(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-01
(45)【発行日】2022-09-09
(54)【発明の名称】アンテナポジショナ、不要輻射電磁波測定システムおよび不要輻射電磁波の測定方法
(51)【国際特許分類】
G01R 29/08 20060101AFI20220902BHJP
H01Q 1/12 20060101ALI20220902BHJP
H01Q 3/08 20060101ALI20220902BHJP
【FI】
G01R29/08 D
H01Q1/12 E
H01Q3/08
(21)【出願番号】P 2017236743
(22)【出願日】2017-12-11
【審査請求日】2020-11-24
(31)【優先権主張番号】201711106073.9
(32)【優先日】2017-11-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】000199201
【氏名又は名称】千蔵工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000626
【氏名又は名称】弁理士法人英知国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】潘 海▲豊▼
(72)【発明者】
【氏名】木村 一夫
(72)【発明者】
【氏名】▲登▼ 正光
【審査官】永井 皓喜
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-25795(JP,A)
【文献】特開2013-243586(JP,A)
【文献】特開2017-125819(JP,A)
【文献】特開2009-58460(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0005670(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0223559(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 29/08
G01R 29/10
H01Q 1/12
H01Q 3/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
柱体と、
前記柱体に沿って昇降する昇降体と、
前記昇降体に対して水平軸回りに回動可能に取付けられたアンテナ取付アームと、
前記アンテナ取付アームに配設され、アンテナ取付部を含むアンテナアダプタと、
前記柱体の近傍に固定され、所定の形状のカム面が形成されたカム板と、
前記アンテナ取付アーム
の前記アンテナアダプタの近傍に配設され
、前記水平軸回りに前記アンテナ取付アームと共に回動する接触子と、を有し、
前記アンテナ取付アーム
は、前記昇降体の昇降時に前記接触子が前記カム面に接触しながら移動することにより、前記昇降体の昇降に応じて前記アンテナ取付アームが回動
し、
前記昇降体が所定の高さの範囲内にあるとき、前記昇降体が上昇すると、前記アンテナ取付アームが回動して前記アンテナ取付部の俯角が大きくなるアンテナポジショナ。
【請求項2】
柱体と、
前記柱体に沿って昇降する昇降体と、
アンテナ取付アームと、を有し、
前記アンテナ取付アームは前記昇降体に対して水平軸回りに回動可能に取付けられ、前記昇降体の昇降に応じて前記アンテナ取付アームが回動し、
前記アンテナ取付アームには、アンテナ取付部を含むアンテナアダプタが配設され、
前記昇降体が所定の高さの範囲内にあるとき、前記昇降体が上昇すると、前記アンテナ取付アームが回動して前記アンテナ取付部の俯角が大きくなり、
前記アンテナ取付アームに対して前記アンテナアダプタは、前記アンテナ取付部の中心軸回りに回転可能とされ、
前記昇降体が前記所定の高さの範囲内において、前記アンテナアダプタが所定の回転位置にあるとき、前記昇降体が前記所定の高さの範囲を超えて第1の高さまで移動すると、前記アンテナアダプタが回転し、
その後前記昇降体が前記所定の高さの範囲内に戻るときは、前記アンテナアダプタは回転しないアンテナポジショナ。
【請求項3】
前記所定の高さの範囲内において、決められた全ての測定高さのうち最下の測定高さを除く測定高さ近傍における前記昇降体の高さ変化に対する前記アンテナ取付部の俯角変化率が、前記所定の高さの範囲内の前記昇降体の高さ変化に対する前記アンテナ取付部の俯角変化率の平均値よりも大きい請求項
1又は
2に記載のアンテナポジショナ。
【請求項4】
前記アンテナ取付アームに対して前記アンテナアダプタは、前記アンテナ取付部の中心軸回りに回転可能とされた請求項
1に記載のアンテナポジショナ。
【請求項5】
前記昇降体が前記所定の高さの範囲内において、前記アンテナアダプタが所定の回転位置にあるとき、前記昇降体が前記所定の高さの範囲を超えて第1の高さまで移動すると、前記アンテナアダプタが回転し、
その後前記昇降体が前記所定の高さの範囲内に戻るときは、前記アンテナアダプタは回転しない請求項
4に記載のアンテナポジショナ。
【請求項6】
柱体と、
前記柱体に沿って昇降する昇降体と、
アンテナ取付部を含むアンテナアダプタと、を有し、
前記アンテナアダプタは前記昇降体に対して、前記アンテナ取付部の中心軸回りに回転可能に取付けられ、
前記昇降体が所定の高さの範囲内において前記アンテナアダプタが所定の回転位置にあるとき、前記昇降体が前記所定の高さの範囲を超えて第1の高さまで移動すると、前記アンテナアダプタが回転し、
その後昇降体が前記所定の
高さの範囲内に戻るときは、前記アンテナアダプタは回転しないアンテナポジショナ。
【請求項7】
前記昇降体が前記所定の高さの範囲内に戻った後、前記昇降体が前記所定の高さの範囲を前回と反対方向に超えて第2の高さまで移動すると、前記アンテナアダプタが前回と逆方向に回転し、
その後前記昇降体が前記所定の高さの範囲内に戻るときは、前記アンテナアダプタは回転しない請求項
2、5、6のいずれか一項に記載のアンテナポジショナ。
【請求項8】
前記アンテナアダプタに配設された切替レバーと、
前記昇降体が前記所定の高さの範囲を超えて前記第1の高さまで移動するとき、前記切替レバーに作用して前記アンテナアダプタを回転させる第1の切替カムと、を更に有する請求項
2、5、6のいずれか一項に記載のアンテナポジショナ。
【請求項9】
前記アンテナアダプタに配置された切替レバーと、
前記昇降体が前記所定の高さの範囲を超えて前記第2の高さまで移動するとき、前記切替レバーに作用して前記アンテナアダプタを回転させる第2の切替カムを更に有する請求項
7に記載のアンテナポジショナ。
【請求項10】
前記昇降体を昇降させるモータと、
前記昇降体の所定の基準高さからの高さ変化を検出する検出部と、
前記検出部の検出結果に基づいて前記モータを駆動して、前記昇降体の昇降を制御するコントローラと、を更に有する請求項1乃至
9に記載のアンテナポジショナ。
【請求項11】
柱体と、
前記柱体に沿って昇降する昇降体と、
前記昇降体に対して水平軸回りに回動可能に取付けられたアンテナ取付アームと、
アンテナ取付部を含み、前記アンテナ取付アームに対して前記アンテナ取付部の中心軸回りに回転可能に取付けられたアンテナアダプタと、を有し、
前記昇降体を昇降させるだけで、前記アンテナ取付部の高さと、前記アンテナ取付部の俯角と、前記アンテナ取付部の中心軸回りの回転角を変えられるアンテナポジショナ。
【請求項12】
被測定機器を回転させるターンテーブルと、アンテナと、アンテナポジショナと、を含む不要輻射電磁波測定システムであって、
前記アンテナポジショナは、柱体と、前記柱体に沿って昇降する昇降体と、前記昇降体に対して水平軸回りに回動可能に取付けられたアンテナ取付アームと、前記アンテナ取付アームに配設されアンテナ取付部を含むアンテナアダプタと、を有し、
前記アンテナは前記アンテナポジショナの前記アンテナ取付部に取付けられ、
前記昇降体が所定の高さの範囲内にあるとき、前記昇降体が上昇すると、前記アンテナ取付アームが回動して前記アンテナの俯角が大きくなり、前記所定の高さの範囲内の決められた全ての測定高さにおいて、前記アンテナが前記被測定機器の方向に向き、
前記アンテナ取付アームに対して前記アンテナアダプタは前記アンテナ取付部の中心軸回りに回転可能とされており、
前記昇降体が前記所定の高さの範囲内において前記アンテナの偏波角が所定の状態にあるとき、前記昇降体が前記所定の高さの範囲を超えて第1の高さまで移動すると前記アンテナアダプタが回転して前記アンテナの偏波角が切替えられ、
その後前記昇降体が所定の高さの範囲内に戻るときは、前記アンテナアダプタは回転せず、前記アンテナの偏波角は切替えられた状態を維持する不要輻射電磁波測定システム。
【請求項13】
被測定機器を回転させるターンテーブルと、アンテナと、アンテナポジショナと、を含む不要輻射電磁波測定システムであって、
前記アンテナポジショナは、柱体と、前記柱体に沿って昇降する昇降体と、前記昇降体に対して水平軸回りに回動可能に取付けられたアンテナ取付アームと、
前記アンテナ取付アームに配設されアンテナ取付部を含むアンテナアダプタと、前記柱体の近傍に固定され、所定の形状のカム面が形成されたカム板と、前記アンテナ取付アーム
の前記アンテナアダプタの近傍に配設され
、前記水平軸回りに前記アンテナ取付アームと共に回動する接触子と
、を有し、
前記アンテナは前記アンテナポジショナの前記アンテナ取付部に取付けられ、
前記昇降体が所定の高さの範囲内にあるとき、前記昇降体が上昇すると前記接触子が前記カム面に接触しながら移動することにより、前記アンテナ取付アームが回動して前記アンテナの俯角が大きくなり、前記所定の高さの範囲内の決められた全ての測定高さにおいて、前記アンテナが前記被測定機器の方向に向く不要輻射電磁波測定システム。
【請求項14】
前記決められた全ての測定高さのうち最下の測定高さを除く測定高さ近傍における前記昇降体の高さ変化に対する前記アンテナの俯角変化率が、前記所定の高さの範囲内の前記昇降体の高さ変化に対する前記アンテナの俯角変化率の平均値よりも大きく、
前記測定高さ近傍で前記昇降体を昇降させることにより、前記アンテナの基準点の高さを略一定のまま被測定機器へのアンテナの向きの調整を可能とした請求項
12又は
13に記載の不要輻射電磁波測定システム。
【請求項15】
前記アンテナ取付アームに対して前記アンテナアダプタは前記アンテナ取付部の中心軸回りに回転可能とされており、
前記昇降体が前記所定の高さの範囲内において前記アンテナの偏波角が所定の状態にあるとき、前記昇降体が前記所定の高さの範囲を超えて第1の高さまで移動すると前記アンテナアダプタが回転して前記アンテナの偏波角が切替えられ、
その後前記昇降体が所定の高さの範囲内に戻るときは、前記アンテナアダプタは回転せず、前記アンテナの偏波角は切替えられた状態を維持する請求項
13に記載の不要輻射電磁波測定システム。
【請求項16】
被測定機器を回転させるターンテーブルと、アンテナと、アンテナポジショナと、を含む不要輻射電磁波測定システムであって、
前記アンテナポジショナは、柱体と、前記柱体に沿って昇降する昇降体と、前記昇降体に対して水平軸回りに回動可能に取付けられたアンテナ取付アームと、アンテナ取付部を含み前記アンテナ取付アームに対して前記アンテナ取付部の中心軸回りに回転可能に取付けられたアンテナアダプタと、を有し、
前記アンテナは前記アンテナポジショナの前記アンテナ取付部に取付けられ、
前記昇降体の昇降に応じて、前記アンテナ取付アームが回動するとともにアンテナアダプタが回転することを特徴とし、
前記昇降体を昇降させることにより、前記アンテナの高さと、前記アンテナの俯角と、前記アンテナの偏波角を変えられる不要輻射電磁波測定システム。
【請求項17】
被測定機器を回転させるターンテーブルと、アンテナと、アンテナポジショナと、を用いた被測定機器からの不要輻射電磁波の測定方法であって、
前記アンテナポジショナは、柱体と、前記柱体に沿って昇降する昇降体と、前記昇降体に対して水平軸回りに回動可能に取付けられたアンテナ取付アームと、前記アンテナ取付アームに配設されアンテナ取付部を含むアンテナアダプタと、を有し、前記アンテナ取付アームに対して前記アンテナアダプタが前記アンテナ取付部の中心軸回りに回転可能とされており、前記アンテナは前記アンテナポジショナの前記アンテナ取付部に取付けられ、前記昇降体が所定の高さの範囲内にあるとき、前記昇降体が上昇すると前記アンテナ取付アームが回動して前記アンテナの俯角が大きくなり、前記所定の高さの範囲内の決められた全ての測定高さにおいて、前記アンテナが前記被測定機器の方向に向き、前記昇降体が前記所定の高さの範囲内において前記アンテナの偏波角が所定の状態にあるとき、前記昇降体が前記所定の高さの範囲を超えて第1の高さまで移動すると前記アンテナアダプタが回転して前記アンテナの偏波角が切替えられ、その後前記昇降体が所定の高さの範囲内に戻るときは、前記アンテナアダプタは回転せず、前記アンテナの偏波角は切替えられた状態を維持することを特徴とし、
前記昇降体を昇降させることにより、前記決められた全ての測定高さにおいて前記アンテナを前記被測定機器の方向に向けて測定し、
前記アンテナの偏波角が所定の状態にあるとき、前記昇降体を前記第1の高さまで移動させて前記アンテナの偏波角を切替え、偏波角の切替え前後に前記決められた全ての測定高さにおいて前記アンテナを前記被測定機器の方向に向けて測定する不要輻射電磁波の測定方法。
【請求項18】
被測定機器を回転させるターンテーブルと、アンテナと、アンテナポジショナと、を用いた被測定機器からの不要輻射電磁波の測定方法であって、
前記アンテナポジショナは、柱体と、前記柱体に沿って昇降する昇降体と、前記昇降体に対して水平軸回りに回動可能に取付けられたアンテナ取付アームと、
前記アンテナ取付アームに配設されアンテナ取付部を含むアンテナアダプタと、前記柱体の近傍に固定され、所定の形状のカム面が形成されたカム板と、前記アンテナ取付アーム
の前記アンテナアダプタの近傍に配設され
、前記水平軸回りに前記アンテナ取付アームと共に回動する接触子と
、を有し、前記アンテナは前記アンテナポジショナの前記アンテナ取付部に取付けられ、前記昇降体が所定の高さの範囲内にあるとき、前記昇降体が上昇すると前記接触子が前記カム面に接触しながら移動することにより、前記アンテナ取付アームが回動して前記アンテナの俯角が大きくなり、前記所定の高さの範囲内の決められた全ての測定高さにおいて、前記アンテナが前記被測定機器の方向に向くことを特徴とし、
前記昇降体を昇降させることにより、前記決められた全ての測定高さにおいて前記アンテナを前記被測定機器の方向に向けて測定する不要輻射電磁波の測定方法。
【請求項19】
前記アンテナポジショナは、前記決められた全ての測定高さのうち最下の測定高さを除く測定高さ近傍における前記昇降体の高さ変化に対する前記アンテナの俯角変化率が、前記所定の高さの範囲内の前記昇降体の高さ変化に対する前記アンテナの俯角変化率の平均値よりも大きいことを特徴とし、
前記測定高さ近傍で前記昇降体を昇降させることにより、前記アンテナの基準点の高さを略一定のまま被測定機器へのアンテナの向きを調整して測定する請求項
17又は
18に記載の不要輻射電磁波の測定方法。
【請求項20】
前記アンテナポジショナは、前記アンテナ取付アームに対して前記アンテナアダプタが前記アンテナ取付部の中心軸回りに回転可能とされており、前記昇降体が前記所定の高さの範囲内において前記アンテナの偏波角が所定の状態にあるとき、前記昇降体が前記所定の高さの範囲を超えて第1の高さまで移動すると前記アンテナアダプタが回転して前記アンテナの偏波角が切替えられ、その後前記昇降体が所定の高さの範囲内に戻るときは、前記アンテナアダプタは回転せず、前記アンテナの偏波角は切替えられた状態を維持することを特徴し、
前記アンテナの偏波角が所定の状態にあるとき、前記昇降体を前記第1の高さまで移動させて前記アンテナの偏波角を切替え、偏波角の切替え前後に前記決められた全ての測定高さにおいて前記アンテナを前記被測定機器の方向に向けて測定する請求項
18に記載の不要輻射電磁波の測定方法。
【請求項21】
被測定機器を回転させるターンテーブルと、アンテナと、アンテナポジショナと、を用いた被測定機器からの不要輻射電磁波の測定方法であって、
前記アンテナポジショナは、柱体と、前記柱体に沿って昇降する昇降体と、前記昇降体に対して水平軸回りに回動可能に取付けられたアンテナ取付アームと、アンテナ取付部を含み前記アンテナ取付アームに対して前記アンテナ取付部の中心軸回りに回転可能に取付けられたアンテナアダプタと、を有し、前記アンテナは前記アンテナポジショナの前記アンテナ取付部に取付けられ、前記昇降体の昇降に応じて、前記アンテナ取付アームが回動するとともにアンテナアダプタが回転することを特徴とし、
前記昇降体を昇降させることにより、前記アンテナの高さと、前記アンテナの俯角と、前記アンテナの偏波角を変えて測定する不要輻射電磁波の測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器から発生する不要輻射電磁波を測定する装置と測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器からの不要輻射電磁波が、他の電子機器の誤動作の一因となっているため、電子機器には不要輻射電磁波の測定が義務付けられている。不要輻射電磁波の測定は、対象となる機器を電波暗室やオープンサイト内に配置し、被測定機器(EUT)が放射する電磁波をアンテナで受信して測定する。従来はEUTをターンテーブル上の試験台に置き、測定するアンテナの偏波角(アンテナの受波の中心軸回りに回転する角度)を水平と垂直に切替えるとともに、アンテナの俯角(アンテナの受波の中心軸の水平面に対する下向きの角度)はゼロのままでアンテナの高さを変えながら、ターンテーブルを回転させてEUTの全周に渡り測定していた。
【0003】
しかし近年、電子機器の小型化高速化に伴い、マイクロプロセッサ等の駆動周波数も高周波化し、発生する不要輻射電磁波も高周波化しているため、高周波帯域で正確な測定を行なうことが求められている。特に周波数1GHz以上の帯域での測定には広帯域のホーンアンテナが好適であるが、ホーンアンテナは鋭い指向性を有するため、測定の際には被測定機器に対してアンテナの高さを高くするほど、アンテナの俯角を大きくして、アンテナをEUTの方向に向ける必要が生じた。
【0004】
すなわち不要輻射電磁波の最大レベルを正確に知るためには、アンテナの高さと俯角と偏波角を変更しながら、様々な条件で多数回の測定を行なう必要がある。このためアンテナの高さと俯角と偏波角の設定を簡単に精度良く行なうことのできるアンテナポジショナが求められている。ただし、そのために追加した機構が電磁波を反射して不要輻射電磁波の測定精度を悪化させたり、アンテナポジショナのコストが大幅に高くならないことが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2007-58460号公報
【文献】特開2013-117388号公報
【文献】特開2016-19013号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1によれば、アンテナの高さ、仰角(俯角)、偏波角を独立に調整するため、ガイドポール(柱体)に沿って昇降するアンテナベース(昇降体)上のアンテナ近傍に、仰角調整用のモータと偏波角調整用のリニアアクチュエータを配設している。モータやリニアアクチュエータは金属を含んで構成されるため、金属部が電磁波を反射して測定に影響を与える他、それ自体が電磁波を放射して測定に影響を与えることもある。またモータやリニアアクチュエータを駆動するためのケーブル類が昇降体から垂下した状態でアンテナベースが昇降するため、ケーブル類が不安定な動きをして測定精度を劣化させる他、アンテナベースの動きを妨げてアンテナの角度精度を劣化させることもある。また重量の大きいモータやリニアアクチュエータが配設されたアンテナベースを単独のガイドポールのみで支持して昇降させるので、ガイドポールの強度不足によりアンテナの角度が不安定になりやすい。また高さ調整用のモータと、仰角調整用のモータと、偏波角調整用のリニアアクチュエータと、合わせて3個の駆動源を使用しているため、コストが高くなっている。
【0007】
特許文献2によれば、アンテナの高さ、仰角(俯角)、偏波角を調整するため、2つの柱材(柱体)に沿って昇降する2つの昇降体にアンテナ取付け用のフレーム体を取付け、2つの昇降体の高さの差によりアンテナの仰角を調整し、さらに一方の昇降体上を昇降するラックと噛合う一対のベベルギアでフレーム体上のアンテナ支持軸を回転させてアンテナの偏波角を調整している。この一対のベベルギアはアンテナの後方すぐ近傍に配設されていて、アンテナから見た投影面積も大きいため、ギアによる電磁波の反射が測定精度を劣化させてしまう。またアンテナの高さや仰角が調整されるとベベルギアも同時に回って偏波角も変化してしまうので、調整が複雑でアンテナの角度の精度も劣化しやすい。また高さと仰角調整用の2つのサーボモータと、偏波角調整用のサーボモータと、合わせて3個の駆動源を使用しているため、高コストとなっている。
【0008】
特許文献3によれば、アンテナの高さ、向き(俯角)、偏波角を調整するため、2つの柱材(柱体)に沿って昇降する2つの昇降体のそれぞれにアンテナの支持体を取付け、2つの昇降体の高さの差によりアンテナの向きを調整し、さらに一方の支持体上に配設したエアシリンダの直線運動をカムで回転運動に変換して支持体に取付けられたアンテナの偏波角を調整している。このエアシリンダはアンテナのすぐ近傍に配設されるため、電磁波を反射して測定精度を劣化させてしまう。またエアシリンダに空気を送るチューブが支持体から垂下した状態で昇降体が昇降するため、チューブが不安定な動きをしてアンテナの動きを妨げてアンテナの角度精度を劣化させることもある。また高さと向き調整用の2つのサーボモータと、偏波角調整用のコンプレッサと、合わせて3個の駆動源を使用しているため、高コストとなっている。
【0009】
本発明は上記のような従来事情に鑑み、1つのモータで1つの柱体に沿って1つの昇降体を昇降させるだけで、昇降体に取付けられるアンテナの高さ、俯角、偏波角の全てを簡単に調整できるとともに、アンテナのすぐ近傍に電磁波を反射する部材を配置する必要がないため測定精度に優れ、昇降体から垂下して不安定な動きをするケーブルやチューブの追加もないため測定安定性にも優れ、駆動源が昇降体を昇降させるモータ1個のみなので低コストをも実現できるアンテナポジショナ、不要輻射電磁波測定システム、不要輻射電磁波の測定方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するためになされた本発明の第1の特徴は、柱体と、前記柱体に沿って昇降する昇降体と、アンテナ取付アームと、を有し、前記アンテナ取付アームは前記昇降体に対して水平軸回りに回動可能に取付けられ、前記昇降体の昇降に応じて前記アンテナ取付アームが回動するアンテナポジショナである。
【0011】
第1の特徴のアンテナポジショナは、柱体に沿った昇降体の昇降に応じて昇降体に取付けられたアンテナ取付アームが水平軸回りに回動するので、アンテナ取付アームにアンテナを取付けた場合、昇降体を昇降させるだけでアンテナの高さに応じてアンテナの角度を変えることができる。
【0012】
第2の特徴は、第1の特徴に対し、さらに、前記アンテナ取付アームには、アンテナ取付部を含むアンテナアダプタが配設され、前記昇降体が所定の高さの範囲内にあるとき、前記昇降体が上昇すると、前記アンテナ取付アームが回動して前記アンテナ取付部の俯角が大きくなるアンテナポジショナである。
【0013】
第2の特徴によれば、アンテナ取付アームにアンテナ取付部を含むアンテナアダプタが取付けられるので、アンテナをアンテナ取付部に取付けた場合、昇降体の高さが不要輻射電磁波の測定範囲内においては、昇降体が上昇してアンテナが高くなるほど、アンテナの俯角が大きくなるので、アンテナの高さに依らずアンテナを略被測定機器の方向に向けることができる。
【0014】
第3の特徴は、第2の特徴に対し、さらに、前記所定の高さの範囲内において、決められた全ての測定高さのうち最下の測定高さを除く測定高さ近傍における前記昇降体の高さ変化に対する前記アンテナ取付部の俯角変化率が、前記所定の高さの範囲内の前記昇降体の高さ変化に対する前記アンテナ取付部の俯角変化率の平均値よりも大きいアンテナポジショナである。
【0015】
第3の特徴によれば、昇降体の高さが不要輻射電磁波の測定範囲内で離散的に決められた全ての測定高さのうち、最下でアンテナの俯角がゼロでよいとされた測定高さ以外の測定高さ近傍における昇降体の高さ変化に対するアンテナの俯角変化率が、測定範囲内における昇降体の高さ変化に対するアンテナの俯角変化率の平均値より大きい。従ってアンテナがアンテナ取付部に取付けられた場合、測定高さ近傍で昇降体を昇降させることにより、アンテナの基準点の高さを略一定としたまま、アンテナの俯角を変化させることができるので、アンテナの被測定機器への向きを微調整することができる。これにより、被測定機器がアンテナのビーム幅よりも大きい場合にも被測定機器全体からの不要輻射電磁波を測定できるようになる他、アンテナの主ローブの中心軸を被測定機器内で最大の不要輻射電磁波の放射源の方向に向けて測定することもできる。
【0016】
第4の特徴は、第1の特徴に対し、さらに、前記柱体の近傍に固定され、所定の形状のカム面が形成されたカム板と、前記アンテナ取付アーム上に配設された接触子と、を更に有し、前記昇降体の昇降時に前記接触子が前記カム面に接触しながら移動することにより、前記アンテナ取付アームが回動するアンテナポジショナである。
【0017】
第4の特徴によれば、昇降体の昇降時にアンテナ取付アーム上に配設された接触子が、柱体の近傍に固定されたカム板のカム面に接触しながら移動することでアンテナ取付アームを回動させるので、アンテナ取付アームのアンテナ取付部にアンテナを取付けた場合、昇降体の高さに応じたアンテナの俯角を、カム面の形状により自由に容易に安定的に決めることができる。
【0018】
第5の特徴は、第2の特徴に対し、さらに、前記アンテナ取付アームに対して前記アンテナアダプタは、前記アンテナ取付部の中心軸回りに回転可能とされたアンテナポジショナである。
【0019】
第5の特徴によれば、アンテナ取付アームに配設されアンテナ取付部を含むアンテナアダプタは、アンテナ取付アームに対してアンテナ取付部の中心軸回りに回転可能とされている。アンテナをアンテナアダプタを介してアンテナ取付アームに取付けた場合、アンテナ取付部の中心軸はアンテナの受波の中心軸と一致しているため、アンテナアダプタをアンテナ取付アームに対して回転させることでアンテナの偏波角を切替えることができる。
【0020】
第6の特徴は、第5の特徴に対し、さらに、前記昇降体が前記所定の高さの範囲内において、前記アンテナアダプタが所定の回転位置にあるとき、前記昇降体が前記所定の高さの範囲を超えて第1の高さまで移動すると、前記アンテナアダプタが回転し、その後前記昇降体が前記所定の高さの範囲内に戻るときは、前記アンテナアダプタは回転しないアンテナポジショナである。
【0021】
第6の特徴によれば、アンテナがアンテナアダプタを介してアンテナ取付アームに取付けられた場合、昇降体の高さが不要輻射電磁波の測定範囲内において、アンテナアダプタが所定の回転位置にありアンテナの偏波角が例えば垂直偏波の電磁波を測定する角度になっていたとして、昇降体が例えば測定範囲より低い第1の高さまで下降すると、アンテナアダプタが回転してアンテナの偏波角が水平偏波の電磁波を測定する角度に切替わり、その後昇降体が上昇して測定範囲内に戻るときは、アンテナアダプタは回転せずアンテナの偏波角は維持されるので、昇降体の高さを変えるだけでアンテナの偏波角を切替えることができる。
【0022】
第7の特徴は、柱体と、前記柱体に沿って昇降する昇降体と、アンテナ取付部を含むアンテナアダプタと、を有し、前記アンテナアダプタは前記昇降体に対して、前記アンテナ取付部の中心軸回りに回転可能に取付けられ、前記昇降体が所定の高さの範囲内において前記アンテナアダプタが所定の回転位置にあるとき、前記昇降体が前記所定の高さの範囲を超えて第1の高さまで移動すると、前記アンテナアダプタが回転し、その後昇降体が前記所定の範囲内に戻るときは、前記アンテナアダプタは回転しないアンテナポジショナである。
【0023】
第7の特徴によれば、アンテナ取付部を含むアンテナアダプタが、昇降体に対してアンテナ取付部の中心軸回りに回転可能に配設されているので、アンテナがアンテナアダプタを介して昇降体に取付けられた場合、アンテナアダプタを昇降体に対して回転させることでアンテナの偏波角を切替えることができる。また昇降体の高さが不要輻射電磁波の測定範囲内において、アンテナアダプタが所定の回転位置にありアンテナが例えば垂直偏波電磁波を測定する姿勢になっていたとして、昇降体が例えば測定範囲より低い第1の高さまで下降すると、アンテナアダプタが回転してアンテナが垂直偏波電磁波を測定する姿勢に切替わり、その後昇降体が上昇して測定範囲内に戻るときは、アンテナアダプタは回動せずアンテナの姿勢は維持される。このように昇降体を昇降させるだけでアンテナの偏波角を切替えることができる。
【0024】
第8の特徴は、第6又は第7の特徴に対し、さらに、前記昇降体が前記所定の高さの範囲内に戻った後、前記昇降体が前記所定の高さの範囲を前回と反対方向に超えて第2の高さまで移動すると、前記アンテナアダプタが前回と逆方向に回転し、その後前記昇降体が前記所定の高さの範囲内に戻るときは、前記アンテナアダプタは回転しないアンテナポジショナである。
【0025】
第8の特徴によれば、例えばアンテナが水平偏波電磁波を測定する姿勢に切替わって、昇降体が第1の高さから測定範囲内に戻った後、昇降体が前回と逆方向の例えば測定範囲より高い第2の位置まで上昇すると、アンテナアダプタが回転してアンテナは水平偏波電磁波を測定する姿勢に切替わり、その後昇降体が下降して測定範囲内に戻るときは、アンテナアダプタは回転せずアンテナは水平偏波電磁波を測定する姿勢を維持する。このように昇降体を昇降させるだけでアンテナの偏波角を切替えたり、再度切替えて元の状態に戻すことができる。
【0026】
第9の特徴は、第6又は第7の特徴に対し、さらに、前記アンテナアダプタに配設された切替レバーと、前記昇降体が前記所定の高さの範囲を超えて前記第1の高さまで移動するとき、前記切替レバーに作用して前記アンテナアダプタを回転させる第1の切替カムと、を更に有するアンテナポジショナである。
【0027】
第9の特徴によれば、アンテナアダプタに配設された切替レバーと、昇降体が不要輻射電磁波の測定範囲を超えて第1の高さまで移動するときに切替レバーと干渉する位置に固定された第1の切替カムを有し、第1の切替カムが切替レバーに作用してアンテナアダプタを回転させるため、昇降体を昇降するだけで確実に偏波角を切替えることができる。
【0028】
第10の特徴は、第8の特徴に対し、さらに、前記昇降体が前記所定の高さの範囲を超えて前記第2の高さまで移動するとき、前記切替レバーに作用して前記アンテナアダプタを回転させる第2の切替カムを更に有するアンテナポジショナである。
【0029】
第10の特徴によれば、昇降体が不要輻射電磁波の測定範囲を前回と逆方向に超えて第2の高さまで移動するときに切替レバーと干渉する位置に固定された第2の切替カムを更に有し、第2の切替カムが切替レバーに作用してアンテナアダプタを回転させるため、昇降体を昇降するだけで確実に偏波角を再度切替えて元の状態に戻すことができる。
【0030】
第11の特徴は、第1の特徴に対し、さらに、前記昇降体を昇降させるモータと、前記昇降体の所定の基準高さからの高さ変化を検出する検出部と、前記検出部の検出結果に基づいて前記モータを駆動して、前記昇降体の昇降を制御するコントローラと、を更に有するアンテナポジショナである。
【0031】
第11の特徴によれば、昇降体を昇降させるモータと、例えば昇降体が下ストッパと当接する位置を基準として、そこからの昇降体の高さ変化を例えばモータに内蔵されたホール素子の出力に基づいて検出する検出部と、検出結果に基づいてモータを駆動し、昇降体を所定の高さまで昇降させる制御を行うコントローラとを有しており、昇降体が昇降後に停止する高さを低コストで正確に調整することができる。
【0032】
第12の特徴は、柱体と、前記柱体に沿って昇降する昇降体と、前記昇降体に対して水平軸回りに回動可能に取付けられたアンテナ取付アームと、アンテナ取付部を含み、前記アンテナ取付アームに対して前記アンテナ取付部の中心軸回りに回転可能に取付けられたアンテナアダプタと、を有し、前記昇降体を昇降させるだけで、前記アンテナ取付部の高さと、前記アンテナ取付部の俯角と、前記アンテナ取付部の中心軸回りの回転角を変えられるアンテナポジショナである。
【0033】
第12の特徴によれば、昇降体を柱体に沿って昇降させるだけで、アンテナ取付部の高さと俯角と中心軸回りの回転角を変えることができる。従ってアンテナ取付部にアンテナを取付けたとき、昇降体を昇降させるだけでアンテナの高さと俯角と偏波角を変えることができ、俯角や偏波角を変えるための専用の駆動源を必要としないのでアンテナポジショナの低コスト化が実現できるとともに、容易かつ正確に不要輻射電磁波を測定できる。
【0034】
第13の特徴は、被測定機器を回転させるターンテーブルと、アンテナと、アンテナポジショナと、を含む不要輻射電磁波測定システムであって、前記アンテナポジショナは、柱体と、前記柱体に沿って昇降する昇降体と、前記昇降体に対して水平軸回りに回動可能に取付けられたアンテナ取付アームと、前記アンテナ取付アームに配設されアンテナ取付部を含むアンテナアダプタと、を有し、前記アンテナは前記アンテナポジショナの前記アンテナ取付部に取付けられ、前記昇降体が所定の高さの範囲内にあるとき、前記昇降体が上昇すると、前記アンテナ取付アームが回動して前記アンテナの俯角が大きくなり、前記所定の高さの範囲内の決められた全ての測定高さにおいて、前記アンテナが前記被測定機器の方向に向く不要輻射電磁波測定システムである。
【0035】
第13の特徴によれば、システムを構成するアンテナポジショナの昇降体の高さが被測定機器の不要輻射電磁波の測定範囲内にあるとき、昇降体が上昇すると昇降体に取付けられたアンテナ取付アームが水平軸回りに回動して、アンテナ取付アームにアンテナアダプタを介して取付けられたアンテナの俯角が大きくなり、測定範囲内の少なくとも所定の複数の測定高さにおいて、アンテナが被測定機器の方向に向くので、GHz帯域の不要輻射電磁波を測定するために指向性の強いホーンアンテナ等を使用した場合でも正確な測定が可能となる。
【0036】
第14の特徴は、第13の特徴に対し、さらに、前記決められた全ての測定高さのうち最下の測定高さを除く測定高さ近傍における前記昇降体の高さ変化に対する前記アンテナの俯角変化率が、前記所定の高さの範囲内の前記昇降体の高さ変化に対する前記アンテナの俯角変化率の平均値よりも大きく、前記測定高さ近傍で前記昇降体を昇降させることにより、前記アンテナの基準点の高さを略一定のまま被測定機器へのアンテナの向きの調整を可能とした不要輻射電磁波測定システムである。
【0037】
第14の特徴によれば、昇降体の高さが不要輻射電磁波の測定範囲内で離散的に決められた全ての測定高さのうち、最下の測定高さ以外の測定高さ近傍で昇降体を昇降させることにより、アンテナの基準点の高さを略一定のまま、アンテナの被測定機器への向きを調整することができる。これにより、被測定機器がアンテナのビーム幅よりも大きい場合にも被測定機器全体からの不要輻射電磁波を測定できるようになる他、アンテナの主ローブの中心軸を被測定機器内で最大の不要輻射電磁波の放射源の方向に向けて測定することもできる。
【0038】
第15の特徴は、第13又は第14の特徴に対し、さらに、前記アンテナ取付アームに対して前記アンテナアダプタは前記アンテナ取付部の中心軸回りに回転可能とされており、前記昇降体が前記所定の高さの範囲内において前記アンテナの偏波角が所定の状態にあるとき、前記昇降体が前記所定の高さの範囲を超えて第1の高さまで移動すると前記アンテナアダプタが回転して前記アンテナの偏波角が切替えられ、その後前記昇降体が所定の高さの範囲内に戻るときは、前記アンテナアダプタは回転せず、前記アンテナの偏波角は切替えられた状態を維持する不要輻射電磁波測定システムである。
【0039】
第15の特徴によれば、アンテナがアンテナ取付部に取付けられた状態ではアンテナの受波の中心軸とアンテナ取付部の中心軸は一致するため、アンテナアダプタをアンテナ取付部の中心軸回りに回転させることによりアンテナの偏波角を切替えることができる。昇降体の高さが不要輻射電磁波の測定範囲内において、アンテナが例えば垂直偏波の電磁波を測定する姿勢になっていたとして、昇降体が例えば測定範囲より低い第1の高さまで下降すると、アンテナアダプタが回転してアンテナが水平偏波の電磁波を測定する姿勢に切替わり、その後昇降体が上昇して測定範囲内に戻るときは、アンテナアダプタは回転せずアンテナの姿勢は維持されるので、昇降体の高さを変えるだけでアンテナの偏波角を切替えることができる。
【0040】
第16の特徴は、被測定機器を回転させるターンテーブルと、アンテナと、アンテナポジショナと、を含む不要輻射電磁波測定システムであって、前記アンテナポジショナは、柱体と、前記柱体に沿って昇降する昇降体と、前記昇降体に対して水平軸回りに回動可能に取付けられたアンテナ取付アームと、アンテナ取付部を含み前記アンテナ取付アームに対して前記アンテナ取付部の中心軸回りに回転可能に取付けられたアンテナアダプタと、を有し、前記アンテナは前記アンテナポジショナの前記アンテナ取付部に取付けられ、前記昇降体の昇降に応じて、前記アンテナ取付アームが回動するとともにアンテナアダプタが回転することを特徴とし、前記昇降体を昇降させることにより、前記アンテナの高さと、前記アンテナの俯角と、前記アンテナの偏波角を変えられる不要輻射電磁波測定システムである。
【0041】
第16の特徴によれば、システムを構成するアンテナポジショナの昇降体の昇降に応じて、昇降体に取付られたアンテナ取付アームが水平軸回りに回動するとともに、アンテナ取付アームに配設されたアンテナアダプタがアンテナ取付部の中心軸回りに回転する。従って昇降体を昇降させるだけで、アンテナアダプタを介してアンテナ取付アームに取付けられたアンテナの高さと俯角と偏波角を変えることができる。俯角や偏波角を変えるための専用の駆動源を必要としないので低コストの不要輻射電磁波測定システムが実現できるとともに、アンテナの角度の調整が容易で、かつ昇降体上のアンテナ近傍に電磁波を反射する部材を配置する必要がないため精度よく不要輻射電磁波を測定できる。
【0042】
第17の特徴は、被測定機器を回転させるターンテーブルと、アンテナと、アンテナポジショナと、を用いた被測定機器からの不要輻射電磁波の測定方法であって、前記アンテナポジショナは、柱体と、前記柱体に沿って昇降する昇降体と、前記昇降体に対して水平軸回りに回動可能に取付けられたアンテナ取付アームと、前記アンテナ取付アームに配設されアンテナ取付部を含むアンテナアダプタと、を有し、前記アンテナは前記アンテナポジショナの前記アンテナ取付部に取付けられ、前記昇降体が所定の高さの範囲内にあるとき、前記昇降体が上昇すると前記アンテナ取付アームが回動して前記アンテナの俯角が大きくなり、前記所定の高さの範囲内の決められた全ての測定高さにおいて、前記アンテナが前記被測定機器の方向に向くことを特徴とし、前記昇降体を昇降させることにより、前記決められた全ての測定高さにおいて前記アンテナを前記被測定機器の方向に向けて測定する不要輻射電磁波の測定方法である。
【0043】
第17の特徴の不要輻射電磁波の測定方法によれば、測定に使用するアンテナポジショナは昇降体の高さが被測定機器の不要輻射電磁波の測定範囲内にあるとき、昇降体が上昇すると昇降体に取付けられたアンテナ取付アームが水平軸回りに回動して、アンテナ取付アームにアンテナアダプタを介して取付けられたアンテナの俯角が大きくなり、測定範囲内の少なくとも所定の複数の測定高さにおいて、アンテナが被測定機器の方向に向くことを特徴とし、このアンテナポジショナを使用して、被測定機器の不要輻射電磁波の測定範囲内において昇降体を昇降させることにより、アンテナを被測定機器の方向に向けて測定するので、GHz帯域の不要輻射電磁波を測定するために指向性の強いホーンアンテナ等を使用した場合でも正確な測定が可能である。またこの方法ではアンテナの高さを変えるだけで俯角は自動的に被測定機器の方向に向くように変化するため、アンテナの高さと俯角を個別に変える場合と比べて測定も容易で、高さと俯角を変化させながら繰り返し測定する場合でも、高さと俯角の組合せを間違える心配もない。
【0044】
第18の特徴は、第17の特徴に対し、前記アンテナポジショナは、前記決められた全ての測定高さのうち最下の測定高さを除く測定高さ近傍における前記昇降体の高さ変化に対する前記アンテナの俯角変化率が、前記所定の高さの範囲内の前記昇降体の高さ変化に対する前記アンテナの俯角変化率の平均値よりも大きいことを特徴とし、前記測定高さ近傍で前記昇降体を昇降させることにより、前記アンテナの基準点の高さを略一定のまま被測定機器へのアンテナの向きを調整して測定する第17の特徴の不要輻射電磁波の測定方法である。
【0045】
第18の特徴によれば、測定に使用するアンテナポジショナは昇降体の高さが不要輻射電磁波の測定範囲内で離散的に決められた全ての測定高さのうち、少なくとも最下でアンテナの俯角がゼロとされた測定高さ以外の測定高さ近傍における昇降体の高さ変化に対するアンテナの俯角変化率が、測定範囲内における昇降体の高さ変化に対するアンテナの俯角変化率の平均値より大きい。従って測定高さ近傍で昇降体を昇降させることにより、アンテナの基準点の高さを略一定としたまま、アンテナの俯角を変化させてアンテナの被測定機器への向きを調整して測定することができる。これにより、被測定機器がアンテナのビーム幅よりも大きい場合にも被測定機器全体からの不要輻射電磁波を走査するように測定できる他、アンテナの主ローブの中心軸を被測定機器内で最大の不要輻射電磁波の放射源の方向に向けて測定することもできる。
【0046】
第19の特徴は、第17又は第18の特徴に対し、さらに、前記アンテナポジショナは、前記アンテナ取付アームに対して前記アンテナアダプタが前記アンテナ取付部の中心軸回りに回転可能とされており、前記昇降体が前記所定の高さの範囲内において前記アンテナの偏波角が所定の状態にあるとき、前記昇降体が前記所定の高さの範囲を超えて第1の高さまで移動すると前記アンテナアダプタが回転して前記アンテナの偏波角が切替えられ、その後前記昇降体が所定の高さの範囲内に戻るときは、前記アンテナアダプタは回転せず、前記アンテナの偏波角は切替えられた状態を維持することを特徴し、前記アンテナの偏波角が所定の状態にあるとき、前記昇降体を前記第1の高さまで移動させて前記アンテナの偏波角を切替え、偏波角の切替え前後に前記決められた全ての測定高さにおいて前記アンテナを前記被測定機器の方向に向けて測定する不要輻射電磁波の測定方法である。
【0047】
第19の特徴によれば、測定に使用するアンテナポジショナはアンテナ取付アームに対してアンテナアダプタをアンテナ取付部の中心軸回りに回転させることによりアンテナの偏波角を切替えることができる。そして昇降体の高さが不要輻射電磁波の測定範囲内において、アンテナが垂直又は水平のどちらか一方の偏波の電磁波を測定する姿勢であるとき、昇降体が測定範囲より低い又は高い第1の高さまで移動すると、アンテナアダプタが回転してアンテナが他方の偏波の電磁波を測定する姿勢に切替わり、その後昇降体が移動して測定範囲内に戻るときは、アンテナアダプタは回転せずアンテナは他方の偏波の電磁波を測定する姿勢を維持するので、昇降体の高さを変えるだけでアンテナの偏波角を切替えることができる。従ってアンテナの偏波角がどちらか一方の状態にあるとき、決められた全ての測定高さにおいてアンテナを被測定機器の方向に向けて不要輻射電磁波の測定をした後、昇降体を第1の高さまで移動させてアンテナの偏波角を他方の状態に切替え、決められた全ての測定高さにおいてアンテナを被測定機器の方向に向けて測定することで、水平と垂直の両方の偏波の不要輻射電磁波を効率的に測定することができる。
【0048】
第20の特徴は、被測定機器を回転させるターンテーブルと、アンテナと、アンテナポジショナと、を用いた被測定機器からの不要輻射電磁波の測定方法であって、
前記アンテナポジショナは、柱体と、前記柱体に沿って昇降する昇降体と、前記昇降体に対して水平軸回りに回動可能に取付けられたアンテナ取付アームと、アンテナ取付部を含み前記アンテナ取付アームに対して前記アンテナ取付部の中心軸回りに回転可能に取付けられたアンテナアダプタと、を有し、前記アンテナは前記アンテナポジショナの前記アンテナ取付部に取付けられ、前記昇降体の昇降に応じて、前記アンテナ取付アームが回動するとともにアンテナアダプタが回転することを特徴とし、前記昇降体を昇降させることにより、前記アンテナの高さと、前記アンテナの俯角と、前記アンテナの偏波角を変えて測定する不要輻射電磁波の測定方法である。
【0049】
第20の特徴によれば、測定に使用するアンテナポジショナの昇降体の昇降に応じて、昇降体に取付られたアンテナ取付アームが水平軸回りに回動するとともに、アンテナ取付アームに配設されたアンテナアダプタがアンテナ取付部の中心軸回りに回転する。従って昇降体を昇降させるだけで、アンテナアダプタを介してアンテナ取付アームに取付けられたアンテナの高さと俯角と偏波角を変えて、被測定機器からの不要輻射電磁波を測定できる。昇降体を昇降させるだけでアンテナの高さと俯角と偏波角を全て変えることができるので、測定時のアンテナの調整が容易で測定ミスも生じにくい。また昇降体上のアンテナ近傍に電磁波を反射する部材を配置する必要がないため精度よく不要輻射電磁波を測定できる。
【発明の効果】
【0050】
本発明のアンテナポジショナは、昇降体を昇降させるだけで昇降体の高さに応じてアンテナの高さと俯角と偏波角を容易に変化させることができる。また昇降体上のアンテナ近傍には電磁波を反射するような部材がないため、測定精度も優れている。しかも昇降体を昇降させるモータ以外の駆動源を必要としないため、低コストである。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【
図1】本発明の実施形態に係るアンテナポジショナを含む不要輻射電磁波測定システムの概要を例示する正面図と、アンテナポジショナの右側面図である。
【
図2】本発明の実施形態に係るアンテナポジショナの昇降部の構成を示す斜視図である。
【
図3】本発明の実施形態に係るアンテナポジショナの垂直偏波の不要輻射電磁波を測定する際の動きを例示する斜視図である。
【
図4】本発明の実施形態に係るアンテナポジショナに取付けたアンテナの偏波角を、垂直偏波から水平偏波に切替える際の動きを例示する斜視図である。
【
図5】本発明の実施形態に係るアンテナポジショナの水平偏波の不要輻射電磁波を測定する際の動きを例示する斜視図である。
【
図6】本発明の実施形態に係るアンテナポジショナに取付けたアンテナの偏波角を、水平偏波から垂直偏波に切替える際の動きを例示する斜視図である。
【
図7】本発明の実施形態に係る不要輻射電磁波の測定方法を示すフローチャートである。
【
図8】本発明の実施形態に係るアンテナポジショナの制御部の構成を示すブロック図である。
【
図9】本発明の第2の実施形態に係るアンテナポジショナを含む不要輻射電磁波測定システムの概要を例示する正面図である。
【
図10】本発明の第3の実施形態に係るアンテナポジショナを含む不要輻射電磁波測定システムの概要を例示する正面図と、アンテナポジショナの右側面図である。
【
図11】本発明の第4の実施形態に係るアンテナポジショナの動作を第1の実施形態と比較して説明する模式図である。
【
図12】本発明の第4の実施形態に係るアンテナポジショナの第1の変形例の動作を説明する模式図である。
【
図13】本発明の第4の実施形態に係るアンテナポジショナの第2の変形例の動作を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0052】
以下、本発明のアンテナポジショナ、不要輻射電磁波測定システム、及び不要輻射電磁波の測定方法に係る実施形態について、図面を用いて説明する。
(実施例1)
図1(a)はアンテナポジショナ1を含む不要輻射電磁波測定システム40の正面図、
図1(b)はアンテナポジショナ1の側面図である。
被測定機器(EUT)41は、回転可能なターンテーブル42上の試験台43の上に設置されている。またアンテナ31がアンテナポジショナ1に取付けられており、アンテナポジショナ1によりアンテナ31の高さと俯角と偏波角を変えながら、またターンテーブル42によりEUT41の設置角度を変えながら、EUT41からの不要輻射電磁波の測定が行なわれる。なお、
図1はアンテナ31を上下2箇所の不要輻射電磁波の測定高さに移動させた状態を重ね合わせて描いた模式図であり、実際のアンテナ31は1つである。
【0053】
図1のアンテナ31は広帯域のホーンアンテナであり1GHz以上の電磁波測定に適しているが、鋭い指向性を有するため、不要輻射電磁波の測定時にはアンテナ31をEUT41の方向に向ける必要がある。そのためにアンテナ31がEUT41よりも高くなるほど、アンテナ31の俯角αを大きくし、アンテナ31をEUT41の方向に向けている。このときアンテナ31の上下2箇所の各測定高さにおいて、EUT41内の不要輻射電磁波の主要な放射源がアンテナ31の主ローブの3dBビーム幅(半電力ビーム幅)θの範囲内に収まるようにするとよい。またアンテナ31の各測定高さにおいて、EUT41全体がアンテナ31の3dBビーム幅θの範囲内に収まるようにすれば更によい。
【0054】
なお
図1のホーンアンテナ31は垂直偏波(電界が地面に対し垂直な電磁波)の電磁波測定時の姿勢となっているが、アンテナ31を受波の中心軸回りに90度回転した水平偏波(電界が地面に対し水平な電磁波)の電磁波測定時の姿勢においても、アンテナ31の各測定高さにおいて、EUT41内の不要輻射電磁波の主要な放射源がアンテナ31の図示したθと直交する方向の3dBビーム幅の範囲内に収まるようにするとよい。またアンテナ31の各測定高さにおいて、EUT41全体がアンテナ31の図示したθと直交する方向の3dBビーム幅の範囲内に収まるようにすれば更によい。
【0055】
次に
図1によりアンテナポジショナ1の構成と動作を説明する。アンテナポジショナ1の台車10の上には柱体2が立設されており、昇降体3が柱体2に沿って昇降自在に取付けられている。また台車10の上の駆動装置11の内部には図示省略したモータ12と減速機構13が配設されている。モータ12は減速機構13を介して駆動プーリ16と連結され、駆動プーリ16と柱体2の上部の従動プーリ17との間にはタイミングベルト18が張られている。タイミングベルト18はベルト押さえ19により昇降体3に接続されているので、モータ12を正転・逆転させるとタイミングベルト18が正逆方向に回動し、昇降体3が柱体2に沿って昇降する。
【0056】
柱体2に沿って昇降する昇降体3にはアンテナ取付アーム4が水平軸4H回りに回動可能に取付けられている。また柱体2の近傍には、所定の形状のカム面6Cを有するカム板6が、複数のカム板固定部7により柱体2に固定されている。そして昇降体3が昇降する際に、アンテナ取付アーム4上の接触子9がカム板6のカム面6Cに接触しながら移動することにより、カム面6Cの形状に従ってアンテナ取付アーム4が回動する。
またアンテナ取付アーム4にはアンテナ取付部5Mを含むアンテナアダプタ5が配設されている。アンテナアダプタ5のアンテナ取付部5Mは水平軸4Hに直交しており、アンテナ取付アーム4が水平軸4H軸回りに回動するとアンテナアダプタ5のアンテナ取付部5Mの俯角が変化する。所定の2箇所の不要輻射電磁波の測定高さの範囲内では、昇降体3が上昇するほどアンテナ取付部5Mの俯角が大きくなるように、カム面6Cの形状は設定されており、少なくとも所定の2箇所の測定高さにおいて、アンテナ取付部5Mの中心軸は略EUT41の方向に向けられる。アンテナ取付部5Mの中心軸はアンテナ31を取付けたときアンテナ31の受波の中心軸と一致させているため、アンテナ取付部5Mにアンテナ31を取付けたとき、所定の2箇所の測定高さにおいてアンテナ31は略EUT41の方向に向けられる。
【0057】
なお、
図1で昇降体3とアンテナ31が柱体2の下方にあるときと、上方にあるときがそれぞれ所定の2箇所の不要輻射電磁波の測定高さである。昇降体3とアンテナ31が上方にあるときはアンテナ31の中心軸が俯角αだけ傾いていることと、昇降体3上のアンテナアーム4の回動中心4Cに対してアンテナ31がEUT41寄りにあることから、上下2箇所の測定高さにおいて昇降体3の高さの差はアンテナ31の高さの差よりも大きい。その差は簡単な計算で求められるので、例えばアンテナ31の給電点等の基準点を下方の位置から1m上昇させたいときは、計算結果に基づいて昇降体3を1mよりも大きい必要な量だけ上昇させればよい。
ここで所定の2箇所の不要輻射電磁波の測定高さの範囲内とは、例えば
図1において昇降体3とアンテナ31がそれぞれ上下2箇所の測定高さの範囲内にあることを示しており、必要のあるときのみ昇降体3の高さとアンテナ31の高さを明記して区別する。
【0058】
次に
図2を用いて、柱体2に沿って昇降する昇降体3を含む昇降部の構成を説明する。
図2は昇降部を斜め下方から見た斜視図である。昇降体3の左端には断面略四角形の柱体2が挿入される略四角形の枠状部があり、その各面に4個ずつ配設された計16個のローラ3Rが回転可能に取付けられている。昇降体3が昇降する際には、柱体2に対してローラ3Rが回転するため、スムーズに昇降することができる。なお枠状部の右辺にはカム板固定部7との干渉を避けるための切り欠き部3Cがあり、それによる枠状部を含む昇降体3の強度不足を解消するために上補強部3Uと下補強部3Dを設けて、昇降体3の変形を防止すると共に、昇降体3に取付けられるアンテナ取付アーム4の変形も防止している。
【0059】
アンテナ取付アーム4は、昇降時に昇降部内を通過するカム板6やカム板取付け部7との干渉を避けて両側に分岐した分岐部4Dを有しており、昇降体3に対するアンテナ取付アーム4の回動中心4Cは分岐部4Dの両側の対向する位置に設けられている。両側の2つの回動中心4Cを結ぶ軸は、昇降体3を柱体2に取付けたとき水平になる水平軸4Hであり、アンテナ取付アーム4は昇降体3に対して水平軸4H回りに回動可能となる。
またアンテナ取付アーム4の分岐部4Dの先端部には、昇降時にカム板6のカム面6Cと接触しながら移動する接触子9が配設されている。接触子9は、主にアンテナ取付アーム4とアンテナ31の重量により生じるアンテナ取付アーム4の水平軸4H回りの回転モーメントにより、カム板6のカム面6Cに押付けられている。昇降部の昇降動作をスムーズにするため、接触子9はローラ状とし、回転可能に取付けるとよい。
【0060】
またアンテナ取付アーム4は屈曲部4Bを含んでおり、EUT41側から昇降部を見たときアンテナアダプタ5は昇降体3の略四角形の枠状部に挿入される柱体2の正面ではなく、柱体2の横に配置され、アンテナアダプタ5のアンテナ取付部5Mに取付けられたアンテナ31も柱体2の横に配置されている。これによりアンテナアダプタ5等がアンテナ取付アーム4等と干渉しなくなるため、後述するアンテナアダプタ5を回転させてアンテナ31の偏波角を切替える機構が容易に配設可能となる他、アンテナ取付アーム4の水平回動軸4Hとアンテナ取付部5Mとのアンテナ31の中心軸方向の距離を小さくできるので、昇降部が小型化できるとともに、アンテナ取付アーム4が回動してアンテナ31の俯角が大きくなったときの昇降体3とアンテナ31の高さの差も小さくなる。例えばアンテナ取付アーム4の形状を変更して、アンテナ31の給電点等の基準点と水平回動軸4Hのアンテナ軸方向の距離をゼロとすることで、アンテナ取付アーム4が回動しても昇降体3に対するアンテナ31の基準点の高さが変化しないようにしてもよい。
なお昇降体3やアンテナ取付アーム4等はそれぞれ一部品である必要はなく、
図2に示したように複数の部品を組立てて構成されていてもよいことは言うまでもない。
【0061】
これまで説明したように
図1のアンテナポジショナ1によれば、昇降体3を昇降させて、所定の測定高さに移動させるだけで、アンテナ31の高さに合わせてアンテナ31の俯角を変化させて、アンテナ31をEUT41の方に向けることができる。従って、アンテナ31に指向性の強いホーンアンテナを用いた場合でも、EUT41からの不要輻射電磁波を容易に測定できる。
なおカム板6のカム面6Cの形状次第で、アンテナ31の俯角をアンテナ31の高さに応じて比較的自由に変化させることができるため、アンテナ31を所定の測定高さの中間の1箇所以上の高さもしくは全ての高さにおいて、アンテナ31をEUT41の方向に向けることも可能である。これにより様々な高さ条件においても、EUT41からの不要輻射電磁波を容易に測定できる。
【0062】
なおEUT41の大きさや形状には当然決まりはない。また測定に使用するアンテナ31の3dBビーム幅θもアンテナの仕様により異なり、決まっているものではない。またアンテナ31をEUT41の方向に向けると言っても、EUT41内の不要輻射電磁波の主要な放射源もしくはEUT41全体が、アンテナ31の3dBビーム幅の範囲に収まっていればよいので、アンテナ31の基準点が所定の高さのときの俯角の値も一律に決まるものではなく、ある程度の自由度がある。従って使用するアンテナ31のビーム幅に合わせて、測定に供される頻度の高い大きさや形状のEUT41がビーム幅の中に収まるように、さらにできるだけ色々な大きさや形状のEUT41がビーム幅の中に収まるように、アンテナ31の俯角は設定するとよい。なおEUT41は大地面から高さ0.8mの試験台43の上面に設置されることが多いため、ターンテーブル42の回転中心軸上で、試験台上面もしくはそれより少し高い大地面から0.8~1.2m程度の高さにアンテナ31のビームの中心軸がくるようにすると汎用性が高くなることが多い。
しかしEUT41が大きくてアンテナ31の3dBビーム幅の中に収まらないときは、アンテナ31を指向性の少し弱いものに代えるか、アンテナ31とEUT41の距離を例えば通常の3mより広げてもよい。
【0063】
また個々のEUT41の大きさや形状に合わせて、EUT41がビーム幅θの中に収まるようにカム板6をカム面6Cの形状の異なるものと交換し、アンテナ31の俯角を変化させてもよい。カム板6は上下2枚に分かれているので、昇降体3を柱体2に取付けたまま、容易に交換できる。またカム板6の取り付け位置を上下や前後に調整することによって、アンテナ31の俯角を変化させてもよい。
なおカム板6は上下2枚でなく、多数枚に分割されていてもよい。例えば不要輻射の所定の測定高さが4箇所ある場合、測定高さ毎に4分割としてもよい。これにより測定高さ毎に対応するカム板6の位置を調整して、測定高さ毎にアンテナ31の俯角を調整することができる。また逆にカム板6は分割せずに1枚で構成してもよい。一体のカム板6を上下端の2箇所のみで柱体2に固定し、中間部のカム板固定部7を無くすと、昇降体3の略四角形の枠状部の切り欠き部3Cを無くすことができる。これにより昇降体3の強度を上げることができるため、昇降体3の軽量化も可能となる。
【0064】
以上、昇降体3を昇降させてアンテナ31の高さに応じて俯角を変化させる手法について説明した。以降、昇降体3を昇降させてアンテナ31の高さに応じて偏波角を切替える手法について説明する。
【0065】
図2においてアンテナ取付部5Mを含むアンテナアダプタ5が、アンテナ取付アーム4に対しアンテナ取付部5Mの中心軸回りに回転可能に取付けられている。またアンテナ31の後端部のアンテナ取付軸がパイプ状のアンテナ取付部5Mに挿入され、嵌合された状態で横からねじで固定されている。このときアンテナ取付部5Mの中心軸はアンテナ31の受波の中心軸に一致しており、アンテナアーム4に対してアンテナアダプタ5を回転させることで、アンテナ31の偏波角を切替えることができる。アンテナアダプタ5には切替レバー22が取付けられており、切替レバー22のアンテナ31の回転中心から遠い部分を回転させることで軽い力でアンテナ31の偏波角を切替えることができる。
なおアンテナ取付部5Mの形状は、アンテナ31側の嵌合部の形状に合わせて決められるため、単純なパイプ状ではなくてもよいが、アンテナ31側の嵌合部の形状によらずアンテナ31の中心軸とアンテナ取付部5Mの中心軸は容易に一致させることができる。
またアンテナ31の偏波角が水平と垂直となる位置で、アンテナアダプタ5がアンテナ取付アーム4に対して軽い力でロックされるようにしてもよい。これにより昇降体3の昇降に伴う振動等で偏波角がずれてしまうのを防止することができる。ロック機構としてはボールプランジャもしくは樹脂ばねを利用し、クリック感を持たせるとよい。ボールプランジャを使用する場合は金属を使用しない樹脂製を選択するとよい。この場合、切替レバー22はロック解除に必要な力を考慮して動作が安定する位置に配設するとよい。
【0066】
図1において柱体2の下端部には下ストッパ20、上端部には上ストッパ21が配設されており、昇降体3は下ストッパ20と上ストッパ21の間で昇降させることができる。また柱体2の下部には第1の切替カム23、上部には第2の切替カム24が配設されている。これら2つの切替カムは、昇降体3が図示された2箇所の不要輻射電磁波の測定範囲内を昇降するときは、アンテナアダプタ5に取付けられた切替レバー22と接触することはないが、例えば昇降体3が測定範囲を超えて下降すると、第1の切替カム23が切替レバー22に作用してアンテナアダプタ5を回転させ、アンテナ31の偏波角が切替えられる。
【0067】
次に
図3~
図6を用いて、不要輻射電磁波測定時にアンテナ31の偏波角を切替える機構と偏波角を切替えて不要輻射電磁波を測定する方法について説明する。
図3においてアンテナ31はホーンアンテナであり、垂直偏波の電磁波測定時の姿勢とされている。
図3(a)で昇降体3は所定の不要輻射電磁波の測定範囲の下限の測定高さにあり、(b)では上限の測定高さにある。この範囲内で昇降体3を昇降させることにより、アンテナ31の高さと俯角を同時に変化させて、測定範囲内の少なくとも所定の測定高さにおいてアンテナ31をEUT41の方向に向けて、垂直偏波の不要輻射電磁波の測定を行う。測定は昇降体3を下から上昇させながら測定しているが、逆に上から下降させながら測定してもよい。
【0068】
垂直偏波の不要輻射電磁波の測定が終了し、アンテナ31が垂直偏波の電磁波測定時の姿勢のまま、昇降体3を測定範囲の下限の測定高さに戻した
図4(a)の状態から、昇降体3が測定高さの範囲外の下ストッパ20に当接する
図4(b)の位置まで昇降体3を更に下降させると、切替レバー22が第1の切替えカム23に押されてアンテナアダプタ5が90度回転し、アンテナアダプタ5のアンテナ取付け部5Mに取付けられたアンテナ31が水平偏波の電磁波測定時の姿勢に切替わる。なお昇降体3が測定範囲外に下降して、下ストッパ20に当接する少し前の所定の高さで偏波角が切替わるようにしてもよい。
なお、以上の例では昇降体3が測定高さの範囲外の下ストッパ20に当接する位置まで昇降体3を下降させ、アンテナアダプタ5を回転させてアンテナ31の偏波角を切替えていたが、昇降体3を測定高さの範囲外の上ストッパ21に当接する位置まで昇降体3を上昇させ、アンテナアダプタ5を回転させてアンテナ31の偏波角を切替えてもよい。
【0069】
昇降体3を測定範囲外の下ストッパ20に当接するまで下降させて、アンテナ31が垂直偏波から水平偏波の電磁波測定時の姿勢に切替わった後、昇降体3を再上昇させるとき第1の切替カム23と切替レバー22は離間していくだけで干渉しないため、昇降体3を不要輻射電磁波の測定高さの範囲内に戻しても、アンテナ31は水平偏波の電磁波測定時の姿勢を維持する。
図5(a)は昇降体3が測定範囲の下限、(b)は測定範囲の上限にあるときを示すが、この範囲内で昇降体3を昇降させることにより、アンテナ31の高さと俯角を同時に変化させて、測定範囲内の少なくとも所定の測定高さにおいてアンテナ31をEUT41の方向に向けて、水平偏波の不要輻射電磁波の測定を行う。
またアンテナアダプタ5のアンテナ取付部5Mに対してアンテナ31を90度回転して取付けることにより、最初に測定範囲内で水平偏波の不要輻射電磁波を測定し、その後昇降体3を測定範囲外に下降させてアンテナ31を90度回転させて垂直偏波の電磁波測定時の姿勢とし、後から垂直偏波の不要輻射電磁波を測定してもよい。
【0070】
以上の手順により、昇降体3を昇降させるだけで、アンテナ31を垂直偏波の電磁波測定の姿勢から水平偏波の電磁波測定の姿勢に切替えることができるので、垂直偏波と水平偏波の両方の偏波方向の不要輻射電磁波の測定が完了する。これで測定を終了することもできるが、その後再度アンテナ31の偏波角を垂直偏波の電磁波測定時の姿勢に戻せればさらに不要輻射電磁波測定の手順の自由度が拡大し、利便性が向上するため、以下その方法について説明する。
【0071】
図5(b)は水平偏波の不要輻射電磁波の測定が終了し、アンテナ31が水平偏波電磁波測定時の姿勢のまま、昇降体3が測定範囲内の上限の測定高さにある状態であり、
図6(a)はこの状態から昇降体3を前回の偏波角切替え時とは逆方向の上方に測定範囲を超えて少し上昇させた状態を示し、カム板6のカム面6Cを利用して測定範囲外では昇降体3の上昇に応じてアンテナ取付アームを測定範囲内とは逆方向に回動させてアンテナ31の俯角をゼロに戻している。次にこの状態からさらに昇降体3を上ストッパ21に当接する
図6(b)の位置まで更に上昇させると、切替レバー22が第2の切替カム24に押されてアンテナアダプタ5が90度回転するので、アンテナアダプタ5のアンテナ取付部5Mに取付けられたアンテナ31を最初の垂直偏波の電磁波測定時の姿勢に戻すことができる。
【0072】
なお昇降体3が測定範囲外に上昇して、上ストッパ21に当接する少し前の所定の高さで偏波角が切替わるようにしてもよい。また測定範囲外でアンテナ31の俯角をゼロに戻す方法はカム板6のカム面6Cを利用する方法に限定されるものではなく、専用の機構を追加してもよい。またアンテナ31の俯角をゼロに戻さずアンテナアダプタ5や切替レバーが傾いた状態のまま、切替レバー22と第2の切替カム24の形状の工夫等により、第2の切替カムを直接切替レバー22に作用させてアンテナアダプタ5を回転させてもよい。
【0073】
昇降体3を測定範囲内から測定範囲外の上ストッパ21に当接するまで上昇させて、アンテナ31が水平偏波の電磁波測定時の姿勢から最初の垂直偏波の電磁波測定時の姿勢に戻った後、
図6(b)の状態から昇降体3を反転させて下降させるとき第2の切替カム24と切替レバー22は離間していくだけで干渉しないため、昇降体3を測定高さの範囲内に戻しても、アンテナ31は垂直偏波の電磁波測定時の姿勢を維持する。このようにしてアンテナ31の状態を最初の
図3の状態に戻すことができる。
このように本発明によれば昇降体3を昇降させるだけでアンテナ31の偏波角を垂直から水平、水平から垂直へと自在に切替えることができ、効率的で自由度の高い測定を行うことができる。
【0074】
図7は不要輻射電磁波測定の手順を示すフローチャートである。まずアンテナ31を垂直偏波電磁波測定時の姿勢にセットして、測定を開始する(Step1)。次に昇降体3を昇降させて、アンテナ31の基準点を不要輻射電磁波の測定範囲内の所定の複数の測定高さのうちの1箇所に移動させると、アンテナ31の俯角も同時に変更されるので(Step2)、アンテナ31をEUT41の方向に向けた状態で不要輻射電磁波の測定を行う(Step3)。次に所定の複数の測定高さ全てにおける垂直偏波の不要輻射電磁波の測定が終了したか否かを確認し(Step4)、終了していなければ昇降体3を再度昇降させて、アンテナ31の高さと俯角を変更し(Step2)、測定高さ全てにおける不要輻射電磁波の測定が終了するまで繰り返す。測定高さ全てで垂直偏波の不要輻射電磁波測定が終了していれば(Step4)、昇降体3を不要輻射電磁波の測定範囲外の第1の高さに移動させ、アンテナ31を水平偏波電磁波測定時の姿勢に切替える(Step5)。
【0075】
アンテナ31が水平偏波電磁波測定時の姿勢に切替われば、水平偏波の不要輻射電磁波測定を開始する(Step6)。昇降体3を昇降させて測定範囲内に戻し、アンテナ31の基準点を不要輻射電磁波の測定範囲内の所定の複数の測定高さのうちの1箇所に移動させると、アンテナ31の俯角も同時に変更されるので(Step7)、アンテナ31をEUT41の方向に向けた状態で不要輻射電磁波の測定を行う(Step8)。次に、所定の複数の測定高さ全てにおける水平偏波の不要輻射電磁波測定が終了したか否かを確認し(Step9)、終了していなければ昇降体3を再度昇降させて、アンテナ31の高さと俯角を変更し(Step7)、測定高さ全てにおける不要輻射電磁波の測定が終了するまで繰り返す。所定の複数の測定高さ全てで水平偏波の不要輻射電磁波測定が終了していれば(Step9)、垂直、水平両偏波の不要輻射測定は終了となる(Step10)。
【0076】
図1のアンテナポジショナ1によれば、昇降体3を所定の不要輻射電磁波の測定高さの範囲外の一方側の第1の高さに移動させることで、アンテナ31の偏波角を例えば垂直から水平(又は水平から垂直)に切替えるとともに、その後昇降体3を所定の不要輻射電磁波の測定高さの範囲外の他方側の第2の高さに移動させることで、アンテナ31の偏波角を例えば水平から垂直(又は垂直から水平)に切替え、元の偏波角に戻すことができる。これによれば、アンテナ31の偏波角を何度でも自由に切替えることができるため、測定の自由度が大幅に向上し、一連の測定終了後に特定の条件のみ再測定することも可能となる。しかし第2の高さに移動させて偏波角を元に戻す機能は省略してもよい。それでも
図7のフローチャートのように必要な全ての条件において垂直、水平両偏波の不要輻射電磁波の測定が可能である。例えば測定範囲よりも上方での偏波角の切替え機能を省略することにより、アンテナポジショナ1の全高を低くすることができる。
【0077】
これまでの説明の通り、
図1のアンテナポジショナ1によれば、昇降体3を昇降させるだけで昇降体上のアンテナ31の高さ、俯角、偏波角を全て変更することができる。不要輻射電磁波測定においては、アンテナ31の給電点等の基準点の高さが指定されることが多い。測定時のアンテナ31の基準点の高さと俯角が決まり、アンテナ取付アーム4の回動中心4Cに対するアンテナ31の基準点の位置が決まれば、昇降体3の高さが決まるので、昇降体3を大地面から所定の高さに位置決めするだけで、アンテナ31の基準点を所定の高さに位置決めすることができる。なおアンテナ31の基準点は給電点には限定されず、アンテナ31の開口面の中心、アンテナ31の取付け時の突き当て面の中心、アンテナ取付アームの回動中心などが選択されることもあるが、基準点の定義によらず、基準点の位置から計算した高さに昇降体3を位置決めすることで、アンテナ31の基準点を所定の高さに位置決めすることができる。
【0078】
次に昇降体3を大地面から所定の高さに位置決めする方法について説明する。
図8はアンテナポジショナ1の制御部の構成を示すブロック図である。駆動装置11内のモータ12は減速機構13を介して駆動プーリ16に接続され、駆動プーリ16と従動プーリ17の間にはタイミングベルト18が張られている。タイミングベルト18は昇降体3に固定されており、昇降体3は下ストッパ20と上ストッパ21の間を、モータ12の回転方向に応じて柱体2に沿って上昇もしくは下降する。従って、例えば下ストッパ20に突き当てられたときの昇降体3の高さHoを基準として、昇降体3を大地面から所定の高さHに位置決めするためには、基準の高さHoの位置から高さの差ΔHだけ昇降体3を上昇させたところで停止させればよい。最初に基準の高さHoに昇降体3を停止させるために、例えば基準の高さのところにリミットスイッチを配設し、スイッチがオン又はオフするタイミングで決めてもよいし、小さいモータ電流で昇降体3を下ストッパ20の方向に移動させ停止した位置で決めてもよい。なお上ストッパ21に突き当てられたときの昇降体3の高さを基準としてもよい。
【0079】
駆動装置11は更にモータ12の回転量を検出する回転検出部32と、操作部35により指示された高さまで昇降体3を移動させるように、モータ12を駆動制御するコントローラ15を含んでいる。モータ12は減速機構13等を介して昇降体3に直結されているため、昇降体3がHoから上昇する際に回転検出部32が検出したモータ12の回転量に基づいて、昇降体高さ検出部14が昇降体3の高さを検出し、制御部33がモータ駆動回路34を介してモータ12を駆動制御して昇降体を高さHまで移動させて停止させる。
なお操作部35は表示部を含んでいてもよく、表示部にはアンテナ31の高さ、俯角、偏波角を表示させてもよい。
【0080】
モータ12の種類は限定されるものではないが、例えばブラシレスDCモータが好適である。ロータの位置を検出して駆動電流の極性を変化させるためのホール素子を備えているため、このホール素子をモータ12の回転検出部32に兼用すれば専用の光センサ等が不要となり低コストにできる他、精度の高いモータ回転量の検出が可能となる。また電磁ノイズや寿命等の点でもブラシ付きモータよりも優れている。なおモータ12に内蔵されているホール素子に代えて、ホトリフレクタなどの光学素子などを用いて駆動プーリ16等の回転を検出して昇降体3の高さを検出してもよい。
【0081】
また
図1のアンテナポジショナ1においては、測定に有害となる電磁波の反射を防止するため、アンテナ31の近傍で露出している柱体2、昇降体3、アンテナ取付アーム4、アンテナアダプタ5、カム板6、カム板固定部7、ベルト18、切替レバー22等は全て樹脂製としている。部品ごとの仕様に応じてガラス繊維強化樹脂や発泡樹脂などを使用してもよいが、金属製の部品は使用しないことが望ましく、ボルトやナット等も全て樹脂製とするとよい。ローラ部等で玉軸受を使用する場合も、セラミック製を使用するとよい。また台車10上に固定されモータ12等を含む駆動装置11については、周囲や上面を例えばフェライト電磁吸収剤で遮蔽し、測定に有害となる電磁波の反射を防止するとよい。ただし必要な特性や加工精度、剛性、耐久性などを有していれば、これらに限定されず、自由に選択可能である。
【0082】
なお
図1の不要輻射電磁波測定システム40において、測定高さは上下2箇所となっているが、これには限定されず、多数箇所でもよいことは言うまでもない。
また
図1の不要輻射電磁波測定システム40によれば、1つのモータ12で昇降体3を昇降させるだけでアンテナ31の高さ、俯角、偏波角を容易に精度よく設定できるため、測定の自動化も容易に実現することができる。
また
図1のアンテナポジショナ1は、EUT41からの不要輻射電磁波を測定する電磁妨害(EMI)試験の他、EUT41の妨害電波耐性を測定する電磁感受性(EMS)試験を含む電磁両立性(EMC)の対策や評価等に使用することができる他、アンテナの設計や評価用にも使用することができる。
また
図1のアンテナポジショナ1は、柱体に沿って昇降する昇降体を有する既存のアンテナポジショナを改造することで実現できることが多い。すなわち回動するアンテナ取付アームが配設された昇降体に載せ代えると共に、カム板や切替カム等を追加すればよい。
【0083】
以下、本発明のアンテナポジショナ、不要輻射電磁波測定システム、及び不要輻射電磁波の測定方法に係る第2の実施形態について図面を用いて説明するが、第1の実施形態と同様の構成の部分については詳しい説明は省略する。
(実施例2)
図9は第2の実施形態のアンテナポジショナ1を含む不要輻射電磁波測定システム40の正面図である。第1の実施形態に対して柱体2の高さを高くして、昇降体3の昇降距離も大きくして、4箇所の測定高さでEUT41からの不要輻射電磁波の測定を可能としている。なお
図9も昇降体3やアンテナ31を4箇所の測定高さに移動させた状態を重ねて合わせて描いた模式図であり、実際の昇降体3やアンテナ31は1つである。なお不要輻射電磁波を測定するアンテナ31の高さは4箇所に限定されるものではなく、必要に応じて何箇所でも対応可能である。
【0084】
図9のアンテナポジショナ1も昇降体3にアンテナ取付アーム4が水平軸回りに回動可能に取付けられており、アンテナ取付アーム4に配設された接触子9がカム板6のカム面6Cに接触しながら移動することによりアンテナ取付アーム4が回動して、アンテナ取付アーム4にアンテナアダプタ5を介して取付けられたアンテナ31の俯角αが変化する。所定の測定高さの範囲内では、昇降体3が上昇するほどアンテナ31の俯角が大きくなるようにカム面6Cは設定されており、所定の4箇所の測定高さにおいてアンテナ31はEUT41の方向に向けられる。このとき全ての測定高さにおいて、EUT41内の主要な電磁波の放射源がアンテナ31の3dBビーム幅の範囲内に収まるようにするとよく、更にはEUT41全体がアンテナ31の3dBビーム幅の範囲内に収まるとよい。
なお昇降体3に取付けられた俯角表示板25は、アンテナ取付アーム4の回動中心4C部に取付けられた針の位置でアンテナ31の俯角を確認可能とするもので、アンテナ31の俯角を手動で調整する場合には必須であるが、
図9のアンテナポジショナ1においてはアンテナ31の俯角が昇降体3の高さに応じて自動的に決まるため省略してもよい。
【0085】
図9のアンテナポジショナ1では、実施例1で昇降体3の昇降を利用してアンテナ31の偏波角を切替えるために配設されていた第1、第2の切替カム等が省略されているが、偏波角の切替えは手動で行なうことが可能である。アンテナ31はアンテナアダプタ5に取付けられており、アンテナアダプタ5をアンテナ取付アーム4に対して回転させることで偏波角の切替えが可能である。アンテナアダプタ5に実施例1と同様に切替レバーを配設し、これを利用して手動でアンテナアダプタ5を回転させてアンテナ31の偏波角を切替えてもよいし、アンテナ31本体をアンテナアダプタ5と一緒に直接手動で回転させてもよい。また偏波角の切替えを手動で行なう場合は、アンテナ取付部5Mを含むアンテナアダプタ5はアンテナ取付アーム4と一体化して、アンテナ取付アーム4のアンテナ取付部に直接アンテナ31を取付けてもよい。
なお
図9のアンテナポジショナ1に第1の実施形態と同様の偏波切換機構を追加できることは言うまでもない。4箇所の測定高さを含む測定範囲の外側に昇降体3を移動させたとき、アンテナ31の偏波角が切替わるようにすればよい。また台車10の上に配設されたモータ12や減速機構13等は実施例1と同様に図示省略したカバーで覆われている。
【0086】
以下、本発明のアンテナポジショナ、不要輻射電磁波測定システム、及び不要輻射電磁波の測定方法に係る第3の実施形態について図面を用いて説明するが、第1の実施形態と同様の構成の部分については詳しい説明は省略する。
(実施例3)
図10は第3の実施形態のアンテナポジショナ1を含む不要輻射電磁波測定システム40の正面図である。第1の実施形態は1GHz以上の周波数の不要輻射電磁波測定に対応していたが、第3の実施形態は主に1GHz未満の周波数の不要輻射電磁波測定に対応したものであり、アンテナ31にはホーンアンテナでなくログペリオディックアンテナを使用している。また上下2箇所の測定高さでEUT41からの不要輻射電磁波の測定を行う例であるが、測定高さの範囲や測定箇所の数はこれに限定されるものではない。なお
図10も昇降体3やアンテナ31を2箇所の測定高さに移動させた状態を重ねて合わせて描いた模式図であり、実際の昇降体3やアンテナ31は1つである。またアンテナ31の種類は限定されるものではなく、例えばダイポールアンテナやバイコニカルアンテナ、ハイブリッドアンテナなどでもよい。
【0087】
1GHz未満の不要輻射電磁波測定では、アンテナ31を上昇させたときでもアンテナ31の俯角を大きくしてEUT41に向ける必要はなく、アンテナ31の俯角はゼロのままでよいとされている。従って
図10のアンテナポジショナ1では、アンテナ31の俯角を変更するために実施例1や実施例2において配設されていたカム板6、接触子9等を含むアンテナ取付アーム4の回動機構は省略されている。
一方でアンテナ31を受波の中心軸回りに回転させて偏波角を切替え、垂直と水平の両偏波の不要輻射電磁波を測定する必要はある。従って
図10のアンテナポジショナ1には実施例1と同様に切替レバー22や第1の切替カム23、第2の切替カム24等の、アンテナ31の偏波角を切替えるための機構が配設されている。なお
図10のアンテナポジショナ1では第1の切替カム23と第2の切替カム24を設けることにより、アンテナ31の偏波角を水平から垂直、垂直から水平、両方向に自在に切替え可能としており測定手順の自由度が高いが、どちらか一方の切替カムを省略しても両偏波の測定は可能である。
なお
図10のアンテナポジショナ1に、手動でアンテナ31の俯角を調整する機構を更に追加してもよい。
【0088】
次に、本発明のアンテナポジショナ、不要輻射電磁波測定システム、及び不要輻射電磁波の測定方法に係る第4の実施形態について図面を用いて説明する。第4の実施形態は第1及び第2の実施形態とはカム板6のカム面6Cの形状のみが異なるため、以下異なる部分のみを中心に説明し、同様の構成の部分については説明を省略する。カム板6はアンテナ31の昇降に応じてアンテナ31の俯角を変えて、アンテナ31をEUT41の方向に向けるための部品である。第4の実施形態ではカム板6のカム面6Cの形状を変えることで、アンテナ31の3dBビーム幅よりEUT41の全高寸法が大きい場合でも、EUT41全体からの不要輻射電磁波の測定が容易に可能となる。
(実施例4)
図11(a)は第1及び第2の実施形態の典型的な不要輻射電磁波測定システム40の動作を説明するための模式図であり、(b)はそのアンテナポジショナ1のカム板6のカム面6Cの形状を説明するための模式図である。また
図11(c)が以下説明する第4の実施形態の不要輻射電磁波測定システム40の動作を説明するための模式図であり、(d)がそのアンテナポジショナ1のカム板6のカム面6Cの模式図である。
【0089】
不要輻射電磁波測定時の、アンテナ31の基準点の大地面からの高さを、下から順にY0、Y1,Y2、Y3、等とし、これに対応するアンテナ取付アーム4の水平回動軸4Hの大地面からの高さを、下から順にZ0、Z1、Z2、Z3、等とすると、少なくともZ0、Z1を含む2箇所以上の測定が必要とされている。
図11(a)において直線Bは水平回動軸4Hが昇降する際の軌跡であり、水平回動軸4Hが直線B上で下から2番目の測定高さZ1にある時のアンテナ31の基準点A1の高さをY1、水平回動軸4Hの高さがZ1より少し低いZ1Lの時のアンテナ基準点A1Lの高さをY1L、水平回動軸4Hの高さがZ1より少し高いZ1Hの時のアンテナ基準点A1Hの高さをY1Hとする。第1及び第2の実施形態では、少なくとも最下の測定高さZ0以外の全ての測定高さZ1、Z2、Z3等でアンテナ31の中心軸をEUT41の方向に向けるため、典型的にはアンテナ31のビームの中心軸が試験台上の略同一点Pを通るようにすると共に、測定高さ以外の中間領域でもアンテナ31の中心軸が試験台上の略同一点Pを通るようにしている。
【0090】
従って
図11(a)のようにアンテナ31のビーム幅θよりEUT41の全高寸法の方が大きく、測定時の水平回動軸4Hの高さZ1においてアンテナ31の3dBビーム幅θの範囲内にEUT41の全体が収まらない場合、高さZ1の近傍で水平回動軸4Hを少し上下させ、高さZ1L又はZ1Hまで移動させても、アンテナ31のビームの中心軸は点Pを通ったままであり、EUT41全体からの不要輻射電磁波を測定することはできない。
図11(b)はこのときのカム板6のカム面6Cの模式図だが、測定高さZ1、Z2のみならず中間領域でもアンテナ31の中心軸が点Pを通るようにしている関係上、不要輻射電磁波の測定高さの範囲内におけるカム面6Cの傾きの変化は小さく、比較的直線に近い形状となっている。なお
図11(b)において、水平回動軸4Hが高さZ1、Z2等にあるとき、接触子9がカム面6Cに接触する位置をz1、z2等としている。
なお最下の測定高さZ0においてはアンテナ31の俯角はゼロとして測定を行う。EUT41の全高寸法がアンテナ31のビーム幅の範囲に収まらないときは、アンテナ31の俯角をゼロとしたままEUT41を走査するようにアンテナ31を上下に移動させて、EUT41の全高がアンテナ31のビーム幅の移動範囲内に収まるようにして測定してもよい。そのため測定高さZ0に対応するカム位置z0の近傍ではカム面6Cの傾きはゼロとし、アンテナ31の俯角をゼロに保持している。
【0091】
これに対して第4の実施形態におけるカム面6Cの形状は、
図11(d)に示すように全体としては水平回動軸4Hが高くなるほどアンテナ31の俯角を大きくする機能を維持したまま、測定高さZ1、Z2に対応するカム位置z1、z2の近傍のz1L~z1H、z2L~z2Hにおけるカム面6Cの傾きは、カム面6Cのそれ以外の部分や、測定範囲全体の平均的なカム面6Cの傾きより大きくなっている。このようなカム面6Cを有するカム板6を使用すると、
図11(c)に示すように、水平回動軸4Hが測定高さZ1のときのアンテナ31の基準点A1の高さをY1としたとき、測定高さZ1より少し低いZ1Lのときのアンテナ31の俯角を第1及び第2の実施形態に比べて少し小さくできるので、そのときのアンテナ31の基準点A1Lの高さY1LをY1と同じにすることができる。また同様に測定高さZ1より少し高いZ1Hのときのアンテナ31の俯角を第1及び第2の実施形態に比べて少し大きくできるので、そのときのアンテナ31の基準点A1Hの高さY1HもY1と同じにすることができる。なお、これにはアンテナ31の基準点が水平回動軸4HよりもEUT41側にあることも利用している。
【0092】
これにより水平回動軸4Hを高さZ1L~Z1~Z1Hに移動させたとき、アンテナ31の基準点の高さを測定高さY1に維持したまま、アンテナ31の中心軸を試験台43上のP1L~P1~P1HまでEUT41を走査するように移動できるため、EUT41の全高寸法が大きくても、EUT41の上部は水平回動軸4Hの高さがZ1Lのときのアンテナ31のビーム幅の範囲内に収まり、EUT41の下部は水平回動軸4Hの高さがZ1Hのときのアンテナ31のビーム幅の範囲内に収まることになる。
従って例えば全高寸法の大きいEUT41に対応して、ビーム幅の広いアンテナ31が入手できず、EUT41とアンテナ31の距離も広げられないような場合でも、以上のようなカム面6Cを有するカム板6を採用すれば、EUT41全体からの不要輻射電磁波の測定が可能となる。水平回動軸4Hを測定高さ近傍で移動させながら、ピークホールド機能を利用すれば、更に容易にEUT41内で最大の放射源からの不要輻射電磁波を測定することができる。
【0093】
次に第4の実施形態の変形例1について説明する。変形例1は
図11(d)の第4の実施形態のカム面6Cに対し、水平回動軸4Hの測定高さZ0に対応するカム位置z0の近傍の形状のみが異なるため、異なる部分のみを中心に説明し、同様の構成の部分は説明を省略する。
(実施例4の変形例1)
図12(a)は第4の実施形態の変形例1の不要輻射電磁波測定システム40の動作を説明するための模式図であり、(b)はそのアンテナポジショナ1のカム板6のカム面6Cの形状を説明するための模式図である。
【0094】
第4の実施形態では、EUT41の全高寸法がアンテナ31のビーム幅よりも大きい場合、特に最下の測定高さZ0においては、EUT41の全高を走査するようにアンテナ31を俯角ゼロのまま上下に移動させるため、測定高さZ0に対応するカム位置z0の近傍ではカム面6Cの傾きはゼロとしていた。これに対し変形例1では
図12(b)に示すように、測定高さZ0に対応するカム位置z0近傍のカム面6Cの傾きを、測定高さZ1等に対応するカム位置z1等と同様に、測定範囲全体のカム面6Cの傾きの平均値より大きくしている。
【0095】
このようなカム板6を使用することにより、水平回動軸4Hを高さZ0L~Z0~Z0Hに移動させたとき、アンテナ31の基準点の高さを測定高さY0に維持したまま、アンテナ31のビームの中心軸を試験台43上のP0L~P0~P0HまでEUT41を走査するように移動できるため、EUT41の全高寸法が大きくても、その上部は水平回動軸4Hの高さがZ0Lのときのアンテナ31のビーム幅の範囲内に収まり、下部は水平回動軸4Hの高さがZ0Hのときのアンテナ31のビーム幅の範囲内に収まることになる。従ってアンテナ31のビーム幅より全高寸法の大きいEUT41に対応して、EUT41全体からの不要輻射電磁波の測定が可能となる。水平回動軸4Hを測定高さ近傍で移動させながら、更にピークホールド機能等を利用すれば、EUT41内で最大の放射源からの不要輻射電磁波を容易に測定することができる。
【0096】
この変形例1の方法によればアンテナ31のビーム幅より全高寸法の大きいEUT41に対し、最下の測定高さZ0においてもアンテナ31の基準点の高さを変えずに、EUT41全体からの不要輻射電磁波の測定が可能となる。アンテナ31の基準点の高さを変える必要がないため、例えばアンテナ31の外形寸法が大きく、高さY0においてアンテナ31とアンテナポジショナ1の台車10もしくは大地面との隙間が小さい場合でも、EUT41全体からの不要輻射電磁波の測定が可能になるという利点がある。
【0097】
次に第4の実施形態の変形例2について説明する。変形例2は
図11(d)の第4の実施形態のカム面6Cに対し、水平回動軸4HのZ1より上側の測定高さに対応するカム位置z1等の近傍の形状のみが異なるため、異なる部分のみを中心に説明し、同様の構成の部分は説明を省略する。
(実施例4の変形例2)
図13(a)は第4の実施形態の変形例2の不要輻射電磁波測定システム40の動作を説明するための模式図であり、(b)はそのアンテナポジショナ1のカム板6のカム面6Cの形状を説明するための模式図である。
【0098】
第4の実施形態では、水平回動軸4Hを最下の測定高さZ0以外の例えば測定高さZ1等に対応するカム位置z1等の近傍では、カム面6Cの傾きを全測定範囲内の傾きの平均値よりも大きくしていた。これにより水平回動軸4Hを高さZ1の近傍でZ1LからZ1Hに移動させたとき、アンテナ31の基準点の高さY1を変えずに、アンテナ31のビームの中心軸が試験台43上のP1LからP1HまでEUT41を高さ方向に走査するように移動するため、EUT41全体からの不要輻射電磁波の測定が可能としていた。これに対し変形例2では
図13(b)のようにZ1以上の測定高さに対応するカム位置z1等の近傍のz1Lからz1Hの範囲において、測定高さZ0に対応するカム位置z0の近傍と同様に、カム面6Cの傾きをゼロとしている。
【0099】
これにより
図13(a)に示すように、水平回動軸4Hを高さZ1の近傍でZ1LからZ1Hに移動させたとき、アンテナ31は高さY1の近傍をY1LからY1Hに移動すると共に、アンテナ31の俯角は一定でEUT41の方向を向いたまま、アンテナ31のビームの中心軸は試験台上のP1LからP1HまでEUT41を走査するように移動する。従ってアンテナ31のビーム幅よりもEUT41の全高寸法が大きい場合でも、EUT41の上部は水平回動軸4Hの高さがZ1Hのときのアンテナ31のビーム幅θの範囲内に収まり、下部は水平回動軸4Hの高さがZ1Lのときのアンテナ31のビーム幅θの範囲内に収まることになるので、アンテナ31の基準点の高さをY1近傍として俯角一定の条件で、EUT41全体からの不要輻射電磁波の測定が可能となる。また水平回動軸4Hを測定高さ近傍で移動させながら、更にピークホールド機能等を利用すれば、EUT41内で最大の放射源からの不要輻射電磁波を容易に測定することができる。
【符号の説明】
【0100】
1 :アンテナポジショナ
2 :柱体
3 :昇降体
3C :昇降体の切り欠き部
3R :昇降体のローラ
3U :昇降体の上補強部
3D :昇降体の下補強部
4 :アンテナ取付アーム
4B :アンテナ取付アームの屈曲部
4C :アンテナ取付アームの回動中心
4D :アンテナ取付アームの分岐部
4H :アンテナ取付アームの水平回動軸
5 :アンテナアダプタ
5M :アンテナアダプタのアンテナ取付部
6 :カム板
6C :カム板のカム面
7 :カム板固定部
9 :接触子
10 :台車
10W :台車の車輪
10L :台車の固定脚
11 :駆動装置
12 :モータ
13 :減速機構
14 :昇降体高さ検出部
15 :コントローラ
16 :駆動プーリ
17 :従動プーリ
18 :ベルト
19 :ベルト押さえ
20 :下ストッパ
21 :上ストッパ
22 :切替レバー
23 :第1の切替カム
24 :第2の切替カム
25 :俯角表示板
31 :アンテナ
31S :アンテナ取付軸
32 :回転検出部
33 :制御部
34 :モータ駆動回路
35 :操作部
40 :不要輻射電磁波測定システム
41 :被測定機器(EUT=Equipment Under Test)
42 :ターンテーブル
43 :試験台