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  • 特許-便蓋用シート 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-01
(45)【発行日】2022-09-09
(54)【発明の名称】便蓋用シート
(51)【国際特許分類】
   A47K 13/14 20060101AFI20220902BHJP
【FI】
A47K13/14
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2017040534
(22)【出願日】2017-03-03
【基礎とした実用新案登録】
【原出願日】2016-09-08
(65)【公開番号】P2018038782
(43)【公開日】2018-03-15
【審査請求日】2019-08-26
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】504371756
【氏名又は名称】株式会社大同
(74)【代理人】
【識別番号】100090985
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 幸雄
(74)【代理人】
【識別番号】100206302
【弁理士】
【氏名又は名称】落志 雅美
(72)【発明者】
【氏名】大同 徹
【審査官】広瀬 杏奈
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3051299(JP,U)
【文献】特開2014-230582(JP,A)
【文献】特開2009-207656(JP,A)
【文献】特開2013-252448(JP,A)
【文献】登録実用新案第3144564(JP,U)
【文献】特開2007-130029(JP,A)
【文献】特開2005-152207(JP,A)
【文献】特開2004-097298(JP,A)
【文献】実公平06-042555(JP,Y2)
【文献】米国特許第05193229(US,A)
【文献】中国特許出願公開第104983354(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47K 13/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
洋式トイレの便器の蓋上面に剥脱可能に貼着して使用される便蓋用シートであって、
基材の表面に、任意の着色を施した装飾用図柄を有して光触媒を含有した短いパイルが植設され、前記基材の裏面に補強層を介して剥脱可能に積層された粘着層を有し、前記便蓋用シートは前記粘着層によって、前記便蓋の上面で当該便蓋の上面の形状に影響を受けずに貼着位置を調整可能としたことを特徴とする便蓋用シート。
【請求項2】
前記短いパイルが、アクリル、綿、ポリエステル又はナイロンのいずれかの繊維で製造されたものであることを特徴とする請求項1に記載の便蓋用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洋式トイレの便器の蓋の上面に剥脱可能に貼着されて使用される便蓋用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、腰掛け型トイレ、いわゆる洋式トイレは、便座部分や便蓋にカバーを装着して使用されることが多い。例えば、便座部分のカバーは、着座時に肌が便座に直接触れるのを防止するとともに、汚れた場合には取り外して洗濯が可能であることから、家庭のトイレでは広く使われている。
また、便蓋用カバーは、便蓋上面の損傷を防止するとともに、殺風景なトイレ内の雰囲気を明るくしたり、華やかにするために使用されることが多い。その形状としては、便蓋の裏面まで便蓋をすっぽりと被覆するタイプや、折り返し部を備え便蓋の周縁部を包み込むようにして装着するタイプ、さらには、便蓋下面にゴム紐や吸盤などを介して装着するタイプ等がある。
便座部分のカバーは、便座が概ねO型とU型のいずれかで形成されているため、ある程度の伸縮性を備えた素材であれば装着が可能である。一方、便蓋用のカバーは、上記のようなタイプ構造であるため、便蓋の形状とほぼ同形状に形成することによって、しっかりと装着できるものとなる。
そして便蓋は、製造メーカーや同メーカーでも型式によって形状や厚みなどが異なるため、当該便蓋のカバーは、主要な便蓋の形状に合わせてそれぞれ製品化されており、使用者は、自己が使用しているトイレの便蓋の形状に適合するカバーを選択して購入し装着している。
【0003】
しかし、上記のように各便蓋の形状に適合するカバーを装着した場合でも、便蓋をすっぽりと被覆するタイプや、折り返し部で便蓋の周縁部を包み込むようにして装着するタイプは、便蓋の上面全体を覆うため、便蓋を開ける際に便蓋が重かったり、カバー素材の厚みが邪魔になり、便蓋の開蓋状態を維持できず、閉じてしまうという問題があり、使用時、特に男性の小用の場合など便蓋の先端を手で押さえて対応する事態を招いていた。
このような事態を解消するため、便蓋の開蓋状態を阻害しないように構成された便蓋用のカバーが考案されている。
例えば、実公平06-42555号公報において、「蓋基部において回動開閉可能に支持された便器蓋の表側を覆うための表被覆部を備えてなる便器蓋カバーであって、基布の表側のうち、便器蓋開蓋状態において便器蓋が支持されるカバー基部付近に、パイルが植設されていない無パイル部を有し、それ以外の部分は、パイルが植設されている有パイル部であることを特徴とする便器蓋カバー。」が開示されている。
このような構成とすることで、便蓋の開蓋状態を保つに十分な角度を得ることができ、この便蓋用カバーによっては、便蓋の開閉が阻害されないようになる。
【0004】
一方、近年洋式トイレの進歩はめまぐるしく、従来の機能に加え、さらに様々な機能が付加され使いやすくなるとともに、トイレ自体を家具のごとく見立て、デザイン性の高いスタイリッシュな外観を備えたトイレが数多く生産されている。
そして、それに合わせて便蓋の形状も多種多様となってきている。
特に最近では自動開閉の便蓋が普及し、その構造上従来の便蓋とは形状を異にする。
そのため、従来の便蓋用カバーは使用できず、無理に装着したとしても不格好になってしまうので、新たに適合するものを選択し購入しなければならない。
また、便蓋用のカバーの製造メーカーは、新しく販売されるトイレごとにカバーの形状が適合するか確認が必要となり、従来のカバーでは適合しない場合には、設計変更を余儀なくされる。
【0005】
このような問題に対して、便蓋の上面に貼着するシートが提供されている。
例えば、特開2005-152207号公報には、「腰掛け式便器の便蓋に貼り付ける便蓋用シートであって、装飾用の図案が表面に印刷された基層と、前記基層の裏面側に積層された、前記便蓋に対して再剥離および再付着が可能な粘着性を有する再剥離性粘着層と、を有することを特徴とする便蓋用シート。」が開示されている。
上記便蓋用シートは、基層に薄い樹脂シートや、紙、アクリル板などが採用され、軽量なためその重みは便蓋の開閉に負担にならず、また、厚さも薄いため便蓋の開蓋状態を阻害することはない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】実公平06-42555号公報
【文献】特開2005-152207号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記便蓋用シートは、基層に印刷された装飾用の図案により、トイレ個室内を華やかにするものの、樹脂シートや紙等からなり、体裁のよさに欠ける。
本発明は、上記従来技術の問題点に鑑み、便蓋の開閉時に重さを感じるほどの重さを有することなく、また、便蓋の開蓋状態において便蓋が倒れてくることのない十分な角度が得られ、かつ便蓋の形状に大きく影響を受けることがなく、さらに上品な風合いを備え、誰でも容易に洗濯できる便蓋用シートを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は上記課題を下記の手段により解決した。
(1)洋式トイレの便器の蓋上面に剥脱可能に貼着して使用される便蓋用シートであって、
基材の表面に短いパイルが植設され、前記基材の裏面に補強層を介して剥脱可能に積層された粘着層を有し、前記便蓋用シートは前記粘着層によって、前記便蓋の上面で、当該便蓋の上面形状に影響を受けず、位置を調整して貼着されることを特徴とする便蓋用シート。
(2)前記短いパイルが、アクリル、綿、ポリエステル又はナイロンのいずれかの繊維で製造されたものであることを特徴とする前記(1)に記載の便蓋用シート。
(3)前記短いパイルが植設された基材が、不織布であることを特徴とする前記(1)又は(2)に記載の便蓋用シート。
(4)前記(1)~(3)のいずれか1に記載の便蓋用シートが、表面に光触媒が坦持されてなるものであることを特徴とする便蓋用シート。
【発明の効果】
【0009】
本発明の便蓋用シートによって、下記の効果が発揮される。
(1)本発明の便蓋用シートは、洋式トイレの便器の蓋上面に剥脱可能に貼着されて使用される便蓋用シートであって、表面に短いパイルが植設された基材の裏面に剥離可能な粘着機能を有する粘着層が積層されてなるので、便蓋の開閉に負担になるほどの重みを加えることなく便蓋上面に装着することができ、かつ便蓋の開蓋状態を保持することができ、さらに前記基材の表面が短いパイルが植設されて構成されているので、暖かみのある華やかな図柄や上品な色彩のデザインを採用することができる。
(2)また、前記短いパイルは、アクリル、綿、ポリエステル又はナイロンのいずれかの繊維とすることができ、前記短いパイルが植設された基材を不織布とすることができるので、自由に着色が可能となり任意のデザインで装飾することができるとともに、洗濯も可能であり、使い捨てにならず環境にも優しい便蓋用シートとなる。
(3)さらに、前記便蓋用シートが、表面に光触媒が担持されて構成すれば、脱臭や抗菌効果及び防汚効果を備えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は本発明の便蓋用シートの構成図である。
図2図2は本発明の便蓋用シートの断面図である。
図3図3は本発明の便蓋用シートの使用状態の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の便蓋用シートの実施例を図に基づいて説明する。
図1は本発明の便蓋用シートの構成図、図2は本発明の便蓋用シート断面図、図3は本発明の便蓋用シートの使用状態の説明図である。
図中、1は便蓋用シート、2はパイル、3は基材、4は粘着層、5はトイレ、10は便蓋用シートの表面側、11は便蓋用シートの裏面側、40は補強層、101は装飾用図柄である。
【0012】
本発明の便蓋用シート1は、腰掛け型トイレ、いわゆる洋式トイレの便器の蓋上面に剥脱可能に貼着されて使用される便蓋用シートである。本発明において、該洋式トイレとしては、通常の洋式トイレの他、腰掛け型のポータブルトイレや、和式トイレの上に、腰掛け用に簡易設置して用いられるもの等であってもよく、本発明にかかる便蓋用シートは、便蓋であれば、あらゆる形状のものに使用できる構造となっている。
図1は本発明の便蓋用シートの構成図、図2は本発明の便蓋用シートの断面図である。
本発明にかかる便蓋用シート1は、図1(a)、(b)及び図2(a)に示すように、基材3の表面側10に短いパイル2が植設され、前記基材3の裏面側11に便蓋上面に剥脱可能な粘着機能を有する粘着層4が積層されてなる。
また、図2(b)のように、基材3の表面側10に短いパイル2が植設され、前記基材3の裏面側11に補強層40を介して、粘着層4を積層したものであってもよい。このような補強層40を介することで、全体に張りをもたすことができる。
【0013】
前記基材3に植設されるパイル2は、パイル2を構成することができる材料であれば、特に限定されるものではなく、例えばアクリル、綿、ポリエステル又はナイロンなどで構成することができる。またパイル2の太さや長さは、材質の特徴に合わせて風合いや肌触りを考慮して、適宜選択できる。そして、前記基材3としては、パイル2を植設することができる材料を選択することができ、例えば、不織布を採用すると、丈夫でかつ洗濯可能となる。
本発明の便蓋用シート1は、その基材3の表面側10に短いパイル2を植設して構成されることを特徴とし、該パイル2に任意の着色を施すことにより、柔らかい風合いの装飾を施すことができる。
したがって、図3の本発明の便蓋用シートの使用状態の説明図に示すように、任意の着色を施したパイルによって、花柄や模様等を描いて装飾用図柄101を構成し、便蓋上面を暖かみのある華やかな図柄や上品な色彩で飾ることができ、トイレ内の雰囲気やデザイン性を向上させることができる。
【0014】
また、本発明の便蓋用シート1の基材3の裏面側11には、粘着層4が積層されている。
該粘着層4は、該便蓋用シート1を便蓋上面に剥脱可能とする粘着機能を有するものである。粘着材としては、便蓋上面に何度でも剥脱可能なものであればよく、例えば、シリコン樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタンや塩化ビニルなどを選択することができ、特にシリコン樹脂やアクリル樹脂で構成すると、しっかりと便蓋上面に粘着させることができ、かつ容易に剥がすこともでき、かつ剥離後の便蓋上面に粘着材が残存することもなく好適である。
また、便蓋用シート1の裏面側11の粘着層4は、全面を粘着面とし長時間の使用にあたって剥離してめくれる不都合をなくしたり、あるいは粘着材を筋状に配設し剥離時に剥がしやすく構成したりすることも好ましい。
【0015】
なお、前記便蓋用シート1の表面には、光触媒を担持させてもよい。例えば、パイル2の植設後に光触媒を塗布したり、あるいはパイル2自体に光触媒を含有させてもよい。
【0016】
上記のごとく構成される本発明の便蓋用シート1は、便蓋上面に、貼着して使用されるものであることから、便蓋の形状に影響を受けず、いずれの形状の便蓋にも貼着することができ、購入時に特段の注意を払う必要もなく、また、製造メーカーもトイレの設計変更のたびに、その形状を検討する等の必要もない。
また、上記構成により、パイル2は上面にのみ植設され、便蓋の開閉に負担になるほどの重みはなく、さらに、パイル2の長さや太さを任意に調整でき、さらに貼着する位置も調整できるので、便蓋の開蓋状態の保持を阻害することもなく、トイレ内を華やかに装飾することができるものとなっている。
そして、本発明の便蓋用シート1は、便蓋の細かい形状に拘束されることなく、ほとんどの便蓋に使用することができるので、トイレ内の他のカバーやマットなどと統一感のあるデザインで構成した場合でも、トイレの形状に限定されることなく使用することができる。
さらに、前記便蓋用シート1の表面に光触媒を担持されて構成することもできるので、脱臭や抗菌効果及び防汚効果を備えることができる。
【符号の説明】
【0017】
1 便蓋用シート
2 パイル
3 基材
4 粘着層
5 トイレ
10 便蓋用シートの表面側
11 便蓋用シートの裏面側
40 補強層
101 装飾用図柄
図1
図2
図3