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特許7133879梁材用のT字状鉄骨及び鉄骨と木材のハイブリット梁材
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-01
(45)【発行日】2022-09-09
(54)【発明の名称】梁材用のT字状鉄骨及び鉄骨と木材のハイブリット梁材
(51)【国際特許分類】
   E04C 3/292 20060101AFI20220902BHJP
   E04B 1/30 20060101ALI20220902BHJP
【FI】
E04C3/292
E04B1/30 C
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021190670
(22)【出願日】2021-11-25
【審査請求日】2022-04-21
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】505134280
【氏名又は名称】株式会社内田鐵工所
(74)【代理人】
【識別番号】100128794
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 庸悟
(72)【発明者】
【氏名】内田 茂
【審査官】伊藤 昭治
(56)【参考文献】
【文献】実公昭46-023318(JP,Y1)
【文献】特表平04-504985(JP,A)
【文献】特開平05-285562(JP,A)
【文献】特開2001-027005(JP,A)
【文献】特開2020-147995(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04C 3/292
E04B 1/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
梁材の芯部を構成する長尺平板状の鋼材であってウェブを形成するように断面形状が縦方向に長い縦板部、及び梁材の上面を構成する長尺平板状の鋼材であってフランジを形成するように断面形状が横方向に長い横板部によって、断面形状がT字形に形成され、前記横板部に長尺方向に間隔をおいてスリット状に開口して設けられた複数のほぞ穴に、該ほぞ穴に対応して前記縦板部の上縁側に設けられた複数のほぞが嵌められることで、前記縦板部と前記横板部とが固定されて設けられる梁材用のT字状鉄骨であって、
前記ほぞが、前記ほぞ穴を貫通して前記横板部の上面から突き出る突出部を備え、該ほぞの突出部にスリット状に開口して設けられた固定用の挿通孔が設けられ、
該固定用の挿通孔に挿通されて前記縦板部の上縁側に配された前記横板部の上側に位置されて固定されることで、前記横板部が前記縦板部から離脱しないように固定する平板状の固定用部材を備え、
前記横板部と前記平板状の固定用部材との板面同士を合わせた形態に締結部材によって固定されるように、該締結部材が配されることで構成される締結部が、前記横板部の巾方向の中心である左右の中心を基準として左右の位置に設けられていることを特徴とする梁材用のT字状鉄骨。
【請求項2】
前記締結部が、前記横板部の左右の中心を基準として左右の対称位置に設けられていることを特徴とする請求項1記載の梁材用のT字状鉄骨。
【請求項3】
前記締結部材が、ボルトとナットによるものであることを特徴とする請求項1又は2記載の梁材用のT字状鉄骨。
【請求項4】
前記縦板部の上縁における長手方向の中央が、最も上側へ湾曲したアーチ状に形成されていることを特徴とすることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の梁材用のT字状鉄骨。
【請求項5】
前記横板部の上面に、複数のスタッドジベルが固定されていることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の梁材用のT字状鉄骨。
【請求項6】
請求項1~5のいずれかに記載の梁材用のT字状鉄骨を用いた鉄骨と木材のハイブリット梁材であって、
前記T字状鉄骨における長尺方向の両端部及び前記横板部の上面側を除いた部位である前記縦板部を、覆って内包するように設けられた包囲木材部とを備えることを特徴とする鉄骨と木材のハイブリット梁材。
【請求項7】
前記包囲木材部が、内側の木材層と外側の木材層の2層に設けられ、前記内側の木材層と前記外側の木材層との間に不燃材層が配されていることを特徴とする請求項6記載の鉄骨と木材のハイブリット梁材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、梁材の芯部を構成する長尺平板状の鋼材であってウェブを形成するように断面形状が縦方向に長い縦板部、及び梁材の上面を構成する長尺平板状の鋼材であってフランジを形成するように断面形状が横方向に長い横板部によって、断面形状がT字形に形成された梁材用のT字状鉄骨及び鉄骨と木材のハイブリット梁材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鉄骨と木材のハイブリット梁材としては、集成材によるもので、加熱時間に応じた被覆厚さを確保した木質部材を柱、梁等の構造材である鉄骨部材の耐火被覆としたものであって、木質部材(集成材)による耐火被覆材で鉄骨造の耐火被覆が実現でき、建物の耐火構造化と木質化が同時に無駄なく容易に実現可能となるので、工事時間の短縮とコスト削減が図れるものであり、木材を耐火被覆材として使うことは、新たな分野での活用となり、森林資源の活用範囲が広がり、林業の活性化が図れ、CO削減に貢献できる(特許文献1)ものが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-11063号公報(第1頁)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
梁材用のT字状鉄骨及び鉄骨と木材のハイブリット梁材に関して解決しようとする問題点は、従来はH形鋼を利用してその周囲に木材を配することで耐火性を高めたものが提案されているが、T字状鉄骨を利用して木材とのハイブリット梁材としてより合理的且つ適切に構成できるものが提案されていないと共に、そのT字状鉄骨について環境負荷が小さく様々な仕様に適切に対応して製造できるものが提案されていないことにある。
【0005】
そこで本発明の目的は、より合理的に耐火性の高いハイブリット梁材を構成するように利用できるT字状鉄骨について、環境負荷が小さく様々な仕様に適切に対応して製造できる梁材用のT字状鉄骨及び鉄骨と木材のハイブリット梁材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記目的を達成するために次の構成を備える。
本発明に係る梁材用のT字状鉄骨の一形態によれば、梁材の芯部を構成する長尺平板状の鋼材であってウェブを形成するように断面形状が縦方向に長い縦板部、及び梁材の上面を構成する長尺平板状の鋼材であってフランジを形成するように断面形状が横方向に長い横板部によって、断面形状がT字形に形成され、前記横板部に長尺方向に間隔をおいてスリット状に開口して設けられた複数のほぞ穴に、該ほぞ穴に対応して前記縦板部の上縁側に設けられた複数のほぞが嵌められることで、前記縦板部と前記横板部とが固定されて設けられる梁材用のT字状鉄骨であって、前記ほぞが、前記ほぞ穴を貫通して前記横板部の上面から突き出る突出部を備え、該ほぞの突出部にスリット状に開口して設けられた固定用の挿通孔が設けられ、該固定用の挿通孔に挿通されて前記縦板部の上縁側に配された前記横板部の上側に位置されて固定されることで、前記横板部が前記縦板部から離脱しないように固定する平板状の固定用部材を備え、前記横板部と前記平板状の固定用部材との板面同士を合わせた形態に締結部材によって固定されるように、該締結部材が配されることで構成される締結部が、前記横板部の巾方向の中心である左右の中心を基準として左右の位置に設けられている。
【0007】
本発明に係る梁材用のT字状鉄骨の一形態によれば、前記締結部が、前記横板部の左右の中心を基準として左右の対称位置に設けられていることを特徴とすることができる。
本発明に係る梁材用のT字状鉄骨の一形態によれば、前記締結部材が、ボルトとナットによるものであることを特徴とすることができる。
【0008】
本発明に係る梁材用のT字状鉄骨の一形態によれば、前記縦板部の上縁における長手方向の中央が、最も上側へ湾曲したアーチ状に形成されていることを特徴とすることができる。
本発明に係る梁材用のT字状鉄骨の一形態によれば、前記縦板部に重量を軽減するための軽量化用透孔が、前記T字状鉄骨の長尺方向に複数設けられていることを特徴とすることができる。
本発明に係る梁材用のT字状鉄骨の一形態によれば、前記横板部の上面に、複数のスタッドジベルが固定されていることを特徴とすることができる。
【0009】
本発明に係る鉄骨と木材のハイブリット梁材の一形態によれば、前記梁材用のT字状鉄骨を用いた鉄骨と木材のハイブリット梁材であって、前記T字状鉄骨における長尺方向の両端部及び前記横板部の上面側を除いた部位である前記縦板部を、覆って内包するように設けられた包囲木材部とを備えることを特徴とすることができる。
【0010】
本発明に係る鉄骨と木材のハイブリット梁材の一形態によれば、前記包囲木材部が、内側の木材層と外側の木材層の2層に設けられ、前記内側の木材層と前記外側の木材層との間に不燃材層が配されていることを特徴とすることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る梁材用のT字状鉄骨及び鉄骨と木材のハイブリット梁材によれば、より合理的に耐火性の高いハイブリット梁材を構成するように利用できるT字状鉄骨について、環境負荷が小さく様々な仕様に適切に対応して製造できるという特別有利な効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明に係る鉄骨と木材のハイブリット梁材の形態例を示す断面図である。
図2図1の形態例に用いることができるT字状鉄骨の形態例を示す(a)正面図及び(b)端面図である。
図3図1の形態例に用いることができるT字状鉄骨の他の形態例を示す(a)正面図及び(b)端面図である。
図4】本発明に係る梁材用のT字状鉄骨(ほぞ組立構造)の形態例を示す(a)正面図及び(b)端面図である。
図5図4の部分(右側端部)拡大図である。
図6図4のA-A線断面図である。
図7図4の形態例の部分分解組立図である。
図8】本発明に係るT字状鉄骨(ほぞ組立構造)を用いた鉄骨と木材のハイブリット梁材の形態例を示す(a)正面図及び(b)端面図である。
図9】本発明に係るT字状鉄骨(ほぞ組立構造)を用いた鉄骨と木材のハイブリット梁材の形態例を示す断面図である。
図10】本発明に係る鉄骨と木材のハイブリット梁材の形態例の使用状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る梁材用のT字状鉄骨及び鉄骨と木材のハイブリット梁材の形態例を、図面(図1~10)に基づいて詳細に説明する。
【0014】
本発明に係る鉄骨と木材のハイブリット梁材は、図1図9などに示すように、梁材の芯部を構成する長尺平板状の鋼材であってウェブを形成するように断面形状が縦方向に長い縦板部20、及び梁材の上面を構成する長尺平板状の鋼材であってフランジを形成するように断面形状が横方向に長い横板部30によって、断面形状がT字形に形成された梁材用のT字状鉄骨10と、そのT字状鉄骨10における長尺方向の両端部及び横板部30の上面側を除いた部位である縦板部20を、内包して覆うように設けられた包囲木材部50とを備える。なお、この鉄骨と木材のハイブリット梁材は、長尺方向の両端部に設けられた鉄骨柱への取付用孔11を用いて、締結手段によって、鉄骨柱に取り付けられ使用されるものである。
【0015】
この発明によれば、T字状鉄骨を利用し、より合理的に耐火性の高い、鉄骨と木材のハイブリット梁材を構成できるという特別有利な効果を奏する。すなわち、本発明の鉄骨と木材のハイブリット梁材によれば、T字状鉄骨10を用いるため、従来のH形鋼を用いて鉄骨と木材のハイブリッド梁材を構成する場合と比較すると、下側のフランジの部分がないことになり、その下側のフランジを覆うように形成されていた従来の包囲木材部に比べ、本発明に係る包囲木材部50は簡易な形態となる。そして、下側のフランジの部分がないことで、包囲木材部50が、縦板部20を十分に厚く且つ好適に覆うことができるため、耐火性能を高めることができる。
【0016】
つまり、梁材は、火災の際に、その下側の角部を中心に炎によって焙られて損傷し易く、木材のみで構成されるものは延焼し、鉄骨のみで構成されるものは高温に曝されて変形し易い。これに対して、本発明に係る鉄骨と木材のハイブリット梁材では、包囲木材部50の表面は損傷するが、内部の縦板部20を含むT字状鉄骨10は、H形鋼の場合に比較して、よりも合理的に包囲木材部50に守られて損傷しにくく、建物としての構造強度を維持することができる。なお、H形鋼の場合は、下側のフランジに火災の熱が伝わり易く、損傷の原因になり易い。従って、本発明に係るT字状鉄骨を利用した鉄骨と木材のハイブリット梁材によれば、そのT字状鉄骨による鉄骨構造によってスパンの長い大空間の建築物を実現でき、その耐火性を向上できる。
【0017】
また、本発明に係るT字状鉄骨10の製造方法としては、後述するように、圧延成形や溶接によらないで、縦板部20と横板部30を構成する鋼板同士を固定して一体化する方法を用いることができる。但し、このT字状鉄骨10としては、従来のT形鋼の製造方法を排除するものではなく、圧延成形や溶接によって製造されたものを用いることができるのは勿論である。
【0018】
なお、本形態例のT字状鉄骨10によれば、H形鋼に比べて、縦板部20(ウェブ)の板厚が厚く設定されている。このT字状鉄骨10によれば、T字状であってH形鋼に比べて簡素な形態であるが、鉛直荷重(縦荷重)を受ける強度を適切に得ることができる。例えば、本形態例のT字状鉄骨10の縦板部20としては厚さが25mmや28mmの鋼板を用いることができ、横板部30としては厚さが9mmや12mmの鋼板を用いることができる。
【0019】
また、本形態例では、図1図9などに示すように、包囲木材部50が、内側の木材層51と外側の木材層52の2層に設けられている。これによれば、耐火性能を高めることができ、外側の木材層52は、適宜に交換することが可能である。
【0020】
さらに、図1図9などに示す形態例においては、包囲木材部50において不燃材層53を介在させることで、より耐火性を向上させている。すなわち、包囲木材部50が、内側の木材層51と外側の木材層52の2層に設けられ、その内側の木材層51と外側の木材層52との間に不燃材層53が配されて介在されている。本形態例の不燃材層53は、モルタルで形成された板状の部材(モルタル板)であり、内側の木材層51に形成された凹部又は溝部に嵌め込まれた形態に設けられている。なお、本形態例では、不燃材層53として、モルタル板を用いているが、これに限定されるものではなく、不燃性の高いものを適宜選択的に利用できるのは勿論である。また、包囲木材部50としては、反りや狂いの少ない集成材を用いることで、より適切に鉄骨と木材のハイブリット梁材を構築できる。
【0021】
また、本形態例のT字状鉄骨10に対する包囲木材部50の固定方法や、不燃材層53を含む包囲木材部50の組み込み方法は、図1図9に示すように、ボルト12、ナット13及びワッシャー14などによる締結手段、木ネジ55や釘、或いは接着剤など、固着手段や接合手段、及び凹凸や溝を利用した組み込み形態を適宜選択的に用いることができるは勿論である。なお、外側の木材層52は、化粧板としても機能し、本形態例では木ネジ55を用いることで、適宜に交換することが可能である。
【0022】
図1の形態例では、T字状鉄骨10に、内側の木材層51が、嵌め込まれて、ボルト12、ナット13及びワッシャー14によって構成される締結部材によって固定され、不燃材層53が嵌められて接着剤によって仮止めされた外側の木材層52が、その不燃材層53の側が内側の木材層51の外面に接することで両者の間に介在するように、木ネジ55によって内側の木材層51に固定されている。なお、T字状鉄骨10の縦板部20には、図1図4に示すようにボルト12を挿通できるボルト孔25が、適宜に間隔をおいて設けられている。
【0023】
また、本発明に係る鉄骨と木材のハイブリット梁材に用いることができるT字状鉄骨10では、図2に示すように、縦板部20(T字状鉄骨10)の上縁における長手方向の中央が、最も上側へ湾曲したアーチ状に形成されている。つまり、図2に示すように、T字状鉄骨10の両端上角のX点とX’点とを結ぶ直線(水平直線)に対して、そのT字状鉄骨10の上縁の中央(Y点)が、上方へ湾曲(膨出)したアーチ状となっている。そして、本形態例では、縦板部20の下縁における長手方向の中央(Y点の真下の下縁の点)が、最も上側へ湾曲したアーチ状に形成されている。従って、本形態例では、縦板部20の縦方向の巾が、その縦板部20の長手方向の全長に亘って同じ巾になるように設けられている。なお、これに限らず、縦板部20の下縁が、その長手方向に平坦に設けられても縦荷重を適切に受けることができる。
【0024】
そのアーチ状の湾曲の大きさは、例えば、X点からX´点の長さが6000mmとすると、その線分から上方への膨出したY点までの距離が10mm程度に設定することができる。これによれば、このT字状鉄骨10にかかる縦荷重を適切に受けることができ、その縦荷重によって生じるたわみによって、T字状鉄骨10の上面及び本形態例では下面(縦板部20の下縁)が平坦化するように調整することができる。なお、図2及び3では、T字状鉄骨10に包囲木材部50を固定するために用いられるボルト孔25の記載を省略しているが、図4に示すように、そのボルト孔25同士の間隔や数量などは、仕様に応じて適宜選択的に設定できるのは勿論である。
【0025】
また、本形態例の鉄骨と木材のハイブリット梁材に用いることができるT字状鉄骨10では、図3に示すように、縦板部20に重量を軽減するための軽量化用透孔21が、T字状鉄骨10の長尺方向に複数設けられている。
【0026】
なお、図3に示した形態例によれば、軽量化用透孔21が正三角形を基礎として角部が丸められた形状に設けられている。これによれば、角状の切欠き部による応力集中を回避できる形態となっていると共に、トラス構造となっているため縦荷重を合理的に受けることができる形態となっている。すなわち、構造強度を維持できると共に、重量を適切に軽減できる形状になっている。
【0027】
また、本発明に係る梁材用のT字状鉄骨10としては、図4~7に示すように、長尺方向に間隔をおいて横板部30にスリット状に開口して設けられた複数のほぞ穴31に、そのほぞ穴31に対応して縦板部20の上縁側に設けられた複数のほぞ23が嵌められることで、縦板部20と横板部30とが固定されることで一体化されて設けられているものを採用できる。なお、この鋼材(縦板部20や横板部30)に設けられるほぞ23やほぞ穴31は、例えば、プラズマ切断などの既知の切断加工手段によって、適切に形成することができる。
【0028】
これによれば、ほぞ穴31にほぞ23が嵌るため、縦板部20と横板部30とが長尺方向及び横方向について相互に規制されることになり、その縦板部20と横板部30とを適切に一体化させることができる。なお、ほぞ穴31にほぞ23が単に嵌るだけでは、上下方向に離脱するため、後述するような離脱を防止する手段が必要になるが、この上下方向の離脱手段については、その後述する例に限定されず、ネジ止め、カシメ、ろう付け、溶接などの固着手段を適宜選択的に用いることができるのは勿論である。
【0029】
そして、本形態例の梁材用のT字状鉄骨では、ほぞ23が、ほぞ穴31を貫通して横板部30の上面から突き出る突出部23aを備え、そのほぞ23の突出部23aにスリット状に開口して設けられた固定用の挿通孔24が設けられ、その固定用の挿通孔24に挿通されて縦板部20の上縁側に配された横板部30の上側に位置されて固定されることで、横板部30が縦板部20から離脱しないように固定する固定用部材40を備えている。
【0030】
これによれば、梁材用のT字状鉄骨10を、圧延成形や溶接などの大きなエネルギーが必要となる製造方法によらないで構築できるため、環境負荷が小さく、また、熱がかからないため変形することがなく、その変形を修正する必要がない。このため、梁材用のT字状鉄骨10における様々な仕様に容易に対応でき、最適な形態のものを簡便に製造できる利点がある。
【0031】
本形態例の具体的な形状は、図7に示すように、横板部30のほぞ穴31が、縦板部20の上縁に形成された凹凸部の凸部に相当するほぞ23に対応するように形成されており、縦板部20の厚さが嵌る幅で長細い矩形のスリット状(長孔状)に設けられている。また、本形態例の縦板部20の前記凸部に相当するほぞ23は、ほぞ穴31を突っ切って横板部30の上面側へ突出する突出部23aが、矩形状に連続して一体に設けられている。そして、固定用の挿通孔24が、矩形の板状の固定用部材40が挿通されるように、矩形のスリット状(長孔状)に形成されている。なお、ほぞ23、ほぞ穴31、固定用の挿通孔24及び固定用部材40の形態は、本形態例のように矩形状に限定されるものではなく、適切な嵌め合い関係になるものであればよく、例えば、角部を丸めた形状の長円状の嵌め合い形状であってもよい。
【0032】
また、縦板部20の上縁にほぞ23が設けられるように形成された凹凸の凹の底面に相当する上縁面が、ほぞ23に嵌る横板部30を受けて支持する受縁面22となっており、突出部23aに設けられる固定用の挿通孔24は、その受縁面22から横板部30の厚さの間隔分に突出している側の部位に設けられている。そして、本形態例では、横板部30と固定用部材40とが、その横板部30に巾方向(左右)の中心を基準に左右対称位置に設けられた一対の締結用孔32と、その一対の締結用孔32に対応して固定用部材40に設けられた一対の締結用孔42とを用いて、一対の締結部材45(本形態例ではボルト・ナット)によって板同士を合せた形態に固定されている。これによれば、縦板部20と横板部30とが相互に上下方向に離脱することを防止でき、ほぞ23とほぞ穴31との嵌め合い関係によって前後左右については規制されているため、縦板部20と横板部30と合理的に固定することができる。
【0033】
さらに、本形態例では、図6図7に示すように、矩形の板状の固定用部材40が左右に比較的長い形態に設けられており、縦板部20の固定用の挿通孔24に挿通された部分を中心位置にして左右対称位置に配される一対の締結部材45(本形態例ではボルト・ナット)の間隔が、固定用部材40の撓みを許容できる程度に比較的長く設定されている。これによれば、ほぞ23とほぞ穴31による縦板部20と横板部30との嵌め合い関係と、及び横板部30とその横板部30の上側に位置するように挿通される固定用部材40との嵌め合い関係や位置関係において、僅かなガタ(遊び)がないと容易に組み付けることができないが、その僅かな遊びを、固定用部材40が撓み変形することによって吸収して構造的に安定化するように設けられている。すなわち、建築物の上からの縦荷重(鉛直荷重)がかかると、固定用部材40の撓むことによって、横板部30が、縦板部20の前述の受縁面22に押接された状態で固定されることになり、横板部30と縦板部20とが一体となったT字状鉄骨10として構造的に安定した状態となることができる。
【0034】
そして、図4~7に示した梁材用のT字状鉄骨10を用いることで、図8及び図9に示すように、鉄骨と木材のハイブリット梁材を構成することができる。この図8及び図9に示す形態例によれば、図1に示した形態例に比較して、横板部30の上面側に突出部23aと固定用部材40及び締結部材45が追加されて配された状態となっているが、これらの構成は、例えば床スラブ60(図10)を構築することによって埋め込まれる部分となって、その床スラブ60と一体化することができる。従って、構造的に強度を高めるように作用し、デメリットはない。なお、包囲木材部50の図9及び10に示す形態例における内側の木材層51は、左右に分割された半割構造になっており、その内側の木材層51の内側の段部に縦板部20が嵌るようになっており、内側の木材層51の製造コストを低減できる形態になっている。
【0035】
さらに、本形態例の鉄骨と木材のハイブリット梁材では、図10に示すように、横板部30(T字状鉄骨10のフランジ)の上面に、複数のスタッドジベル61が固定されている。このようにスタッドジベル61を設けることができるため、床スラブ60を適切に構築することができる。これによって、構造強度の高い建築物を、適切に構築することができる。
【0036】
すなわち、本形態例の鉄骨と木材のハイブリット梁材の横板部30の上面にデッキプレート62を固定することで、そのデッキプレート62を梁材の間に配することができ、横板部30の上面に設けられたスタッドジベル61を利用して鉄筋63を適切に配することができる。これによって、コンクリート65を適切に打設して床スラブ60を適切に構築することができ、構造強度の高い建築物を適切に構築することができる。
【0037】
以上、本発明につき好適な形態例を挙げて種々説明してきたが、本発明はこの形態例に限定されるものではなく、発明の精神を逸脱しない範囲内で多くの改変を施し得るのは勿論のことである。
【符号の説明】
【0038】
10 T字状鉄骨
11 鉄骨柱への取付用孔
12 ボルト
13 ナット
14 ワッシャー
20 縦板部
21 軽量化用透孔
22 受縁面
23 ほぞ
23a 突出部
24 固定用の挿通孔
25 ボルト孔
30 横板部
31 ほぞ穴
32 締結用孔
40 固定用部材
42 締結用孔
45 締結部材
50 包囲木材部
51 内側の木材層
52 外側の木材層
53 不燃材層
55 木ネジ
60 床スラブ
61 スタッドジベル
62 デッキプレート
63 鉄筋
65 コンクリート
【要約】
【課題】より合理的に耐火性の高いハイブリット梁材を構成するように利用できるT字状鉄骨について、環境負荷が小さく様々な仕様に適切に対応して製造できる梁材用のT字状鉄骨及び鉄骨と木材のハイブリット梁材を提供する。
【解決手段】縦板部20及び横板部30によって、断面形状がT字形に形成され、横板部30に長尺方向に間隔をおいてスリット状に開口して設けられた複数のほぞ穴31に、該ほぞ穴31に対応して縦板部20の上縁側に設けられた複数のほぞ23が嵌められることで、縦板部20と横板部30とが固定されるように、ほぞの突出部23aにスリット状に開口して設けられた固定用の挿通孔24に挿通される平板状の固定用部材40を備え、横板部30と平板状の固定用部材40との締結部が、横板部30の巾方向の中心である左右の中心を基準として左右の位置に設けられている。
【選択図】図7
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10