IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ キョーワ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-折板構造屋根の仮設資材取付具 図1
  • 特許-折板構造屋根の仮設資材取付具 図2
  • 特許-折板構造屋根の仮設資材取付具 図3
  • 特許-折板構造屋根の仮設資材取付具 図4
  • 特許-折板構造屋根の仮設資材取付具 図5
  • 特許-折板構造屋根の仮設資材取付具 図6
  • 特許-折板構造屋根の仮設資材取付具 図7
  • 特許-折板構造屋根の仮設資材取付具 図8
  • 特許-折板構造屋根の仮設資材取付具 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-01
(45)【発行日】2022-09-09
(54)【発明の名称】折板構造屋根の仮設資材取付具
(51)【国際特許分類】
   E04G 21/32 20060101AFI20220902BHJP
   E04D 15/00 20060101ALI20220902BHJP
【FI】
E04G21/32 D
E04D15/00 V
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018125944
(22)【出願日】2018-07-02
(65)【公開番号】P2020002745
(43)【公開日】2020-01-09
【審査請求日】2021-04-30
(73)【特許権者】
【識別番号】392031572
【氏名又は名称】キョーワ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001586
【氏名又は名称】弁理士法人アイミー国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三木 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】川村 裕紀
【審査官】家田 政明
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-037766(JP,A)
【文献】特開2011-190593(JP,A)
【文献】特開平08-070132(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 21/32
E04D 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中央上方面に仮設資材を保持する仮設資材保持部を有し、所定の厚さおよび長さを有して真っ直ぐ水平に長手方向に伸びる第1の部材と、
前記第1の部材の上部に設けられ、前記第1の部材と同じ所定の長さを有し真っ直ぐ水平に長手方向に伸びる第2の部材とを含み、
前記第1の部材と前記第2の部材とは、前記仮設資材保持部を中心として、相互に回転可能であり、
前記第2の部材の長手方向の両端下部には、前記第1の部材の厚さを有する端部部材を有する、折板構造屋根の仮設資材取付具。
【請求項2】
前記仮設資材保持部は水平の板であり、前記第1の部材と第2の部材とを位置決めする、位置決め部を有する請求項1に記載の折板構造屋根の仮設資材取付具。
【請求項3】
前記位置決め部は、円周方向に伸びる溝である請求項2に記載の折板構造屋根の仮設資材取付具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は折板構造屋根の仮設資材取付具に関し、構造の簡単な折板構造屋根の親綱式スライド器具やリトラクタ式墜落阻止器具などの係留具、特に、親綱張設用支柱取付具や手摺支柱取付具のような、折板構造屋根の仮設資材取付具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の折板構造屋根の仮設資材取付具としての親綱張設具が、例えば、特許第5123698号公報(特許文献1)に開示されている。図9は特許文献1に開示された親綱張設具100の全体構成を示す斜視図である。図9において、101は、基台であり、両端部間が補強材102により連結された2本の側部梁材103と、側部梁材103の中央部間を連結する中央部梁材104と、側部梁材103の底部に取り付けられた固定金具105とからなっている。側部梁材103および中央部梁材104は、何れも、断面コ字形の溝形鋼からなり、ウエッブを下にし、フランジを上側に向けてH状に組まれている。なお、中央部梁材104をウエッブを下にし、フランジが上側を向くように配したのは、後述するように、作業者の落下荷重により中央部梁材4を容易に捻り変形させることによって、作業者が受ける衝撃力を吸収する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5123698号公報(請求項1等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の折板構造屋根の仮設資材取付具は上記のように構成されていた。従来の取付具は一対の梁材103、103の間隔が固定され、嵩高であった。また、その間隔が一定であり、折板構造屋根の様々な種類の山ピッチに対応でき無いという問題があった。すなわち、従来の仮設資材取付具は、屋根の山ピッチによって固定金具を外して取付位置を変える必要があった。
【0005】
この発明は上記のような問題点に鑑みてなされたもので、コンパクトに収納でき、かつ、折板構造屋根の様々な山ピッチに対応できる、構造の簡単な折板構造屋根の親綱スライド器具やリトラクタ式墜落支持器具などの係留具、特に、親綱張設備用支柱取付具や手摺支柱取付具として利用できる、折板構造屋根の仮設資材取付具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る、仮設資材取付具は、中央上面方向に仮設資材を保持する保持部を有し、所定の厚さおよび長さを有して真っ直ぐ水平に長手方向に伸びる第1の部材と、第1の部材の上部に設けられ、第1の部材と同じ所定の長さを有し真っ直ぐ水平に長手方向に伸びる第2の部材とを含み、第1の部材と第2の部材とは、仮設資材保持部を中心として、相互に回転可能であり、第2の部材の長手方向の両端下部には、第1の部材の厚さを有する端部部材を有する。
【0007】
好ましくは、仮設資材保持部は水平の円板であり、第1の部材と第2の部材とを位置決めする、位置決め部を有する。
【0008】
さらに好ましくは、位置決め部は、円周方向に伸びる溝である。
【発明の効果】
【0009】
この発明に係る折板構造屋根の仮設資材取付具は、中央に垂直上方向に伸びる支柱を保持する仮設資材保持部を有する第1の部材と、その下部に設けられる第2の部材とが仮設資材保持部を中心として相互に回転可能であるため、第1の部材と第2の部材との間隔を調整することができる。
【0010】
その結果、第1の部材と第2の部材とを折り畳むことによりコンパクトにでき、かつ、相互の間隔を調整できるため、折板構造屋根の様々な山ピッチに対応できる折板構造屋根の仮設資材取付具を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】この発明の一実施の形態に係る折板構造屋根の仮設資材取付具を示す斜視図である。
図2】仮設資材取付具の平面図および立面図である。
図3】折板構造屋根の異なる山ピッチに、仮設資材取付具を取り付けた状態を示す図である。
図4】折板構造屋根の異なる山ピッチに、仮設資材取付具を取り付けた状態を示す図である。
図5】折板構造屋根の異なる山ピッチに、仮設資材取付具を取り付けた状態を示す図である。
図6】仮設資材取付具に親綱支柱を取り付けた状態を示す図である。
図7】親綱支柱取付具の使用例を示す図である。
図8】親綱支柱取付具の使用例を示す図である。
図9】従来の折板構造屋根の仮設資材取付具を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、この発明の一実施の形態を、図面を参照して説明する。図1(A)はこの発明の一実施の形態に係る折板構造屋根の仮設資材取付具(以下、「仮設資材取付具」と省略する)10全体を示す斜視図である。図1(A)を参照して、仮設資材取付具10は、所定の厚さを有し、長手方向に第1の寸法だけ真っ直ぐ水平に伸びる第1ベース(第1の部材)11と、第1ベース11に対してその上に回転可能に設けられ、長手方向に同じく第1寸法だけ伸び、所定の厚さを有する第2ベース(第2の部材)12と、第2ベース12の中央部の上に設けられた水平の円板ベース14と、円板ベース14の上に設けられた仮設資材保持部15とを含む。
【0013】
第1ベース11および第2ベース12はそれぞれの中央部に設けられた図示の無い回転軸を中心として相互に回転可能である。したがって、仮設資材保持部15も第1ベース11および第2ベース12のそれぞれの中央部に位置する。それによって、仮設資材保持部15は、円板ベース14を介して第1および第2ベース11,12に回転可能に支持される。
【0014】
仮設資材保持部15は内部に断面が円形の凹部15aを有する円筒状であり、その外部には円板ベース14に対して直交する方向に複数のリブ16a~16dが相互に90度の間隔を開けて設けられている。
【0015】
また、第2ベース12の両端部には、その下面を第1ベース11と同一平面に合わせるために第1ベース11と同一厚さで長さの短い補助金具(端部部材)24b,24dが設けられており、第1ベース11の両端部および第2ベース12の両端部の補助金具24b,24dの下には、仮設資材取付具10を折板構造の屋根に取り付けるための固定金具23a~23dが設けられる。
【0016】
以上のように、第1ベースと第2ベースとが同じ長さを有する、真っ直ぐ水平に伸びる部材から構成されているため、製造が簡単で、コストダウンが可能である。
【0017】
次に、仮設資材取付具10を折板屋根に取り付ける方法について説明する。図1(B)は、固定金具23a~23dの詳細を示す図であり、図1(C)は、固定金具23a~23dを、例えば、図3に示す、折板屋根30の凸部31に取付けた状態を示す図である。図1(A)~(C)を参照して、固定金具23は、長手方向から見たとき、全体が「ハ」字状を構成する2つの部材234a,234bと、固定金具23の上部を一体化するためのボルト233とナット231とボルト233を緩めることによって開閉する下部の口232を含む。
【0018】
仮設資材取付具10を折板構造の屋根に取り付けるときは、図1(C)に示すように、折板屋根30の頂部の凸部31aを固定金具23の上部のボルト233を締めこむことによって「ハ」の字の下部の口232が締まり、ハゼ加締め部31aと固定金具23が一体化する。具体的には後述する。
【0019】
次に、図2を参照して、具体的に説明する。
【0020】
図2(A)は仮設資材取付具10の第1および第2ベース11,12を相互に最大限開いた場合の平面図であり、図2(B)は、図2(A)において、矢印IIB-IIBで示す側面図であり、図2(C)は仮設資材取付具10のベースを閉じた場合の平面図である。
【0021】
図2(A)~(C)を参照して、円板ベース14は、その外周に沿って、相互に間隔を開けて配置された円弧状の溝21a~21dを有し、その下部に設けられた第1および第2ベース11,12はそれぞれの幅方向の上端部にねじ穴を有し、円弧状の溝21a~21dの範囲内でこれらのねじ穴に係合するボルト20a~20dを設けることによって相互間の位置決めを行う。したがって、円弧状の溝21a~21dと、その範囲内でねじ穴に係合するボルト20a~20dとで第1ベースと第2ベースとを位置決めする位置決め部を構成する。
【0022】
この構成により、図2(A)に示す第1と第2ベース11,12が最大限に開いた状態から図2(C)に示すベースを閉じた状態に第1と第2ベース11、12が相互に回転移動して、隣接した第1と第2ベース11、12の相互に離れた所望の位置にボルト20a~20dを固定することにより、これらが相互に所望の位置に位置決めされる。
【0023】
なお、第2ベース12が第1ベース11に重ねられているため、円板ベース14の溝21に係合する第1ベース11のねじ20は、第2ベース12の溝21に係合するねじ20より長く、このねじの外径を覆うスペーサが円板ベース14と第1ベース11との間に設けられる。
【0024】
なお、仮設資材取付具10を構成する第1および第2ベース11,12等は、ここでは全て断面が「ロ」形の軽量形鋼で構成されているが、断面をC形とし、第1ベース11は開口部を上に設け、第2ベース12は開口部を下にして、必要部において、断面を「ロ」形に構成してもよい。断面をC形とすることにより、軽量化を図ることができる。
【0025】
次に、図2に示した仮設資材取付具10の使用方法について説明する。図3は、仮設資材取付具10をそれぞれのベース11,12を最も開いた状態で折板屋根30の凸部31に取付けた状態を示す図である。図3(A)は平面図であり、図3(B)は図3(A)において、矢印IIIB-IIIBで示す矢視の断面図である。
【0026】
図3(A)および(B)を参照して、ここでは、例えば、2つの折板屋根30の凸部31を挟んで仮設資材取付具10を固定している。ここで、仮設資材取付具10を折板屋根30の凸部31に取り付ける場合は、第1および第2ベース11,12の両端部の下端に設けられた固定金具23a~23dの長手方向中央部の溝(図1の232)を折板屋根30の凸部31に嵌めこみ、固定金具23a~23dのハの字状に開いた部分に屋根の凸部31を挿入し締めることによって、固定する。
【0027】
図3は、そのようにして固定した状態を示す。なお、ここで、第1ベース11および第2ベース12を含む上部は図示を省略する。
【0028】
図4は、仮設資材取付具10の隣接する第1および第2ベース間の距離が図3の場合より狭い、折板屋根30の凸部32に取付ける場合を示す図である。
【0029】
図4(A)は平面図であり、図4(B)は図4(A)において、矢印IVB-IVBで示す矢視の断面図である。ここでも、第1ベース11および第2ベース12を含む上部は図示を省略する。
【0030】
図4(A)および(B)を参照して、この例においては、隣接した2つの折板屋根30の凸部32に仮設資材取付具10を固定している。ここで、仮設資材取付具10を折板屋根30の凸部32に取り付ける方法は、先の場合と同様である。図4は、そのようにして固定した状態を示す。
【0031】
図5は、仮設資材取付具10の隣接する第1および第2ベース間の距離が図4の場合より狭い場合の、折板屋根30の凸部33に取付けた状態を示す図である。
【0032】
図5(A)は平面図であり、図5(B)は図5(A)において、矢印VB-VBで示す矢視の断面図である。ここでも、第1ベース11および第2ベース12を含む上部は図示を省略する。
【0033】
図5(A)および(B)を参照して、この例においては、最大幅ピッチの場合の隣接した2つの折板屋根30の凸部33に仮設資材取付具10を固定している。ここで、仮設資材取付具10を折板屋根30の凸部33に取り付ける方法は、先の場合と同様である。図5は、そのようにして固定した状態を示す。
【0034】
次に、仮設資材取付具10に仮設資材として親綱支柱18を取り付けた親綱支柱付取付具13について説明する。図6(A)は親綱支柱付取付具13の正面図であり、図6(B)は図6(A)において、矢印VIB-VIBで示す平面図であり、図6(C)は図6(A)において、矢印VIC-VICで示す側面図である。図6(A)~(C)を参照して、親綱支柱付取付具13は、仮設資材取付具10と、その支柱保持部15の凹部15aに挿入された親綱支柱18とを含む。
【0035】
親綱支柱18は円筒状であり、その上端に略円形の開口部を有するロープ挿通部19を有する。図1で説明したように、第1および第2ベース11,12に設けたボルトの円板ベース14の溝21a~21dにおける位置を変えることによって、第1および第2ベース11,12の両端の間隔を調整できる。
【0036】
その結果、折板屋根30の凸部31のピッチが任意の場合に適用できる。なお、仮設資材保持部15の使用方法は、特許文献1と基本的に同様であるが、新たな使用方法について説明する。図7は、新たな使用方法を説明するための図である。図7を参照して、ここでは、親綱支柱18の先端のロープ挿通部19にロープを通し、そこに、ロープに沿って(図中、矢印で示す)移動する移動部材34を設けている。移動部材34はランヤードフック掛着孔35を有し、これに安全帯D環に取り付けられたランヤードフック36を掛ける。
【0037】
図8は、図7で示した親綱支柱付取付具13の具体的な使用状態を示す図である。図8を参照して、ここでは、折板屋根の図示は省略している。図7と同様に、複数の親綱支柱付取付具13を折板屋根の上に設置し、その先端のロープ挿通部19にロープを通し、そこに、ロープに沿って移動する移動部材34を設けているのは、図7と同様である。図8では、このロープに複数の作業員が、移動部材34、ランヤードフック掛着孔35、および、ランヤードフック36を介して接続されている。この構成によって、屋根上で作業する作業者は、屋根上を移動しながら、安全な作業が可能になる。
【0038】
図8においては、一方向にロープが連続するように親綱支柱付取付具13を設けたが、これに限らず、縦横方向にロープが連続するように設けてもよい。
【0039】
なお、上記実施の形態においては、仮設資材保持部15は円板ベースである場合について説明したが、これに限らず、回転させるための円弧状の溝があれば、円板以外の構成であってもよい。
【0040】
また、仮設資材取付部15の断面が円筒形である場合について説明したが、これに限らず、矩形や多角形や任意の断面を有してもよい。
【0041】
また、上記実施の形態では、第2ベース12の両端部の下面を第1ベース11と同一平面に合わせるために第1ベース11と同一厚さで長さの短い補助金具(端部部材)を設ける場合について説明したが、これに限らず、第1ベースと第2ベースとを同じ厚さとしてもよい。
【0042】
図面を参照してこの発明の実施形態を説明したが、本発明は、図示した実施形態に限定されるものではない。本発明と同一の範囲内において、または均等の範囲内において、図示した実施形態に対して種々の変更を加えることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0043】
この発明によると、コンパクトに収納でき、かつ、折板構造屋根の様々な山ピッチに対応できる、折板構造屋根の仮設資材取付具を提供できるため、仮設資材取付具として有利に利用される。
【符号の説明】
【0044】
10 仮設資材取付具、11 第1ベース、12 第2ベース、13 親綱支柱付取付具、14 円板ベース、15 仮設資材保持部、15a 凹部、16 リブ、18 親綱支柱、19 ロープ挿通部、20a~20d ボルト、21a~21d 溝、23a~23d 固定金具、24b,24d 補助金具、30 折板屋根、31 凸部、34 移動部材、35 ランヤードフック掛着孔、36 ランヤードフック。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9