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特許7133861エビ類の製造方法およびそれに用いるエビ類用アルカリ処理液
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-01
(45)【発行日】2022-09-09
(54)【発明の名称】エビ類の製造方法およびそれに用いるエビ類用アルカリ処理液
(51)【国際特許分類】
   A23L 17/40 20160101AFI20220902BHJP
【FI】
A23L17/40 A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020058048
(22)【出願日】2020-03-27
(65)【公開番号】P2021153510
(43)【公開日】2021-10-07
【審査請求日】2021-05-17
(73)【特許権者】
【識別番号】599044629
【氏名又は名称】昭和商事株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100088801
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 宗雄
(72)【発明者】
【氏名】相澤 修
(72)【発明者】
【氏名】吉田 愛
【審査官】澤田 浩平
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-051693(JP,A)
【文献】特開平04-341160(JP,A)
【文献】特開平07-322853(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A22C,A23L
JSTplus/JMEDplus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生エビまたは解凍エビをアルカリ処理液で処理するエビ類の製造方法であって、
前記アルカリ処理液が(1)酢酸カルシウム、(2)その他のアルカリ土類金属の塩、(3)pH調整剤および(4)水を含有し、かつpH7.0~10.2を有し、
前記アルカリ土類金属の塩が、焼成カルシウム、乳酸カルシウム、炭酸カルシウム、塩化カルシウムおよびそれらの混合物からなる群から選択され、
前記アルカリ処理液での処理温度が5~30℃で、処理時間が15分~48時間である、
ことを特徴とするエビ類の製造方法。
【請求項2】
前記アルカリ処理液が、更に、加工澱粉および/または蛋白質を含有する、請求項1記載のエビ類の製造方法。
【請求項3】
前記アルカリ処理液が、(1)酢酸カルシウムを0.01~3.0重量%および(2)その他のアルカリ土類金属の塩を0.01~3.0重量%(重量%はアルカリ処理液の全量に対する濃度)で含有する、請求項1または2記載のエビ類の製造方法。
【請求項4】
(1)酢酸カルシウム、(2)その他のアルカリ土類金属の塩、(3)pH調整剤および(4)水を含有しかつpH7.0~10.2を有し、
前記アルカリ土類金属の塩が、焼成カルシウム、乳酸カルシウム、炭酸カルシウム、塩化カルシウムおよびそれらの混合物からなる群から選択される、エビ類用アルカリ処理液。
【請求項5】
更に、加工澱粉または/または蛋白質を含有する、請求項記載のエビ類用アルカリ処理液。
【請求項6】
(1)酢酸カルシウムを0.01~3.0重量%および(2)その他のアルカリ土類金属の塩を0.01~3.0重量%(重量%はアルカリ処理液の全量に対する濃度)で含有する、請求項4または5記載のエビ類用アルカリ処理液。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エビ類の製造方法およびそれに用いるエビ類用アルカリ処理液に関する。
【背景技術】
【0002】
エビは凍結や加熱処理によりドリップを生じ、身縮みや歩留まり低下を起こし、パサパサした食感になる。これを解決する為、未加熱のエビをアルカリ溶液に浸漬する方法がとられてきた。しかし、アルカリ溶液に浸漬した未加熱のエビは、透明感が生じ、加熱しても透明なままで不自然な外観になる。食感についても本来の繊維感がなくなり、ゼリーのような不自然な食感になる。
【0003】
また、未加熱のムキエビを販売する場合、外観を食欲がそそられる鮮やかな赤色に発色させる目的で、未加熱のエビをアルカリ溶液に浸漬させる方法が行なわれている。この場合、浸漬液のpHは10.0以上の強アルカリが用いられていて、処理後のエビは透明感も強くなり、ゼリーのような不自然な食感も強くなり、エビの風味もなくなっている。
【0004】
特許文献1(特許4109819号)には、「生エビ又は解凍エビを、pH10.25~10.96のアルカリ溶液に接触させる工程(A)を含み、該アルカリ溶液が、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム及び炭酸カリウムからなる群より選択される少なくとも1種と、クエン酸3ナトリウムと、乳酸カルシウム、塩化カルシウム及び塩化マグネシウムからなる群より選択される1種又は2種以上の2価のアルカリ土類金属塩と、水とを含み、且つアルカリ溶液に接触させる時間が10~24時間であることを特徴とする食感及び透明感を改良したエビ類の製造方法」が記載されている。
【0005】
また、特許文献2(特許3590615号)には、「生エビ又は解凍エビを、エビ類用表面色改良液に30分間~24時間接触させる工程(A)を含み、該エビ類用表面改良液が、炭酸カリウム、酸化カルシウム、クエン酸3カリウム、クエン酸3ナトリウム、塩、グルタミン酸ナトリウム及び水を含有し、エビ類用表面色改良液中のグルタミン酸ナトリウムの含有割合が0.01~2.0質量%であり、且つpHが11.0~13.0であることを特徴とする食感、味及び表面色を改良したエビ類の製造方法」が記載されている。
【0006】
これらの二つの特許文献に記載されている技術は、効果が不十分で更なる改善が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特許4109819号公報
【文献】特許3590615号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明では、エビ類をアルカリ処理しても、エビ本来の風味に対する影響が小さく、かつ、冷凍、加熱時のドリップを抑制し、エビの身が透明になることが無くかつエビの身本来の繊維感を維持することができる処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は、生エビ又は解凍エビを処理するアルカリ処理液に、酢酸カルシウムと、その他の2価のアルカリ土類金属塩とを加え、所定範囲のpHに調整し、且つこのアルカリ処理液による処理を所定温度で所定時間行うことにより上記課題が解決できることを見出し、本発明を完成した。即ち、本発明は以下の態様を提供する:
【0010】
[1]生エビまたは解凍エビをアルカリ処理液で処理するエビ類の製造方法であって、
前記アルカリ処理液が(1)酢酸カルシウム、(2)その他のアルカリ土類金属の塩、(3)pH調整剤および(4)水を含有し、かつpH7.0~10.2を有し、
前記アルカリ処理液での処理温度が5~30℃で、処理時間が15分~48時間である、
ことを特徴とするエビ類の製造方法。
[2]前記アルカリ処理液が、更に、加工澱粉および/または蛋白質を含有する、[1]のエビ類の製造方法。
[3]前記アルカリ土類金属の塩が、焼成カルシウム、乳酸カルシウム、炭酸カルシウム、塩化カルシウムおよびそれらの混合物からなる群から選択される、[1]または[2]のエビ類の製造方法。
[4]前記アルカリ処理液が、(1)酢酸カルシウムを0.01~3.0重量%および(2)その他のアルカリ土類金属の塩を0.01~3.0重量%(重量%はアルカリ処理液の全量に対する濃度)で含有する、[1]~[3]いずれかのエビ類の製造方法。
[5](1)酢酸カルシウム、(2)その他のアルカリ土類金属の塩、(3)pH調整剤および(4)水を含有しかつpH7.0~10.2を有する、エビ類用アルカリ処理液。
[6]更に、加工澱粉または/または蛋白質を含有する、[5]のエビ類用アルカリ処理液。
[7]前記アルカリ土類金属の塩が、焼成カルシウム、乳酸カルシウム、炭酸カルシウム、塩化カルシウムおよびそれらの混合物からなる群から選択される、[5]または[6]のエビ類用アルカリ処理液。
[8](1)酢酸カルシウムを0.01~3.0重量%および(2)その他のアルカリ土類金属の塩を0.01~3.0重量%(重量%はアルカリ処理液の全量に対する濃度)で含有する、[5]~[7]のいずれかにのエビ類用アルカリ処理液。
【発明の効果】
【0011】
本発明では、酢酸カルシウムと、それとは別のアルカリ土類金属の塩とをアルカリ源として用いて、pH調整剤と共に配合したpH7.0~10.2のアルカリ処理剤を形成し、エビ類を処理すると、エビ本来の風味に対する影響が少なく、かつ冷凍や加熱時のドリップが少なく、しかもエビ類をボイルした後にエビ類特有の外観(白さ)を有し、透明な部分がなく、食感として繊維感があり、味の変化がないものが得られる。
【0012】
何故エビ類の色と食感が保持できるのかは解っていないが、酢酸カルシウムとその他のアルカリ土類金属の塩を含むアルカリ処理液を用いていることと、pHが7.0~10.2とアルカリ度の低いpH域で処理することが関係しているものと考えている。この条件で処理温度5~30℃で15分~48時間処理すると、最もエビ類の色と食感が維持できる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<アルカリ処理液>
本発明で使用するアルカリ処理液は、(1)酢酸カルシウム、(2)酢酸カルシウム以外のアルカリ土類金属の塩、(3)pH調整剤および(4)水を含むものであり、pH~7.0~10.2の範囲にあるものを用いる。アルカリ処理液には、必要に応じて加工澱粉や蛋白質を含んでもよい。
【0014】
酢酸カルシウム(1)は、白色の固体で、水溶液は弱アルカリ性を示す一般的なもので、本発明のアルカリ処理液中には0.01~3.0重量%、好ましくは0.1~2.0重量%、より好ましくは0.4~1.6重量%の量で配合する。重量%は、アルカリ処理液の全量に対する濃度である。酢酸カルシウムが0.01重量%より少ないと、本発明のエビの白さが得られず、ボイル後の食感に硬さと繊維感が得られない。逆に、酢酸カルシウムが3.0重量%より多いと、エビ類に白い粉状の付着物が付着し、食感も悪くなる。
【0015】
第2成分の酢酸カルシウム以外のアルカリ土類金属の塩(2)は、アルカリ土類金属、即ちベリリウム、カルシウム、マグネシウム、ストロンチウム、バリウムの塩であり、これらの中で特にカルシウムやマグネシウムが一般的であり、カルシウムがより好ましい。カルシウムの塩は、焼成カルシウム(貝殻を焼成したもの)や、酸とカルシウムの塩(例えば、乳酸カルシウム、炭酸カルシウム、塩化カルシウム等)が良く使用される。アルカリ土類金属の塩は、本発明のアルカリ処理液中に、アルカリ処理液の重量に基づいて0.01~3.0重量%、好ましくは0.02~2.0重量%、より好ましくは0.04~1.0重量%の量の量で配合される。アルカリ土類金属の塩の量が0.01重量%より少ないと、本発明のエビの白さが得られず、ボイル後の食感に硬さと繊維感が得られない。逆に、アルカリ土類金属の塩の量が3.0重量%より多いと、味に苦みやえぐみが表れてくる。
【0016】
pH調整剤(3)は、食品等に添加されてpHを調整する製剤で、リン酸、クエン酸、クエン酸三ナトリウム、酢酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、グルコン酸、グルコノデルタラクトン、アジピン酸、コハク酸、酒石酸、炭酸カリウム、乳酸、乳酸ナトリウム、ピロリン酸二ナトリウム、氷酢酸、フマル酸、リンゴ酸等多くのものが存在する。本発明では、上記の酢酸カルシウム(1)とその他のアルカリ土類金属の塩(2)の添加の後、pHを7.0~10.2に調整するために添加される。pHの範囲は通常7.0~10.2、好ましくは7.5~9.5、より好ましくは8.0~9.0である。pHが7.0未満では歩留改善効果が期待できず、pH10.2を超える場合にはボイル後のエビに苦みやえぐみといったアルカリ味を感じ、好ましくない。
【0017】
本発明のアルカリ処理液には、必要に応じて他の添加剤、例えば加工澱粉、蛋白質、食塩等を添加することができる。加工澱粉及び蛋白質は、上記pH調整剤(3)と一緒に使用することでエビの加熱後歩留を上げ、透明感及び白さを改善する為に添加する。例えば、加工澱粉では、リン酸架橋澱粉、酢酸澱粉、オクテニルコハク酸ナトリウム等が例示される。蛋白質では、乳タンパク質(ホエイ、カゼイン)、卵白タンパク質、豆タンパク質(大豆、エンドウ豆等)、小麦タンパク質、コラーゲンが例示される。食塩は、エビ類への浸透力を改善するために添加される。これらの添加剤の量は、アルカリ処理及び味に影響を与えない量であればよく、より具体的にはアルカリ処理液の重量に基づいて0.1~5.0重量%、好ましくは0.5~4.0重量%、より好ましくは1.0~3.0重量%である。
【0018】
本発明のアルカリ処理液には、必須成分として水(4)が含まれている。水は、アルカリ処理剤を溶液化する為に使用されるものであり、その使用量はエビ類の処理がしやすく、他の各成分(1)~成分(3)の添加量を維持し、かつpHが上記範囲(7.0~10.2のpH範囲)にあれば良く、特に量的な限定を必要としない。従って、水は各成分(1)~成分(3)と添加剤を配合した残量を構成する。
【0019】
本発明での処理に用いられるエビ類は、一般に市販されているエビ類であれば良く、具体的には車エビ、ブラックタイガー、バナメイエビ等が挙げられるが、これらに限定されず、大きなエビでは伊勢海老や、小さなエビではサクラエビ等も処理可能である。このましくはブラックタイガーやバナメイエビが挙げられる。
【0020】
<アルカリ処理方法>
本発明では、上記アルカリ処理液にエビ類を浸漬することにより行われる。処理時間はエビ類の種類や大きさ等により必ずしも一定ではないが、15分~48時間が好ましく、より好ましくは1~24時間、更に好ましくは2~16時間である。である。処理時間が15分以下であると、アルカリ処理の効果が得られず、48時間以上処理をしても処理時間に比例する効果が得られない。
【0021】
本発明のアルカリ処理液でのエビ類の処理温度は、一般的にエビ類など下地処理等が行われる温度で行うのが好ましく、具体的には5~30℃である。5℃より低い温度は、高度な冷蔵設備などが必要になり、好ましくなく、逆に30℃を超える温度では、原料由来の菌が短時間で増殖する恐れがあり、好ましくない。より具体的には、氷等の使用で実現可能な低温~室温ぐらいの温度で8~20℃が適当である。
【0022】
本発明のアルカリ処理液で処理した場合、エビ本来の風味が維持され、冷凍や加熱時のドリップが少なくなる。また、エビ類をボイルした後にエビ類特有の外観(白さ)を有し、透明な部分が少なく、食感として繊維感があり、味の変化がないものが得られる。
【0023】
[実施例]
本発明を実施例により更に詳細に説明する。本発明はこれら実施例に限定されるものと解してはならない。
【0024】
<実施例1~12および比較例1~2>
表1に記載のアルカリ処理液配合でアルカリ処理液を形成し、pHを8.5にし、処理温度10℃処理時間16時間でバナメイエビを処理した。これらの実施例では、酢酸カルシウム(1)と組み合わせるその他のアルカリ土類金属の塩(2)を変更すると共に、配合量も振ってアルカリ処理液の効果を確認した。
【0025】
処理後のエビについて、処理後の歩留、エビをボイルしてボイル後の歩留、ボイル後のエビの外観(白さ)、ボイル後のエビの外観(透明感)、ボイル後のエビの食感およびボイル後のエビの味を以下に記載するように評価し、結果を表1に記載する。
【0026】
処理後の歩留:アルカリ処理後、ザル等を用いて液切りを行い、エビをトレイに載せて重量測定し、アルカリ処理前の未処理エビ重量に対する割合を計算した。
〈処理後歩留(%)=アルカリ処理後のエビ重量(g)/アルカリ処理前のエビ重量(g)〉
【0027】
ボイル後の歩留:液切りを行ったエビを一度冷凍保存した。解凍後、95℃の湯浴で2分間ボイルし、ザル等を用いて5分間液切りを行い、エビをトレイに載せて重量測定し、アルカリ処理前の未処理エビ重量に対する割合を計算した。
〈ボイル後歩留(%)=ボイル後のエビ重量(g)/アルカリ処理前のエビ重量(g)〉
【0028】
ボイル後の外観(白さ):ボイル後のエビの外観(白さ)を目視で判断し、以下の基準で評価した。
◎:極めて白い
〇:白い
△:白さがほとんどない
×:白さが全くない
【0029】
ボイル後の外観(透明感):ボイル後のエビの外観(透明感)を目視で判断し、以下の基準で評価した。
◎:透明感が全くない
〇:透明感がほとんどない
△:透明感がある
×:強い透明感がある
【0030】
ボイル後の食感:ボイル後のエビの食感を実際に食して以下の基準で評価した。
◎:繊維感と硬さが強い
〇:繊維感と硬さがある
△:繊維感が弱く、柔らかい
×:繊維感が全くなく,ゼリー状である
【0031】
ボイル後の味:ボイル後のエビの味を実際に食して以下の基準で評価した。
〇:エビの自然な風味がある
△:苦みやえぐみが感じられる
×:強い苦みやえぐみがあり、エビの風味が失われている
【0032】
【表1】
【0033】
表1の結果から明らかなように、酢酸カルシウム単独(比較例2)では、ボイル後の外観(白さ)、ボイル後の外観(透明感)、食感において、効果として不十分である。酢酸カルシウムもその他のアルカリ土類金属の塩も入れない比較例1ではボイル後の外観が、白さが少なく、透明感が明らかに強く、食感もゼリー状で良くない。これに対して、酢酸カルシウム(1)とその他のアルカリ土類金属の塩(2)の両方を含むものは、その他のアルカリ土類金属の塩(2)の量が増えると多少ボイル後の味が若干落ちるものの全体としてボイル後の外観および食感が良くなる。
【0034】
<実施例13~18および比較例3>
表2に記載のアルカリ処理液配合でアルカリ処理液を形成し、pHを8.5にし、温度10℃処理時間16時間でエビを処理した。これらの実施例では、酢酸カルシウム以外のアルカリ土類金属の塩(2)の量を0.1重量%と固定し、酢酸カルシウムの配合量を振った例を示している。
【0035】
実施例1~12と同様に、処理後のエビについて、処理後の歩留、エビをボイルしてボイル後の歩留、ボイル後のエビの外観(白さ)、ボイル後のエビの外観(透明感)、ボイル後のエビの食感およびボイル後のエビの味を以下に記載するように評価し、結果を表2に記載する。表2にはその他として、食感のジューシーさについても評価を記載した。
【0036】
【表2】

【0037】
表2の結果から明らかなように、焼成カルシウム(その他のアルカリ土類金属の塩)だけの場合を示す比較例3では、ボイル後の外観および食感ともに良くないが、焼成カルシウム(他のアルカリ土類金属の塩(2))の量を固定して、酢酸カルシウム(1)の量を0.1重量%~3.2重量%の間で振った実験を行ったが、酢酸カルシウムの量が多くなるとボイル後の味に変化が生じるがボイル後の外観と食感には全て良い結果が得られている。実施例18のボイル後の味は「苦味・えぐ味」が出てきて、その他の欄では「身が乾燥した様なややパサついた見た目、食感もジューシーさに欠ける」評価が記載されている。
【0038】
<実施例19~23および比較例4~5>
表3に記載のアルカリ処理液配合でアルカリ処理液を形成し、酢酸カルシウム濃度は0.8重量%、焼成カルシウム濃度は0.1重量%に固定して、pHを7.0~10.2の範囲で変動させて、エビを処理した。尚、処理温度は10℃で処理時間は16時間で固定した。比較例4は比較例1のpHを10.0にしたものであり、比較例5は酢酸カルシウムおよび焼成カルシウムは範囲内であるが、pH10.5とpH値が高い値である例である。
【0039】
実施例1~12と同様に、処理後のエビについて、処理後の歩留、エビをボイルしてボイル後の歩留、ボイル後のエビの外観(白さ)、ボイル後のエビの外観(透明感)、ボイル後のエビの食感およびボイル後のエビの味を以下に記載するように評価し、結果を表3に記載する。
【0040】
【表3】
【0041】
表3の結果から明らかなように、比較例4では比較例1のもののpHを10.0にして実験したが、やはりエビのボイル後の外観および食感がよくない。また、実施例19~23では、酢酸カルシウムおよび焼成カルシウムの量を固定してpHを7.0~10.0まで変動させた。実施例23のpH10.0では若干エビのボイル後の外観および食感が良くないように見えるが、全て許容範囲の中に入っていることが理解できる。比較例5のようにpHが10.5では、ボイル後のエビに苦みやえぐみといったアルカリ味を感じ、好ましくない。
【0042】
<実施例24~26および比較例6>
表4に記載のアルカリ処理液配合でアルカリ処理液を形成し、pHは8.5、酢酸カルシウム濃度は0.8重量%、焼成カルシウム濃度は0.1重量%に固定して、溶液の温度を5~30℃の範囲で変動させて、エビを処理した。尚、処理時間は3時間で固定した。比較例6は比較例1と同じ配合で、処理時間が3時間の例を示している。
【0043】
実施例1~12と同様に、処理後のエビについて、処理後の歩留、エビをボイルしてボイル後の歩留、ボイル後のエビの外観(白さ)、ボイル後のエビの外観(透明感)、ボイル後のエビの食感およびボイル後のエビの味を以下に記載するように評価し、結果を表4に記載する。
【0044】
【表4】
【0045】
表4の結果から明らかなように、実施例24~26では、組成等は本発明の範囲内で、処理温度を5~30℃で変動させたが、ボイル後の外観および食感が良い結果が出ている。比較例6が比較例1と同じ配合なので、処理時間が3時間でも、ボイル後の外観(白さ)、ボイル後の外観(透明感)、食感において、効果として不十分である。
【0046】
<実施例27~31>
表5に記載のアルカリ処理液配合でアルカリ処理液を形成し、pHは8.5、酢酸カルシウム濃度は0.8重量%、焼成カルシウム濃度は0.1重量%に固定して、エビの処理時間を15分から48時間の範囲で変動させてエビを処理した。尚、処理温度は10℃で固定した。
【0047】
実施例1~12と同様に、処理後のエビについて、処理後の歩留、エビをボイルしてボイル後の歩留、ボイル後のエビの外観(白さ)、ボイル後のエビの外観(透明感)、ボイル後のエビの食感およびボイル後のエビの味を以下に記載するように評価し、結果を表5に記載する。
【0048】
【表5】
【0049】
表5の結果から明らかなように、実施例27~31では、組成等は本発明の範囲内で、処理時間を15分から48時間の範囲で変化させたが、ボイル後の外観および食感が良い結果が出ている。
【0050】
<実施例32~36>
表6に記載のアルカリ処理液配合でアルカリ処理液を形成し、pHは8.5、酢酸カルシウム濃度は0.8重量%、焼成カルシウム濃度は0.1重量%に固定して、エビの処理時間も16時間で固定し、処理温度は10℃で固定した。この実施例では、加工澱粉(リン酸架橋澱粉、酢酸澱粉)や蛋白質(卵白粉末、ホエイタンパク、エンドウ豆タンパク)を加えた例である。
【0051】
実施例1~12と同様に、処理後のエビについて、処理後の歩留、エビをボイルしてボイル後の歩留、ボイル後のエビの外観(白さ)、ボイル後のエビの外観(透明感)、ボイル後のエビの食感およびボイル後のエビの味を以下に記載するように評価し、結果を表6に記載する。
【0052】
【表6】
【0053】
表6の結果から明らかなように、実施例32~36では、組成等は本発明の範囲内で、加工澱粉や蛋白質を添加したが、ボイル後の外観および食感の全てに良い結果が出ている。ボイル後の食感は、実施例32と34では「歩留上がっているが繊維感のある硬さ」になり、実施例33と35では「歩留上がっているが張のある硬さ」と評価されている。実施例36のボイル後の外観は△で「わずかに黄色」を呈していた。
【0054】
上記の実施例1~36から明らかであるが、本発明のアルカリ処理液でエビ類を処理すると、エビ類のボイル後の外観および食感が良く、エビの身が白くならず透明になり、繊維感が不足することが無くなる。また、本発明のアルカリ処理液で処理する際に、所定の温度、所定の処理時間および所定のpH範囲で行うと、エビ類のボイル後の外観および食感が良くすることができる。