(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-01
(45)【発行日】2022-09-09
(54)【発明の名称】噴射ノズル及び気液混合流体生成方法
(51)【国際特許分類】
B05B 1/02 20060101AFI20220902BHJP
B01F 23/20 20220101ALI20220902BHJP
B05B 7/00 20060101ALI20220902BHJP
B08B 3/02 20060101ALI20220902BHJP
B09B 3/45 20220101ALI20220902BHJP
A47L 11/38 20060101ALI20220902BHJP
【FI】
B05B1/02 101
B01F23/20
B05B7/00
B08B3/02
B09B3/45
A47L11/38
(21)【出願番号】P 2019112007
(22)【出願日】2019-06-17
【審査請求日】2022-03-22
(31)【優先権主張番号】P 2019044433
(32)【優先日】2019-03-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】312015886
【氏名又は名称】株式会社オプトジャパン
(74)【代理人】
【識別番号】100125645
【氏名又は名称】是枝 洋介
(74)【代理人】
【識別番号】100145609
【氏名又は名称】楠屋 宏行
(74)【代理人】
【識別番号】100149490
【氏名又は名称】羽柴 拓司
(72)【発明者】
【氏名】安田 享
(72)【発明者】
【氏名】柿本 照美
(72)【発明者】
【氏名】中野 満
【審査官】河内 浩志
(56)【参考文献】
【文献】実開昭52-152410(JP,U)
【文献】特開2008-119623(JP,A)
【文献】特開2012-170849(JP,A)
【文献】特開2006-334582(JP,A)
【文献】特開2015-047527(JP,A)
【文献】特開平09-327637(JP,A)
【文献】特開2004-148174(JP,A)
【文献】特開2013-230448(JP,A)
【文献】米国特許第5482211(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05B 1/00- 3/18
7/00- 9/08
B01F21/00-25/90
B08B 3/00- 3/14
B09B 1/00- 5/00
A47L11/00-11/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加圧熱水を噴射する噴射口を先端部に有するノズルと、
前記先端部を覆って前記加圧熱水の噴射方向下流側に延び、当該噴射方向下流側に開口部を有する筒部と
を備え、
前記筒部の内部に形成される空間において、前記噴射口から噴射される前記加圧熱水と、前記開口部から前記筒部の内壁に沿って前記噴射方向上流側に向かって流入した気体とが混合されることにより、前記加圧熱水が亜臨界状態で、前記気体が超臨界状態にある気液混合流体を生成し、
前記開口部から前記気液混合流体を噴射する、
噴射ノズル。
【請求項2】
前記筒部の内部に設けられ、前記噴射口よりも前記噴射方向上流側に前記流入した気体を溜める溜まり部をさらに備える、
請求項1に記載の噴射ノズル。
【請求項3】
前記筒部の内部に設けられ、前記噴射口から前記開口部に至る流路の流路径を絞る絞り径部をさらに備える、
請求項1又は2に記載の噴射ノズル。
【請求項4】
前記筒部を加熱する加熱部をさらに備える、
請求項1乃至3の何れかに記載の噴射ノズル。
【請求項5】
前記筒部の内壁に保温材が設けられている、
請求項1乃至4の何れかに記載の噴射ノズル。
【請求項6】
前記開口部が扁平形状である、
請求項1乃至5の何れかに記載の噴射ノズル。
【請求項7】
前記開口部から前記筒部の内壁に沿って前記噴射方向上流側に向かって気体を送り込む気体供給部をさらに備える、
請求項1乃至6の何れかに記載の噴射ノズル。
【請求項8】
前記筒部が、外側カバーと内側カバーとを有する二重構造をなしている、
請求項1乃至7の何れかに記載の噴射ノズル。
【請求項9】
前記筒部が、前記外側カバーと前記内側カバーとの間の空間に気体を取り入れるための気体流入孔と、前記気体流入孔から取り入れられた気体を前記筒部の内部に形成される空間に流出させるための気体流出孔とを有している、
請求項8に記載の噴射ノズル。
【請求項10】
前記気体流入孔が、前記筒部の前記噴射方向下流側の端部の端面に設けられている、
請求項9に記載の噴射ノズル。
【請求項11】
前記気体流入孔が、前記端面に複数個周期的に配設されている、
請求項10に記載の噴射ノズル。
【請求項12】
前記気体流出孔が、前記噴射口よりも前記噴射方向上流側に設けられている、
請求項9乃至11の何れかに記載の噴射ノズル。
【請求項13】
前記筒部が、真空断熱二重構造である、
請求項8に記載の噴射ノズル。
【請求項14】
加圧熱水を噴射する噴射口を先端部に有するノズルと、
前記先端部を覆って前記加圧熱水の噴射方向下流側に延び、当該噴射方向下流側に開口部を有する筒部と
を備える噴射ノズルを用いて気液混合流体を生成する気液混合流体生成方法であって、
前記開口部から前記筒部の内壁に沿って前記噴射方向上流側に向かって流入させ、
前記筒部の内部に形成される空間において、流入した気体と前記噴射口から噴射される前記加圧熱水とを混合させることにより、前記加圧熱水が亜臨界状態で、前記気体が超臨界状態にある気液混合流体を生成する、
気液混合流体生成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気液混合流体を生成する噴射ノズル及び気液混合流体の生成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、洗浄等の用途に利用可能なマイクロバブル及びナノバブル等の微細気泡が注目されており、このような微細気泡を含む気液混合流体を生成するためのノズルが種々提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、流通路を流れる流体を整流する整流板と、流体の流れに対して上流側端部から下流側端部にかけて内径が漸次的に狭くなる第1の筒状体と、第1の筒状体との間に微小な隙間を設けて第1の筒状体の下流側に配置され、流体の流れに対して上流側端部から下流側端部にかけて内径の大きさが漸次的に広くなる第2の筒状体とを備えたノズルが開示されている。このノズルによれば、微細気泡を効率良く生成することが可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、微細気泡は高温下では消滅するため、上記の従来技術では常温以下程度の比較的低い温度の流体しか用いることができず、洗浄効果が十分ではない場合がある。
【0006】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、その主たる目的は、上記課題を解決することができる噴射ノズル及び気液混合流体生成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するために、本発明の一の態様の噴射ノズルは、加圧熱水を噴射する噴射口を先端部に有するノズルと、前記先端部を覆って前記加圧熱水の噴射方向下流側に延び、当該噴射方向下流側に開口部を有する筒部とを備え、前記筒部の内部に形成される空間において、前記噴射口から噴射される前記加圧熱水と、前記開口部から前記筒部の内壁に沿って前記噴射方向上流側に向かって流入した気体とが混合されることにより、前記加圧熱水が亜臨界状態で、前記気体が超臨界状態にある気液混合流体を生成し、前記開口部から前記気液混合流体を噴射する。
【0008】
上記態様において、前記筒部の内部に設けられ、前記噴射口よりも前記噴射方向上流側に前記流入した気体を溜める溜まり部をさらに備えていてもよい。
【0009】
また、上記態様において、前記筒部の内部に設けられ、前記噴射口から前記開口部に至る流路の流路径を絞る絞り径部をさらに備えていてもよい。
【0010】
また、上記態様において、前記筒部を加熱する加熱部をさらに備えていてもよい。
【0011】
また、上記態様において、前記筒部の内壁に保温材が設けられていてもよい。
【0012】
また、上記態様において、前記開口部が扁平形状であってもよい。
【0013】
また、上記態様において、前記開口部から前記筒部の内壁に沿って前記噴射方向上流側に向かって気体を送り込む気体供給部をさらに備えていてもよい。
【0014】
また、上記態様において、前記筒部が、外側カバーと内側カバーとを有する二重構造をなしていてもよい。
【0015】
また、上記態様において、前記筒部が、前記外側カバーと前記内側カバーとの間の空間に気体を取り入れるための気体流入孔と、前記気体流入孔から取り入れられた気体を前記筒部の内部に形成される空間に流出させるための気体流出孔とを有していてもよい。
【0016】
また、上記態様において、前記気体流入孔が、前記筒部の前記噴射方向下流側の端部の端面に設けられていてもよい。
【0017】
また、上記態様において、前記気体流入孔が、前記端面に複数個周期的に配設されていてもよい。
【0018】
また、上記態様において、前記気体流出孔が、前記噴射口よりも前記噴射方向上流側に設けられていてもよい。
【0019】
また、上記態様において、前記筒部が、真空断熱二重構造であってもよい。
【0020】
本発明の一の態様の気液混合流体生成方法は、加圧熱水を噴射する噴射口を先端部に有するノズルと、前記先端部を覆って前記加圧熱水の噴射方向下流側に延び、当該噴射方向下流側に開口部を有する筒部とを備える噴射ノズルを用いて気液混合流体を生成する気液混合流体生成方法であって、前記開口部から前記筒部の内壁に沿って前記噴射方向上流側に向かって流入させ、前記筒部の内部に形成される空間において、流入した気体と前記噴射口から噴射される前記加圧熱水とを混合させることにより、前記加圧熱水が亜臨界状態で、前記気体が超臨界状態にある気液混合流体を生成する。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、洗浄効果が高い気液混合流体を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】実施の形態1の塗膜剥離装置の構成を模式的に示す図。
【
図2】実施の形態1の噴射ノズルの構成を部分的に示す断面図。
【
図3】実施の形態1の噴射ノズルの下流端の構成を示す端面図。
【
図4】実施の形態1の噴射ノズルの変形例の構成を部分的に示す断面図。
【
図5】実施の形態1の噴射ノズルの変形例の構成を部分的に示す断面図。
【
図6】実施の形態1の噴射ノズルの変形例の構成を部分的に示す断面図。
【
図7】実施の形態1の噴射ノズルの変形例の構成を部分的に示す断面図。
【
図8】実施の形態1の噴射ノズルの変形例の構成を部分的に示す断面図。
【
図9】実施の形態2の塗膜剥離装置が備える装置本体の主要な構成を示すブロック図。
【
図10】実施の形態2の装置本体の変形例の主要な構成を示すブロック図。
【
図11】実施の形態2の装置本体の変形例の主要な構成を示すブロック図。
【
図12】実施の形態2の装置本体の変形例の主要な構成を示すブロック図。
【
図13】実施の形態3の噴射ノズルの構成を部分的に示す断面図。
【
図14】実施の形態3の噴射ノズルの下流端の構成を示す端面図。
【
図15】実施の形態3の噴射ノズルの変形例の構成を部分的に示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の好ましい実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下に示す各実施の形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置及び方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は下記のものに限定されるわけではない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された技術的範囲内において種々の変更を加えることができる。
【0024】
以下の各実施の形態の噴射ノズルを用いることによって、洗浄対象物の表面を洗浄したり、その表面に形成された塗膜を剥離したりすることができる。洗浄対象物としては、コンクリート構造物及び橋梁などの各種構造物、自動車等の各種車両、船舶、航空機、並びに食品機械等の各種機械を挙げることができるが、特定のものに限定されるわけではない。以下では、構造物の表面に形成された塗膜を剥離する場合を例に挙げて説明する。
【0025】
(実施の形態1)
[塗膜剥離装置の構成]
図1は、実施の形態1の塗膜剥離装置の構成を模式的に示す図である。
図1に示すように、塗膜剥離装置1は、装置本体2と、噴射装置3と、装置本体2及び噴射装置3間を連結する連結ホース4とを備えている。この連結ホース4を介して、装置本体2から噴射装置3に対して加圧熱水が供給される。
【0026】
噴射装置3は、ハンドガンタイプの噴射装置であって、噴射ノズル31及び本体部32を備えている。噴射ノズル31は、本体部32に装着されている。後述するように、噴射ノズル31では気液混合流体が生成され、その気液混合流体が塗膜剥離の対象物である構造物100に対して噴射される。この気液混合流体は、
図1において符号101に示すように、噴射ノズル31から放射状に広がるようにして噴射される。なお、噴射ノズル31の構成の詳細については後述する。
【0027】
本体部32は、把持部32aと、本体部32に回動自在に取り付けられたレバー32bとを有している。本体部32の内部には、レバー32bによって操作される開閉弁(図示せず)が設けられており、この開閉弁の開閉により、装置本体2から供給される加圧熱水の噴射ノズル31に対する供給を制御する。
【0028】
装置本体2は、所定の内部空間を有する筐体内に収容されており、タンク20a、加圧ポンプ20b、及びボイラー機能付きのリザーブタンク20cを備えている。
【0029】
タンク20aには、所定量の水が収容されている。このタンク20aに収容されている水は、加圧ポンプ20bによって所定の圧力まで加圧され、耐圧容器で構成されたリザーブタンク20cへ送り出される。リザーブタンク20cは、加圧ポンプ20bから供給された加圧水を、100℃乃至200℃程度の所定の温度まで加熱して貯蔵する。このようにして貯蔵されている加圧熱水は、加圧ポンプ20bの作用により、連結ホース4を介してリザーブタンク20cから噴射装置3へ供給される。
【0030】
[噴射ノズルの構成]
以下、噴射ノズル31の詳細な構成について説明する。
図2は、噴射ノズル31の構成を部分的に示す断面図である。また、
図3は、噴射ノズル31の下流端の構成を示す端面図である。
図2及び
図3に示すように、噴射ノズル31は、ノズル311と、ノズル311の先端部を覆う筒部312とを備えている。
【0031】
ノズル311は、全体として円管状をなしており、円筒状の柱状部311aと、その先端側(加圧熱水の噴射方向下流側)に設けられ、先端に向かうにしたがって径が小さくなる切頭錐体部311bとを有している。なお、ノズル311の形状は種々のものが採用可能であり、上記の形状に限定されないことは言うまでもない。
【0032】
切頭錐体部311bの先端側には、円形状の噴射口313が設けられている。噴射口313は、柱状部311a及び切頭錐体部311bの内部に形成された流路314と連通している。装置本体2から噴射装置3に対して供給された加圧熱水は、流路314内を流通し、噴射口313から噴射される。
【0033】
筒部312は、ノズル311の柱状部311aよりも径が大きい有底の中空円筒形状をなしており、その底部は、柱状部311aの外周面を覆って固着されている。この筒部312は、ノズル311の先端部分を覆って加圧熱水の噴射方向下流側に延びており、その下流側には円形状の開口部315が設けられている。
【0034】
筒部312の内部において、噴射口313よりも加圧熱水の噴射方向上流側に位置する円盤状の凹部領域316は、後述するように、開口部315から流入した空気を溜める溜まり部として機能する。
【0035】
[塗膜剥離装置の動作]
次に、上記のとおり構成された塗膜剥離装置1の動作について説明する。
本実施の形態では、噴射ノズル31内において加圧熱水と空気とを混合させることによって、水が亜臨界状態にあり、且つ空気が超臨界状態にある気液混合流体を生成する。なお、本明細書において、超臨界状態とは、温度及び圧力のいずれもが臨界点以上である状態を意味し、亜臨界状態とは、温度及び圧力の少なくとも一方が臨界点未満ではあるものの、高温高圧下にある状態を意味する。
【0036】
本実施の形態において用いられる気液混合流体の構成要素である水及び空気の臨界温度及び臨界圧力は、以下の表1のとおりである。
【表1】
【0037】
塗膜剥離装置1は、噴射装置3を用いることによって、上述した気液混合流体を生成し、その気液混合流体を常温常圧下にある構造物100に対して噴射する。以下、これらの気液混合流体の生成及び噴射の各処理の詳細について説明する。
【0038】
[気液混合流体の生成]
まず、装置本体2から噴射装置3に対して加圧熱水が供給される。上述したように、装置本体2のリザーブタンク20cには、100℃乃至200℃程度の加圧熱水が貯蔵されている。この状態で加圧ポンプ20bを作動させることにより、連結ホース4を介してリザーブタンク20cから噴射装置3へ加圧熱水が供給される。なお、ここでは、リザーブタンク20cに貯蔵されている加圧熱水の温度を100℃乃至200℃程度としているが、これに限定されるわけではない。但し、空気が超臨界状態にある気液混合流体を生成するために、140℃程度以上であることが好ましい。
【0039】
上記のように噴射装置3に加圧熱水が供給されている状態において、噴射装置3の本体部32のレバー32bが操作されることによって開閉弁が開状態になると、ノズル311の流路314内を加圧熱水が流通し、噴射口313から噴射される。このように噴射口313から噴射された加圧熱水は、筒部312の開口部315に向かって、筒部312の内部に形成された空間を通過する。
【0040】
筒部312内を流れる加圧熱水の流速によって筒部312内に負圧が発生する。その結果、開口部315から筒部312内に空気が流入する。このとき、空気は、
図2における矢印で示すように、筒部312の内壁に沿って、加圧熱水の噴射方向上流側に向かって流入する。
【0041】
上述したようにして筒部312内に流入した空気と、噴射口313から噴射される加圧熱水とが、筒部312の内部に形成される空間において混合される。その際、加圧熱水の熱によって空気が加熱される。その結果、水が亜臨界状態で、空気が超臨界状態にある気液混合流体が得られる。
【0042】
なお、開口部315から筒部312内に流入した空気は、筒部312の内壁に沿って上流側に向かって進行する。その途中、一部の空気は加圧熱水と混合され、残りの空気は噴射口313を通過して溜まり部316内に進入する。このようにして溜まり部316内に空気が溜まることにより、筒部312内で一定の空気量を確保することができる。その結果、気液混合流体を安定して生成することが可能になる。
【0043】
[気液混合流体の噴射]
上述したようにして生成された気液混合流体は、筒部312の開口部315から構造物100の表面に対して噴射される。常温常圧下にある構造物100に対して噴射された気液混合流体は、急速に温度及び圧力が降下し、水が気化して水蒸気になる。このときに相転移による急激な体積膨張が起こり、その圧力によって構造物100の表面に形成されている塗膜が損傷又は剥離する。
【0044】
また、常温下に放出された気液混合流体の温度が、空気の臨界温度である140.7℃未満になると、気液混合流体に溶解していた空気が分離してナノバブルが生じる。その結果、ナノバブルの圧壊による衝撃によって構造物100の表面上の塗膜が損傷又は剥離する。
【0045】
なお、空気が超臨界状態にあるとき、すなわち洗浄対象物の表面に達した時点の気液混合流体の温度が140.7℃以上であるときは、超臨界流体として利用することができる。超臨界流体は、表面張力が極めて小さいため、構造物100の表面に形成されている微少な凹部まで浸透する。その結果、塗膜を損傷又は剥離する効果が向上する。
【0046】
上述した効果はいずれも瞬間的なものであるが、気液混合流体を連続的に噴射することによって持続させることができる。これにより、十分な塗膜剥離効果が得られる。
【0047】
なお、装置本体2から噴射装置3に供給される加圧熱水の温度が100℃以上である場合、ノズル311の噴射口313から噴射されたときに気化が起こるため、加圧熱水は拡散しながら筒部312の開口部315に向かって進行することになる。しかしながら、上述したように空気が筒部312の内壁に沿って筒部312内に流入するため、その拡散は抑制される。これにより、エネルギーのロスを抑制することができる。
【0048】
[噴射ノズル31の変形例]
空気の臨界状態を維持するために、噴射ノズル31の筒部312内での温度低下を抑制できることが好ましい。そのために、噴射ノズル31が筒部312を加熱する加熱部を備えるようにしてもよい。
図4は、そのような加熱部を備えた噴射ノズル31の構成を部分的に示す断面図である。
図4に示すとおり、筒部312の周囲に、シート状のヒーター317が巻回されている。上述したようにして筒部312において気液混合流体が生成される際、このヒーター317による加熱によって、筒部312内での温度低下が抑制される。その結果、塗膜剥離に適した気液混合流体を安定して生成することが可能になる。なお、加熱部はヒーター以外で構成されていてもよい。例えば、誘導加熱、誘電加熱、又はアーク放電加熱などの方式の加熱部であってもよい。
【0049】
また、噴射ノズル31の内側又は外側に保温材が設けられていてもよい。
図5は、そのような保温材を備えた噴射ノズル31の構成を部分的に示す断面図である。
図5に示すとおり、筒部312の内壁に、シート状の保温材318が設けられている。保温材318は、耐熱性を有するシリコン又はテフロン(登録商標)などの材質によって構成される。この保温材318によっても、筒部312内での温度低下が抑制されるため、塗膜剥離に適した気液混合流体を安定して生成することが可能になる。なお、噴射ノズル31が、上記のヒーター317及び保温材318の両方を備えていてもよい。
【0050】
噴射ノズル31の筒部312内に流入する気体は、空気に限定されるわけではない。例えば、オゾンなどの空気以外の気体を流入させる構成を採用することもできる。
図6は、そのような構成を備えた噴射ノズル31の構成を部分的に示す断面図である。
図6に示すように、筒部312に沿って延びる円管状の気体供給管319が設けられており、その先端部は、筒部312の内壁に接して配設されている。この先端部には、気体供給管319内を流通する気体を放出するための開口部が設けられており、その開口部は筒部312内に向いている。
【0051】
気体供給管319の開口部からは、例えばオゾンが放出される。その結果、オゾンが筒部312の内壁に沿って上流側に向かって送り込まれることになる。これにより、筒部312の内部では、オゾンを含む気液混合流体が生成され、開口部315から噴射される。この場合、塗膜剥離効果をより一層高めることができる。
【0052】
気体供給管319によって筒部312内に送り込まれる気体は、オゾン以外にも様々なものがある。例えば、二酸化炭素を気体供給管319によって送り込むようにしてもよい。これにより、空気に加え、二酸化炭素が超臨界状態にある気液混合流体を生成することが可能になる。なお、二酸化炭素の臨界温度及び臨界圧力は、以下の表2のとおりである。
【表2】
その他にも、窒素・酸素を気体供給管319によって送り込むようにしてもよい。
【0053】
また、気体供給管319によって筒部312の内部に空気が送り込まれてもよい。その場合、より多くの空気量を確保することができるため、より十分な量のナノバブルを発生させることが可能になる。
【0054】
本実施の形態の筒部312の内部領域は円筒状をなしているが、本発明はこれに限定されるわけではない。例えば、噴射口313から開口部315に至る流路の流路径が途中で絞られるような構成であってもよい。
図7は、そのような形状の流路を備えた噴射ノズル31の構成を部分的に示す断面図である。
図7に示すように、噴射ノズル31の筒部312の内側において、噴射口313から下流側の領域には、第1テーパ部312aと、第2テーパ部312bとがこの順に並んで設けられている。
【0055】
第1テーパ部312aは、下流に向かうにしたがって流路の内径が小さくなるように構成されており、他方、第2テーパ部312bは、開口部315に向かうにしたがって流路の内径が大きくなるように構成されている。第1テーパ部312a及び第2テーパ部312bは、流路径を絞る絞り経部312cで接合されている。これらの第1テーパ部312a、第2テーパ部312b、及び絞り経部312cによってベンチュリ管が形成されている。
【0056】
上記のとおりベンチュリ管となっている筒部312の流路内において、加圧熱水又は気液混合流体が通流すると、絞り経部312cにおける減圧によって負圧となる。この負圧に引っ張られて開口部315から空気が流入するため、より多くの空気量を確保することが可能になる。また、この負圧部分に向かって液体が流れることにより、加圧熱水と空気との混合が促進される。これにより、気液混合流体を効率良く生成することが可能になる。
【0057】
また、本実施の形態では、開口部315が円形状をなしているが、本発明はこれに限定されるわけではない。
図8は、噴射ノズル31の下流端の変形例の構成を示す端面図である。
図8に示すように、この変形例の場合、筒部312の開口部315は扁平形状をなしている。このように開口部315が扁平形状をなしている場合、円形状の場合と比べると開口面積が小さくなるため、同量の気液混合流体であれば、剥離対象の塗膜に対してより強い衝撃を与えることが可能になる。その一方で、幅広な形状であるため、一度に広範囲の塗膜に対して気液混合流体を噴射することができるため、効率良く作業を進めることが可能になる。
【0058】
(実施の形態2)
実施の形態1では、加圧熱水と混合させる空気を噴射装置3でのみ取り入れている。これに対し、実施の形態2では、噴射装置3のみではなく、装置本体2においても空気を取り入れる。なお、装置本体2以外の構成について実施の形態1の場合と同様であるので説明を省略する。以下、装置本体2の構成について説明する。
【0059】
[装置本体の構成]
図9は、実施の形態2における装置本体2の主要な構成を示すブロック図である。
図9に示すとおり、装置本体2は、貯水タンク21、加圧ポンプ22、第1タンク23、第2タンク24、空気タンク25、及び二酸化炭素タンク26を備えている。
【0060】
貯水タンク21は、外部の給水設備等から供給された水を貯留する。このようにして貯水タンク21に貯留された水は、加圧ポンプ22によって加圧され、第1タンク23側に送り出される。
【0061】
第1タンク23及び第2タンク24は、加圧水を貯留するタンクであり、耐圧容器で構成されている。これらの第1タンク23及び第2タンク24は、その内部にヒーターを有しており、そのヒーターを用いて貯留している加圧水を加熱することができる。
【0062】
空気タンク25及び二酸化炭素タンク26はそれぞれ、空気及び二酸化炭素を貯留している。これらの空気及び二酸化炭素は、図示しない電磁弁等を介して、第1タンク23と第2タンク24との間の連結する配管内に圧入される。なお、このようにタンクから気体が供給されるのではなく、例えばボンベ等から気体が供給されるような構成であってもよい。
【0063】
[塗膜剥離装置の動作]
本実施の形態では、装置本体2において、水を亜臨界状態とし、且つ空気及び二酸化炭素を超臨界状態とするために、装置本体2内で生成する気液混合流体の温度を200℃程度にする。なお、この気液混合流体の圧力は、少なくとも空気の超臨界状態を維持するために、3.77MPa程度以上とし、二酸化炭素の超臨界状態も維持するためには、7.38MPa以上とする。
【0064】
気液混合流体の生成手順の詳細は以下のとおりである。まず、貯水タンク21に収容されている水が、加圧ポンプ22によって所定の圧力まで加圧され、第1タンク23へ送り出される。第1タンク23は、加圧ポンプ22から供給された加圧水を、例えば80℃などの所定の温度まで加熱して貯留する。
【0065】
第1タンク23に貯留された加圧水は、加圧ポンプ22の作用によって、第2タンク24へ送り出される。その際、第1タンク23と第2タンク24との間を連結する配管内に、空気タンク25及び二酸化炭素タンク26のそれぞれから空気及び二酸化炭素が圧入される。その結果、第1タンク23から第2タンク24へ流入する加圧水に空気及び二酸化炭素が混合され、気液混合流体が生成される。
【0066】
第2タンク24は、上記のようにして生成された気液混合流体を、200℃程度まで加熱して貯留する。また、第2タンク24に貯留される気液混合流体の圧力は、加圧ポンプ22の作用により、3.77Mpa程度以上とされる。その結果、上述したような、水が亜臨界状態にあり、空気及び二酸化炭素が超臨界状態にある気液混合流体が得られる。
【0067】
なお、上記のようにして空気及び二酸化炭素を水に混合する際は、キャビテーションの発生を可能な限り抑制することが好ましい。その手法は特に限定されないが、例えば、流体にせん断力を作用させながら混合することにより、気泡の超微細化を図る手法がある。この手法を実現するための混合装置としては、例えば株式会社ナノクス製のラモンドナノミキサー(登録商標)を挙げることができる。
【0068】
装置本体2は、上記のようにして生成された気液混合流体を、噴射装置3に対して供給する。噴射装置3では、実施の形態1の場合と同様に、噴射ノズル31の開口部315から空気が流入し、筒部312内において、その空気と、装置本体2から供給されて噴射口313から噴射された気液混合流体とが混合される。その結果、実施の形態1の場合と比べて、より多くの空気を気液混合流体に含ませることができるため、開口部315から外部へ噴射された後により多くのナノバブルを発生させることが可能になる。
【0069】
なお、本実施の形態では、第1タンク23と第2タンク24との間を連結する配管内に空気及び二酸化炭素を圧入しているが、これらの気体を導入する位置はこれに限定されない。例えば、
図10に示すように、第1タンク23の手前で空気及び二酸化炭素を導入してもよく、また、
図11に示すように、第2タンク24の出口側で空気及び二酸化炭素を導入してもよい。ここで、空気及び二酸化炭素は同一箇所から導入しなくてもよく、別々の箇所から導入しても構わない。
【0070】
また、本実施の形態では、貯水タンク21と第1タンク23との間に加圧ポンプ22が設けられているが、その他の位置に加圧ポンプ22が設けられていてもよい。例えば、第1タンク23と第2タンク24との間に加圧ポンプ22が設けられていてもよい。また、加圧ポンプ22の数も1つに限定されるわけではなく、例えば、貯水タンク21と第1タンク23との間、及び第1タンク23と第2タンク24との間の2箇所に加圧ポンプ22が設けられていても構わない。
【0071】
また、本実施の形態では、装置本体2が、加圧水を貯留するタンクとして、第1タンク23及び第2タンク24の2つを有しているが、これを1つにしてもよい。
図12は、そのような装置本体2の変形例の主要な構成を示すブロック図である。
図12に示すように、この装置本体2は、第1タンク23を有しておらず、加圧ポンプ22の作用によって、貯水タンク21から第2タンク24へ水が送り出される。加圧ポンプ22と第2タンク24との間の配管には、空気タンク25及び二酸化炭素タンク26が接続されており、これらの空気タンク25及び二酸化炭素タンク26のそれぞれから空気及び二酸化炭素が当該配管内に圧入される。その結果気液混合流体が得られ、上記の場合と同様にして第2タンク24内で加圧され貯留される。なお、この構成においても、空気及び二酸化炭素を第2タンク24の出口側で導入するようにしてもよい。
【0072】
空気及び二酸化炭素等の気体は、第2タンク24の手前の配管内ではなく、第2タンク24内に直接供給するようにしてもよい。但し、その場合、第2タンク24内でキャビテーションが生じて不具合が発生するおそれがあるため、上記のとおり第2タンク24の手前の配管内に気体を供給することが好ましい。
【0073】
また、本実施の形態では、空気及び二酸化炭素を水に溶解させて気液混合流体を生成しているが、空気及び二酸化炭素のいずれか一方のみを水に溶解させて気液混合流体を生成しても構わない。
【0074】
(実施の形態3)
実施の形態3は、筒部が二重構造になっている噴射ノズルである。以下、その構成及び動作について説明する。
【0075】
[噴射ノズルの構成]
図13は、本実施の形態の噴射ノズルの構成を部分的に示す断面図である。また、
図14は、その噴射ノズルの下流端の構成を示す端面図である。以下において、実施の形態1と同様の構成については、対応する符号を付して説明を省略することがある。
【0076】
噴射ノズル51は、ノズル511と、ノズル511の先端部を覆う筒部512とを備えている。筒部512は、中空円筒形状の胴部と中空円錐台形状の底部とを有しており、その底部は、柱状部511aの外周面を覆って固着されている。筒部512の胴部は、ノズル511の先端部分を覆って加圧熱水の噴射方向下流側に延びており、その下流側には円形状の開口部515が設けられている。
【0077】
筒部512の内部において、噴射口513よりも加圧熱水の噴射方向上流側に位置する円盤状の凹部領域516は、開口部515から流入した空気を溜める溜まり部として機能する。
【0078】
筒部512は、外側カバー512aと内側カバー512bとを有する二重構造をなしている。外側カバー512aと内側カバー512bとの間には空隙が形成されている。筒部512の先端側(加圧熱水の噴射方向下流側)の端部の端面には、この空隙に空気を取り入れるための複数の気体流入孔520aが形成されている。本実施の形態の場合、
図14に示すとおり、6個の円形状の気体流入孔520aが当該端面に周期的に配設されている。
【0079】
また、筒部512の他方の端部側であって、噴射口513よりも加圧熱水の噴射方向上流側には、気体流入孔520aから取り入れられた空気を筒部512内に流出させるための気体流出孔520bが形成されている。図示していないが、気体流入孔520aの場合と同様に、6個の円形状の気体流出孔520bが周期的に配設されている。
【0080】
なお、気体流入孔520a及び気体流出孔520bの個数・形状・形成位置は上記に限定されるわけではない。例えば、各孔の数は1個でも複数個でもよく、矩形状又は円形状などであってもよい。また、気体流入孔520aが筒部512の先端側端部の端面の周辺などに形成されていてもよく、気体流出孔520bは噴射口513よりも加圧熱水の噴射方向下流側に形成されていてもよい。
【0081】
[気液混合流体の生成]
実施の形態1及び2の場合と同様に、上記のように構成された噴射ノズル51によって気液混合流体が生成される。すなわち、噴射ノズル51を備える噴射装置3に加圧熱水が供給されている状態において、噴射装置3の開閉弁が開状態になると、ノズル511の流路514内を加圧熱水が流通し、噴射口513から噴射される。このように噴射口513から噴射された加圧熱水は、筒部512の開口部515に向かって、筒部512の内部に形成された空間を通過する。
【0082】
筒部512内を流れる加圧熱水の流速によって筒部512内に負圧が発生する。その結果、開口部515から筒部512内に空気が流入する。このとき、空気は、
図13における矢印で示すように、筒部512の内壁に沿って、加圧熱水の噴射方向上流側に向かって流入する。
【0083】
また、上記のように開口部515から筒部512内に空気が流入するとともに、気体流入孔520aから外側カバー512a及び内側カバー512b間の空隙に空気が流入する。この空気は、加圧熱水の噴射方向上流側に向かって当該空隙内を通過し、気体流出孔520bから筒部512内へ流出する。
【0084】
上述したようにして筒部512内に流入した空気、及び気体流出孔520bから筒部512内に流出した空気と、噴射口513から噴射される加圧熱水とが、筒部512の内部に形成される空間において混合される。その際、加圧熱水の熱によって空気が加熱される。その結果、水が亜臨界状態で、空気が超臨界状態にある気液混合流体が得られる。
【0085】
なお、本実施の形態の場合、気体流出孔520bが噴射口513よりも加圧熱水の噴射方向上流側に設けられているため、気体流出孔520bから筒部512内に流出した空気は、溜まり部516内に送り込まれることになる。また、実施の形態1の場合と同様に、開口部515から筒部512内に流入した空気の一部が溜まり部516内に送り込まれる。このようにして溜まり部516内に空気が溜まることにより、筒部512内で一定の空気量を確保することができる。その結果、気液混合流体を安定して生成することが可能になる。
【0086】
また、本実施の形態では、気体流入孔520a及び気体流出孔520bが複数個周期的に配設されているため、外側カバー512aと内側カバー512bとの間の空隙に外部から効率的に空気を取り込み、その空気を筒部512内に効率的に流出させることができる。
【0087】
上述したように、本実施の形態では、開口部515から筒部512内に空気が流入するとともに、外側カバー512aと内側カバー512bとの間の空隙を介して筒部512内に空気が流入するため、実施の形態1及び2の場合と比べて、筒部512内により多くの空気を取り込むことが可能になる。
【0088】
上述したようにして生成された気液混合流体は、実施の形態1及び2の場合と同様に、筒部512の開口部515から構造物100の表面に対して噴射され、構造物100の表面に形成されている塗膜を損傷又は剥離させることができる。
【0089】
[噴射ノズル51の変形例]
図15は、実施の形態3の噴射ノズルの変形例の構成を部分的に示す断面図である。
図15に示すように、この変形例の場合、噴射ノズル51の筒部512に気体流入孔及び気体流出孔が設けられておらず、外側カバー512aと内側カバー512bとの間に形成された空間は密閉され真空引きされている。このように、筒部512は真空断熱二重構造となっている。
【0090】
上記のとおり、噴射ノズル51の筒部512を真空断熱二重構造とすることにより、上述したようにして筒部512において気液混合流体が生成される際、筒部512内の温度低下を抑制することができる。これにより、空気の臨界状態の維持を図ることができ、塗膜剥離に適した気液混合流体を安定して生成することが可能になる。
【0091】
(その他の実施の形態)
上記の各実施の形態において、気液混合流体に金属錯体を添加するようにしてもよい。例えば、気液混合流体にチタン錯体を添加した場合では、気液混合流体の噴射により洗浄対象物の表面の塗膜剥離及び洗浄が行われるとともに、その表面に酸化チタンを含有する保護層を形成することができる。そのため、洗浄のみではなく、洗浄対象物の表面の保護効果も期待できる。
【0092】
気液混合流体に添加する金属錯体は、上記のチタン錯体以外であってもよい。ここで、金属錯体とは、錯体を構成する金属の析出ナノ粒子を含むものであって、重曹又はNaOHなどの水溶性アルカリ成分も含むものをいう。具体的には、硅酸ナトリウム及び硅酸カリウム等の金属錯体を用いることが可能である。その他にも、Li+,Na+,K+,Ca2+,Sr2+,Ba2+,Cd2+,Cu2+,Mn2+,Zn2+,La3+,Ni2+,Mg2+,Co2+,Fe2+等の置換活性な金属錯体、及びCr3+,Co3+,Ru2+,Rh3+,Ir3+,Pt2+等の置換不活性な金属錯体を用いることができる。
【0093】
上述した各実施の形態を組み合わせることによって新たな形態を得ることが可能である。例えば、実施の形態1及び3を組み合わせることによって、実施の形態1の噴射ノズル31を、実施の形態3の噴射ノズル51と同様に底部が円錐台形状の筒部を有する構成とすることができる。また、実施の形態2及び3を組み合わせることによって、装置本体2から供給されて噴射口513から噴射された気液混合流体と、開口部515及び気体流出孔520bから筒部512内に流入した空気とを混合させるような構成を得ることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明の噴射ノズル及び気液混合流体生成方法は、塗膜剥離に適した気液混合流体を生成する噴射ノズル及び気液混合流体生成方法などとして有用である。
【符号の説明】
【0095】
1 塗膜剥離装置
2 装置本体
20a タンク
20b 加圧ポンプ
20c リザーブタンク
20b リザーブタンク
21 貯水タンク
22 加圧ポンプ
23 第1タンク
24 第2タンク
25 空気タンク
26 二酸化炭素タンク
3 噴射装置
31,51 噴射ノズル
32 本体部
32a 把持部
32b レバー
311,511 ノズル
312,512 筒部
313,513 噴射口
314,514 流路
315,515 開口部
316,516 溜まり部
317 ヒーター
318 保温材
319 気体供給管
4 連結ホース
100 構造物
512a 外側カバー
512b 内側カバー
520a 気体流入孔
520b 気体流出孔