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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-01
(45)【発行日】2022-09-09
(54)【発明の名称】ティシュペーパー
(51)【国際特許分類】
   A47K 10/16 20060101AFI20220902BHJP
   A47K 7/00 20060101ALI20220902BHJP
【FI】
A47K10/16 C
A47K7/00 F
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018035841
(22)【出願日】2018-02-28
(65)【公開番号】P2019150138
(43)【公開日】2019-09-12
【審査請求日】2021-02-05
(73)【特許権者】
【識別番号】390029148
【氏名又は名称】大王製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002321
【氏名又は名称】弁理士法人永井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】保井 秀太
【審査官】神尾 寧
(56)【参考文献】
【文献】特許第5912196(JP,B1)
【文献】特開2009-035833(JP,A)
【文献】特開2016-137061(JP,A)
【文献】特開2013-192884(JP,A)
【文献】特開2011-156120(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47K 10/16
A47K 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオールを含む保湿剤が付与されている2プライのティシュペーパーであって、
1プライ当たりの坪量が16.0~25.0g/m2であり、
2プライの紙厚が145~180μmであり、
水分率が10質量%以上であり、
横方向の乾燥引張強度が、120~200cN/25mmであり、
縦方向の乾燥引張強度が、275~450cN/25mmであり、
横方向の湿潤引張強度が、80~120cN/25mmであり、
前記横方向の乾燥引張強度と前記横方向の湿潤引張強度との差が40cN/25mm以上であり、かつ、(横方向の湿潤引張強度)/(横方向の乾燥引張強度)の値が0.60~0.75であり、(縦方向の乾燥引張強度)/(横方向の乾燥引張強度)の値が2.0~2.8であり、
縦方向の伸び率が、13.0~18.0%である、
ことを特徴とするティシュペーパー。
【請求項2】
表面粗さ(Ra)が、10.0~12.0μmである請求項1記載のティシュペーパー。
【請求項3】
平均摩擦係数(μ)が、0.38~0.50である請求項1又は2記載のティシュペーパー。
【請求項4】
(表面粗さ(Ra))/(平均摩擦係数(μ))の値が25.0~30.0μmであり、
(横方向の湿潤引張強度)/〔(横方向の乾燥引張強度)×(平均摩擦係数(μ))〕の値が1.45~2.00である、
請求項1~3の何れか1項に記載のティシュペーパー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ティシュペーパーに関し、特に、保湿剤が付与されているティシュペーパーに関する。
【背景技術】
【0002】
ティシュペーパーには、保湿剤が付与されているものと、保湿剤が付与されていないものがある。保湿剤が付与されているものは保湿ティシュー、薬液付与タイプのティシューなどと称され、洟かみや化粧落とし等の肌に直接触れる用途が主であり、保湿剤による吸湿作用によって水分率が高められている。なお、保湿剤が付与されていないものは非保湿ティシューなどと称されている。
【0003】
保湿ティシューは、主にフェイシャル用途、つまり洟かみや顔の清拭に使用されることが多い。保湿ティシューの用途として洟かみ以外によく利用される用途として、化粧落とし(メイク落とし)がある。化粧落としは、ジェルタイプ、クリームタイプなど様々なタイプの化粧落とし用薬剤を顔全体になじませた後に拭き取る方法がとられる。
【0004】
そして、その拭き取り操作は、額から顔の丸みにそって、軽く押さえながら、滑らせるようにして顎までしっかり押さえて、化粧落とし用薬剤を吸わせるように行うのが一般的である。そのため、保湿ティシューには、吸水性が高く、吸水時も丈夫で、しっかり感があり、適度な柔らかさもあり、そして肌に滑らせたときの拭き取りの滑らかさ、心地よさ、が求められる。特に、このような化粧落とし用途では、滑らかさと、吸水した状態において拭き取り操作を行った際のしっかり感が望まれる。
【0005】
他方、ティシュペーパーの品質は、「柔らかさ」、「滑らかさ」、「丈夫さ(強度・安心感)」で評価されることがある。しかし、保湿ティシューでは、保湿剤による水分率の上昇に伴い保湿剤が付与されていないもの、つまり非保湿ティシューにはない「柔らかさ」が感じられるようになるが、一方で水分率の上昇によりコシがなく、しなやかにも感じられ、「丈夫さ(強度・安心感)」といった評価が低くなることが多々ある。さらに、「丈夫さ(強度・安心感)」においては、感じ方のみならず、複数の保湿ティシューが折り畳まれ積層されて収納箱に収納された形態の製品において、収納箱天面の取出口から保湿ティシューを1枚又は複数枚重ねて取り出す、いわゆるポップアップ操作をした際に、破れてしまう頻度が非保湿ティシューよりも多いことがある。また、洟をかむなどの使用時においても、洟が保湿ティシューを裏抜けして、保湿ティシューを持つ手指に付着するという問題もあった。
【0006】
このように、保湿ティシューの評価においては、「柔らかさ」の評価を高めると、「丈夫さ(強度・安心感)」の評価が低くなることが多々ある。
【0007】
他方で、ティシュペーパーの紙質パラメータと官能評価値との関係は不明な点も多く、ティシュペーパーの使用感を定量的に評価することは難しい。また、従来の官能評価は、被験者毎の各項目の基準の異なりについて詳細に検討されておらず、特に、「柔らかさ」と「滑らかさ」については、ある被験者が「柔らかさ」と感じている感覚を、他の被験者が「滑らかさ」として感じている場合を多く含み得るため、個別の項目として判断すると精度が低くなるおそれがある。このため、上記各評価項目をともに向上させるティシュペーパーの開発を難しくしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特許第4875488号
【文献】特許第4450552号
【文献】特許第4658056号
【文献】特開2017-55807号公報
【文献】特開平10-226986号公報
【文献】特開2003-24282号公報
【文献】特開2008-64722号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明の主たる課題は、官能性に関する品質、特に使用者が実際に使用する際における官能性に関する品質に優れた保湿ティシューを提供することにあり、なかでも「柔らかさ」に優れるとともに、「丈夫さ(強度・安心感)」のある保湿ティシューを提供することにある。さらには、非保湿ティシューと同等の強度のある保湿ティシューを提供すること、また、「滑らかさ」においても優れるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するための手段は次のとおりである。
【0011】
その第一の手段は、
ポリオールを含む保湿剤が付与されている2プライのティシュペーパーであって、
1プライ当たりの坪量が16.0~25.0g/m2であり、
2プライの紙厚が145~180μmであり、
横方向の乾燥引張強度が、120~200cN/25mmであり、
縦方向の乾燥引張強度が、275~450cN/25mmであり、
横方向の湿潤引張強度が、80~120cN/25mmであり、
前記横方向の乾燥引張強度と前記横方向の湿潤引張強度との差が40cN/25mm以上であり、かつ、(横方向の湿潤引張強度)/(横方向の乾燥引張強度)の値が0.60~0.75であり、
縦方向の伸び率が、13.0~18.0%である、
ことを特徴とするティシュペーパーである。
【0012】
第二の手段は、
表面粗さ(Ra)が、10.0~12.0μmである上記第一の手段のティシュペーパーである。
【0013】
第三の手段は、
平均摩擦係数(μ)が、0.38~0.50である上記第一又は第二の手段ティシュペーパーである。
【0014】
第四の手段は、
(表面粗さ(Ra))/(平均摩擦係数(μ))の値が25.0~30.0μmであり
(横方向の湿潤引張強度)/〔(横方向の乾燥引張強度)×(平均摩擦係数(μ))〕の値が1.45~2.00である、
上記第一~第三の手段のティシュペーパーである。
【発明の効果】
【0015】
以上の本発明によれば、官能性に関する品質、特に使用者が実際に使用する際における官能性に関する品質に優れた保湿ティシューが提供される。特に「柔らかさ」に優れるとともに、「丈夫さ(強度・安心感)」のある保湿ティシューが提供される。さらには、非保湿ティシューと同等の強度のある保湿ティシューが提供される。また、「滑らかさ」においても優れるものが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明に係る動摩擦係数の測定方法を説明するための図である。
図2】実施例に係る官能評価の結果のグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を説明する。
【0018】
本実施形態に係るティシュペーパーは、特に一般的な「柔らかさ」に優れるとともに、「丈夫さ(強度・安心感)」のある保湿ティシューであり、さらには、非保湿ティシューと同等の強度があって、「滑らかさ」においても優れるものである。そして、保湿ティシューの主たる用途の一つである化粧落とし(メイク落とし)に使用した場合に、充分な湿潤引張強度があって、軽く押さえながら、滑らせるようにして顎までしっかり押さえ、ジェルやクリームの薬剤をティシュペーパーに吸わせるようにした際における、肌に対する心地よさに優れるものである。
【0019】
本実施形態に係るティシュペーパーは、2プライのティシュペーパーである、つまり基紙二枚が積層一体化されて一組となっているものである。このティシュペーパーを構成するパルプ繊維は、NBKP(針葉樹クラフトパルプ)とLBKP(広葉樹クラフトパルプ)とであるのが望ましい。特に、パルプ繊維が、NBKPとLBKPのみから構成されているのがよい。その配合割合は、NBKP:LBKP=20:80~80:20がよく、特に、NBKP:LBKP=30:70~60:40が望ましい。このような配合とすると、乾燥引張強度と湿潤引張強度および表面性のバランスを良好に調整することができる。NBKPは繊維粗度11.0mg/100m~20.0mg/100mの針葉樹クラフトパルプであると、しなやかで強度のある原紙となるので望ましい。LBKPは繊維粗度7.0~13.0mg/100mの広葉樹クラフトパルプであると原紙の表面性が滑らかであり望ましい。
【0020】
本発明に係るティシュペーパーは、上記のとおり2プライの保湿ティシューであるが、その坪量は、1プライ当たりの坪量が16.0g/m2以上である。上限値は、必ずしも限定されないが、25.0g/m2であるのが望ましい。本発明にかかるティシュペーパーにおける坪量は、比較的、汎用品や低価格品と称される汎用的なティシュペーパーよりも高い坪量であり、この坪量であれば柔らかさ及び滑らかさと丈夫さに優れたものとすることができる。また、本発明に係るティシュペーパーは、2プライの紙厚が145μm以上である。上限値は、限定されないが180μmであるのが望ましい。この紙厚であれば柔らかさ及び滑らかさと丈夫さに優れたものとすることができる。
【0021】
なお、本発明における坪量とは、JIS P 8124(2011)に基づいて測定した値を意味し、紙厚は、試験片をJIS P 8111(1998)の条件下で十分に調湿した後、同条件下でダイヤルシックネスゲージ(厚み測定器)「PEACOCK G型」(尾崎製作所製)を用いて測定した値を意味する。この紙厚測定の具体的手順は、プランジャーと測定台の間にゴミ、チリ等がないことを確認してプランジャーを測定台の上におろし、前記ダイヤルシックネスゲージのメモリを移動させてゼロ点を合わせ、次いで、プランジャーを上げて試料を試験台の上におき、プランジャーをゆっくりと下ろしそのときのゲージを読み取る。このとき、プランジャーをのせるだけとする。プランジャーの端子は金属製で直径10mmの円形の平面が紙平面に対し垂直に当たるようにし、この紙厚測定時の荷重は、約70gfである。測定を10回行って得られる平均値を紙厚とする。
【0022】
本実施形態に係るティシュペーパーは、保湿ティシュー、ローションティシュー、薬液付与タイプのティシューなどとも称される、保湿剤が付与されているティシュペーパーである。本実施形態に係る保湿剤は、吸湿性によって紙中に水分を取り込み水分率を上昇させる作用を有するポリオールを主成分とする。したがって、本実施形態に係るティシュペーパーはポリオールを含む。ポリオールは、2個以上のヒドロキシ基-OHをもった脂肪族化合物であり、吸湿性による水分率向上の効果を奏するものである。吸湿性を有する糖類も含まれる。本実施形態に係るポリオールとして好適なものは、グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ポリエチレングリコール、ソルビトール、グルコース、キシリトール、マルトース、マルチトール、マンニトール、トレハロース、アラビノース、ガラクトース、キシロース、キシロビオース、キシロオリゴ糖、ショ糖、ラムノースであり、これらが混合されたものでもよい。特に好適なポリオールは、グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ポリエチレングリコール及びそれらを混合したものであり、そのなかでも特にグリセリン、ジグリセリン及びこれらの混合物がよい。
【0023】
本実施形態に係る保湿剤中における主成分以外の他の成分としては、アロエエキス、延命草エキス、オトギリソウエキス、オオムギエキス、オレンジエキス、海藻エキス、カミツレエキス、キューカンバエキス、コンフリーエキス、ゴボウエキス、シイタケエキス、ジオウエキス、シソエキス、セージエキス、デュークエキス、冬虫夏草エキス、ドクダミエキス、ハタケシメジエキス、ビワエキス、ブドウ葉エキス、フユボダイジュエキス、プルーンエキス、ヘチマエキス、ボタンピエキス、マイカイエキス、モモノハエキス、ユリエキス、リンゴエキス、アーモンド油、オリーブ油、ゴマ油、サフラワー油、大豆油、椿油、ヒマシ油、ホホバ油、ミンク油、ヤシ油、ミツロウ、ヒアルロン酸、プラセンターエキス、ラムノース、キシロビオース、キシロオリゴ糖、チューベローズポリサッカライド、トリサッカライド、可溶性コラーゲン、グリチルリチン、コンドロイチン硫酸、スクワラン、セラミド類似化合物、尿素、ビタミンCリン酸エステルカルシウム塩、ビタミンE、ピロリドンカルボン酸ナトリウム、ヒノキチオール、流動パラフィン及びワセリン等が挙げられる。これらは一種又はそれ以上に含まれていてもよい。これらのうち、アロエエキス、延命草エキス、オトギリソウエキス、コンフリーエキス、シソエキス、セージエキス、セラミド類似化合物、ドクダミエキス、ハタケシメジエキス、ビワエキス、フユボダイジュエキス、ボタンピエキス、ヒマシ油、ホホバ油、ヒアルロン酸、プラセンターエキス、可溶性コラーゲン、コンドロイチン硫酸、スクワラン、尿素がより好ましい。
【0024】
本実施形態にかかるティシュペーパーは、上記のとおり保湿剤を含むことで、特に水分率が10質量%以上、特には11質量%以上とされる。この水分率は、保湿ティシューの中でも非常に高い水分率である。なお、ここでの水分率は、JIS P 8111(1998)の条件下で試料を調湿した後、JIS P 8127(2010)に基づいて測定した値である。具体的には、JIS P 8111(1998)の標準状態下において調湿したティシュペーパーを検体として、室温23±1℃、相対湿度50±2%環境下で較量となるまでティシュペーパーを乾燥させ、調湿したティシュペーパーの質量に対するティシュペーパー中の水分量の比率を求める。(ティシュペーパーの水分率%)=((調湿したティシュペーパーの質量g)-(乾燥したティシュペーパーの質量g))/(調湿したティシュペーパーの質量g))
【0025】
本実施形態に係るティシュペーパー中に含まれるポリオールの含有量は、22.5質量%以上28.5質量%以下である。ポリオールの含有量は、例として、ガスクロマトグラフィー水素炎イオン化検出器による定量により測定される値から求める。調湿したティシュペーパーを基準の検体として、ソックスレー抽出器によるアセトン抽出を行ない、抽出した溶媒を乾燥させ、これをガスクロマトグラフィー水素炎イオン化検出器にかける。上記水分率と同様の条件で調湿したティシュペーパー中に含まれるグリセリン等のポリオール合計質量の比率をポリオールの含有量の質量%とする。上記含有量であればティシュペーパー中の水分率を10質量%以上に高めやすい。
【0026】
本実施形態に係るティシュペーパーにおける保湿剤は、薬液として外添により原紙に付与するのがよい。原紙に対する薬液の外添の方法は、スプレー塗布、印刷塗布、ロール転写などの公知の技術によって行なうことができる。なお、薬液中には、乳化剤、防腐剤、消泡剤等の公知の助剤を含ませることができる。薬液中のポリオールの含有量は、60.0~90.0質量%とするのがよい。
【0027】
他方で、本実施形態に係るティシュペーパーは、横方向の乾燥引張強度が、120cN/25mm以上であり、縦方向の乾燥引張強度が、275cN/25mm以上である。この縦横の乾燥引張強度の値は、保湿ティシューとしては非常に高い値であり、非保湿ティシューと同程度である。縦方向の乾燥引張強度の上限値は、必ずしも限定されないが450cN/25mmであるのが望ましい。
【0028】
また、本実施形態に係るティシュペーパーは、上記のように横方向の乾燥引張強度が120cN/25mm以上であるとともに、横方向の湿潤引張強度が、80cN/25mm以上である。横方向の乾燥引張強度の上限値は、200cN/25mmであるのが望ましく、特に横方向の乾燥引張強度の好ましい範囲は、130~160cN/25mmである。また、横方向の湿潤引張強度の上限値は、130cN/25mmであるのが望ましく、特に横方向の湿潤引張強度の好ましい範囲は、80~120cN/25mmである。上記坪量の範囲において横方向の乾燥引張強度及び湿潤引張強度がこの範囲であると柔らかさに優れたものとなる。また、本発明にかかるティシュペーパーは、特に横方向の湿潤引張強度が非常に高い。横方向の湿潤引張強度は、一般的にティシュペーパーの縦横の乾燥引張強度、縦横の湿潤引張強度のなかでも最も弱い値となる。したがって、この横方向の湿潤引張強度が高いと紙自体が本質的に丈夫といえ、感じ方においても丈夫さを感じやすいものとなる。
【0029】
本実施形態に係るティシュペーパーは、上述のとおり水分率をやや高くするようにしたうえ、紙力を高くすることで柔らかさと丈夫さを感じやすくなる。
【0030】
ここで本実施形態に係るティシュペーパーは、さらに前記横方向の乾燥引張強度と前記横方向の湿潤引張強度との差が40cN/25mm以上であり、かつ、(横方向の湿潤引張強度)/(横方向の乾燥引張強度)の値が0.60~0.75である。この範囲とすることで、柔らかさにおいてより優れた効果が発現するようになる。
【0031】
ここで、本実施形態に係る乾燥引張強度は、JIS P 8113(2006)の引張試験に基づいて測定する。試験片は縦・横方向ともに巾25mm(±0.5mm)×長さ150mm程度に裁断したものを用いる。ティシュペーパーは複数プライの場合は複数プライのまま測定する。試験機は、ミネベア株式会社製ロードセル引張り試験機TG-200Nを用いる。つかみ間隔が100mmに設定する。測定は、試験片の両端を試験機のつかみに締め付け、紙片を上下方向に引張り荷重をかけ、紙が破断する時の指示値(デジタル値)を読み取る手順で行う。引張速度は100mm/minとする。縦方向、横方向ともに各々5組の試料を用意して各5回ずつ測定し、その測定値の平均を各方向の乾燥引張強度とする。(試料の調整は、JIS P 8111(1998))
【0032】
また、湿潤引張強度は、JIS P 8135(1998)の引張試験に準じて測定する。試験片は縦・横方向ともに幅25mm(±0.5mm)×長さ150mm程度に裁断したものを用いる。ティシュペーパーは複数プライの場合は複数プライのまま測定する。試験機は、ミネベア株式会社製ロードセル引張り試験機TG-200Nを用いる。つかみ間隔が100mmに設定する。測定は、105℃の乾燥機で10分間のキュアリングを行った試験片の両端を試験機のつかみに締め付け、次に、水を含ませた平筆を用い、試験片の中央部に約10mm幅で水平に水を付与し、その後、直ちに紙片に対して上下方向に引張り荷重をかけ、紙が破断する時の指示値(デジタル値)を読み取る手順で行う。引張速度は50mm/minとする。縦方向、横方向ともに各々5組の試料を用意して各5回ずつ測定し、その測定値の平均を各方向の湿潤引張強度とする。
【0033】
他方、本実施形態に係るティシュペーパーは、縦方向の伸び率(引張破断伸)が、13.0~18.0%である。伸び率は、JIS P 8113(2006)の引張試験に基づいて測定した値である。測定は、ミネベア株式会社製「万能引張圧縮試験機 TG-200N」又はその相当機により測定できる。伸び率が上記範囲であると、滑らかさを感じやすいものとなる。
【0034】
本実施形態に係るティシュペーパーは、保湿ティシューであり、原紙を積層したシートに対し、保湿剤をポリオールが22.5質量%~28.5質量%程度となるよう付与して製造する。一般的に薬液中の水分及び薬液塗布後の吸湿により、薬液付与をしない原紙に対して乾燥引張強度は、30%~40%低下することが多く、湿潤強度は20%~30%低下することが多い。このため、本実施形態に係るティシュペーパーは、抄造する一次原紙については、乾燥引張強度及び湿潤引張強度を従来品に比して大幅に高めるようにするのが望ましい。具体的には、乾燥引張強度縦は450~650cN/25mm、乾燥引張強度横は250~350cN/25mm、湿潤引張強度横を80~150cN/25mmとするのが望ましい。本発明において強度をこの範囲にするには、原紙の坪量を1プライで13.5~22.5g/m2とすると調整しやすく、さらに紙厚を2プライで145~200μmとすると調整しやすい。
【0035】
さらに、強度の調整は、原紙を抄造する際に、原料配合及び叩解条件、乾燥紙力増強剤、湿潤紙力増強剤の種類とその配合比率等を調整すればよい。但し、乾燥引張強度、湿潤引張強度を高めるために、単に原料に対し添加する乾燥紙力増強剤、湿潤紙力増強剤を増添するだけでは、紙力剤の歩留まりが頭打ちになり、必要な乾燥引張強度、湿潤引張強度とするのが難しいことがある。特に「拭き取り時の吸水性」、「吸水時の丈夫さ、しっかり感」、「肌を擦る際の柔らかさ」「肌に滑らせたときの拭き取りの滑らかさ、心地よさ」の各評価を両立させるには、湿潤引張強度と乾燥引張強度を単に高めるのではなく、横方向の湿潤引張強度と横方向の乾燥引張強度の比((横方向の湿潤引張強度)/(横方向の乾燥引張強度))を、0.60~0.75としてそのバランスをとることで、柔らかさと丈夫さ、特に湿潤時の丈夫さにおいて非常に優れたものとなる。さらに、ティシュペーパーの縦横比((縦方向の乾燥引張強度)/(横方向の乾燥引張強度))は、2.0~2.8であることが望ましい。縦方向の乾燥引張強度を抑えて柔らかい紙質とするとともに、使用時の柔らかさを確保することができ、横方向の乾燥引張強度を増加させ湿潤時の破れにくさを確保することができる。この場合、特に、原紙の縦横比(縦方向の乾燥引張強度)/(横方向の乾燥引張強度)を、1.5~3.0とするのが望ましい。この範囲であれば、製品としたときに縦方向の乾燥引張強度を抑えて柔らかい紙質とするとともに、使用時の柔らかさを確保することができ、横方向の乾燥引張強度を増加させ湿潤時の破れにくさを確保することができる。
【0036】
本実施形態に係るティシュペーパーにおいて特に適する乾燥紙力増強剤としては、カチオン化デンプンやカチオン性や両性のポリアクリルアミド系コポリマーである。特に、乾燥紙力増強剤としてはカチオンデンプンが望ましい。乾燥紙力増強剤の含有量としては、パルプ繊維100質量部に対して0.01~0.20質量部であるのが望ましい。また、湿潤紙力増強剤としては尿素ホルムアルデヒド樹脂、メラミンホルムアルデヒド樹脂、ポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン(PAE)、ポリビニルアミン(PVAm)である。特に、湿潤紙力増強剤としては、ポリアミノポリアミンエピクロロヒドリン樹脂が望ましい。湿潤紙力増強剤の含有量は、パルプ繊維100質量部に対して0.1~1.0質量部が望ましい。ポリアミノポリアミンエピクロロヒドリン樹脂及びカチオンデンプは、ポリオールによる水分率向上による柔らかさや滑らかさ向上の効果を阻害せずに紙力を効果的に向上させることができ、これを用いると本実施形態に係るティシュペーパーがより柔らかさ及び滑らかさに優れ、しかも強度も向上され、消費者の官能評価値が非常に高いものとなる。なお、乾燥紙力増強剤及び湿潤紙力増強剤は、内添するのが望ましい。
【0037】
具体的には、カチオン化デンプン4.0~8.0kg/パルプトンに対し、ポリアミドポリアミンエピクロロヒドリン(PAE)8.0~10.0kg/パルプトンの添加とすると、カチオン化デンプンとポリアミドポリアミンエピクロロヒドリン(PAE)の両者のパルプへの定着がよくなり、乾燥引張強度と湿潤引張強度、特に湿潤引張強度の向上が著しい。定着率が高く乾燥引張強度と湿潤引張強度向上の効果が高いカチオン化デンプンとポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン(PAE)の比率は、30:70~55:45がよい。この範囲とすれば、原料に対する乾燥紙力増強剤及び湿潤紙力増強剤の両薬剤の定着が良好であり、所望の乾燥引張強度、湿潤引張強度を得ることができる。
【0038】
他方、本実施形態に係るティシュペーパーは、原紙の抄紙時に内添する内添用の柔軟剤を含まないようにすることができる。柔軟剤は、原紙自体の柔軟性を高めることができるか紙力に影響を与え、特に低下させる傾向にある。本実施形態に係るティシュペーパーは、むしろ内添用の柔軟剤を含まないか使用量を少なくし、原紙の紙力を高い方向に調整するとともに、保湿剤特にポリオールの作用を高めるようにした方が、柔らかさ及び滑らかさと丈夫さにおいて高い官能評価が得られやすい。なお、柔軟剤を使用する場合において適する柔軟剤は、脂肪酸エステル系化合物、脂肪酸アミド系化合物である。脂肪酸アミド系化合物は、繊維表面をコーティングする効果を有し、本実施形態に係るティシュペーパーに適している。脂肪酸エステル系化合物は、ティシュペーパー表面の濡れ性やふっくらさ(ふんわりさ)を改善する効果を有する。
【0039】
脂肪酸エステル系化合物は、カチオン性の脂肪酸エステル系化合物、ノニオン性の脂肪酸エステル系化合物のいずれでもよいが、その両者が含まれているのが望ましい。また、脂肪酸エステル系化合物としては、炭素数が6~24のアルコールと炭素数7~25の脂肪酸との化合物であるのが望ましい。アルコールは、直鎖アルコール、分岐鎖を有するアルコール、飽和アルコール、及び不飽和アルコールの何れでも良い。特に、炭素数が10~22のアルコールが好ましく、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、及びオレイルアルコールが好ましい。これらはその一種を単独で用いても良いし、二種以上を併用しても良い。また、炭素数7~25の脂肪酸としては、直鎖脂肪酸、分岐鎖を有する脂肪酸、飽和脂肪酸、及び不飽和脂肪酸の何れでも良い。特に、炭素数が10~22の脂肪酸が好ましく、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、及びオレイン酸が好ましい。これらはその一種を単独で用いても良いし、二種以上を併用しても良い。
【0040】
脂肪酸アミド系化合物は、ポリアルキレンポリアミンおよびカルボン酸を反応させて得ることができる。好適なポリアルキレンポリアミンは、分子中に少なくとも3個のアミノ基を有する、次式(1)で示されるものである。
【0041】
2N-(R1-NH-)n-R1-NH2・・・(1)
(R1は各々独立して炭素数1~4のアルキレン基、nは1~3の整数)
【0042】
このポリアクリルアミンにおいては、分子中に異なるR1が存在していてもよい。また、2種以上のポリアルキレンポリアミンを用いることも可能である。好ましいR1はエチレン基である。前記カルボン酸としては、炭素数10~24のカルボン酸が望ましく、飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸のいずれであってもよい。また、直鎖状カルボン酸、分岐鎖を有するカルボン酸のいずれであってもよい。中でも炭素数12~22のカルボン酸が好ましく、特に炭素数14~18のカルボン酸が好ましい。
【0043】
柔軟剤を含むようにするのであれば、含有量としては、脂肪酸エステル系化合物であれば、パルプ繊維100質量部に対して0.01質量部~0.20質量部、脂肪酸アミド系化合物であれば、パルプ繊維100質量部に対して0.01質量部~0.30質量部である。
【0044】
他方で、本実施形態に係るティシュペーパーは、表面粗さ(Ra)の値が、10.0μm以上であるのが望ましい。上限値は、12.0μmである。表面粗さ(Ra)の値が10.0μm~12.0μmであると滑らかで、且つ肌触りの良さを感じやすいものとなる。ここでの表面粗さ(Ra)は、ISO 25178-2:2012による表面粗さである。JIS P 8111(1998)条件である室温23℃、相対湿度50%にコントロールされた人工気象室内にて、10cm角に裁断した試験片を、株式会社キーエンス社製のレーザー顕微鏡VR-3200及びその相当機を用い、ISO 25178に従い、算術平均粗さRa(表面粗さ、μm)を算出する。なお、レーザー顕微鏡の画像の観察・測定・画像解析ソフトウェアとしては、株式会社キーエンス社製の「VR-H1A」を使用することができる。なお、測定条件は、倍率12倍、視野面積24mm×18mmの条件で測定する。ただし、測定倍率と視野面積は、適宜変更しても良い。
【0045】
他方、本実施形態に係るティシュペーパーは、動摩擦係数(平均摩擦係数μ)の値は、0.38以上である。動摩擦係数(平均摩擦係数μ)の上限値は0.50である。特に動摩擦係数(平均摩擦係数μ)の値が0.38~0.45であるのが望ましい。ここでの動摩擦係数(平均摩擦係数μ)は、次のようにして測定した値をいう。株式会社テック技販社販売の触覚フォースプレートTF-2020(図中符号5で示す)及びその相当品を用いて、滑り官能評価試験と同様の操作を行った際の摩擦係数を測定する。図1に示すようにロードセル5A上のプレート6の上にティシュペーパー3を生成状態で置き、その一端を接着テープ1等によって前記プレート6上に固定する。次いで、右手の人差し指2で、ティシュペーパー3の上をなぞるように、指長手方向と垂直方向の一方向に滑らせて摩擦試験を行い摩擦係数を測定する。なお、このティシュペーパーの固定は、このすべり方向が紙の横方向となるようにする。また、測定時の垂直荷重は約0.34±0.09N、滑り速度は76±23mm/S、滑り距離は103±15mmとするように試験を行う。なお、測定者は、事前に数回の練習を行ってもよい。上記垂直荷重及び滑り速度はティシュペーパーの表面性を安定して感知する平均的な垂直荷重と平均的な滑り速度である。右手の人差し指で、ティシュペーパーの上をなぞる方向は、最初に指先が感じる摩擦の方向である。なお、測定者は9人で行い、同一の試料(ただし表記は変更する)について5回繰り返し測定する。異常値を省いた平均値を摩擦係数とする。
【0046】
表面粗さ(Ra)及び動摩擦係数(平均摩擦係数μ)は、上述の紙力の調整及び保湿剤の含有に加え、特に原紙のクレープ率を20%以下、特に18%以下、より好ましくは15%以下として、原紙に対して外添にて保湿剤を付与するようにすると調整しやすい。また、クレーピングドクターの調整、パルプ配合比によっても調整される。もちろん、他の調整技術を用いることができる。例えば、柔軟剤として脂肪酸エステル系化合物や脂肪酸アミド系化合物を用いることで調整することもできる。
【0047】
また、本実施形態に係るティシュペーパーは、吸水量が400~500g/m2であるのが望ましい。この吸水量であれば洟かみ用途はもちろん、化粧落とし用途で薬液を拭き取るに十分である。なお、吸水量は次のようにして測定した値である。試験片を縦・横100mm×100mm(±1mm)に試験数量に合わせて裁断し準備する。約105℃の乾燥器内にて3分間キュアリングする。試験液として水道水、および、試験片と試験液を入れるプラスチック製バットを準備する。金網は120mm×120mmの外枠とし、外枠の針金の太さを3.0mm、内枠は10mm格子とし内枠の針金の太さを0.5mmとし取っ手を付けた。裁断した試験片を容器の上にのせた状態で重量を測定し、小数点第3位まで記録する。試験片を金網を平行にして載せ試験液中に浸漬させる。試験片の表面まで試験液が浸漬した後、試験液を入れた容器に対して垂直に金網を6cmの高さまで上げ、30秒間静止状態を保つ。30秒後ピンセットで試験片をつかみ、金網から平行して滑らせるようにして容器に移す。試験片の重量を測定して、吸水重量を求め少数点第2位まで記録する。同じ試料について5回測定し、その平均値を測定値とする。
【0048】
なお、本実施形態に係るティシュペーパーは、カートン箱とも称される収納箱に収めたポップアップ式のティシュペーパー製品とするに適する。この場合において、収納箱内に収めるポップアップ式のティシュペーパーの束を形成するには折り品質に優れるロータリー式インターフォルダを用いるのが望ましい。
【0049】
次いで、本実施形態に係るティシュペーパーが、一般的な「柔らかさ」及び「滑らかさ」、「丈夫さ」において優れるとされ、さらに、化粧落とし用途といった具体的使用態様においても優れるとされることについて説明する。まず、ティシュペーパーの使用感を評価するにあたっては、「柔らかさ」、「滑らかさ」、「丈夫さ」といった各評価項目を設定し、その項目毎に基準試料との比較で複数の被験者が使用感を判断し、項目毎に数値化して評価する手法の官能評価によるのが一般的であるが、一方で、ティシュペーパーの特性は、乾燥時や湿潤時の引張強度、破断伸び、坪量、紙厚、水分量さらにソフトネス(曲げ抵抗)、MMD、動摩擦係数(平均摩擦係数μ)、表面粗さ(Ra)等の紙質パラメータによって定まる。しかし、ティシュペーパーの紙質パラメータと官能評価値との関係は不明な点も多く、ティシュペーパーの使用感を定量的に評価することは難しい。また、各評価項目を設定する官能評価においては、被験者毎の各項目の基準の異なりについて詳細に検討されておらず、特に、「柔らかさ」と「滑らかさ」については、ある被験者が「柔らかさ」と感じている感覚を、他の被験者が「滑らかさ」として感じている場合を多く含みうるため、個別の項目として判断すると精度が低くなるおそれがある。
【0050】
そこで、市販の保湿ティシュペーパー5種、非保湿ティシュペーパー高級品3種及び非保湿ティシュペーパー汎用品7種について、水平台上に固定されたティシュペーパーの上を指で滑らせた際の滑り感を「好む」又は「好まない」の判断基準で点数化する方法により、異なる物性値の複数のティシュペーパーを点数化する滑り官能評価を行った。この滑り官能評価は、水平台上に固定されたティシュペーパーの上を指で滑らせるという操作を行うため、基準となるティシュペーパーの曲げに関する感覚が排除され、被験者が「柔らかさ」と感じる感じ方が相当に排除され、ほぼ「滑らかさ」を評価できる。また、この滑り官能評価は、特に、操作を滑りに限定する一方で、評価基準については、「好む」又は「好まない」の判断基準で点数化するため、単に滑りがよいか悪いかを判断せずに、ティシュペーパーの肌触りの視点からの評価となる。この滑り官能評価の結果が、主に被験者が「柔らかさ」の要素が少ない一般的な「滑らかさ」として感じる感じ方に近いことは確認されている。そして、この滑り官能評価における滑り官能評価の結果を目的変数としティシュペーパーの紙質パラメータを説明変数として、ステップワイズ法による重回帰分析を行って、紙質パラメータのうち一般的な「滑らかさ」に関係するものを明らかにすると、表面粗さ(Ra)と動摩擦係数(平均摩擦係数μ)と相関があることが確認される。
【0051】
他方で、本実施形態に係るティシュペーパーにおいて化粧落としという具体的な用途における評価を行うべく、「拭き取り時の吸水性」、「吸水時の丈夫さ、しっかり感」、「肌を擦る際の柔らかさ」「肌に滑らせたときの拭き取りの滑らかさ、心地よさ」といった具体的な各評価項目を設定し、その項目毎に基準試料との比較で複数の被験者が使用感を判断し、項目毎に数値化して評価する手法の官能評価を行った。この官能評価については、いずれも女性10名に化粧落としにティシュペーパーを使用してもらい、市場で最も汎用的に使用されている市販品A(非保湿ティシュー)を評価点4の基準として、1~7の7段階で採点してもらい、10名の評価点の平均値は下記表1に記入した。化粧落としにはジェルタイプの花王株式会社製「キュレル ジェルメイク落とし」を使用した。
【0052】
そして「肌を擦る際の柔らかさ」の官能評価について、特に表面粗さ(Ra)を動摩擦係数(平均摩擦係数μ)で除した値が従来製品にない25.0~30.0μmの範囲にすると、「肌に滑らせたときの拭き取りの滑らかさ、心地よさ」において非常に優れるものであることが知見された。
【0053】
また、「肌に滑らせたときの拭き取りの滑らかさ、心地よさ」の官能評価について、特に横方向の湿潤引張強度を、横方向の乾燥引張強度と動摩擦係数(平均摩擦係数μ)とを乗じた値で除した値〔(横方向の湿潤引張強度)/((横方向の乾燥引張強度)×(動摩擦係数(平均摩擦係数μ)〕が従来製品にない1.45~2.00であると、「肌に滑らせたときの拭き取りの滑らかさ、心地よさ」において優れるものであることが知見された。
【0054】
本実施形態に係るティシュペーパーは、上記の評価方法において示された一般的な「柔らかさ」及び「滑らかさ」、「丈夫さ」において優れるとされ、さらに、化粧落とし用途といった具体的使用態様においても優れるとされる従来製品にない紙質パラメータを有するティシュペーパーとなっており、当該ティシュペーパーとするために紙力等の調整によって得られたものである。
【0055】
なお上述の相関の確認に用いた紙質パラメータのうちソフトネス及びMMDは次のとおりである。
【0056】
〔ソフトネス〕
JIS L 1096(2010)のE法に準じたハンドルオメータ法に基づいて測定した。但し、試験片は100mm×100mmの大きさとし、クリアランスは5mmとした。1プライで縦方向、横方向の各々5回ずつ測定し、その全10回の平均値を、cN/100mmを単位として表した。
【0057】
〔MMD〕
摩擦子の接触面を所定方向に20g/cmの張力が付与された測定試料の表面に対して25gの接触圧で接触させながら、張力が付与された方向と略同じ方向に速度0.1cm/sで2cm移動させ、このときの、摩擦係数を、摩擦感テスター KES-SE(カトーテック株式会社製)を用いて測定する。その摩擦係数を摩擦距離(移動距離=2cm)で除した値がMMDである。摩擦子は、直径0.5mmのピアノ線Pを20本隣接させてなり、長さ及び幅がともに10mmとなるように形成された接触面を有するものとする。接触面には、先端が20本のピアノ線P(曲率半径0.25mm)で形成された単位膨出部が形成されているものとする。
【実施例
【0058】
次いで、本実施形態に係る保湿ティシュペーパー(実施例1~実施例4)とその比較例1~6、さらに滑り官能評価で用いた試料(従来例1~15)における物性値及び官能評価の結果を表1に示す。また、図2に官能評価の結果をグラフ化したものを示す。
【0059】
ここで、実施例は薬液が付与されている2プライの保湿ティシュペーパーである。実施例1は、原料パルプをNBKP:LBKPの比率を50:50としてややNBKPの比率を高いように配合して、円網ヤンキードライヤー抄紙機で抄造した。摩擦係数を調整するために、ドクターブレードの角度及びクレープ率の調整を行った。
【0060】
乾燥紙力剤としてカチオンデンプンを用い、湿潤紙力剤としてポリアミノポリアミンエピクロロヒドリン樹脂を用いた。このティシュペーパー原紙を二枚積層して積層ティシュペーパー原紙としたものに、保湿剤をグラビア印刷方式により、坪量等に応じて、ポリオール含有量が表中の値となるように20~30質量%程度を付与した。薬液はグリセリンを主成分とする水系薬液であり、グリセリン75質量%、水を20質量%、その他の助剤成分を5質量%含むものを用いた。この水系薬液の粘度は40℃で110mPa・sであった。
【0061】
保湿剤を付与した積層連続シートは、ロータリー式インターフォルダにて加工し、カットシートを得た。なお、ロータリー式インターフォルダにおいてはテンション調整をした。紙力の調整は主には紙力剤の含有量を調整することでおこなった。
【0062】
【表1】
【0063】
表1の結果より本実施形態に係る実施例は、縦方向及び横方向の湿潤引張強度は、非保湿ティシューと同等であり、横方向の湿潤引張強度も高い。つまり非常に丈夫さに優れる。他方で、各官能評価値は比較例及び従来製品に比して格段によい結果となっている。つまり、本実施形態に係るティシュペーパーは、丈夫でありながら、従来製品にない一般的な「柔らかさ」に優れるものであり、また特に「滑らかさ」についても優れる保湿ティシュペーパーであるといえる。
【0064】
さらに、図2にも示されるように、具体的な化粧落とし用途における官能評価である、「拭き取り時の吸水性」、「吸水時の丈夫さ、しっかり感」、「肌を擦る際の柔らかさ」「肌に滑らせたときの拭き取りの滑らかさ、心地よさ」についても非常に優れる結果となった。
【0065】
つまり、本発明にかかるティシュペーパーは、官能性に関する品質、実使用者が実際に使用する際における官能性に関する品質に優れた保湿ティシューであり、特に一般的な「柔らかさ」に優れるとともに、「丈夫さ(強度・安心感)」のある保湿ティシューである。さらには、非保湿ティシューと同等の強度がある。また、一般的な「滑らかさ」においても優れる。それとともに、化粧落とし用途といった具体的な使用態様における使用感にも優れる。
【符号の説明】
【0066】
1…接着テープ、2…人差し指、3…ティシュペーパー、5…触覚フォースプレート、5A…ロードセル、6…プレート。
図1
図2