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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-01
(45)【発行日】2022-09-09
(54)【発明の名称】化粧品組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/06 20060101AFI20220902BHJP
   A61K 8/31 20060101ALI20220902BHJP
   A61K 8/39 20060101ALI20220902BHJP
   A61Q 19/10 20060101ALI20220902BHJP
   A61K 8/33 20060101ALI20220902BHJP
   A61K 8/37 20060101ALI20220902BHJP
   A61K 8/44 20060101ALI20220902BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20220902BHJP
【FI】
A61K8/06
A61K8/31
A61K8/39
A61Q19/10
A61K8/33
A61K8/37
A61K8/44
A61K8/34
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2021564985
(86)(22)【出願日】2021-06-30
(86)【国際出願番号】 JP2021024796
(87)【国際公開番号】W WO2022004802
(87)【国際公開日】2022-01-06
【審査請求日】2021-11-02
(31)【優先権主張番号】P 2020113773
(32)【優先日】2020-07-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2021027488
(32)【優先日】2021-02-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】520209668
【氏名又は名称】株式会社Merry Plus
(74)【代理人】
【識別番号】100103207
【弁理士】
【氏名又は名称】尾崎 隆弘
(72)【発明者】
【氏名】杜▲ヤオ▼
【審査官】駒木 亮一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/122087(WO,A1)
【文献】特開2018-016613(JP,A)
【文献】特開2019-218300(JP,A)
【文献】特開2014-122197(JP,A)
【文献】特開2020-083819(JP,A)
【文献】特開2006-045197(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Japio-GPG/FX
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水中油型のマイクロエマルションの形態の化粧品組成物であって、
(a)炭化水素油、エーテル油およびエステル油からなる群より選択される少なくとも1種の油と、
(b)HLB値が11~18の、少なくとも1種のポリグリセリン脂肪酸モノエステルと、
(c)HLB値は10~13の、炭素数10~14のアルキル鎖またはアルケニル鎖を有する、少なくとも1種のポリグリセリン脂肪酸ジエステルまたはポリグリセリン脂肪酸トリエステルと、
(d)少なくとも1種のアミノ酸系陰イオン界面活性剤またはイセチオン酸系陰イオン界面活性剤と、
(e)水と
を含み、
前記(b)のポリグリセリン脂肪酸モノエステルに対する前記(c)のポリグリセリン脂肪酸ジエステルまたはポリグリセリン脂肪酸トリエステルの質量比率が、0.6~1.1であり、
前記(a)の油の質量に対する前記(b)のポリグリセリン脂肪酸モノエステルと前記(c)のポリグリセリン脂肪酸ジエステルまたはポリグリセリン脂肪酸トリエステルの質量の総量の比率が、1.5~50であり、
総質量に対してポリオールが1.0質量%未満であることを特徴とする、化粧品組成物。
【請求項2】
水中油型のマイクロエマルションの形態の化粧品組成物であって、
(a)炭化水素油、エーテル油およびエステル油からなる群より選択される少なくとも1種の油と、
(b)HLB値が11~18の、少なくとも1種のポリグリセリン脂肪酸モノエステルと、
(c)HLB値は10~13の、炭素数10~14のアルキル鎖またはアルケニル鎖を有する、少なくとも1種のポリグリセリン脂肪酸ジエステルまたはポリグリセリン脂肪酸トリエステルと、
(d)少なくとも1種のアミノ酸系陰イオン界面活性剤またはイセチオン酸系陰イオン界面活性剤と、
(e)水と
を含み、
前記(b)のポリグリセリン脂肪酸モノエステルに対する前記(c)のポリグリセリン脂肪酸ジエステルまたはポリグリセリン脂肪酸トリエステルの質量比率が、0.6~1.1であり、
前記(a)の油の質量に対する前記(b)のポリグリセリン脂肪酸モノエステルと前記(c)のポリグリセリン脂肪酸ジエステルまたはポリグリセリン脂肪酸トリエステルの質量の総量の比率が、1.5~50であり、
30℃における粘度が0.1~100mPa・sであることを特徴とする、化粧品組成物。
【請求項3】
水中油型のマイクロエマルションの形態の化粧品組成物であって、
(a)炭化水素油、エーテル油およびエステル油からなる群より選択される少なくとも1種の油と、
(b)HLB値が11~18の、少なくとも1種のポリグリセリン脂肪酸モノエステルと、
(c)HLB値は10~13の、炭素数10~14のアルキル鎖またはアルケニル鎖を有する、少なくとも1種のポリグリセリン脂肪酸ジエステルまたはポリグリセリン脂肪酸トリエステルと、
(d)少なくとも1種のアミノ酸系陰イオン界面活性剤またはイセチオン酸系陰イオン界面活性剤と、
(e)水と
を含み、
前記(b)のポリグリセリン脂肪酸モノエステルに対する前記(c)のポリグリセリン脂肪酸ジエステルまたはポリグリセリン脂肪酸トリエステルの質量比率が、0.6~1.1であり、
前記(a)の油の質量に対する前記(b)のポリグリセリン脂肪酸モノエステルと前記(c)のポリグリセリン脂肪酸ジエステルまたはポリグリセリン脂肪酸トリエステルの質量の総量の比率が、1.5~50であり、
(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30))クロスポリマーを含有しないことを特徴とする、化粧品組成物。
【請求項4】
前記(a)の油が、炭化水素油またはエステル油を含む、請求項1~3のいずれかに記載の化粧品組成物。
【請求項5】
前記(b)のポリグリセリン脂肪酸モノエステルは、2~10個のグリセリンに由来するポリグリセリル部分、および、炭素数6~12のアルキル鎖またはアルケニル鎖を有し、前記(c)のポリグリセリン脂肪酸ジエステルまたはポリグリセリン脂肪酸トリエステルは、2~10個のグリセリンに由来するポリグリセリル部分を有するポリグリセリン脂肪酸ジエステルである、請求項1~のいずれかに記載の化粧品組成物。
【請求項6】
前記(b)のポリグリセリン脂肪酸モノエステルは、2~10個のグリセリンに由来するポリグリセリル部分、および、炭素数6~12のアルキル鎖またはアルケニル鎖を有し、前記(c)のポリグリセリン脂肪酸ジエステルまたはポリグリセリン脂肪酸トリエステルは、2~10個のグリセリンに由来するポリグリセリル部分を有するポリグリセリン脂肪酸トリエステルである、請求項1~のいずれかに記載の化粧品組成物。
【請求項7】
前記(b)のポリグリセリン脂肪酸モノエステルと前記(c)のポリグリセリン脂肪酸ジエステルまたはポリグリセリン脂肪酸トリエステルの混合物の質量平均HLB値が、10.5~14.5である、請求項1~のいずれかに記載の化粧品組成物。
【請求項8】
前記(b)のポリグリセリン脂肪酸モノエステルは、カプリル酸ポリグリセリル-6であり、前記(c)のポリグリセリン脂肪酸ジエステルは、ジカプリン酸ポリグリセリル-6である、請求項に記載の化粧品組成物。
【請求項9】
前記(b)のポリグリセリン脂肪酸モノエステルは、カプリル酸ポリグリセリル-6であり、前記(c)のポリグリセリン脂肪酸トリエステルは、トリラウリン酸ポリグリセリル-10である、請求項に記載の化粧品組成物。
【請求項10】
前記(a)の油の質量に対する前記(b)のポリグリセリン脂肪酸モノエステルと前記(c)のポリグリセリン脂肪酸ジエステルまたはポリグリセリン脂肪酸トリエステルの質量の総量の比率が、1.66~30である、請求項1~9のいずれかに記載の化粧品組成物。
【請求項11】
前記(d)のアミノ酸系陰イオン界面活性剤は、ココイルグリシンNa、ココイルグルタミン酸Na、ココイルグルタミン酸2Naから選択され、前記(d)のイセチオン酸系陰イオン界面活性剤はココイルイセチオン酸Naである、請求項1~10のいずれかに記載の化粧品組成物。
【請求項12】
前記(a)の油が、ジカプリリルエーテル、イソヘキサデカン、スクワラン、ミリスチン酸イソプロピルから選択される、請求項1~11のいずれかに記載の化粧品組成物。
【請求項13】
ンプフォーマ―使いのクレンジング用化粧料である、請求項1~12のいずれかに記載の化粧品組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中油型のマイクロエマルションの形態の化粧品組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、化粧品の分野において、エマルションの形態の組成物はよく用いられており、特に、その外観の透明性あるいは半透明性により、マイクロエマルション等の微細なエマルションが求められている。
【0003】
一方、クレンジング用化粧料は、通常皮膚に塗布後、水で洗い流すか、ティッシュ等でふき取って使用される。様々な剤型のものが市販されているが、水型や水中油型エマルションは使用感が良好だが、洗浄効果が低いという欠点を有する。オイルや油中水型エマルションは洗浄効果が高いが、べたつきや水で落としにくく、使用感にまだ改善の余地が残されている。また、皮膚が濡れている状態での洗浄力や使用感が悪く、改善が望まれている。
【0004】
上記の諸問題を改善するためにはマイクロエマルションは有用である。マイクロエマルションは通常のミセル溶液(あるいは逆ミセル油溶液)よりも多量の油(あるいは水)を可溶化した系であり、外観は透明~青色を呈する等方性の溶液である。通常のマクロエマルションと同様にマイクロエマルションにも、水中油型(O/W、特許文献1~3)と油中水型(W/O、特許文献4)のタイプがある。
【0005】
特許文献4のようなクレンジング用化粧料としての油中水型のマイクロエマルションは通常の逆ミセル溶液より配合できる水の量が多く、皮膚が濡れている状態でも洗浄力がさほど落ちないという利点はあるが、外相が油であるため、水性メイクアップ汚れへの馴染みが水中油型のものより遅く、そのような汚れに対する洗浄力が低い。また、粘度が水系のものより高く、コットン使いが不可能などといった欠点がある。一方、水中油型マイクロエマルションは、透明度を保つために界面張力を極力小さくする必要があり、低い界面張力と配合される油の相乗効果により洗浄力の向上をもたらす。
【0006】
マイクロエマルションを形成するために使用される非イオン性界面活性剤として、安全性の高さから、ポリグリセリン脂肪酸エステルが従来使用されてきた。しかし、乳化力が弱く、マイクロエマルションを調整するには多量を配合する必要があり、また安定性が不十分であり、クリーミング等が起こりやすいという問題があった。
【0007】
そこで、ポリグリセリン脂肪酸エステルに加えて、炭素数10~22の2ヒドロキシ脂肪酸(特許文献1)や、ベタイン酸(特許文献2)を乳化助剤として配合して、マイクロエマルションの安定性を向上させることが開示されている。また、特許文献3には(a)少なくとも1種の油と、(b)1から10個のグリセリンに由来する(ポリ)グリセリル部分、及び、1つ又は複数のC12~20アルキル鎖又はアルケニル鎖を有する、少なくとも1種の第1の(ポリ)グリセリン脂肪酸エステル界面活性剤と、(c)1から10個のグリセリンに由来する(ポリ)グリセリル部分、及び、1つ又は複数のC6~10アルキル鎖又はアルケニル鎖を有する、少なくとも1種の第2の(ポリ)グリセリン脂肪酸エステル界面活性剤と、(d)少なくとも1種のポリオールと、(e)水とを含む化粧品組成物が開示され、ポリオールと、第1、第2の(ポリ)グリセリル脂肪酸エステルとの組み合わせにより直径が小さい分散相ができることが開示されている。
【0008】
一方、マイクロエマルションではないが、特許文献5には、HLBが10から17のポリグリセリン脂肪酸エステルを2種類含み、かつ、非イオン界面活性剤を少なくとも1種含む、水中油型クレンジング化粧料が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開平9-110635号公報
【文献】特許第3667046号公報
【文献】特開2014-122197号公報
【文献】特開2006-45197号公報
【文献】特開2018―16613号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1は、炭素数10~22の2ヒドロキシ脂肪酸が安定なマイクロエマルションに必須となり、また、ポリグリセリン脂肪酸エステルは分子量が大きいC12-C18の脂肪酸とポリグリセリンとのエステルであり、かつモノエステルに限っているため、クレンジング用化粧料として用いた場合は洗浄力が不十分である。特許文献2は、保湿液や乳液などリーブオン処方への応用しか言及していないが、例えばクレンジング用化粧料として用いた場合、分子量が大きいC12-C18の脂肪酸とポリグリセリンとのエステルを用いているため、洗浄力が不十分である。特許文献3はナノエマルションまたはマイクロエマルションの形成にポリオールが必須であり、例えばクレンジング商品として用いた場合、使用感の一つであるフレッシュ感に劣る。
【0011】
特許文献5の水中油型クレンジング化粧料は、水と油のバランスが良く、クレンジング力と洗い流し後のべたつきをうまくコントロールする試みがなされた。しかし、このような乳液タイプのクレンジング化粧料は乳化安定性を向上させるために、(アクリレーツ/アクリル酸アルキル)クロスポリマーと高級アルコールを配合し、水溶性増粘剤などで適度な粘度を与える必要があった。しかし、そのような乳化系は水で洗い流した後のべたつきは抑えられたとしても、塗布中は、(アクリレーツ/アクリル酸アルキル)クロスポリマーなどの水溶性増粘剤由来のべたつきがゆえにフレッシュ感が劣っていた。さらに、増粘剤で粘度が付与されるため、コットン等のシート基材でのふき取りやポンプフォーマー使いには向いていなかった。また、マイクロエマルションではないため、透明感に欠け、水系クレンジング特有の見た目の清涼感や高級感に欠けていた。そのため、塗布中においてもフレッシュで、さらに洗い流す必要がなく、コットン使いとポンプフォーマー使いに向いている水と油のバランスが取れたクレンジング化粧料の実現には未だ至っていなかった。
【0012】
そこで、本発明では、透明性、安定性が高く、使用感のよい化粧品組成物の提供を目的とする。さらに、クレンジング用化粧料として使用した場合、メイクアップ汚れが水性であっても油性であってもなじみやすく、洗浄力に優れ、シート基材でのふき取りによる使用の場合(水で洗い流さない場合)でも、フレッシュ感が得られる、化粧品組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、水中油型のマイクロエマルションの形態の化粧品組成物であって、(a)炭化水素油、エーテル油およびエステル油からなる群より選択される少なくとも1種の油と、(b)HLB値が11~18の、少なくとも1種のポリグリセリン脂肪酸モノエステルと、(c)HLB値は10~13の、炭素数10~14のアルキル鎖またはアルケニル鎖を有する、少なくとも1種のポリグリセリン脂肪酸ジエステルまたはポリグリセリン脂肪酸トリエステルと、(d)少なくとも1種のアミノ酸系陰イオン界面活性剤またはイセチオン酸系陰イオン界面活性剤と、(e)水とを含み、前記(b)のポリグリセリン脂肪酸モノエステルに対する前記(c)のポリグリセリン脂肪酸ジエステルまたはポリグリセリン脂肪酸トリエステルの質量比率が、0.6~1.1であり、前記(a)の油の質量に対する前記(b)のポリグリセリン脂肪酸モノエステルと前記(c)のポリグリセリン脂肪酸ジエステルまたはポリグリセリン脂肪酸トリエステルの質量の総量の比率が、1.5~50であり、総質量に対してポリオールが1.0質量%未満であることを特徴とする、化粧品組成物である。
【0014】
また、本発明は、水中油型のマイクロエマルションの形態の化粧品組成物であって、(a)炭化水素油、エーテル油およびエステル油からなる群より選択される少なくとも1種の油と、(b)HLB値が11~18の、少なくとも1種のポリグリセリン脂肪酸モノエステルと、(c)HLB値は10~13の、炭素数10~14のアルキル鎖またはアルケニル鎖を有する、少なくとも1種のポリグリセリン脂肪酸ジエステルまたはポリグリセリン脂肪酸トリエステルと、(d)少なくとも1種のアミノ酸系陰イオン界面活性剤またはイセチオン酸系陰イオン界面活性剤と、(e)水とを含み、前記(b)のポリグリセリン脂肪酸モノエステルに対する前記(c)のポリグリセリン脂肪酸ジエステルまたはポリグリセリン脂肪酸トリエステルの質量比率が、0.6~1.1であり、前記(a)の油の質量に対する前記(b)のポリグリセリン脂肪酸モノエステルと前記(c)のポリグリセリン脂肪酸ジエステルまたはポリグリセリン脂肪酸トリエステルの質量の総量の比率が、1.5~50であり、30℃における粘度が0.1~100mPa・sであることを特徴とする、化粧品組成物である。
【0015】
また、本発明は、水中油型のマイクロエマルションの形態の化粧品組成物であって、(a)炭化水素油、エーテル油およびエステル油からなる群より選択される少なくとも1種の油と、(b)HLB値が11~18の、少なくとも1種のポリグリセリン脂肪酸モノエステルと、(c)HLB値は10~13の、炭素数10~14のアルキル鎖またはアルケニル鎖を有する、少なくとも1種のポリグリセリン脂肪酸ジエステルまたはポリグリセリン脂肪酸トリエステルと、(d)少なくとも1種のアミノ酸系陰イオン界面活性剤またはイセチオン酸系陰イオン界面活性剤と、(e)水とを含み、前記(b)のポリグリセリン脂肪酸モノエステルに対する前記(c)のポリグリセリン脂肪酸ジエステルまたはポリグリセリン脂肪酸トリエステルの質量比率が、0.6~1.1であり、前記(a)の油の質量に対する前記(b)のポリグリセリン脂肪酸モノエステルと前記(c)のポリグリセリン脂肪酸ジエステルまたはポリグリセリン脂肪酸トリエステルの質量の総量の比率が、1.5~50であり、(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30))クロスポリマーを含有しないことを特徴とする、化粧品組成物である。
【0016】
前記(a)の油は、炭化水素油またはエステル油を含むことが好ましい。
【0017】
前記(b)のポリグリセリン脂肪酸モノエステルは、2~10個のグリセリンに由来するポリグリセリル部分、および、炭素数6~12のアルキル鎖またはアルケニル鎖を有し、前記(c)のポリグリセリン脂肪酸ジエステルまたはポリグリセリン脂肪酸トリエステルは、2~10個のグリセリンに由来するポリグリセリル部分を有するポリグリセリン脂肪酸ジエステルであることが好ましい。
【0018】
前記(b)のポリグリセリン脂肪酸モノエステルは、2~10個のグリセリンに由来するポリグリセリル部分、および、炭素数6~12のアルキル鎖またはアルケニル鎖を有し、前記(c)のポリグリセリン脂肪酸ジエステルまたはポリグリセリン脂肪酸トリエステルは、2~10個のグリセリンに由来するポリグリセリル部分を有するポリグリセリン脂肪酸トリエステルであることが好ましい。
【0020】
前記(b)のポリグリセリン脂肪酸モノエステルと前記(c)のポリグリセリン脂肪酸ジエステルまたはポリグリセリン脂肪酸トリエステルの混合物の質量平均HLB値が、10.5~14.5であることが好ましい。
【0021】
前記(b)のポリグリセリン脂肪酸モノエステルは、カプリル酸ポリグリセリル-6であり、前記(c)のポリグリセリン脂肪酸ジエステルは、ジカプリン酸ポリグリセリル-6であることが好ましい。
【0022】
前記(b)のポリグリセリン脂肪酸モノエステルは、カプリル酸ポリグリセリル-6であり、前記(c)のポリグリセリン脂肪酸トリエステルは、トリラウリンン酸ポリグリセリル-10であることが好ましい。
【0023】
前記(a)の油の質量に対する前記(b)のポリグリセリン脂肪酸モノエステルと前記(c)のポリグリセリン脂肪酸ジエステルまたはポリグリセリン脂肪酸トリエステルの質量の総量の比率が、1.66~30であることが好ましい。
【0024】
前記(d)のアミノ酸系陰イオン界面活性剤は、ココイルグリシンNa、ココイルグルタミン酸Na、ココイルグルタミン酸2Naから選択され、前記(d)のイセチオン酸系陰イオン界面活性剤はココイルイセチオン酸Naであることが好ましい。
【0025】
前記(a)の油が、ジカプリリルエーテル、イソヘキサデカン、スクワラン、ミリスチン酸イソプロピルから選択されることが好ましい。
【0026】
前記化粧品組成物はポンプフォーマ―使いのクレンジング用化粧料であることが好ましい。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、透明性、安定性が高く、使用感のよい化粧品組成物が提供できる。さらに、クレンジング用化粧料として使用した際に、メイクアップ汚れが水性であっても油性であってもなじみやすく、高い洗浄力を実現できる。また、本発明による化粧品組成物は、粘度を低くできるため、クレンジング化粧料として用いた場合、コットン等によるふき取りによる使用やポンプフォーマー使いが可能になる。さらに、本発明による化粧品組成物は、水で洗い流さなくても、べたつきが少なく、フレッシュ感が高いため、コットン等によるふき取りタイプのクレンジング化粧料や、リーブオン製品(化粧水、乳液、クリーム、フェイスマスクなどのスキンケア製品やメイク製品など付けっ放しの製品)に適した化粧品組成物を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明者は、ポリグリセリン脂肪酸エステルのうち、モノエステルとジエステル、またはモノエステルとトリエステルとの質量比率を一定範囲内として配合し、かつ、油の質量に対するポリグリセリン脂肪酸モノエステルとジエステルまたはトリエステルの質量の総量の比率を一定範囲内にすることにより、透明性、安定性が高く、クレンジング用化粧料に用いた場合は、油性、水性のいずれのメイクアップ汚れに対しても洗浄力の高い水中油型マイクロエマルション形態の組成物が得られることを見出した。
【0029】
本発明における化粧品組成物は、(a)少なくとも1種の油と、(b)少なくとも1種のポリグリセリン脂肪酸モノエステルと、(c)少なくとも1種のポリグリセリン脂肪酸ジエステルまたはポリグリセリン脂肪酸トリエステルと、(d)少なくとも1種の陰イオン界面活性剤と、(e)水とを含み、前記ポリグリセリン脂肪酸モノエステルに対する前記ポリグリセリン脂肪酸ジエステルの質量比率が、0.01~1.65であり、前記油の質量に対する前記ポリグリセリン脂肪酸モノエステルと前記ポリグリセリン脂肪酸ジエステルまたはポリグリセリン脂肪酸トリエステルの質量の和の比率が、1~550である。
【0030】
本発明における化粧品組成物は、マイクロエマルションの形態である。「マイクロエマルション」は、2つの方法、すなわち広義と狭義とで定義され得る。「狭義のマイクロエマルション」では、マイクロエマルションは、油性成分、水性成分及び界面活性剤の3つの成分を有する三成分系を有する、熱力学的に安定な等方性単一液相を指す。一方、「広義のマイクロエマルション」では、マイクロエマルションは、熱力学的に不安定な典型的なエマルション系の中で、より小さい粒度に起因して透明な又は半透明な外観を呈するようなエマルションを付加的に含んでいる(友正慧ら、Oil Chemistry、第37巻、No.11(1988年)、48~53頁)。本明細書で使用する「マイクロエマルション」は、「狭義のマイクロエマルション」、すなわち熱力学的に安定な等方性単一液相を指す。また、「マイクロエマルション」は、水、オイル、及び界面活性剤で作られる、ミセルの粒径が数nm~数百nm程度の光学的に透明な又は半透明の微小液滴分散系である。
【0031】
本発明における化粧品組成物は、B型(ブルックフィールド)粘度計により測定される、30℃における粘度が0.1~100mPa・s、さらに好ましくは0.1~50mP・sであることが好ましい。このような低粘度であることにより、シート基材によるふき取りによる使用や、ポンプフォーマー使いが可能になる。シート基材によるふき取りによる使用とは、例えば、コットンシート等に化粧品組成物を含浸させて拭き取りながらメイクなどの汚れを除去する方法、若しくは、化粧品組成物をメイクなどの汚れを除去したい部位に塗布して馴染ませた後、コットンシート等を用いて拭き取りながら除去する方法などが挙げられる。ポンプフォーマーとは、ポンプで押すことにより内容物を泡として押し出すタイプの他、手で容器を圧縮して内容物を泡として押し出すタイプのスクイズフォーマーを包含する。
【0032】
本発明における化粧品組成物は、ポリオールを実質的に含有しない。「実質的に含有しない」とは、フレッシュ感に影響しない程度であり、好ましくは1.0質量%未満を言う。ポリオールを実質的に含有しないことにより、特に、リーブオン化粧品や、コットン等を用いて拭き取るタイプ、すなわち肌に組成物が残るタイプの、クレンジング化粧料として使用した場合において、べたつきの無いフレッシュ感が保たれる。ポリオールは界面活性剤である(b)、(c)成分のポリグリセリル脂肪酸エステルの曇点を変えるため、マイクロエマルションの形成に大きく影響を与えるが、本願発明の構成により、ポリオールがなくても、安定なマイクロエマルションを得ることが本発明の特徴の一つである。
【0033】
本発明における化粧品組成物は、粘度や使用感等の理由により、(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30))クロスポリマーを含有しないことが好ましい。(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30))クロスポリマーとは、水溶性増粘剤の一種であり、アクリル酸、メタクリル酸又はこれらの単純エステルからなるモノマー1種以上とアクリル酸アルキル(炭素数10-30)の共重合体をショ糖のアリルエーテル又はペンタエリスリトールのアリルエーテルで架橋したものである。その他、カルボマーや、キサンタンガム等の水溶性または親水性増粘剤なども含有しないことが好ましい。
【0034】
本発明に用いる(a)の油としては、オリーブ油、ツバキ油、サフラワー油、ホホバ油、ヒマワリ油、アーモンド油、マカダミアナッツ油、アマニ油、トウモロコシ油、オリーブ油、アボカド油、ゴマ油、ダイズ油、ピーナッツ油等の植物性油類、卵黄油、牛脂、豚脂、羊脂、ミツロウ、タートル油、ミンク油、サメ肝油、鯨ロウ、ラノリン等の動物性油類、ヘキサン、ウンデカン、ドデカン、イソヘキサデカン、イソドデカン、スクワラン、スクワレン、流動パラフィン、ワセリン、ポリデセン、水添ポリイソブテン、ナフタレン、イソエイコサン、マイクロクリスタリンワックス、デセン/ブテンコポリマー等の炭化水素油や、ジカプリリルエーテル等のエーテル油、炭酸ジカプリリル、ラウロイルサルコシンイソプロピル、イソノナン酸イソノニル、オクタン酸セチル、ネオペンタン酸イソデシル、プロピオン酸ミリスチル、カプリル酸/カプリン酸2-エチルヘキシル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソステアリル、ラウリン酸エチル、セバシン酸ジエチル、アジピン酸ジイソプロピル、トリ(カプリン酸/カプリル酸)グリセリルなどのエステル油、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサンなどのシリコーン油、ラウリルアルコール、ステアリルアルコール、セタノールなどの高級アルコール類、ラウリン酸、ステアリン酸などの脂肪酸類等が挙げられ、これらより1種または2種以上を選択して用いる。本発明による化粧品組成物をクレンジング料化粧品として用いる場合は、洗浄力向上の観点から、特に炭化水素油やエーテル油が好ましい。また、本発明による化粧品組成物を化粧水等に用いる場合は、エステル油が好ましい。(a)油の配合量は、組成物の総質量に対して、0.02~30質量%、好ましくは0.2~15質量%であることが好ましい。
【0035】
本発明に用いる(b)ポリグリセリン脂肪酸モノエステルは、1つの脂肪酸とポリグリセリンから成るエステルであり、HLB値が8~18、好ましくは11~18のものが好ましい。ポリグリセリン脂肪酸モノエステルは、2~10個、好ましくは4~10個のグリセリンに由来するポリグリセリル部分を有していることが好ましい。
【0036】
なお、本実施の形態の説明において、HLB(Hydrophillic-Lipophillic Balance:親水性・親油性バランス)は、界面活性剤の水と油への親和性の程度を表す指標であって、グリフィン(Griffin)の式(J, Soc, Cosmet, Chem., 1,311(1949); 5,249(1953))により計算されるものである。2種以上の非イオン界面活性剤から構成される混合界面活性剤のHLB値(以下、混合HLBと記す)は、各非イオン界面活性剤のHLB値をその配合比率に基づいて加重平均したものであり、次式で求められる。
混合HLB値=Σ(HLBx×Wx)/ΣWx
(HLBxは、界面活性剤XのHLB値を示す。Wxは、HLBxの値を有する界面活性剤Xの質量(g)を示す。)
【0037】
本発明に用いる(b)ポリグリセリン脂肪酸モノエステルは、分子量が小さい方が好ましい。分子量が小さい方が、クレンジング用化粧料として使用した際に洗浄力が高くなる。また、好ましくは炭素数6~12個、さらに好ましくは炭素数8~10個の飽和又は不飽和の酸のエステルであり、炭素数6~12個、さらに好ましくは炭素数8~10個のアルキル鎖またはアルケニル鎖を有することが好ましい。例えばカプリン酸やカプリル酸と、ポリグリセリンとのモノエステルが好ましい。
【0038】
(b)ポリグリセリン脂肪酸モノエステルは、具体的には、例えばカプリン酸ポリグリセリル-2、カプリル酸ポリグリセリル-2、カプリン酸ポリグリセリル-3、カプリル酸ポリグリセリル-3、カプリン酸ポリグリセリル-4、カプリル酸ポリグリセリル-4、カプリン酸ポリグリセリル-5、カプリル酸ポリグリセリル-5、カプリン酸ポリグリセリル-6、カプリル酸ポリグリセリル-6、カプリン酸ポリグリセリル-10、カプリル酸ポリグリセリル-10、ラウリン酸ポリグリセリル-2、ラウリン酸ポリグリセリル-3、ラウリン酸ポリグリセリル-4、ラウリン酸ポリグリセリル-5、ラウリン酸ポリグリセリル-6、ラウリン酸ポリグリセリル-10からなる群から1種または2種以上を選ぶことができる。
【0039】
本発明に用いる(c)ポリグリセリン脂肪酸ジエステルは、2つの脂肪酸とポリグリセリンから成るエステルであり、HLB値が7~13、好ましくは10~13のものが好ましい。ポリグリセリン脂肪酸ジエステルは、2~10個、好ましくは5~10個のグリセリンに由来するポリグリセリル部分を有していることが好ましい。
【0040】
本発明に用いる(c)ポリグリセリン脂肪酸ジエステルは、好ましくは炭素数6~18個、さらに好ましくは炭素数10~18個の、飽和又は不飽和の酸のジエステルであり、炭素数6~18個、さらに好ましくは炭素数10~18個、特に好ましくは10~14個のアルキル鎖またはアルケニル鎖を有することが好ましい。例えば、カプリン酸と、ポリグリセリンとのジエステルが好ましい。
【0041】
ポリグリセリン脂肪酸ジエステルは、具体的には、例えばジオレイン酸ポリグリセリル-5、ジカプリン酸ポリグリセリル-6、ジミリスチン酸ポリグリセリル-10、ジオレイン酸ポリグリセリル-10、ジステアリン酸ポリグリセリル-10、ジイソステアリン酸ポリグリセリル-10からなる群から1種または2種以上を選ぶことができる。
【0042】
本発明に用いる、(c)ポリグリセリン脂肪酸トリエステルは、3つの脂肪酸とポリグリセリンから成るエステルであり、HLB値が7~13、好ましくは10~13のものが好ましい。ポリグリセリン脂肪酸トリエステルは、2~10個、好ましくは5~10個のグリセリンに由来するポリグリセリル部分を有していることが好ましい。また、本発明に用いるポリグリセリン脂肪酸トリエステルは、好ましくは炭素数6~18個、さらに好ましくは炭素数10~14個の、飽和又は不飽和の酸のトリエステルであり、炭素数6~18個、さらに好ましくは炭素数10~14個のアルキル鎖またはアルケニル鎖を有することが好ましい。具体的には、例えば、トリミリスチン酸ポリグリセリル-5、トリオレイン酸ポリグリセリル-5、トリラウリン酸ポリグリセリル-6、トリラウリン酸ポリグリセリル-10、トリオレイン酸ポリグリセリル-10、トリステアリン酸ポリグリセリル-10からなる群から1種または2種以上を選ぶことができる。
【0043】
(b)ポリグリセリン脂肪酸モノエステルおよび(c)ポリグリセリン脂肪酸ジエステルまたはポリグリセリン脂肪酸トリエステルは、それぞれ、非イオン界面活性剤として機能する。(b)ポリグリセリン脂肪酸モノエステルおよび(c)ポリグリセリン脂肪酸ジエステルまたはポリグリセリン脂肪酸トリエステルの配合量の合計は、組成物の総質量に対して、0.1~60質量%、好ましくは0.5~30質量%であることが好ましい。
【0044】
本発明では、(b)ポリグリセリン脂肪酸モノエステル(2種以上ある場合はその総質量)に対する(c)ポリグリセリン脂肪酸ジエステルまたはポリグリセリン脂肪酸トリエステル(2種以上ある場合はその総質量)の質量比率が、0.01~1.65であることが好ましく、0.4~1.3が更に好ましく、0.6~1.1であることが特に好ましい。(b)ポリグリセリン脂肪酸モノエステルと(c)ポリグリセリン脂肪酸ジエステルまたはポリグリセリン脂肪酸トリエステルの混合物のHLB値は質量平均で10.5~14.5が好ましく、11~13であることがさらに好ましい。上記範囲を超えると、透明度が不十分となり、マイクロエマルションとしての安定性が低くなる。
【0045】
ポリグリセリン脂肪酸ジエステルと分子量の比較的低いポリグリセリン脂肪酸モノエステルは、高い洗浄力を有し、クレンジング用化粧料として望ましい。例えば、後述する実施例で使用するジカプリン酸ポリグリセリル-6は殆どのモノエステルより洗浄力が高く、モノエステルであるカプリル酸ポリグリセリル-6は分子量が小さいモノエステルであるため、分子量が大きいモノエステルより洗浄力が高い。
【0046】
本発明において、(a)油の質量(2種類以上ある場合はその総質量)に対する、(b)ポリグリセリン脂肪酸モノエステルと(c)ポリグリセリン脂肪酸ジエステルとを合わせた質量(いずれも、2種類以上ある場合はその総質量)の比率は、1~550が好ましく、1.5~50が更に好ましく、1.66~30が特に好ましい。上記範囲を下回ると、マイクロエマルションとしての安定性が低くなる。
【0047】
本発明に用いる(d)陰イオン界面活性剤は、アミノ酸系界面活性剤及びイセチオン酸系界面活性剤、カルボン酸塩、スルホン酸塩、硫酸エステル塩、高級脂肪酸塩、アルキルエーテル硫酸塩、タウリン酸塩、サルコシン酸塩、クエン酸塩、ガラクツロン酸塩、スルホコハク酸塩などが使用できる。特に、肌への優しさの観点からアミノ酸系界面活性剤及びイセチオン酸系、タウリン酸系界面活性剤が好ましい。アミノ酸系界面活性剤は、好ましくはN-アシル化アミノ酸の塩、例えばN-アシル化アミノ酸のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、アルカノールアミン塩、塩基性アミノ酸塩等から選択することができる。イセチオン酸系界面活性剤は、好ましくはアシル化イセチオン酸の塩、例えばアシルイセチオン酸のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、アルカノールアミン塩、塩基性アミノ酸塩等から選択することができる。タウリン酸系界面活性剤は、好ましくはアシル化タウリン酸の塩、例えばアシルタウリン酸のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、アルカノールアミン塩、塩基性アミノ酸塩等から選択することができる。具体的には、ココイルグリシンNa、ココイルグリシンK、ラウロイルグリシンNa、ラウリルジアミノエチルグリシンNa、ココイルアスパラギン酸Na、ココイルグルタミン酸Na、ココイルグルタミン酸2Na、ラウロイルグルタミ ン酸トリエタノールアミン、ココイルイセチオン酸Na、ココイルイセチオン酸アンモニウム、ラウロイルイセチオン酸Na、ラウロイルメチルイセチオン酸Na、ココイルタウリンNa、ココイルメチルタウリンNa、ラウロイルタウリンNa、ラウロイルメチルタウリンNaからなる群から選ばれる1種か2種以上が好ましい。
【0048】
陰イオン界面活性剤の総質量は、組成物の総質量に対して、0.01~5質量%、好ましくは0.04~2質量%であることが好ましい。
【0049】
陰イオン界面活性剤はマイクロエマルションの安定性に寄与する。陰イオン界面活性剤を配合することで必要な非イオン性界面活性剤の量を少なくすることができ、トータルに配合する界面活性剤の量が抑えられ、肌への優しさを増やす働きがあるため、クレンジング用化粧料以外として使用する際も必要である。陰イオン界面活性剤を少量だけ配合するため、肌への負担は少ない。
【0050】
本発明の化粧品組成物は、上記以外の添加物を配合してもよい。例えば、ベタインなどの両性界面活性剤、上記以外の非イオン性界面活性剤やイオン性界面活性剤、パラベンやフェノキシエタノール等の防腐剤、EDTAやエチドロン酸等の金属イオン封鎖剤、ポリオール等の保湿剤、増粘剤、UV遮断剤、ビタミン又はプロビタミン、酸化防止剤、キレート剤、美白剤、血行促進剤、抗炎症剤、殺菌剤、感触向上剤、不透明化剤、着色剤、香料、植物抽出物等である。
【0051】
本発明の化粧品組成物は水を含む。水の量は制限されず、例えば、組成物の総質量に対して30~99%、好ましくは60~97%である。
【0052】
本発明の化粧品組成物は、皮膚、毛髪、粘膜、爪、まつ毛、眉毛、又は頭皮に適用できる、化粧水や乳液などのケア製品、及び/又は、ファンデーションやマスカラなどのメイクアップ製品、及び/又は、メイクアップクレンジング剤やシャンプーなどの洗浄製品として、使用することができる。顔面皮膚洗浄剤、毛髪洗浄剤、頭皮洗浄剤、ボデイー洗浄剤、浴用化粧料としての用途が特に好ましい。
【0053】
次に、本発明の化粧品組成物の調整方法について説明する。
【0054】
水、油、ポリグリセリン脂肪酸モノエステル、ポリグリセリン脂肪酸ジエステルまたはポリグリセリン脂肪酸トリエステルを含む非イオン界面活性剤を75度に加温し、均一になるまで攪拌し、陰イオン界面活性剤を加え、攪拌冷却する。その後、45度になったらその他の添加剤を加え溶解させ、室温まで攪拌冷却する。ただし、本発明の化粧料組成物の調製方法は、特に限定されない。例えば、75℃で全成分を溶解した後、室温まで冷却する方法によっても調製ができる。
【0055】
以下、本発明の態様を実施例によりさらに記載し、開示する。この実施例は、単なる本発明の例示であり、本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例
【0056】
(実施例1~19)
表1、2に示すように、例として各組成物を混合することによりクレンジング用化粧料である組成物を調整した。具体的には、表1の「A」欄に示す成分を75度に加温し、均一になるまで攪拌し、「B」欄に示す成分を加え、攪拌冷却し、45度になったら「C」欄の成分を加え溶解させ、室温まで攪拌冷却して組成物を得た。表中の数値は、組成物全体に対する、各成分の「質量%」である。
【0057】
本実施例で用いたカプリル酸ポリグリセリル‐6のHLB値は14.6、ジカプリン酸ポリグリセリル-6のHLB値は10.2、トリラウリン酸ポリグリセリル-10のHLB値は10.4である。具体的には、カプリル酸ポリグリセリル-6として「SUNSOFT Q-8H-C」(太陽化学株式会社製)、ジカプリン酸ポリグリセリル-6として「SUNSOFT Q-102H-C」(太陽化学株式会社製)、トリラウリン酸ポリグリセリル-10として「SUNSOFT Q-123Y-C」(太陽化学株式会社製)を用いた。
【0058】
表中、平均HLB値は、ポリグリセリン脂肪酸エステルを含む、非イオン界面活性剤のHLB値の質量平均値である。また、表中、質量比率1は、ポリグリセリン脂肪酸モノエステルに対するポリグリセリン脂肪酸ジエステルの質量比率、またはポリグリセリン脂肪酸モノエステルに対するポリグリセリン脂肪酸トリエステルの質量比率である。質量比率2は、油の質量の総量に対する前記ポリグリセリン脂肪酸モノエステルと前記ポリグリセリン脂肪酸ジエステルの質量の総量の比率、または、油の質量の総量に対する前記ポリグリセリン脂肪酸モノエステルとポリグリセリン脂肪酸トリエステルの質量の総量の比率である。
【0059】
【表1】
【0060】
【表2】
【0061】
実施例1~19より得た、マイクロエマルションの形態の組成物の、外観性状、水性メイクアップ汚れに対する洗浄力、油性メイクアップ汚れに対する洗浄力、安定性、粘度、およびフレッシュ感を、以下のように評価した。その結果を表3、表4に示す。
【0062】
(外観性状:透明性)
調製した組成物の外観を、分光光度計(島津製作所製のUV2101 PCスペクトロメーター)を用い、光路長1.0cmの石英セルを用い、650nmにて透過率を測定し、次のように評価した。
◎…通過率80%以上
○…通過率50%以上80%未満
△…通過率30%以上50%未満
×…通過率30%未満
【0063】
(水性メイクアップ汚れに対する洗浄力)
マスカラ(お湯で落とせるタイプ)を前腕に塗布し、30分間放置した後、塗布した部分に調製した組成物2.5gで濡らしたコットンを用いて3回拭き取った。マスカラの落ち具合を目視により観察した結果を以下の評価基準に従って評価した。
◎…よく落ちた
○…大体落ちたが、少し残留があった
△…あまり落ちない
×…全く落ちない
【0064】
(油性メイクアップ汚れに対する洗浄力)
マスカラ(ウォータープルーフタイプ)を前腕に塗布し、30分間放置した後、塗布した部分に調製した組成物2.5gで濡らしたコットンを用いて6回拭き取った。マスカラの落ち具合を目視により観察した結果を以下の評価基準に従って評価した。
◎…よく落ちた
○…大体落ちたが、少し残留があった
△…あまり落ちない
×…全く落ちない
【0065】
(安定性)
組成物を、透明なガラス製瓶に満たし、50℃の温度条件下で1ヵ月間保持した。次いで、各瓶の様相を、変化の程度(透明度、におい、pH、及びマイクロエマルション状態)について検査し、次の基準によって評価した。
◎…変化はなかった。
○…透明度が少し減った(それでも通過率50%以上)。或いは外観に少し変化があったが、室温に戻した後は変化がなかった。
△…分離は生じなかったが、透明度がだいぶ減った(通過率が50%未満)。或いは分離は生じなかったが、外観にだいぶ変化があって、室温に戻した後も元に戻らなかった。
×…分離が生じた。
【0066】
(粘度)
粘度は、30℃においてB型(ブルックフィールド)粘度計を用いて、スピンドルNo.1、所定の回転数で測定し、次の基準によって評価した。
◎…粘度が0.1~100 mPa・sである。
X…粘度が100 mPa・sより高い。
【0067】
(フレッシュ感)
上記の洗浄効果の評価の後、コットンを用いて拭き取った後の乾いた肌において、フレッシュ感について専門パネラー7名に以下の評価基準により評価をしてもらった。
◎…7名中6名以上がフレッシュであると認めた。
〇…7名中4名以上6名未満が、フレッシュであると認めた。
×…7名中4名未満が、フレッシュであると認めた。
【0068】
【表3】
【0069】
【表4】
【0070】
(比較例1~10)
表5に示すように、各組成物を混合することによりクレンジング用化粧料用の組成物を調整した。比較例で用いたPEG-6(カプリル/カプリン酸)グリセリルのHLB値は13.2である。調整方法は、実施例1~19と同様である。表中の数値は、組成物全体に対する、各成分の「質量%」である。
【0071】
【表5】
【0072】
比較例1~6より得た組成物の、外観性状、水性メイクアップ汚れに対する洗浄力、油性メイクアップ汚れに対する洗浄力、安定性、粘度、およびフレッシュ感を、実施例と同様に評価した。その結果を表6に示す。比較例10で用いた(アクリレーツ/アクリル酸アルキル)クロスポリマーは、1%水溶液をPH6.8に調整した時の粘度が10000~15000mPa・sの(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30))クロスポリマーである。
【0073】
【表6】
【0074】
比較例9、10により明らかなように、ポリオールや(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30))クロスポリマーのようなポリマーや、グリセリンのようなポリオールを実質的に含有すると、水で洗い流さない状態におけるフレッシュ感が低くなる。また、(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30))クロスポリマーを含有すると、粘度が高くなり、シート基材によるふき取りによる使用や、ポンプフォーマー使いが困難になる。
【0075】
以上により明らかなように、本発明によれば、透明性、安定性が共に高く、さらにクレンジング用化粧料として用いた場合には水性、油性いずれのメイクアップ汚れに対しても洗浄力の高い、水中油型(O/W型)エマルションの形態の化粧品組成物が提供できる。また、実施例1~16のようにポリオールが極少量でも、実施例17~19のようにポリオールや(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30))クロスポリマーを含有しなくても、安定なマイクロエマルションが形成できる。そのため、水で洗い流さない状態であっても、べたつきが少なく、フレッシュ感の高い化粧品組成物が提供できる。従って、本発明によれば、コットンシート等によるふき取り使用のクレンジング化粧料や、リーブオン製品(化粧水、乳液、クリーム、フェイスマスクなどのスキンケア製品やメイク製品など付けっ放しの製品)に適する化粧品組成物が提供できる。また、本発明の化粧品組成物は、粘度を低くできるため、クレンジング化粧料として用いた場合、コットンシート等でのふき取りによる使用やポンプフォーマー使いが可能になる。
【0076】
なお、本発明は、上述の実施の形態に限定されず、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲で、様々な改変、置換、欠失等を行うことが出来、改変、均等、置換、欠失等も本発明の技術的範囲に含まれる。上記実施形態においてはポリグリセリン脂肪酸ジエステルとポリグリセリン脂肪酸トリエステルのいずれか一方を配合しているが、両方を配合した形態も本発明の技術的範囲に含まれる。また、本発明の化粧品組成物は、クレンジング化粧料として用いた場合、コットン等でのふき取り使用には限定されない。