(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-01
(45)【発行日】2022-09-09
(54)【発明の名称】放射性薬剤投与装置
(51)【国際特許分類】
A61M 5/20 20060101AFI20220902BHJP
A61M 36/08 20060101ALI20220902BHJP
A61M 5/145 20060101ALI20220902BHJP
A61M 5/168 20060101ALI20220902BHJP
A61M 5/178 20060101ALI20220902BHJP
A61J 1/00 20060101ALI20220902BHJP
【FI】
A61M5/20 560
A61M36/08
A61M5/145
A61M5/168 504
A61M5/178 510
A61J1/00 A
(21)【出願番号】P 2018214049
(22)【出願日】2018-11-14
【審査請求日】2021-10-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000230250
【氏名又は名称】日本メジフィジックス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】594118958
【氏名又は名称】株式会社ユニバーサル技研
(74)【代理人】
【識別番号】100137589
【氏名又は名称】右田 俊介
(72)【発明者】
【氏名】中川原 潤
(72)【発明者】
【氏名】加藤 雅之
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 数弘
【審査官】中村 一雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-144065(JP,A)
【文献】特開2008-212201(JP,A)
【文献】特開2008-253409(JP,A)
【文献】特開2018-191703(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/20
A61M 36/08
A61M 5/145
A61M 5/168
A61M 5/178
A61J 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射性薬剤を生体に投与するための放射性薬剤投与装置であって、
前記放射性薬剤の薬剤容器が収容された遮蔽容器を保持する容器保持部と、
前記容器保持部内に収容されている前記薬剤容器に接続される流路の一部を構成する複数の流路構成部材が取り付けられる構成取付部と、
前記容器保持部または前記構成取付部の少なくとも一部を覆って前記放射性薬剤から放出される放射線を遮蔽する遮蔽部材と、
前記遮蔽部材の少なくとも一部を覆う装置ハウジングと、を備え、
前記遮蔽部材は、設置方向における上面の一部が前記上面の他の部分よりも低い低面部を有し、前記低面部の上方に前記遮蔽部材から引き出された前記流路が遊挿される遊挿空間を有する、放射性薬剤投与装置。
【請求項2】
前記遮蔽部材には、前記容器保持部及び前記構成取付部を個々に遮蔽する複数の遮蔽領域が設けられている、請求項1に記載の放射性薬剤投与装置。
【請求項3】
前記遮蔽部材に形成された第一開口と前記装置ハウジングに形成された第二開口との間で前記流路を保持する流路誘導部をさらに有する、請求項1または2に記載の放射性薬剤投与装置。
【請求項4】
前記流路誘導部は、前記流路を前記装置ハウジングの幅方向に移動可能にする、請求項3に記載の放射性薬剤投与装置。
【請求項5】
前記流路の一部は、前記遊挿空間内で上方向及び前記装置ハウジングの幅方向に引き回されている、請求項1から4のいずれか一項に記載の放射性薬剤投与装置。
【請求項6】
前記遮蔽部材は、遮蔽空間を構成する複数の遮蔽壁と、前記遮蔽空間を開放または閉塞する遮蔽扉を有し、
前記遮蔽扉は、放射性薬剤投与装置の外部に曝される外面を有する外側扉と、当該外側扉の前記外面に対する裏面である内面に対向する内側扉とを含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の放射性薬剤投与装置。
【請求項7】
前記構成取付部には、前記流路を通じて前記遮蔽容器から前記放射性薬剤を抽出するためにシリンジのプランジャ部を駆動させる1または複数のシリンジ駆動部と、前記流路上に設けられ、前記流路を切り換える流路切換部材を保持する流路切換部材保持部とが取り付けられ、前記内側扉は、前記流路切換部材保持部を覆い、前記外側扉は、前記シリンジ駆動部及び前記内側扉を覆っている、請求項6に記載の放射性薬剤投与装置。
【請求項8】
前記内側扉の放射線の阻止能が、前記外側扉の放射線の阻止能より高い、請求項6または7に記載の放射性薬剤投与装置。
【請求項9】
前記容器保持部は、前記遮蔽扉の前記内側扉に設けられている、請求項6から8のいずれか一項に記載の放射性薬剤投与装置。
【請求項10】
前記薬剤容器から前記放射性薬剤を抽出する抽出針を保持する抽出針保持部と、前記薬剤容器に穿刺される通気針を保持する通気針保持部とを脱着可能に保持する針ユニットをさらに備え、
前記針ユニットは、前記抽出針保持部と前記通気針保持部とが前記装置ハウジングの幅方向と交差する前後方向に配置されるように保持しながら上下動させる針案内部を有する、請求項1から9のいずれか一項に記載の放射性薬剤投与装置。
【請求項11】
前記針案内部は、上下方向に延在する案内溝であって、前記抽出針保持部及び前記通気針保持部の一方が移動する第一の案内溝と、他方が移動する第二の案内溝とを有し、前記第一の案内溝及び前記第二の案内溝の一方が、他方に近づく方向に屈曲している、請求項10に記載の放射性薬剤投与装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射性薬剤を生体に投与する放射性薬剤投与装置に関する。
【背景技術】
【0002】
放射性薬剤は、薬剤に含まれる放射性核種が固有の半減期に従って経時的に崩壊し、その際に放射線を放出することが知られている。このため、放射性薬剤を取り扱う作業は、作業者が放射線被ばくすることを防ぐため、自動投与装置を用いて行うことが公知である。このような放射性薬剤の投与装置は、例えば、特許文献1に記載されている。特許文献1に記載の放射性薬剤投与装置は、バイアル瓶に収容された放射性薬剤が収容された遮蔽容器が配置される容器配置部、放射性薬剤の流路を構成する輸液チューブ、流路上に設けられる流路切換部材及び遮蔽容器から放射性薬剤を抜き取って生体に投与するためのシリンジ等を備えている。これらの構成は、放射線遮蔽部材で覆われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の放射性薬剤投与装置の放射線遮蔽部材は、外観が略直方体の形状を有し、その内部に形成される遮蔽空間も略直方体の形状を有している。このような放射線遮蔽部材は、内部に配置される上記流路切換部材やシリンジ等のうち設置に必要なスペースの大きいものに合わせて設計されている。このため、遮蔽空間内には、比較的設置スペースが小さい部材の周囲に、部材の設置に利用されない空間(余剰空間)が存在することがある。このように、装置内に余剰空間が生じる特許文献1に記載の放射性薬剤の投与装置は、装置の小型化に不利であり、その設置スペースをさらに小さくする余地がある。
本発明は、このような点に鑑みてなされたものであり、その外形寸法を小型化し、設置に必要な空間の省スペース化に有利な放射性薬剤投与装置に関する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の放射性薬剤投与装置は、放射性薬剤を生体に投与するための放射性薬剤投与装置であって、前記放射性薬剤の薬剤容器が収容された遮蔽容器を保持する容器保持部と、前記容器保持部内に収容されている前記薬剤容器に接続される流路の一部を構成する複数の流路構成部材が取り付けられる構成取付部と、前記容器保持部及び前記構成取付部の少なくとも一部を覆って前記放射性薬剤から放出される放射線を遮蔽する遮蔽部材と、前記遮蔽部材の少なくとも一部を覆う装置ハウジングと、を備え、前記遮蔽部材は、設置方向における上面の一部が前記上面の他の部分よりも低い低面部を有し、前記遮蔽部材によって覆われる遮蔽領域の外部であって前記低面部の上方に前記遮蔽部材から引き出された前記流路が遊挿される遊挿空間を有する。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、外形寸法を小型化し、設置に必要な空間の省スペース化に有利な放射性薬剤投与装置に関する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の実施形態の概要を説明するための図である。
【
図2】第一実施形態の放射性薬剤投与装置の外観を示す斜視図である。
【
図3】
図2に示す放射性薬剤投与装置の一部をx-z平面で切断した部分断面を正面から見た図である。
【
図4】
図2に示す放射性薬剤投与装置の一部をy-z平面で切断した部分断面を左側面から見た図である。
【
図5】
図1に示す放射性薬剤投与装置の一部をy-z平面で切断した部分断面を右側面から見た図である。
【
図6】放射性薬剤投与装置に取り付けられる脱着カセットの正面図である。
【
図9】第一実施形態の容器ホルダの変形例を示す図である。
【
図10】第二実施形態の脱着カセットの底面図である。
【
図11】第二実施形態の脱着カセットの正面図である。
【
図12】第二実施形態の脱着カセットの背面図である。
【
図13】(a)及び(b)は、第二実施形態の針ユニットを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[概要]
先ず、本発明の第一実施形態、第二実施形態の具体的な説明に先立って、本発明の概要について説明する。なお、本明細書では、第一実施形態、第二実施形態を総称して本実施形態とも記す。なお、この概要の説明及び本実施形態中に示した図面において、同様の構成要素には同一の符号を付し、適宜その説明を省略する。また、本実施形態の図面は、本発明の放射性薬剤投与装置の構成部材、各構成部材の配置や機能、位置関係の例示であり、具体的な構成を限定するものではない。
【0009】
図1は、本発明の実施形態の概要を説明するための図である。本実施形態の放射性薬剤投与装置1は、放射性薬剤を生体に投与するための放射性薬剤投与装置である。放射性薬剤投与装置1は、放射性薬剤の薬剤容器が収容された遮蔽容器を保持する容器保持部(
図3、
図5の容器配置部12に相当)と、容器保持部内に収容されている放射性薬剤容器に接続される流路の一部を構成する複数の構成取付部(
図3、
図4の流路構成部材配置部14に相当)と、を備えている。そして、放射性薬剤投与装置1は、容器保持部または構成取付部の少なくとも一部を覆う遮蔽部材21、遮蔽部材21の少なくとも一部を覆う装置ハウジング20を備えている。遮蔽部材21は、設置方向における上面211の一部が、上面211の他の部分(高面部211a)よりも低い低面部211bを有し、低面部211bの上方に遮蔽部材21から引き出された放射性流路31bが遊挿される遊挿空間50を有している。
【0010】
上記のうち、放射性薬剤投与装置とは、放射性薬剤を投与する機能を有するものであればよく、他に分注や合成といった他の機能を有するものであってもよい。ここで、設置方向は、重力の方向に従って
図1中に示したx,y,z座標のz方向を「上」、-z方向を「下」とする。また、
図1に示す例では、放射性薬剤投与装置1をy方向に見る側を放射性薬剤投与装置1の「前」または「前面」とし、放射性薬剤投与装置1を-y方向に見る側を「後」または「背面」とする。
上面211が高面部211aと低面部211bとを有することにより、放射性薬剤投与装置1の遮蔽部材21は、段差を有している。遮蔽部材21の縦、横、奥行きの最大長を縦、横、奥行きの長さとする仮想的な直方体と実際の遮蔽部材21とを重ね、仮想的な直方体に対する遮蔽部材21の欠損部分を以降切欠領域210とも記す。放射性薬剤投与装置1では、切欠領域210を遊挿空間50として利用している。
【0011】
遊挿空間50に遊挿される放射性流路31bは、放射性薬剤を含む液体が流れる流路であって、装置ハウジング20、望ましくは遮蔽部材21内に収容されている。放射性薬剤投与装置1は、放射性流路31bを低面部211bに形成されている開口211cから装置ハウジング20の開口211dへ導く流路誘導部16を備えている。流路誘導部16は、装置ハウジング20内に収容されていて、必要に応じて装置ハウジング20から矢線Aの方向に引出可能である。このような放射性薬剤投与装置1の放射性流路31bには、開口211cから開口211dまでの長さに加え、流路誘導部16と共に引き出される分の長さが必要になる。このような長さの余裕を確保するため、本実施形態では、遊挿空間50に放射性流路31bを遊挿するものである。
【0012】
また、このような本実施形態は、遮蔽部材21の上方に放射性流路31bを引き回し、他の個所(例えば放射性薬剤投与装置の背面)に放射性流路31bを引き回すことが不要になる。このため、放射性薬剤投与装置1の背面から放射性流路31bを引き回していた公知の放射性薬剤投与装置と対比した場合に、本実施形態の放射性薬剤投与装置1では、流路引き回しに使用していた空間に電源や制御部等の比較的大型の構成を配置することができるようになる。このような点は、放射性薬剤投与装置1の小型化にさらに有効である。
さらに、遮蔽部材21の上方に放射性流路31bを引き回す構成は、作業者が放射性薬剤投与装置1の前面に立ったまま放射性流路31bを操作することができる。このため、放射性薬剤投与装置1の周囲の作業スペースを削減し、放射性薬剤投与装置1の設置面積を小さくすることができる。
【0013】
[第一実施形態]
(全体構成)
次に、第一実施形態の放射性薬剤投与装置1の全体構成について説明する。
図2から
図5の各々は、放射性薬剤投与装置1を示す図である。このうち、
図2は、放射性薬剤投与装置1の外観を示す斜視図であり、
図3から
図5は、それぞれ前面、左側面、右側面からみた放射性薬剤投与装置1の部分断面図である。これらの部分断面図では、遮蔽領域及びその周辺構造の断面を示し、それ以外の構成を外観で示す。
図3は、遮蔽扉10を装置ハウジング20に取り付けていない状態の放射性薬剤投与装置1の一部をx-z平面で切断した部分断面図である。
図4、
図5は、放射性薬剤投与装置1の遮蔽領域をy-z平面で切断した部分断面図である。
図2から
図5に示すように、放射性薬剤投与装置1では、放射性薬剤27が収容されたバイアル瓶7が遮蔽容器5ごと内部に載置されている。放射性薬剤投与装置1は、放射性薬剤27を抽出して生体に投与している。
【0014】
放射性薬剤27は、液状であり、その種類は特に限定されない。このような放射性薬剤27としては、例えば、PET(陽電子断層撮像:Positron Emission Tomography)検査用のポジトロン放出核種(フッ素―18、窒素―13、炭素―11、銅―64等)を含む放射性薬剤、例えば[18F]-2-deoxy-2-fluoro- D-glucose)、[18F]フルテメタモル、[18F]フロルベタピル、[18F]フロルベタベン、[18F]フルシクロビン、[18F]フロロエチルチロシン、[18F]フルオロミソニダゾール、[18F]ドパミン、[18F]フッ化ナトリウム、[11C]メチオニン、[11C]コリン誘導体、[11C]酢酸、[64Cu]ジチオセミカルバゾン誘導体等が挙げられ、また、SPECT(単一光子放射断層撮影:Single Photon Emission Computed Tomography)検査用の放射性核種(テクネチウム―99m、タリウム―201、ガリウム―68、クロム―51、ヨウ素―123、ヨウ素―125等)を含む放射性薬剤、もしくは放射線内用療法用の放射性核種(ヨウ素―131等)を含む放射性薬剤等が挙げられる。
【0015】
放射性薬剤投与装置1は、放射性薬剤27を抽出して投与するための構成、及び、放射線が外部へ漏洩することを低減するための構成を有している。遮蔽部材21及び装置ハウジング20は、放射線が外部へ漏洩することを低減するための構成であって、このうち主に遮蔽部材21が大きな放射線の遮蔽機能を有している。遮蔽部材21は、容器配置部12(容器保持部)または流路構成部材配置部14(構成取付部)の少なくとも一部を個々に覆っていればよく、容器保持部及び構成取付部の少なくとも一部を一体として覆ってもよいが、容器保持部又は構成取付部の少なくとも一部を個々に遮蔽する複数の遮蔽領域が設けられていることが好適である。本実施形態では、遮蔽部材21に容器保持部及び構成取付部の少なくとも一部を個々に遮蔽する2つの領域(S1、S2)が設けられている場合を説明する。
【0016】
遮蔽部材21は、流路構成部材配置部14を構成する複数の遮蔽壁21dから遮蔽壁21jと、流路構成部材配置部14を開放または閉塞する遮蔽扉10a(
図2)によって内部に遮蔽領域S2を形成する。
図4に示すように、遮蔽扉10aは、放射性薬剤投与装置1の外部に曝される外面を有する外側扉100と、この外側扉100の外面に対する裏面である内面に対向する内側扉110とを含んでいる。ここで、対向とは単に向き合うことをいい、両者の間隔は問わないものとする。
図4に示す例では、外側扉100の裏面と内側扉110とが接触している。
また、遮蔽部材21は、容器配置部12を構成する複数の遮蔽壁21aから流路構成部材配置部14と共有の遮蔽壁21dと、流路構成部材配置部14を開放または閉塞する遮蔽扉10a(
図2)によって内部に遮蔽領域S1を形成する。さらに、遮蔽扉10bは把持部11(
図2)を有し、作業者が把持部11を把持して遮蔽扉10bを開放または閉塞可能である。
【0017】
また、外側扉100は、放射線の阻止能が高いA層100aと、放射線の阻止能がA層より低いB層100bで形成されている。ここで、放射線の阻止能とは、荷電粒子が物質中を進む経路に沿っての単位長さ当りに失われる放射線エネルギーの割合をいう。
【0018】
図4、
図5に示すように、装置ハウジング20の流路構成部材配置部14より後方には、放射性薬剤27の廃液が廃棄される廃液ボトル180を収納する廃液ボトル配置部18を開閉可能に覆う廃液ボトル収容扉10cが設けられている。廃液ボトル配置部18は、遮蔽壁21n、21o、21p及び遮蔽壁21qに囲まれた遮蔽空間である。装置ハウジング20は、容器配置部12、流路構成部材配置部14及び廃液ボトル配置部18を覆う金属製の筐体である。ただし、第一実施形態は、流路構成部材配置部14及び容器配置部12の一面を遮蔽部材である遮蔽扉10a、10bで覆うことから、装置ハウジング20が遮蔽部材21の全部でなく、その一部を覆っている。
装置ハウジング20の左側面には流路誘導部16を覆う流路収容扉10dが設けられている。廃液ボトル収容扉10c、流路収容扉10dにはそれぞれ把持部10cc、把持部10ddが設けられているため、作業者が把持部10cc、把持部10ddを把持して廃液ボトル収容扉10c、流路収容扉10dを開閉可能である。第一実施形態では、流路収容扉10dは幅方向かつ筐体本体から遠ざかる方向に移動可能に引き出される。
【0019】
また、
図2に示すように、装置ハウジング20の正面には電源の投入、停止を切換える電源スイッチ64、放射性薬剤投与装置1が外部と通信するための外部通信コネクタ63が設けられている。筐体の天面前方には作業者が放射性薬剤27に自動投与の指示をする操作部6が設けられ、操作部6は放射性薬剤に関する情報、放射性薬剤の投与に関する情報及び放射性薬剤を投与される生体の情報等を表示する。また、放射性薬剤投与装置1は、上面に作業者による入力を受け付けるタッチパネル等のディスプレイ65を備えている。装置ハウジング20の上面の後方には、緊急時に放射性薬剤投与装置1の作動を停止するための非常用停止スイッチ62が設けられていて、上面の非常用停止スイッチ62よりも前方には放射性薬剤27を押し出し、あるいは流路を洗浄するための生理食塩液を収容した生食バッグ3を懸架できる懸架台35が設けられている。
【0020】
次に、放射性薬剤投与装置1の内部構造について説明する。第一実施形態の放射性薬剤投与装置1は、放射性薬剤27のバイアル瓶7が収容された遮蔽容器5を保持する容器保持部である容器配置部12内に、容器ホルダ122を備えている。また、放射性薬剤投与装置1は、容器ホルダ122内に収容されているバイアル瓶7に接続される流路の一部を構成し、少なくとも一部が他の一部と大きさが相違する複数の流路構成部材が取り付けられる構成取付部を備えている。第一実施形態の構成取付部は流路構成部材配置部14であり、流路構成部材配置部14には流路構成部材として食塩水流路31a、放射性流路31b、第一シリンジ36a、第二シリンジ36b及び三つの流路切換部材33a、33b、33cが取り付けられていて、放射性流路31b上にはエアベンテッドフィルタ32が取り付けられている。
【0021】
また、放射線の外部への漏洩を低減するための構成として、放射性薬剤投与装置1は、遮蔽部材21を備えている。遮蔽部材21は、遮蔽領域S1、S2を個々に囲んで設けられた複数の遮蔽壁21aから遮蔽壁21kにより構成される。また、容器配置部12が遮蔽領域S1に、流路構成部材配置部14が遮蔽領域S2に配置されている。
【0022】
また、放射性薬剤投与装置1は、遮蔽部材21に形成された開口211cと装置ハウジング20に形成された開口211dとの間で放射性流路31bを保持する流路誘導部16である誘導路160を備えている。このような誘導路160は、放射性流路31bを開口211cから開口211dへ静的に誘導するものといえる。流路誘導部16は、放射性流路31bが挿通する誘導路160、流路導入口161、流路導出口162を有し、低面部211bの上方向(z方向)かつ幅方向(-x方向)に引き回されて、遊挿空間50に遊挿された放射性流路31bを引き込んで装置外部に誘導するように設けられている。また、第一実施形態の流路誘導部16は、放射性流路31bを装置ハウジング20の幅方向(-x方向)に移動可能にしている。このとき、誘導路160に保持されている放射性流路31bは、誘導路160と共に-x方向に移動して張力を受ける。第一実施形態では、前述のように、放射性流路31bが、遊挿空間50内でその長さに余裕を持って撓んで遊挿されていることにより、流路誘導部16の移動に支障をきたす、あるいは放射性流路31bがコネクタ34等から脱落することを防ぐことができる。
【0023】
次に、遮蔽部材21を説明する。
図3に示すように、放射性薬剤投与装置1は、遮蔽壁21a、21b、21c、21d、21jにより遮蔽領域S1を形成し、遮蔽領域S1内に容器配置部12を備えている。また、遮蔽壁21d、21e、21f、21g、21h、21i、21j、21kにより遮蔽領域S2を形成し、遮蔽領域S2内に流路構成部材配置部14を備えている。また、放射性薬剤投与装置1は、流路誘導部16の上方を覆う遮蔽壁21mを有している。さらに、放射性薬剤27の廃液を収容する廃液ボトル配置部18内も、遮蔽壁21n、21o、21p、21qによって放射線が遮蔽されている。放射性薬剤投与装置1は、これら遮蔽壁21aから遮蔽壁21qによって、作業者への放射線被ばくを低減すると共に、後述する本装置の各駆動機構を構成するモータやアクチュエータ等を保護している。
【0024】
また、
図4、
図5に示すように、放射性薬剤投与装置1は、放射性薬剤投与装置1に電力を供給する無停電電源装置(UPS)70aと、放射性薬剤を投与するための各構成の駆動を制御する制御部70b及びトランス70cといった電気的な機器を有している。制御部70bは、放射性薬剤27の投与量を決定するための演算処理を実行する小型のCPU、メモリ装置、放射性薬剤投与装置1の内部に設けられるモータやアクチュエータ等のドライバユニットを含んでいる。また、放射性薬剤投与装置1は、プリンタ40を備えており、放射性薬剤27を投与した後にその投与情報等がプリンタ40を介して出力可能である。
【0025】
(容器配置部)
次に、容器配置部12について説明する。本実施形態では、容器配置部12は容器保持部に相当する。
図3、
図5に示すように、容器配置部12には、放射性薬剤27を投与するための構成として放射性薬剤27を収容したバイアル瓶7ごと収容する遮蔽容器5を保持する容器ホルダ122、放射性薬剤27をバイアル瓶7から抽出する針ユニット128が取り付けられる針ユニット配置部124が配置されている。針ユニット128は、バイアル瓶7から放射性薬剤を抽出する薬剤抽出針125及びバイアル瓶7に穿刺される通気針126を個々に着脱可能に保持する針保持部127を有する構成である。容器配置部12は、遮蔽壁21a、21b、21c、21d、21jによって囲まれていて、装置ハウジング20の前面側は遮蔽扉10bによって開閉可能に覆われている。
容器配置部12の容器ホルダ122は、装置ハウジング20内に設けられており、針ユニット配置部124の下方に位置している。また、容器ホルダ122は、遮蔽容器5を傾斜して保持する斜面123を有しており、斜面123により針ユニット128の薬剤抽出針125がバイアル瓶7に刺入した際に、傾斜したバイアル瓶7の底部付近まで下降することを可能とし、放射性薬剤27を残量少なく抽出することができる。
【0026】
針ユニット配置部124は、図示しない針案内部に対応する位置に針ユニット128が駆動可能な空間を有する。針ユニット128は、針保持部127(127a、127b)と機械的に連結されている。また、流路構成部材の一つである針ユニット128は、針保持部127の駆動量を制御する針駆動機構129を有している。針駆動機構129はステッピングモータ等で構成され、針駆動機構129の駆動量が機械的に連結された針保持部127に伝わり、針保持部127が針ユニット配置部124内を上下動する。
【0027】
(流路構成部材)
次に、流路構成部材について説明する。流路構成部材は、放射性薬剤27を収容した遮蔽容器5に刺入する針体を着脱可能に保持する第一針保持部127a、第二針保持部127b(
図5)と、第一針保持部127a、第二針保持部127bを有する針ユニット128と、放射性薬剤27を収容した遮蔽容器5と連通して放射性薬剤27に接続される流路を形成する放射性流路31bと、生理食塩水が流れる食塩水流路31aと、流路上に設けられて流路を切換える流路切換部材33a、33b、33cと、主に放射性薬剤の抽出に用いられる第一シリンジ36aと、主に生理食塩液の抽出に用いられる第二シリンジ36bと、流路上の空気を除去するエアベンテッドフィルタ32から構成される。本明細書で単に「流路」という場合、この流路は放射性薬剤投与装置1において放射性薬剤27または生理食塩液が流通する流路全体の一部を指す。
【0028】
上記の流路構成部材は、装置ハウジング20に対して直接的又は間接的に装着可能である。第一実施形態では、流路構成部材を間接的に装着する例を説明する。この場合は、装置ハウジング20に装着可能な基板である脱着カセット13に各流路構成部材を取り付けて、流路構成部材ごと脱着カセット13を装置ハウジング20に装着できる。
図6、
図7及び
図8は、脱着カセット13を説明するための図であって、
図6は脱着カセット13の正面図、
図7は脱着カセット13の背面図、
図8は脱着カセット13の上面図である。
図6から
図8に示すように、脱着カセット13は、食塩水流路31a及び放射性流路31bを保持するチューブ保持部132、流路を切換える流路切換部材33a、33b、33cを保持する切換部材保持部135、及び第一シリンジ36a、第二シリンジ36bを保持するシリンジ保持部136、エアベンテッドフィルタ32を保持するフィルタ保持部138を備えた主基板130を有している。このような脱着カセット13によれば、食塩水流路31a及び放射性流路31b、流路切換部材33a、33b、33c、第一シリンジ36a、第二シリンジ36b及びエアベンテッドフィルタ32を保持した状態で、放射性薬剤投与装置1の装置ハウジング20に装着することにより、食塩水流路31a、放射性流路31b、流路切換部材33a、33b、33c、第一シリンジ36a、第二シリンジ36b及びエアベンテッドフィルタ32といった使い捨ての部材のセッティングを容易に行うことができる。また、放射性薬剤27の投与後は、これら使い捨ての部材を脱着カセット13ごと装置ハウジング20から容易に取り外すことができる。
【0029】
また、主基板130は、流路構成部材配置部14に装着するために、取付孔19と、取手部17を有している。流路構成部材配置部14の取付孔19と対応する位置に流路構成部材保持部144(例えば、凸部)を備えており、取付孔19と流路構成部材保持部144が係合することで主基板130を流路構成部材配置部14に装着可能である。ただし、本装着形式は、一例であり、主基板130を流路構成部材配置部14に装着することが可能であれば、主基板130側の構造及び流路構成部材保持部144の構造は特に限定されない。
【0030】
チューブ保持部132は複数設けられていてもよく、食塩水流路31a、放射性流路31bを保持することができ、主基板130に設けられた他の構成要素と互いに干渉しないように食塩水流路31a、放射性流路31bを引き回すことができれば、特に数量や形状は限定されない。例えば、
図6では8個のチューブ保持部132を設けている。
第一実施形態では、主基板130は、例えば3つの切換部材保持部135が隣り合って幅方向に並んで配置され、かつシリンジ保持部136の下方に配置されている。切換部材保持部135は、正面からみて円形の円盤状に形成されており、主基板130を貫通した状態で主基板130に設けられており、主基板130に対して相対的に回転可能に、主基板130によって保持されている。
【0031】
第一実施形態のシリンジ保持部136は、第一シリンジ保持部136a及び第二シリンジ保持部136bの二つからなり、2つのシリンジ保持部は互いに同一平面で、左右に隣り合って配置されており、
図6では第一シリンジ保持部136aは第二シリンジ保持部136bの左側に配置されている。フィルタ保持部138は、エアベンテッドフィルタ32を保持可能な形状であって、他の構成要素と互いに干渉しない位置であれば特に形状や位置は限定されないが、脱着カセット13を装置ハウジング20に装着した場合に、切欠領域210の下方に位置することが好適である。
【0032】
また、脱着カセット13は、第一針保持部127aと第二針保持部127bの二つの針保持部127と、各針保持部が移動可能な針案内部133を備えた副基板131をさらに備えており、副基板131は主基板130に対して固定されている。主基板130と副基板131はそれぞれ盤状に形成されており、それぞれ鉛直に配置されるようになっている。また、主基板130と副基板131は連結部材139によって互いに直角に連結され、かつ互いに平行に設けられている。つまり、主基板130が配置される平面と副基板131が配置される平面は、互いに平行に異なる平面上に設けられている。この主基板130及び副基板131を備えた脱着カセット13によれば、放射性薬剤投与装置1の装置ハウジング20に針保持部127や針案内部133を直接設ける必要がなく、使い捨ての部材である針体のセッティング及び取り外しを容易に行うことができる。
【0033】
第一針保持部127aには例えば薬剤抽出針125を、第二針保持部127bには例えば通気針126をそれぞれ装着することができる。第一針保持部127a及び第二針保持部127bは、副基板131に形成された直線状のガイド孔134a、134bに沿って移動可能である。すなわち、第一針保持部127aはガイド孔134aに沿って移動可能であり、第二針保持部127bはガイド孔134bに沿って移動可能である。第一実施形態ではガイド孔134aとガイド孔134bは互いに隣り合って配置され、ガイド孔134aが上下方向に延在しており、ガイド孔134bは下方に向けてガイド孔134aに近づく方向に傾斜している。
なお、脱着カセット13は、このような構成に限定されるものではなく、流路構成部材配置部14の流路構成部材保持部144と嵌合して装置ハウジング20に装着可能な凸部又は凹部を有する基板であればよい。このような基板は、脱着カセット13のように、装置ハウジング20に対して脱着可能な基板であることが好適である。また、第一実施形態では、流路構成部材を装着した脱着カセット13を流路構成部材の一つとする。
【0034】
(流路構成部材配置部)
次に、流路構成部材配置部14について説明する。第一実施形態では、流路構成部材配置部14は構成取付部に相当する。また、第一実施形態では、流路構成部材を前述の脱着カセット13を介して流路構成部材配置部14に装着する例を説明する。ただし、第一実施形態は脱着カセット13を介して流路構成部材を流路構成部材配置部14に取り付ける構成に限定されず、流路構成部材を放射性薬剤投与装置1に直接装着するようにしてもよい。このような場合、放射性薬剤投与装置1の流路構成部材配置部14の正面には
図6に示す主基板130の取付孔19及び取手部17を除く部材(チューブ保持部132、切換部材保持部135、第一シリンジ保持部136a、第二シリンジ保持部136b)が形成された基板(図示せず)が流路構成部材配置部14と一体に形成され、この基板が構成取付部として機能する。
【0035】
第一実施形態の放射性薬剤投与装置1は、放射性薬剤27の流路を構成する流路31dを通じて遮蔽容器5内のバイアル瓶7から放射性薬剤27を抽出し、かつ抽出した放射性薬剤27を投与するための第一シリンジ36a、第二シリンジ36bのプランジャ部37a、37bを駆動させる1または複数のシリンジ駆動部142と、流路構成部材を装着した脱着カセット13と嵌合する流路構成部材保持部144と、流路上に設けられ、流路を切り換える流路切換部材33a、33b、33cを保持する流路切換部材保持部146を備えている。シリンジ駆動部142は、流路構成部材配置部14内の上方に位置し、流路切換部材保持部146の上方向に設けられており、流路切換部材保持部146は流路構成部材配置部14内の下方に位置し、流路構成部材保持部144は流路構成部材配置部14の略中央に位置する。ここで、略中央は上下方向でシリンジ駆動部142より低く、流路切換部材保持部146より高い位置であれば特に限定されない。また、第一実施形態の流路構成部材保持部144は凹形状(凹部)を有している。しかし、流路構成部材保持部144は、例えば、放射性薬剤投与装置1の側に凹部を設け、この凹部にする凸部であってもよい。さらに、流路構成部材保持部144は、放射性薬剤投与装置1と勘合する構成に限定されず、放射性薬剤投与装置1に脱着カセット13が固定されるように係合するものであればどのようなものであってもよい。
【0036】
シリンジ駆動部142は、装置ハウジング20に設けられ、
図4に示すようにモータ300を駆動源として上下動可能である。シリンジ駆動部142は、流路構成部材の一部である第一シリンジ36aのプランジャ部37a、第二シリンジ36bのプランジャ部37bに対応する位置に、それぞれのプランジャ部と嵌合するプランジャ嵌合部143a、143bを有し、プランジャ嵌合部143a、143bは装置前面側(
図2の-y方向)に開放された係合溝を備えた形状である。そのため、第一シリンジ36a及び第二シリンジ36bを装置前面側からプランジャ嵌合部143a、143bに対して嵌め込むことで各シリンジのプランジャ部37a、37bを保持する。
【0037】
また、駆動源であるモータ300は各プランジャ嵌合部143a、143bを上下動させ、保持されたプランジャ部37a、37bを個別に上下動させる。ここで、モータ300は制御信号にしたがって高い精度で駆動するステッピングモータ等が好適である。また、シリンジ駆動部142の動線は、プランジャ嵌合部143a、143bの上下動にあたり他の構成部材と互いに干渉しないものであれば特に限定されないが、
図3では各プランジャ係合部143a、143bの移動方向(上下方向又はz方向)に延在する開口147a、147bを有する。開口147a、147bはプランジャ嵌合部143a、143bが上下動する際のガイド孔として機能する。また、第一実施形態では、シリンジ駆動部142の動力源としてモータ300を示すが、駆動源は特に限定されず、シリンダ等のアクチュエータを駆動源としてもよい。
【0038】
流路構成部材保持部144は、装置ハウジング20に設けられ、放射性薬剤27の投与に用いられる流路を構成する流路構成部材を保持することができれば特に限定されない。流路構成部材保持部144は、脱着カセット13に設けられた取付孔19と嵌合する凸部を有し、流路構成部材を装置ハウジング20に間接的に装着して保持する。
【0039】
流路切換部材保持部146は、装置ハウジング20に設けられ、流路構成部材の一部である流路切換部材33a、33b、33cを保持する複数の流路切換部材保持部である。流路切換部材33a、33b、33cは典型的には三方活栓であり、第一実施形態でも三方活栓である。第一実施形態では、流路切換部材保持部146は流路切換部材33a、33b、33cに対応して例えば三つ設けられており、このうち一つは第一シリンジのプランジャ嵌合部143aの下部に配置され、他の一つは第二シリンジのプランジャ嵌合部143bの下部に配置され、それぞれ水平方向に並列して配置されている。流路切換部材保持部146は、装置前面側(-y方向)に開放された係合溝を有し、これら係合溝に対して前面側から流路切換部材33a、33b、33cを係合させて保持する。各流路切換部材保持部は、例えば本装置の正面から見て円盤状で形成されていてもよく、装置ハウジング20に対して各々独立して回転可能に設けられており、例えば
図4に示すようなモータ310に機械的に接続され、モータ310の回転に応じて流路切換部材33a、33b、33cを回転させ、流路を切り換える。
【0040】
(流路誘導部)
次に、流路誘導部16について説明する。
図4、
図5に示すように、第一実施形態では、流路誘導部16は遮蔽領域S2を構成する遮蔽壁21gを貫通して導出された食塩水流路31a、放射性流路31bを、装置外部へ誘導する役割を担う。流路誘導部16は、上下方向で遮蔽領域より高い位置に設けられ、かつ遊挿空間50より高い位置に設けられる。また、流路誘導部16は、遊挿空間50の幅方向の中心線Lより、装置ハウジング20の幅方向かつ遠ざかる方向に離れて位置している。
【0041】
図4に示すように、流路誘導部16は、遮蔽壁21gから導出された流路を収納する誘導路160を有している。誘導路160は、一端に流路を導入する流路導入口161を有し、他端に流路を導出する流路導出口162を有する。第一実施形態では、流路導入口161は、流路導出口162より低い位置に設けられ、誘導路160が装置前面方向に傾斜している。また、流路導入口161は切欠領域210の上方付近に設けられ、流路導出口162は装置ハウジング20の側面上部の奥行方向に対する略中央付近に設けられている。
遮蔽壁21gから導出された食塩水流路31a、放射性流路31bは、遊挿空間50内に撓んだ状態で遊挿される。食塩水流路31aはそのまま装置側面から外部に導出され、放射性流路31bが流路誘導部16によって、流路導入口161に導入された後、誘導路160を経て、流路導出口162まで連続的に誘導され、装置外部に導出される。誘導路160に誘導された流路内を放射性薬剤27が通過する際に、装置前面に立つ作業者への放射線被ばくを低減させるため、誘導路160の上方に遮蔽壁21mを設けることが好適である。
【0042】
また、第一実施形態では、流路誘導部16は図示しないレールを用いて、装置ハウジング20に対して幅方向かつ遠ざかる方向(
図3の左方向で、
図4の手前方向)に移動可能に引き出される。誘導路160は凹形状に形成され、流路誘導部16を引き出した状態で、上部から嵌通する流路を視認可能であることが好適である。凹形状は特に限定されないがU字形状、V字形状など流路を収容可能な形状であればよい。
【0043】
ここで、第一実施形態の流路誘導部16の効果について説明する。第一実施形態は、流路誘導部16が移動可能に引き出されることによって、装置全体の外形寸法の縮小に寄与する。流路導出口162を装置背面側ではなく、装置側面上部に設け、かつ流路誘導部16によって、流路導出口162に向かって流路を引き回すことで、流路が装置内部を前後方向に横断する空間を設ける必要がなくなり、それによって新たに生じた空間に、放射性薬剤投与装置1に含まれる電気的な構成(例えば、無停電電源装置(UPS)70a、制御部70b等)を配置することができるからである。これによって、放射性薬剤投与装置全体の上下方向の外形寸法を縮小することができる。
また、第一実施形態は、流路誘導部16が移動可能に引き出されることによって作業者の操作性向上に寄与する。つまり、放射性薬剤27を生体に投与するために流路構成部材を放射性薬剤投与装置1にセッティングする際に、作業者が装置前面から移動することなく、流路誘導部16を装置側面側に引き出して、凹形状の誘導路160に流路を収納して引き回すことができる。また、誘導路160を凹形状にすることによって、収納した流路を視認可能にし、流路構成部材のセッティングを容易にできる。また、第一実施形態では、誘導路160は放射性流路31bのみを収納する例を説明したが、食塩水流路31aと放射性流路31bを一緒に収納してもよい。
【0044】
(遮蔽部材)
次に、遮蔽部材21について
図3から
図5を用いて説明する。第一実施形態では、放射性薬剤投与装置1は外部への放射線の漏洩を低減させる構成として、遮蔽部材21を有している。遮蔽部材21は、少なくとも容器配置部12(遮蔽領域S1)及び流路構成部材配置部14(遮蔽領域S2)の少なくとも一部を覆い、その外壁として遮蔽壁21a~21mを有する。なお、遮蔽部材21の装置前面側の一の側面は、容器配置部12と流路構成部材配置部14を個々に開放または閉塞する遮蔽扉10a、10bである。ここで、遮蔽壁21aから遮蔽壁21k及び遮蔽扉10a、10bの材質としては放射線(例えば、ガンマ線、エックス線等)を遮蔽可能な放射線阻止能を有していれば特に限定されないが、好ましくはアルミニウム、鉛、タングステン等の金属であり、単位体積当たりの重量の観点ではアルミニウムやタングステンが好適であり、加工の容易さの観点からはアルミニウムや鉛が好適である。また、各遮蔽壁または遮蔽扉は単一の材質で形成してもよく、放射線阻止能の異なる二種以上の材質で形成してもよい。
【0045】
図3、
図4及び
図5を用いて、容器配置部12の少なくとも一部を遮蔽部材21が覆うことによって形成される遮蔽領域S1を説明する。容器配置部12は、
図3に示さない遮蔽扉10bの他、針ユニット配置部124の上面側に近接して遮蔽領域S1を覆う遮蔽壁21aと、針ユニット配置部124の右側面に近接して遮蔽領域S1を覆う遮蔽壁21bと、針ユニット配置部124及び容器ホルダ122の背面側に近接して遮蔽領域S1を覆う遮蔽壁21cと、針ユニット配置部124の左側面を覆う遮蔽壁21dとによって形成されている。遮蔽壁21dの下方には流路構成部材を装着した脱着カセット13を装着するための(図示しない)開口部を有している。また、遮蔽壁21bは、その下方に開口部24を有している。これは遮蔽容器5の側面方向への放射線の漏洩は遮蔽容器5自体によって十分に低減されているためである。また、同様の理由から容器配置部12の下方(
図3の-z方向)には遮蔽壁がない。各壁面の放射線の阻止能を考慮して適宜開口等を設けることで、遮蔽領域S1の総体積を低減でき、放射性薬剤投与装置1全体の外形寸法を小さくしている。
【0046】
次に、流路構成部材配置部14を覆う遮蔽部材21を説明する。流路構成部材配置部14は、
図3に示さない前面側の遮蔽扉10aの他、シリンジ駆動部142の右側面に近接して遮蔽領域S2を覆う遮蔽壁21dと、シリンジ駆動部142の上側面に近接して遮蔽領域S2を覆う遮蔽壁21eと、シリンジ駆動部142の左側面に近接して遮蔽領域S2を覆う遮蔽壁21fと、流路構成部材保持部144の左側面下部で、エアベンテッドフィルタ32の左側面に近接して遮蔽領域S2を覆う遮蔽壁21hと、遮蔽壁21fと遮蔽壁21hの間を連結し、食塩水流路31a、放射性流路31bを貫通させる孔(
図1の開口211cに相当)を備えた遮蔽壁21gと、流路切換部材保持部146の右側面に近接して遮蔽領域S2を覆う遮蔽壁21iと、流路構成部材配置部14の底面に近接して遮蔽領域S2を覆う遮蔽壁21jと、流路構成部材配置部14の背面側に近接して遮蔽領域S2を覆う遮蔽壁21kとで構成される。また、容器配置部12の背面側を覆う遮蔽壁21cと、流路構成部材配置部14の背面側を覆う遮蔽壁21kは、互いに平行に設けられているが、放射性薬剤投与装置1に装着される脱着カセット13の連結部材139の奥行方向の長さに対応した距離だけ前後方向に離れた異なる平面上に設けられている。
【0047】
流路構成部材配置部14を開放または閉塞する遮蔽扉10aは、単一であってもよいが、
図4に示すように複数の外側扉100、内側扉110で構成されていることが好適である。第一実施形態では、遮蔽扉10aは、外側扉100と内側扉110からなる複数の遮蔽扉であり、互いに重なって設けられている。各々の遮蔽扉の材質は放射線の阻止能を有する遮蔽部材である。第一実施形態では、内側扉110は放射線の阻止能の高い単一の材質で形成され、外側扉100は放射線の阻止能が高いA層100aと、放射線の阻止能がA層より低いB層100bの二種の材質で形成されている。内側扉110と、外側扉100のA層100aは同様の材質で形成されることが好適である。
【0048】
次に、流路構成部材配置部14を覆う外側遮蔽扉100と内側遮蔽扉110の位置関係について説明する。
図4に示すように、内側遮蔽扉110は流路構成部材配置部14の流路構成部材保持部144(
図3及び
図7)及び流路切換部材保持部146(
図3)を覆い、その外側(
図4の右方向)に重なるように外側扉100が設けられ、外側扉100はシリンジ駆動部142及び内側扉110を覆っている。より具体的には、外側扉100のA層100aが、シリンジ駆動部142を覆い、B層100bがシリンジ駆動部142及び内側扉110を覆っている。また、外側扉100(A層及びB層の一部)と内側扉110の上端は、互いに係合するように段差が設けられている。
【0049】
内側扉110の放射線の阻止能は、外側扉100(A層100a及びB層100b)の放射線の阻止能より高くなるように形成されている。これら遮蔽扉を放射線の阻止能が高い順に並べると内側扉110、外側扉のA層100a、B層100bの順である。これは放射性薬剤27がバイアル瓶7から流路31dを通じて流路構成部材保持部144に嵌合した脱着カセット13の放射性流路31b上を通過することに基づく。放射性薬剤27が近傍を通過しないシリンジ駆動部142と、放射性薬剤27が近傍を通過する流路構成部材保持部144及び流路切換部材保持部146では、流路構成部材保持部144及び流路切換部材保持部146の放射能量がより高い。すなわち、放射線量が高い領域を放射線の阻止能が高くなるよう形成された内側扉110で覆い、放射線量が低い領域を放射線の阻止能が内側扉110より低くなるように形成された外側扉100で覆うことで、遮蔽領域S2の総体積を縮小することができ、放射性薬剤投与装置1の全体の外形寸法を小さくすることができる。
【0050】
(遊挿空間(切欠領域))
次いで、切欠領域210及び切欠領域210によって生じる遊挿空間50について説明する。切欠領域210は、遮蔽壁21f、21gで構成される。切欠領域210は遮蔽部材21の一部を「切り欠いて」形成されたものではないが、遮蔽部材21が概念的に直方体形状であるとした場合、遮蔽部材21が、この直方体の一部が欠損しているような形状であることから欠損部分に相当する部位を切欠領域と称している。切欠領域210は、遮蔽壁21eに比べて遮蔽壁21gが低くなるように設計し、遮蔽壁21eを
図1に示す高面部211a、遮蔽壁21fを低面部211bとすることによって形成される。切欠領域210は実体を有する部材ではなく空間であるので、切欠領域210に重なって遊挿空間50が生じる。遊挿空間50は、流路誘導部16と共に引き出されることを考慮した長さを持つ放射性流路31bが、撓んだ状態で緩やかに挿入(遊挿)される空間である。
【0051】
なお、上記構成は、流路構成部材配置部14内に配置される流路構成部材(第一シリンジ36a、第二シリンジ36b、エアベンテッドフィルタ32、食塩水流路31a、放射性流路31b及び流路切換部材33a、33b、33c)の大きさや設置に係る範囲がそれぞれ異なることに起因する。つまり、流路構成部材配置部14において、シリンジ駆動部142が位置する領域はプランジャ嵌合部143a、143bが上下動する高さを確保する必要がある。一方、エアベンテッドフィルタ32が位置する領域は上下動する高さを確保する必要がない。本発明の発明者らは、このような点に着目し、遮蔽部材21を配置に係る空間が大きいものに合わせるのではなく、流路構成部材個々の大きさに合わせて遮蔽部材21から不要な空間を除いている。そして、除いた空間を遮蔽部材21の外部にすることにより、遮蔽領域S2の専有体積を縮小することができる。そして、第一実施形態は、生じた遊挿空間50を放射性流路31bを引き回すことに活用し、今まで流路の引き回しに利用していた空間に電気的な他の構成(無停電電源装置(UPS)70a等)を収容することによって放射性薬剤投与装置1の外形寸法の小型化を図ることができる。
【0052】
(動作)
次に、以上説明した構成を有する放射性薬剤投与装置1の投与時の動作を説明する。なお、本動作説明においては、容器ホルダ122に遮蔽容器5が載置され、流路構成部材(第一シリンジ36a、第二シリンジ36b、エアベンテッドフィルタ32、食塩水流路31a、放射性流路31b及び流路切換部材33a、33b、33c)が装着された脱着カセット13が、流路構成部材配置部14に装着され、第二シリンジ36bには生食バッグ3から吸引された生理食塩液が一定量貯留された状態であるものとする。また、第一実施形態では作業者がディスプレイ65に表示された「投与開始」等を示す表示に触れることで、制御部70bがディスプレイ65への接触圧を検知し、あらかじめ設定された投与プログラム(以下単に「プログラム」という)を起動して開始する場合を説明するが、制御部70bに投与開始を伝える手段はこれに限定されない。
【0053】
制御部70bは、プログラムを起動し、まず、針駆動機構129を動作させ、薬剤抽出針125の装着された第一針保持部127a及び通気針126の装着された第二針保持部127bを下方向に駆動させ、バイアル瓶7の栓体を貫通して薬剤抽出針125の針先を、傾斜したバイアル瓶7の底部近くまで下降させる。このとき流路切換部材33bは、第一シリンジ36aと流路31dを連通させており、流路31dを介して第一シリンジ36aとバイアル瓶7が連通しており、かつ通気針126によってバイアル瓶7内は常圧に保たれている。
【0054】
次に、制御部70bはプログラムに従って、モータ300をあらかじめ設定された回転数だけ回転し、第一シリンジ36aのプランジャ37aを上昇させる。これによってバイアル瓶7から薬剤抽出針125、流路31d、流路切換部材33a、流路切換部材33bを通じて第一シリンジ36a内にモータの回転数に応じた分量の放射性薬剤27が吸引される。
【0055】
次に、制御部70bはプログラムに従って、針駆動機構129を動作させ、薬剤抽出針125をバイアル瓶7内で放射性薬剤27の液面から十分離れる位置まで上昇させる。その後、さらにモータ300を回転させ、第一シリンジ36aのプランジャ37aを上昇させて、所定量の空気を、通気針126、バイアル瓶7、薬剤抽出針125、流路31d、流路切換部材33a、流路切換部材33bを通じて第一シリンジ36a内に吸引する。これによって、薬剤抽出針125、流路31d、流路切換部材33a、流路切換部材33bに残存する放射性薬剤の量が低減され、所望の分量の放射性薬剤27を吸引することができる。
【0056】
次に、制御部70bはプログラムに従って、モータ310を回転させて流路切換部材33bを回転させ、第一シリンジ36aと放射性流路31b、全量流路31c、エアベンテッドフィルタ32を連通させる。続いて、制御部70bはモータ300を回転させて第一シリンジ36aのプランジャ部37aを下降させて、第一シリンジ36a内に貯留された放射性薬剤27を全量流路31cに全量送出する。これにより、放射性薬剤27は、全量流路31cを進み、エアベンテッドフィルタ32を通過する。このとき第一シリンジ36a内に吸引された空気は、エアベンテッドフィルタ32によって除去される。エアベンテッドフィルタ32を通過した放射性薬剤27は、放射性流路31bを経て生体に投与される。
【0057】
次に、制御部70bはプログラムに従って、モータ310を回転させて、流路切換部材33a、33bを連通させる。また、モータ310を回転させて、流路切換部材33aと第二シリンジ36bを連通させる。これにより、流路切換部材33aと流路切換部材33bを介して、第一シリンジ36aと第二シリンジ36bが連通する。次いで、モータ300をあらかじめ設定された回転数だけ回転させて、第一シリンジ36aのプランジャ部37aを上昇させて、第二シリンジ36b内に貯留された生理食塩液を第一シリンジ36a内に引き込む。このとき、第二シリンジ36bのプランジャ部37bを駆動するモータ300を第一シリンジ36aのプランジャ部37aを駆動するモータの動作量と同程度だけ逆回転させ、第二シリンジ36bのプランジャ部37bを下降させる。
【0058】
次に、制御部70bはプログラムに従って、モータ310を回転させて、流路切換部材33bを回転させ、全量流路31cと第一シリンジ36aを連通させる。そして、モータ300をあらかじめ設定された回転数だけ回転させて、第一シリンジ36aのプランジャ37aを下降させ、第一シリンジ36a内に貯留した生理食塩液を全量流路31cに送出する。送出された生理食塩液は、全量流路31c、エアベンテッドフィルタ32、放射性流路31bを進んで生体に投与される。これによって、第一シリンジ36a、全量流路31c、エアベンテッドフィルタ32、放射性流路31b内を生理食塩液で洗浄することができ、流路上に残存した放射性薬剤をできるだけ多く生体に投与することが可能となる。以上の動作により放射性薬剤27の生体への投与が完了する。
【0059】
なお、第一実施形態の動作は上記に限定されるものではなく、例えば、バイアル瓶7から第一シリンジ36a内に放射性薬剤27を全量吸引し、所定の量を投与したのちに、モータを回転させて廃棄流路(図示しない)と第一シリンジ36aを連通させて、残りを廃棄流路に送出してもよい。この場合は、生体に投与されなかった放射性薬剤27は廃棄流路を進み、廃液ボトル180に貯留される。
【0060】
また、第一実施形態では、流路構成部材を脱着カセット13を介して間接的に放射性薬剤投与装置1に装着する例を示したが、本発明はそのような構成に限定されるものではなく、流路構成部材を直接放射性薬剤投与装置に装着してもよい。その場合は、脱着カセット13が備える各保持部を装置本体の流路構成部材配置部14に備えるように構成してもよい。
【0061】
[変形例]
また、第一実施形態では、容器ホルダ122は装置ハウジング20に設けられている例を説明したが、本発明は、このような構成に限定されるものではない。
図9は、第一実施形態の容器ホルダの変形例を示す図である。第一実施形態は、
図9に示すように、容器ホルダは、遮蔽扉10のうちの遮蔽扉10bを構成する内側扉110に設けられる容器ホルダ222であってもよい。このように構成することにより、第一実施形態は、一般に重量物である遮蔽容器5の運搬距離を低減させ、作業者の操作性向上が期待できる。
【0062】
[第二実施形態]
次に、本発明の第二実施形態を説明する。第二実施形態の放射性薬剤投与装置1は、針ユニットの構成以外は第一実施形態と同様である。そのため、第二実施形態では、脱着カセット及び針ユニット以外の構成の図示及び説明を一部省略する。
第二実施形態の流路構成部材は第一実施形態と同様に、放射性薬剤投与装置1に対して脱着カセット43を介して、間接的に装着される。
図10は、脱着カセット43の底面図であり、
図11は脱着カセット43に流路構成部材を取り付けた状態の正面図、
図12は背面図である。ここで、
図10に示すように、第二実施形態では、脱着カセット43の主基板430と副基板431がL字形状に連結部材439によって接続されている。つまり、脱着カセット43の副基板431に設けられた図示しない第一針保持部と図示しない第二針保持部が、主基板430に対する法線方向(装置に装着された際の前後方向)に並んで配置されている。これによって、脱着カセット43の幅方向の寸法を短くすることができ、脱着カセット43を装着する装置ハウジングの遮蔽領域S2の幅方向の寸法を短くでき、かつ放射性薬剤投与装置の幅方向の外形寸法を小さくすることができる。
また、この場合に容器配置部12の容器ホルダ122が有する斜面123は、針保持部の並び方向と同一に設けられていることが好適である。
【0063】
図13(a)、
図13(b)は、第二実施形態の針ユニット228を説明するための図である。針ユニット228は、抽出針保持部である第一針保持部127aと通気針保持部である第二針保持部127bが装置ハウジングの幅方向と交差する前後方向に配置されるように保持しながら上下動させる針案内部であるガイド孔434a、434bを備えている。ここで、前後方向とは、
図1から
図5に示すx,y平面と交差する方向であって、好ましくはy方向、あるいは略y方向をいう。第一針保持部127aは薬剤抽出針125を保持する構成であり、第二針保持部127bは通気針126を保持する構成である。
図13(a)は薬剤抽出針125、通気針126が下降する以前の状態を示し、
図13(b)は薬剤抽出針125、通気針126が下降した状態を示している。
【0064】
図13(a)、
図13(b)に示すように、針ユニット228は、第一針保持部127aと第二針保持部127bとを装置ハウジング20の幅方向と交差する方向に配置されるように保持しながら上下動させる針案内部を有している。第二実施形態の針案内部は、上下方向に延在する第一案内溝(ガイド孔)434a、第二案内溝(ガイド孔)434bである。第二実施形態では、ガイド孔434bが中央付近でガイド孔434aに近づく方向に屈曲するように形成されている。ただし、第二実施形態は、反対に、ガイド孔434bがガイド孔434aに近づく方向に屈曲するように形成されるものであってもよい。このように構成することにより、第二実施形態は、針ユニット228を放射性薬剤投与装置1の奥行き方向に延びるように取り付けることができるので、針ユニット228の放射性薬剤投与装置1の幅方向に占める取付スペースを小さくすることができる。
【0065】
また、薬剤抽出針125、通気針126は、放射性薬剤投与装置1への取り付けの直前までキャップが被せられた状態になっている。公知の放射性薬剤投与装置においては、キャップが被せられた薬剤抽出針125、通気針126は、キャップ同士が接触するので
図13(b)に示す状態で取り付けることができず、キャップを外して放射性薬剤投与装置1に取り付けなければならなかった。このため、公知の放射性薬剤投与装置1においては、薬剤抽出針125、通気針126の取り付け作業時に針が作業者の手指に刺さらないように注意しなければならなかった。
これに対し、第二実施形態の針ユニット228は、
図13(a)に示すように、薬剤抽出針125、通気針126を充分離間させて取り付けることができるので、薬剤抽出針125、通気針126にキャップを被せたまま両者を放射性薬剤投与装置1に取り付けることができる。このような第二実施形態は、脱着カセット43に薬剤抽出針125、通気針126を取り付ける、あるいは脱着カセット43を装置ハウジング20に装着する際の作業者の針刺しリスクを低減することができる。
【0066】
上記実施形態は以下の技術思想を包含するものである。
(1)放射性薬剤を生体に投与するための放射性薬剤投与装置であって、前記放射性薬剤の薬剤容器が収容された遮蔽容器を保持する容器保持部と、前記容器保持部内に収容されている前記薬剤容器に接続される流路の一部を構成する複数の流路構成部材が取り付けられる構成取付部と、前記容器保持部または前記構成取付部の少なくとも一部を覆って前記放射性薬剤から放出される放射線を遮蔽する遮蔽部材と、前記遮蔽部材の少なくとも一部を覆う装置ハウジングと、を備え、前記遮蔽部材は、設置方向における上面の一部が前記上面の他の部分よりも低い低面部を有し、前記低面部の上方に前記遮蔽部材から引き出された前記流路が遊挿される遊挿空間を有する、放射性薬剤投与装置。
(2)前記遮蔽部材には、前記容器保持部及び前記構成取付部を個々に遮蔽する複数の遮蔽領域が設けられている、(1)の放射性薬剤投与装置。
(3)前記遮蔽部材に形成された第一開口と前記装置ハウジングに形成された第二開口との間で前記流路を保持する流路誘導部をさらに有する、(1)または(2)の放射性薬剤投与装置。
(4)前記流路誘導部は、前記流路を前記装置ハウジングの幅方向に移動可能にする、(3)の放射性薬剤投与装置。
(5)前記流路の一部は、前記遊挿空間内で上方向及び前記装置ハウジングの幅方向に引き回されている、(1)から(4)のいずれか一つの放射性薬剤投与装置。
(6)前記遮蔽部材は、遮蔽空間を構成する複数の遮蔽壁と、前記遮蔽空間を開放または閉塞する遮蔽扉を有し、前記遮蔽扉は、放射性薬剤投与装置の外部に曝される外面を有する外側扉と、当該外側扉の前記外面に対する裏面である内面に対向する内側扉とを含む、(1)から(5)のいずれか一つの放射性薬剤投与装置。
(7)前記構成取付部には、前記流路を通じて前記遮蔽容器から前記放射性薬剤を抽出するためにシリンジのプランジャ部を駆動させる1または複数のシリンジ駆動部と、前記流路上に設けられ、前記流路を切り換える流路切換部材を保持する流路切換部材保持部とが取り付けられ、前記内側扉は、前記流路切換部材保持部を覆い、前記外扉は、前記シリンジ駆動部及び前記内側扉を覆っている、(6)の放射性薬剤投与装置。
(8)前記内側扉の放射線の阻止能が、前記外側扉の放射線の阻止能より高い、(6)または(7)の放射性薬剤投与装置。
(9)前記容器保持部は、前記遮蔽扉の前記内側扉に設けられている、(6)から(8)のいずれか一つの放射性薬剤投与装置。
(10)前記薬剤容器から前記放射性薬剤を抽出する抽出針を保持する抽出針保持部と、前記薬剤容器に穿刺される通気針を保持する通気針保持部とを脱着可能に保持する針ユニットをさらに備え、前記針ユニットは、前記抽出針保持部と前記通気針保持部とが前記装置ハウジングの幅方向と交差する前後方向に配置されるように保持しながら上下動させる針案内部を有する、(1)から(9)のいずれか一つの放射性薬剤投与装置。
(11)前記針案内部は、上下方向に延在する案内溝であって、前記抽出針保持部及び前記通気針保持部の一方が移動する第一の案内溝と、他方が移動する第二の案内溝とを有し、前記第一の案内溝及び前記第二の案内溝の一方が、他方に近づく方向に屈曲している、(10)の放射性薬剤投与装置。
【符号の説明】
【0067】
1・・・放射性薬剤投与装置
3・・・生食バッグ
5・・・遮蔽容器
6・・・操作部
7・・・バイアル瓶
10、10a、10b・・・遮蔽扉
10c・・・廃液ボトル収容扉
10d・・・流路収容扉
10cc、10dd、11・・・把持部
12・・・容器配置部
13、43・・・脱着カセット
14・・・流路構成部材配置部
16・・・流路誘導部
17・・・取手部
18・・・廃液ボトル配置部
19・・・取付孔
20・・・装置ハウジング
21・・・遮蔽部材
21a―21q・・・遮蔽壁
24・・・開口部
27・・・放射性薬剤
31a・・・食塩水流路
31b・・・放射性流路
31c・・・全量流路
33a、33b、33c・・・流路切換部材
31d・・・流路
32・・・エアベンテッドフィルタ
34・・・コネクタ
35・・・懸架台
36a・・・第一シリンジ
36b・・・第二シリンジ
37a、37b・・・プランジャ部
40・・・プリンタ
50・・・遊挿空間
62・・・非常用停止スイッチ
63・・・外部通信コネクタ
64・・・電源スイッチ
65・・・ディスプレイ
70a・・・無停電電源装置
70b・・・制御部
70c・・・トランス
100・・・外側扉
100a・・・A層
100b・・・B層
110・・・内側扉
122・・・容器ホルダ
123・・・斜面
124・・・針ユニット配置部
125・・・薬剤抽出針
126・・・通気針
127・・・針保持部
127a、427a・・・第一針保持部
127b、427b・・・第二針保持部
128・・・針ユニット
129・・・針駆動機構
130、430・・・主基板
131、431・・・副基板
132・・・チューブ保持部
133・・・針案内部
134a、134b・・・ガイド孔
135・・・切換部材保持部
136・・・シリンジ保持部
136a・・・第一シリンジ保持部
136b・・・第二シリンジ保持部
138・・・フィルタ保持部
139、439・・・連結部材
142・・・シリンジ駆動部
143a、143b・・・プランジャ嵌合部
144・・・流路構成部材保持部
146・・・流路切換部材保持部
147a、147b・・・開口
160・・・誘導路
161・・・流路導入口
162・・・流路導出口
180・・・廃液ボトル
201・・・第二開口
210・・・切欠領域
211・・・上面
211a・・・高面部
211b・・・低面部
211c・・・第一開口
211d・・・開口
222・・・容器ホルダ
228・・・針ユニット
300、310・・・モータ
434a、434b・・・ガイド孔
S1、S2・・・遮蔽領域