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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-01
(45)【発行日】2022-09-09
(54)【発明の名称】容器バルブ
(51)【国際特許分類】
   F16K 27/02 20060101AFI20220902BHJP
   F17C 13/04 20060101ALI20220902BHJP
   F16K 1/02 20060101ALN20220902BHJP
   F16K 31/50 20060101ALN20220902BHJP
   F16K 41/12 20060101ALN20220902BHJP
【FI】
F16K27/02
F17C13/04 301Z
F16K1/02 A
F16K31/50 A
F16K41/12
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2018186184
(22)【出願日】2018-09-29
(65)【公開番号】P2020056429
(43)【公開日】2020-04-09
【審査請求日】2021-09-15
(73)【特許権者】
【識別番号】591038602
【氏名又は名称】株式会社ネリキ
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100141656
【弁理士】
【氏名又は名称】大田 英司
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 良昭
(72)【発明者】
【氏名】市坪 篤
(72)【発明者】
【氏名】竹田 勝
(72)【発明者】
【氏名】岡田 慎司
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 功司
【審査官】谿花 正由輝
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-173801(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102009033711(DE,A1)
【文献】特開2005-188672(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 27/02
F17C 13/04
F16K 1/02
F16K 31/50
F16K 41/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バルブ本体と、該バルブ本体の下部に設けられ、流体貯蔵容器に対して取り付けられる容器取付け部と、前記バルブ本体から上下方向に交差する方向へ突出するアウトレットと、前記容器取付け部から前記アウトレットまで連通するとともに、両端部が解放された流路と、該流路の中間部分に設けられた弁室と、該弁室内において、上下に移動して開閉を切り替える開閉弁とを備え、
前記流路における、容器取付け部端部から前記弁室の底面までを一次側流路に設定するとともに、前記弁室の内側面からアウトレット突出端部までを二次側流路に設定し、
前記弁室の底面に形成された一次側流路弁室側開口部の周縁には、該一次側流路弁室側開口部を塞ぐように下方に移動した前記開閉弁が設置される弁シール座面部が形成され、
前記弁室の底面における、前記弁シール座面部よりも外周部に、前記弁室内から前記弁室の内側面に形成された二次側流路弁室側開口部への流体の導出を促進する導出促進溝が、該二次側流路弁室側開口部に連通するとともに、周方向に連続して形成されており、
前記二次側流路の底面は、前記導出促進溝の底面よりも下方に位置する構成とし
前記弁シール座面部を平坦形状に形成し、
前記導出促進溝は、前記弁室の底面の前記外周部の径方向において、前記弁シール座面部の外縁から直線状に傾斜し、径外側に向けて徐々に深くなる傾斜状に形成し、
前記導出促進溝は、前記導出促進溝の底面と前記弁室の内側面との角部を、上下方向に沿った断面が孤状になるように形成し、孤状の径方向内端の接線の傾きが、傾斜する直線状部分の傾きと同一又は略同一となるように形成され、径方向に連続する滑らかな傾斜面で形成した
容器バルブ。
【請求項2】
前記導出促進溝は、前記弁室の底面の前記外周部の周方向において、前記二次側流路弁室側開口部に対応する部位に向けて徐々に深くなる傾斜状に形成し
請求項1に記載の容器バルブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、ガスボンベのような流体貯蔵容器に取り付け、流体貯蔵容器に充填したガス等の流体の導出を規制する容器バルブに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ガスボンベのような流体貯蔵容器(以下、単に「容器」とも称する)等に取り付け、開閉弁を開閉して気体や液体等の流体の出し入れを規制する容器バルブが多用されている(特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載の容器バルブは、ダイヤフラム式構造であり、高圧用容器の開閉バルブとして用いることができ、容器内部に充填されたガスの取り出しやガスの充填等のガスの出し入れを規制することができる。
【0004】
このような容器バルブは、例えば、半導体や太陽電池の製造過程等において、容器内部に充填されたガスをガスの取り出し口であるアウトレットから所望の流量(圧力)で安定して導出させることが要求されており、近年、太陽電池や半導体デバイス等の高機能化、高品質化に伴って、そのようなニーズが益々高まりつつある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2006-144950号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたもので、流体貯蔵容器の内部に充填された流体を、所望の流量で安定して導出させることができる容器バルブの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、バルブ本体と、該バルブ本体の下部に設けられ、流体貯蔵容器に対して取り付けられる容器取付け部と、前記バルブ本体から上下方向に交差する方向へ突出するアウトレットと、前記容器取付け部から前記アウトレットまで連通するとともに、両端部が解放された流路と、該流路の中間部分に設けられた弁室と、該弁室内において、上下に移動して開閉を切り替える開閉弁とを備え、前記流路における、容器取付け部端部から前記弁室の底面までを一次側流路に設定するとともに、前記弁室の内側面からアウトレット突出端部までを二次側流路に設定し、前記弁室の底面に形成された一次側流路弁室側開口部の周縁には、該一次側流路弁室側開口部を塞ぐように下方に移動した前記開閉弁が設置される弁シール座面部が形成され、前記弁室の底面における、前記弁シール座面部よりも外周部に、前記弁室内から前記弁室の内側面に形成された二次側流路弁室側開口部への流体の導出を促進する導出促進溝が、該二次側流路弁室側開口部に連通するとともに、周方向に連続して形成されており、前記二次側流路の底面は、前記導出促進溝の底面よりも下方に位置する構成とし、前記弁シール座面部を平坦形状に形成し、前記導出促進溝は、前記弁室の底面の前記外周部の径方向において、前記弁シール座面部の外縁から直線状に傾斜し、径外側に向けて徐々に深くなる傾斜状に形成し、前記導出促進溝は、前記導出促進溝の底面と前記弁室の内側面との角部を、上下方向に沿った断面が孤状になるように形成し、孤状の径方向内端の接線の傾きが、傾斜する直線状部分の傾きと同一又は略同一となるように形成され、径方向に連続する滑らかな傾斜面で形成した容器バルブである
【0008】
この発明により、前記弁室内(弁室内空間)から前記二次側流路へ流体が流れ込む際の流路抵抗を低減できるため、前記流体貯蔵容器内部に充填した流体を、前記アウトレットから所望の流量で安定して導出させることができる。
特に、流体の種類や容器バルブの使用態様によっては、例えば、流体が前記弁室の底面の外周部等において停留するおそれがある。
【0009】
しかしながら、上述したように、前記弁室の底面の外周部に、前記導出促進溝を形成するとともに、前記二次側流路の底面を、前記導出促進溝の底面よりも下方に位置する構成とすることで、前記弁室の内側面に形成された前記二次側流路弁室側開口部の下縁部に流体が留まることがなく、二次側流路への流体の導出と共に流体を二次側流路の側へ排出することができる。
従って、流体貯蔵容器内部に充填された流体が、弁室内空間に停留することなく、アウトレットからスムーズかつ安定して導出させることができる。
【0010】
また、前記弁シール座面部を平坦形状に形成しているため、下方に移動した開閉弁は、その下面が前記弁シール座面部に面接触状態でしっかりと当接するため、開閉弁による一次側流路弁室側開口部のシール性を確保することができる。
【0011】
また、前記導出促進溝は、前記弁室の底面の前記外周部の径方向において、径外側に向けて徐々に深くなる傾斜状に形成しているため、径外側、すなわち径方向の外側程深くなるように傾斜する前記導出促進溝によって、前記一次側流路弁室側開口部から前記弁室内に流入した流体を、弁室の内側面に形成された二次側流路弁室側開口部が有する径方向外側に流れることを促進でき、結果的に、該二次側流路弁室側開口部を介して二次側流路への流体の導出を促進することができる。
【0012】
また、前記導出促進溝は、前記導出促進溝の底面と前記弁室の内側面との角部を、上下方向に沿った断面が孤状になるように形成しているため、断面孤状の前記導出促進溝によって、前記導出促進溝の底面と前記弁室の内側面との角部に流れる流体の摩擦抵抗を低減して、断面孤状の角部に沿って周方向に流体を円滑に流すことで、結果的に前記弁室の内側面に形成した前記二次側流路弁室側開口部から二次側流路への流体の導出を促進することができる。
【0013】
さらに前記導出促進溝によって、前記導出促進溝の底面と前記弁室の内側面との角部を、上下方向に沿った断面が孤状になるように形成することにより、前記角部に前記流体が停留することを抑制することができる。
上述により、前記流体貯蔵容器内部に充填された流体を、前記アウトレットから所望の流量でさらに安定して導出させることができる。
【0014】
この発明の態様として、前記導出促進溝は、前記弁室の底面の前記外周部の周方向において、前記二次側流路弁室側開口部に対応する部位に向けて徐々に深くなる傾斜状に形成してもよい。
この発明により、周方向に傾斜する前記導出促進溝によって、前記弁室の底面の前記外周部の周方向において、前記一次側流路弁室側開口部から弁室内に流入した流体が、前記二次側流路弁室側開口部に向けて周方向に流れることを促進することができる。
【発明の効果】
【0015】
この発明によれば、流体貯蔵容器の内部に充填された流体を、所望の流量で安定して導出させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本実施形態の容器バルブの概略端面図。
図2図1中の領域X1の拡大図(a)及び図2(a)中の領域X2の拡大図(b)。
図3図2(a)のA-A線矢視断面図。
図4】他の実施形態の容器バルブの図3の要部拡大相当図。
図5図4のB-B線、C-C線、D-D線の各断面図、及び仮想ラインLに沿った部位の展開図。
図6】従来の容器バルブの図1に対応する概略端面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態を詳述する。
なお、以下の説明や各図面において、閉止弁機構30における各構成要素同士の対向部分、あるいは閉止弁機構30とバルブボディ11との対向部分における適宜の箇所にはOリング等を設置するが、Oリング等の詳しい説明については適宜省略している。さらに、図1中のH方向は、容器バルブ10の上下方向(高さ方向)を示すものとし、また、容器バルブ10が取り付けられる図示省略するボンベ容器には、腐食性液化ガス流体が充填されるものとする。
【0018】
まず、本実施形態の容器バルブ10の要部構造の説明に先立って、その前提構造について主に図1を用いて説明する。
図1は、容器バルブ10の周方向においてアウトレット13が2分割される位置にて上下方向に沿って切断した、本実施形態の容器バルブ10の概略縦端面図を示す。
【0019】
容器バルブ10は、図示省略するボンベ容器に取り付けられ、腐食性液化ガス流体の供給や充填のために、ボンベ容器への腐食性液化ガス流体の導通を規制するダイヤフラム式の容器バルブであり、上下方向Hに長い縦長略円筒状のバルブボディ11と、バルブボディ11の下部に一体に設けられ、ボンベ容器の上部の装着部に螺合して取り付けられるボンベ取付け部12と、バルブボディ11の中段付近において上下方向Hに直交する方向、すなわち、側方に突出する態様のアウトレット13と、バルブボディ11の内部の上部において装着される閉止弁機構30とで構成している。
【0020】
バルブボディ11の内部には、上部において閉止弁機構30の装着を許容する弁室41、弁室41の下端とボンベ取付け部12の下端まで連通する一次側流路42、弁室41の下端からアウトレット13の先端まで、弁室41に対して直交する方向に連通する二次側流路43を備えている。
【0021】
弁室41は、上方が開放された略円筒形の凹部である作動室411と、該作動室411の下方において、ひとまわり径の小さな閉止弁室412とで構成している。
【0022】
そして、バルブボディ11には、閉止弁室412、一次側流路42及び二次側流路43によって、ボンベ取付け部12の下端からアウトレット13の突出方向の先端まで連通する流路40が形成されている。
【0023】
一次側流路42は、閉止弁室412の底面415からボンベ取付け部12の下端部まで連通するとともに、両端部が解放されており、閉止弁室412の底面415の中心部から下方(ボンベ取付け部12の下端部)に向けて直線状に延びる縦孔として形成されている。
【0024】
二次側流路43は、閉止弁室412の内側面416からアウトレット13の先端まで連通するとともに、両端部が解放されており、内側面416の周方向における、アウトレット13に対応する部位から側方(アウトレット13の先端)に向けて直線状かつ水平に延びる横孔として形成されている。
【0025】
閉止弁室412の底面415における平面視中央部であって、一次側流路42の上端開口部42a(一次側流路弁室側開口部)の周縁には、下方に移動した開閉弁本体362(開閉弁)の下面が設置される弁座面415bが形成されている。
【0026】
弁座面415bは、平坦かつ水平に形成され開閉弁本体362の下面と略同径となる平面視円形成で形成されており、該開閉弁本体362は、下方に移動したとき、後述する開閉弁本体362のシートリング363が座面415bと密着して上端開口部42aを閉塞する。
【0027】
弁室41に装着する閉止弁機構30は、回転ハンドル31、グランドナット32、スピンドル33、トラストワッシャ34、リテーナ35、開閉弁36、ストップリング371とスリーブ372とで構成するストップスリーブ37、スプリング38及びダイヤフラム39で構成している。
【0028】
回転ハンドル31は、8箇所突出する波形の外周縁を有する平面視略円形雲形に形成され、スピンドル33の上部の被嵌合部331の嵌合を許容する嵌合部311を備えている。
【0029】
グランドナット32は、頭部ナット部321と、弁室41の作動室411の内面に形成した雌ネジ411aと螺合する雄ネジ322とで構成する中空の略円筒形であり、内面にスピンドル33の雄ネジ332に螺合する雌ネジ321aを形成している。
【0030】
スピンドル33は、上から順に、回転ハンドル31の嵌合部311に嵌合する被嵌合部331、上述のグランドナット32の内面に形成された雌ネジ321aに螺合する雄ネジ332、底面で後述するリテーナ35と回転摺動しながら押圧する押圧底部333とで縦長の略円柱状に構成している。
トラストワッシャ34は、スピンドル33の押圧底部333とリテーナ35との間に配置される平面視円形の板状部材である。
【0031】
リテーナ35は、スピンドル33の押圧底部333の嵌合を許容する断面視凹部351aを有するとともに、外面に雄ネジ351bが形成された平面視円形のリテーナ頭部351と、リテーナ頭部351より下部において、底部が開放するとともに、内面に雌ネジ352bが形成された円筒中空部352aを有する小径の円筒部352とで一体構成している。
【0032】
閉止部材としての開閉弁36は、リテーナ35の円筒部352の円筒中空部352aに挿入し、雌ネジ352bと螺合する雄ネジ361aが形成された上方突部361と、リテーナ35の円筒部352よりひとまわり径大な円柱状の開閉弁本体362とで一体に構成している。
【0033】
開閉弁本体362の下面は、一次側流路42の上端開口部42aを塞ぐ大きさを有して平坦状に形成されており、該開閉弁本体362の下面の外周には、該下面と同心状、且つ上端開口部42aよりも大径の円形溝362aが形成されている。そして、開閉弁本体362の下面には、シートリング363を円形溝362aに嵌合することによって備えている。
【0034】
そして、開閉弁本体362は、上方に移動したとき、弁座面415bと離間する一方で、下方に移動したとき、シートリング363が弁座面415bに当接するとともに上端開口部42aを閉塞する。すなわち、開閉弁本体36は、弁座面415bに対して接離することで上端開口部42aを開閉する構成としている。
なお、円柱状に形成した開閉弁本体362と、円筒形空間である弁室41の閉止弁室412の内側面416との間には、弁室内空間Aを構成している。
【0035】
スリーブ372と共にストップスリーブ37を構成するストップリング371は、グランドナット32を相対回転自在に下側から支持するとともに、後述するスリーブ372を上方から押圧する略円筒状であり、リテーナ35のリテーナ頭部351の外面に形成された雄ネジ351bの螺合を許容する雌ネジ371aを上部内面に有している。
【0036】
スリーブ372は、平面視略六角形のリテーナ35の円筒部352に外嵌するとともに、上面側をストップリング371の下端で下向きに押し付けられる円筒状本体372aと、後述するスプリング38の底部を受けるとともに後述するダイヤフラム39の周縁部を、作動室411の底面411bとで挟み込む縮径部372bとで構成している。
【0037】
スプリング38は、組付け状態において、リテーナ35の円筒部352に外嵌するとともに、リテーナ頭部351の底面と、スリーブ372の縮径部372bの上面との間で上下方向に挟み込まれ、スリーブ372の縮径部372bを反力として、リテーナ35を上方に付勢するスプリングである。
【0038】
ダイヤフラム39は、開閉弁36の上方突部361の挿通を許容する中心開口円391を有する薄板状円形板であり、作動室411の底面411bにおいて、閉止弁室412の上部を覆うように配置されている。なお、ダイヤフラム39は、複数の金属製薄板を互いに重ね合わせて構成し、金属製薄板同士の対向面において、対向面の一方にコーティング層を形成する場合もある。
【0039】
このように、回転ハンドル31、グランドナット32、スピンドル33、トラストワッシャ34、リテーナ35、開閉弁36、ストップスリーブ37(ストップリング371,スリーブ372)、スプリング38及びダイヤフラム39で構成する閉止弁機構30は、グランドナット32の雄ネジ322と弁室41の雌ネジ411aと螺合させて、弁室41に挿入される。
【0040】
このように閉止弁機構30が弁室41に挿入された容器バルブ10では、回転ハンドル31を緩み方向に操作してスピンドル33を螺出させると、リテーナ35及びダイヤフラム39を介した開閉弁36の押し下げが開放され、スプリング38の付勢力によって開閉弁36は上方に移動し、上端開口部42aは開放され、閉止弁室412を介して一次側流路42と二次側流路43とが連通して構成する流路40は導通状態となる。つまり、閉止弁室412を介して一次側流路42と二次側流路43とが連通する開弁状態となる。
【0041】
逆に、回転ハンドル31を操作して、スピンドル33が締め付け方向に螺入されると、リテーナ35及びダイヤフラム39を介して開閉弁36が、スプリング38の付勢力に抗して下方に押し下げられ、開閉弁36によって、閉止弁室412において開口する一次側流路42の上端開口部42aは塞がれ、閉止弁室412を介して連通し、流路40を構成する一次側流路42と二次側流路43とが分断される。つまり、閉止弁室412に形成された弁室内空間Aと、一次側流路42とは分断された閉弁状態となる。
【0042】
続いて、本実施形態の容器バルブ10の要部構造について主に図2(a)(b)、図3を用いて説明する。
なお、図2(a)は図1中の領域X1の拡大図、図2(b)は図2(a)中の領域X2の拡大図、図3図2のA-A線矢視断面図を示す。
【0043】
図2(a)、図3に示すように、閉止弁室412の底面415における、弁座面415bよりも外周部415a(以下、「底面外周部415a」と称する)には、閉止弁室412内の弁室内空間Aに有する腐食性液化ガス流体が、該閉止弁室412の内側面416に形成された側方開口部43aから二次側流路43へ導出されることを促進する導出促進溝46を、底面外周部415aの周方向における略全体に形成している(図3参照)。
【0044】
換言すると、同図に示すように、弁座面415bは、底面外周部415aによって平面視で囲まれるように該底面外周部415aよりも高く(上方位置に)形成されている(図2(a)(b)参照)。これにより、底面外周部415aよりも相対的に高い弁座面415bは、底面415において台座状に隆起する平面視中央部の上面に相当する。
【0045】
図2(a)(b)、図3に示すように、導出促進溝46は、底面外周部415aの一部または全部で構成する傾斜状導出促進溝47と、該傾斜状導出促進溝47よりも径方向外側に位置する孤状導出促進溝48とで形成されている。
【0046】
傾斜状導出促進溝47は、特に図2(b)に示すように、底面外周部415aの径方向において、弁座面415bの外縁から内側面416に向けて徐々に深くなるように上下方向に沿った断面(すなわち径方向に沿って上下方向に切断された断面)が直線状に傾斜して形成されたものであり、当例では水平な弁座面415bに対して約10度の傾斜角度αで形成されている。
【0047】
孤状導出促進溝48は、同図に示すように、閉止弁室412の底面415のうち底面外周部415a、すなわち傾斜状導出促進溝47と内側面416との角部49を、径方向に沿って上下方向に切断された断面が孤状に形成したものであり、曲率半径Rが約0.5mmの断面円弧形状で形成されている(同図参照)。
【0048】
孤状導出促進溝48は、その径方向内端48a(すなわち、傾斜状導出促進溝47との隣接端48a)(図2(b)参照)の接線の傾きが、傾斜状導出促進溝47の傾きと同一又は略同一となるように形成されており、これにより、傾斜状導出促進溝47と孤状導出促進溝48とは、径方向に連続する滑らかな傾斜面で形成している。
【0049】
また、図2(a)に示すように、二次側流路43の底面43bは、上述した閉止弁室412の底面415よりも下方に位置する構成としている。
具体的には、二次側流路43は上述したように、閉止弁室412の内側面416の周方向の一部から側方へ延びる横穴として形成されており、二次側流路43における、閉止弁室412内の弁室内空間Aに向けて開口形成された側方開口部43aは、その下縁部に、閉止弁室412の底面415に対して二次側流路43の底面43bが低くなるように斜め下方に向かって傾斜する傾斜部45が形成されている。
【0050】
二次側流路43の底面43bは、傾斜部45によって上述した閉止弁室412の底面415、特に導出促進溝46の底面46bよりも下方に位置する構成としており、当例では図2(a)に示すように、この傾斜部45は、閉止弁室412の底面415の最深部に位置する孤状導出促進溝48の径方向内端48a(図2(b)参照)よりも二次側流路43の底面43bが下方に位置する上下方向の段差を有して形成されている。
【0051】
すなわち図2(a)に示すように、二次側流路43の底面43bの側方開口部43aの側の端部と、導出促進溝46の底面46bの側方開口部43aの側の端部とは、傾斜部45を介して繋がっており、側方開口部43aの下縁部等、弁座面415bから二次側流路43の底面43bに至るまでの間においては、例えば、閉止弁室412の底面415に対して一段高くなった段部等が形成されることなく、導出促進溝46や傾斜部45によって徐々に低くなるように形成されている。
【0052】
さらに当例では図2(a)、図3に示すように、閉止弁室412の底面415の周方向において側方開口部43aに対応する部位の導出促進溝46(当例では孤状導出促進溝48)が切欠き状に形成され、二次側流路43の底面43bが、孤状導出促進溝48に相当する部位に至るまで閉止弁室412の底面415の径方向内側に迫り出して形成されている。
【0053】
このように、二次側流路43の底面43bを底面415の径方向内側まで迫り出して形成することによって、側方開口部43aの下部は、その前方(弁室内空間Aの側)を開放して形成している。
【0054】
これにより、側方開口部43aの下部が閉止弁室412の底面415によって塞がれることがなく、二次側流路43の底面43bを傾斜部45によって閉止弁室412の底面415に対して段下げ形成することに起因して側方開口部43aの開口面積が実質的に狭くなることを防いでいる。
【0055】
さらに図3に示すように、閉止弁室412の底面415の全周に亘って形成した孤状導出促進溝48の周方向の一部にまで二次側流路43の底面43bが迫り出して形成することで、側方開口部43aは、閉止弁室412にて停留した液化ガス流体が、孤状導出促進溝48に沿って二次側流路43へ向けて流れ易い開口形状としている。
【0056】
図1図2(a)(b)、図3に示すように、上述した本実施形態の容器バルブ10は、バルブ本体としてのバルブボディ11と、該バルブボディ11の下部に設けられ、流体貯蔵容器としてのボンベ容器(図示省略)に対して取り付けられる容器取付け部としてのボンベ取付け部12と、バルブボディ11から上下方向に直交する方向(径方向外側)へ突出するアウトレット13と、ボンベ取付け部12からアウトレット13まで連通するとともに、両端部が解放された流路40と、該流路40の中間部分に設けられた弁室としての閉止弁室412と、該閉止弁室412内(弁室内空間A)において、上下に移動して開閉を切り替える開閉弁36とを備え、流路40における、ボンベ取付け部12の端部から閉止弁室412の底面415までを一次側流路42に設定するとともに、閉止弁室412の内側面416からアウトレット13の突出端部までを二次側流路43に設定し、閉止弁室412の底面415に形成された上端開口部42a(一次側流路弁室側開口部)の周縁には、該上端開口部42aを塞ぐように下方に移動した開閉弁36が設置される弁座面415bが形成され、閉止弁室412の底面415における、弁座面415bよりも径方向外側の底面外周部415aに、閉止弁室412内の弁室内空間Aから、該閉止弁室412の内側面416に形成された側方開口部43a(二次側流路弁室側開口部)への流体としての腐食性液化ガス流体の導出を促進する導出促進溝46が、該側方開口部43aに対応する部位と周方向に連続して形成されており(図3参照)、二次側流路43の底面43b(図2(a)参照)は、導出促進溝46の底面46b(図2(b)参照)よりも下方に位置する構成としたものである(図2(a)(b)参照)。
【0057】
上述したように、二次側流路43の底面43bを導出促進溝46の底面46bよりも下方に位置する構成とすることで、例えば、図6に示す従来の容器バルブ100における二次側流路43の底面43bが、導出促進溝46の底面46bよりも上方に位置する構成のように、例えば、側方開口部43aの下部に、閉止弁室412の底面415、詳しくは導出促進溝46の底面46bに対して立ち上がる段部450等を有することなく形成しているため、閉止弁室412内の弁室内空間Aから二次側流路43へ腐食性液化ガス流体が流れ込む際の流路抵抗を低減できる。
なお、図6は、従来の容器バルブ100の図1に対応する概略縦端面図を示す。
【0058】
特に、流体が腐食性液化ガス流体である場合には、容器バルブ10の使用態様によっては、例えば、二次側流路43を介して閉止弁室412内の弁室内空間Aにおいて腐食性液化ガス流体が停留する場合がある。具体的には、腐食性液化ガス流体は、閉止弁室412の底面外周部415a等において停留するおそれがある。
【0059】
しかしながら、上述したように、閉止弁室412の底面外周部415aに、導出促進溝46を形成するとともに(図2(a)(b)、図3参照)、二次側流路43の底面43bを、導出促進溝46の底面46bよりも下方に位置する構成とすることで(図2(a)(b)参照)、閉止弁室412の内側面416に形成された側方開口部43aの下端部が流路抵抗となり腐食性液化ガス流体が停留したりすることがなく、二次側流路43への腐食性液化ガス流体を二次側流路43の側へ排出することができる。
【0060】
さらに、弁室内空間Aから二次側流路43の側へ流体が流れ込む際の流路抵抗を、上述したように低減したことに起因して腐食性液化ガス流体の排出流量を高めることができ、結果的に閉止弁室412に停留する腐食性液化ガス流体を二次側流路43の側へ導出させる導出効果も高めることができる。
従って、弁室内空間Aに腐食性液化ガス流体が停留した場合であっても、流体貯蔵容器内部に充填された腐食性液化ガス流体を、アウトレット13からスムーズかつ安定して導出させることができる。
【0061】
また、例えば、使用によって汚れた容器バルブ10を洗浄する場合があるが、該閉止弁室412に導出促進溝46を設けているため、内部を洗浄する溶剤(洗浄剤)等も、上述の腐食性液化ガス流体と同様に、弁室内空間Aから側方開口部43aへの導出を促進され、洗浄剤を容器バルブ10の内部から容易に排出することができる。
【0062】
また、弁座面415bを平坦形状に形成しているため(図1図2(a)、図3参照)、下方に移動した開閉弁36は、その下面に備えたシートリング363が隙間なく弁座面415bに設置されるなど、該下面がしっかりと設置されるため、開閉弁36による上端開口部42aのシール性を確保することができる。
【0063】
また、導出促進溝46は、閉止弁室412の底面外周部415aの径方向において、弁座面415bの外周縁から閉止弁室412の内側面416に向けて徐々に深くなるように傾斜する傾斜状導出促進溝47として形成しているため(図2(a)(b)、図3参照)、傾斜状導出促進溝47によって、上端開口部42aから弁室内空間Aに流入した腐食性液化ガス流体等の流体が、閉止弁室412の内側面416に形成された側方開口部43aに向けて、すなわち径方向外側に流れることを促進することができ、結果的に、該側方開口部43aを介して二次側流路43への流体の導出を促進することができる。
【0064】
また、導出促進溝46は、閉止弁室412の傾斜状導出促進溝47と、底面415の内側面416との角部49を、上下方向に沿った断面が孤状になる孤状導出促進溝48として形成しているため(図2(a)(b)参照)、孤状導出促進溝48によって、閉止弁室412の底面415と内側面416との角部49を流れる流体の摩擦抵抗を低減して、断面孤状の角部49に沿って流体を周方向に滑らかに流すことができ、結果的に閉止弁室412の内側面416に形成した側方開口部43aから二次側流路43への流体の導出を促進することができる。
【0065】
特に閉止弁室412において腐食性液化ガス流体が停留するおそれがある場合においても、上述したように、上下方向に沿った断面が孤状になる孤状導出促進溝48によって、例えば図2(b)中に仮想線で示した、R加工等を施していない角部490と比較して、腐食性液化ガス流体が角部49に停留することを抑制することができる。
【0066】
続いて、上述した本実施形態の容器バルブ10の変形例に係る容器バルブ10’について、図4図5(a)(b)(c)(d)を用いて説明する。
但し、上述した実施形態と同様の構成については同一の符号を付してその説明を省略する。なお、図4は他の実施形態の容器バルブ10’の図3の要部拡大相当図、図5(a)は図4のB-B線断面図、図5(b)は図4のC-C線断面図、図5(c)は図4のD-D線断面図、図5(d)は図4の仮想ラインLに沿って上下方向に切断した断面部位の展開図を示す。
【0067】
導出促進溝46’は、閉止弁室412の底面外周部415a’の周方向において、側方開口部43aに向けて徐々に深く、かつ幅広なるように形成している。
具体的には図4図5(a)に示すように、傾斜状導出促進溝47’は、閉止弁室412の底面外周部415a’における、平面視で上端開口部42aを隔てて側方開口部43aと対向する側の部位P(図4参照)、すなわち底面外周部415a’の周方向における、側方開口部43aと最も離間する部位Pにおいては、上述した実施形態の傾斜状導出促進溝47と比して幅小に形成されている。
【0068】
そして図4図5(a)(b)(c)に示すように、傾斜状導出促進溝47’は、底面外周部415a’の周方向において、側方開口部43aから最も離間する部位Pから、側方開口部43aに対応する部位に近づくに従って徐々に幅広になるように形成している。
【0069】
さらに図5(a)(b)(c)に示すように、傾斜状導出促進溝47’は、閉止弁室412の底面外周部415a’の周方向の全体に亘って、上述した傾斜状導出促進溝47と同様に、弁座面415bの外縁から内側面416(径方向外側)に向けて徐々に深くなるように径方向に沿って上下方向に切断した断面が直線状に傾斜する傾斜面を底面46b’に有して形成されるとともに、その傾斜角度についても、上述した傾斜状導出促進溝47と略同じ傾斜角度αである約10度に設定されている。
【0070】
このように、傾斜状導出促進溝47’は、閉止弁室412の底面外周部415a’の周方向全体に亘って傾斜角度αを一定に設定しているものの、底面外周部415a’の周方向において、側方開口部43aに対応する部位に近づくに従って、溝幅が徐々に広くなるように形成することにより(図4図5(a)(b)(c))、図5(d)に示すように、底面外周部415a’の周方向において、側方開口部43aに対応する部位に近づくに従って、徐々に深くなる傾斜状に形成されている(特に、図5(d)中における、底面外周部415a’の周方向の傾斜角度β参照)。
【0071】
また図5(a)(b)(c)に示すように、孤状導出促進溝48’については、底面外周部415a’の周方向の全体に亘って、上述した孤状導出促進溝48と同じ曲率半径Rに設定している。
図4図5(a)(b)(c)(d)に示すように、上述した他の実施形態の容器バルブ10’は、導出促進溝46’を、底面外周部415a’の周方向において、側方開口部43aに対応する部位に向けて徐々に深くなる傾斜状に形成しているため、周方向に傾斜する導出促進溝46’によって、閉止弁室412の底面外周部415a’の周方向において、上端開口部42aから閉止弁室412内の弁室内空間Aに流入した腐食性液化ガス流体が、側方開口部43aに向けて周方向に流れることで、閉止弁室412の内側面416に形成した側方開口部43aへの腐食性液化ガス流体の導出を促進することができる。
【0072】
なお、この発明は、上述の実施例の構成のみに限定されるものではなく様々な実施形態で形成することができる。
例えば、上述した実施形態において導出促進溝46,46’は、底面外周部415a,415a’の略全周に亘って形成したが、これに限らず、少なくとも側方開口部43aに対応する部位と周方向に連続して形成したものであれば、底面外周部415a,415a’の周方向に途切れた構成としてもよい。
【0073】
また、二次側流路43の底面43bは、上述した閉止弁室412の底面415,415’よりも下方に位置する構成としたが、この構成に限らず、閉止弁室412から側方開口部43aを介して二次側流路43に、腐食性液化ガス流体の導出を促進できる(すなわち阻害されない)構成であればよく、例えば、閉止弁室412の底面415と同じ高さで形成することも排除しない。
【0074】
また、導出促進溝46,46’は、閉止弁室412の底面415,415’と内側面416との角部49を、上下方向に沿った断面が孤状になるように孤状導出促進溝48,48’として形成するに限らず、面取り状に形成してもよい。
【0075】
また、上述した他の実施形態の容器バルブ10’において、導出促進溝46’は、弁室内空間Aに有する流体の流れを、該導出促進溝46’によって閉止弁室412の底面外周部415a’の周方向において促進することで、該閉止弁室412に停留する腐食性液化ガス流体を、側方開口部43aから導出可能な構成であれば、上述したように、底面外周部415a’の周方向において、側方開口部43aに向けて徐々に深く、かつ幅広に形成するに限らず、例えば、底面外周部415a’の周方向において溝幅は一定としつつ、溝深さのみを変化させて形成してもよい。
【0076】
さらにまた、導出促進溝46’の溝深さを底面外周部415a’の周方向において変化させて形成するにあたり、上述したように、導出促進溝46’(特に傾斜状導出促進溝47’)の溝幅のみを底面外周部415a’の周方向に変化させて形成するに限らず、傾斜状導出促進溝47’の傾斜角度(勾配)や孤状導出促進溝48’の曲率半径を底面外周部415a’の周方向に変化させて形成してもよい。
【0077】
さらに上述の説明では、腐食性液化ガス流体を用いた場合について説明したが、通常の非腐食性ガスや、非液化ガス流体をボンベ容器に貯蔵する、あるいはボンベ容器に充填する際に用いてもよい。さらには、ガスではなく、液体をボンベ容器に貯蔵する、あるいはボンベ容器に充填する際に用いてもよい。
さらには、上述の説明ではダイヤフラム式の容器バルブ10,10’について説明したが、これに限定されず、パッキン式バルブを用いてもよい。
【符号の説明】
【0078】
10,10’…容器バルブ
11…バルブボディ(バルブ本体)
12…ボンベ取付け部(容器取付け部)
13…アウトレット
36…開閉弁
40…流路
42…一次側流路
42a…上端開口部(一次側流路弁室側開口部)
43…二次側流路
43b…二次側流路の底面
43a…側方開口部(二次側流路弁室側開口部)
46,46’…導出促進溝
46b,46b’…導出促進溝の底面
47,47’…傾斜状導出促進溝
48,48’…孤状導出促進溝
412…閉止弁室(弁室)
415,415’…閉止弁室の底面(弁室の底面)
415a,415a’…底面外周部(弁室の底面の外周部)
415b,415b’…弁座面
416…弁室の内側面
A…弁室内空間(弁室内)
図1
図2
図3
図4
図5
図6