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  • 特許-毛髪化粧料塗布具 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-01
(45)【発行日】2022-09-09
(54)【発明の名称】毛髪化粧料塗布具
(51)【国際特許分類】
   A45D 19/02 20060101AFI20220902BHJP
   A45D 24/22 20060101ALI20220902BHJP
   A45D 24/34 20060101ALI20220902BHJP
【FI】
A45D19/02 B
A45D24/22 Z
A45D24/34
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2016253986
(22)【出願日】2016-12-27
(65)【公開番号】P2018102724
(43)【公開日】2018-07-05
【審査請求日】2019-12-23
【審判番号】
【審判請求日】2021-09-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000113274
【氏名又は名称】ホーユー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】末田 朋与
(72)【発明者】
【氏名】楠見 真実
(72)【発明者】
【氏名】森下 奈那
【合議体】
【審判長】窪田 治彦
【審判官】関口 哲生
【審判官】熊谷 健治
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-21666(JP,A)
【文献】特開平9-187320(JP,A)
【文献】特開平10-71020(JP,A)
【文献】実開平6-66504(JP,U)
【文献】実開昭49-31586(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45D24/00-24/36
A45D19/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の櫛歯を突出させた櫛部と、この櫛部の先端部から突出する、スライス取りを行うためのスライス棒とを備え、
前記スライス棒が、直線状であって、前記櫛部の長手方向と前記長手方向に対する直角方向である櫛歯突出方向との中間角度方向であって前記櫛歯突出方向に対して15°ないし30°開いた方向へ突出していることを特徴とする毛髪化粧料塗布具。
【請求項2】
前記スライス棒の前記櫛歯突出方向の高さが櫛歯と同一又はそれ以下であることを特徴とする請求項1に記載の毛髪化粧料塗布具。
【請求項3】
前記櫛部における複数の櫛歯の頂端を結ぶ線が凹円弧状の湾曲線を構成し、この凹円弧状の湾曲線における底の部分が櫛部の中央部よりも先端部側に偏って位置していることを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれかに記載の毛髪化粧料塗布具。
【請求項4】
前記毛髪化粧料塗布具が、更に以下(3)及び/又は(4)の部材を備えることを特徴とする請求項1~請求項3のいずれかに記載の毛髪化粧料塗布具。
(3)櫛部の後端部から延設したハンドル部。
(4)櫛部における櫛歯の突出方向に対する背面側に設けたブラシ部。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は染毛剤などの各種の毛髪化粧料を頭髪などの毛髪に塗布するために用いる毛髪化粧料塗布具に関する。より具体的には本発明は、少なくとも櫛部とスライス棒を備える毛髪化粧料塗布具において櫛部の櫛歯とスライス棒との空間的位置関係を特定し、特にセルフの使用における利便性を向上させた毛髪化粧料塗布具に関する。
【0002】
本願明細書においては、毛髪化粧料塗布具を単に「塗布具」とも言う。また、「セルフの使用」、「セルフ用」等と言うときは、毛髪化粧料のユーザーが美容師等の施術によらずに、又は他者の助けを借りずに、自宅等で鏡等の利用下に自ら塗布具を使用して毛髪化粧料を塗布する使用形態を言う。本発明の塗布具はセルフ用として特に好ましく利用されるが、その他の使用形態、例えば美容師が顧客に施術する場合にも好ましく利用することができる。更に「スライスを取る」、「スライス取り」等と言うときは、毛髪化粧料の塗布のためのブロッキング操作等の際に、スライス棒等の部材を用いて毛髪を分け、毛髪化粧料の塗布部位を露出させる操作を言う。
【背景技術】
【0003】
毛髪化粧料が比較的流動性の低いクリーム状やジェル状等の粘液状の剤型である場合、その商品包装には、毛髪化粧料の第1剤や第2剤等を充填したチューブ容器と共に、セルフ用の塗布具もしばしば収容される。塗布具は、通常はブラシ部と櫛部を備え、更にスライス棒を備える場合もある。ブラシ部は高密度に植毛されたブラシ毛に毛髪化粧料を載せて毛髪に塗布するための部材であり、櫛部は一定の相互間隔を以て形成した多数の櫛歯により、毛髪に塗布した毛髪化粧料を梳いて毛髪全体に均一に分布させるための部材である。スライス棒はスライス取りを行うための部材である。
【0004】
セルフ用の塗布具は、毛髪化粧料の商品包装に収容し易い形状及びサイズの安価なものであることが要求されるため、通常は、塗布具を構成する各部材がコンパクトにまとまり、全体として平坦な薄い板状に形成されたプラスチック製の成形品とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2004-154426号公報
【文献】特開2001-244号公報
【文献】特開2005-21666号公報
【0006】
特許文献1に係る染毛用具は、一定の長さを持った薄板状のハンドル部である把持部に対して、その先端部分の片側には多数の櫛歯を突出させた櫛部を設け、他の片側にはブラシ毛を植毛したブラシ部を設けている。そして、把持部の後端部分からは把持部の軸方向に沿ってスライス棒を突出させている。
塗布具の使用の際にはブラシ部を用いて毛髪化粧料を毛髪上に塗布し、次いで櫛部で毛髪を梳いて毛髪化粧料を毛髪全体に分布させる。
【0007】
特許文献2に係る毛染め用具は、基本的に上記特許文献1に係る染毛用具と同様の構成であるが、商品包装への収納時や携帯時の便宜を考慮し、塗布具の非使用時にはスライス棒を薄板状の把持部の面上に折り返して畳むことができる構成となっている。
【0008】
特許文献3に係る毛染め用くしも、ベース部材である把持部に対して櫛部、ブラシ部及びスライス棒を設けた構成である。但し、その図5又は図6に示す実施形態では、スライス棒は把持部の後端部分から突出するのではなく、把持部における櫛部及びブラシ部の形成部分の先端部から把持部の軸方向に沿って先端方向へ突出している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、特許文献1~3が開示するような塗布具を用いてセルフで毛髪化粧料を塗布する場合、通常は、まずスライス棒の先端を頭部に接触させた状態でブロッキングの分け目沿いに移動(分け目移動)させて頭髪をスライス取りし、分け目の頭髪を根元部分から露出させる。そしてスライスした頭髪をクリップ等で留めてから、ブラシを用いて頭髪上(髪の分け目)に毛髪化粧料を塗布する。
【0010】
しかしこのようなスライス取りの手順は、ユーザーがロングヘアであることを前提としている。即ち、スライス取りした頭髪が長いため、分け目移動におけるスライス棒の通過後も頭髪がスライス棒の拘束を受けていることを前提としている。ショートヘアのユーザーの場合は、分け目移動におけるスライス棒の通過後に頭髪がスライス棒の拘束を脱するため、スライス取りの進行過程においてブロッキングの分け目が崩れる。その結果、分け目が整然とした良好なブロッキングを行うことが困難であった。なお、ロングヘアのユーザーでも、スライス取りに熟練していない場合には、このような不具合があり得た。
【0011】
そして、特許文献1に記載の染毛用具や特許文献2に記載の毛染め用具では、塗布具のハンドル部である把持部の一方の端部にスライス棒を、他方の端部に櫛部やブラシ部を設けているので、スライス棒を使用するスライス取りの際に、併せて櫛部やブラシ部を何らかの形態で利用することは不可能である。
【0012】
特許文献3の図5図6に記載の毛染め用くしでは、ハンドル部である把持部の一方の端部に櫛部、ブラシ部、スライス棒をまとめて設けている。しかしスライス棒(特にその先端部)と櫛部とは空間的に大きく離れ、かつ櫛歯とスライス棒の突出方向もほぼ90°と大きく異なる。従って、スライス棒を使用するスライス取りの際に、併せて櫛部やブラシ部を何らかの形態で利用することは困難である。
【0013】
そこで本発明は、ショートヘアのユーザーでも、又はロングヘアのユーザーであるがスライス取りに未熟な場合でも、セルフによる良好なスライス取りが容易である毛髪化粧料塗布具を提供することを解決すべき技術的課題とする。
本願発明者は、少なくとも櫛部とスライス棒を備えるセルフ用の毛髪化粧料塗布具において、櫛部の櫛歯とスライス棒との空間的な位置関係を一定の形態に特定すれば上記の課題を解決できることを見出し、本発明を完成した。
【課題を解決するための手段】
【0014】
(第1発明の構成)
上記課題を解決するための本願第1発明は、複数の櫛歯を突出させた櫛部と、この櫛部の先端部から突出し、その頂端が櫛部の櫛歯から少し離れて位置するスライス棒とを備える毛髪化粧料塗布具である。
【0015】
(第2発明の構成)
上記課題を解決するための本願第2発明においては、前記第1発明に係る毛髪化粧料塗布具のスライス棒の突出形態が以下(1)及び/又は(2)に該当する。
(1)スライス棒が櫛部の櫛歯に対して開いた角度方向へ突出している。
(2)スライス棒が櫛部の櫛歯から離隔して突出している。
【0016】
(第3発明の構成)
上記課題を解決するための本願第3発明においては、前記第1発明又は第2発明に係る毛髪化粧料塗布具のスライス棒の櫛歯突出方向の高さが櫛歯と同一又はそれ以下である。
【0017】
(第4発明の構成)
上記課題を解決するための本願第4発明においては、前記第1発明~第3発明のいずれかに係る毛髪化粧料塗布具の櫛部における複数の櫛歯の頂端を結ぶ線が凹円弧状の湾曲線を構成し、この凹円弧状の湾曲線における底の部分が櫛部の中央部よりも先端部側に偏って位置している。
【0018】
(第5発明の構成)
上記課題を解決するための本願第5発明においては、前記第1発明~第4発明のいずれかに係る毛髪化粧料塗布具が、更に以下(3)及び/又は(4)の部材を備える。
(3)櫛部の後端部から延設したハンドル部。
(4)櫛部における櫛歯の突出方向に対する背面側に設けたブラシ部。
【発明の効果】
【0019】
(第1発明の効果)
第1発明の毛髪化粧料塗布具では、セルフのスライス取りの操作において、スライス棒から少し離れて櫛部の櫛歯が追従移動するので、スライスした頭髪がショートヘアであっても、櫛部の櫛歯を利用して、頭髪の分け目をそのまま保持することは容易である。従って、スライス取りの進行過程においてブロッキングの分け目が崩れることがなく、分け目が整然とした良好なブロッキングを容易に行うことができる。
一方で、スライス棒の頂端は櫛部の櫛歯から少し離れて位置するので、スライス棒の頂端を用いるスライス取りに対して櫛部の櫛歯は干渉しない。
【0020】
(第2発明の効果)
塗布具のスライス棒の構成は、第1発明で規定するように櫛部の先端部から突出し、その頂端が櫛部の櫛歯から少し離れて位置する限りにおいて限定されないが、第2発明の(1)及び/又は(2)に該当するものを代表的な実施形態として例示することができる。
【0021】
第2発明の(1)の実施形態においては、スライス棒が櫛部の櫛歯に対して開いた角度方向へ突出しているので、結果的にスライス棒の頂端が櫛部の櫛歯から少し離れて位置することになり、第1発明の効果が確保される。第2発明の(2)の実施形態においては、スライス棒が櫛部の櫛歯から離隔して突出しているので、当然ながらスライス棒の頂端が櫛部の櫛歯から少し離れて位置することになり、やはり第1発明の効果が確保される。
【0022】
(第3発明の効果)
第3発明においては、スライス棒における櫛歯の突出方向の高さが櫛歯と同一又はそれ以下であるため、スライス取りした頭髪に毛髪化粧料を塗布した後、その毛髪化粧料を櫛部を用いて頭髪中に梳き込む操作に対して、スライス棒の頂端が干渉しない。
【0023】
(第4発明の効果)
第4発明においては、櫛部における複数の櫛歯の頂端を結ぶ線が凹円弧状の湾曲線を構成しているので、基本的に球状に近い外形を有するヒトの頭部に対して櫛部が良好にフィットする。また、凹円弧状の湾曲線における底の部分が櫛部の中央部よりも先端部側に偏って位置しているので、「スライス取りした頭髪の分け目を櫛部の櫛歯でそのまま保持する」という前記第1発明の作用が一層容易に確保される。
【0024】
(第5発明の効果)
第5発明においては、(3)として櫛部の後端部から櫛部の長手方向沿いに延設したハンドル部を備えるので、塗布具の操作性が一層向上する。更に、(4)として櫛部における櫛歯の突出方向に対する背面側にブラシ部を備えるので、手の中で塗布具の握りを軸回りに180°回転させるだけで櫛部とブラシ部の使い分けが可能となり、塗布具の操作性が更に一層向上する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の実施例に係る毛髪化粧料塗布具の側面図である。
図2】本発明の実施例に係る毛髪化粧料塗布具の斜視図である。図2においてブラシ部3は想像線(2点鎖線)で示す。
図3】本発明の実施例に係る毛髪化粧料塗布具の使用状態をイラストレーションによって簡略化して示す図である。図3において櫛部2及びブラシ部3の一部は想像線(2点鎖線)で示す。
【符号の説明】
【0026】
1 塗布具
2 櫛部
3 ブラシ部
4 スライス棒
5 ハンドル部
6 櫛歯
7 ブラシ毛束
α 湾曲線
A 底点ポイント
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に本発明の実施形態をその最良の形態を含めて説明する。本発明の技術的範囲は以下の実施形態によって限定されない。
【0028】
〔毛髪化粧料塗布具〕
本発明の毛髪化粧料塗布具は、必須の部材として、複数の櫛歯を突出させた櫛部と、この櫛部の先端部から突出し、その頂端が櫛部の櫛歯から少し離れて位置するスライス棒とを備える。更に本発明の毛髪化粧料塗布具は、櫛部の後端部から櫛部の長手方向沿いに延設したハンドル部、及び/又は、櫛部における櫛歯の突出方向に対する背面側に設けたブラシ部を備えることができる。
塗布具を構成する各部材には、意匠性、扱いの容易性、材料コストの削減等を考慮して、適宜に凹凸形状や薄肉部等を形成することができる。
【0029】
更に、本発明の毛髪化粧料塗布具は、本願出願前の公知技術に係るこの種の塗布具が備えることがある上記以外の部材、例えば滑り止め用の部材、ミニブラシ、ミニコーム、他の任意の部材を組付けるための嵌合部などを、本発明の効果を阻害しない限度において任意に備えることができる。ミニブラシ、ミニコームとは、髪の毛の生え際に用いるミニサイズのブラシや櫛をいう。
また、本発明の毛髪化粧料塗布具はプラスチック製の型成形品とすることが好ましいが、その一部または全部を金属製、木製等としても良い。ブラシ毛束のブラシ毛は型成形が困難であって、植毛が通常である。ブラシ毛としては、動/植物性の硬質繊維も使用できるが、コスト、加工性等の点からプラスチック製の繊維が好ましい。
【0030】
また、本発明の毛髪化粧料塗布具において、上記の必須部材及びその他の部材を一体的に構成しても良く、別体に形成して組付ける方式としても良く、あるいは特許文献2のように一定の部材を折り畳み可能に構成してもよい。
組付け式の塗布具には、組付けた後に当該組付けを解除できる着脱方式と、組付けを解除できない方式とが含まれる。部材の組付けのための連結部の構成は限定されず、例えば一方の部材に設けたネジと他方の部材に設けたネジ孔を螺合する構成、一方の部材から突出させたフックを他方の部材に設けたフック孔に嵌込して結合させる構成、等の各種の組付け機構を利用できる。
【0031】
次に本発明の塗布具は、その櫛部、スライス棒等の各部材を同一平面上に備える構成、即ち、塗布具全体が薄板状に形成された構成が、包装箱への収容性等の点から好ましい。「同一平面上に備える」とは、各部材が完全に同一平面に沿って位置し、あるいは、ほぼ同一平面に沿って位置することをいう。
塗布具全体を薄板状に形成する場合において、その厚さは、塗布具の物理的強度や包装箱への収容性を考慮して任意に決定されるが、例えば最も厚い部分が15mm以下、特に好ましくは5~10mm程度とすることができる。塗布具全体の平面方向のサイズも包装箱への収容性等を考慮して任意に決定されるが、例えば25cm以下、特に好ましくは15~20cm程度とすることができる。
【0032】
〔櫛部〕
櫛部は複数の櫛歯を備える。これらの櫛歯は櫛部の長手方向(「L方向」とも言う)沿いに一定の相互間隔を以て直線状に配列するように、又は非直線状の千鳥状配列等により規則的に配列するように形成されている。櫛歯はL方向に対する直角方向(「T方向」とも言う)へ突出している。櫛歯の高さ(突出幅)は限定されないが、例えば10~20mm程度とすることができる。櫛部における櫛歯列の幅(L方向の長さ)は限定されないが、例えば40~120mm程度とすることができる。
【0033】
櫛部における複数の櫛歯を同じ高さに形成することにより、櫛部を側方から見たときに複数の櫛歯の頂端を結ぶ線が直線となるように構成しても良いが、より好ましくは複数の櫛歯の頂端を結ぶ線が、凹円弧状の湾曲線を構成する。特に好ましくは、第4発明の効果として前記した理由から、この凹円弧状の湾曲線における底の部分が櫛部の中央部よりも先端部側に偏って位置している。
【0034】
凹円弧状の湾曲線における湾曲の深さ(湾曲線の両端部と底部との高低差)は任意に設定できるが、例えば1~4mm程度とすることができる。湾曲線における底の部分は、例えば櫛部の長手方向の中央部よりも5~10mm程度、先端部側に偏らせることが特に好ましい。
【0035】
〔スライス棒〕
スライス棒は櫛部の長手方向の先端部から突出し、その頂端が櫛部の櫛歯から少し離れて位置する部材である。スライス棒の形状や長さは限定されないが、例えば15~20mm程度の長さで、頂端へ向かって次第に細くなる直線状の部材とすることができる。
【0036】
「スライス棒の頂端が櫛部の櫛歯から少し離れて位置する」という構成の実施形態としては、少なくとも、第2発明で前記した(1)スライス棒が櫛部の櫛歯に対して開いた角度方向へ突出している形態と、(2)スライス棒が櫛部の櫛歯から離隔して突出している形態とを例示することができるが、これらの形態に限定されない。スライス棒の頂端と櫛部の櫛歯との離隔幅は例えば0.5~2cm程度とすることができるが、このような離隔幅に限定されない。
【0037】
上記(1)の形態においては、スライス棒は具体的には上記L方向とT方向との中間角度方向(例えば、T方向に対して15°ないし30°程度に開いた方向)へ突出しているため、その頂端が櫛部の櫛歯から少し離れて位置することになる。この場合、スライス棒が櫛部の先端部から直接に突出していても良いし、スライス棒が櫛部の先端部を長手方向へ少し延長した部分から突出していても良い。
上記(2)の形態においては、スライス棒は具体的には櫛部の先端部を長手方向へ少し延長した部分から突出しているため、その頂端が櫛部の櫛歯から少し離れて位置することになる。この場合、スライス棒がL方向とT方向との中間角度方向へ突出していても良いし、T方向と略平行な方向へ突出していても良い。
【0038】
上記(1)及び/又は(2)の形態において、第3発明に関して述べた理由に基づき、櫛部の櫛歯から少し離れて位置するスライス棒の頂端は、T方向の高さが櫛歯と同一又はそれよりも低いことが好ましく、櫛歯よりも低いことが特に好ましく、櫛歯よりも0.5~5mm低いことがとりわけ好ましい。但しスライス棒の頂端のT方向の高さが櫛歯よりも過剰に低く、例えば10mm以上も低いと、スライス取りにおけるスライス棒の操作性が幾分減少する恐れがある。
【0039】
〔ブラシ部〕
本発明の塗布具において、ブラシ部の存在は不可欠ではない。また、塗布具がブラシ部を備える場合でも、塗布具におけるブラシ部の形成部位は限定されない。しかし、第5発明の効果として前記した理由から、塗布具がブラシ部を備えることが好ましく、かつ塗布具におけるブラシ部の形成部位として、櫛部における櫛歯の突出方向に対する背面側にブラシ部を設けることが好ましい。この場合、ブラシ部のブラシ毛は、櫛部の櫛歯とは略反対方向に向かって植毛される。
【0040】
ブラシ部は、ブラシ毛を集束して植毛させた複数ないし多数のブラシ毛束を備える。これらのブラシ毛束は好ましくは2~6mm程度の太さを持ち、かつ数mm程度の相互間隔を以て、例えば直線的に一列に、あるいはいわゆる千鳥状に配列させることができる。
【0041】
ブラシ毛束は、例えば、8~30mm程度の範囲内で毛足の長さを揃えたブラシ毛により構成しても良く、8~30mm程度の範囲内で毛足の長さをランダムにバラ付かせたブラシ毛により構成しても良い。また、毛足の短いブラシ毛を揃えて植毛した短毛部と、毛足の長いブラシ毛を揃えて植毛した長毛部により形成される段差構造を備えても良い。この段差構造を備える場合、長毛部の毛足の長さは8~30mm程度の範囲内とし、短毛部の毛足の長さはそれより数mm程度短くする。
【0042】
〔ハンドル部〕
本発明の塗布具において、ハンドル部の存在は不可欠ではない。また、塗布具がブラシ部を備える場合でも、塗布具におけるハンドル部の形成部位は限定されない。しかし、第5発明の効果として前記した理由から、塗布具がハンドル部を備えることが好ましく、かつ塗布具におけるハンドル部の形成部位として櫛部の長手方向の後端部から延設することが好ましい。ハンドル部を延設する方向は限定されないが、例えば、塗布具の操作性を考慮して、櫛部の長手方向沿いに延設することができる。
【0043】
ハンドル部の長さは限定されないが、例えば7~13cm程度の長さの薄板状の部材とすることができる。また、握持の容易さや把持した際の滑り止め等のために、例えば、薄板状の把持部に広幅の部分と狭幅の部分を形成したり、薄板状の把持部の表・裏面に適宜なパターンで滑り止め用の凹凸形状を形成することもできる。
【実施例
【0044】
以下に本発明の実施例を図1図3に基づいて説明する。本発明の技術的範囲は以下の実施例によって限定されない。
【0045】
まず、本実施例に係る塗布具1の構成を図1、2に基づいて説明する。
本実施例の塗布具1は全体が厚さ約5mmの薄板状に形成されており、図1、2の上下方向の長さが約18cmである。塗布具1の先端側の部分には櫛部2とブラシ部3を設けており、櫛部2の先端部からはスライス棒4を突出させている。また、櫛部2(あるいは櫛部2とブラシ部3を設けた部位)の後端部からはハンドル部5を延長形成している。塗布具1は、ブラシ部3を除いてプラスチック製の一体成形品である。図1、2では塗布具1をシンプルに図示しているが、塗布具1の適宜な部分には意匠性や取扱い性を考慮して種々の凹凸形状や薄肉部/厚肉部を形成することができる。
【0046】
櫛部2では、図2に示すように、千鳥状に規則的に配列された多数の櫛歯6を突出させている。多数の櫛歯6を突出させた部分の全長は約50mmである。多数の櫛歯6の高さは18~20mm程度の範囲内であるが、各櫛歯6の高さは同一ではなく、図1に示すように、櫛歯6の頂端を結ぶ線が凹円弧状の湾曲線αを形成する構成となっている。そして各櫛歯6の直線状の基底部を基準として湾曲線αを見たとき、湾曲線αの底の部分である底点ポイントAは櫛部2の長手方向の中央部よりも10mmほど先端部側に偏って位置している。
【0047】
ブラシ部3は、塗布具1の長手方向の中心線に対して櫛部2とほぼ線対称の形態で形成されている。ブラシ部3はブラシ毛を集束して植毛させた複数ないし多数のブラシ毛束7を備える。ブラシ毛束7は櫛部2の櫛歯6の突出方向とは略反対方向へ向けて植毛されており、ブラシ毛の毛足の長さは約25mmである。図1では、各ブラシ毛束7における集束されたブラシ毛の長さが揃えてあるような図示であるが、ブラシ毛束7においてブラシ毛の長さをある程度までランダムにバラ付かせても良い。
前記した全体的に厚さ約5mmとした薄板状の塗布具1に対して、ブラシ部3における多数のブラシ毛束7を植毛させた基底部は、植毛に対する支持強度を確保する観点から、相対的に厚肉である厚さ約7~8mmとしても良い。
【0048】
スライス棒4は、櫛部2における最先端の櫛歯6よりも数mm離隔した部位から、櫛歯6の突出方向に対して約20°開いた角度方向へ、ほぼ20mmの長さで突出している。その結果、スライス棒4の頂端は、櫛部2の最先端の櫛歯6から少し(約1.5cm)離れて位置しており、かつ、櫛歯6の突出方向の高さにおいて最先端の櫛歯6よりも約1mm低い。
【0049】
櫛部2の後端部から櫛部の長手方向沿いに延長形成したハンドル部5の長さは約10cmであり、握持の容易性や、更には櫛部2とブラシ部3を使い分ける際の同じ片手による握り直しの確実性を考慮して、図示するように広幅の部分と狭幅の部分を波形に繰り返す平面形状を備える。
【0050】
次に、本実施例に係る塗布具1のセルフ使用における使用状態を図3に基づいて説明する。図3は使用状態の概要を示すものであって、以下の具体的説明の詳細な部分は示していない。
【0051】
使用者は、例えば利き手である片手で塗布具1のハンドル部5を握り、頭髪のスライス取りを行う。その際には、スライス棒4を突出させた櫛部2が自らの頭部に対向し易いような握りかたで塗布具1を把持することになる。そして、スライス棒4の頂端を頭部におけるスライス取りしたい部分の頭皮に接触させた状態で、その頂端をブロッキングする予定の分け目沿いに移動(分け目移動)させてスライス取りを行い、分け目の頭髪を根元部分から露出させる。
【0052】
なお、スライス棒4の頂端は、櫛歯6の突出方向の高さにおいて最先端の櫛歯6よりも約1mm低いので、上記のスライス取りの際には、スライス棒4の頂端を頭皮に接触させるために、例えば、スライス棒4を先端とする塗布具1を頭部の接触面に対して2~25°程度、より好ましくは2~20°程度の角度で少しだけ立てた姿勢として当接させることができる。この角度が例えば30°のように過剰に大きいと、次に述べる櫛部2の櫛歯6による頭髪の分け目の保持を確保し難くなる。
【0053】
また、スライス棒4の分け目移動の際、塗布具1が頭部に対して上記の角度で少しだけ立てた姿勢である限り、全体として薄板状である塗布具1の平面が頭皮面に対して垂直に立っていても、斜めに寝ていても、構わない。
【0054】
このようなスライス取りにおける分け目移動の際には、スライス棒4の頂端が通過した直後に、スライス棒4の頂端から少し(約1.5cm)離れて櫛部2の櫛歯6が追従移動するので、使用者の頭髪がショートヘアであっても、理論的には1.5cm以下のショートヘアでない限り、櫛部の櫛歯が引き続き頭髪の分け目をそのまま保持する。従って、スライス棒の通過後に頭髪がスライス棒の拘束を脱することによりブロッキングの分け目が崩れるという不具合が起こらない。なお、櫛部2の櫛歯6はスライス棒4の頂端から少し離れているので、櫛部2の櫛歯6はスライス棒4によるスライス取りの操作自体の邪魔にはならない。
【0055】
特に櫛歯6の頂端を結ぶ湾曲線αが凹円弧状であり、その底点ポイントAが櫛部2の長手方向の中央部よりも10mmほど先端部側に偏って位置するので、上記のスライス取りの効果が一層確保され易い。
【0056】
上記の操作によりスライス取りを行った後、ブロッキングの分け目の頭髪を手で押えたりクリップで留めたりしてから、塗布具1のブラシ部3に毛髪化粧料を乗せて、ブロッキングの分け目の頭髪に塗布する。次に、塗布具1の櫛部2を用いて、頭髪の分け目表面に塗布した毛髪化粧料を頭髪の内部まで梳き込む。その際、スライス棒4の頂端は櫛歯6の突出方向の高さにおいて櫛歯6よりも約1mm低いので、櫛部2による梳き込み作業の邪魔にならない。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明によれば、ショートヘアのユーザーでも、又はロングヘアのユーザーであるがスライス取りに未熟な場合でも、セルフによる良好なスライス取りが容易である毛髪化粧料塗布具が提供される。

図1
図2
図3