセスに起因する不良のうちの残留歪みの発生箇所として特定する、請求項4に記載の太陽電池デバイスの製造プロセス起因の不良の特定装置。
【請求項6】
半導体基板を含む太陽電池デバイスの製造方法であって、
請求項1~3のいずれか1項に記載の太陽電池デバイスの製造プロセス起因の不良の特定方法を含む、太陽電池デバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池デバイスの製造プロセスに起因する不良の特定方法および特定装置、並びに太陽電池デバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば太陽電池デバイスの半導体基板(光電変換基板)として用いられるSiまたはGaAs等の半導体結晶では、結晶中の残留歪み(不良)によって、結晶中の格子定数、格子振動、バンド構造等が変動する。そのため、半導体結晶の残留歪みは、太陽電池デバイスの動作に影響を及ぼす。また、太陽電池デバイスの動作は、半導体結晶の表面の汚れまたは異物付着、或いは半導体結晶の異物混入等(不良)にも影響される。
このような半導体基板(半導体ウェハ)の不良の評価手法としては、光弾性法が知られている(例えば、特許文献1~3および非特許文献1~2)。光弾性法とは、被測定対象の残留歪み、汚れおよび異物等の不良により引き起こされる複屈折を利用した不良の測定法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2005-201749号公報
【文献】米国特許出願公開第2004/0021097号明細書
【文献】特開2012-19216号公報
【非特許文献】
【0004】
【文献】福澤理行、他2名、「赤外光弾性法を用いた半導体ウェハ・デバイス中のひずみ分布測定」、Journal of the Society of Materials Science, Japan、Vol.51、No.9、pp.966-970、September 2002
【文献】M Fukuzawa、他1名、「Photoelastic characterization of Si wafers by scanning infrared polariscope」、Journal of Crystal Growth、Volume 229、pp.22-25、July 2001
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
SiまたはGaAs等の半導体基板(光電変換基板)を用いた太陽電池デバイスは、半導体基板の両主面(受光面および裏面)または片主面(裏面)に、1または複数の機能層(i型半導体層、p型半導体層、n型半導体層、TCO、集電極等)を形成することにより、作製される。
これらの機能層を形成するプロセスにおいても、半導体基板に応力が加わり、半導体基板に結晶の局所歪み(残留歪み)(不良)が生じたり、半導体基板および機能層に汚れまたは異物等(不良)が付着したりすることがある。その結果、作製された太陽電池デバイスの性能が低下したり、太陽電池デバイスの割れまたは反り等により信頼性が低下したりすることがある。
【0006】
特許文献1~3および非特許文献1~2に記載の半導体基板の不良の評価手法は、半導体ウェハの不良を測定する方法であり、太陽電池デバイスの製造プロセスに起因する不良を特定する方法ではない。
【0007】
本発明は、太陽電池デバイスの製造プロセス起因の不良の特定方法および特定装置、並びに太陽電池デバイスの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る太陽電池デバイスの製造プロセス起因の不良の特定方法は、半導体基板を含む太陽電池デバイスの製造プロセスに起因する不良の特定方法であって、太陽電池デバイスの複数の製造プロセスのうちの所定のプロセスの前に、赤外光弾性測定法を用いて半導体基板の複屈折率分布を表す第1複屈折率マッピングを取得する工程と、所定のプロセスの後に、赤外光弾性測定法を用いて半導体基板の複屈折率分布を表す第2複屈折率マッピングを取得する工程と、第1複屈折率マッピングに存在せず、第2複屈折率マッピングに存在する複屈折率分布の特異点を特定する工程と、複屈折率分布の特異点を、所定のプロセスに起因する不良の発生箇所として特定する工程と、を含む。
【0009】
本発明に係る太陽電池デバイスの製造プロセス起因の不良の特定装置は、半導体基板を含む太陽電池デバイスの製造プロセスに起因する不良の特定装置であって、太陽電池デバイスに赤外光を照射する光源と、太陽電池デバイスを透過した赤外光を電気信号に変換する光電変換素子と、光源と太陽電池デバイスとの間に配置され、赤外光を偏光して太陽電池デバイスに照射する偏光子と、太陽電池デバイスと光電変換素子との間に配置され、太陽電池デバイスを透過した赤外光を偏光して光電変換素子に照射する検光子と、太陽電池デバイスを光源からの赤外光に対して走査する走査ステージと、光源、走査ステージの位置、偏光子の偏光角、および、検光子の偏光角を制御する制御部と、を備え、制御部は、太陽電池デバイスの複数の製造プロセスのうちの所定のプロセスの前に、光電変換素子からの電気信号、走査ステージの位置、偏光子の偏光角、および、検光子の偏光角に基づいて、半導体基板の複屈折率分布を表す第1複屈折率マッピングを取得し、所定のプロセスの後に、光電変換素子からの電気信号、走査ステージの位置、偏光子の偏光角、および、検光子の偏光角に基づいて、半導体基板の複屈折率分布を表す第2複屈折率マッピングを取得し、第1複屈折率マッピングに存在せず、第2複屈折率マッピングに存在する複屈折率分布の特異点を特定し、複屈折率分布の特異点を、所定のプロセスに起因する不良の発生箇所として特定する。
【0010】
本発明に係る太陽電池デバイスの製造方法は、半導体基板を含む太陽電池デバイスの製造方法であって、上記の太陽電池デバイスの製造プロセス起因の不良の特定方法を含む。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、太陽電池デバイスの製造プロセスに起因する不良の発生および発生箇所を特定できる。その結果、太陽電池デバイスの製造プロセスの改善に寄与できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1A】本実施形態に係る太陽電池デバイスの製造方法におけるテクスチャ形成工程(プロセス)を示す図である。
図1B】本実施形態に係る太陽電池デバイスの製造方法における半導体層形成工程(プロセス)を示す図である。
図1C】本実施形態に係る太陽電池デバイスの製造方法における透明電極層形成工程(プロセス)を示す図である。
図1D】本実施形態に係る太陽電池デバイスの製造方法における集電極形成工程(プロセス)を示す図である。
図1E】本実施形態に係る太陽電池デバイスの製造方法における絶縁層形成工程(プロセス)およびアニール工程(プロセス)を示す図である。
図1F】本実施形態に係る太陽電池デバイスの製造方法におけるめっき工程(プロセス)を示す図である。
図1G】本実施形態に係る太陽電池デバイスの製造方法におけるインターコネクト工程(プロセス)を示す図である。
図1H】本実施形態に係る太陽電池デバイスの製造方法におけるインターコネクト工程(プロセス)を示す図である。
図2】本実施形態に係る太陽電池の製造プロセス起因の不良の特定装置を示す図である。
図3A】テクスチャ形成工程(プロセス)の前に取得した第1複屈折率マッピングの一例を示す図である。
図3B】テクスチャ形成工程(プロセス)の後に取得した第2複屈折率マッピングであり、かつ、半導体層形成工程(プロセス)の前に取得した第1複屈折率マッピングの一例を示す図である。
図3C】半導体層形成工程(プロセス)の後に取得した第2複屈折率マッピングであり、かつ、透明電極層形成工程(プロセス)の前に取得した第1複屈折率マッピングの一例を示す図である。
図3D】透明電極層形成工程(プロセス)の後に取得した第2複屈折率マッピングであり、かつ、集電極形成工程(プロセス)の前に取得した第1複屈折率マッピングの一例を示す図である。
図3E】集電極形成工程(プロセス)の後に取得した第2複屈折率マッピングであり、かつ、絶縁層形成工程(プロセス)の前に取得した第1複屈折率マッピングの一例を示す図である。
図3F】絶縁層形成工程(プロセス)の後に取得した第2複屈折率マッピングであり、かつ、アニール工程(プロセス)の前に取得した第1複屈折率マッピングの一例を示す図である。
図3G】アニール工程(プロセス)の後に取得した第2複屈折率マッピングであり、かつ、めっき工程(プロセス)の前に取得した第1複屈折率マッピングの一例を示す図である。
図3H】めっき工程(プロセス)の後に取得した第2複屈折率マッピングであり、かつ、インターコネクト工程(プロセス)の前に取得した第1複屈折率マッピングの一例を示す図である。
図3I】インターコネクト工程(プロセス)の後に取得した第2複屈折率マッピングの一例を示す図である。
図4】インターコネクト工程(プロセス)の前に取得した第1複屈折率マッピング(一部)および第1赤外光透過率マッピング(一部)の一例を示すと共に、インターコネクト工程(プロセス)の後に取得した第2複屈折率マッピング(一部)および第2赤外光透過率マッピング(一部)の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付の図面を参照して本発明の実施形態の一例について説明する。なお、各図面において同一または相当の部分に対しては同一の符号を附すこととする。
【0014】
(第1実施形態)
<太陽電池デバイスの製造方法>
図1A図1Hは、第1実施形態に係る太陽電池デバイスの製造方法を示す図である。
まず、半導体基板110を準備する。半導体基板110としては、導電型単結晶シリコン基板、例えばn型単結晶シリコン基板またはp型単結晶シリコン基板が用いられる。なお、半導体基板110として、多結晶シリコン基板、例えばn型多結晶シリコン基板またはp型多結晶シリコン基板を用いてもよい。
このとき、半導体基板110の残留歪み、汚れまたは異物付着等の不良を測定する(詳細は後述する。)。
【0015】
<<テクスチャ形成工程(プロセス)>>
次に、図1Aに示すように、半導体基板110の両主面(受光面および裏面)の少なくとも一方に、テクスチャ構造と呼ばれるピラミッド型の微細な凹凸構造を形成する。
例えば、半導体基板110の両主面の少なくとも一方に、エッチング処理を行う。エッチング溶液としては、アルカリ溶液が挙げられる。アルカリ成分としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムまたは水酸化カルシウム等のアルカリ金属、アルカリ土類金属の水酸化物、またはこれらの混合物が挙げられる。この中でも、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムが好ましい。
その後、フッ酸(HF)等を用いて、半導体基板110の両主面をクリーニングし、半導体基板110の両主面に残留するエッチング溶液等を除去する。
【0016】
これにより、半導体基板110の両主面の少なくとも一方にテクスチャ構造が形成される。このように、半導体基板110の受光面にテクスチャ構造を形成することにより、受光面において入射光の反射が低減し、半導体基板110における光閉じ込め効果が向上する。また、半導体基板110の裏面にテクスチャ構造を形成することにより、半導体基板110に吸収されず通過してしまった光の回収効率が高まる。
このとき、半導体基板110の残留歪み、汚れまたは異物付着等の不良を測定する(詳細は後述する。)。
【0017】
<<半導体層形成工程(プロセス)>>
次に、図1Bに示すように、半導体基板110の受光面側に、i型半導体層121および第1導電型半導体層122を順次に形成し、半導体基板110の裏面側にi型半導体層131および第2導電型半導体層132を順次に形成する。
第1導電型半導体層122としては、第1導電型シリコン系層、例えばp型シリコン系層で形成される。第2導電型半導体層132は、第1導電型と異なる第2導電型のシリコン系層、例えばn型シリコン系層で形成される。なお、第1導電型半導体層122がn型シリコン系層であり、第2導電型半導体層132がp型シリコン系層であってもよい。
p型シリコン系層およびn型シリコン系層は、非晶質シリコン層、または、非晶質シリコンと結晶質シリコンとを含む微結晶シリコン層で形成される。p型シリコン系層のドーパント不純物としてはホウ素(B)が挙げられ、n型シリコン系層のドーパント不純物としてはリン(P)が挙げられる。
i型半導体層121,131は、真性シリコン系層で形成される。i型半導体層121,131は、パッシベーション層として機能し、キャリアの再結合を抑制する。
【0018】
これらの半導体層121,122,131,132の形成方法は特に限定されないが、プラズマCVD法を用いると好ましい。プラズマCVD法による製膜条件としては、例えば、基板温度100~300℃、圧力20~2600Pa、高周波パワー密度0.004~0.8W/cmが好適に用いられる。材料ガスとしては、例えばSiH、Si等のシリコン含有ガス、またはシリコン系ガスとHとの混合ガスが好適に用いられる。
p型半導体層のドーパント添加ガスとしては、例えば、水素希釈されたBが好適に用いられる。n型半導体層のドーパント添加ガスとしては、例えば、水素希釈されたPHが好適に用いられる。
また、例えば、酸素または炭素といった不純物を微量添加してもよい。その場合、例えば、COまたはCHといったガスをCVD製膜の際に導入する。これにより、光の透過性が向上する。
このとき、半導体基板110の残留歪み、半導体基板110および半導体層121,122,131,132の汚れまたは異物付着等の不良を測定する(詳細は後述する。)。
【0019】
<<透明電極層形成工程(プロセス)>>
次に、図1Cに示すように、半導体基板110の受光面側および裏面側に透明電極層123,133を形成する。
透明電極層123,133は、透明導電性材料で形成される。透明導電性材料としては、透明導電性金属酸化物、例えば、酸化インジウム、酸化錫、酸化亜鉛、酸化チタンおよびそれらの複合酸化物等が用いられる。これらの中でも、酸化インジウムを主成分とするインジウム系複合酸化物が好ましい。高い導電率と透明性の観点からは、インジウム酸化物が特に好ましい。更に、信頼性またはより高い導電率を確保するため、インジウム酸化物にドーパントを添加すると好ましい。ドーパントとしては、例えば、Sn、W、Zn、Ti、Ce、Zr、Mo、Al、Ga、Ge、As、Si、またはS等が挙げられる。
【0020】
透明電極層123,133の形成方法としては、スパッタリング法等の物理気相堆積法(PVD法)、または有機金属化合物と酸素または水との反応を利用した化学気相堆積法(CVD法)等が用いられる。
このとき、半導体基板110の残留歪み、半導体基板110から透明電極層123,133までの汚れまたは異物付着等の不良を測定する(詳細は後述する。)。
【0021】
<<集電極形成工程(プロセス)>>
次に、図1Dに示すように、半導体基板110の受光面側に集電極124を形成し、半導体基板110の裏面側に集電極134を形成する。
集電極124,134は、金属材料で形成される。金属材料としては、例えば、Cu、Ag、Alおよびこれらの合金が用いられる。
集電極124は、いわゆる櫛型の形状をなし、櫛歯に相当する複数のフィンガー電極部と、櫛歯の支持部に相当するバスバー電極部とを有する。
また、集電極134は、いわゆる櫛型の形状をなし、櫛歯に相当する複数のフィンガー電極部と、櫛歯の支持部に相当するバスバー電極部とを有する。なお、集電極134は、櫛型に限定されるものではなく、例えば、半導体基板110の裏面側の略全体に矩形状に形成されてもよい。
【0022】
集電極124,134の形成方法としては、例えばスクリーン印刷等の印刷法による導電性ペーストの印刷等が用いられる。
このとき、半導体基板110の残留歪み、半導体基板110から透明電極層123,133までの汚れまたは異物付着等の不良を測定する(詳細は後述する。)。
【0023】
<<絶縁層形成工程(プロセス)>>
次に、図1Eに示すように、半導体基板110の受光面側の透明電極層123上に絶縁層126を形成し、半導体基板110の裏面側の透明電極層133上に絶縁層136を形成する。
絶縁層126,136の材料としては、例えば窒化シリコン(SiNx)または酸化シリコン(SiOx)が挙げられる。
絶縁層126,136の形成方法としては、スパッタリング法等の物理気相堆積法(PVD法)、または有機金属化合物と酸素または水との反応を利用した化学気相堆積法(CVD法)等が用いられる。
このとき、半導体基板110の残留歪み、半導体基板110から絶縁層126,136までの汚れまたは異物付着等の不良を測定する(詳細は後述する。)。
【0024】
<<アニール工程(プロセス)>>
次に、i型半導体層の界面のパッシベーション、半導体層およびその界面における欠陥準位の発生抑制、透明電極層における透明導電性酸化物の結晶化を目的として、アニール処理を施す。
アニール処理としては、例えば、各層を配置した半導体基板110を150℃以上200℃以下に過熱したオーブンに投入して加熱する加熱処理が挙げられる。この場合、オーブン内の雰囲気は、大気でも構わないが、水素または窒素を用いることで、より効果的なアニール処理が行える。また、アニール処理は、各層を配置した半導体基板110に対して赤外線ヒーターを用いて赤外線を照射させるRTA(Rapid Thermal Annealing)処理であってもよい。
このとき、半導体基板110の残留歪み、半導体基板110から絶縁層126,136までの汚れまたは異物付着等の不良を測定する(詳細は後述する。)。
【0025】
<<めっき工程(プロセス)>>
次に、図1Fに示すように、半導体基板110の受光面側の集電極124上にめっき層125を形成し、半導体基板110の裏面側の集電極134上にめっき層135を形成する。
めっき層125,135の形成方法としては、例えばCuを用いた電解メッキ等のメッキ法等が用いられる。
このとき、半導体基板110の残留歪み、半導体基板110から絶縁層126,136までの汚れまたは異物付着等の不良を測定する(詳細は後述する。)。
【0026】
以上の工程により、両面電極型の太陽電池セル101が得られる。
この太陽電池セル101の状態で、VI特性の測定、およびソーターが行われる。
【0027】
<<インターコネクト工程(プロセス)>>
次に、図1Gおよび図1Hに示すように、複数の太陽電池セル101を、配線部材102によって直列および/または並列に接続する。具体的には、配線部材102は、太陽電池セル101の電極におけるバスバー電極部に、導電性接続部材103を用いて接続される。導電性接続部材103としては、例えば半田または導電性接着剤が挙げられる。配線部材102は、例えば、タブ等の公知のインターコネクタである。
以上の工程により、太陽電池デバイス(太陽電池モジュール)100が得られる。
このとき、半導体基板110の残留歪み、半導体基板110から絶縁層126,136までの汚れまたは異物付着等の不良を測定する(詳細は後述する。)。
【0028】
<太陽電池デバイスの製造プロセス起因の不良の特定>
以下、上述した太陽電池デバイスの製造方法における製造プロセスごとに行う太陽電池デバイスの製造プロセス起因の不良の特定、すなわち製造プロセス間に行う半導体基板110の残留歪み、半導体基板および各機能層の汚れまたは異物(半導体基板および各機能層の表面の汚れまたは異物付着、或いは半導体基板および各機能層の異物混入)等の不良の測定について説明する。
【0029】
<<太陽電池デバイスの製造プロセス起因の不良の特定装置>>
まず、第1実施形態に係る太陽電池デバイスの製造プロセス起因の不良の特定装置について説明する。図2は、第1実施形態に係る太陽電池デバイスの製造プロセス起因の不良の特定装置を示す図である。図2に示す装置1は、いわゆる走査型赤外光弾性装置(Scanning Infrared Polariscope:SIRP)である(例えば非特許文献1参照)。
光弾性法は、被測定対象の残留歪み、汚れおよび異物等の不良により引き起こされる複屈折を利用した不良の測定法である。複屈折量は、誘電率テンソルの変動成分である光弾性テンソルによってひずみテンソルと関係づけられるので、偏光光学系を用いて試料の複屈折量を測定し、既知の光弾性テンソルの値を用いれば、ひずみテンソル成分が求められる。一般に、光弾性測定には直線偏光計や円偏光計が用いられている。このとき、複屈折の大きさは、試料入射前後の偏光の変化を透過光強度の偏光角依存特性として測定することによって推定される。
【0030】
装置1は、光源10と、光源駆動回路11と、レンズ12と、偏光子14と、φ駆動回路15と、XY走査ステージ16と、XY駆動回路17と、検光子18と、χ駆動回路19と、レンズ20と、光電変換素子22と、IV変換器23と、可変ゲイン増幅器24と、AD変換器25と、制御部26と、制御IOバス27と、記憶部28と、表示部30とを備える。
【0031】
光源10は、試料(太陽電池デバイス)に赤外光を照射する。例えば、光源10は、光源駆動回路11によって制御され、照射部10Aを介して赤外光を出射する。
光源10から照射された赤外光は、レンズ12によって試料の表面において集光される。
【0032】
偏光子14は、レンズ12と試料との間、すなわち光源10と試料との間に配置される。偏光子14は、例えばパルスモータであるΦ駆動回路15によって制御され、赤外光を偏光して、試料の表面に照射する。
XY走査ステージ16は、偏光子14と検光子18との間に配置され、試料を搭載する。XY走査ステージ16は、例えばパルスモータであるXY駆動回路17によって制御され、赤外光に対して試料を走査する。
検光子18は、試料とレンズ20との間、すなわち試料と光電変換素子22との間に配置される。検光子18は、例えばパルスモータであるχ駆動回路19によって制御され、試料を透過した赤外光を偏光して、光電変換素子22に照射する。
【0033】
このように、偏光子14および検光子18は、試料の前後に配置され、直線偏光計(光学系)のベースを構成する。偏光子14および検光子18は、パルスモータで制御されて同期回転され、透過光強度を偏光角φの関数として収集できる構造になっている。
なお、本実施形態では、直線偏光計を構成する装置1を例示するが、装置はこれに限定されず、円偏光計を構成してもよい。
【0034】
検光子18から出射された赤外光は、レンズ20によって光電変換素子22の受光面において集光される。
光電変換素子22は、入射した光を電流信号に変換する。光電変換素子22としては、例えばフォトダイオードが用いられる。
IV変換器23は、光電変換素子22によって変換された電流信号を電圧信号に変換する。可変ゲイン増幅器24は、IV変換器23によって変換された電圧信号を増幅する。可変ゲイン増幅器24の増幅ゲインは可変可能である。AD変換器25は、可変ゲイン増幅器24によって増幅された電圧信号(アナログ信号)をディジタル信号に変換する。
【0035】
制御部26は、制御IOバス27を介して各駆動回路11,15,17,19に制御信号を供給し、光源10、XY走査ステージ16のXY位置、偏光子14の偏光角φ、および、検光子18の偏光角χを制御する。
また、制御部26は、制御IOバス27を介してAD変換器25から取得した透過光強度に応じた信号と、偏光子14の偏光角φと、検光子18の偏光角χと、XY走査ステージ16のXY位置とに基づいて、XY位置ごとの複屈折率を演算することにより、太陽電池デバイスの主面における複屈折率分布を取得する。
【0036】
具体的には、制御部26は、上述した太陽電池デバイスの製造方法における複数の製造プロセスのうちの所定のプロセスの前に、赤外光弾性測定法を用いて半導体基板の複屈折率分布を表す第1複屈折率マッピングを取得する。また、制御部26は、この所定のプロセスの後に、赤外光弾性測定法を用いて半導体基板の複屈折率分布を表す第2複屈折率マッピングを取得する。そして、制御部26は、第1複屈折率マッピングに存在せず、第2複屈折率マッピングに存在する複屈折率分布の特異点を特定し、特定した複屈折率分布の特異点を所定のプロセスに起因する残留歪み、汚れまたは異物等の不良の発生箇所として特定する。
分布の特異点とは、2次元で物性値(ここでは複屈折率や赤外光透過率)をマッピングしたとき、平均的な分布挙動から逸脱する領域である。
【0037】
記憶部28は、制御部26によって取得された第1複屈折率マッピングおよび第2複屈折率マッピングを、プロセスごとに記憶する。また、記憶部28は、制御部26によって特定された複屈折率分布の特異点を、すなわちプロセスに起因する不良の発生箇所を、プロセスごとに記憶する。
記憶部28は、例えば光磁気ディスクおよび光磁気ディスクドライブである。
【0038】
表示部30は、制御部26によって取得された第1複屈折率マッピングおよび第2複屈折率マッピングを、プロセスごとに表示する。或いは、表示部30は、制御部26によって特定された複屈折率分布の特異点を、すなわちプロセスに起因する不良の発生箇所を、プロセスごとに表示する。
表示部30は、例えば液晶ディスプレイである。
【0039】
<<太陽電池デバイスの製造プロセス起因の不良の特定方法>>
次に、上述した装置1を用いた太陽電池デバイスの製造プロセス起因の残留歪み、汚れまたは異物等の不良の特定方法について説明する。
第1実施形態に係る太陽電池デバイスの製造プロセス起因の不良の特定方法では、複数の製造プロセスのうちの所定のプロセスの前に、赤外光弾性測定法を用いて半導体基板の複屈折率分布を表す第1複屈折率マッピングを取得し、次に、所定のプロセスの後に、赤外光弾性測定法を用いて半導体基板の複屈折率分布を表す第2複屈折率マッピングを取得する。
図3Aに、テクスチャ形成工程(プロセス)の前に取得した第1複屈折率マッピングの一例を示す。図3Bに、テクスチャ形成工程(プロセス)の後に取得した第2複屈折率マッピングであり、かつ、半導体層形成工程(プロセス)の前に取得した第1複屈折率マッピングの一例を示す。図3Cに、半導体層形成工程(プロセス)の後に取得した第2複屈折率マッピングであり、かつ、透明電極層形成工程(プロセス)の前に取得した第1複屈折率マッピングの一例を示す。図3Dに、透明電極層形成工程(プロセス)の後に取得した第2複屈折率マッピングであり、かつ、集電極形成工程(プロセス)の前に取得した第1複屈折率マッピングの一例を示す。図3Eに、集電極形成工程(プロセス)の後に取得した第2複屈折率マッピングであり、かつ、絶縁層形成工程(プロセス)の前に取得した第1複屈折率マッピングの一例を示す。図3Fに、絶縁層形成工程(プロセス)の後に取得した第2複屈折率マッピングであり、かつ、アニール工程(プロセス)の前に取得した第1複屈折率マッピングの一例を示す。図3Gに、アニール工程(プロセス)の後に取得した第2複屈折率マッピングであり、かつ、めっき工程(プロセス)の前に取得した第1複屈折率マッピングの一例を示す。図3Hに、めっき工程(プロセス)の後に取得した第2複屈折率マッピングであり、かつ、インターコネクト工程(プロセス)の前に取得した第1複屈折率マッピングの一例を示す。図3Iに、インターコネクト工程(プロセス)の後に取得した第2複屈折率マッピングの一例を示す。図3A図3Iでは、白いほど赤外光透過率および複屈折率が高い。
【0040】
次に、第1複屈折率マッピングに存在せず、第2複屈折率マッピングに存在する複屈折率分布の特異点を特定する。図3A図3Iの例では、インターコネクト工程(プロセス)の前に取得した第1複屈折率マッピング(図3H参照)に存在せず、インターコネクト工程(プロセス)の後に取得した第2複屈折率マッピング(図3I参照)に存在する複屈折率分布の特異点A(6か所)を特定する。
次に、複屈折率分布の特異点を、所定のプロセスに起因する不良の発生箇所として特定する。図3A図3Iの例では、複屈折率分布の特異点A(6か所)を、インターコネクト工程(プロセス)に起因する不良の発生箇所として特定する。
なお、図3Iでは、説明を容易にするために、残留歪みに関する複屈折率分布の特異点Aのみを示した。しかし、複屈折率マッピングによれば、後述の図4に示すように、インターコネクト工程(プロセス)の前に取得した第1複屈折率マッピングに存在せず、インターコネクト工程(プロセス)の後に取得した第2複屈折率マッピングに存在する、汚れまたは異物等に関する複屈折率分布の特異点Bをも特定し、複屈折率分布の特異点Bをも、インターコネクト工程(プロセス)に起因する不良の発生箇所として特定する。
【0041】
以上説明したように、第1実施形態の太陽電池デバイスの製造プロセス起因の不良の特定方法および特定装置1によれば、太陽電池デバイスの複数の製造プロセスのうちの所定のプロセスの前に、赤外光弾性測定法を用いて半導体基板の複屈折率分布を表す第1複屈折率マッピングを取得し、所定のプロセスの後に、赤外光弾性測定法を用いて半導体基板の複屈折率分布を表す第2複屈折率マッピングを取得し、第1複屈折率マッピングに存在せず、第2複屈折率マッピングに存在する複屈折率分布の特異点を特定し、複屈折率分布の特異点を、所定のプロセスに起因する不良の発生箇所として特定する。
これにより、太陽電池デバイスの製造プロセスに起因する半導体基板の残留歪み、半導体基板および各機能層の汚れまたは異物(半導体基板および各機能層の表面の汚れまたは異物付着、或いは半導体基板および各機能層の異物混入)等の不良の発生および発生箇所を特定できる。その結果、太陽電池デバイスの製造プロセスの改善に寄与できる。
【0042】
(第2実施形態)
第1実施形態では、太陽電池デバイスの製造方法における所定のプロセスの前後において取得した複屈折率マッピングに基づいて、所定のプロセスに起因する残留歪み、汚れまたは異物(半導体基板および各機能層の表面の汚れまたは異物付着、或いは半導体基板および各機能層の異物混入)等の不良の発生箇所を特定した。
第2実施形態では、複屈折率マッピングに加えて、太陽電池デバイスの製造方法における所定のプロセスの前後において取得した赤外光透過率マッピングに基づいて、所定のプロセスに起因する不良のうちの例えば残留歪みの発生箇所を特定する。換言すれば、第2実施形態では、所定のプロセスに起因する不良において、例えば、残留歪みと、他の汚れまたは異物(半導体基板および各機能層の表面の汚れまたは異物付着、或いは半導体基板および各機能層の異物混入)等の不良とを切り分ける。
【0043】
<太陽電池デバイスの製造方法>
第2実施形態に係る太陽電池デバイスの製造方法は、太陽電池デバイスの製造プロセス起因の不良の特定方法を除いて、図1A図1Hに示す第1実施形態の太陽電池デバイスの製造方法と同一である。
【0044】
<太陽電池デバイスの製造プロセス起因の不良の特定>
<<太陽電池デバイスの製造プロセス起因の不良の特定装置>>
第2実施形態に係る太陽電池デバイスの製造プロセス起因の不良の特定装置1は、制御部26の機能および動作が異なる点を除いて、図2に示す第1実施形態の太陽電池デバイスの製造プロセス起因の不良の特定装置1と同一である。
制御部26は、制御IOバス27を介してAD変換器25から取得した透過光強度に応じた信号と、偏光子14の偏光角φと、検光子18の偏光角χと、XY走査ステージ16のXY位置とに基づいて、XY位置ごとの赤外光透過率を演算することにより、太陽電池デバイスの主面における赤外光透過率分布を取得する。
【0045】
具体的には、制御部26は、上述した太陽電池デバイスの製造方法における複数の製造プロセスのうちの所定のプロセスの前に、赤外光弾性測定法を用いて半導体基板の赤外光透過率分布を表す第1赤外光透過率マッピングを取得する。また、制御部26は、この所定のプロセスの後に、赤外光弾性測定法を用いて半導体基板の赤外光透過率分布を表す第2赤外光透過率マッピングを取得する。そして、制御部26は、第1赤外光透過率マッピングに存在せず、第2赤外光透過率マッピングに存在する赤外光透過率分布の特異点を特定する。そして、制御部26は、所定のプロセスに起因する不良の発生箇所を特定する際、複屈折率分布の特異点が赤外光透過率分布の特異点と一致するか否かを判定する。判定の結果、制御部26は、赤外光透過率分布の特異点と一致しない複屈折率分布の特異点を、所定のプロセスに起因する不良のうちの例えば残留歪みの発生箇所として特定する。
【0046】
<<太陽電池デバイスの製造プロセス起因の不良の特定方法>>
第2実施形態に係る太陽電池デバイスの製造プロセス起因の不良の特定方法は、複屈折率マッピングに加えて、太陽電池デバイスの製造方法における所定のプロセスの前後において取得した赤外光透過率マッピングに基づいて、所定のプロセスに起因する不良のうちの例えば残留歪みの発生箇所を特定する。
第2実施形態に係る太陽電池デバイスの製造プロセス起因の不良の特定方法では、複数の製造プロセスのうちの所定のプロセスの前に、赤外光弾性測定法を用いて半導体基板の複屈折率分布を表す第1複屈折率マッピングを取得すると共に、半導体基板の赤外光透過率分布を表す第1赤外光透過率マッピングを取得する。次に、所定のプロセスの後に、赤外光弾性測定法を用いて半導体基板の複屈折率分布を表す第2複屈折率マッピングを取得すると共に、半導体基板の赤外光透過率分布を表す第2赤外光透過率マッピングを取得する。
図4に、インターコネクト工程(プロセス)の前に取得した第1複屈折率マッピング(一部)および第1赤外光透過率マッピング(一部)の一例を示すと共に、インターコネクト工程(プロセス)の後に取得した第2複屈折率マッピング(一部)および第2赤外光透過率マッピング(一部)の一例を示す。図4では、白いほど赤外光透過率および複屈折率が高い。
【0047】
次に、第1複屈折率マッピングに存在せず、第2複屈折率マッピングに存在する複屈折率分布の特異点を特定する。図4の例では、インターコネクト工程(プロセス)の前に取得した第1複屈折率マッピングに存在せず、インターコネクト工程(プロセス)の後に取得した第2複屈折率マッピングに存在する複屈折率分布の特異点A(丸囲み箇所3か所)および特異点B(矢印箇所3か所)を特定する。
また、第1赤外光透過率マッピングに存在せず、第2赤外光透過率マッピングに存在する赤外光透過率分布の特異点を特定する。図4の例では、インターコネクト工程(プロセス)の前に取得した第1赤外光透過率マッピングに存在せず、インターコネクト工程(プロセス)の後に取得した第2赤外光透過率マッピングに存在する赤外光透過率分布の特異点B(矢印箇所3か所)を特定する。
そして、所定のプロセスに起因する不良の発生箇所を特定する際、複屈折率分布の特異点が赤外光透過率分布の特異点と一致するか否かを判定する。判定の結果、赤外光透過率分布の特異点B(3か所)と一致しない複屈折率分布の特異点A(3か所)を、所定のプロセスに起因する不良のうちの例えば残留歪みの発生箇所として特定する。
【0048】
以上説明したように、第2実施形態の太陽電池デバイスの製造プロセス起因の不良の特定方法および特定装置1によれば、第1実施形態の太陽電池デバイスの製造プロセス起因の不良の特定方法および特定装置と同様の利点を得ることができる。
【0049】
更に、第2実施形態の太陽電池デバイスの製造プロセス起因の不良の特定方法および特定装置1によれば、所定のプロセスの前に、赤外光弾性測定法を用いて半導体基板の赤外光透過率分布を表す第1赤外光透過率マッピングを取得し、所定のプロセスの後に、赤外光弾性測定法を用いて半導体基板の赤外光透過率分布を表す第2赤外光透過率マッピングを取得し、第1赤外光透過率マッピングに存在せず、第2赤外光透過率マッピングに存在する赤外光透過率分布の特異点を特定し、所定のプロセスに起因する不良の発生箇所を特定する際、複屈折率分布の特異点が赤外光透過率分布の特異点と一致するか否かを判定する。判定の結果、赤外光透過率分布の特異点と一致しない複屈折率分布の特異点を、所定のプロセスに起因する不良のうちの例えば残留歪みの発生箇所として特定する。
複屈折率マッピングには、例えば残留歪み誘起成分だけでなく(例えば、図4における特異点A)、例えば汚れまたは異物による透過率の異常低下も含まれる(例えば、図4における特異点B)。これらの特異点Bの分布は、赤外光透過率マッピングと複屈折率マッピングに共通して出現するので、そのような特異点Bの分布モードを除外すると、より精確に例えば残留歪みの発生を特定できる。
【0050】
なお、上述した第2実施形態では、赤外光透過率分布の特異点と一致しない複屈折率分布の特異点により特定される不良として、半導体基板の残留歪みを例示した。しかし、赤外光透過率分布の特異点と一致しない複屈折率分布の特異点、すなわち屈折率のみの局所異常点(異常複屈折点)により特定される不良としては、半導体基板の残留歪みだけでなく、その他何らかの要因による異常複屈折がある。第2実施形態の太陽電池デバイスの製造プロセス起因の不良の特定方法および特定装置は、これらの異常複屈折の発生およびその発生箇所の特定を除くものではない。
【0051】
また、上述した第2実施形態では、赤外光透過率分布の特異点と一致する複屈折率分布の特異点により特定される不良として、半導体基板および各機能層の汚れまたは異物(半導体基板および各機能層の表面の汚れまたは異物付着、或いは半導体基板および各機能層の異物混入)を例示した。しかし、赤外光透過率分布の特異点と一致する複屈折率分布の特異点により特定される不良としては、半導体基板および各機能層の汚れまたは異物だけでなく、その他何らかの要因による表面状態の局所異常(例えば、突起または窪み)、および、結晶特性の複合異常(例えば、吸収係数および屈折率の両方の異常)等がある。第2実施形態の太陽電池デバイスの製造プロセス起因の不良の特定方法および特定装置は、これらの表面状態の局所異常および結晶特性の複合異常等の発生およびその発生箇所の特定を除くものではない。
【0052】
同様に、上述した第1実施形態では、所定のプロセスの前に取得した第1複屈折率マッピングに存在せず、所定のプロセスの後に取得した第2複屈折率マッピングに存在する複屈折率分布の特異点によって特定される不良として、半導体基板の残留歪み、半導体基板および各機能層の汚れまたは異物(半導体基板および各機能層の表面の汚れまたは異物付着、或いは半導体基板および各機能層の異物混入)を例示した。しかし、第1実施形態の太陽電池デバイスの製造プロセス起因の不良の特定方法および特定装置は、上述した異常複屈折、表面状態の局所異常および結晶特性の複合異常等の発生および発生箇所の特定を除くものではない。
【0053】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されることなく、種々の変更および変形が可能である。例えば、上述した実施形態では、半導体基板としてシリコン基板を含む太陽電池デバイスの製造プロセス起因の残留歪み、汚れまたは異物等の不良の特定方法および特定装置について説明した。しかし、本発明の太陽電池デバイスの製造プロセス起因の不良の特定方法および特定装置はこれに限定されず、半導体基板としてGaAs基板、均一組成バルク結晶成長が試みられているInGa1-xAs混晶基板、または、光導波路基板材料であるLiNbO(LN)結晶基板等の種々の材料の基板を含む太陽電池デバイスの製造プロセス起因の残留歪み、汚れまたは異物等の不良の特定に適用可能である。
【0054】
また、上述した実施形態では、ヘテロ接合型の太陽電池デバイスの製造プロセス起因の残留歪み、汚れまたは異物等の不良の特定方法および特定装置について説明した。しかし、本発明の太陽電池デバイスの製造プロセス起因の不良の特定方法および特定装置はこれに限定されず、ホモ接合型の太陽電池デバイス等の種々の太陽電池デバイスの製造プロセス起因の残留歪み、汚れまたは異物等の不良の特定に適用可能である。
【0055】
また、上述した実施形態では、両面電極型の太陽電池デバイスの製造プロセス起因の残留歪み、汚れまたは異物等の不良の特定方法および特定装置について説明した。しかし、本発明の太陽電池デバイスの製造プロセス起因の不良の特定方法および特定装置はこれに限定されず、裏面電極型の太陽電池デバイス等の種々の太陽電池デバイスの製造プロセス起因の残留歪み、汚れまたは異物等の不良の特定に適用可能である。
【0056】
また、上述した実施形態では、太陽電池デバイスの製造プロセスの一例を説明した。しかし、本発明の太陽電池デバイスの製造プロセス起因の不良の特定方法および特定装置はこれに限定されず、太陽電池デバイスの種々の製造プロセスに適用可能である。例えば、半導体層およびTCO層の形成プロセスとして、CVD法、PVD法、リフトオフ法、印刷法等の様々な形成プロセスに適用可能であり、太陽電池デバイス(太陽電池モジュール)のプロセスとして、タブ線を用いないシングリング法等の様々なプロセスに適用可能である。また、レーザ切断等のプロセスにも適用可能である。
【0057】
また、上述した実施形態では、太陽電池デバイスの製造プロセス起因の不良の特定装置として偏光子と検光子とが試料の前後に配置された透過型を説明した。しかし、本発明の太陽電池デバイスの製造プロセス起因の不良の特定装置はこれに限定されず、偏光子と検光子とが試料に対して同じ側に配置され、試料の反対側に反射板等が配置された反射型であってもよい。
【符号の説明】
【0058】
1 特定装置
10 光源
10A 照射部
11 光源駆動回路
12 レンズ
14 偏光子
15 φ駆動回路
16 XY走査ステージ
17 XY駆動回路
18 検光子
19 χ駆動回路
20 レンズ
22 光電変換素子
23 IV変換器
24 可変ゲイン増幅器
25 AD変換器
26 制御部
27 制御IOバス
28 記憶部
30 表示部
100 太陽電池デバイス(太陽電池モジュール)
101 太陽電池セル
102 配線部材
103 導電性接続部材
110 半導体基板
121,131 i型半導体層
122 第1導電型半導体層
132 第2導電型半導体層
123,133 透明電極層
124,134 集電極
125,135 めっき層
126,136 絶縁層
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図1F
図1G
図1H
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図3F
図3G
図3H
図3I
図4