(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-01
(45)【発行日】2022-09-09
(54)【発明の名称】機関室模擬訓練システム、及び、機関室模擬訓練方法
(51)【国際特許分類】
G09B 9/06 20060101AFI20220902BHJP
【FI】
G09B9/06 K
(21)【出願番号】P 2017190798
(22)【出願日】2017-09-29
【審査請求日】2020-03-03
(73)【特許権者】
【識別番号】521511542
【氏名又は名称】三菱重工マリタイムシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】須田 和義
(72)【発明者】
【氏名】松崎 範行
(72)【発明者】
【氏名】村井 邦彦
【審査官】神谷 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-032848(JP,A)
【文献】特開2008-170998(JP,A)
【文献】特開2002-268530(JP,A)
【文献】特開2005-134536(JP,A)
【文献】特開2017-055913(JP,A)
【文献】特開平10-039735(JP,A)
【文献】松崎範行,プロジェクションマッピング技術を利用した機関シミュレータ開発について,海技教育機構 第一回研究発表会 予稿集,海技教育機構,2016年09月29日,第1-3頁,<URL>https://www.jmets.ac.jp/news/n-2016090201.html#9,[2021年10月27日検索]
【文献】Mark Hodges,ダウンサイジング進むバーチャルリアリティ,日経CG NIKKEI COMPUTER GRAPHICS,日本,日経BP社 Nikkei Business Publications,Inc.,1998年11月08日,第146号,pp. 153-159,ISSN:0912-1609
【文献】長尾 和彦,3次元VRによる機関室訓練シミュレータと開発環境に関する考察,FIT2004 第3回情報科学技術フォーラム 一般講演論文集 第3分冊 画像認識・メディア理解 グラフィクス,2004年09月15日,pp.551-552
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09B 1/00-9/56
G09B 17/00-19/26
G06Q 50/00-50/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
舶用機関システムを模擬した機関室模擬訓練システムにおいて、
演算制御装置と、訓練用データを入力可能な教官用入力装置と、前記舶用機関システムにおいて船員が操作する機器類の画像を含む訓練用画像を投影する画像投影装置と、投影された訓練用画像に正対する訓練生が、投影された前記機器類の画像の手前で前記機器類に対する模擬的な操作を行った場合に、その動作を読み取って前記演算制御装置に伝達するモーションセンサデバイスとを備え、
前記演算制御装置は、前記モーションセンサデバイスから伝達された動作に基づき、前記訓練生が模擬的な操作を行った前記機器類の画像を、前記舶用機関システムで前記機器類が操作された場合に対応した画像に変化させた新たな前記訓練用画像を前記画像投影装置に投影させるように構成されており、
前記訓練用画像が、
工具の模擬画像を含んでいることを特徴とする機関室模擬訓練システム。
【請求項2】
前記教官用入力装置に入力された訓練用データに基づいて、前記演算制御装置が前記画像投影装置に対して、前記訓練用データに基づく訓練用画像のデータを出力し、前記画像投影装置が前記訓練用画像を投影面に投影し、前記モーションセンサデバイスにより前記訓練用画像に正対する訓練生の動作を読み取り、この動作情報を前記演算制御装置に伝達し、前記動作情報に基づいて、前記演算制御装置が前記画像投影装置に対して、内容を変化させた新たな訓練用画像のデータを出力し、前記画像投影装置が前記新たな訓練用画像を前記投影面に投影することを特徴とする請求項1に記載の機関室模擬訓練システム。
【請求項3】
前記モーションセンサデバイスとして、赤外線深度センサを用いていることを特徴とする請求項1または2に記載の機関室模擬訓練システム。
【請求項4】
前記訓練用画像が、模擬機関制御室の機関操縦卓の画像、模擬機関室の室内画像、模擬機関室の室内の配管系統図の画像のうちの少なくとも一つの画像を含んでいることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の機関室模擬訓練システム。
【請求項5】
舶用機関システムを模擬した機関室模擬訓練システムにおいて、
演算制御装置と、訓練用データを入力可能な教官用入力装置と、訓練用画像を投影する画像投影装置と、投影された訓練用画像に正対する訓練生の動作を読み取って前記演算制御装置に伝達するモーションセンサデバイスとを備え、
前記演算制御装置、前記教官用入力装置、前記画像投影装置、及び、前記モーションセンサデバイスをそれぞれ持ち運び可能に構成しており、
前記訓練用画像が、
工具の模擬画像を含んでいることを特徴とする機関室模擬訓練システム。
【請求項6】
教官用入力装置に入力された訓練用データに基づいて、演算制御装置が画像投影装置に対して、前記訓練用データに基づく舶用機関システムにおいて船員が操作する機器類の画像を含む訓練用画像のデータを出力し、前記画像投影装置が前記訓練用画像を投影面に投影する初期投影ステップと、前記訓練用画像に正対する訓練生が、投影された前記機器類の手前で前記機器類に対する模擬的な操作を行った場合に、その動作をモーションセンサデバイスで読み取り、この動作情報を前記モーションセンサデバイスから前記演算制御装置に伝達する動作判定ステップと、前記動作情報に基づいて、前記演算制御装置が、前記訓練生が模擬的な操作を行った前記機器類の画像を、前記舶用機関システムで前記機器類が操作された場合に対応した画像に内容を変化させた新たな訓練用画像のデータを前記画像投影装置に対して出力し、前記画像投影装置がこの新たな訓練用画像を投影面に投影する投影更新ステップとを含んでおり、
前記訓練用画像が、
工具の模擬画像を含んでいることを特徴とする機関室模擬訓練方法。
【請求項7】
前記訓練用画像が、模擬機関制御室の機関操縦卓の画像、模擬機関室の室内画像、模擬機関室の室内の配管系統図の画像のうちの少なくとも一つの画像を含んでいることを特徴とする請求項6に記載の機関室模擬訓練方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、舶用機関システムを操作、保守点検する船員となる訓練生を訓練するために使用する機関室模擬訓練システム、及び、機関室模擬訓練方法に関する。
【背景技術】
【0002】
海運業界においては、特に、船舶の舶用機関を担当する船員のERM(Engine-room Resource Management)訓練又はETM(Engine-room Team Management)訓練において、ディーゼル主機、ディーゼル発電機、ターボ発電機、補助ボイラ、排ガスエコノマイザ、一般補機、熱交換器、及び各種タンク等によって構成された船舶の機関室を模擬して、これらの各装置を実船と同様の運航パターンで操作、確認、及びトラブルに対する対応の訓練が可能な機関室シミュレータが開発されている。なお、これらの舶用機関システムにおける機器には、過給機、空気圧縮機、油洗浄機、熱交換器、渦巻きポンプ、モータ等の他に、燃料弁を含む各種の弁類もある。
【0003】
これに関連して、訓練すべき機関室のシナリオを設定する教官コンソールと、設定されたシナリオに基づいて舶用エンジンを遠隔操縦する機関制御盤と、シナリオで設定された機関室内の舶用エンジンを表示する大画面ディスプレイと、大画面ディスプレイ上に表示されたエンジンの補機器類を操作する機側操作器とを備えた船用エンジンルームシミュレータが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
このような舶用エンジンルームシミュレータでは、実機相当の操作盤が配置され、機関室内の各種流体の主要なデータと機器の運転状況は、ミミックパネル(巨大な表示板)に表示されるので、機関プラント全体の状況把握もでき、また、タッチパネルによる主要な弁の操作も可能になっている。そのため、操作面での訓練には適している。しかしながら、このような機関室シミュレータでは、設備が大規模になり、簡単に移動することができないという問題がある。
【0005】
また、船種毎の機関室内の機器全体をその相互関係と共に示す全体画像及び個々の機器を示す個別機器画像を表示する表示手段と、表示された全体画像中の機器を選択可能とし、選択された機器に対応する個別機器画像を呼び出す機器アクセス模擬手段と、その個別機器画像中の部品の操作を可能とし、その操作に応じて画像を変化させる機器操作模擬手段とを備えたエンジンルームシミュレータも提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
このエンジンルームシミュレータでは、実機相当の操作盤を個別機器画像と操作パネルに置き換えているので、大規模な設備とならず、小型化できるので、容易に移動できるシステムとなる。しかしながら、このエンジンルームシミュレータでは、主要機器や弁類などの操作においては、個別機器画像中の部品に対する操作をマウスの操作やタッチパネルに対するパネルタッチ操作だけで行うので、訓練生にとっては、例えば、手を動かして弁のハンドルを操作して弁を開いたり閉じたりする行為がなく、機器類を操作している実感がないため、訓練生にとっては面白味がないという問題がある。このような簡単な操作パネルと機器の状態を表示するだけの、比較的廉価なシミュレータでは、臨場感が不足してゲーム感覚になり、実習や訓練が不十分になりがちであるという問題がある。
【0007】
一方で、人間の動作を感知できるモーションセンサデバイスが開発されてきている。このモーションセンサデバイスとしては、距離を取得できるセンサとして深度センサが開発され、この一つに、片側のレンズから赤外線のレーザを照射し、反対側のレンズで反射光を読み取る赤外線深度センサがある。この赤外線深度センサを用いることにより、深度によって輝度を異ならせた輝度画像などの深度画像を得ることができ、この深度画像を解析することにより、3次元の空間情報の取得を行うことができる。
【0008】
これに関連して、赤外線センサで3次元の空間情報となる動体の表面の各点を時系列的に検出して、この時系列的変化を辿ることで、動体の3次元的な動き(モーション)の変化を検出する動体の3次元運動検出装置が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開平8-254947号公報
【文献】特開平10-39735号公報
【文献】特開2014-59654号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記の状況を鑑みてなされたものであり、その目的は、舶用機関システムの訓練において、持ち運び可能な程度まで小型化できて、教育訓練したい場所に機材を持ち込んで組み立てることにより、容易に移動でき、しかも、機関室及び機関制御室の各種の装置や機器類における監視や操作の方法を実際の船舶と略同じ方法にすることができて、訓練生の操作実感を現実の操作実感に近づけて、より高度のシミュレータ教育を行うことができ、これにより、訓練生の訓練の質的向上を図ることができる機関室模擬訓練システム、及び、機関室模擬訓練方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記のような目的を達成するための本発明の機関室模擬訓練システムは、舶用機関システムを模擬した機関室模擬訓練システムにおいて、演算制御装置と、訓練用データを入力可能な教官用入力装置と、前記舶用機関システムにおいて船員が操作する機器類の画像を含む訓練用画像を投影する画像投影装置と、投影された訓練用画像に正対する訓練生が、投影された前記機器類の画像の手前で前記機器類に対する模擬的な操作を行った場合に、その動作を読み取って前記演算制御装置に伝達するモーションセンサデバイスとを備え、前記演算制御装置は、前記モーションセンサデバイスから伝達された動作に基づき、前記訓練生が模擬的な操作を行った前記機器類の画像を、前記舶用機関システムで前記機器類が操作された場合に対応した画像に変化させた新たな前記訓練用画像を前記画像投影装置に投影させるように構成されており、前記訓練用画像が、工具の模擬画像を含んでいる。
【0012】
この構成によれば、機関室模擬訓練システム(機関室シミュレータ)、演算制御装置(シミュレータ演算部)、教官用入力装置(教官用タブレット)、画像投影装置(プロジェクタ)と、モーションセンサデバイスとで構成し、機関操縦卓及び補機類の操作を実際に行わせるための機側操作器が不要になるため、システム全体を小型化でき、持ち運び可能なポータブル式の海事教育用シミュレータを提供できる。これにより、教育訓練したい場所に機材を持ち込んで組み立てることにより、容易に教育訓練を実施できる。
【0013】
しかも、画像投影装置(プロジェクタ)により、実物大の画像を訓練生に見せることができ、臨場感を味あわせることができる。また、画像投影により機関室及び機関制御室を模擬するので、演算制御装置に記憶されている数多くの模擬機関室及び模擬機関制御室のデータ、若しくは、演算制御装置に入力される模擬機関室及び模擬機関制御室のデータを選択するだけで、容易に多様な機関室及び機関制御室に対する訓練を行うことができるようになる。これにより、様々な教育者の要望に応じて、シミュレータ演算ソフトを変えることができると共に、実プラントのシステム変更への対応を容易におこなうことができる。
【0014】
その上、訓練生の動作が、マウス操作やタッチパネル上の操作などと異なり、モーションセンサデバイスにより、訓練用画像に正対する訓練生の動作を読み取って演算処理装置に伝達するので、機関室及び機関制御室の各種の装置や機器類における監視や操作の方法を実際の船舶と略同じ方法にすることができ、訓練生の訓練の質的向上を図ることができる。
【0015】
つまり、画像投影装置を用いたプロジェクションマッピング技術により、訓練生が行う
機器類の操作を、マウス操作やタッチパネルディスプレイを使用せずに、画像投影装置で
壁面などに表示された画面で代用して、画像投影装置を壁面等に投影した画面に正対する
訓練生の動きをモーションセンサデバイスで読み取り、その訓練生が行った操作を教官用
入力装置の画面上で見ることができるので、より高度なシミュレータ教育ができる。
また、上記の機関室模擬訓練システムにおいて、前記訓練用画像が、工具の模擬画像を含んでいると、機関室若しくは機関制御室における操作のみならず、工具を用いた修理や点検の訓練も行うことができるようになる。
【0016】
上記の機関室模擬訓練システムにおいて、前記教官用入力装置に入力された訓練用データに基づいて、前記演算制御装置が画像投影装置に対して、前記訓練用データに基づく訓練用画像のデータを出力し、前記画像投影装置が前記訓練用画像を投影面に投影し、前記モーションセンサデバイスにより前記訓練用画像に正対する訓練生の動作を読み取り、この動作情報を前記演算制御装置に伝達し、前記動作情報に基づいて、前記演算制御装置が前記画像投影装置に対して、内容を変化させた新たな訓練用画像のデータを出力し、前記画像投影装置が前記新たな訓練用画像を前記投影面に投影する。これにより、機関室模擬訓練を効果的に行うことができる機関室模擬訓練システムとなる。
【0017】
上記の機関室模擬訓練システムにおいて、前記モーションセンサデバイスとして、赤外線深度センサを用いると、赤外線深度センサは既に市販されているので、容易にモーションセンサデバイスを得ることができる。
【0018】
上記の機関室模擬訓練システムにおいて、前記訓練用画像が、模擬機関制御室の機関操縦卓の画像、模擬機関室の室内画像、模擬機関室の室内の配管系統図の画像のうちの少なくとも一つの画像を含んでいると、これらの画像を壁面やスクリーンなどに投影して、機関制御室若しくは機関室における訓練を行うことができるようになる。
【0019】
上記の機関室模擬訓練システムにおいて、前記訓練用画像が、ツールボックスの模擬画像を含んでいると、機関室若しくは機関制御室における操作のみならず、工具や点検用機材等のツールを用いた修理や点検の訓練も行うことができるようになる。つまり、模擬画像に表示されたツールボックス(工具箱)から、スパナなどの必要なツール(工具類)を取り出し修理箇所などの所定の位置に移動する訓練生の動作をモーションセンサデバイスにより読み取り、所定の位置にツールがもたらされ、所定の動作がなされたか否かを判定することにより、必要な作業が完了したか否かを判定する。この訓練生の作業動作とその作業の結果を教官用入力装置の画面に表示することで、教官は訓練生の修理や点検の評価を行うことができる。
【0020】
上記のような目的を達成するための本発明の機関室模擬訓練システムは、舶用機関システムを模擬した機関室模擬訓練システムにおいて、演算制御装置と、訓練用データを入力可能な教官用入力装置と、訓練用画像を投影する画像投影装置と、投影された訓練用画像に正対する訓練生の動作を読み取って前記演算制御装置に伝達するモーションセンサデバイスとを備え、前記演算制御装置、前記教官用入力装置、前記画像投影装置、及び、前記モーションセンサデバイスをそれぞれ持ち運び可能に構成しており、前記訓練用画像が、工具の模擬画像を含んでいる。
この構成によれば、機関室模擬訓練システム全体が固定設備でなくなるので、多くの場所で訓練が可能となり、機関室模擬訓練システムの利用効率を著しく向上することができる。
また、上記の機関室模擬訓練システムにおいて、前記訓練用画像が、工具の模擬画像を含んでいると、機関室若しくは機関制御室における操作のみならず、工具を用いた修理や点検の訓練も行うことができるようになる。
【0021】
そして、上記のような目的を達成するための本発明の機関室模擬訓練方法は、教官用入力装置に入力された訓練用データに基づいて、演算制御装置が画像投影装置に対して、前記訓練用データに基づく舶用機関システムにおいて船員が操作する機器類の画像を含む訓練用画像のデータを出力し、前記画像投影装置が前記訓練用画像を投影面に投影する初期投影ステップと、前記訓練用画像に正対する訓練生が、投影された前記機器類の手前で前記機器類に対する模擬的な操作を行った場合に、その動作をモーションセンサデバイスで読み取り、この動作情報を前記モーションセンサデバイスから前記演算制御装置に伝達する動作判定ステップと、前記動作情報に基づいて、前記演算制御装置が、前記訓練生が模擬的な操作を行った前記機器類の画像を、前記舶用機関システムで前記機器類が操作された場合に対応した画像に内容を変化させた新たな訓練用画像のデータを前記画像投影装置に対して出力し、前記画像投影装置がこの新たな訓練用画像を投影面に投影する投影更新ステップとを含んでおり、前記訓練用画像が、工具の模擬画像を含んでいることを特徴とする方法である。この機関室模擬訓練方法によれば、上記の機関室模擬訓練装置と同様の作用効果を発揮できる。
【0022】
また、上記の機関室模擬訓練方法において、前記訓練用画像が、模擬機関制御室の機関操縦卓の画像、模擬機関室の室内画像、模擬機関室の室内の配管系統図の画像のうちの少なくとも一つの画像を含んでいると、これらの画像を壁面やスクリーンなどに投影して、機関制御室若しくは機関室における訓練を行うことができるようになる。
【0023】
また、上記の機関室模擬訓練方法において、前記訓練用画像が、ツールボックスの模擬画像を含んでいると、機関室若しくは機関制御室における操作のみならず、工具や点検用機材等のツールを用いた修理や点検の訓練も行うことができるようになる。
【発明の効果】
【0024】
本発明の機関室模擬訓練システム、及び、機関室模擬訓練方法によれば、舶用機関システムの訓練において、持ち運び可能な程度まで小型化できて、教育訓練したい場所に機材を持ち込んで組み立てることにより、容易に移動でき、しかも、機関室及び機関制御室の各種の装置や機器類における監視や操作の方法を実際の船舶と略同じ方法にすることができて、訓練生の操作実感を現実の操作実感に近づけて、より高度のシミュレータ教育を行うことができるので、これにより、訓練生の訓練の質的向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明に係る実施の形態の機関室模擬訓練システムの構成を模式的に示す説明図である。
【
図2】模擬機関制御室の投影画像のうちの機関監視制御盤(ENGINE CONTROL CONSOLE)の画面の一例を示す図である。
【
図3】模擬機関制御室の投影画像のうちの機側及び圧縮空気制御盤(LOCAL & PNEUMATIC CONTROL)の画面の一例を示す図である。
【
図4】模擬機関制御室の投影画像のうちの主機関(MAIN ENGINE)の第1画面の一例を示す図である。
【
図5】模擬機関制御室の投影画像のうちの主機関(MAIN ENGINE)の第2画面の一例を示す図である。
【
図6】模擬機関制御室の投影画像のうちの監視(MONITOR)の第1画面の一例を示す図である。
【
図7】模擬機関制御室の投影画像のうちの監視(MONITOR)の第2画面の一例を示す図である。
【
図8】模擬機関制御室の投影画像のうちの監視(MONITOR)の第3画面の一例を示す図である。
【
図9】模擬機関制御室の投影画像のうちの監視(MONITOR)の第4画面の一例を示す図である。
【
図10】模擬機関室の投影画像のうちの配管系統の全体図を示す図である。
【
図11】
図10の配管系統図における高温冷却清水系統機器群の構成を示す図である。
【
図12】
図10の配管系統図における低温冷却清水系統機器群の構成を示す図である。
【
図13】
図10の配管系統図における海水系統機器群の構成を示す図である。
【
図14】
図10の配管系統図における燃料系統機器群の構成を示す図である。
【
図15】
図10の配管系統図における潤滑油系統機器群の構成を示す図である。
【
図16】
図10の配管系統図における始動空気及び空気制御系統機器群の構成を示す図である。
【
図17】(a)、(b)、(c)の3種類の玉型弁のバルブ記号と、(d)手動調整弁のバルブ記号と、(d)バルブの開閉操作を模擬する訓練生の手の動作の例を示す図である。
【
図19】(a)自動調整弁のバルブ記号と、(b)スパナのアイコンと、(c)手のアイコンを示す図である。
【
図20】(a)ストレーナ記号と、(b)スパナのアイコンと、(c)ブラシのアイコンと、(d)手のアイコンを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明に係る実施の形態の機関室模擬訓練システム、及び、機関室模擬訓練方法について、図面を参照しながら説明する。なお、ここでは、モーションセンサデバイスとして赤外線深度センサを例示して説明しているが、必ずしも、赤外線深度センサに限定する必要はなく、人の動き(モーション)を検出することができるセンサや装置であればよく、赤外線深度センサ以外の深度センサ等であってもよい。
【0027】
また、画像投影装置の数、画像投影装置で投影する画像の数、赤外線深度センサの数、を2つで、また、訓練生の人数を2人で説明しているが、特にこれらの数や人数を限定するものではなく、それぞれの数や人数は、訓練の内容によって必要な数や人数となり、全部が同じ数や人数であっても良く、異なる数や人数であっても良い。
【0028】
図1に示すように、本発明に係る実施の形態の機関室模擬訓練システム(機関室シミュレータ)10は、舶用機関システムを模擬したシステムである。この機関室模擬訓練システム10は、演算制御装置(シミュレータ演算部)11と、訓練用データの入力を可能とする教官用入力装置(教官用タブレット)12と、訓練用画像(訓練用映像)15A、15Bを投影する画像投影装置(プロジェクタ)13A、13Bと、投影(映写)された訓練用画像15A、15Bに正対する訓練生(操作員)2A、2Bの動作を読み取って演算処理装置11に伝達する赤外線深度センサ(モーションセンサデバイス)14A、14Bとを備えて構成されている。
【0029】
この演算制御装置11は例えば、携帯可能なノートパソコン等で構成し、配管系統図(模擬機関室)及び機関操縦卓(模擬機関制御室)を投影する為の信号を画像投影装置13A、13Bに送ると共に、赤外線深度センサ14A、14Bから送られる動作信号から訓練生2A、2Bの動作をシミュレートする。また、教官用入力装置12は例えば、携帯可能なタブレット等で構成し、演算制御装置11とWi-Fi等の無線やLANケーブル等の有線を経由して接続され、シミュレーションの状況を監視すると共に、シミュレーションにおいて意図的な機関故障などの状態等を発生させることができるように構成する。
【0030】
また、画像投影装置13A、13Bは、例えば、短焦点式かつコンパクトな画像表示用プロジェクタ等で構成し、演算制御装置11からの画像信号に基づいて、教室の壁面やスクリーン等に配管系統図及び機関操縦卓を投影するように構成する。
【0031】
さらに、赤外線深度センサ14A、14Bは、モーションセンサデバイスの一つであり、既に市販されているものを採用できる。この赤外線深度センサ14A、14Bは、画像投影装置13A、13Bの投影画像にリンクして、投影画像に正対して、画像上の機器に対して、実機に対して行うのとほぼ同様な操作及び動作をする訓練生2A、2Bの手の動きを認識し、この動作信号を演算制御装置11に送るように構成する。
【0032】
さらに、これらの装置11~14A、14Bを、それぞれ持ち運び可能即ち可搬式に構成することが好ましい。より、好ましくは、フルセットで国際線/国内線航空機機内に持ち込み可能なサイズのスーツケースに入るように構成する。これにより、固定設備でなくなり、多くの場所で訓練が可能となる。その結果、機関室模擬訓練システム10の利用効率を著しく向上することができる。
【0033】
そして、機関シミュレータソフトの表示及び操作部は、機関監視卓を表示する模擬機関制御室と、機関室内の画像若しくは機側の配管系統図を表示する模擬機関室とに分かれるので、訓練用画像15A、15Bは、模擬機関制御室の機関操縦卓の画像15A、模擬機関室の室内画像若しくは模擬機関室の室内の配管系統図の画像15Bのうちの少なくとも一つの画像を含むように構成される。この模擬機関制御室の機関操縦卓の画像15Aにより、機関制御室における訓練を行い、模擬機関室の室内画像若しくは模擬機関室の室内の配管系統図の画像15Bにより、機関室における訓練を行う。なお、以下では、配管系統図の画像15Bで説明するが、室内画像であってもよい。室内画像の方が、臨場感があってよいが、配管系統図の方が簡単に多様な種類の構成に対応できるというメリットがある。
【0034】
この模擬機関制御室として投影する機関監視卓の表示部及び操作部の例を
図2~
図9に示す。これらの画像は、教官用入力装置12の画面のスクロール動作を行う事で画像の切り替えを可能とすることが好ましい。
【0035】
図2は、「機関監視制御盤(ENGINE CONTROL CONSOLE)」を示す図で、制御室の操縦盤を模擬する画像である。この画像では、主機関操縦ハンドル、機関回転速度、過給機回転数および主な圧力、温度のメーターを表示する。
図3は、「機側及び圧縮空気制御盤(LOCAL & PNEUMATIC CONTROL)」を示す画像で、機側操縦を模擬できる画像であり、ガバナハンドルと空気回路を表示する。
図4は、「主機関(MAIN ENGINE)(1)」を示す図で、始動空気、冷却清水、冷却海水、潤滑油系統を表示する。
図5は「主機関(MAIN ENGINE)(2)」を示す図で、燃料油、掃気系統を表示する。なお、
図4と
図5の図中の「□」はバルブ、「△」は電動機を表す。また、
図6~
図9は「監視(MONITOR)」の図で、各種機器類の計器の状態を表示する。
【0036】
また、模擬機関室として投影(映写)する舶用機関システムの配管系統図の例を
図10~
図16に示す。これらの画像は、教官用入力装置12の画面のスクロール動作を行う事で画像の切り替えを可能とすることが好ましい。
【0037】
この舶用機関システムの配管系統図をより具体的に説明すると、
図10に示すように、この舶用機関システムの配管系統Aは、主機関(ディーゼルエンジン)E、高温冷却清水系統機器群20、低温冷却清水系統機器群30、海水系統機器群40、燃料系統機器群50、潤滑油系統機器群60で構成されている。さらに、この
図10の配管系統図に、
図16に示す始動空気及び空気制御系統機器群70やプロペラ駆動装置(図示しない)を追加して含めてもよい。
【0038】
より詳細には、
図11に示すように、高温冷却清水系統機器群20は、高温冷却清水冷却器21、高温冷却清水温度調整弁22、高温冷却清水膨張タンク23、1号高温冷却清水ポンプ24A、2号高温冷却清水ポンプ24B、清水予熱器25と、これらを
図11のように連結する配管26とから構成される。
【0039】
また、
図12に示すように、低温冷却清水系統機器群30は、低温冷却清水冷却器31、低温冷却清水温度調整弁32、低温冷却清水膨張タンク33、1号低温冷却清水ポンプ34A、2号低温冷却清水ポンプ34B、インタークーラ35と、これらを
図12のように連結する配管36とから構成される。
【0040】
また、
図13に示すように、海水系統機器群40は、高位シーチェスト41、低位シーチェスト42、1号冷却海水ポンプ43A、2号冷却海水ポンプ43Bと、これらを
図13のように連結する配管44とから構成される。
【0041】
また、
図14に示すように、燃料系統機器群50は、HFOサービスタンク51、DDサービスタンク52、燃料1次ストレーナ53、第1の燃料調圧弁54A、1号燃料供給ポンプ55A、2号燃料供給ポンプ55B、第2の燃料調圧弁54B、1号燃料循環ポンプ56A、2号燃料循環ポンプ56B、燃料ヒーター57、燃料2次ストレーナ58と、これらを
図14のように連結する配管59とから構成される。
【0042】
また、
図15に示すように、潤滑油系統機器群60は、潤滑油ストレーナ61、潤滑油温度調整弁62、潤滑油冷却器63、1号潤滑油ポンプ64A、2号潤滑油ポンプ64B、サンプタンク65と、これらを
図15のように連結する配管66とから構成される。
【0043】
また、
図16に示すように、始動空気及び空気制御系統機器群70は、1号空気圧縮機71A、2号空気圧縮機71B、1号空気槽72A、2号空気槽72B、制御空気減圧弁73、制御空気入口弁74、雑用空気減圧弁75、排気弁作動空気入口弁76、起動空気分配器入口弁77、起動空気入口弁78と、これらを
図16のように連結する空気配管79とから構成される。
【0044】
これらの
図11~
図15の各機器群20、30、40、50、60が、
図10に示すように、配管で接続される。さらには、
図16の始動空気及び空気制御系統機器群70が
図10に示す構成に追加される。
【0045】
そして、この機関室模擬訓練システム10においては、次のようなデータの伝達を行う。
図1に示すように、教官用入力装置12に入力された訓練用データD21に基づいて、演算制御装置11が画像投影装置13A、13Bに対して、訓練用データD21に基づく訓練用画像15A、15BのデータD13A、D13Bを出力する。この訓練用画像15A、15Bを画像投影装置13A、13Bが投影面3A、3Bに投影する。また、その一方で、演算制御装置11は、教官用入力装置12に、この訓練用データD21に基づいて選択された訓練状況データD12を出力する。これにより、教官用入力装置12側でも、この訓練用画像15A、15Bを選択しながら見られるようになる。
【0046】
さらに、この模擬機関室の訓練用画像15Bがツールボックス(工具箱)の模擬画像を含んでいるように構成する。訓練生2Bの訓練において、訓練生2Bに訓練用画像15Bに表示されたツールボックスから、スパナなどの必要なツール(工具類)を取り出し、修理箇所などの所定の位置に移動させる。この訓練生2Bの動作を赤外線深度センサ14Bにより読み取り、所定の位置にツールがもたらされ、所定の動作がなされたか否かを判断する。そして、この動作から必要な作業が完了したか否かを判定する。この訓練生2Bの作業中の動作と作業の結果は教官用入力装置12の画面に表示される。
【0047】
これにより、機関室若しくは機関制御室における操作のみならず、機関室における工具や点検用機材等のツールを用いた修理や点検の訓練も行うことができるようになる。なお、機関制御室における訓練でツールを使用する訓練が必要な場合は、模擬機関制御室の訓練用画像15Aにおいてもツールボックスの模擬画像を含ませて、上記と同様な構成とする。
【0048】
これらの訓練状況データD21と訓練用画像15A、15BのデータD13A、D13Bとしては、主機関及び補機器の運転状態と、各種機器の状態がある。そして、この各種機器の状態には、機関室内の配管系統の各バルブの開閉状態、各種ポンプの運転状態、各種検出器の検出データの状態、及び、機関制御室内の機関操縦卓(機関制御パネル)の操作機器の状態や各種データの表示の状態が含まれている。
【0049】
そして、教官は、教官用入力装置12に予め登録されている訓練用シナリオや個別のトラブル発生用データから選択するか、あるいは、新たに入力して、このトラブル発生用データD21(i)を訓練用データD21の一部として、演算制御装置11に出力する。この出力を受けて、演算制御装置11が画像投影装置13A、13Bに対して、訓練用データD21(i)に基づく訓練用画像15A(i)、15B(i)のデータD13A(i)、D13B(i)を出力する。この訓練用画像15A(i)、15B(i)を画像投影装置13A、13Bが投影面3A、3Bに投影する。また、その一方で、演算制御装置11は、教官用入力装置12に、この訓練用データD21(i)に基づいて選択された訓練状況データD12(i)を出力する。これにより、教官用入力装置12側でも、この訓練用画像15A(i)、15B(i)を選択しながら見られるようにする。
【0050】
訓練生2A、2Bは、この投影された訓練用画像15A(i)、15B(i)に正対し、この訓練用画像15A(i)、15B(i)の機器類の画像を触って若しくはこの機器類の画像の手前で、ハンドル操作やレバー操作などの模擬的な操作をする。
【0051】
この投影された訓練用画像15A(i)、15B(i)に正対する訓練生2A、2Bの動作を赤外線深度センサ14A、14Bにより読み取る。この動作情報D31A(j)、D31B(j)を演算制御装置11に伝達し、この動作情報D31A(j)、D31B(j)に基づいて、演算制御装置11が画像投影装置13A、13Bに対して、訓練用画像15A(i)、15B(i)の内容を変化させた新たな訓練用画像15A(i+1)、15B(i+1)のデータD13A(i+1)、D13B(i+1)を出力し、画像投影装置13A、13Bが新たな訓練用画像15A(i+1)、15B(i+1)を投影面3A、3Bに投影する。
【0052】
次に、画像投影装置13Bで投影された訓練用画像15Bの画像上での操作の例について説明する。例えば、玉型弁(
図17の(a))、逆止弁(
図17の(b))、三方弁(
図17の(c))、手動調整弁(
図17の(d))の操作は、配管系統図上で「OPEN(開弁)」の状態のバルブはバルブ記号の白抜き部分が緑色に表示される。また、「CLOSE(閉弁)」の状態のバルブはバルブ記号の白抜きが背景色に表示される。
【0053】
これらの画像に対して、これから操作するバルブの選定を行うが、これは、訓練生2Bが、訓練用画像15Bの画像上の操作を行いたいバルブ記号を、右手の指でクリックすることで行う。訓練用画像15Bのバルブ記号がクリックされると、クリックされたバルブの訓練用画像15Bのバルブ番号が拡大され、バルブ記号が点滅する。
【0054】
次に、バルブを開弁(OPEN)する場合は、この点滅した状態で、訓練生2Bが、
図17の(e)に示すように、訓練用画像15Bの点滅するバルブ記号の付近で右手の掌を画面に向け、手を右方向(時計回り)に90度回す。これにより、バルブは「OPEN」となり、バルブ記号の白抜き部分が緑色に表示される。なお、既に「OPEN」である場合は変化しない。また、手動調整弁の場合には、バルブは「OPEN」方向に調整され、逃し弁の場合は圧力が下降し、入口弁や減圧弁などの場合には圧力が上昇する。大きく調整を行う場合はこの動作を繰り返す。
【0055】
一方、バルブを閉弁(CLOSE)する場合は、このバルブ記号が点滅した状態で、訓練生2Bが、
図17の(e)に示すように、訓練用画像15Bの点滅するバルブ記号の付近で右手の掌を画面に向け、手を左方向(反時計回り)に90度回す。これにより、バルブは「CLOSE」となり,バルブ記号の白抜き部分が背景色に表示される。なお、既に「CLOSE」である場合は変化しない。また、手動調整弁の場合には、バルブは「CLOSE」方向に調整され、逃し弁の場合は圧力が上昇し、入口弁や減圧弁などの場合には圧力が下降する。大きく調整を行う場合はこの動作を繰り返す。
【0056】
また、ポンプの発停操作に関しては、訓練用画像15Bの画像上の「RUN」の状態のポンプは、
図18に示すポンプ記号の白抜き部分が緑色に表示される。また、「STOP(停止)」の状態のポンプはポンプ記号の白抜きが背景色に表示される。これから操作するポンプの選定は、操作者が、訓練用画像15Bにおいて、操作を行いたいポンプ記号を、右手の指でクリックすることで行う。これにより、クリックされたポンプは訓練用画像15Bのポンプ名称が拡大され、ポンプ記号が点滅する。
【0057】
次に、ポンプをRUN(駆動)する場合は、ポンプ記号が点滅した状態で、訓練生2Bが訓練用画像15Bの点滅するポンプ記号をダブルクリックする。この操作により「STOP」中のポンプは「RUN」状態となる。なお、「RUN」状態で同じ操作を行うと「STOP」状態となる。
【0058】
次に、
図19の(a)に示す記号の自動調整弁のメンテナンス操作について説明する。この自動調整弁は教官用入力装置12における入力より、不具合状態を造り出さない限り正常に作動する。そして、教官用入力装置12から不具合発生の出力があった場合には、演算制御装置11は不具合(トラブル)を発生し、自動調整弁の不具合に基づいて、機器類の運転状態を変化させるが、自動調整弁の画面表示自体は変化させない。この機器類の運転状態の変化、即ち、周辺の状況の変化から、訓練生2Bが自動調整弁の不具合に気付くと、この自動調整弁を以下のような操作でメンテナンスする。
【0059】
先ず、この自動調整弁を選択すべく、訓練生2Bは、訓練用画像15Bの自動調整弁の画像を右手の指でクリックする。このクリックされた自動調整弁は訓練用画像15Bのバルブ番号が拡大され、バルブ記号の白抜き部分が赤色に点滅する。そして、訓練生2Bが、訓練用画像15Bの画面右下のツールボックスのスパナのアイコン(
図19の(b))をクリックして赤色に点滅させた状態で、自動調整弁の画像をクリックする。これにより、不具合状態は解消されるので、この不具合状態を解消した後、通常操作に戻すために、訓練生2Bはツールボックスの手のアイコンをクリックする。これにより、通常操作に戻る。
【0060】
次に、
図20の(a)に示す記号のストレーナの切り替え操作と開放点検について説明する。このストレーナは、教官用入力装置12への入力により不具合状態が造り出されない限り正常に作動する。そして、教官用入力装置12から不具合発生の出力があった場合には、演算制御装置11は不具合(トラブル)を発生し、自動調整弁の不具合に基づいて、機器類の運転状態を変化させるが、ストレーナの画面表示自体は変化させない。この機器類の運転状態の変化、即ち、周辺の状況の変化から、訓練生2Bがストレーナの不具合に気付くと、このストレーナを以下のような操作で、切り替え操作と開放点検の操作をする。
【0061】
先ず、このストレーナを選択すべく、訓練生2Bが訓練用画像15Bの画像上のストレーナの記号の画像を右手の指でクリックする。このクリックされたストレーナは訓練用画像15Bのストレーナ番号が拡大され、ストレーナ記号の白抜き部分が赤色に点滅する。この赤色に点滅した状態で、訓練生2Bは訓練用画像15Bの画像上で点滅するストレーナ記号をダブルクリックする。この操作により、ストレーナは切替されたものとされる。この切り替え操作をした後に、開放点検を行う。
【0062】
この解放点検は、訓練生2Bが、訓練用画像15Bの画面右下のツールボックスのスパナのアイコン(
図20の(b))をクリックした後で、訓練用画像15Bのストレーナをクリックする。これにより、ストレーナは開放状態となり、訓練用画像15Bの画像にストレーナエレメントの閉塞した写真画像が表示される。この状態で、訓練生2Bが訓練用画像15Bの画面右下のツールボックスのブラシのアイコン(
図20の(c))をクリックした後に、ストレーナをクリックする。この操作により、訓練用画像15Bの画像上で、ストレーナエレメントの閉塞した写真画像からクリーンな状態の写真画像に切り替わる。これにより、ストレーナの不具合状態は解消されたものされるので、この不具合状態を解消した後、通常操作に戻すために、操作者はツールボックスの手のアイコン(
図20の(d))をクリックする。これにより、通常操作に戻る。
【0063】
教官は、教官用入力装置12で、自分が入力した不具合(トラブル)発生用データD21(i)に対する、新たな訓練用画像15A(i+1)、15B(i+1)の変化を見ながら、訓練生2A、2Bの評価をしたり、訓練生2A、2Bに指示を出したり、新たなトラブル発生用データD21(k)を、演算制御装置11に出力したりする。これを訓練が終了するまで繰り返す。
【0064】
そして、本発明に係る実施の形態の機関室模擬訓練方法は、教官用入力装置12に入力された訓練用データD21に基づいて、演算制御装置11が画像投影装置13A、13Bに対して、訓練用データD21に基づく訓練用画像15A、15Bを出力し、画像投影装置13A、13Bが訓練用画像15A、15Bを投影面に投影する初期投影ステップと、訓練用画像15A、15Bに正対する訓練生2A、2Bの動作を赤外線深度センサ13A、13bで読み取り、この動作情報D31A、D31Bを赤外線深度センサ14A、14Bから演算制御装置11に伝達する動作判定ステップと、動作情報D31A、D31Bに基づいて、演算制御装置11が内容を変化させた新たな訓練用画像15A、15Bを画像投影装置13、13Bに対して出力し、画像投影装置13A、13Bがこの新たな訓練用画像15A、15Bを投影面に投影する投影更新ステップとを含んでいることを特徴とする方法である。
【0065】
また、訓練用画像15A、15Bは、模擬機関制御室の機関操縦卓の画像15A、模擬機関室の室内画像(図示しない)、模擬機関室の室内の配管系統図の画像15Bのうちの少なくとも一つの画像を含んでおり、また、訓練用画像15Bが、ツールボックスの模擬画像を含んでいる。
【0066】
そして、この模擬機関室における訓練としては、始動準備、機関起動、A重油からC重油への燃料切替操作、C重油からA重油への燃料切替操作、トラブル発生時の対処訓練、遠隔操縦装置トラブル発生時の対処訓練等がある。
【0067】
この始動準備の訓練としては、例えば、機関起動前状態の確認、制御空気・雑用空気系統準備、冷却海水系統準備、冷却清水系統準備、潤滑油系統準備、燃料油系統準備、油圧システム起動、ターニング、起動空気系統準備等がある。
【0068】
そして、より具体的な、例えば、始動空気及び空気制御系統の準備訓練時の操作では、空気圧縮機71A、71Bを起動して空気槽72A、72Bの下側のバルブを開弁し、制御空気入口弁74を開弁し、制御空気減圧弁73を開弁し、それから、排気弁作動空気入口弁76を開弁し、雑用空気減圧弁75を開弁して圧力調整する操作手順や、ディーゼルエンジンEを動かす時の始動用空気系統のバルブ操作としての、空気槽72A、72Bの上側のバルブを開弁し、起動空気入口弁78を開弁し、起動空気分配器入口弁77を開弁する操作手順等がある。
【0069】
また、トラブル発生時の対処訓練としては、燃料油系統のトラブル、冷却系統のトラブル、燃料系統のトラブル等がある。潤滑油系統のトラブルには、潤滑油ストレーナ61の閉塞による潤滑油圧力低下、潤滑油調圧弁の調整不良による潤滑油圧力低下、潤滑油温度調整弁62の不良による潤滑油入口温度上昇等がある。
【0070】
また、冷却系統のトラブルには、高温冷却清水膨張タンク23の液面低下による清水圧力低下、高温冷却清水温度調整弁22の不良による高温冷却清水温度上昇、低温冷却清水膨張タンク33の液面低下による清水圧力低下、低温冷却清水温度調整弁32の不良による低温冷却清水温度上昇、冷却海水ストレーナの閉塞による冷却海水圧力低下等がある。
【0071】
さらに、燃料系統のトラブルとしては、燃料循環系統圧力調整弁54Aの調整不良による燃料圧力低下、燃料2次ストレーナ58の閉塞による燃料圧力低下、燃料1次ストレーナ53の閉塞による燃料圧力低下、燃料供給系統圧力調整弁54Bの調整不良による燃料圧力低下、燃料温度低下による燃料粘度上昇等がある。
【0072】
そして、遠隔操縦装置トラブル発生時の対処訓練としては、主機リモコン、警報装置などの外部システムとのインターフェース信号の処理を行うEICU(機関インターフェースコントロールユニット)からの信号によるシャットダウン、EICUからの信号によるスローダウン、CCU(シリンダコントロールユニット)の異常により、そのシリンダのアルファ注油器(電気式シリンダ潤滑油注油器)の注油信号が出ないというバックアップ注油のトラブル、トラブルシューティング、リモコン関係の異常等がある。なお、このトラブルシューティングには、ターニングギヤ位置の不一致による起動不可、HPS(Hydraulic Power Supply)漏れセンサの故障によるシャットダウン、シリンダ注油器のフローセンサの故障によるスローダウンがある。
【0073】
上記の構成の機関室模擬訓練システム10、及び、機関室模擬訓練方法によれば、機関室模擬訓練システム10を、演算制御装置11、教官用入力装置12、画像投影装置13A、13Bと、赤外線深度センサ14A、14Bとで構成しているので、機関操縦卓及び補機類の操作を実際に行わせるための機側操作器が不要になる。従って、システム全体を小型化でき、持ち運び可能なポータブル式の海事教育用シミュレータを提供できる。これにより、教育訓練したい場所に機材を持ち込んで組み立てることにより、容易に教育訓練を実施できる。
【0074】
しかも、画像投影装置13A、13Bにより、実物大の画像となる訓練用画像15A、15Bを訓練生2A、2Bに見せることができ、臨場感を味あわせることができる。また、画像投影により機関室及び機関制御室を模擬するので、演算制御装置11に記憶されている数多くの模擬機関室及び模擬機関制御室のデータ、若しくは、演算制御装置11に入力される模擬機関室及び模擬機関制御室のデータを選択するだけで、容易に多様な機関室及び機関制御室に対する訓練を行うことができるようになる。これにより、様々な教育者の要望に応じて、シミュレータ演算ソフトを変えることができると共に、実プラントのシステム変更への対応を容易におこなうことができる。
【0075】
その上、訓練生2A、2Bの動作が、マウス操作やタッチパネル上の操作などと異なり、訓練用画像15A、15Bに対する操作となり、この訓練用画像15A、15Bに正対する訓練生2A、2Bの動作を、赤外線深度センサ14A、14B等により読み取って演算処理装置11に伝達するので、機関室及び機関制御室の各種の装置や機器類における監視や操作の方法を実際の船舶と略同じ方法にすることができ、訓練生2A、2Bの訓練の質的向上を図ることができる。
【0076】
つまり、画像投影装置13A、13Bを用いたプロジェクションマッピング技術により、訓練生2A、2Bは行う機器類の操作を、マウス操作やタッチパネルディスプレイを使用せずに、画像投影装置13A、13Bで壁面などに表示された訓練用画像15A、15Bで代用して、画像投影装置13A、13Bが壁面等に投影した訓練用画像15A、15Bに正対する訓練生2A、2Bの動きを赤外線深度センサ14A、14Bで読み取り、教官用入力装置12の画面上でその訓練生2A、2Bが行った操作を見ることができるので、より高度なシミュレータ教育ができる。
【0077】
したがって、本発明に係る実施の形態の機関室模擬訓練システム10、及び、機関室模擬訓練方法によれば、舶用機関システムの訓練において、持ち運び可能な程度まで小型化できて、教育訓練したい場所に機材を持ち込んで組み立てることにより、容易に教育訓練を実施でき、しかも、機関室及び機関制御室の各種の装置や機器類における監視や操作の方法を実際の船舶と略同じ方法にすることができて、訓練生2A、2Bの操作実感を現実の操作実感に近づけて、より高度のシミュレータ教育を行うことができるので、これにより、訓練生2A、2Bの訓練の質的向上を図ることができる。
【0078】
その結果、この機関室模擬訓練システム10は、機関士の訓練用に開発した新しいタイプの機関室シミュレータとなり、練習船船内で実際の機関室で操作する前の事前演習、海技教育の各機関や学校を巡回しての実習訓練などに使用できる。しかも、ソフトウエアの更新により常に最新の機関プラントのシミュレータ実習が可能となり、また、数多くの種類の機関プラントのシミュレータ実習が可能となる上に、訓練生が身体を動かして操作しながら、また、訓練生同士が相互にコミュニケーションを取りながらシミュレータ実習を行えるようになる。
【符号の説明】
【0079】
10 機関室模擬訓練システム
2A、2B 訓練生
11 演算制御装置(シミュレータ演算部)
12 教官用入力装置(教官用タブレット)
13A、13B 画像投影装置(プロジェクタ)
14A、14B 赤外線深度センサ
15A、15B 訓練用画像
20 高温冷却清水系統機器群
30 低温冷却清水系統機器群
40 海水系統機器群
50 燃料系統機器群
60 潤滑油系統機器群
70 始動空気及び空気制御系統機器群