(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-01
(45)【発行日】2022-09-09
(54)【発明の名称】錠剤
(51)【国際特許分類】
A61K 31/47 20060101AFI20220902BHJP
A61P 11/06 20060101ALI20220902BHJP
A61P 11/02 20060101ALI20220902BHJP
A61P 37/08 20060101ALI20220902BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20220902BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20220902BHJP
A61K 9/20 20060101ALN20220902BHJP
【FI】
A61K31/47
A61P11/06
A61P11/02
A61P37/08
A61K47/26
A61K47/38
A61K9/20
(21)【出願番号】P 2018567480
(86)(22)【出願日】2018-02-08
(86)【国際出願番号】 JP2018004320
(87)【国際公開番号】W WO2018147353
(87)【国際公開日】2018-08-16
【審査請求日】2021-02-05
(31)【優先権主張番号】P 2017022283
(32)【優先日】2017-02-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004156
【氏名又は名称】日本新薬株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000231796
【氏名又は名称】日本臓器製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】根建 祐一
(72)【発明者】
【氏名】安田 昭仁
(72)【発明者】
【氏名】岸本 志乃ぶ
(72)【発明者】
【氏名】島橋 弘敏
(72)【発明者】
【氏名】小黒 紳嗣
【審査官】参鍋 祐子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0087059(US,A1)
【文献】特開2016-155777(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0124657(US,A1)
【文献】特開2015-221782(JP,A)
【文献】モンテルカストOD錠5mg「明治」、モンテルカストOD錠10mg「明治」,2017年01月,pp.1-3,特に、第1頁左欄「(2)製剤の性状」
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00
A61K 47/00
A61K 9/20
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)モンテルカスト又はその薬学的に許容される塩をモンテルカスト量換算で錠剤1錠当たり4.5~5.4mg、並びに、
錠剤100質量%に対して、
(B)マンニトールを65~95質量%、
(C)結晶セルロースを1~
10質量%、及び
(D)クロスカルメロース又はその薬学的に許容される塩を1~
3質量%
含有する、
厚みが4.4mmより小さく、長径が9.5mmより小さく、質量が
200mg以上300mg未満である
チュアブル錠。
【請求項2】
(C)成分と(D)成分の含有質量比が、(C)成分10質量部に対して、(D)成分が
1~30質量部である、請求項1に記載の
チュアブル錠。
【請求項3】
(A)成分が、モンテルカストナトリウムである、請求項1又は2に記載の
チュアブル錠。
【請求項4】
底面部から高さ5mmの位置に目開き5mmのスクリーンを備えた、横幅×奥行きが175mm×85mmの容器に、底面部から1.5cmまで精製水を入れ、スクリーン中央部に錠剤1錠を置き、振幅40mm、48回/分の条件で振とうしたときに、錠剤の崩壊片が全てスクリーン通過するまでの時間が4分以下である、請求項1~
3のいずれかに記載の
チュアブル錠。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は錠剤及びその製造方法等に関し、特にモンテルカスト又はその薬学的に許容される塩を含有する錠剤に関する。
【背景技術】
【0002】
錠剤は、大きいほど服用し難く、特に子供や老人、嚥下困難者等にとっては大きい錠剤は服用するのに困難を伴う。従って、錠剤は小さいものの方が服用困難性が低減され、服用者の服用感は向上する。しかし、錠剤が小さくなれば、配合できる成分量も少なくなることから、治療有効量を配合できないおそれもある。このため、成分配合量を保ちつつ大きさを小さくすることが求められる。しかし、単に打錠圧を上げ、より圧縮して大きさを小さくするだけでは、硬度が必要以上に高くなり(すなわち硬すぎる錠剤となり)、特にチュアブル錠等の場合には口腔内で崩壊するのに時間がかかり、服用感が低下するうえ、崩壊性や分散性、溶出性等にも影響がでてしまうおそれがある。また、有効成分の種類及び量や、崩壊剤、賦形剤といった添加剤の種類及び量によっても、崩壊性や分散性、溶出性等、ひいては服用感に悪影響を与えるおそれがあり、単純に錠剤含有成分を減少させればよいというわけでもない。
【0003】
このように、配合される成分量(特に有効成分量)が保たれ、崩壊性や分散性、溶出性も良好で、かつ出来るだけ小さい錠剤が求められているが、その開発は容易ではない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】シングレア(登録商標)(日本標準商品分類番号:87449)医薬品インタビューフォーム(2016年9月改訂版)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、特にモンテルカスト又はその薬学的に許容される塩を有効成分として含有する錠剤であって、配合される有効成分量が保たれ、崩壊性や分散性、溶出性も良好で、かつ出来るだけ小さい錠剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、モンテルカスト又はその薬学的に許容される塩に加え、マンニトール、結晶セルロース、及びクロスカルメロース又はその薬学的に許容される塩をそれぞれ特定の割合で含有する錠剤が、優れた崩壊性及び分散性を示すことを見出し、さらに改良を重ねて本発明を完成させるに至った。
【0007】
本発明は例えば以下の項に記載の主題を包含する。
項1.
(A)モンテルカスト又はその薬学的に許容される塩をモンテルカスト量換算で錠剤1錠当たり4.5~5.4mg、並びに
錠剤100質量%に対して、
(B)マンニトールを65~95質量%、
(C)結晶セルロースを1~20質量%、及び
(D)クロスカルメロース又はその薬学的に許容される塩を1~10質量%
含有する、
厚みが4.4mmより小さく、長径が9.5mmより小さく、質量が300mg未満である
錠剤。
項2.
(C)成分と(D)成分の含有質量比が、(C)成分10質量部に対して、(D)成分が0.5~100質量部である、項1に記載の錠剤。
項3.
(A)成分がモンテルカストナトリウムである、項1又は2に記載の錠剤。
項4.
チュアブル錠である、項1~3のいずれかに記載の錠剤。
項5.
底面部から高さ5mmの位置に目開き5mmのスクリーンを備えた、横幅×奥行きが175mm×85mmの容器に、底面部から1.5cmまで精製水を入れ、スクリーン中央部に錠剤1錠を置き、振幅40mm、48回/分の条件で振とうしたときに、錠剤の崩壊片が全てスクリーン通過するまでの時間が4分以下である、項1~4のいずれかに記載の錠剤。
項6.
質量が200mg以上300mg未満である、項1~5のいずれかに記載の錠剤。
【発明の効果】
【0008】
本発明に包含される錠剤は、モンテルカスト又はその薬学的に許容される塩含有量が治療必要量含有され、優れた崩壊性及び分散性を示し、溶出性も良好で、且つ比較的小さく服用感にも優れる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の各実施形態について、さらに詳細に説明する。
【0010】
本発明に包含される錠剤は、(A)モンテルカスト又はその薬学的に許容される塩、(B)マンニトール、(C)結晶セルロース、及び(D)クロスカルメロース又はその薬学的に許容される塩、を含有する。本明細書では、これらの成分を単に「(A)成分」などということがある。また、当該錠剤を「本発明に係る錠剤」ということがある。
【0011】
当該錠剤において、(A)成分は、モンテルカスト量換算で、1錠当たり4.5~5.4mg含有される。好ましくは4.6~5.3mg、より好ましくは4.7~5.2mg、さらに好ましくは4.8~5.1mg、よりさらに好ましくは4.95~5.04mg、含有される。また、特に制限されないが、(A)成分は、錠剤1錠あたり1.5~3質量%含有されることが好ましく、1.8~2.5質量%含有されることがより好ましく、1.9~2.3質量%含有されることがさらに好ましい。モンテルカストの薬学的に許容される塩としては、アルカリ金属塩(例えば、ナトリウム塩、カリウム塩等)及びアルカリ土類金属塩(例えば、カルシウム塩、マグネシウム塩等)等の金属塩;アンモニウム塩;有機塩基塩(例えば、トリメチルアミン塩、トリエチルアミン塩、ピリジン塩、ピコリン塩、ジシクロヘキシルアミン塩、エチレンジアミン塩、N、N’-ジベンジルエチレンジアミン塩、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン塩、エタノールアミン塩等)等を例示することができる。その中でも好ましくは、アルカリ金属塩であり、より好ましくはナトリウム塩である。
【0012】
なお、モンテルカストは、喘息やアレルギー性鼻炎の治療に有効であることが知られる公知の化合物である。以下にモンテルカストナトリウムの構造式を示す。
【0013】
【0014】
当該錠剤において、(B)成分は65~95質量%含有される。好ましくは70~90質量%、より好ましくは75~85質量%、さらに好ましくは80~85質量%、含有される。マンニトールとしては、特に制限はされないが、D-マンニトールが好ましい。なお、マンニトールは市販品を購入して用いることもでき、例えばパーテックM100(Merck KGaA)、マンニットP(三菱商事フードテック株式会社)等が好ましく挙げられる。
【0015】
当該錠剤において、(C)成分は1~20質量%含有される。好ましくは2~18質量%、より好ましくは5~15質量%、さらに好ましくは7.5~12.5質量%、含有される。なお、結晶セルロースは市販品を購入して用いることもでき、例えばセオラスPH-302(旭化成株式会社)等が好ましく挙げられる。
【0016】
当該錠剤において、(D)成分は1~10質量%含有される。好ましくは1~7質量%、より好ましくは2~5質量%、含有される。(D)成分は、好ましくはクロスカルメロースの薬学的に許容される塩であり、当該塩としてはナトリウム塩及びカルシウム塩が例示される。(D)成分として中でも好ましくはクロスカルメロースナトリウム及び/又はクロスカルメロースカルシウムであり、特に好ましくはクロスカルメロースナトリウムである。(D)成分は市販品を購入して用いることもでき、例えばAc-Di-Sol(クロスカルメロースナトリウム;FMC International)等が好ましく挙げられる。
【0017】
なお、特に制限はされないが、錠剤における、(B)成分、(C)成分、及び(D)成分の合計含有割合は、90~97質量%程度が好ましく、92~97質量%程度がより好ましく、94~96質量%程度がさらに好ましい。また、特に制限されないが、錠剤における(C)成分と(D)成分の含有質量比は、(C)成分10質量部に対して、(D)成分が0.5~100質量部程度が好ましく、0.5~50質量部程度がより好ましく、0.5~20質量部程度がさらに好ましく、0.5~10質量部程度がよりさらに好ましく、1~5質量部程度がなお好ましく、2~4質量部程度が特に好ましい。
【0018】
当該錠剤には、上記(A)~(D)成分の他に、本発明の効果を損なわない範囲で、その他の成分を含有させることができる。このようなその他成分としては、特に制限されず、製剤分野(特に錠剤分野)において公知の成分を用いることができる。例えば結合剤、矯味剤、着色剤、滑沢剤、香料、賦形剤、崩壊剤等が挙げられる。このようなその他成分は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。なお、結合剤、賦形剤、崩壊剤(特に賦形剤及び崩壊剤)をその他成分として用いる場合には、特に、本発明の効果を損なわない範囲(使用量)であることを確認したうえで使用することが好ましい。
【0019】
結合剤としては、例えば、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロース、カルボキシメチルセルロースなどのセルロース誘導体;ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン(ポビドン)、ビニルピロリドン共重合体(コポリビドン)、アクリル酸系高分子、ゼラチン、アラビアゴム、プルラン、カンテン、トラガント、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル、α化デンプン、デキストリン、マクロゴール及び白糖などを例示することができる。好ましくは、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロース、メチルセルロース、ポリビニルアルコール、アラビアゴム、α化デンプン、デキストリン、プルラン、ポリビニルピロリドン、及びマクロゴールである。これらの結合剤は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの結合剤のうち、ヒドロキシプロピルセルロース、及びヒプロメロースなどのセルロース誘導体が汎用される。なかでもヒドロキシプロピルセルロースが特に好ましい。これらの結合剤を用いる場合、本発明に係る錠剤中の配合割合としては、錠剤100質量%中、通常0.05~2質量%の範囲から選択することができる。好ましくは0.1~0.5質量%である。
【0020】
矯味剤としては、ショ糖、D-ソルビトール、キシリトール、アスパルテーム、ステビア、スクラロースなどの甘味剤や、メントールやミントなどの着香剤を例示することができる。これらの矯味剤は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0021】
着色剤としては、ウコン抽出液、リボフラビン、カロチン液、タール色素、及びカラメル等の水溶性着色剤、並びに、酸化チタン、酸化鉄(黄酸化鉄、三二酸化鉄、黄色三二酸化鉄、ベンガラ等)、及びタール系色素(レーキ色素などのアルミニウム塩)等の非水溶性着色剤を例示することができる。これらの着色剤は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0022】
滑沢剤としては、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、タルク、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、硬化油、ポリエチレングリコール、ジメチルポリシロキサン、カルナウバロウ、ラウリル硫酸ナトリウム、ミツロウ、サラシミツロウなどが例示できる。これらの滑沢剤は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの滑沢剤のうち、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウムなどのステアリン酸塩が汎用される。特にステアリン酸マグネシウムが好ましく用いられる。これらの滑沢剤を用いる場合、本発明に係る錠剤中の配合割合としては、錠剤100質量%中、通常0.01~30質量%の範囲から選択することができる。好ましくは0.5~3質量%である。
【0023】
香料としては、各種のフレーバーを用いることができ、特にヨーグルトや果物のフレーバーが好適で、例えばヨーグルト香料、チェリー香料、オレンジ香料等を用いることができる。これらの香料は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0024】
賦形剤としては、例えば、糖類(乳糖、ブドウ糖、果糖、白糖など)、デキストリン、βーシクロデキストリン、軽質無水ケイ酸、含水二酸化ケイ素、二酸化ケイ素、沈降性炭酸カルシウム、無水リン酸水素カルシウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、乳酸カルシウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、合成ヒドロタルサイト、タルク、カオリンなどが例示できる。また、マンニトール以外の糖アルコール(D-ソルビトール、エリスリトール、キシリトール、粉末還元麦芽糖水飴など)を用いることもできる。これらの賦形剤は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0025】
崩壊剤としては、例えば、カルボキシメチルスターチ類(例えば、カルボキシメチルスターチ、カルボキシメチルスターチナトリウムなど)、クロスポビドン、デンプン類(トウモロコシでん粉、バレイショでん粉など)、アルギン酸、及びベントナイトなどを例示することができる。これらの崩壊剤は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0026】
本発明に係る錠剤の形状は特に制限はされないが、公知の錠剤の形状が好ましく、例えば円形錠、楕円形錠等が例示できる。
【0027】
本発明に係る錠剤は、大きさが比較的小さく、特に服用感の向上のために好適である。当該錠剤は、具体的には、厚みが4.4mmより小さく、長径が9.5mmより小さく、質量が300mg未満である。
【0028】
錠剤の厚みは、好ましくは4.2mm以下であり、より好ましくは4.0mm以下であり、さらに好ましくは3.8mm以下である。
【0029】
また、錠剤の長径は、好ましくは9.4mm以下であり、より好ましくは9.3mm以下であり、さらに好ましくは9.2mm以下であり、よりさらに好ましくは9.1mm以下である。なお、錠剤が円形錠の場合は直径が長径になる。
【0030】
また、錠剤の質量は、好ましくは290mg以下であり、より好ましくは280mg以下であり、さらに好ましくは270mg以下であり、よりさらに好ましくは260mg以下である。錠剤の質量の下限は、所望の溶出速度を得る等のために、一定量以上の(B)成分、(C)成分、(D)成分等の添加剤を必要とすることから、例えば、200mg以上が好ましく、210mg以上がより好ましく、220mg以上がさらに好ましく、230mg以上がよりさらに好ましく、240mg以上が特に好ましい。なお、錠剤がコーティング層を有する場合(すなわち、コーティング錠の場合)には、当該質量はコーティング層の質量を除外した場合の質量である。当該質量は素錠の質量ということもできる。
【0031】
本発明に係る錠剤は、好ましくは湿式顆粒圧縮法を用いて製造することができる。具体的には、(A)成分、(B)成分、(C)成分、及び(D)成分、並びに必要に応じてさらにその他の成分(例えば、着色剤など)を粉体混合し、これに溶液状に調製した結合剤を加えて造粒し(湿式造粒)、乾燥後、整粒し、必要に応じてさらに添加物を加え混合して、圧縮成形(打錠)することで製造することができる。このようにして得られる好ましい本発明に係る錠剤は、湿式造粒顆粒圧縮物ということもできる。
【0032】
ここで、整粒後に必要に応じて加えられる添加物としては、例えば滑沢剤、矯味剤、香料等が挙げられる。また、前記粉体混合において、全ての成分を一度に混合してもよいが、例えば着色剤及び一部の(B)成分をあらかじめ混合したもの(又は当該混合物をさらに粉砕したもの)を用意し、これに他の成分をさらに混合することもできる。
【0033】
なお、本発明の効果を損なわない範囲で、打錠して得られた錠剤に、さらにコーティングを施してコーティング錠(すなわち、コーティング層で被覆された錠剤)としてもよく、このようなコーティング錠も本願発明に包含される。コーティングは当該技術分野において公知の方法により行うことができ、例えばパンコーティング方法、流動層コーティング法、及び通気式乾燥パンコーティング法等を挙げることができる。また、コーティング剤としては、糖衣錠の調製には例えば白糖、エリスリトール、ソルビトール、キシリトール、トレハロースなどの糖類が使用できる。またフィルムコーティング錠の調製には、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)及びヒプロメロース、ポリビニルアルコール、プルランなどの水溶性コーティング剤;ヒプロメロースフタル酸エステル(HPMCP)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート(HPMCAS)、カルボキシメチルエチルセルロース(CMEC)、メタクリル酸コポリマー、セラセフェート(酢酸フタル酸セルロース)及びセラック等の腸溶性コーティング剤;ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、アミノアルキルメタアクリレートコポリマー、ポリビニルアセタートジエチルアミノアセテートなどの胃溶性コーティング剤;エチルセルロース及びアミノアルキルメタクリレートコポリマー等の徐放性コーティング剤などの高分子化合物が使用される。これらコーティング剤は1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。なお、これらのコーティング剤には、必要に応じて、着色剤、矯味剤、甘味剤、着香剤、遮光剤、可塑剤などを1種または2種以上を組み合わせて配合することもできる。
【0034】
特に制限はされないが、本発明に係る錠剤は、普通錠(素錠)のほか、チュアブル錠、トローチ錠、徐放錠等であってよく、なかでもチュアブル錠、トローチ錠であることが好ましく、チュアブル錠であることがより好ましい。
【0035】
本発明に係る錠剤は、好ましくは以下の(a)及び/又は(b)の特性を有する。
【0036】
(a)崩壊性
具体的には、底面部から高さ5mmの位置に目開き5mmのスクリーンを備えた、横幅×奥行きが175mm×85mmの容器に、底面部から1.5cmまで精製水を入れ、スクリーン中央部に錠剤1錠を置き、振幅40mm、48回/分の条件で振とうしたときに、錠剤の崩壊片が全てスクリーン通過するまでの時間が4分以下(より好ましくは3.5分以下)である。
【0037】
また、好ましくは、錠剤の代わりに4分割錠(1錠を均等に4分割したもの)を用いて同様に検討した場合に、錠剤の崩壊片が全てスクリーン通過するまでの時間が1分以下(より好ましくは2/3分以下)である。
【0038】
(b)分散性
100mLビーカーに精製水100mLを入れ、錠剤を1錠投入し、投入直後、スパーテルで10回かき回した後、30秒毎にスパーテルで10回のかき回しを繰り返し、錠剤片がなくなったときの時間が、2分以下(より好ましくは1.5分以下)である。
【0039】
なお、本明細書において「含む」とは、「本質的にからなる」と、「からなる」をも包含する(The term "comprising" includes "consisting essentially of” and "consisting of.")。
【実施例】
【0040】
以下、本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記の例に限定されるものではない。
【0041】
錠剤の製造
D-マンニトール(Merck KGaA、パーテックM100)6000g及び三二酸化鉄120gを容器回転式混合機(株式会社徳寿工作所、V-20型)に投入して混合した。その後、混合物を粉砕機(不二パウダル株式会社、KIIWG-1型)で粉砕し、色素分散物を得た。
【0042】
上記色素分散物5100g、モンテルカストナトリウム2080g、D-マンニトール(三菱商事フードテック株式会社、マンニットP)77680g、結晶セルロース(旭化成株式会社、セオラスPH-302)10000g、及びクロスカルメロースナトリウム(FMC International、Ac-Di-Sol)3000gを高速攪拌造粒機(株式会社パウレック、VG400型)に入れ、1.2質量%ヒドロキシプロピルセルロース溶液16000gを添加して造粒し、流動層造粒乾燥機にて乾燥した。
【0043】
得られた乾燥物、スクラロース500g、及びヨーグルト香料500gをスクリーン式整粒機(株式会社パウレック、QC-194S型)にて整粒し、整粒顆粒を得た。
【0044】
上記整粒顆粒99100g、及びステアリン酸マグネシウム1000gを容器回転式混合機(株式会社マツボー、PM1000型)にて混合して打錠用顆粒とした。当該顆粒をロータリー式打錠機(株式会社菊水製作所、アクエリアスIII45型)に供し、直径9.0mmの円形錠金型にて打錠荷重1200kgfで打錠し、質量250mgの錠剤を成型した。
【0045】
得られた錠剤250mg中には、モンテルカストナトリウム5.2mg、D-マンニトール206.7mg、結晶セルロース25mg、クロスカルメロースナトリウム7.5mgが含まれる。
【0046】
得られた錠剤の外観を表1に示す。なお、表1には、参考のため、既に上市されているモンテルカストナトリウムチュアブル錠(シングレアチュアブル錠5mg:MSD株式会社製)の情報(医薬品インタビューフォームから引用)も併せて示す。「シングレア」は登録商標である。また、以下、当該錠を上市品ともいう。
【0047】
【0048】
得られた錠剤の崩壊性、分散性、及び溶出性を以下のようにして検討した。なお、上市品についても同様に検討した。
【0049】
崩壊性の検討
アクリル容器(横幅×奥行き×深さ:175mm×85mm×35mm)にスクリーン(目開き:5mm)を底面部より高さ5mmとなるようにセットし、水面が底面部より高さ約1.5cmとなるように精製水を入れた。スクリーン中央部に錠剤(1錠又は4分割錠)を置き、振とう器(yamato社製、SA-31)にて振幅(横)40mm、48回/分の条件で振とうし、スクリーン上より錠剤の崩壊片が全て通過するまでの時間を計測した。なお、4分割錠とは、錠剤カッターを用いて、1錠を均等に4分割したものであり、口腔内で錠剤が噛み砕かれた場合を想定している。
【0050】
結果を表2に示す。なお当該結果は、それぞれ3回の試験を実施した際の平均値を示す。当該結果から、得られた錠剤は、上市品に比べて、崩壊時間が短く崩壊性が優れていることが確認できた。従って、本発明に係る錠剤は、服用(特に小児が服用)した際に、咀嚼の有無にかかわらず、口腔内で速やかに崩壊して飲み下し易くなり、上市品よりもより良い服用感を得ることができる。
【0051】
【0052】
結晶セルロース及びクロスカルメロースナトリウムの含有割合の検討
表3に示すように錠剤における結晶セルロース及びクロスカルメロースナトリウムの配合割合を変えた以外は、上記「錠剤の製造」と同様にして、これらの成分の含有割合が異なる錠剤を調製した。なお、結晶セルロース及びクロスカルメロースナトリウムの配合量が増減した分は、D-マンニトールの配合量を増減させて補填した(すなわち、いずれの錠剤も、結晶セルロース、クロスカルメロースナトリウム、及びD-マンニトールの合計配合量は同じ)。そして、上記「崩壊性の検討」と同様にして各錠剤の崩壊性を検討した。結果を表3に併せて示す。表3における%は質量%を示す。なお、表3における、結晶セルロース含有割合が10%でクロスカルメロースナトリウム含有割合が3%の錠剤は、上記「錠剤の製造」において得られた錠剤と同一である。
【0053】
【0054】
上記表3より、結晶セルロースを1~20質量%、及びクロスカルメロースナトリウムを1~10質量%含有する検体(錠剤)であれば、速やかな崩壊性を示すことが確認できた。
【0055】
分散性の検討
100mLビーカーに精製水100mLを入れ、これに上記「錠剤の製造」において得られた錠剤を1錠投入した。投入直後、スパーテルで10回かき回した後、30秒毎にスパーテルで10回のかき回しを繰り返し、錠剤片がなくなったときの時間(崩壊時間)を計測した。
【0056】
結果を表4に示す。なお当該結果は、3回の試験を実施した際の平均値を示す。当該結果から、得られた錠剤は上市品に比べて、崩壊時間が短いこと、よって分散性が優れていることが確認できた。従って、本発明に係る錠剤は、白湯などの液体に懸濁させて服用する場合も速やかに崩壊し、服用までの時間を短縮することができる。
【0057】
【0058】
溶出性の検討
溶出試験器(富山産業株式会社、NTR-6100A)を用いて、上記「錠剤の製造」において得られた錠剤1錠について、水900mLを用い、第十七改正日本薬局方に従ったパドル法(即放性製剤の測定法)により、毎分50回転で溶出試験を行った。規定された時間に溶出液5mLを正確にとり、毎分1000回転で10分間遠心分離し、得られた上澄液を試料溶液とした。試料溶液について、液体クロマトグラフィー(島津製作所株式会社、LC-2010CHT LCsolution)によりモンテルカストの溶出濃度を測定した。錠剤に含まれていたモンテルカスト質量を100%とした場合、水に含まれるモンテルカスト質量が何%かを算出した。
【0059】
前記算出結果を表5に示す。なお当該結果は、12回の試験を実施した際の平均値を示す。当該結果から、得られた錠剤は上市品と類似した溶出挙動を示すことが確認できた。
【0060】
【0061】
以上のように、得られた錠剤は、上市品に比べて大きさが小さく服用感が向上し且つ崩壊性及び分散性に優れていた。また、溶出性においても、上市品と同等の良好な溶出挙動を示した。