(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-01
(45)【発行日】2022-09-09
(54)【発明の名称】配管内点検ロボット
(51)【国際特許分類】
B61B 13/10 20060101AFI20220902BHJP
F16L 55/18 20060101ALI20220902BHJP
【FI】
B61B13/10
F16L55/18 B
(21)【出願番号】P 2018226337
(22)【出願日】2018-12-03
【審査請求日】2021-07-29
(73)【特許権者】
【識別番号】308024395
【氏名又は名称】荏原環境プラント株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】505087230
【氏名又は名称】株式会社ハイボット
(74)【代理人】
【識別番号】100138519
【氏名又は名称】奥谷 雅子
(74)【代理人】
【識別番号】230108442
【氏名又は名称】佐藤 明夫
(72)【発明者】
【氏名】山田 浩也
【審査官】林 政道
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-189608(JP,A)
【文献】特開昭57-102782(JP,A)
【文献】特開平08-133073(JP,A)
【文献】特開昭63-275473(JP,A)
【文献】特開2015-224001(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61B 13/10
F16L 55/18
B62D 57/02
F22B 37/02
B25J 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
管寄せから分岐する配管内を点検する配管内点検ロボットであって、
1)管寄せの入り口である管台から投入することができ、管寄せ内を移動し、所望の位置で管寄せ内部の管壁に固定できる構造を備えた移動手段と、
2)被検配管の位置を特定するための機構と、
3)被検配管内の状態を点検するための機構と
を備
え、
前記被検配管内の状態を点検するための機構が、被検配管の入り口へ送水する送水用管と、前記送水用管内に送水して生じる水流を利用して移動する被検配管内の状態を評価するためのセンサを備える、
配管内点検ロボット。
【請求項2】
前記移動手段が、
少なくとも3つ組の車輪ユニット
と、
前記3つ組の中間に位置する車輪ユニットから隣り合う車輪ユニットをつなぐ一対のアーム
とを備え、
前記一対のアームは、前記中間に位置する車輪ユニットから各車輪ユニットに伸びるリンクAと、前記各車輪ユニットから前記中間に位置する車輪ユニットに伸びるリンクBと、前記リンクAおよびリンクBの間に位置し自由に回転し、任意の位置で固定可能な関節を有し、前記リンクAおよびリンクB、及びリンクAおよびリンクBの間に位置する関節を有する一対のアームを介して隣り合う車輪ユニットに結合している、請求項1
に記載の配管内点検ロボット。
【請求項3】
前記関節がピッチ軸まわりに回転する機構とヨー軸まわりに回転する機構とからなる、請求項2
に記載の配管内点検ロボット。
【請求項4】
前記関節がヨー軸に関節を駆動するモータを備える、請求項3の配管内点検ロボット。
【請求項5】
前記移動手段が、
管寄せ内部において、前記アームの屈曲力により前記3つ組の車輪ユニットを管寄せ内部の管壁に圧接してグリップしているときに前記3つ組の車輪の回転をロックして移動するときにロックを解除するための機能を有する、
請求項2に記載の配管内点検ロボット。
【請求項6】
前記移動手段が、
管寄せ内部において前記アームの屈曲力と3つ組の車輪ユニットにより管寄せ内部の管壁にグリップしているときに、前記アームの屈曲力を除去して前記グリップをリリースすることができる、
請求項2に記載の配管内点検ロボット
。
【請求項7】
前記被検配管内の状態を評価するためのセンサが、被検配管の厚みを超音波により検出するセンサと該センサから伸びる、水流に対して抵抗を生じる突起を1つ以上備えるコードを備える、請求項
1に記載の配管内点検ロボット。
【請求項8】
前記被検配管内の状態を点検するための機構が、被検配管の入り口周りを水がもれないように覆う構造を備える、請求項
1に記載の配管内点検ロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屈曲部や分岐部のある配管の内部を自由に移動可能であって、その配管の内部を検査するための配管内点検ロボットに関する。特に、本発明はボイラ管の点検装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ボイラには、たくさんの水管や層内管があり、水が管の中を通り、燃料を燃やす砂や燃えた排ガスの熱を水管や層内管に伝え、蒸気に変える。
この水管や層内管を集めた管を管寄せという。ボイラを構成する配管及び層内管の点検において、配管を切断せずに、配管の内部を検査したり補修したりすることができる技術が強く求められている。これを実現するためには、配管の開口部から管寄せ内に作業点検する装置を挿入し、その作業点検する装置を所望の位置に搬送できる配管内を移動する装置が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-024748
【文献】特開2015-224001
【0004】
特許文献1には、本願発明の出願人が先に特許出願したもので、屈曲部や分岐部のある配管の内部を自由に移動可能であって、その配管の内部を検査したり補修したりするための作業装置を搬送することができる配管内移動装置が記載されている。
【0005】
特許文献2には、回転方向へ縦並びに配置された少なくとも3組の車輪ユニットと、少なくとも3組の車輪ユニット間を回動可能に連結する少なくとも2組のジョイント部と、を備え、少なくとも3組の車輪ユニットは、車輪と、この車輪を回転駆動する駆動部と、この駆動部に固定された第1フレームと、駆動部に回動可能に取り付けられる少なくとも1個の第2フレームとを、それぞれ有し、少なくとも3組の車輪ユニットの第1フレームと第2フレームの間には、第1フレームと第2フレームをV字状に折り曲げるための駆動力を付与する屈曲生成器を設け、2組のジョイント部は、第2フレームの回動方向と略直交する方向に回動可能に構成される配管内移動装置が記載されている。
【0006】
そのため、特許文献1の配管内移動装置によれば、装置の構造が極めて簡単であって防塵防水性が実現し易く、また、どのような方向の屈曲管でも、装置の姿勢制御をすることなく通過することができ、更に、T字分岐管では、その推進方向を選択できる特性を有する配管内移動装置を提供することができるとされる。
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載された装置においては以下の様な問題がある。特許文献1の配管内移動装置は、検査をする対象となる被検配管が分岐している管寄せの入り口である管台から装置を挿入する場合に、例えば、3組の車輪ユニットを備える装置について、先頭の車輪ユニットと先頭から2番目の車輪ユニットの互いのホイールの間の距離が管寄せの口径に比較して大きい場合には装置を管寄せに挿入することができないという問題がある。また、一方、前記のホイールの間の距離が、管寄せの口径に比較して短い場合、装置は管寄せ内には挿入することができるが、管寄せ内で各車輪ユニットが、管寄せ内部の壁にグリップした時に、中間(第2番目)の車輪ユニットの車軸に対して、先頭(第1番目)の車輪ユニットの車軸及び最後(第3番目)の車輪ユニットの車軸のなす角度(開き角)が小さくなりすぎて、安定した走行、グリップを達成することができないと言う問題がある。また、被検配管の位置まで配管内移動装置を搬送した場合でも、被検配管の状態を点検するための装置を被検配管に挿入する場合に、配管内移動装置を所定の位置で、管寄せ内部の壁に的確に固定できないという問題がある。
【0008】
特許文献2の配管内移動装置は、モータによって回転駆動されると共に回転方向へ縦並びに配置される少なくとも3個の車輪と、少なくとも3個の車輪間を水平方向及び垂直方向へ摺動可能に連結する少なくとも2個のジョイント部と、一端が走行方向の先頭に位置する車輪の車軸支持部に固定され、且つ残りの車輪の車軸支持部及び車輪の他端、そしてジョイント部の両側方を通り、後頭に位置する車輪の固定部に固定された固定プレートに一端を固定し、他端を張力調整部のフレームに固定されたチューブワイヤの内部を通過し、その他端を張力調整部内のケーブル牽引装置に固定された2本の操縦用ケーブルを備えている。更に、チューブワイヤと張力調節部のフレーム間に、チューブワイヤと張力調節部のフレーム間に働く圧縮力を計測するセンサを設け、少なくとも3個の車輪の回転推進方向に対して車輪の左右に張られる2本の操縦用ケーブルは、先頭の車輪の車軸支持部から後方に張られる途中で右側の操縦用ケーブルは左側に、左側の操縦用ケーブルは右側に入れ替えるための回転型のケーブルガイド部材を設けられている。
しかしながら、特許文献2の配管内移動装置は、その構造が複雑であり、また、上の段落[0007]において特許文献1について述べたと同様の問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の配管内点検ロボットは、このような従来の問題点に鑑みてなされたものである。具体的には、本発明は、装置の構造が極めて簡単であって防塵防水性を実現し易く、どのような方向の屈曲配管であっても通過することができ、その推進方向を選択できる特性を有する配管内点検ロボットを提供することを目的とする。また、本配管内点検ロボットは関節を有するため、管寄せの口径が車輪ユニットの互いのホイールの間の距離に比べて小さい場合にも、管寄せの入口である管台から容易に装置を挿入させて、被検管の位置まで移動することができる。また、3つ組の車輪ユニットが、管寄せ内部の壁にグリップした時に、中間に位置する(第2番目の)車輪ユニットと第1番目、及び第3番目の車輪ユニットを繋ぐアームの中間にある関節により、中間に位置する(第2番目の)車輪ユニットの車軸に対して、第1番目、及び第3番目の車輪ユニットの車軸に対してなす角度(開き角)が十分大きくなる。このことにより、本願発明の配管内点検ロボットは安定した走行、グリップを達成することができる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の配管内点検ロボットは、管寄せから分岐する配管内を点検する配管内点検ロボットであって、
1)管寄せの入り口である管台から投入することができ、管寄せ内を移動し、所望の位置で管寄せ内部の管壁に固定できる構造を備えた移動手段と、
2)被検配管の位置を特定するための機構と、
3)被検配管内の状態を点検するための機構と
を備える。
また、本発明では、前記移動手段が、少なくとも3つ組の車輪ユニットを備え、前記3つ組の中間に位置する車輪ユニットから隣り合う車輪ユニットをつなぐ一対のアームを備え、前記一対のアームは、前記中間に位置する車輪ユニットから各車輪ユニットに伸びるリンクAと、前記各車輪ユニットから前記中間に位置する車輪ユニットに伸びるリンクBと、該前記リンクAおよびリンクBの間に位置し自由に回転し、任意の位置で固定可能な関節を有し、前記リンクAおよびリンクB、及びリンクAおよびリンクBの間に位置する関節を有する一対のアームを介して隣り合う車輪ユニットに結合している、配管内点検ロボットも提供する。
また、本発明では、前記関節がピッチ軸まわりに回転する機構とヨー軸まわりに回転する機構とからなる、配管内点検ロボットも提供する。
また、本発明では、前記関節がヨー軸に関節を駆動するモータを備える、配管内点検ロボットを提供する。
また、本発明では、前記移動手段が、管寄せ内部において、前記アームの屈曲力により前記3つ組の車輪ユニットを管寄せ内部の管壁に圧接してグリップしているときに前記3つ組の車輪の回転をロックし、移動するときにはロックを解除するための機能を有する、配管内点検ロボットを提供する。
また、本発明では、前記移動手段が、管寄せ内部において前記アームの屈曲力と3つ組の車輪ユニットにより管寄せ内部の管壁にグリップしているときに、前記アームの屈曲力を除去して前記グリップをリリースすることができる、配管内点検ロボットを提供する。
また、本発明では、前記被検配管内の状態を点検するための機構が、被検配管の入り口へ送水する送水用管と、該前記送水用管内に送水して生じる水流を利用して移動する被検配管内の状態を評価するためのセンサとを備える、配管内点検ロボットを提供する。
また、本発明では、前記被検配管内の状態を評価するためのセンサが、被検配管の厚みを超音波により検出するセンサと該センサから伸びる、水流に対して抵抗を生じる突起を1つ以上備えるコードを備える、配管内点検ロボットを提供する。
また、本発明では、前記被検配管内の状態を点検するための機構が、被検配管の入り口周りを水がもれないように覆う構造を備える、配管内点検ロボットを提供する。
本発明において、管台とは、管寄せに弁や分岐管を取り付けるために設けられた短管を意味する。本発明において、被検配管とは、配管も管寄せも含む。また、本発明の説明のために、被検配管内の検査について詳細を述べるが、本発明はこれらに限られるものではない。管寄せの内部を清掃したり、カメラで点検したりすることも本発明の範囲内である。
【0011】
本発明の配管内点検ロボットは、その移動手段が、少なくとも3つ組の車輪ユニットを備える。前記3つ組の車輪ユニットの中間に位置する車輪ユニットは隣り合う車輪ユニットをつなぐ一対のアームを備える。前記一対のアームは、前記中間に位置する車輪ユニットから隣接する各車輪ユニットに伸びるリンクAと、前記各車輪ユニットから前記中間に位置する車輪ユニットに伸びるリンクBと前記リンクAおよびリンクBの間に位置し自由に回転し、任意の位置で固定可能な関節とを有する。前記リンクA、リンクB、およびリンクAおよびリンクBの間に位置する関節を有する一対のアームは隣り合う車輪ユニットを結合している。
【0012】
本発明の配管内点検ロボットは、関節がピッチ軸まわりに回転する機構と、ヨー軸まわりに回転する機構と、を備える。ピッチ軸まわりに回転する機構は、関節を構成する上部部分と下部部分をピッチ軸まわりに回転可能とする。ヨー軸まわりに回転する機構は、3つ組の中間に位置する車輪ユニットに隣り合う各車輪ユニットを、ヨー軸まわりに回転可能とする。
【0013】
本発明の配管内点検ロボットは、ヨー軸まわりに関節を駆動するモータを備えても良い。また、配管内点検ロボットは、ピッチ軸まわりに上部部分と下部部分とを回転可能とするモータを備えることもできる。また、ピッチ軸まわりに回転可能とするモータの回動を測定する装置を備えることができる。
【0014】
本発明の配管内点検ロボットは、前記移動手段が、管寄せ内部において、前記アームの屈曲力により前記3つ組の車輪ユニットを管寄せ内部の管壁に圧接してグリップしているときに前記3つ組の車輪の回転をロックし移動するときにロックを解除するための機構を有する。
【0015】
本発明の配管内点検ロボットにおいて、前記移動手段が管寄せ内部において前記アームの屈曲力と3つ組の車輪ユニットにより管寄せ内部の管壁にグリップしているときに、前記アームの屈曲力を除去して前記グリップをリリースすることができる。
【0016】
本発明の配管内点検ロボットにおいて、配管内の状態を点検するための機構は、被検配管の入り口へ送水する送水用管と、前記送水配管内に送水して生じる水流を利用して移動する被検配管内の状態を評価するためのセンサと、を備えることができる。
【0017】
本発明の配管内点検ロボットにおいて、被検配管内の状態を評価するためのセンサは、被検配管の厚みを超音波により検出するセンサと前記センサから伸びる、水流に対して抵抗を生じる突起を1つ以上備えるコードを備えるものであってもよい。
【0018】
本発明の配管内点検ロボットにおいて、前記配管内の状態を点検するための機構は、被検配管の入り口周りを水がもれないように覆う構造を備えることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の配管内点検ロボットは装置の構造が極めて簡単であって防塵防水性を実現し易い。また、前記配管内点検ロボットはどのような方向の屈曲配管であっても、管寄せの屈曲部等を通過することができ、その推進方向を選択できる特性を有する。また、本発明の配管内点検ロボットは関節部分を有するため、管寄せの口径が車輪ユニットの互いのホイールの間の距離に比べて小さい場合にも、管寄せの入口である管台から容易に装置を挿入して、被検配管の位置まで移動することができる。また、3つ組の車輪ユニットを備える場合において管寄せ内で各車輪ユニットは、管寄せの内部の壁にグリップした時に、中間に位置する(第2番目)車輪ユニットと第1番目、及び第3番目の車輪ユニットを繋ぐアームの中間に関節を備える。本発明の配管内点検ロボットは中間に位置する(第2番目の)車輪ユニットの車軸に対して、第1番目、及び第3番目の車輪ユニットの車軸に対してなす角度(開き角)が十分大きくなり安定した走行、グリップを達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は配管内点検ロボットの外観斜視図である。
【
図3】
図3は
図1に示す配管内点検ロボットの中間に位置する車輪ユニットの分解斜視図である。
【
図4】
図4は
図1に示す配管内点検ロボットの中間に位置する車輪ユニットの断面図である。
【
図5】
図5は
図1に示す配管内点検ロボットの中間に位置する車輪ユニットに隣接する(最前部)車輪ユニットの分解斜視図である。
【
図6】
図6は従来技術において、ホイール間の長さが管寄せの口径に較べて長い場合の、管寄せの入り口である管台から管寄せ内に配管内移動装置を挿入する場合を示す模式図である。
【
図7】
図7は従来技術において、配管内移動装置の管寄せ内の移動時にアームの長さが管寄せの口径に比べて十分に長くない場合に、アームの角度が小さいため、車輪ユニットの管寄せ内部の壁へのグリップが十分でない場合を示す模式図である。
【
図9】
図9は関節の下部部分35Bと連結する、中間に位置する車輪ユニットに隣接する(最前部または最後部)車輪ユニットのリンクBの連結部材の斜視図である。
【
図10】
図10は3つ組車輪ユニットに結合される被検配管内の状態を点検するための機構(図面は、送水用管の例を示す)と保持装置の結合例を示す。
【
図11】
図11は被検配管内の状態を点検するための機構(図面は、送水用管の例を示す)に着脱可能に結合された被検配管の位置を特定するための機構(本例では、配管内検査カメラの例を示す)例を示す図である。
【
図12】
図12は被検管内の状態を点検するための機構(図面は、送水用管の例を示す)において、送水用管内を送水される水流により、被検配管内の被検部分に搬送される、水流に対して抵抗を生じる突起を1つ以上備えるコードに結合されたセンサの例を示す図である。
【
図13】
図13は各車両ユニットをケーブルにより繋ぐことにより、アーム間の屈曲させる屈曲を制御する例を示す図である。
【
図14】
図14は中間に位置する車輪ユニットから、隣接する2つの車輪ユニット方向に伸びる2つのリンクAの間に設けられたバネ機構の例を示す図である。
【
図15】
図15は配管内点検ロボットの移動手段と、屈曲発生器と、及び各車輛ユニットの制御を行う制御装置(コントローラ)の関係を示す模式図である。
【
図16】
図16は配管内点検ロボットの移動手段を構成する各車輛ユニットの、関節の回動によりアームが屈曲した場合の、グリップした状態での角度θ1とθの関係を示す、模式図である。
【
図17】
図17は間接の回動にばねを用いた場合の模式図である。
【
図18】
図18はモータによりヨー軸を回動させるための機構を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、
図1乃至
図18を参照して、本発明の配管内点検ロボットの実施の例を説明する。
まず、本発明の配管内点検ロボットの第1の実施例について、
図1乃至
図10を参照して説明する。
【0022】
本発明の第1の実施例に係る配管内点検ロボット1は、
1)管寄せの入り口である管台から投入することができ、管寄せ内を移動し、所望の位置で管寄せ内部の管壁に固定できる構造を備えた移動手段と、
2)被検配管の位置を特定するための機構と、
3)被検配管内の状態を点検するための機構と
を備える。
【0023】
本発明の第1の実施例に係る配管内点検ロボット1は、管寄せの入り口である管台から投入することができる。前記配管内点検ロボットは、管寄せ内を移動し、所望の位置で管寄せ内部の壁に固定できる構造を備える。前記配管内点検ロボットは、少なくとも3組の車輪ユニット2A、2B、および2Cと、前記3つ組の中間に位置する車輪ユニット2Bから隣り合う車輪ユニット2A、2Cをつなぐ一対のアームと、自由に回転し、固定可能な関節を備える。前記一対のアームは、中間に位置する車輪ユニット2Bから隣接する各車輪ユニット2A、2Cに伸びるリンクAと、前記各車輪ユニット2A、2Cから中間に位置する車輪ユニット2Bに伸びるリンクBとから構成される。前記関節は、リンクAおよびリンクBの間に位置し、自由に回転し、任意の位置で固定可能である。隣り合う車輪ユニットは前記リンクAおよびリンクB、及びリンクAおよびリンクBの間に位置する関節を有する一対のアームを介して結合される。前記配管内点検ロボットは、前記中間に位置する車輪ユニット2Bから各車輪ユニット2A、2Cに伸び、中間に位置する車輪ユニット2Bを中心に回動可能に連結する前記一対のアームを有する。前記一対のアームの回動により、縦方向に配置された3組の車輪ユニット2A~2CをV字状に折り曲げるように配列させることができる。その場合、中間に位置する車輪ユニット2Bに回動可能に連結されたアームの長さ(略リンクAとリンクBを合わせた長さ)は、管寄せ管の口径より長いが、関節を設けることにより、走行時等の車輪ユニットの管寄せ内部の壁へのグリップ力を発揮する。従って、中間に位置する車輪ユニット2Bと隣接する各車輪ユニットとの距離を適切なものとすることができる。また、アーム上の関節の位置はリンクAとリンクBの長さにより決まる。例えば、極端に中間に位置する車輪ユニット2Bに近い位置に関節を設けることは、前記の効果を発揮させるためには好ましくない。
【0024】
3つ組の車輪ユニットの中間に位置する車輪ユニット2Bは、モータと、このモータの出力部の半径方向外側に所定の隙間をあけて回動可能に連結されると共にモータの出力部と一体とされた車輪と、モータの部材に対して回動可能に支持された隣接する2つの車輪ユニット方向に伸びるアームの各リンクAの接合部分とを備える。更に、車輪ユニット2Bは、2つのリンクAの接合部分を回動可能に支持する点を中心としてV字状に折り曲げるための駆動力を付与する屈曲生成機構を有する。
前記屈曲発生機構は、前記2つのリンクA部分を互いに近づける方向に力を付与するばね、コイル、モータ等を備えることができる。また、3つ組の車輪ユニット2A、2B、および2CをV字状に折り曲げるように配列させるために、車輪ユニット2Aと2Bを繋ぐアームの中間位置に設けられた関節と車輪ユニット2Cと2Bを繋ぐアームの中間位置に設けられた関節において、リンクAとリンクBを互いに屈曲させる機構を備える(
図8)。
さらに、関節の回動にばねをもちいた場合、その屈曲力を調節するために、車輪ユニット2A、2Cを、車輪ユニット2Bを経由交点として結んだ駆動ケーブルを備えることができる(
図13)。このようにすることにより、2つのリンクA部分を回動可能に指示する車輪ユニット2Bにおける2つのリンクA部分の間の角度を制御し、関節部分のピッチ軸まわりの回動を制御して屈曲力を調節することができる。
また、屈曲力を制御するために空気を用いることもできる。このような構成とすれば、万一配管内点検ロボットの管寄せ内移動が困難になった場合でも、配管内点検ロボットを容易に管外に取り出すことが可能となる。
図1、
図2、および
図3に示すように、配管内点検ロボット1の移動手段は3組の車輪ユニット2A、2B、2Cを備えており、その内の少なくとも1つはモータにより駆動される。本実施例では中間に位置する車輪ユニット2Bが駆動部(モータ)を備えるものとした。
【0025】
図3に示すように、モータにより駆動される車輪ユニットは、モータ5と減速機6と連結部材8とカバー筒体9等を有する駆動部10と、駆動部10のモータ5の回転軸11に連結され、且つ、カバー筒体9にベアリング14で回転支持される車輪7等を備えて構成されている。モータによる駆動機構を備えていない車輪ユニットにおいては、基本的に、モータ5、減速機6等の車輪ユニットの駆動に関係する部分を除いて、モータにより駆動される車輪ユニットの構成と同様の構成を取ってもよい。この構成により管寄せ内走行、管寄せ内部の管壁へのグリップに必要な機能を奏することができる。後述するように、3組の車輪ユニット2A、2B、および2Cの内の、中間に位置する車輪ユニットと隣り合う車輪ユニット2Aおよび2Cにおいては、関節部分と連結し、ヨー軸芯周りの回動を可能とするリンクBを構成する連結機構Cと係合する。走行方向最前部に位置する車輪ユニット2Aは、被検配管内の状態を点検するための機構(例えば、送水用管)を保持する保持装置Dを連結することができる構造としてもよい。中間に位置する車輪ユニット2Bと隣り合う車輪ユニット2Aおよび2Cが駆動部10を備えていない場合においても、これらの車輪ユニットは、3組の車輪ユニット2A、2B、および2Cより構成される配管内点検ロボットの、安定走行及び管寄せ内部へのグリップを可能とする構造(例えば、各車輪ユニットが回転車軸、走行車輪、走行のための安定した重心位置、必要な剛性の材質など)を備えているが、その一般的構成内容は周知であると考えるので詳説はしない。
【0026】
図3に示す様に、モータ5は、電力の供給を受けて機械動力を発生する原動機であり、その構成は周知であるため、ここでは詳細な説明を省略する。この実施例で示すモータ5は、円筒状筒体の内部に収容されていて、その一端の中央部から一側に突出された軸に、モータ5の一側に固定された円筒状をなす減速機6の回転軸11が連結されていて、その回転軸11が減速機6の一端の中央部から突出されている。減速機6は、モータ5の回転数を適宜に減速して回転軸11から出力させるもので、この減速機6にはカバー筒体9が装着されて一体的に構成されている。カバー筒体9のモータ5側は、段部を設けることによって大径部9aが設けられており、この大径部9aによってモータ5との間に適当な隙間を設けている。
【0027】
カバー筒体9の軸方向の両側部には2個のベアリング14A、14Bが装着されており、これらのベアリング14A、14Bを介して車輪7が回転可能に支持され、その車輪7は連結部材8を介して回転軸11に固定されており、モータ5で車輪7を回転駆動できるように構成されている。車輪7は、リング状をなす金属製のホイール15と、このホイール15の外周面に一体に設けられたゴム製のタイヤ16とによって構成されている。ホイール15の穴の軸方向の一側には、カバー筒体9のモータ5側に嵌合されたベアリング14Aの外輪が嵌合され、同じ穴の軸方向の他側には、カバー筒体9の回転軸11側に嵌合されたベアリング14Bの外輪が嵌合されている。
【0028】
減速機6の連結部材8側にはベアリング押え17が固定ネジ18によってネジ止めされており、このベアリング押え17によってベアリング14Bの内輪の移動が防止されている。回転軸11の先端部には、その回転軸11とホイール15とを一体的に連結する連結部材8が止めネジ19によってネジ止めされている。連結部材8は、中央部に貫通穴を設けた円盤状の部材からなり、その外周縁に設けたフランジ部8aには固定ネジ22が挿通される複数の挿通孔が設けられている。これらの挿通孔に挿通される複数の固定ネジ22によって連結部材8の外周縁がホイール15のリング状をなす端面部に固定されている。
【0029】
また、カバー筒体9の大径部9aには、リング状をなすシール部材23とベアリング24とが嵌合されている。シール部材23はホイール15の内面に摺動接触し、ホイール15の内側に設定された空間部に関して、内部からの潤滑剤等の漏れや、外部からの水やホコリ等の侵入を防止している。このシール部材23の外側に所定の隙間をあけてベアリング24が配置されており、このベアリング24を介して、リンクAが駆動部10に対して回動可能に取り付けられている。
【0030】
前記3つ組の中間に位置する車輪ユニット2Bから隣り合う車輪ユニット2A、2Cに伸びる一対のアームは、そのリンクA部分が、車輪ユニット2Bの側面に駆動部10に対して回動可能に取り付けられ、隣り合う車輪ユニット2A、2C方向へ伸び、関節及びリンクB部分とともに、進行方向先頭の車輪ユニット2Aと中間に位置する車輪ユニット2Bと最後部の車輪ユニット2Cを回動可能に連結している。
【0031】
リンクAは、リング状をなす環状部26aと、この環状部26aの一側からモータ回転軸と直交する方向に延伸して形成された、例えば、板状形状の部材からなっている。リンクAの環状部26aには、モータ5の外側を覆うキャップ33が複数の固定ネジ34によって一体的に固定されている。
【0032】
車輪ユニット2Aは、その進行方向前方に、配管内の状態を点検するための機構である保持装置Dを備え、保持装置Dには配管内検査カメラなどを取り付けることができる。また、車輪ユニット2Cには、配管内点検ロボット1に連結される制御装置(コントローラ)等と連結されるケーブルを取り付けることができる。
【0033】
キャップ33は、モータ5の外側を覆うもので、モータ5よりも若干大きな円形をなす端面部33aと、この端面部33aの外周縁に連続して一体に設けられた円筒部33bと、この円筒部33bの外周面において半径方向外側へ展開するように設けられたフランジ部33cとを有している。キャップ33の円筒部33bの開口側端部の内周面には雌ネジ部が設けられており、この雌ネジ部に螺合される雄ネジがカバー筒体9の大径部9aの開口側端部の外周面に設けられている。この大径部9aの雄ネジに円筒部33bの雌ネジを螺合させることにより、キャップ33がカバー筒体9にネジ止めされて一体的に固定されている。
【0034】
3つ組の中間に位置する車輪ユニット2Bの車輪7は、2個のベアリング14A、14Bを介して駆動部10のカバー筒体9に回転自在に支持されている。更に、車輪7は、連結部材8を介して駆動部10の回転軸11と一体的に構成されている。
【0035】
前述の通り、本実施例では、3組の車輪ユニット2A、2B、2Cの内、配管内点検ロボットを配管内に挿入する時の進行方向先頭の車輪ユニット2Aは、配管内の状態を点検するための機構が、被検配管の入り口へ送水する送水用管を保持する保持装置D備える場合などには、送水用管の保持・操作等を容易にするため、また、車輪ユニット2CはリンクBの連結機構Cを取り付けるなどの理由により駆動部(モータ、減速機等)を備えていない構成とした。
【0036】
前記中間に位置する車輪ユニット2Bに回動可能に取り付けられたアームのリンクA部分は隣り合う車輪ユニット2A、2C方向に伸びており、中間に位置する車輪ユニット2Bの車両の側面のキャップ内部に回動可能に取り付けられている。車輪ユニット2Bの一対のリンクAは、車輪ユニット2Bの安定走行上、車輪ユニット2Bの駆動部の異なる側面に取り付けられるのが好ましいが、車輪ユニット2Bの一対のリンクA間の屈曲力の付与がばね、コイル等による場合等は同じ側面に取り付けられてもよい。リンクA部材は、それに懸かる負荷に耐えられる剛性と負荷を分散できる形状であれば特定の形状であることを要しないが、例えば、棒状よりなる枠形状の部材、板状形状部材等であってもよい。
【0037】
リンクAは、関節との結合に適した形状とするため、関節との結合部分は、関節の結合部分に対応した形状を持つことができる。リンクAと関節との結合は、固定できる方法であればよく、ボルト、ナットによる結合等とすることができる。
【0038】
中間に位置する車輪ユニット2B以外の各車輪ユニット2A、2Cから前記中間に位置する車輪ユニット2B方向に伸びるリンクBは、リンクBを関節と結合させた場合に、リンクBを関節の下部部分35Bに垂直方向(管軸方向に垂直)に固定保持されたヨー軸まわりに回動させることができる構造(連結機構C)を備えているのが良い。
【0039】
次に、リンクAおよびリンクBの間に位置してこれらと係合している関節について説明する。
【0040】
前述の通り、3つ組の中間に位置する車輪ユニット2Bから隣り合う各車輪ユニットをつなぐ一対のアームが伸びており、前記一対のアームは、前記中間に位置する車輪ユニット2Bから各車輪ユニット2A、2Cに伸びるリンクAと、前記各車輪ユニットから前記中間に位置する車輪ユニットに伸びるリンクBと係合する関節を備えている。関節は、そのリンクAおよびリンクBの間に位置してピッチ軸まわりに回転し、固定可能なように構成されている。3つ組の中間に位置する車輪ユニット2Bから隣り合う車輪ユニット2A、2Cをつなぐ一対のアームのリンクA及びBの間に関節を設けることにより、管寄せ管の口径が、車輪ユニットの互いのホイールの間の距離に比べて小さい場合にも、管寄せの入り口である管台から容易に装置を挿入して被検配管の位置まで移動させることができる。また、関節は、リンクA、リンクBに伸びる方向に直交するピッチ軸まわりに自由に回転し、固定可能なため、管寄せ内で各車輪ユニットが、管寄せ内部の壁にグリップした時に、中間に位置する車輪ユニット2Bの車軸に対して、その他の隣接する車輪ユニット2A、2Cの車軸に対してなす角度(開き角)が十分大きくなり、安定した走行、グリップを達成することができるなどの優位な特徴を備える配管内点検ロボットを提供することができる。
【0041】
図8、9に示すように、関節は、リンクAと連結する上部部分35Aと、リンクBと連結する下部部分35Bと、上部部分35Aと下部部分35Bを軸まわりに回転可能に連結するピッチ軸P、下部部分35Bを隣接する各車輪ユニット2A、2Cに連結するリンクBを、回動可能に連結するヨー軸Yを備えている。また、ピッチ軸まわりに上部部分35A、下部部分35Bを回動、制御させるための、モータ、エンコーダ、トルク制限器などを備えることができる。さらに関節部分を塵埃、水等の影響から保護する防塵、防水用のカバー部材を備えてもよい。
【0042】
関節におけるリンクAと連結する上部部分35AとリンクBと連結する下部部分35Bが、ピッチ軸の周りに回動し、各車輪ユニットが管寄せ内部の壁にグリップする場合、中間に位置する車輪ユニット2Bから両隣接する各車輪ユニット2A、2Cに伸びるリンクAの先に設けられた2つの関節が近づくようにピッチ軸の周りに回動する。また、車輪ユニットのグリップ時に2つの関節が、2つの隣接する車輪ユニットを結んだ直線を超えて互いに遠ざかる方向に、関節を構成するリンクAと連結する上部部分35AとリンクBと連結する下部部分35Bが回動することを防止するために、リンクAと連結する関節の上部部分35Aを、ピッチ軸を超えてさらに下部部分35Bの方向へさらに延長された構造としてもよい。
【0043】
次に、アームの屈曲力により前記3つ組の車輪ユニットを管寄せ内部の壁に圧接してグリップしたときに、前記3つ組の車輪の回転をロックし及び移動するときにロックを解除するための機能について説明する。前記アームの屈曲力は、ピッチ軸まわりに、ばね、コイルなどにより関節の部分を屈曲させ、及びヨ―軸まわりにモータによって、車輪ユニット2A、2Cが回動された結果、各車輪ユニットを管壁に圧接してグリップさせるものであるが、その状態を保持させるためには、例えば、駆動モータを備える車輪ユニット(本実施例では、中間に位置する車輪ユニット2B)の車輪が回転しないように、駆動部に対してブレーキ装置(ストッパ)を設ければ良く、このブレーキ装置は、3組の車輪ユニットに接続されたケーブルにより、管寄せの外部の制御装置の操作によって設定または解除をすることができる。また、中間に位置する車輪ユニット以外の車輪に駆動モータを備える車輪ユニットであれば、同様に他の車輪ユニットの駆動部に対してブレーキ装置(ストッパ)を設けてもよいが、その場合には中間に位置する車輪ユニット以外の車両の駆動モータは当然オフの状態であり、中間に位置する車輪ユニット2Bの駆動部のみにブレーキ装置(ストッパ)を設けることもできる。また、3つ組の車輪ユニットを移動させるときは、ブレーキ装置(ストッパ)を解除して、駆動モータを起動させればよい。
【0044】
3つ組の車輪ユニットが管寄せ内部の壁にグリップしているときに、アームの屈曲力を除去して前記グリップをリリースするには、駆動ケーブルを緩めて、関節のピッチ軸まわりの回転角度を大きくする(側面視において、関節部分のピッチ軸まわりの上部部分35Aと下部部分35Bとの折れ曲がる方向の角度を増大させる)ようにすれば良い。及び/又は、中間に位置する車輪ユニットからそれぞれ異なる隣接する車輪ユニットへ伸びるリンクAが成す角度を広げるように両アームの配置を調整すればよい。本実施例では、ピッチ軸は、関節の上部部分35Aに固定されており、下部部分35Bが、ピッチ軸まわりに回動する構造とした。関節の上部部分35Aとピッチ軸を固定的とすることによりピッチ軸まわりの回転制御が容易となるからである。また、ピッチ軸は、下部部分35Bに固定した構造とし上部部分35Aがピッチ軸まわりに回動する構造としてもよい。
【0045】
関節部分の、リンクAと連結する上部部分35Aの形状、材質は、上部部分35Aと下部部分35Bをピッチ軸まわりに回転可能に連結するのに適したものであれば限定されるものではなく、中央部分が中空であり、枠組み形状をなすものであってもよい。ただし、ピッチ軸の回転動作を制御するためのばね、モータ及びエンコーダ等を取り付ける場合を想定すれば、少なくともその一部は板状領域を有するものが好ましい。リンクBと連結する下部部分35Bについても同様である。
【0046】
本実施例では、関節の上部部分35A、下部部分35Bは、何れも略板状形状とした。
言うまでもないが、関節の上部部分35A、下部部分35Bの構造、材質は、車輪ユニットの走行時、グリップ時にリンクA、リンクBが受ける負荷に十分に耐えうるものである。本実施例に示すように、リンクBと係合するヨー軸が車輪ユニット進行方向に対して略垂直であるのが車輪ユニット2A、2Cをグリップさせるなどにとって好ましいことを考慮すれば、下部部分35Bの下部先端部分のリンクBへの係合は、車輪ユニット2A、2Cの側面方向から見た場合、略水平であって、各ヨー軸に対して直交していることが望ましい。但し、下部部分35Bの形状は、管寄せの口径に対応させて関節部分の管寄せ内の下壁からの高さを調整可能とするために、側面視において管壁に垂直に配置されるヨー軸に対して、関節の下部部分35Bがある角度でピッチ軸方向へ上昇するものであってもよい。その場合、関節のアーム上の位置は、側面視において、関節の上部部分35Aと下部部分35Bとの角度は、関節に連結されるリンクAに連結された中間に位置する車輪ユニット2Bが、管寄せ内の上壁に圧接できるようにする必要がある。この様に、リンクBの連結機構Cと連結する関節の下部部分35Bの形状を変えることにより、各車輪ユニット間の配置関係の自由度を増すことができ、内径の異なる管寄せの対応が容易となる。
【0047】
リンクBの連結機構Cは、関節の下部部分35Bであって、連結されている車輪ユニットを軸まわりに回転可能に連結するヨー軸、ヨ―軸まわりに相対的に関節を回転させるモータ及びモータの回転制御をするエンコーダ等を収容することができる。
【0048】
次に、
図8、9を参照しつつ、モータによるヨー軸まわりの回転する機構について説明する。ヨー軸は関節の下部部分35Bに固着され、リンクBの連結機構Cを通して、車輪ユニット2A、2Cをヨー軸まわりに回転可能に連結する。具体的には、リンクBの連結機構Cは、ヨー軸を管軸方向に垂直に保つとともに、ヨー軸回りに配置されたモータによる回転によりリンクBの連結機構Cを通して、これに連結された各車輪ユニット2A、2Cを、ヨー軸まわりに回転させるための機構と言える。各車輪ユニット2A、2Cは、中間に位置する車輪ユニット2Bの進行(又は後退)方向(すなわち、中間に位置する車輪ユニット2Bの軸心に直交する方向での垂直面)から、ヨー軸まわりの回転に応じて、中間に位置する車輪ユニット2Bの進行(又は後退)方向と同じ、または左右に異なる方向への進行(又は後退)を可能にし、管寄せ内部の壁に対するグリップをより的確なものとすることができる。また、3つ組の各車輪ユニットを管寄せの入り口である管台から装置を挿入する際に、中間に位置する車輪ユニット2B以外の各車輪ユニット2A、2Cを上記のヨー軸まわりに回動させることができるため、容易に管寄せに挿入することができる効果を得ることができる。
【0049】
ヨー軸まわりに回転する、リンクBの連結機構Cにおけるモータの配置は、ヨー軸まわりに連結機構Cを回動させることを可能とするものであれば、その位置は限定されないが、リンクBの連結機構Cに設けるのが都合が良い。なお、モータのヨー軸まわりの回転動力の伝達は、モータとヨー軸の配置関係に適した伝達方法(歯車、ベルトなど)でよい。また、ヨー軸まわりのリンクBの回転を制御するための機構を備えることにより回転を任意の位置で停止、固定等することができる。
【0050】
中間に位置する車輪ユニット2Bから隣接する各車輪ユニット2A、2Cに伸びる2つのリンクAの角度を測定する機器を設ければ、関節のピッチ軸まわりの上部部分35A、下部部分35Bのなす角度と合わせることにより、管寄せ内において3つ組の各車輪ユニットの配置関係をより的確に知ることができ、3つ組車輪ユニットの走行、グリップをより適格に行うことができる。
【0051】
中間に位置する車輪ユニット2Bの進行(又は後退)方向に直交するピッチ軸まわりに上部部分35A、下部部分35Bを回動させる場合モータを用いる場合には、ピッチ軸まわりの回転駆動モータの配置は、関節の上部部分35A、下部部分35Bを相互に回動できるものであれば、その何れでもよい。なお、ピッチ軸まわりの回転制御を、他の方法ですることができれば、ピッチ軸まわりの回転する機構は必ずしもモータによるものでなくてもよい。
【0052】
連結機構Cは、本実施例では、各車輪ユニット2A、2Cの車軸を上下から挟む方向に延伸する構造であって、その延伸する部分の幅が各車輪ユニットの回転軸の長さに収まる上下の2つの部材と、これら2つの部材を支持し、これと直交して固着する形状の連結部材からなり、その側面から見た形状は略エの字形状をなし、車輪ユニットの車軸に軸受けを介して保持され、車輪ユニットの回転軸(車軸)及び進行方向に対して、垂直方向のヨー軸まわりに回動自在とし、関節部分と結合する箇所では、関節の下部部分35Bに固定されたヨー軸まわりに回動可能に係合するのが良い。リンクBを構成する連結機構Cの構造、各車輪ユニット2A、2Bへの連結は、ヨー軸が、車輪ユニットの回転軸(車軸)及び進行方向に対して直行し、ヨー軸まわりに回動できるものであれば良く、例えば、各車輪ユニット2A、2Cの車軸に軸受を介して支持されるとともに、連結機構Cを進行方向に水平に保持するように、連結機構Cの下部の板状部材の、関節の下部部分35Bに近い部分に支持車輪を設けてもよい(
図9)。
なお、本明細書において、「直行する、直行し」等の表現は、その交差角度は90°を中心にある程度の範囲での設定を想定したものであり、厳密には90°で交差するように構成するのが最も好ましいことを意味する。
【0053】
連結機構Cの係る構成により、車輪ユニット2A、2Cは、ヨー軸方向に回動することができる。各車輪ユニット2A、2Cを、前記ヨー軸まわりに回動させるための駆動モータを備えてもよく、前記モータは、車輪ユニット2A、2Bの両方または、その一方に設けることができる。
【0054】
この様な、関節を駆動するモータの制御により、関節をヨー軸の周りに自由に回転し、任意の位置で固定可能にすることができる。
駆動モータを歯車(平歯車、傘歯車等)等により係合させることでヨー軸まわりに車輪ユニット2A、2Cを自由に回転させることができ、任意の位置で車輪ユニット2A、2Bを固定し、管寄せ内部の管壁に圧接してグリップさせることができる。
【0055】
次に、配管内点検ロボットの移動手段である3組の車輪ユニット2A、2B、2Cの制御、特に各車輪ユニット間をつなぐアームに設けられた関節の動作及びその制御について説明する。3つ組車輪ユニットはモータにより駆動されることで管寄せ内を走行する。本実施例では、中間の車輪ユニット2Bにのみ駆動モータを備えるものとしたが、その他の車輪ユニットに駆動モータが設けられている場合にも同様の説明が当てはまる。
【0056】
各3組の車輪ユニット2A、2B、2Cの管寄せ内の走行(駆動)は、車輪ユニットにケーブルにより接続された制御装置で管寄せ外から制御することができる。3組の車輪ユニット2A、2B、2Cが管寄せ内部の管壁に圧接してグリップしているかなどは、関節のピッチ軸回りの上部部分35A及び下部部分35Bの成す角度、中間の車輪ユニット2Bにリンクされた2つのリンクA間の角度を測定することにより知ることができる。また、ヨー軸まわりの車輪ユニット2A、2Cの進行方向に対する転回角度も、ヨー軸まわりに測定装置を設けることにより知ることができるため、車輪ユニット2A、2B、2Cの安定走行、適切なグリップを実現することができる。
【0057】
本発明の配管内点検ロボットの第2の実施例では、移動手段である車輪ユニットは、車輪ユニットを4以上備えたものであってもよい。
【0058】
次に、
図13-17を参照して配管内点検ロボットの配管内移動手段における、屈曲力の生成について説明する。本願の配管内移動手段において、屈曲力は、中間に位置する車輪ユニット2Bから隣接する各車輪ユニットを繋ぐアームの途中に関節を設けることにより、また、中間に位置する車輪ユニット2Bから隣接する各車輪ユニット2A、2Cへ伸びる2つのアームの成す角度を調節することにより得られ、3つ組車輪ユニットの走行、管寄せ内部の管壁へのグリップを確実なものとする。(
図13,15)
【0059】
本願においては、この様な屈曲力は、アームに設けた関節部分に水平方向にピッチ軸を設け、3つ組の中間に位置する車輪ユニットと隣接する各車輪ユニットの間に設けられた2つの関節部分を接近させるように、関節部分においてピッチ軸まわりにアームのリンクAとリンクBを回動させることで生成される。(
図16)
【0060】
その場合、関節の上部部分35Aと下部部分35Bのピッチ軸まわりの回動は、あらかじめ、例えば、バネによる付勢機構を設けることによってもすることができる。前記ピッチ軸まわりのばねによる上部部分35Aと下部部分35Bの回動は、通常は、ばねを、関節の上部部分35Aと下部部分35Bとの折れ曲がる方向(屈曲を回避する方向)のなす角度が増大するように付勢し、その屈曲力の調整は、隣接する各車輪ユニット2A、2Cを、中間に位置する車輪ユニット2Bを経由して儲けた駆動ケーブルにより連結された制御装置により、管寄せ外部から行うことができる。(
図15、17)このような構成とすることにより、関節の上部部分35Aと下部部分35Bの角度を自由に調節することが可能になるとともに、万一駆動ケーブルが切断された場合等には、3つ組車輪ユニットの管寄せ管壁へのグリップを解除して、配管内点検ロボットを管外に取り出すことができる。この様なバネによる付勢および駆動ケーブルによる調節機構を設ければ、2つの関節は自ずと接近する方向へ移動させることによって、2つのアームを屈曲させることができる。また、3つ組の中間に位置する車輪ユニット2Bに連結された2つのリンクAの間の角度についても、2つのリンクAの間を、バネ、コイルなどを設けて調節することによりピッチ軸まわりに上部部分35Aと下部部分35Bが、2つの関節部分を接近させる方向に回動させることと合わせて、適宜屈曲力を調節することができる。(
図14)
【0061】
また、屈曲力を調節する場合、車輪ユニット2A側の関節から、中間に位置する車輪ユニット2Bの上部に設けられたケーブル支持部を経由して、車輪ユニット2C側の関節に連結された制御ケーブルEおよび前記ケーブルEに連結され、管寄せの外部に設置された制御装置を用いる。中間に位置する車輪ユニット2Bの2つのアームの間の角度が開くように制御装置を操作する及び/又はばねにより付勢された関節の上部部分35Aと下部部分35Bとの折れ曲がる方向の角度を増大させることにより、車輪ユニット2A、2Cの管寄せ内部の壁に対する圧接及びグリップを解除することができる。(
図13、15、および17)上記ケーブルEは、バネなどを含むものであってもよい。またその角度を測定する機器を中間に位置する車輪ユニット2Bに設ければ、管寄せ内の口径に応じて、車輪ユニット2Aおよび2Cの壁に対する圧接及びグリップを解除するために必要な、中間に位置する車輪ユニット2Bの2つのアームの間の角度を知ることができる。また、屈曲力生成の為に上記の機構において、ピッチ軸まわりの上部部分35Aと下部部分35Bの回転及びその角度をモータ、エンコーダを設けることで制御することができる。また、中間に位置する車輪ユニット2Bに取り付けられた2本のアームの回動、制御はモータ、エンコーダ、トルク制限装置を設けることで制御することができる。また、ピッチ軸まわりの上部部分35Aと下部部分35Bの回転及びその角度と中間に位置する車輪ユニット2Bに取り付けられた2本のアームの回動、制御とを組み合わせることも可能である。また、関節の上部部分35Aに固定されるピッチ軸の固定をボルト等の取り外し可能な構造とすることもできる。前記構造により、管寄せ管の口径、リンクA、リンクB等の長さを考慮した駆動力(不勢力)を持つばねを選択することが可能になり、車輪ユニットのより的確な走行、管寄せ内部の管壁へのグリップを実現することが可能となる。
【0062】
「被検配管の位置を特定するための機構」として、車輪ユニット2Aに接続される保持装置Dに取り付けられる、配管内検査カメラを用いることができる。配管内検査カメラは、ケーブルにより管寄せの外部から遠隔監視できるものであって、検査対象となる被検配管の位置を特定することができ、その結果的確に被検配管に送水用管を取り付けることができる。配管内検査カメラは、メーターカウンターが付いたものとしてもよく、それにより検査用ケーブルの進んだ距離を自動的に表示されるため、上記のケーブルにより接続された制御装置により3つ組車輪ユニットの進行状況を確認することができる。また、配管内検査カメラはケーブルの繰り出し、巻き取りのためのベアリング入りホイールを備えたものとすることも可能であり、ケーブルをスムーズに出し入れすることが可能となる。また、カメラ先端部にバネを入れたものとすることで、曲がりくねった入り組んだ場所でも問題なく入り込む事が可能となる。前記保持装置Dは、車両進行方向軸まわりに180度回転させることが可能とすることにより、的確に送水管を被検配管に取り付けることができる。
【0063】
また、「配管内の状態を点検するための機構」としては、被検配管に挿入し、被検配管の状態を検査するセンサと、センサを被検配管に送水により搬送するための送水用管を含む。前記センサは、被検配管の状態を検査する目的、例えば、被検配管の厚みを超音波により検出するもの、に対応したものであればその種類は限定されない。センサには、管寄せ外部から前記センサを操作、制御等するためのコードが接続されており、前記コードは、水流に対して抵抗を生じる突起を1つ以上備えている。また、センサを被検配管に送水により搬送するための送水用管には、被検配管に取り付けた場合に、被検配管の入り口周りを水がもれないように覆う構造となっており、そのため、管寄せ内の移動手段である、3つ組の車輪ユニットの走行、管寄せ内部の管壁へのグリップに支障が起きないようにされている。水がもれないように覆う構造としては管壁に吸着する、吸着盤などを用いることができる。また、送水用管の被検配管に取り付け部の周囲に漏斗型の水回収装置を取り付けることもできる。
【0064】
この様な構造、機能を備える配管内点検ロボットは、管寄せの口径が、車輪ユニットの互いのホイールの間の距離に比べて小さい場合にも、管寄せの検査孔(装置の挿入孔)入口である管台から容易に装置を挿入して、被検配管の位置まで移動することができ、また、管内で各車輪ユニットが、管寄せ内部の管壁にグリップした時に、中間(第2番目)の車輪ユニットの車軸に対して、第1番目(先頭)、及び第3番目(最後部)の車輪ユニットの車軸に対してなす角度(開き角)が十分大きくなるため安定した走行、グリップを達成することができる。
【0065】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の変更を加えることが可能である。また、上記複数の実施形態で説明した特徴を任意に組み合わせた構成であってもよい。
また、実施形態ではボイラ配管を例として説明したが、例えば、石油、ガス、ケミカルプラント、原子力、上下水道などの配管、各種熱交換器の配管などにも適用できる。
【符号の説明】
【0066】
2 配管内点検ロボット
2A、2B、2C 車輪ユニット
5 モータ
6 減速機
7 車輪
9 カバー筒体
10 駆動部
11 回転軸
26a リンクAの環状部
33 キャップ
34A リンクA
34B リンクB
34C リンクA間のばね
35 関節
35A 関節の上部部分
35B 関節の下部部分
35C 関節のばね
36 制御装置
37 車輪ユニット2Aの回転軸
38 車輪ユニット2Aの回転軸の軸受
39 支持車輪
40 検査カメラ
41 センサ
42 コード
43 送水用管
44 突起
45 車輪ユニット2Aの車輪
C 連結機構
D 保持装置
E 制御ケーブル
K 管寄せ
K1 管寄せ入口(管台)
P ピッチ軸
W 水流
Y ヨー軸
M ヨー軸回転用モータ