IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日清工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-両頭平面研削盤 図1
  • 特許-両頭平面研削盤 図2
  • 特許-両頭平面研削盤 図3
  • 特許-両頭平面研削盤 図4
  • 特許-両頭平面研削盤 図5
  • 特許-両頭平面研削盤 図6
  • 特許-両頭平面研削盤 図7
  • 特許-両頭平面研削盤 図8
  • 特許-両頭平面研削盤 図9
  • 特許-両頭平面研削盤 図10
  • 特許-両頭平面研削盤 図11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-01
(45)【発行日】2022-09-09
(54)【発明の名称】両頭平面研削盤
(51)【国際特許分類】
   B24B 7/17 20060101AFI20220902BHJP
   B24B 41/06 20120101ALI20220902BHJP
【FI】
B24B7/17 Z
B24B41/06 L
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019125758
(22)【出願日】2019-07-05
(65)【公開番号】P2021010964
(43)【公開日】2021-02-04
【審査請求日】2021-02-16
(73)【特許権者】
【識別番号】594050670
【氏名又は名称】日清工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101351
【弁理士】
【氏名又は名称】辰巳 忠宏
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 幸雄
【審査官】山内 康明
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-144208(JP,A)
【文献】実開昭60-042552(JP,U)
【文献】実開昭62-127752(JP,U)
【文献】特開2003-124167(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0235402(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 7/17
B24B 41/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
断面円形の外周面を有する1つのワークを研削するために第1方向に間隔をあけて対向配置されかつ回転する一対の砥石と、
前記ワークの外周面に着脱できるように前記第1方向に対して垂直な方向に開閉可能なクランプ部材と、
前記クランプ部材を囲むように設けられる回転部材と、
前記回転部材の内側に前記クランプ部材を保持する保持部と、
前記第1方向に延びる第1回転軸周りに前記回転部材を回転させる回転駆動部と、
前記ワークを前記一対の砥石で挟んで前記ワークの両主面を研削するために少なくとも一方の前記砥石を前記ワークに対して切り込ませる砥石切込部とを備え、
前記保持部は、前記回転部材および前記クランプ部材のいずれか一方に設けられ、
前記保持部は、前記クランプ部材が前記第1方向に移動できるように前記回転部材および前記クランプ部材の他方を前記第1方向から挟み、かつ前記他方に対して周方向に係合可能に構成される、両頭平面研削盤。
【請求項2】
前記保持部は、前記第1回転軸を基準として両側に設けられる、請求項1に記載の両頭平面研削盤。
【請求項3】
前記回転部材および前記クランプ部材の他方は、
前記保持部によって挟まれる薄肉部と、
前記薄肉部を挟む前記保持部に対して前記回転部材の周方向に係合可能に前記薄肉部に連設される係合部とを含む、請求項1または2に記載の両頭平面研削盤。
【請求項4】
前記クランプ部材は、
第1クランプアームおよび第2クランプアームと、
前記第1クランプアームおよび前記第2クランプアーム同士を接近/離間できるように前記第1クランプアームおよび前記第2クランプアームの一端部同士および他端部同士をそれぞれ連結する第1弾性部材および第2弾性部材とを有する、請求項1から3のいずれかに記載の両頭平面研削盤。
【請求項5】
前記第1クランプアームと前記第2クランプアームとを離間させるために前記第1クランプアームに設けられる離間部をさらに含む、請求項4に記載の両頭平面研削盤。
【請求項6】
前記第1クランプアームは、
前記第1クランプアームの内周面に設けられる凹部と、
前記凹部から前記第1クランプアームの一端部にまで周方向に延びる第1案内部と、
前記凹部から前記第1クランプアームの他端部にまで周方向に延びる第2案内部とを含み、
前記離間部は、
一端部が前記凹部に位置しかつ他端部が前記第2クランプアームの一端部に接触するように前記第1案内部に案内される第1押し棒と、
一端部が前記凹部に位置しかつ他端部が前記第2クランプアームの他端部に接触するように前記第2案内部に案内される第2押し棒とを含む、請求項5に記載の両頭平面研削盤。
【請求項7】
前記クランプ部材は、前記ワークの前記外周面に接触する接触部材を有し、
前記接触部材の摩擦係数は、前記クランプ部材における他の部分の摩擦係数よりも大きい、請求項1から6のいずれかに記載の両頭平面研削盤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は両頭平面研削盤に関し、より特定的には、一対の砥石を回転させてワークの両主面を研削する両頭平面研削盤に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の従来技術の一例として、特許文献1に両頭研削装置が開示されている。特許文献1の第6図に示される実施形態では、治具の内周溝に弾性体が設けられ、弾性体が工作物の外周面に押し付けられる。そして、治具とともに弾性体が回転すると、弾性体と工作物との接触部分には摩擦力が発生する。これによって、治具とともに工作物を回転させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実開昭60-42552号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この実施形態では、上下方向に移動不能な弾性体が工作物の外周面に押し付けられるので、研削加工中に工作物は上下方向に移動することができず、工作物の加工精度を高くできない。また、工作物を治具によって保持させるとき、工作物を弾性体の内周部に押し込まなければならず、時間がかかってしまい、研削能率が低下してしまう。
【0005】
それゆえに、この発明の主たる目的は、ワークの両主面の研削能率および加工精度を向上させることができる、両頭平面研削盤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の目的を達成するために、断面円形の外周面を有する1つのワークを研削するために第1方向に間隔をあけて対向配置されかつ回転する一対の砥石と、ワークの外周面に着脱できるように開閉可能なクランプ部材と、クランプ部材を囲むように設けられる回転部材と、回転部材の内側にクランプ部材を保持する保持部と、第1方向に延びる第1回転軸周りに回転部材を回転させる回転駆動部と、ワークを一対の砥石で挟んでワークの両主面を研削するために少なくとも一方の砥石をワークに対して切り込ませる砥石切込部とを備え、保持部は、回転部材およびクランプ部材のいずれか一方に設けられ、保持部は、クランプ部材が第1方向に移動できるように回転部材およびクランプ部材の他方を第1方向から挟み、かつ他方に対して周方向に係合可能に構成される、両頭平面研削盤が提供される。
【0007】
この発明では、回転部材の内側に設けられたクランプ部材を開き、ワークの外周面がクランプ部材の内周面に対向するようにワークをクランプ部材の内側に位置決めした状態で、クランプ部材を閉じることによって、ワークの外周面にクランプ部材を装着できる。一方、ワークに装着されたクランプ部材を開くことによって、クランプ部材からワークを容易に取り外すことができる。このように回転部材の内側に設けられたクランプ部材を開閉することによって、クランプ部材をワークに容易に着脱でき、ワークの両主面の研削能率を向上させることができる。また、回転部材およびクランプ部材のいずれか一方に設けられた保持部は、回転部材およびクランプ部材の他方(回転部材およびクランプ部材のうち保持部が設けられていない方の部材)を、クランプ部材が第1方向に移動できるように第1方向から挟み、かつ回転部材およびクランプ部材の他方に対して周方向に係合できる。
このように、保持部は、クランプ部材を第1方向に移動可能に回転部材に取り付ける取付部として機能するとともに、回転部材に対するクランプ部材の回り止めとして機能し、2つの機能を兼ねる。したがって、回転部材の内側に設けられたクランプ部材がワークの外周面をクランプした状態で、第1方向に延びる第1回転軸周りに回転部材を回転させると、回転部材の回転がクランプ部材に伝達され、回転部材とともにクランプ部材およびワークを回転させることができる。このとき、ワークとクランプ部材とは第1方向に移動でき、研削中にワークは両砥石間で第1方向に移動できるので、たとえばワークの両主面にうねりがある場合でも、揺動することを防止しつつワークを回転させることができる。その結果、ワークの両主面の加工精度を向上させることができる。
【0008】
好ましくは、保持部は、第1回転軸を基準として両側に設けられる。この場合、クランプ部材は、保持部が設けられた複数の箇所で第1方向の移動範囲を規制されるので、クランプ部材は全体として、傾くことなく第1方向に移動できる。したがって、ワークの両主面の加工精度をさらに向上させることができる。
【0009】
また好ましくは、回転部材およびクランプ部材の他方は、保持部によって挟まれる薄肉部と、薄肉部を挟む保持部に対して回転部材の周方向に係合可能に薄肉部に連設される係合部とを含む。この場合、保持部は、クランプ部材が第1方向に移動できるように薄肉部を挟む。したがって、薄肉部を挟む保持部の一方の外表面から他方の外表面までの寸法を比較的小さくでき、仕上げ寸法の小さいワークに対応できる。また、薄肉部に連設される部分を保持部に係合させる係合部とするので、係合部を別部材として準備する必要はなく、部品数を抑制できる。
【0010】
さらに好ましくは、クランプ部材は、第1クランプアームおよび第2クランプアームと、第1クランプアームおよび第2クランプアーム同士を接近/離間できるように第1クランプアームおよび第2クランプアームの一端部同士および他端部同士をそれぞれ連結する第1弾性部材および第2弾性部材とを有する。この場合、第1弾性部材および第2弾性部材の弾発力に抗して第1クランプアームおよび第2クランプアーム同士を離間させるだけでクランプ部材を開き、ワーク外周面をアンクランプできる。一方、当該弾発力に抗する力を解除して当該弾発力によって第1クランプアームおよび第2クランプアーム同士を接近させるだけでクランプ部材を閉じ、ワークの外周面をクランプできる。したがって、ワークをクランプ部材に容易に着脱でき、ワークの両主面の研削能率をさらに向上させることができる。
【0011】
好ましくは、第1クランプアームと第2クランプアームとを離間させるために第1クランプアームに設けられる離間部をさらに含む。この場合、離間部によって第1クランプアームと第2クランプアームとを容易に離間させることができる。
【0012】
また好ましくは、第1クランプアームは、第1クランプアームの内周面に設けられる凹部と、凹部から第1クランプアームの一端部にまで周方向に延びる第1案内部と、凹部から第1クランプアームの他端部にまで周方向に延びる第2案内部とを含み、離間部は、一端部が凹部に位置しかつ他端部が第2クランプアームの一端部に接触するように第1案内部に案内される第1押し棒と、一端部が凹部に位置しかつ他端部が第2クランプアームの他端部に接触するように第2案内部に案内される第2押し棒とを含む。この場合、第1クランプアームにおける第1案内部に設けられる第1押し棒を、凹部側の端部から第2クランプアームの一端部側に押し込み、かつ第1クランプアームにおける第2案内部に設けられる第2押し棒を、凹部側の端部から第2クランプアームの他端部側に押し込むことによって、第1クランプアームおよび第2クランプアーム同士を離間でき、クランプ部材を開くことができる。一方、第1押し棒および第2押し棒の押し込みを解除することによって、第1クランプアームおよび第2クランプアーム同士を接近させることができ、クランプ部材を閉じることができる。このように、第1押し棒および第2押し棒の押し込みとその解除だけで、クランプ部材を容易に開閉できる。したがって、ワークをクランプ部材に容易に着脱でき、ワークの両主面の研削能率を一層向上させることができる。
【0013】
さらに好ましくは、クランプ部材は、ワークの外周面に接触する接触部材を有し、接触部材の摩擦係数は、クランプ部材における他の部分の摩擦係数よりも大きい。この場合、クランプ部材とワークの外周面との接触部分(接触部材とワークの外周面との接触部分)に発生する摩擦力を大きくできる。そのため、回転部材の回転を、クランプ部材を介してワークに確実に伝達することができる。これによって、ワークをより確実に回転させることができるので、ワークの両主面の加工精度をさらに向上させることができる。
【0014】
なお、この発明において「ワークの両主面」とは、ワークの外周面に接続される一対の面のことを意味する。たとえば、ワークが円環形状を有する場合には、ワークの両主面とは一対の円環状の面(すなわち、ワークの表面のうち外周面および内周面を除く2つの面)のことを意味し、ワークが円板形状を有する場合には、ワークの両主面とは一対の円形状の面(すなわち、ワークの表面のうち外周面を除く2つの面)のことを意味する。
【発明の効果】
【0015】
この発明によれば、ワークの両主面の研削能率および加工精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】この発明の一実施形態に係る立型両頭平面研削盤を示す側面図解図である。
図2図1に示す立型両頭平面研削盤のA-A線断面図解図である。
図3】立型両頭平面研削盤の主要部の構成を示す断面図解図である。
図4】立型両頭平面研削盤の主要部の構成を示す平面図である。
図5】回転部材に取り付けられたクランプ部材がワークをクランプした状態を示す平面図である。
図6図5のB-B線断面図である。
図7図5のC-C線断面図解図であり、(a)はクランプ部材が供給位置にある状態における図であり、(b)はクランプ部材が一対の砥石間に位置する状態における図である。
図8】回転部材に取り付けられたクランプ部材がワークをアンクランプした状態を示す平面図である。
図9】回転部材、クランプ部材および保持部の変形例を示す平面図である。
図10】2つの回転部材を支持可能な旋回プレートを含む立型両頭平面研削盤を示す断面図解図である。
図11】この発明の他の実施形態に係る立型両頭平面研削盤の主要部を示す断面図解図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照してこの発明の実施の形態について説明する。
【0018】
図1および図2を参照して、立型両頭平面研削盤(以下、単に両頭平面研削盤という)10は、凹部12aを有するコラム12を含む。凹部12aは、前方(後述するフロントコラム26側)に向かって開口するようにコラム12の中央部に形成される。コラム12の凹部12aには、ワークWを研削するための一対の砥石14a,14bがV方向(この実施形態では上下方向)に間隔をあけて同軸上に対向配置される。この実施形態では、V方向が第1方向に相当する。また、砥石14a,14bはそれぞれ平面視において円環形状を有し、ワークWは平面視において円環形状を有する。したがって、ワークWは断面円形の外周面を有する。図面が煩雑になることを避けるために、図1では、一対の砥石14a,14b近傍を簡略化して示し、図2では、後述する駆動モータ22bを含む一部の構成の図示を省略している。後述する図10についても同様である。
【0019】
一対の砥石14a,14bは、砥石軸16a,16bによって支持される。砥石軸16a,16bはそれぞれ、円筒状の支持部18a,18bを上下方向に貫通し、図示しないベアリングを介して支持部18a,18bによって回転自在かつ上下移動可能に支持されるとともに、ベルト20a,20bを介して駆動モータ22a,22bに連動する。したがって、駆動モータ22a,22bの回転駆動力がベルト20a,20bを介して砥石軸16a,16bに伝達され、これによって砥石14a,14bが回転駆動される。
【0020】
砥石軸16a,16bはそれぞれ、砥石切込装置24a,24bによって上下方向に移動可能である。砥石軸16a,16bがそれぞれ砥石切込装置24a,24bによって上下方向に移動されることによって、一対の砥石14a,14bがそれぞれ上下方向に移動され、ワークWに対して切り込むことができる。この実施形態では、ワークWの研削時には、砥石14bは上下に移動することなく、砥石切込装置24aによって砥石14aが下降する。したがって、砥石切込装置24aが砥石切込部に相当する。
【0021】
コラム12の前側かつコラム12に隣接する位置にフロントコラム26が配置される。フロントコラム26には、搬送ユニット28および回転駆動ユニット30が設けられる。この実施形態では、回転駆動ユニット30が回転駆動部に相当する。
【0022】
図3および図4をも参照して、搬送ユニット28は、駆動軸32を含む。駆動軸32は、中空筒状に形成され、上下方向に延びるように設けられ、図示しないベアリングを介して支持部34によって回転可能に支持される。駆動軸32は、伝達部材36を介して駆動モータ38に連結される。駆動軸32の上端部には、複数(この実施形態では、3つ)のボルト40によって旋回プレート42が固定される。この実施形態では、旋回プレート42は、V方向に対して直角に設けられる。駆動モータ38の回転が伝達部材36を介して駆動軸32に伝達され、駆動軸32が回転駆動される。すると、旋回プレート42は、駆動軸32を中心として回転する。この実施形態では、旋回プレート42がR方向のうちの一方向(たとえば、平面視において時計回り)に180度回転することによって回転部材56(後述)が供給位置Sから研削位置Gへと移動し、旋回プレート42が他方向に180度回転することによって回転部材56が研削位置Gから供給位置Sへと移動する(図2参照)。
【0023】
図3および図4を参照して、旋回プレート42は、板状に形成され、凹部44、貫通孔46および貫通部48を有する。旋回プレート42の厚みは、ワークWの仕上げ厚みよりも小さく設定される。凹部44は、伝達部材54(後述)を収容可能な大きさに形成され、旋回プレート42の上面から下方に凹み、底面44aを有する。貫通孔46は、凹部44の略中央を貫通する。貫通部48は、回転部材56を収容可能な大きさに形成され、旋回プレート42を上下方向に貫通する。貫通部48は、水平面に対して平行な略円環状の段部48aを有する。段部48aと凹部44の底面44aとが面一になるように、凹部44と貫通部48とが連設される。
【0024】
図1および図3を参照して、回転駆動ユニット30は、駆動軸50を含む。駆動軸50は、上下方向に延びるように旋回プレート42の貫通孔46および駆動軸32内に挿通され、図示しないベアリングを介して回転可能に駆動軸32によって支持される。駆動軸50の下端部には駆動モータ52が接続され、駆動軸50の上端部には伝達部材54が設けられる。伝達部材54は、旋回プレート42の凹部44の底面44a上に位置する。伝達部材54の外周面にはギア溝54aが形成される。すなわち、この実施形態では、伝達部材54としてギアが用いられる。駆動モータ52によって駆動軸50が回転駆動され、それに伴って伝達部材54が回転される。
【0025】
旋回プレート42の貫通部48内には、回転部材56が設けられる。
【0026】
図5図7を参照して、回転部材56は、略円環状に形成される。回転部材56の厚みは、ワークWの仕上げ厚みよりも小さく設定される。回転部材56の内周面には、一対の凹部58a,58b、薄肉部60a,60b,62が形成される。一対の凹部58a,58bは、径方向外方に僅かに凹みかつ相互に対向するように形成される。薄肉部60a,60b,62は、回転部材56の内周面側の上面および下面を凹ませて形成される。薄肉部60a,60bは、後述する第1クランプアーム74側に相互に間隔をあけて設けられ、平面視略角形状に形成される。薄肉部62は、後述する第2クランプアーム76側に設けられ、薄肉部60a,60bより幅広にかつ略円弧状に形成される。回転部材56の外周面上部には、平面視略円環形状の鍔状部64が形成される。鍔状部64は、回転部材56の径方向の外方に鍔状に突出する。鍔状部64は、その外周面にギア溝64aを有する。
【0027】
このような回転部材56には、回転部材56の内側にクランプ部材72(後述)を保持するための保持部H1,H2,H3が取り付けられる。回転軸Pを基準として、保持部H1,H2は一方側に設けられ、保持部H3は他方側に設けられる。保持部H1は、一対のプレート66aを含み、保持部H2は、一対のプレート66bを含み、保持部H3は、一対のプレート68を含む。各プレート66a,66bはラケット状に形成され、各プレート68は略円弧状に形成される。回転部材56の薄肉部60aの上面および下面にはそれぞれ、プレート66aがボルト70によって取り付けられる。同様に、薄肉部60bの上面および下面にはそれぞれ、プレート66bがボルト70によって取り付けられる。また、薄肉部62の上面および下面にはそれぞれ、プレート68がボルト70によって取り付けられる。このように、薄肉部60aは、一対のプレート66a(保持部H1)によって挟まれ、薄肉部60bは、一対のプレート66b(保持部H2)によって挟まれ、薄肉部62は、一対のプレート68(保持部H3)によって挟まれる。
【0028】
図3および図7を参照して、回転部材56の鍔状部64は旋回プレート42の段部48aに摺動可能に支持される。鍔状部64のギア溝64aと伝達部材54のギア溝54aとは互いに噛み合う。これにより、駆動モータ52の回転駆動力が、駆動軸50および伝達部材54を介して回転部材56に伝達される。その結果、回転部材56は、V方向(上下方向)に延びる回転軸P周りに回転する。回転軸Pは、V方向から見て回転部材56の内側に設けられたクランプ部材72の内周面よりも内方に位置する(図3および図4参照)。言い換えれば、回転軸Pは、第1方向から見て回転部材56の内側に設けられたクランプ部材72によってクランプされるワークWの外周面よりも内方に位置する。この実施形態では、回転軸Pは、クランプ部材72やワークWの回転中心と一致または略一致する。また、この実施形態では、回転軸Pが第1回転軸に相当する。図2および図4を参照して、この実施形態では、平面視において、伝達部材54が反時計回りに回転することによって、回転部材56が時計回りに回転する。なお、伝達部材54が時計回りに回転し、回転部材56が反時計回りに回転してもよい。
【0029】
このような回転部材56の内側には、クランプ部材72が設けられる。言い換えれば、回転部材56は、クランプ部材72を囲むように設けられる。
【0030】
図5図8を参照して、クランプ部材72は、環状に形成され、第1クランプアーム74、第2クランプアーム76、第1弾性部材78、第2弾性部材80、および複数(この実施形態では、9つ)の接触部材82を有する。クランプ部材72の厚みは、ワークWの仕上げ厚みよりも小さく設定される。
【0031】
第1クランプアーム74および第2クランプアーム76は、ワークWの周方向に延びる略円弧状に形成され、相互に対向するように設けられる。この実施形態では、第1クランプアーム74および第2クランプアーム76はアルミニウム合金からなる。
【0032】
第1クランプアーム74の外周面側には、相互に間隔をあけて薄肉部84a,84bが形成される。薄肉部84aは、第1クランプアーム74の上面および下面をそれぞれ平面視略円形状に凹ませて形成される2つの凹部86aの間に形成される。各凹部86aの側面が、薄肉部84aに連設される係合部88aとなる。同様に、薄肉部84bは、第1クランプアーム74の上面および下面をそれぞれ平面視略円形状に凹ませて形成される2つの凹部86bの間に形成される。各凹部86bの側面が、薄肉部84bに連設される係合部88bとなる。
【0033】
第1クランプアーム74の周方向一端部側の外周面には、平面部90aが形成され、第1クランプアーム74の周方向他端部側の外周面には、平面部90bが形成される。平面部90a,90bの略中央にはそれぞれ、ポスト92a,92bが立設される。
【0034】
第1クランプアーム74の内周面の周方向中央部には、径方向外方に凹むように凹部94が形成される。第1クランプアーム74には、凹部94の両側に対称的に第1案内部96aと第2案内部96bが設けられる。第1案内部96aは、断面四角形に形成され、凹部94から第1クランプアーム74の一端部にまで周方向に円弧状に延びるように第1クランプアーム74を貫通する。第2案内部96bは、断面四角形に形成され、凹部94から第1クランプアーム74の他端部にまで周方向に円弧状に延びるように第1クランプアーム74を貫通する。
【0035】
第2クランプアーム76の外周面側の周方向中央部には、薄肉部98が形成される。薄肉部98は、第2クランプアーム76の上面および下面をそれぞれ平面視略円弧状に凹ませて形成される2つの凹部100の間に形成される。各凹部100の側面のうち、プレート68と周方向に接触可能な両端部がそれぞれ、薄肉部98に連設される係合部102となる。
【0036】
第2クランプアーム76の周方向一端部側の外周面には、平面部104aが形成され、第2クランプアーム76の周方向他端部側の外周面には、平面部104bが形成される。平面部104a,104bの略中央にはそれぞれ、ポスト106a,106bが立設される。
【0037】
第1弾性部材78および第2弾性部材80としては、その両端部にフックを有する公知の種々のばね(引きばね等)を用いることができる。第1弾性部材78は、その両端部をそれぞれポスト92a,106aに引っ掛けることによって、第1クランプアーム74および第2クランプアーム76の一端部同士を連結する。第2弾性部材80は、第1弾性部材78と同形状を有しかつ同寸法に設定され、その両端部をそれぞれポスト92b,106bに引っ掛けることによって、第1クランプアーム74および第2クランプアーム76bの他端部同士を連結する。このように、第1弾性部材78および第2弾性部材80はそれぞれ、第1クランプアーム74および第2クランプアーム76同士を接近/離間できるように、第1クランプアーム74および第2クランプアーム76の一端部同士および他端部同士を連結する。
【0038】
複数の接触部材82は、クランプ部材72がワークWの外周面に装着された状態においてワークWの外周面に接触するようにクランプ部材72の内周部に設けられ、それぞれ短冊状に形成される。複数の接触部材82は、クランプ部材72の内周部において、周方向に間隔をあけて設けられる。この実施形態では、第1クランプアーム74の内周面には、凹部94の両側に2つずつ接触部材82が設けられ、第2クランプアーム76の内周面には、5つの接触部材82が設けられる。各接触部材82は、消耗のため取り換え可能に、たとえば接着剤またはねじ等によって第1クランプアーム74または第2クランプアーム76に取り付けられる。各接触部材82の摩擦係数は、クランプ部材72の他の部分(少なくとも第1クランプアーム74および第2クランプアーム76)の摩擦係数よりも大きくなるように設定される。この実施形態では、接触部材82はゴムからなる。
【0039】
このようなクランプ部材72の第1クランプアーム74には、第1クランプアーム74および第2クランプアーム76同士を離間するための離間部108が設けられる。離間部108は、第1押し棒110aおよび第2押し棒110bを有する。第1押し棒110aおよび第2押し棒110bは、第1案内部96aおよび第2案内部96bと同様に断面四角形に形成される。第1押し棒110aは、一端部が凹部94に位置しかつ他端部が第2クランプアーム76の一端部に接触するように第1案内部96aを貫通し、かつ第1案内部96aに対して摺動可能に設けられる。第2押し棒110bは、一端部が凹部94に位置しかつ他端部が第2クランプアーム76の他端部に接触するように第2案内部96bを貫通し、かつ第2案内部96bに対して摺動可能に設けられる。また、第1押し棒110aおよび第2押し棒110bのそれぞれの他端部には、抜け止め部112a,112bが設けられる。抜け止め部112a,112bはそれぞれ、第1クランプアーム74および第2クランプアーム76の一端部同士の間および他端部同士の間に位置し、第1押し棒110aおよび第2押し棒110bがそれぞれ第1案内部96aおよび第2案内部96bから抜けないようにしている。
【0040】
このように離間部108が取り付けられたクランプ部材72は、凹部58aと第1弾性部材78とが対向し、凹部58bと第2弾性部材80とが対向するように、回転部材56の内側に設けられる。
【0041】
この状態において、回転部材56の薄肉部60aに取り付けられた一対のプレート66aがそれぞれ、第1クランプアーム74の凹部86aに嵌められ、回転部材56の薄肉部60bに取り付けられた一対のプレート66bがそれぞれ、第1クランプアーム74の凹部86bに嵌められる。これによって、薄肉部84aは一対のプレート66aによって上下方向から挟まれ、かつ薄肉部84bは一対のプレート66bによって上下方向から挟まれ、回転部材56に第1クランプアーム74が取り付けられる。ここで、図5および図7を参照して、凹部86a,86bはそれぞれ、プレート66a,66bの突出した嵌合部と平面視同形状に形成され、かつプレート66a,66bの厚みより深く凹む。薄肉部84aの厚みは、一対のプレート66a間の隙間より小さく設定され、薄肉部84bの厚みは、一対のプレート66b間の隙間より小さく設定される。これにより、薄肉部84aは一対のプレート66a間を、薄肉部84bは一対のプレート66b間を、V方向(上下方向)すなわち第1方向に移動可能となる。しかし、各プレート66a,66bは、対応する凹部86a,86bに嵌合され、第1クランプアーム74は、第2クランプアーム76に対して接近/離間する方向に移動不能となる。また、回転部材56が回転軸P周りに回転すると、各プレート66a,66bが第1クランプアーム74の対応する係合部88a,88bに係合し、回転部材56とともに第1クランプアーム74が回転する。したがって、プレート66a,66bは、回転部材56に対するクランプ部材72の回り止めとしても機能する。
【0042】
また、回転部材56の薄肉部62に取り付けられた一対のプレート68がそれぞれ、第2クランプアーム76の凹部100に嵌められる。これによって、薄肉部98は、一対のプレート68によって上下方向から挟まれ、回転部材56に第2クランプアーム76が取り付けられる。ここで、図5および図7を参照して、凹部100は、プレート68の突出した嵌合部と平面視同形状に形成され、かつプレート68の厚みより深く凹む。薄肉部98の厚みは、一対のプレート68間の隙間より小さく設定される。これにより、薄肉部98は、一対のプレート68間をV方向すなわち第1方向に移動可能となる。また、図5を参照して、回転部材56の内側にクランプ部材72が設けられかつワークWをクランプしている閉状態では、第2クランプアーム76における凹部100の側面のうち周方向に延びる部分とプレート68とは、クリアランスDを有する。これによって、第2クランプアーム76はプレート68に対して進退可能となる。すなわち、第2クランプアーム76は、第1クランプアーム74に対して接近/離間する方向に移動可能となり、クランプ部材72を開閉できる(図5および図8参照)。また、回転部材56が回転軸P周りに回転すると、各プレート68が第2クランプアーム76の対応する係合部102に係合し、回転部材56とともに第2クランプアーム76が回転する。したがって、プレート68は、回転部材56に対するクランプ部材72の回り止めとしても機能する。
【0043】
図3図4および図7を参照して、旋回プレート42の上面に円環状のガイドプレート114が支持される。ガイドプレート114は、回転部材56の鍔状部64の上方に位置し、旋回プレート42から回転部材56が外れてしまうことを防止する。ガイドプレート114は、複数(この実施形態では、4つ)のねじ116によって旋回プレート42の上面に固定される。
【0044】
図1図3および図7を参照して、旋回プレート42の下方にガイドプレート118が設けられる。ガイドプレート118は、クランプ部材72によってクランプされたワークWが落下することを防止する。ガイドプレート118は、旋回プレート42によってワークWが供給位置Sと研削位置Gとの間で搬送される際に、ワークWの下面をガイドプレート118の上面に沿って滑らせつつワークWを供給位置Sまたは研削位置Gへ案内する。この実施形態では、供給位置SにおいてワークWをクランプする時やワークWを供給位置Sから研削位置Gへ搬送する時のガイドプレート118の上面の高さは、砥石14bの研削面(上面)と略同一の高さに設定される。これにより、ワークWを一対の砥石14a,14b間へ円滑に挿入できる。
【0045】
このような両頭平面研削盤10の主要動作について説明する。
【0046】
まず、供給位置S(図2参照)において、回転部材56の内側に設けられたクランプ部材72がワークWの外周面に装着される。このとき、図8を参照して、凹部94に挿入された図示しないアンクランプ装置によって、第1押し棒110aおよび第2押し棒110bのそれぞれの凹部94側端部が相互に遠ざかる方向(F方向)に押圧される。すると、第1押し棒110aおよび第2押し棒110bの他端部がそれぞれ、第2クランプアーム76の一端部および他端部を押圧し、第2クランプアーム76がプレート68ひいては回転部材56に接近するように移動する。その一方、回転部材56に取り付けられたプレート66a,66bは、第1クランプアーム74の対応する凹部86a,86bに嵌合され、第1クランプアーム74は第2クランプアーム76のようには移動できない。これにより、第1弾性部材78および第2弾性部材80が伸ばされ、第1クランプアーム74と第2クランプアーム76とが相互に離間され、クランプ部材72が開かれる。すなわち、第1クランプアーム74と第2クランプアーム76との間には、ワークWをアンクランプ状態で出し入れ可能に、ワークWの外形より大きな空間が形成される。その状態で、第1クランプアーム74と第2クランプアーム76との間にワークWが配置される。そして、第1押し棒110aおよび第2押し棒110bのそれぞれの凹部94側端部の押圧が解除されると、第1弾性部材78および第2弾性部材80の弾発力によって、第2クランプアーム76はプレート68ひいては回転部材56から離れるように移動する。これにより、第1クランプアーム74および第2クランプアーム76が相互に近づき、クランプ部材72が閉じられ、図5に示すように接触部材82がワークWの外周面に押し付けられる。このようにして、供給位置Sにおいて加工前のワークWの外周面にクランプ部材72が装着される。このとき、図7(a)を参照して、第1クランプアーム74および第2クランプアーム76の自重によって、薄肉部84a,84b,98はそれぞれ、下側のプレート66a,66b,70に接触し、ワークWは、ガイドプレート118に接触した状態でクランプされる。
【0047】
ついで、クランプ部材72によってクランプされたワークWが、一対の砥石14a,14b間に送り込まれる。具体的には、搬送ユニット28を駆動して旋回プレート42を180度回転させることによって、回転部材56の内側に設けられたワークWおよびクランプ部材72が供給位置Sから研削位置Gに搬送される。そして、図7(b)を参照して、砥石14bの研削面を上昇させて、第1クランプアーム74の薄肉部84a,84bをそれぞれ、プレート66a,66bに非接触の状態で上下のプレート66a間および上下のプレート66b間に位置させ、第2クランプアーム76の薄肉部98を、プレート68に非接触の状態で上下のプレート68間に位置させる。この実施形態では、砥石14bの研削面は、ガイドプレート118の上面より寸法L分高くなるように、砥石14bを上昇させる。
【0048】
その後、回転駆動ユニット30によって回転部材56とクランプ部材72とワークWとが回転される。具体的には、駆動モータ52の回転駆動力が駆動軸50および伝達部材54を介して回転部材56に伝達され、回転部材56とともにクランプ部材72およびワークWが回転される。その状態で、駆動モータ22a,22bによって砥石14a,14bが回転されるとともに、砥石切込装置24aによって上側の砥石14aが下降され、一対の砥石14a,14bによってワークWの両主面の研削が実施される。ワークWの両主面の研削が終了すれば、砥石14aの下降が停止され、スパークアウトが実施される。
【0049】
所定のスパークアウト時間が経過すれば、砥石切込装置24aによって上側の砥石14aが元の位置まで上昇される。砥石14aの上昇の開始とほぼ同時に、搬送ユニット28によって、回転部材56の内側に設けられたクランプ部材72およびワークWが一対の砥石14a,14b間から送り出される。具体的には、旋回プレート42が180度回転することによって、回転部材56の内側に設けられたクランプ部材72およびワークWが研削位置Gから供給位置Sに搬送される。そして、供給位置Sにおいて、加工済みのワークWがクランプ部材72から取り出され、未加工のワークWと入れ替えられる。
【0050】
このような両頭平面研削盤10によれば、回転部材56の内側に設けられたクランプ部材72を開き、ワークWの外周面がクランプ部材72の内周面に対向するようにワークWをクランプ部材72の内側に位置決めした状態で、クランプ部材72を閉じることによって、ワークWの外周面にクランプ部材72を装着できる。一方、ワークWに装着されたクランプ部材72を開くことによって、クランプ部材72からワークWを容易に取り外すことができる。このように回転部材56の内側に設けられたクランプ部材72を開閉することによって、クランプ部材72をワークWに容易に着脱でき、ワークWの両主面の研削能率を向上させることができる。また、回転部材56に設けられた保持部H1,H2,H3は、クランプ部材72がV方向に移動できるようにクランプ部材72をV方向から挟み、かつクランプ部材72に対して周方向に係合できる。このように、保持部H1,H2,H3は、クランプ部材72をV方向に移動可能に回転部材56に取り付ける取付部として機能するとともに、回転部材56に対するクランプ部材72の回り止めとして機能し、2つの機能を兼ねる。したがって、回転部材56の内側に設けられたクランプ部材72がワークWの外周面をクランプした状態で、V方向に延びる回転軸P周りに回転部材56を回転させると、回転部材56の回転がクランプ部材72に伝達され、回転部材56とともにクランプ部材72およびワークWを回転させることができる。このとき、ワークWとクランプ部材72とはV方向に移動でき、研削中にワークWは両砥石14a,14b間でV方向に移動できるので、たとえばワークWの両主面にうねりがある場合でも、揺動することを防止しつつワークWを回転させることができる。その結果、ワークWの両主面の加工精度を向上させることができる。
【0051】
クランプ部材72は、保持部H1,H2,H3が設けられた複数の箇所でV方向の移動範囲を規制されるので、クランプ部材72は全体として、傾くことなくV方向に移動できる。したがって、ワークWの両主面の加工精度をさらに向上させることができる。
【0052】
保持部H1,H2,H3はそれぞれ、クランプ部材72がV方向に移動できるように薄肉部84a,84b,98を挟む。したがって、薄肉部84a,84b,98を挟む保持部H1,H2,H3の一方の外表面から他方の外表面までの寸法を比較的小さくでき、仕上げ寸法の小さいワークに対応できる。また、薄肉部84a,84b,98に連設される部分を保持部H1,H2,H3に係合させる係合部88a,88b,102とするので、係合部を別部材として準備する必要はなく、部品数を抑制できる。
【0053】
第1弾性部材78および第2弾性部材80の弾発力に抗して第1クランプアーム74および第2クランプアーム76同士を離間させるだけでクランプ部材72を開き、ワークWの外周面をアンクランプできる。一方、当該弾発力に抗する力を解除して当該弾発力によって第1クランプアーム74および第2クランプアーム76同士を接近させるだけでクランプ部材72を閉じ、ワークWの外周面をクランプできる。したがって、ワークWをクランプ部材72に容易に着脱でき、ワークWの両主面の研削能率をさらに向上させることができる。
【0054】
離間部108によって第1クランプアーム74と第2クランプアーム76とを容易に離間させることができる。
【0055】
第1クランプアーム74における第1案内部96aに設けられる第1押し棒110aを、凹部94側の端部から第2クランプアーム76の一端部側に押し込み、かつ第1クランプアーム74における第2案内部96bに設けられる第2押し棒110bを、凹部94側の端部から第2クランプアーム76の他端部側に押し込むことによって、第1クランプアーム74および第2クランプアーム76同士を離間でき、クランプ部材72を開くことができる。一方、第1押し棒110aおよび第2押し棒110bの押し込みを解除することによって、第1クランプアーム74および第2クランプアーム76同士を接近させることができ、クランプ部材72を閉じることができる。このように、第1押し棒110aおよび第2押し棒110bの押し込みとその解除だけで、クランプ部材72を容易に開閉できる。したがって、ワークWをクランプ部材72に容易に着脱でき、ワークWの両主面の研削能率を一層向上させることができる。
【0056】
クランプ部材72の接触部材82の摩擦係数は、クランプ部材72における他の部分の摩擦係数よりも大きいので、クランプ部材72とワークWの外周面との接触部分(接触部材82とワークWの外周面との接触部分)に発生する摩擦力を大きくできる。そのため、回転部材56の回転を、クランプ部材72を介してワークWに確実に伝達することができる。これによって、ワークWをより確実に回転させることができるので、ワークWの両主面の加工精度をさらに向上させることができる。また、各接触部材82は、ワークWの外周面と面接触するので、接触部材82とワークWとの間に発生する摩擦力をさらに大きくすることができる。したがって、回転部材56の回転を、クランプ部材72を介してワークWにより確実に伝達することができる。
【0057】
第1クランプアーム74の薄肉部84a,84bをそれぞれ、プレート66a,66bに非接触で上下のプレート66a間および上下のプレート66b間に位置させ、かつ第2クランプアーム76の薄肉部98を、プレート68に非接触で上下のプレート68間に位置させた状態で、一対の砥石14a,14bによってワークWが研削される。これによれば、ワークWの上下動が妨げられることなく、ワークWの良好な平面度が得られる。
【0058】
ワークWを研削する時やワークWを研削位置Gから供給位置Sへ搬送する時の砥石14bの研削面(上面)の高さがガイドプレート118の上面の高さより高く設定されることによって、加工中にワークWがガイドプレート118に接触することなく、ワークWの自由移動が妨げられず、加工後のワークWを一対の砥石14a,14b間から円滑に排出できる。
【0059】
なお、ガイドプレート118は、その上面高さを調整可能に構成されてもよい。この場合、以下のように動作させることができる。まず、ガイドプレート118の上面高さが、砥石14bの研削面(上面)より僅かに(たとえば300μm程度)低く設定され、その状態で供給位置SにおいてワークWがクランプされる。ついで、第1クランプアーム74の薄肉部84a,84bがそれぞれプレート66a,66bに非接触になり、かつ第2クランプアーム76の薄肉部98がプレート68に非接触になるように、ガイドプレート118の上面が砥石14bの研削面と略同一高さまで上昇される。その後、クランプされたワークWが、一対の砥石14a,14b間に挿入され、研削される。
【0060】
また、供給位置Sに対応する部分だけ高さ調整可能に、ガイドプレートが構成されてもよい。この場合、当該供給位置Sに対応する部分を下降させてその高さを予め下げておき、ワークWを供給しクランプした後、当該供給位置Sに対応する部分を上昇させてその高さを元に戻すようにしてもよい。
【0061】
上述したガイドプレートや砥石14bの上昇量は、一対の砥石14a,14bによるワークWの加工中に、図7(b)に示すように、第1クランプアーム74の薄肉部84a,84bがそれぞれプレート66a,66bに非接触になり、かつ第2クランプアーム76の薄肉部98がプレート68に非接触になる限りにおいて、任意でよい。当該上昇量は、ワークWの重量や加工条件に応じて設定されることが好ましい。
【0062】
つぎに、図9に、回転部材、クランプ部材および保持部の変形例を示す。
【0063】
この例では、先の実施形態における離間部108を用いず、かつ回転部材56、保持部H1,H2およびクランプ部材72に代えて、回転部材120、保持部H4およびクランプ部材122が用いられる。
【0064】
図5および図9を参照して、回転部材120は、回転部材56の薄肉部60a,60bに代えて薄肉部124が形成されている点において、回転部材56と異なる。薄肉部124は、回転部材120の内周面において薄肉部62と対向するように設けられ、薄肉部62と同形および同寸法に形成される。回転部材120のその他の構成については、回転部材56と同様であるので、その重複する説明は省略する。
【0065】
保持部H4は、保持部H3と同様に構成され、一対のプレート68と同形および同寸法の一対のプレート126を有する。一対のプレート126は、回転部材120の薄肉部124の上面および下面にボルト70によって取り付けられる。
【0066】
クランプ部材122は、第1クランプアーム128および第2クランプアーム130を含む。第1クランプアーム128および第2クランプアーム130は、相互に対向するように設けられ、同形および同寸法に形成される。第1クランプアーム128は、クランプ部材72の第2クランプアーム76の平面部104a,104bより小さい平面部132a,132bを有し、かつ第2クランプアーム76より短く形成される点において、第2クランプアーム76と異なる。第1クランプアーム128のその他の構成については、第2クランプアーム76と同様であるので、同一の構成要素の符号の末尾に「a」を付し、重複する説明は省略する。同様に、第2クランプアーム130は、第2クランプアーム76の平面部104a,104bより小さい平面部134a,134bを有し、かつ第2クランプアーム76より短く形成される点において、第2クランプアーム76と異なる。第2クランプアーム130のその他の構成については、第2クランプアーム76と同様であるので、同一の構成要素の符号の末尾に「b」を付し、重複する説明は省略する。第1クランプアーム128および第2クランプアーム130の内周面にはそれぞれ、5つの接触部材82が設けられる。
【0067】
図9に示す例によれば、第1クランプアーム128および第2クランプアーム130の両方を押し広げることができるので、クランプ部材122の開閉量を大きくでき、ワークWの出し入れがさらに容易になる。
【0068】
なお、図5に示す実施形態においても、第1押し棒110aおよび第2押し棒110bを用いることなく、第2クランプアーム76を直接開閉してもよい。
【0069】
上述の実施形態では、1つの回転部材を支持することができる旋回プレート42を用いる場合について説明したが、これに限定されない。図10に示す実施形態のように、2つの回転部材56を支持することができる旋回プレート136を用いてもよい。
【0070】
上述の実施形態では、クランプ部材に、薄肉部と薄肉部に連設された係合部とが形成された場合について説明したが、これに限定されない。たとえば、クランプ部材に薄肉部を形成することなく、クランプ部材の外表面にピン状の係合部を設けるようにしてもよい。この場合、保持部は、クランプ部材がV方向に移動できるようにクランプ部材をV方向から挟み、かつ係合部に対してクランプ部材の周方向に係合可能に構成される。
【0071】
上述の実施形態では、保持部は、回転部材に設けられ、クランプ部材がV方向に移動できるようにクランプ部材をV方向から挟み、かつクランプ部材に対して周方向に係合可能に構成されたが、これに限定されない。保持部は、クランプ部材に設けられ、クランプ部材がV方向に移動できるように回転部材をV方向から挟み、かつ回転部材に対して周方向に係合可能に構成されてもよい。たとえば図11に示すように、保持部H5の一対のプレート66cが、クランプ部材72cの第1クランプアーム74cにボルト70によって取り付けられ、保持部H6の一対のプレート68cが、第2クランプアーム76cにボルト70によって取り付けられる。そして、一対のプレート66cおよび一対のプレート68cがそれぞれ、クランプ部材72cがV方向に移動できるように回転部材56cの薄肉部60c,62cをV方向から挟み、かつ回転部材56cの係合部61,63に対して周方向に係合可能に構成される。なお、図11は、図7(b)と同じ位置における断面図解図である。
【0072】
また、保持部の数は、任意でよい。
【0073】
上述の実施形態では、保持部は一対のプレートを有する場合について説明したが、これに限定されない。保持部は、略C字状など、対向する部分を有する任意の一体的な形状を有してもよい。
【0074】
第1案内部96aおよび第2案内部96bは、貫通孔に限定されず、第1押し棒110aおよび第2押し棒110bを案内できる限りにおいて、溝状に形成されてもよい。
【0075】
上述の実施形態では、ワークWの研削時には砥石14bの位置が固定されているが、砥石切込装置24bによって砥石14bを上昇させつつワークWを研削してもよい。この場合、砥石切込装置24a,24bが砥石切込部に相当する。また、砥石14aの位置を固定し、砥石14bのみを上昇させることによってワークWを研削してもよい。この場合、砥石切込装置24bが砥石切込部に相当する。
【0076】
上述の実施形態では、短冊状の接触部材82が間隔をあけて設けられる場合について説明したが、これに限定されない。たとえば、第1クランプアーム側の複数の接触部材82が繋がり、第2クランプアーム側の複数の接触部材82が繋がるように設けられてもよい。また、接触部材は、ワークWの外周面の全周に接触するように設けられてもよく、略点状に形成されてもよい。
【0077】
上述の実施形態では、接触部材82はゴムからなる場合について説明したが、これに限定されない。たとえば、接触部材は、ブレーキライニング材または炭素繊維等によって構成されてもよい。また、接触部材は、必ずしも必要ではない。
【0078】
上述の実施形態では、第1クランプアームおよび第2クランプアームが、アルミニウム合金からなる場合について説明したが、これに限定されない。たとえば、第1クランプアームおよび第2クランプアームは、繊維強化プラスチック、炭素繊維または鉄系鋼材によって構成されてもよい。
【0079】
上述の実施形態では、この発明を立型の両頭平面研削盤に適用した場合について説明したが、この発明は横型の両頭平面研削盤にも適用できる。
【0080】
上述の実施形態では、円環状のワークWを研削する場合について説明したが、この発明に係る両頭平面研削盤が研削できるワークの形状は上述の例に限定されない。この発明に係る両頭平面研削盤は、断面円形の外周面を有する種々のワーク(たとえば、円板状または円柱状のワーク)を研削できる。
【符号の説明】
【0081】
10 立型両頭平面研削盤
12a,44,58a,58b,86a,86b,94,100,100a,100b 凹部
14a,14b 砥石
24a,24b 砥石切込装置
28 搬送ユニット
30 回転駆動ユニット
56,56c,120 回転部材
60a,60b,60c,62,62c,84a,84b,98,98a,98b,124 薄肉部
72,72c,122 クランプ部材
74,74c,128 第1クランプアーム
76,76c,130 第2クランプアーム
78 第1弾性部材
80 第2弾性部材
82 接触部材
61,63,88a,88b,102,102a,102b 係合部
96a 第1案内部
96b 第2案内部
108 離間部
110a 第1押し棒
110b 第2押し棒
G 研削位置
H1,H2,H3,H4,H5,H6 保持部
P 回転軸
S 供給位置
V 上下方向
W ワーク
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11