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特許7133909時計用組立体の製造方法、及び該製造方法により得られる時計用組立体
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  • 特許-時計用組立体の製造方法、及び該製造方法により得られる時計用組立体 図1
  • 特許-時計用組立体の製造方法、及び該製造方法により得られる時計用組立体 図2
  • 特許-時計用組立体の製造方法、及び該製造方法により得られる時計用組立体 図3
  • 特許-時計用組立体の製造方法、及び該製造方法により得られる時計用組立体 図4
  • 特許-時計用組立体の製造方法、及び該製造方法により得られる時計用組立体 図5
  • 特許-時計用組立体の製造方法、及び該製造方法により得られる時計用組立体 図6
  • 特許-時計用組立体の製造方法、及び該製造方法により得られる時計用組立体 図7
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  • 特許-時計用組立体の製造方法、及び該製造方法により得られる時計用組立体 図10
  • 特許-時計用組立体の製造方法、及び該製造方法により得られる時計用組立体 図11
  • 特許-時計用組立体の製造方法、及び該製造方法により得られる時計用組立体 図12
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-01
(45)【発行日】2022-09-09
(54)【発明の名称】時計用組立体の製造方法、及び該製造方法により得られる時計用組立体
(51)【国際特許分類】
   G04B 1/18 20060101AFI20220902BHJP
   G04B 1/14 20060101ALI20220902BHJP
【FI】
G04B1/18
G04B1/14
【請求項の数】 14
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2017122747
(22)【出願日】2017-06-23
(65)【公開番号】P2018031769
(43)【公開日】2018-03-01
【審査請求日】2020-05-26
(31)【優先権主張番号】16177751.1
(32)【優先日】2016-07-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】599091346
【氏名又は名称】ロレックス・ソシエテ・アノニム
【氏名又は名称原語表記】ROLEX SA
(74)【代理人】
【識別番号】110000062
【氏名又は名称】特許業務法人第一国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ファリーン, シルヴェン
(72)【発明者】
【氏名】ヴォウシャー, フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】フォン ニーデルハウセルン, ヴィンセント
【審査官】細見 斉子
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-228393(JP,A)
【文献】特開2016-080699(JP,A)
【文献】特開平09-013136(JP,A)
【文献】特公昭48-032394(JP,B1)
【文献】スイス国特許発明第00295430(CH,A)
【文献】特開2002-013902(JP,A)
【文献】特表2015-512519(JP,A)
【文献】特開昭52-073067(JP,A)
【文献】米国特許第01600255(US,A)
【文献】特表2014-526691(JP,A)
【文献】特公平07-100989(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04B 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの部品の時計用組立体の製造方法であって、
ぜんまいであり、弾性素材製の少なくとも1つの要素であって舌部(20:20’)が設けられる要素を含む、第1部品(2;2’)を提供するステップと、
少なくとも1つの切欠きまたは開口(31、32)が設けられる、第2部品(3;9)を提供するステップと、
前記2つの部品を恒久的に組み立てるステップと、
を含み、
前記2つの部品は、前記組立体の作成のため、前記舌部が前記少なくとも1つの切欠きまたは開口(31、32)内に収容され、
前記第1部品(2;2’)を提供するステップは、前記第1部品を弾性素材の帯(19)で形成して、前記帯の一部を切断して前記舌部を形成するステップを含み、
前記舌部は、前記帯の残部を形成する素材により完全に取り囲まれるように形成され、
前記2つの部品を組み立てるステップは、
前記舌部を弾性的に変形させるための、前記舌部に対する機械的作用を行うステップと、
前記舌部を前記少なくとも1つの切欠きまたは開口内に配置するステップと、
前記舌部への機械的作用を終了するステップと、
を含む、
時計用組立体の製造方法。
【請求項2】
前記舌部は、丸みを帯びた自由端(21)を含む、
請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記時計用組立体は、リベット、糊、または溶接の接続要素を含まない、
請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記切断するステップは、レーザ切断、及びまたは放電加工、及びまたは機械加工、及びまたは打ち抜き加工による切断を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項5】
前記第1部品を提供するステップは、
前記第1部品への前記舌部(20)の作成を包含する、前記第1部品の電鋳ステップを含む、
請求項1から4のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項6】
前記機械的作用を行うステップに先立ち、前記舌部を変形することなく、前記舌部を突出させるため、前記舌部の近傍の少なくとも1つの弾性素材製の要素の弾性変形を実施することを含む、
請求項1から5のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項7】
前記少なくとも1つの弾性素材製の要素の前記弾性変形の前記実施は、前記舌部への前記機械的作用の終了後まで維持される
請求項6に記載の製造方法。
【請求項8】
前記少なくとも1つの弾性素材製の要素の前記弾性変形は、ぜんまいの巻付け動作中に実施される
請求項6または7に記載の製造方法。
【請求項9】
香箱ぜんまい(2;2’)であって、
前記ぜんまいとフランジとを組み立てるため、前記フランジ(3)の少なくとも1つの切欠きまたは開口(31、32)と協働するよう設計される舌部(20)の形状を有する第1構造を含み、
前記ぜんまいは、弾性素材の帯(19)で形成して、前記舌部は前記帯の一部を切断して形成されており、
前記舌部は、前記帯の残部を形成する素材により完全に取り囲まれるように形成され、
前記舌部は、弾性的な変形により前記少なくとも1つの切欠きまたは開口内に挿入して設けられる
香箱ぜんまい
【請求項10】
前記舌部は、丸みを帯びた自由端(21)を含む、
請求項9に記載の香箱ぜんまい。
【請求項11】
請求項9または10に記載の香箱ぜんまい、
前記ぜんまい(2)上の前記舌部(20)と協働するよう設計される少なくとも1つの切欠きまたは開口(31、32)の形状を有する第2構造を含むフランジ(3)、
前記ぜんまい上の第1構造(20)、及び
前記フランジ上の第2構造(30)、
を含む、組み立てられた香箱ぜんまい装置(1)であって、
前記第1構造および前記第2構造は、前記ぜんまいと前記フランジとを組み立てるために、協働するよう配置される、
組み立てられた香箱ぜんまい装置(1)
【請求項12】
前記舌部は平行な、または0°から40°の間の角度を形成する側面(22、23)を含み、及びまたは前記舌部の長さ(Lo)は、1mmから3mmの間、またはぜんまいの幅の0.5倍から2倍の間であり、及びまたは前記舌部または前記少なくとも1つの切欠きの幅(La)は、0.2mmから1.2mmの間、またはぜんまいの幅の0.1倍から
0.8倍の間、である、
請求項11に記載の香箱ぜんまい装置。
【請求項13】
請求項9または10に記載の香箱ぜんまい、または請求項11または12に記載の香箱ぜんまい装置(1)を含む、香箱(100;100’)
【請求項14】
請求項13に記載の香箱(100;100’)、または請求項9または10に記載の香箱ぜんまい、または請求項11または12に記載の香箱ぜんまい装置(1)を含む、時計(300;300’)または時計ムーブメント(200;200’)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、時計用香箱ぜんまいに関する。本発明はまた、時計用香箱ぜんまいのフランジに関する。本発明は更に、このタイプのぜんまい及びこのタイプのフランジを含むぜんまい装置に関する。本発明はまた、このタイプのぜんまいまたはこのタイプのフランジまたはこのタイプのぜんまい装置を含む香箱、ムーブメント、または時計に関する。最後に本発明は、より一般的には、2つの部品を有する時計用組立体の製造方法と、弾性時計部品の製造方法に関する。本発明はまた、より一般的には、組立実施方法により得られる時計用組立体に関する。
【背景技術】
【0002】
現在の香箱ぜんまいは、一般に、Nivaflex(登録商標)タイプのぜんまい合金から製造され、フランジは、スポット溶接を用いて取付けられることが多い。この方法における当該ステップに必要な熱の供給は、局所的に素材の特性変更を引き起こし、香箱ぜんまいに使用される素材の性質によっては、とりわけ高温に非常に繊細なアモルファス合金を用いる場合には、ぜんまいの性能低下につながりかねない。
【0003】
時計分野において、過度な巻上げが行われた場合に香箱ぜんまいを過剰な機械的応力に曝すことを避ける手段として、滑りフランジ(滑りぜんまいとしても知られる)が周知である。フランジは、従来溶接またはリベット止めでぜんまい上に取付けられる。
【0004】
特許文献1は、駆動ぜんまいを固定するためのリベットの機能を果たすよう設計されるボスを含む、香箱ぜんまい用のブレーキぜんまいを開示する。
【0005】
特許文献2は、スポット溶接を用いて香箱ぜんまい上にフランジを固定することを開示する。
【0006】
特許文献3は、切断され折りたたまれて、香箱胴の壁と一体となる舌部からなる香箱ぜんまい留め具であって、舌部はぜんまいの外端に設けられるスロットに滑って入る、香箱ぜんまい留め具を開示する。当該解決策は、胴内でぜんまいの外端が滑ることを許可せず、このため過度な巻上げが行われた場合にぜんまいが破断する危険性を含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】スイス国特許出願第346163号明細書
【文献】スイス国特許出願第343890号明細書
【文献】英国特許出願第1386612号明細書
【文献】国際公開2011/069273号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、上述の欠点を解消可能であり、かつ先行技術から既知の組立方法を改善可能な、時計用組立体の製造方法を提供することである。とりわけ本発明は、組立体の簡単且つ信頼できる製造方法、特に香箱ぜんまいとフランジの組立に適用可能な製造方法を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明にかかる時計用組立体の製造方法は、請求項1に定義される。
【0010】
当該製造方法の別の実施形態は、請求項2からに定義される。
【0011】
本発明にかかるぜんまいは、請求項9、10に定義される。
【0013】
本発明にかかるぜんまい装置は、請求項11に定義される。
【0014】
ぜんまい装置の異なる実施形態は、請求項12に定義される。
【0015】
本発明にかかる香箱は、請求項13に定義される。
【0016】
本発明にかかる時計ムーブメント及び時計は、請求項14に定義される。
【0018】
添付の図面は、例として、本発明にかかる香箱ぜんまい装置の実施形態を包含する時計の複数の実施形態を図示する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、本発明にかかる組立方法により得られる時計用組立体の第1実施形態、ここでは香箱ぜんまい装置を含む、本発明にかかる時計の第1実施形態を示す図である。
図2図2は、香箱ぜんまい装置の第1実施形態の帯またはぜんまいについての第1変形例の機能部分を示す詳細図である。
図3図3は、香箱ぜんまい装置の第1実施形態のフランジの機能部分を示す詳細図である。
図4図4は、香箱ぜんまい装置の第1実施形態の帯または香箱ぜんまいであって、帯が固定された後の構造を示す図である。
図5図5は、巻上げプロセス中の、香箱ぜんまい装置の第1実施形態を示す図である。
図6図6は、ぜんまい装置の舌部にオペレーターまたは作動装置が作動している、巻上げプロセス中の、香箱ぜんまい装置の第1実施形態を示す図である。
図7図7は、フランジの一部分を含む、図6の舌部の詳細図である。
図8図8は、図1のぜんまいフランジ組立体の詳細図である。
図9図9は、香箱ぜんまい装置の第1実施形態の帯またはぜんまいについての第2変形例の機能部分を示す詳細図である。
図10図10は、香箱ぜんまい装置の第1実施形態の帯またはぜんまいについての第3変形例の機能部分を示す詳細図である。
図11図11は、本発明にかかる組立方法により得られる時計用組立体の第2実施形態を含む、本発明にかかる時計の第2実施形態を示す図である。
図12図12は、素材の帯を切断することでぜんまいを製造する方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
時計300の第1実施形態を、図1から10を参照して以下に説明する。時計は例えば小型時計、とりわけ腕時計である。時計は、時計ムーブメント200、とりわけ機械式ムーブメントを含む。
【0021】
ムーブメントは、自動巻でもよく手動巻でもよい。ムーブメントは、香箱100を含む。
【0022】
香箱自体は、組み立てられた香箱ぜんまい1を含む。
【0023】
組み立てられた香箱ぜんまい装置1は、
-香箱ぜんまい2、
-フランジ3、
-ぜんまい上の第1構造20、及び
-フランジ上の第2構造30、
を含み、第1構造及び第2構造は、ぜんまいとフランジを組み立てるため、とりわけ両者を障害(係止)構造を用いて組み立てるため、協働するよう設計される。
【0024】
香箱ぜんまい-フランジ組立体は、有利には、香箱ぜんまいとフランジとを接続するために他の、第3の接続要素を用いずに、とりわけ溶接、ろう付け、リベット止めまたは糊付けを用いずに、製造される。
【0025】
香箱ぜんまいのフランジ上への組立は、部品のうち少なくとも1つがアモルファス合金製の場合、従来の溶接技術を用いては不可能であった。2つの要素(ぜんまいとフランジ)間の接続を形成するために必要な熱を加えると、アモルファス金属部分の機械的性質が損なわれ、当該部分がもろくなり、その後ぜんまいが機械的応力に曝されると破損する。
【0026】
リベット止めも最適ではなく、小規模な製造シリーズのみに適している。実際、組立に求められる正確性を制御することが特に難しい。加えて、リベットの頭部が、パワーリザーブの維持に不利益な寸法である
【0027】
ぜんまいとフランジを糊付けする解決策は、巻上げ動作に耐えるために必要な付着力を達成不可能なこと、または巻上げ-巻戻し周期及びぜんまいが香箱胴の壁上を滑るといった動作中に必要な信頼性を保証不可能なことから、適切ではない。加えて、多くの強力糊は熱による硬化を要し、これはアモルファス金属合金部品にとって実施が難しく、有害である。
【0028】
第1実施形態において、第1構造は舌部20を含み、第2構造30は少なくとも1つの切欠きまたは開口31、好ましくは2つの切欠きまたは開口31、32を含む。2つの切欠きまたは開口31、32の使用が特に有利である。実際、正確且つ信頼性の高い組立体の提供が可能となる。これは、舌部を後述するように2つの切欠きに収容することで、確保される。
【0029】
舌部は、丸みを帯びた自由端21を有してもよい。代替的に、または加えて、舌部は、平行または実質的に平行な、または0°から40°の間の角度、好ましくは1°から20°の間の角度、または2°から5°の間の角度αを形成する、側面22、23を有してもよい。好ましくは、舌部の2つの側面は、組立を簡単にし、可能な限り横軸上に組立体を維持するために、平行ではない。舌部は、全体的に長方形または台形で、任意で丸みを帯びた自由端を有する形状であってもよい。
【0030】
舌部の長さLoは、1mmから3mmの間、好ましくは1mmから2mmの間、またはぜんまいの幅の0.5倍から2倍の間、好ましくはぜんまいの幅の0.6倍から1倍の間であってよい。
【0031】
舌部の幅Laは、0.2mmから1.2mmの間、好ましくは0.3mmから0.8mmの間、またはぜんまいの幅の0.1倍から0.8倍の間、好ましくはぜんまいの幅の0.2倍から0.5倍の間であってよい。
【0032】
舌部の幅Laに対する舌部の長さLoの比率は、2から5の間、好ましくは2.5から4の間であってよい。
【0033】
舌部の第1変形実施形態を図2に示す。舌部は、全体に引き伸ばされた形状を有する。好ましくは、その自由端は丸みを帯びている。
【0034】
舌部の第2変形実施形態を図9に示す。第2変形実施形態は、舌部を区切る切欠きの端部において、複数の穴201が設けられている点で、第1変形例と異なる。この穴は、切欠きの端部において応力の集中する領域を制限し、素材の部分的破断を防止するよう、設計される。
【0035】
舌部の第3変形実施形態を図10に示す。第3変形実施形態は、舌部の幅Laが変化し、肩部202を形成する点で、第1変形例と異なる。当該肩部は、例えば、舌部の実質的に中央部に位置し、障害(係止)構造の機能と舌部の変形を分離することを可能にする。実際、狭い幅の部分203のみが、フランジの切欠きの少なくとも1つと、当該切欠きの中に入り込むことにより、協働する。舌部の他の部分204は、フランジへの導入を容易にするために舌部のより大きな変形を許可する一方、切欠きの端部に位置する屈曲点における応力の集中を制限する。
【0036】
(図示しない)舌部の第4変形実施形態は、第2及び第3変形例の特性を併せ持つ。
【0037】
舌部は、応力の集中を制限するよう設計されるその他あらゆる形状を用いることも可能であり、上述の例は非限定的である。
【0038】
香箱ぜんまい2は、好ましくはアモルファス合金、またはCoNiCr基の合金、またはニッケル基の電鋳合金製である。上述のように香箱ぜんまいは、ぜんまいとフランジを組み立てるため、とりわけ両者を障害(係止)構造を用いて組み立てるため、フランジ3の少なくとも1つの切欠き30と協働するよう設計される、舌部20の形状を有する第1構造を含む。
【0039】
香箱ぜんまいのフランジ3は、好ましくはアモルファス合金製である。上述のようにフランジは、 ぜんまいとフランジを組み立てるため、とりわけ両者を障害(係止)構造を用いて組み立てるため、ぜんまい2の舌部20と協働するよう設計される、少なくとも1つの切欠き31、32の形状を有する第2構造を含む。
【0040】
第1実施形態の(図示しない)変形例によれば、ぜんまい装置は、第1構造が少なくとも1つの切欠きを、好ましくは2つの切欠きを含み、第2構造が舌部を有するよう構成される。このように香箱ぜんまいは、ぜんまいとフランジを組み立てるため、とりわけ両者を障害(係止)構造を用いて組み立てるため、フランジ上の舌部と協働するよう設計される、少なくとも1つの切欠きの形状を有する第1構造を含み、フランジは、ぜんまいとフランジを組み立てるため、とりわけ両者を障害(係止)構造を用いて組み立てるため、ぜんまい内の少なくとも1つの切欠きと協働するよう設計される舌部の形状を有する第2構造を含む。当該第1実施形態の変形例において、好ましくは香箱胴に対する(フランジ上に形成される)舌部の摩擦を防止するため、また当該舌部の摩耗を防止するため、香箱胴にぜんまい装置の外部まで延びる溝が設けられる。
【0041】
時計300’の第2実施形態を、図11を参照して以下に説明する。時計は、例えば小型時計、とりわけ腕時計である。時計は、時計ムーブメント200’、とりわけ機械式ムーブメントを含む。ムーブメントは、自動巻でもよく手動巻でもよい。ムーブメントは、香箱100’を含む。
【0042】
香箱自体は、香箱真9に組み付けられる香箱ぜんまい2’を含む。香箱は、ぜんまい上に第1構造20’を有し、その上に第2構造30’を有する。
【0043】
第1構造と第2構造は、ぜんまいと香箱真とを組み立てるため、とりわけ両者を障害(係止)構造を用いて組み立てるため、協働するよう設計される。
【0044】
香箱ぜんまい-香箱真組立体は、有利には、香箱ぜんまいと香箱真とを接続するために、他の第3の接続要素を用いずに、とりわけ溶接、ろう付け、リベット止めまたは糊付けを用いずに、製造される。
【0045】
第2実施形態において、第1構造は舌部20’を有し、第2構造は切欠き30’を有する。舌部は、例えば、香箱真の中心部の溝型31’に設けられた補完的な形状の開口と協働するよう設計される、実質的に台形形状の舌端部を有する。開口部は、例えば溝型31’の側面32’をえぐったものである。
【0046】
香箱ぜんまい2’は、好ましくはアモルファス合金、またはCoNiCr基の合金、またはニッケル基の電鋳合金製である。
【0047】
本発明に係る、2つの部品を有する時計組立体の製造方法の実施形態を、上記ではそれぞれ第1及び第2部品として説明されてきたぜんまい2とフランジ3を念頭に置いて、以下に説明する。
【0048】
この方法は、以下のステップを含む。
-少なくとも1つの弾性素材製の要素を含むぜんまい2の提供、とりわけ舌部が設けられた弾性金属素材製の要素を含み、この場合ぜんまいの全体が弾性素材で形成される、ぜんまい2の提供、
-少なくとも1つの切欠きが、この場合2つの切欠き31、32が設けられる、フランジの提供、
-ぜんまいとフランジの恒久的組立。
当該組立は、ぜんまいとフランジの、障害(係止)構造を用いた、とりわけ舌部と2つの切欠きを用いた、協働により実施される。とりわけこの組立は、舌部が切欠き内に収容されることにより実現される。
【0049】
「恒久的組立」の文言は、動作中または通常の組み立て動作において、2つの部品が永続的に組み立てられることを意味する。しかしながらこれは、2つの部品の劣化または部品を損傷せずに組立体を分解できる可能性を排除しない。
【0050】
有利には、時計組立体は、2つの部品を接続するための他の要素を含まず、とりわけリベット、糊、溶接またはろう付けを含まない。
【0051】
2つの部品の組立ステップは、以下のステップを含む。
図6及び7に示すように舌部を弾性的に変形させるため、舌部に機械的作用を及ぼす。当該機械的作用は、例えば時計工が工具50を用いて及ぼし、
-その後、舌部20は、舌部への機械的作用を維持したまま、ぜんまいと舌部とを互いに近づける方向に移動することで、設置され、とりわけ図7に示すように切欠き31内に挿入され、
-その後、舌部への機械的作用が取り除かれ、舌部は、図8に示すようにその自由端が切欠き32内に収容されるよう湾曲することで、その載置形態及び載置位置を再度取る。
このように、ぜんまいとフランジが互いに組み立てられる。組立体は、図8に示す矢印Fの方向に、フランジに対するぜんまいの変位力を発揮することで、保守作業の場合に取り外し可能なままである。このため、香箱のぜんまいまたはフランジを簡単に交換することができる。
【0052】
有利には、機械的作用のステップに先立ち、舌部を変形することなく、舌部をぜんまいの表面Bから突出させるため、舌部の近傍の少なくとも1つの弾性素材製の要素の弾性変形、とりわけ少なくとも1つの弾性素材製の要素の2つのスタッド40、41間での伸展動作を行う。当該ステップは、例えば図5に示される。スタッドの1つである40は、ぜんまいを開放環60内に巻き上げるため、回転される。舌部近傍の変形の結果(舌部の変形はなく、載置状態に維持される)、舌部は形状、特に湾曲形状において、その近傍の形状とは異なる形状を有する。これにより、ぜんまい上で舌部を明らかにすることができる。したがって、少なくとも舌部が機械的作用により変形されている間、すなわち少なくとも舌部への機械的作用の発揮が終了するまでの間は、舌部近傍の少なくとも1つの弾性素材製の要素の弾性変形が維持されることが好ましい。このため、ばねに自由形状を与える予圧の結果、舌部を含むぜんまいの部分が直線構造になるように変形されると、舌部は張力に曝され、解放され、ぜんまいの表面B上で、フランジが接触する表面Aの反対側を自由に指すことになる。
【0053】
図6及び7に示すように舌部を弾性的に変形させるために舌部へ機械的作用を発揮するため、時計工は、舌部をぜんまいの表面Aを越えて移動させるため、とりわけ工具50を用いて舌部を押す。
【0054】
このように、フランジを舌部に提供することができる。舌部20を切欠き31内に位置させるため、時計工は、舌部を切欠き31内に挿入または滑り込ませることにより、フランジをぜんまいに対して移動させることができる。
【0055】
舌部内の応力の結果、舌部が解放されると、舌部はフランジを押さえ込むように配置される。有利には、舌部の端部は、図8に示すように、フランジの切欠き32内に位置される。
【0056】
好ましくは、少なくとも1つの弾性素材製の要素の弾性変形は、ぜんまいの巻付け動作中に、とりわけ巻付け動作の最後に実施される。
【0057】
上記の結果、フランジは予圧されたぜんまいを開放環60へ巻き上げることを目的とする巻付け動作中に組付けられ、ぜんまいの巻上げは内端(目)からはじまり、舌部を有する外端で終わる。
【0058】
本発明にかかる2つの部品の時計組立品の製造方法の他の実施形態を、上記ではそれぞれ第1及び第2部品として説明されてきたぜんまい2’と香箱真30’を念頭に置いて、以下に説明する。
【0059】
本方法は、以下のステップを含む。
-舌部が設けられた少なくとも1つの弾性素材製の要素を含むぜんまい2’の提供、この場合ぜんまいは全体が弾性素材製である、
-少なくとも1つの切欠き、この場合は2つの切欠き32’、が設けられた、香箱真9の提供、
-ぜんまいと香箱真の恒久的組立。
当該組立は、ぜんまいと香箱真の障害(係止)構造を用いた、とりわけ舌部と2つの切欠きを用いた協働により実施される。とりわけこの組立は、舌部が切欠き内に収容されることにより実現される。
【0060】
ぜんまい2または2’、とりわけ上記の時計組立体の製造方法に用いられるぜんまいの製造方法の実施形態を、以下に説明する。
【0061】
ぜんまいの製造方法は、
図12に示すように弾性素材19の帯において、ぜんまい2;2’を画定するステップ、またはぜんまいを電鋳するステップと、
-ぜんまいにおいて舌部20;20’を切断するステップ、
を含む。
【0062】
有利には、切断ステップは、レーザ切断、とりわけフェムト秒レーザ切断、及びまたは放電加工、とりわけワイヤ放電加工、及びまたは機械加工、及びまたは打ち抜き加工による切断を含む。寸法と、使用する合金の機械的特性を維持する必要性から、フェムト秒レーザの解決策が優位となる。しかしながら、他の技術も依然想定することができる。レーザ切断、とりわけフェムト秒レーザ切断には、以下の利点がある。
-ぜんまいの機械的性質を減じることなく、正確な切断を可能とする、
-切断の形状に大幅な自由を提供し、このため切断のデザインに、とりわけ舌部の切断の冒頭の丸みを帯びた部分のデザインに大幅な自由を提供する、
-切削工具の場合に発生する摩耗を排除する、工業的方法で実施される。
【0063】
有利には、ぜんまいの製造方法がぜんまいの電鋳を含む場合、当該ステップはぜんまいへの舌部の生成を含む。
【0064】
また有利には、ぜんまいの製造方法は、弾性素材製の要素を形成し固定するステップを含む。固定ステップは、使用素材にかかわらず、ぜんまいの良好な機能を得るために重要である。アモルファス合金の場合、固定方法の一例が、特許文献4に開示される。Nivaflex(登録商標)などのぜんまい合金製の要素において、固定は、真空下の炉内での加熱を用いた従来の態様で実施することができる。
【0065】
好ましくは、上述のぜんまいの製造方法は、上述の時計組立体の製造方法に基づく、舌部が設けられた少なくとも1つの弾性素材製の要素を有するぜんまいを提供するステップにおいて実行される。
【0066】
弾性時計部品、とりわけ香箱の帯またはぜんまいフランジの製造方法の実施形態を、以下に説明する。
【0067】
方法は以下のステップを含む。
-アモルファス素材の帯を提供する、
-帯から部品を切断し、ここで切断はフェムト秒レーザを用いて行われる。
このタイプの方法は、例えば特許文献4に記載の方法を用いて、ぜんまいの形成前に舌部の正確な切込みを実施することを可能とする。このため、図5に関して上述した通り、巻付けステップ中にぜんまいから解放される、予圧された舌部を得ることが可能になる。
【0068】
このため本発明は、香箱ぜんまいの巻付けステップ中、フランジに設けられた切欠き内に収容されるつまみとして用いられるよう設計される舌部を、香箱ぜんまいに形成することを可能とする。これは、フランジをぜんまいに対して、非恒久的態様(すなわち、組立体は分解することができる)で、ぜんまいとフランジの素材の機械的性質を減じることなく、またより一般的には2つの組み立てられた時計部品の素材の機械的性質を減じることなく、連結することを可能にする。
【0069】
ぜんまいとフランジが環または胴に保持される限り、この組立体は非常に強固である。2つのパーツがわずかな遊びを有して、すなわち溶接またはリベット止めに関連する応力なしに自由に組み立てられている事実は、2つの部品の内部応力の減少をもたらす。これは、最終的に組み立てられる部品の性質にとって有益である。
【0070】
溶接によってフランジとぜんまいを組立た場合とは異なり、本発明では、ぜんまい装置が香箱から引き出されるとき、フランジをぜんまいから分離することが可能である。加えて上述の通り、組立は、加熱することなく、また組立体の内部応力を減少させて、実施される。実際、溶接を実施するためには、溶接の実施前に2つのパーツを互いに十分に接触させる必要があり、これは相当な局部応力を発生しかねない。
【0071】
このため、本発明によれば、熱的手段(溶接またはろう付け)、または組立パーツ(リベット)を頼ることなく、フランジ上に香箱ぜんまいを機械的に組付けることが可能となる。2つの部品間のリンクは、可逆的に且つ弾性的に、及び組み立てられた部品の性質に影響を与えることなく、行われる。
【0072】
本明細書において、「舌部」は、帯の厚みに対応して帯を切断することにより開けられる曲線と、閉曲線の2つの端部を接続する切片によって区切られる、素材の帯のいずれかの一部を意味する。有利には舌部は、帯の残部を形成する素材により完全に取り囲まれる。このため舌部は、ぜんまいまたはフランジを、(切断される曲線上にある素材を除き)廃棄される素材なくして切断することにより形成される。換言すると、舌部におけるぜんまい2またはフランジの幅は、舌部の幅にまで減少するのではなく、舌部の幅よりも大きい。実際、ぜんまいまたはフランジを形成する素材は、ぜんまいまたはフランジの長手方向に対して、舌部の両側に存在する。加えて、舌部は、ぜんまいまたはフランジの端部を形成しない。
【0073】
本明細書において、「香箱ぜんまい装置」または「組み立てられた香箱ぜんまい」は、香箱ぜんまいとフランジとを含む組立体を意味する。香箱は、歯車列の連鎖の一部を形成してもよく、時打ち機構などの追加モジュール内に包含されてもよい。加えて、本明細書において、ぜんまいがアモルファス合金製の場合、「ぜんまい」または「香箱ぜんまい」は、安定化処置が施されているぜんまい帯を意味する。
【0074】
本明細書において、「フランジ」は、以下の意味を含む。
-「滑りぜんまい」、すなわち主ぜんまいの外端において主ぜんまいに固定される要素。当該要素は、香箱胴の壁に対して押圧し、完全な1巻きよりわずかに多い巻きを形成する。当該要素は、主ぜんまいが普通に巻き上げられ、その後胴の壁に対して滑ることを可能にする。このため、主ぜんまいは香箱に引っ掛けられていない。
-「主ぜんまい留め金」、すなわちその本質的な機能が、香箱内において主ぜんまいが巻戻るときに、主ぜんまいの外端を香箱の壁に対して保持する機能である、要素。当該要素は、主ぜんまいを、その真周りにより同心円状に巻上げ及び巻戻らせる。当該要素は、主ぜんまいの端部に固定される短い弾力的なブレードであってもよい。当該要素は、香箱内に係合して香箱の壁に対して主ぜんまいを保持するように定位置に保持される。
【符号の説明】
【0075】
2 ぜんまい
20 舌部
31 開口
32 開口
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12